JP2012224732A - 有機無機複合ゲル - Google Patents

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Abstract

【課題】 カーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒などの非水系溶媒に対して十分に高い膨潤性を有し、且つ、優れた力学的特性を有するゲル材料を提供する。
【解決手段】 特定組成の水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)からなるネットワークを有する有機無機複合ゲルに、周期律表の第一族元素若しくは第二族元素の金属塩(C)を僅かな濃度で含むカーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒に添加した非水系溶液を含有させることで得られる有機無機複合ゲルにより上記課題を解決した。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特定の非水媒体に対して高い膨潤性を有し、且つ、圧縮性などの力学的性質に優れた有機無機複合ゲルに関するものである。
高分子ゲルは有機高分子の三次元ネットワーク内に水や有機溶媒を含み膨潤したソフト材料で、医療、食品、土木、スポーツ関連などの分野で広く用いられている。近年、有機高分子と粘土鉱物の三次元ネットワーク内に水媒体を含有するナノコンポジット型ゲル(以後、「NCゲル」と称する)は高い水膨潤性と優れた力学的特性を有することから注目されている(非特許文献1参照)。しかし、このNCゲルは水に対しては優れた膨潤性を示すものの、非水系溶媒に対しては、アミド系溶媒やジメチルスルホキシドなどの一部の有機溶媒を除くと、多くの非水系溶媒に対して膨潤性は低く、ゲルとして良好な膨潤性を付与されないものであった。例えば、表示材料や電池・コンデンサー材料など電気・電子分野で用いられる非水系媒体に対しては低い膨潤性しか示さない場合が多く、特に、電池の電解液で使用されるカーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒などの非水系溶媒に対しては、NCゲルは膨潤性が非常に低く、ゲルは固く収縮した状態を示す場合が多かった。また、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒に対しても同様に低い膨潤性を示し、固く収縮した状態であった。
これに対して、特許文献1では、常温溶融塩であるイオン液体を媒体とする有機無機複合ゲルについて開示されている。その製造方法として、有機無機複合ゲルをメタノール或いはテトラヒドロフランなどの易揮発性有機溶媒に置換した後、イオン液体とその有機溶媒との混合溶液に浸漬させ、ゲル内にイオン液体を導入した後、易揮発性有機溶媒を乾燥・除去する方法が開示されている。しかし、比較例で示したように、この方法(即ち、メタノール等で溶媒置換後に目的とする非水系媒体を導入する方法)では、カーボネート系溶媒やニトリル系の非水溶媒に対して高膨潤度のNCゲルは得られなかった。このように、電子・電気分野で用いられる特定の非水媒体に対して、高い膨潤性と優れた力学物性を併せ持つゲル材料が求められていた。
特開2009−269971号
K.Haraguchi、T.Takehisa、Advanced Material 2002年, 14巻, 1120-1124頁.
本発明が解決しようとする課題は、カーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒などの非水系溶媒に対して十分に高い膨潤性を有し、且つ、優れた力学的特性を有するゲル材料を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究に取り組んだ結果、特定組成の水溶性のラジカル重合性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物からなるネットワークを有する有機無機複合ゲルを用い、且つ、周期律表の第一族元素若しくは第二族元素の金属塩をカーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒に添加したものを用いることで、該非水系溶媒に対する膨潤性が飛躍的に向上すると共に、圧縮性などの力学的性質に優れた有機無機複合ゲルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成されるネットワーク構造中に、第一族元素及び第二族元素の金属塩(C)から選ばれる1種以上の溶質が溶解したカーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選択される1種以上の非水媒体(D)を含有する有機無機複合ゲルを提供する。
本発明の有機無機複合ゲルは、第一族元素若しくは第二族元素の金属塩を少量含むことで、カーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選ばれる非水媒体に対して、高い膨潤性を示し、且つ、柔軟性、弾力性、及び優れた力学的性質を示す。
特に、本発明の有機無機複合ゲルは、第一族元素若しくは第二族元素の金属塩を少量含むことで、カーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒から選ばれる非水媒体に対して、高い膨潤性と柔軟性、弾力性、及び優れた力学的性質を示すことから、各種電気・電子デバイスで用いられるゲル電解質として提供される。
