JP2012215818A - 擬似血管、および、擬似血管の製造方法 - Google Patents

擬似血管、および、擬似血管の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】切開時の状態が実際の血管の場合と近く、かつ、2つの血管を吻合させる手技、特に血管の側面と側面を吻合させる手技等の様々な手技の訓練に広く使用できる擬似血管を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、円筒形状のチューブからなり、外周面側において周方向の引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働くことを特徴とする擬似血管1である。
【選択図】図1

Description

本発明は、外科手術の訓練に用いる擬似血管に関する。
従来から、医師は、外科手術において、血管の切開、その切開部の縫合、血管同士の吻合などの手技を行うことがある。例えば、心臓の冠状動脈の一部が狭窄した場合、医師は、その患者の他の部位から動脈の一部をグラフト(代替血管)として切り出し、そのグラフトを用いて、狭窄箇所を回避する血流路を確保するための血管バイパス手術を行う。
このような手術には、高度に熟練した技術が求められる。そこで、医師は、円筒形状のチューブからなる擬似血管を用いて手技の訓練を行うことがある。なお、実際の血管では、血管壁を軸方向に切開すると、その切開部が周方向に拡開し、盛り上がる。しかし、通常のチューブからなる擬似血管では、その血管壁を軸方向に切開した場合、スリットができるだけで、切開部が周方向に拡開しない。そして、訓練用の擬似血管としては、当然、切開時に実際の血管の場合と近い状態となるものが望まれる。
そこで、例えば、特許文献1では、擬似血管(血管モデル)の一部を埋設した台座に、その擬似血管を外側に引っ張る残留応力を存在させることで、血管壁を軸方向に切開するとその切開部が周方向に拡開するという、実際の血管に近い擬似血管を実現している。
特許第4326011号公報
しかしながら、特許文献1の擬似血管は、擬似血管が台座に埋設された状態で使用されるので、その擬似血管を切開したり縫合したりする手技の訓練には有用であるが、例えば、2つの血管を吻合させる手技、特に血管の側面と側面を吻合させる手技の訓練には、台座が邪魔となって用いることができない。
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、切開時の状態が実際の血管の場合と近く、かつ、2つの血管を吻合させる手技、特に血管の側面と側面を吻合させる手技等の様々な手技の訓練に広く使用できる擬似血管およびその擬似血管の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、円筒形状のチューブからなり、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働くことを特徴とする擬似血管である。
このように、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働くことで、この擬似血管の血管壁を軸方向に切開すると、その切開部が周方向に拡開し、盛り上がる。したがって、切開時の状態が実際の血管の場合と近く、かつ、台座等が必要ないので2つの血管を吻合させる手技、特に血管の側面と側面を吻合させる手技等の様々な手技の訓練に広く使用できる擬似血管を提供することができる。
また、このような擬似血管は、例えば、円筒形状のチューブを、その一端から裏返して外周面と内周面を反転させる工程を含む製造方法により製造できる。
このようにして製造することで、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働く擬似血管を実現することができる。
また、このような擬似血管に用いられる円筒形状のチューブは、円筒状のチューブを裏返して、外周面と内周面を反転させてなるチューブであってもよい。
このようなチューブであれば、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働く。したがって、血管壁を軸方向に切開すると、その切開部が周方向に拡開し、盛り上がる擬似血管を提供することができる。
また、前述する円筒形状のチューブは、前記内周面の断面からなる内周円の中心が前記外周面の断面からなる外周円の中心に対して所定方向にずれていることにより、チューブの厚さが、所定方向の一方側が肉薄となるとともに他方側が肉厚となっているチューブであってもよい。
このようなチューブを裏返して外周面と内周面を反転させた場合、チューブ内に存在する残留応力は、チューブの一方側の肉薄部分に比べて、チューブの他方側である肉厚部分の方が大きい。
そのため、肉薄部分であるチューブの一方側を切開すると、通常のチューブを切開した場合に比べて、切開部の拡開が大きくなる。したがって、チューブの材料を変更しなくても、切開部の拡開が大きい擬似血管を提供することができる。
また、円筒形状のチューブについて、前述するようにチューブの厚さが所定方向の一方側が肉薄となるとともに他方側が肉厚となっているチューブの場合に、外周円と内周円とが前記所定方向に長い楕円形であってもよい。
チューブの厚さが所定方向の一方側が肉薄となるとともに他方側が肉厚となっているチューブの場合、チューブ内に存在する残留応力は、チューブの一方側の肉薄部分に比べて、チューブの他方側である肉厚部分の方が大きい。そのため、反転させた場合にチューブが所定方向に直交する方向に広がってしまい、擬似血管が真円とならないおそれがある。