本発明における水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)としては、水に溶解する性質を有し、且つその重合体が水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物と相互作用を有するものが好ましく、例えば、粘土鉱物と水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等を形成できる官能基を有するものが好ましい。これらの官能基を有する水溶性のラジカル重合性有機モノマーとしては、具体的には、アミド基、エステル基、水酸基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが挙げられ、特にアクリルアミド基やアクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性有機モノマーが好ましい。なお、本発明で言う水には、水単独以外に、水と混和する有機溶媒をとの混合溶媒で水を主成分とするものが含まれる。
アクリルアミド基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーとしては、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体モノマー、メタクリルアミド、メタアクリルアミド誘導体モノマーがあげられ、特にアクリルアミドまたはその誘導体モノマーは好ましく用いられる。具体的には、アクリルアミド誘導体モノマーとしては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミドが、一方、メタアクリルアミド誘導体モノマーとしては、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミドが挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数が1〜4のものが特に好ましく選択される。
一方、アクリロイルオキシ基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーとしては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールアクリレート、(ポリ)エチレングリコールメタアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレートなどが挙げられる。
水溶性ラジカル重合性有機モノマー(A)としては、以上に示した単一の重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーの他、これらから選ばれる複数の異なる重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーを併用することも有効である。例えば、優れた共重合体の一つとして、N,N−ジメチルアクリルアミドとメトキシエチルアクリレートの共重合体があげられる。特に、アクリルアミド基を有するラジカル重合性有機モノマーは、有機無機複合ゲル中で架橋点として働く水膨潤性粘土鉱物との相互作用が強いために、力学強度の高いゲルが得られる。そのため、アクリロイルオキシ基を有する水溶性のラジカル重合性有機モノマーを使用する際にも、アクリルアミド基を有するラジカル重合性有機モノマーを併用することは、ゲルの力学的強度を向上させる理由から好ましい。
本発明における水膨潤性粘土鉱物(B)としては、水に膨潤性を有するものであり、好ましくは水によって層間が膨潤する性質を有するものが用いられる。より好ましくは少なくとも一部が水中で層状に剥離して分散できるものであり、特に好ましくは水中で1ないし10層以内の厚みの層状に剥離して均一分散できる層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。
本発明における水溶性ラジカル重合性有機モノマー(A)に対する水膨潤性粘土鉱物(B)の質量比(W/W)は0.05〜0.7が好ましい。ここで、Wは水溶性ラジカル重合性有機モノマーの質量、Wは水膨潤性粘土鉱物の質量である。W/Wが0.05より小さい場合、ゲルの架橋密度が低くなり、力学的性質が不十分である場合が多い。一方、W/Wが0.7を越えると、ゲルの架橋密度が高くなりすぎて、本発明の金属塩(C)を使用しても、十分に膨潤度が得られない場合が多い。
本発明における有機無機複合ゲルは、水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)とが形成する三次元網目の中に、特定の金属塩(C)と非水媒体(D)からなる均一溶液が包含されているものである。水膨潤性粘土鉱物(B)が架橋点となって水溶性ラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体と三次元網目構造を形成していることから、従来の有機架橋剤を用いて得られる化学架橋三次元網目の中に媒体を含むゲルと比べて極めて高い力学物性を示す。
本発明における有機無機複合ゲルでは、通常の高分子ゲルで使用される多官能のラジカル重合性モノマーなどの有機架橋剤を使用する必要はない。しかし、本発明の目的とする高膨潤性と高力学物性に影響が無い範囲内で使用することは可能である。使用可能な量は使用する有機架橋剤の種類などにより異なるが、通常、ラジカル重合性有機モノマー(A)1モルに対して0.001〜1モル%、好ましくは0.002〜0.2モル%、特に好ましくは0.005〜0.1モル%の範囲である。1モル%を越えると得られるゲルの靱性が低下したり、膨潤性が損なわれる。有機架橋剤には、公知の有機架橋剤が使用可能で、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどの多官能アクリルアミドや、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートやジポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類などが挙げられる。使用する条件で重合溶液に可溶なものが用いられ、水溶性の有機架橋剤が好ましく用いられる。これら有機架橋剤は、通常、ラジカル重合性有機モノマー(A)と一緒に添加され、使用される。
本発明における周期律表の第一族元素若しくは第二族元素の金属塩(C)としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属、及び、マグネシウム、或いはカルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属をカチオンとした塩であって、下記に記載する非水媒体(D)に溶解し均一溶液となる塩が使用される。中でも、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの金属塩は膨潤性を大きく向上させることから、好ましく用いられる。一般に、高分子ヒドロゲルにおいては、無機塩添加によってゲルの膨潤度が大きく低下することが知られている。これに対して、本発明では特定の非水媒体の三次元網目中への膨潤度を上げる効果がある。
本発明で用いる金属塩の対イオン(アニオン)としては、塩素、ヨウ素、フッ素などのハロゲンの単原子イオン、多原子イオン、錯イオン、或いは、塩素、ヨウ素、フッ素などのハロゲンと酸素、イオウ、リンとの多原子イオンや錯イオンが用いられる。更に、取扱性、安全性、コスト、或いは非水媒体への溶解性などの面から、塩素の単原子イオン、塩素酸などの塩素の多原子イオン、および、テトラフルオロほう酸やヘキサフルオロりん酸などのフッ素の多原子イオンが好ましく用いられ、塩素又はフッ素の多原子イオンが特に好ましく用いられる。塩素の単原子イオンとしては塩化リチウムや塩化マグネシウムが、塩素酸としては過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウムなどの過塩素酸塩が、フッ素の多原子イオンとしては四フッ化ほう酸リチウム、四フッ化ほう酸ナトリウム、四フッ化ほう酸カリウムなどのフッ化ホウ酸塩、六フッ化りん酸リチウム、六フッ化りん酸ナトリウム、六フッ化りん酸カリウムなどのフッ化リン酸塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロエタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムなどのフッ化イミド塩やフッ化スルホン酸塩が挙げられる。
本発明における非水媒体(D)としては、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトンなどのラクトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル系溶媒、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、エチルメチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートなどの鎖状および環状のカーボネート系溶媒が用いられる。これらは単独で使用しても複数を混合して用いても構わない。また、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、エタノール、2-メトキシエタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒なども用いることができる。上記の中でも本発明で用いる非水媒体(D)としては、カーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒を用いることが好ましい。
上記非水媒体(D)は、一般に、水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)からなる3次元ネットワーク構造中に含有され難く、膨潤度が極めて小さい。また、得られるゲルは非常に固く、ゲルの特徴である柔軟性が損なわれる。しかし、上述した金属塩(C)を添加することにより、著しく膨潤度が向上し、柔軟で、且つ力学的強度に優れたゲルが得られるようになる。