よって、当初から真円ではない、外周面と内周面が所定方向に長い楕円形のチューブを用いることによって、反転させた場合に所定方向に直交する方向に広がって略真円となる擬似血管を提供することができる。
また、円筒形状のチューブは、シート部材を円筒形状となるように反らせるとともに、シート部材の両端を接着してなるチューブであってもよい。
このようなシート部材により円筒形状のチューブを形成すれば、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働く擬似血管を提供することができる。
また、たとえば、一方側に反ったシート部材を用いれば、チューブに働く引張応力と圧縮応力とを変更できる。したがって、チューブの材料を変更しなくても、切開部の拡開の程度、及び盛り上がりの程度が調整された擬似血管を提供することができる。
なお、このような擬似血管は、シート部材を円筒形状となるように反らせる工程と、円筒形状に反ったシート部材の両端部を接着する工程と、を含む製造方法により製造できる。
また、前述する擬似血管が外周面又は内周面にスリットを備えていてもよい。
これによれば、スリットが外周面側において働く引張応力、又は、内周面側において働く圧縮応力を弱める。したがって、チューブの材料を変更しなくても、切開部の拡開の程度、又は盛り上がりの程度を小さく抑えた擬似血管を提供することができる。
また、擬似血管は、チューブの外周面を被覆する外層又は内周面を被覆する内層をさらに備えており、チューブの厚さは、外層又は内層の厚さ分だけ薄く形成されていてもよい。
前記する擬似血管によれば、実際の血管構造の外膜又は内膜に相当する外層又は内層を備えるため、実際の血管を切開する状態に近い感触を体験することができる。
また、外層又は内層の厚さ分だけ厚さが薄いチューブを使用するため、チューブに働く引張応力と圧縮応力が弱まる。さらに、残留応力が存在しない外層又は内層により擬似血管全体としての引張応力と圧縮応力が弱まる。したがって、チューブの材料を変更させなくても、切開部の拡開の程度、及び盛り上がりの程度を小さく抑えた擬似血管を提供することができる。
また、本発明は、中空部を有する円筒形状のチューブである第1チューブと、前記第1チューブの内径よりも大きい外径を有する円筒形状のチューブであって、前記第1チューブの中空部に接触して配置された第2チューブと、を備え、第1チューブにおいて周方向に引張応力が働き、第2チューブにおいて周方向に圧縮応力が働くことを特徴とする擬似血管である。
このように、第1チューブにおいて周方向に引張応力が働き、第2チューブにおいて周方向に圧縮応力が働くことで、この擬似血管の血管壁を軸方向に切開すると、その切開部が周方向に拡開し、盛り上がる。したがって、切開時の状態が実際の血管の場合と近く、かつ、台座等が必要ないので2つの血管を吻合させる手技、特に血管の側面と側面を吻合させる手技等の様々な手技の訓練に広く使用できる擬似血管を提供することができる。
また、このような擬似血管は、例えば、第1チューブの中空部を広げる工程と、中空部を広げた第1チューブに、外径が第1チューブの内径よりも大きい第2チューブを内挿する工程と、を含む製造方法により製造できる。
このようにして製造することで、第1チューブにおいて周方向に引張応力が働き、第2チューブにおいて周方向に圧縮応力が働く擬似血管を実現することができる。
本発明によれば、切開時の状態が実際の血管の場合と近く、かつ、2つの血管を吻合させる手技、特に血管の側面と側面を吻合させる手技等の様々な手技の訓練に広く使用できる擬似血管を提供することができる。
(a)は本実施形態の擬似血管の斜視図であり、(b)は(a)のA−A端面図であり、(c)はその擬似血管が切開された様子を示す斜視図であり、(d)は(c)のB−B端面図である。 (a)〜(e)は、通常のチューブを、外周面と内周面を反転させることで擬似血管とする場合の製造の各工程を示す斜視図である。 (a)は本実施形態の第1チューブの斜視図であり、(b)は第1チューブの中空部を広げた場合の様子を示す斜視図であり、(c)は中空部を広げた第1チューブに第2チューブを内挿する直前の様子を示す斜視図であり、(d)は第1チューブに第2チューブを内挿した様子を示す斜視図であり、(e)は(d)のC−C端面図である。 (a)は比較例の擬似血管の斜視図であり、(b)は(a)のD−D端面図であり、(c)はその擬似血管が切開された様子を示す斜視図であり、(d)は(c)のE−E端面図である。 (a)は変更例1の擬似血管の斜視図であり、(b)は変更例1の擬似血管を軸線方向から見た図であり、(c)は変更例1に用いられたチューブの反転前を軸線方向から見た図であり、(d)は変更例2の擬似血管を軸線方向から見た図であり、(e)は変更例2に用いられたチューブの反転前を軸線方向から見た図である。 (a)は変更例3の擬似血管を軸線方向から見た図であり、(b)は変更例3に用いられた反転前のチューブを軸線方向から見た図である。 (a)は変更例4の擬似血管の斜視図であり、(b)は(a)のF−F端面図である。 (a)〜(d)は、平坦な又は湾曲したシート部材を反らせることによって、擬似血管を製造する各工程を示す斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する。)について、図面を参照しながら説明する。