本発明においては、膨潤度を「ゲルの固形分(乾燥物)に対する非水媒体の質量比」と定義する。また、Rを非水媒体(D)に対する有機無機複ゲルの飽和膨潤度、Rを金属塩(C)を含む非水媒体(D)に対する有機無機複合ゲルの飽和膨潤度とする。本発明では、金属塩(C)を添加しない非水媒体に対するRが0.05以上であって、且つ、10以下、更には6以下、特には4以下のものが好ましく用いられる。金属塩(C)添加による膨潤度の向上は、非水媒体(D)の種類、金属塩(C)の種類や量により異なるが、R/Rが2以上のものが好ましく、3以上のものが特に好ましく用いられる。R/Rの上限については、Rが小さい場合に大きな値となる傾向が見られ、Rが1以上の場合は約50であるが、Rが0.1程度では約200である。なお、有機無機複合ゲルに限らず、一般に、正確な飽和膨潤度を求めることは困難な場合が多いので、本発明においては、膨潤度の膨潤時間依存性を測定し、膨潤度の変化がほぼ飽和した値を飽和膨潤度とした。具体的には、ゲルを均一溶液に1日間浸漬させた後、膨潤度の変化率が2%以下となった時の膨潤度を飽和膨潤度としている。尚、本発明の有機無機複合ゲルは飽和膨潤度以下の任意の膨潤度で使用される。
本発明における周期律表の第一族元素若しくは第二族元素の金属塩(C)の使用量は、通常、非水媒体(D)中に0.05モル/L以上、好ましくは0.1モル/L以上の濃度範囲で用いられる。0.05モル/L未満の場合、膨潤性が十分ではない場合がある。上限は、溶解し得る範囲で使用可能であるが、コストなどの面から、通常、3モル/L以下、好ましくは2モル/L以下で用いられる。かかる周期律表の第一族元素若しくは第二族元素の金属塩(C)を使用すると非水媒体(D)に対する有機無機複合ゲルの膨潤性が著しく増加するが、その理由については必ずしも明確ではないが、非水媒体中で解離したイオンがゲル中のポリマー鎖及び/または粘土鉱物と相互作用し、膨潤性が向上したものと推定される。
本発明においては、上述したラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒、カーボネート系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒以外でも、有機無機複合ゲルに対して膨潤度の低い非水系溶媒に対して、有効に用いられる場合がある。例えば、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、アセトンやブタノンなどのケトン系溶媒、トルエンなどの芳香族炭化水素、などが挙げられる。これらは単独使用でも、複数を混合したものでも良い。
本発明における有機無機複合ゲルは、水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体、水膨潤性粘土鉱物(B)からなる3次元ネットワーク構造を有する有機無機複合ゲルを製造した後、金属塩(C)と非水媒体(D)からなる均一溶液に接触または浸漬させること、或いは、有機無機複合ゲルまたはその乾燥物の上に該均一溶液を塗布するなどの方法などで得ることが可能である。これらは室温下で行っても、加熱しておこなっても構わない。
水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体、水膨潤性粘土鉱物(B)からなる3次元ネットワーク構造を有する有機無機複合ゲルは、特許文献1や非特許文献1などに示されている公知の方法で得ることができる。例えば、水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)と水が含まれる溶液中でラジカル重合性有機モノマー(A)を重合させる方法などが挙げられる。具体的には、ラジカル重合性有機モノマー(A)、水膨潤性粘土鉱物(B)、水が含まれる均質混合溶液を調製した後、公知の重合開始剤と必要に応じて触媒を添加して、モノマーが重合を開始する温度で保持しラジカル重合性有機モノマー(A)を重合させて、ラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)とからなる三次元網目構造体中に水が含まれる有機無機複合ヒドロゲルを形成させた後、乾燥や減圧などの方法により水を除去し、有機無機複合ゲル乾燥物とする方法などを挙げることができる。また、本発明では水を除去する前の有機無機複合ヒドロゲルを金属塩(C)と非水媒体(D)からなる均一溶液に浸漬させるなどの方法で、媒体置換を行い含浸させて有機無機複合ゲルを得ることも可能である。
未反応モノマーやオリゴマー或いは重合開始剤などを除去する目的で、有機無機複合ヒドロゲルを含浸または乾燥前に必要に応じて、水や熱水、或いは水蒸気などを用いて洗浄することも可能である。
重合溶媒として、ラジカル重合性有機モノマー(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)との良好な均質溶液を調製することを目的として、水と有機溶媒を混合した均一混合溶液を使用することも可能である。水に均一に混合する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。溶媒の量は特に規定されないが、通常、重合に使用する全溶媒中の60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30%以下、特に好ましくは15%以下である。60質量%を超えて使用する場合、水膨潤性粘土鉱物(B)の分散性を損なう場合がある。また、重合に際しては、酸素を除くことが好ましく、使用する水又は水溶液は真空脱気処理や或いは窒素やアルゴンなどで溶存酸素を置換する方法で除かれる。
重合を行う際の水又は水溶液の使用量は使用するモノマーや粘土鉱物の種類や量、ゲルの使用目的などにより異なるため一概には規定できないが、通常、モノマー(A)と粘土鉱物(B)の合計質量100質量部に対して、水又は水溶液量は200〜10000質量部、好ましくは250〜5000質量部が使用される。10000質量部を越えると収率が大きく低下し、200質量部未満では重合溶液の調製が難しくなる場合がおおい。
上述したラジカル重合性有機モノマー(A)を重合させる重合反応は、例えば、過酸化物の存在、加熱又は紫外線照射などの慣用の方法を用いたラジカル重合により行わせることができる。ラジカル重合開始剤及び触媒としては、慣用のラジカル重合開始剤及び触媒のうちから適宜選択して用いることができる。特に好ましいものとして、粘土鉱物と強い相互作用を有するカチオン系ラジカル重合開始剤を挙げることができる。具体的には、重合開始剤としては、過酸化物、例えば、ペルオキソ二硫化カリウムやペルオキソ二硫化アンモニウム、アゾ化合物、例えば、和光純薬工業株式会社製のVA−044、V−50、V−501、VA−057などが好ましく用いられる。その他、親水性および疎水性の光重合開始剤やポリエチレンオキシド鎖を有するラジカル開始剤なども用いられる。また触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが好ましく用いられる。重合温度は用いる重合溶液やラジカル重合性モノマー、重合触媒及び開始剤の種類などに合わせて設定される。通常、0〜100℃の範囲が用いられる。重合時間も触媒、開始剤、重合温度、重合溶液量などの重合条件により異なり、一概には規定できないが、一般に数十秒〜数十時間の間で行う。また、重合の雰囲気も窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で行うことは好ましい。有機無機複合ヒドロゲルは、重合溶液を任意の形状の容器に注入したりすることにより、重合後、任意の形状のゲルとして得ることが可能であり、例えば、バルク、ロット、フィルム、エマルジョン、シート、球、微粒子など任意の形状のゲルを得ることが可能であるが、製造上や実用上の点からフィルム、シート、エマルジョンが好ましい。
本発明で得られる有機無機複合ゲルは、非水媒体に対して良好な膨潤性を有するだけでなく、圧縮などの力学的特性にも優れている。力学的性質は膨潤度により大きく異なり、通常、使用される1500%以下の膨潤度では、室温で60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の倍率で圧縮変形させても、ゲルが破壊されたり、或いは、印加した荷重を除去した後、ゲルが大きく塑性変形することが無いものが用いられる。
本発明を実施例にて具体的に説明する。尚、本発明は以下に示す実施例に限られるものではない。
(合成例1)
水溶性のラジカル重合性有機モノマーとして、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA:興人株式会社製)を使用した。粘土鉱物は水膨潤性の合成ヘクトライト(商品名 ラポナイトXLG、日本シリカ株式会社製)を120℃で2時間真空乾燥させて用いた。水は18Ωの超純水を用い、水は使用前に予め3時間以上窒素でバブリングさせて含有酸素を除去してから使用した。
内部を窒素置換した100mLの丸底フラスコに純水47.5g入れたものに、撹拌下で1.6gの合成ヘクトライトと5.0gのDMAAを入れ(粘土鉱物/DMAA=0.32)、35℃で撹拌し透明な均質溶液を得た。この溶液を氷浴に入れ、10分間ゆっくりと撹拌した後、触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED:和光純薬工業株式会社製)32μLを加え、次いで、予め調製した純水10gとペルオキソ二硫化カリウム(KPS:関東化学株式会社製)0.2gからなる重合開始剤の水溶液2.5mLを撹拌下で加えた。厚さ3mm、幅10mmのシリコンゴムをスペーサとし、15cm2のガラス板2枚を用いてゲル調製容器を作成した。重合溶液を窒素雰囲気下でゲル調製容器中に入れた。尚、ゲル調製容器内への重合溶液の導入は窒素雰囲気としたグローブボックス内で行った。20℃で24時間保持することで重合を進行させた。重合溶液は液全体がゲル化していた。得られたフィルム状のヒドロゲルは無色透明であった。ヒドロゲルのフィルムを乾燥させて、フィルム状の有機無機複ゲル乾燥物1を得た。ゲル乾燥物1の合成に使用したモノマー量、クレイ量などを表1にまとめて示す。
(合成例2)
合成例1において、DMAAの代わりに、N,N−イソプロピルアクリルアミド(NIPA:興人株式会社製)を5.7g、合成ヘクトライトを2.0g使用して(粘土鉱物/NIPA=0.35)、合成例1と同じ方法でゲル乾燥物2を得た。ゲル乾燥物2の合成に使用したモノマー量、クレイ量などを表1にまとめて示す。
(合成例3)
合成例1において、使用した水溶性のラジカル重合性有機モノマーを2−メトキシエチルアクリレート(MEA)(アクリックス C−1:東和合成株式会社製)4.6gとDMAA1.5gの混合物を使用した。また、合成ヘクトライトは0.8g使用した(粘土鉱物/モノマー=0.13)。これ以外は合成例1と同じ方法でゲル乾燥物3を得た。ゲル乾燥物3の合成に使用したモノマー量、クレイ量などを表1にまとめて示す。
(合成例4)
合成例3において、合成ヘクトライトの使用量を2.0g(粘土鉱物/モノマー=0.33)とした以外は、合成例3と同じ方法でゲル乾燥物4を得た。ゲル乾燥物4の合成に使用したモノマー量、クレイ量などを表1にまとめて示す。
(合成例5)
合成例3において、合成ヘクトライトの使用量を4.0g(粘土鉱物/モノマー=0.66)とした以外は、合成例3と同じ方法でゲル乾燥物5を得た。ゲル乾燥物5の合成に使用したモノマー量、クレイ量などを表1にまとめている。
(合成例6)
合成例3において、合成ヘクトライトの使用量を0.4g(粘土鉱物/モノマー=0.07)とした以外は、合成例1と同じ方法でゲル乾燥物6を得た。
Figure 2012224732
(実施例1−4)
合成例1〜4で得たフィルム状のゲル乾燥物1〜4(膜厚=0.3−0.4mm)を10×10mmの大きさにカットし、アセトニトリル(特級、和光純薬工業株式会社製)の中に浸漬させた。25℃で7日間保持した後、膨潤度を調べた。3−5日間で膨潤はほぼ飽和した。結果は表2(添加前の膨潤度)に示している。ゲル乾燥物3は膨潤度が5.0と比較的高いものであったが、それ以外については、膨潤度は高いものでも2.0程度で低く、最終的に得られたゲルはかなり固いものであった。アルカリ金属塩として、ヘキサフルオロりん酸リチウム(和光純薬工業株式会社製)を0.2モル/Lとなるように添加した。同じようにフィルム状のゲル乾燥物1〜4を10×10mmの大きさにカットし、アルカリ金属塩を含んだアセトニトリルの均一溶液中に浸漬させた。25℃で3−7日間保持した後、膨潤度を調べた。結果は表2−1(添加後の膨潤度)に示している。膨潤度が著しく向上しているのが判る。実施例1のゲル乾燥物1の場合、膨潤度の増加が一番小さく、6.0だったが、ゲルは柔軟で強度も強いものであった。ゲルを75%まで圧縮し、様子を調べた。尚、圧縮試験は膨潤度10.0として行った。飽和膨潤度が10.0に満たないものは飽和膨潤度で試験を行った。実施例1−4のゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も殆ど見られなかった。
尚、破壊したものを「××」、破壊しないが応力を取り除くとゲルがほぼ完全に変形したもの「×」、破壊しないが応力を取り除くとゲルが大きく変形したもの「△」、破壊しなく、脱応力後の塑性変形も小さなもの「○」、破壊しなく、脱応力後の塑性変形も殆ど無いなもの「◎」とした。尚、脱応力後の塑性変形は脱応力してから1日後の様子を調べた。
圧縮試験は10×10mm、厚さ約3mmの試験片を用い、アイランド工業株式会社製の引張延伸試験機を用い、毎分3mmの速度で70%まで圧縮−脱応力を連続的に行った。
Figure 2012224732
(比較例1−3)
実施例1、2、4に対して、比較例として、ヘキサフルオロりん酸リチウムの代わりにイオン液体である1−ブチル−3メチルイミダゾリウムヘキサフルオロりん酸(bmiPF)(シグマ−アルドリッチ株式会社製)を0.2モル/Lとなるように添加した。実施例1と同じ方法で膨潤度を調べた。結果は表2−2に示す。膨潤度に殆ど変化は見られなかった。膨潤性の低いアセトニトリルに対して、カチオンが異なる塩である1−ブチル−3メチルイミダゾリウムヘキサフルオロりん酸は膨潤性を向上させる効果は見られなかった。
Figure 2012224732
(実施例5、6)
合成例1と4で得たフィルム状のゲル乾燥物1と4(膜厚=0.3−0.4mm)を用いて、実施例1と同じ方法で炭酸プロピレン(PC)(特級、関東化学株式会社製)に対する膨潤度を測定した。結果は表3(添加前の膨潤度)に示している。膨潤度はともに3.0で低く、ゲルはかなり固いものであった。アルカリ金属塩として、ヘキサフルオロりん酸リチウムを0.2モル/Lとなるように炭酸プロピレンに添加して、均一溶液を得た。実施例1と同じ方法で均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果は表3(添加後の膨潤度)に示している。膨潤度が著しく向上しているのが判る。実施例5のゲル乾燥物1の場合、膨潤度は2倍に増加した、ゲルは柔軟で強度も強いものであった。一方、実施例6では膨潤度は20となり非常に大きな値となった。圧縮試験を行った。ゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も小さいものであった。
(比較例4、5)
実施例5、6に対して、比較例として、ヘキサフルオロりん酸リチウムの代わりにイオン液体である1−ブチル−3メチルイミダゾリウムヘキサフルオロりん酸(bmiPF)を0.2モル/Lとなるように添加した。実施例1と同じ方法で膨潤度を調べた。結果を表2−2に示す。膨潤度に殆ど変化は見られなかった。膨潤性の低い炭酸プロピレンに対しても、カチオンが異なる塩である1−ブチル−3メチルイミダゾリウムヘキサフルオロりん酸は膨潤性を向上させる効果は見られなかった。尚、bmiPFの使用量を0.5モル/Lに増加させても膨潤度に変化は見られなかった。
(実施例7、8)
合成例1と4で得たフィルム状のゲル乾燥物1と4(膜厚=0.3−0.4mm)を用いて、γ−ブチロラクトン(特級、和光純薬工業株式会社製)に対する膨潤度を測定した。結果を表3(添加前の膨潤度)に示す。膨潤度は比較的大きいものであった。アルカリ金属塩として、ヘキサフルオロりん酸リチウムを0.05モル/Lとなるようにブチロラクトンに添加し、均一溶液を得た。実施例1と同じ方法で均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表3(添加後の膨潤度)に示す。膨潤度は2−3倍に向上した。圧縮試験を行った。ゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も小さいものであった。
Figure 2012224732
(実施例9、10)
合成例3、4で得たフィルム状のゲル乾燥物3、4(膜厚=0.3−0.4mm)を10×10mmの大きさにカットした。アルカリ金属塩として、過塩素酸リチウム(特級、和光純薬工業株式会社製)を0.5モル/Lとなるようにアセトニトリルに添加して、均一溶液を得た。実施例1と同じ方法で均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表4(添加後の膨潤度)に示す。膨潤度は2−2.5倍に向上した。圧縮試験を行った結果、ゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も殆ど見られなかった。尚、表4には実施例3と4で得たアセトニトリル単独に対する膨潤度も示している。
(実施例11、12、13)
合成例2−4で得たフィルム状のゲル乾燥物2−4(膜厚=0.3−0.4mm)を10×10mmの大きさにカットした。金属塩として、過塩素酸マグネシウム(特級、和光純薬工業株式会社製)を0.5モル/Lとなるように炭酸プロピレンに添加して、均一溶液を得た。実施例1と同じ方法で均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表4(添加後の膨潤度)に示す。膨潤度は著しく増加した。ゲルの圧縮試験を行った結果、ゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も殆ど見られなかった。尚、ゲル乾燥物2と3の炭酸プロピレン単独に対する膨潤度も同様な方法で求め、結果を表4に示す。
Figure 2012224732
(実施例14)
合成例4で得たフィルム状のゲル乾燥物3(膜厚=0.3−0.4mm)を用いて、炭酸エチレン/炭酸ジエチル(EC/DEC)(1/1)混合溶媒に対する膨潤度を実施例1と同じ方法で調べた。結果は表5(添加前の膨潤度)に示している。膨潤度は非常に小さいものであった。アルカリ金属塩として、ヘキサフルオロりん酸リチウムを1.0モル/Lとなるように混合溶媒へ添加した。実施例1と同じ方法で金属塩を含む混合溶媒の均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表5(添加後の膨潤度)に示す。膨潤度は4倍程度向上した。ゲルの圧縮試験を行ったが、破断は見られず、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も殆ど見られなかった。
尚、炭酸エチレンは和光純薬工業株式会社製の特級、炭酸ジエチルは東京化成工業株式会社製の特級を使用した。
(実施例15)
合成例5で得たフィルム状のゲル乾燥物5(膜厚=0.3mm)を用いて、実施例5と同じ方法で炭酸プロピレン(PC)に対する膨潤度を測定した。結果を表5(添加前の膨潤度)に示す。膨潤度はともに1.3で低く、ゲルはかなり固いものであった。アルカリ金属塩として、ヘキサフルオロりん酸リチウムを0.2モル/Lとなるように炭酸プロピレンに添加して、均一溶液を得た。実施例1と同じ方法で均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表5(添加後の膨潤度)に示す。膨潤度は30となり、著しく向上しているのが判る。圧縮試験を行った。ゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も小さいものであった。
(実施例16、17)
ゲル乾燥物2に対して、実施例1と同じ方法でアセトニトリルの0.5モル/Lへキサフルオロりん酸ナトリウム(LiPF6)(和光純薬工業株式会社製)溶液(実施例16)と0.5モル/Lの過塩素酸カリウム(KClO4)(和光純薬工業株式会社製)(実施例17)に対する膨潤度を測定した。結果を表5に示す。共に、膨潤度が著しく向上しているのが判る。圧縮試験を行った。共に、ゲルは圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も小さいものであった。
(実施例18)
ゲル乾燥物2に対して、実施例5と同じ方法で炭酸プロピレンの0.5モル/L過塩素酸カルシウム(Ca(ClO4)2)(和光純薬工業株式会社製)溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表5に示す。膨潤度が著しく向上しているのが判る。圧縮試験を行った。ゲルは圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も極めて小さいものであった。
Figure 2012224732
(実施例19−21)
ゲル乾燥物1(実施例19)、ゲル乾燥物2(実施例20)、ゲル乾燥物4(実施例21)に対して、実施例1と同じ方法でアセトニトリルの0.5モル/Lテトラフルオロほう酸リチウム(LiBF4)(和光純薬工業株式会社製)溶液に対する膨潤度を測定した。結果は表6に示す。いずれの場合も、膨潤度が著しく向上しているのが判る。圧縮試験を行った。いずれの場合も、ゲルは圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も小さいものであった。
Figure 2012224732
(実施例22−24)
ゲル乾燥物6に対して、非水媒体として、炭酸ジエチル(EC)/炭酸エチレン(DEC)(1/1)を用いて、それぞれ1モル/Lヘキサフルオロリン酸リチウム(実施例22)、0.5モル/Lテトラフルオロほう酸リチウム(実施例23)、0.5モル/L過塩素酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)(実施例24)に対する膨潤性を、実施例1と同じ方法で行った。結果を表7に示す。いずれの場合も、膨潤度が著しく向上しているのが判る。圧縮試験を行った。いずれの場合も、ゲルは圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も小さいものであった。
Figure 2012224732
(実施例25−27)
本発明では膨潤性の低い他の非水媒体に対しても、効果が見られる。ゲル乾燥物2−4を用いて、実施例1と同じ方法でテトラヒドロフラン(THF)(特級、和光純薬工業株式会社製)に対する膨潤度を調べた。結果は表8(添加前の膨潤度)に示している。実施例25と26の膨潤度は比較的大きいものであった。アルカリ金属塩として、ヘキサフルオロりん酸リチウムを0.5モル/LとなるようにTHFに添加し、均一溶液を得た。実施例1と同じ方法で均一溶液に対する膨潤度を調べた。結果を表8(添加後の膨潤度)に示す。実施例27では膨潤度は10倍以上向上した。その他も膨潤度は2−3倍に向上した。圧縮試験を行った。ゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も小さく良好なものであった。
Figure 2012224732
(実施例28、29)
ゲル乾燥物3、4を用いて、エタノール(EtOH)(特級、和光純薬工業株式会社製)に対する膨潤度を実施例1と同じ方法で調べた。結果は表9(添加前の膨潤度)に示している。膨潤度は非常に小さいものであった。アルカリ金属塩として、ヘキサフルオロりん酸リチウムを0.5モル/Lとなるように添加した。実施例1と同じ方法で金属塩を含むエタノールの均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表8(添加後の膨潤度)に示す。膨潤度は3.5倍程向上した。ゲルの圧縮試験を行ったが、破断は見られず、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も殆ど見られなかった。
(実施例30)
アルカリ金属塩として、塩化マグネシウム(特級、和光純薬工業株式会社製)を0.5モル/Lとなるようにエタノールに添加して、均一溶液を得た。合成例3で得たフィルム状のゲル乾燥物3(膜厚=0.4mm)を用いて、均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表9(添加後の膨潤度)に示す。膨潤度は約2倍に向上した。圧縮試験を行った。ゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も殆ど見られなかった。塩化ナトリウムや塩化マグネシウムなどの塩化物を含有する水溶液に対して、有機無機複合ゲルは膨潤度が低下し、阻害要因として働く。例えば、ゲル乾燥物3は、水中で190の膨潤度であるが、1モル/Lの塩化マグネシウム水溶液に対して、13と10倍以下、ゲル乾燥物1も水中で75の膨潤度が1モル/Lの塩化マグネシウム水溶液に対しては19に低下する。
(実施例31)
アルカリ金属塩として、塩化リチウム(特級、和光純薬工業株式会社製)を0.5モル/Lとなるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加して、均一溶液を得た。合成例2で得たフィルム状のゲル乾燥物2(膜厚=0.4mm)を用いて、均一溶液に対する膨潤度を測定した。結果を表9(添加後の膨潤度)に示す。膨潤度は約2倍に向上した。圧縮試験を行った。ゲルはいずれも圧縮しても破断すること無く、圧縮応力を取り除いた後も塑性変形も殆ど見られなかった。
Figure 2012224732

Claims (6)

  1. 水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)の重合体と水膨潤性粘土鉱物(B)により形成されるネットワーク構造中に、第一族元素及び第二族元素の金属塩(C)から選ばれる1種以上の溶質が溶解したカーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選択される1種以上の非水媒体(D)を含有する有機無機複合ゲル。
  2. 前記水溶性のラジカル重合性有機モノマー(A)が、アクリルアミド基および/またはアクリロイルオキシ基を有する1種または2種以上のモノマーの混合物であり、モノマー(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)の質量比(W/W)(Wは水溶性のラジカル重合性有機モノマーの質量、Wは水膨潤性粘土鉱物の質量)が0.05〜0.7である請求項1記載の有機無機複合ゲル。
  3. 前記金属塩(C)がリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの金属塩である請求項1または2記載の有機無機複合ゲル。
  4. 前記金属塩(C)のアニオン成分が、塩素又はフッ素の多原子イオンである請求項3記載の有機無機複合ゲル。
  5. 前記金属塩(C)を含有する溶質が、非水媒体(D)中で0.05〜2モル/Lである請求項1〜4のいずれか一つに記載の有機無機複合ゲル。
  6. が非水媒体(D)に対する有機無機複合ゲルの飽和膨潤度、Rが金属塩(C)を含む非水媒体(D)に対する有機無機複合ゲルの飽和膨潤度としたとき、R/Rが2以上であり、Rが1.05〜10、Rが5〜50である請求項1〜5のいずれか一つに記載の有機無機複合ゲル。
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