理解を容易にするために、まず、比較例として、従来の擬似血管の一例について説明する。図4(a)(b)に示すように、比較例の擬似血管101は、円筒形状のチューブからなり、内部に中空部102を有している。擬似血管101の材質は、実際の血管と同程度の柔軟性や強度を有するものであり、例えば、シリコーンやポリビニルアルコールである。なお、擬似血管101では、どの部分にも、周方向の残留応力は特に存在しない。
このような擬似血管101の血管壁をメス等の切開器具によって軸方向に切開すると、図4(c)(d)に示すように、スリット状の切開部103ができるだけで、その切開部103は周方向に拡開しない。
(第1実施形態)
次に、第1実施形態の擬似血管1について説明する。図1(a)に示すように、本実施形態の擬似血管1は、円筒形状のチューブからなり、内部に中空部2を有している。擬似血管1の材質は、実際の血管と同程度の柔軟性や強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、シリコーンやポリビニルアルコールであればよい。また、擬似血管1の外径と厚さは、実際の動脈等の血管のサイズを考慮し、例えば、冠動脈を想定した場合、外径が0.5〜3.5mm程度、厚さが0.1〜1.0mm程度とすればよく、模擬する動脈等の脈管の解剖学的な形状に基づいて、外形、厚みを設定すればよい。
図1(b)に示すように、擬似血管1では、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働く。つまり、破線部分を基準にした場合、外周面側では、周方向の引張応力として矢印aの向きの力が働いているが、内周面側では、周方向の圧縮応力として矢印bの向きの力が働いている。
このような擬似血管1の血管壁をメス等の切開器具によって軸方向に切開すると、図1(c)(d)に示すように、実際の血管の場合と同様、切開部3が周方向に拡開し、盛り上がる。
したがって、医師は、この擬似血管1を用いることで、血管の切開、その切開部の縫合のほか、台座等がないことで2つの血管の吻合、特に血管の側面と側面との吻合の訓練を行うことができる。
次に、擬似血管1の製造方法について説明する。製造方法は、通常のチューブを、外周面と内周面を反転させることで擬似血管1とする方法である。
図2に示すように、中空部12を有する通常のチューブ11(図4の擬似血管101と同様のチューブ)について(図2(a)参照)、一端から徐々に裏返していくことによって(図2(b)〜(d)参照)、擬似血管1を製造することができる(図2(e)参照)。つまり、このようにして製造することで、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働く擬似血管1(図1(b)参照)を実現することができる。なお、この製造は手動でも自動でもいずれでもよい。また、図2では内側から外側に向けて反転させる一例を示したが、これとは逆に外側から内側に向けて反転させるようにしてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の擬似血管1aについて説明する。擬似血管1aは、図3(d)に示すように、第1チューブ21と第2チューブ31との二つのチューブを組み合わせて構成される。
第1チューブ21と第2チューブ31のそれぞれは、中空部22、32が形成されており、また、通常のチューブ(図4の擬似血管101と同様のチューブ)であって、どの部分にも、周方向の残留応力は特に存在していないものである。
そして、第2チューブ31は、第1チューブ21の内径よりも大きい外径を有するように形成されている。そして、第1チューブ21の中空部22内に第2チューブ31が接触して配置されることにより、第2実施形態に係る擬似血管1aが構成されている。
擬似血管1aの構成によれば、擬似血管1aの外周面側にある第1チューブ21は、内周面側にある第2チューブ31によって、径方向の外側に押圧されて、図3(e)に示すように、周方向に引張応力が働く。一方で、擬似血管1aの内周面側にある第2チューブ31は、外周面側にある第1チューブ21によって、径方向の内側に押圧されて、図3(e)に示すように、内周面側において周方向に圧縮応力が働くこととなる。よって、この擬似血管1aを切開すれば、第1実施形態の擬似血管1と同様に、切開部が周方向に拡開し、盛り上がる。
続いて、擬似血管1aの製造方法について説明する。擬似血管1aの製造方法では、まず、通常のチューブ(図4の擬似血管101と同様のチューブ)である第1チューブ21(図3(a)参照)の中空部22を、外部装置(不図示)による第1チューブ21の外周面の吸着および引張、もしくは、中空部22への円筒形部材(不図示)の挿入等によって、広げる(図3(b)参照)。
なお、第1チューブ21と第2チューブ31の外径と厚さは、例えば、冠動脈を想定した場合、ともに、外径が0.5〜3.5mm程度、厚さが0.05〜0.95mm程度であればよい。ただし、第2チューブ31の外径が第1チューブ21の内径よりも大きければ、第1チューブ21と第2チューブ31の外径や厚さが異なっていてもよく、例えば、冠動脈を想定した場合、第1チューブ21と第2チューブ31から実現される擬似血管1a(1)の外径が0.5〜3.5mm程度、厚さが0.1〜1.0mm程度となればよい。
次に、中空部22を広げた第1チューブ21に、通常のチューブ(図4の擬似血管101と同様のチューブ)であって中空部32を有する第2チューブ31を内挿(内側に挿入)し、さらに、第2チューブ31の外周面と第1チューブ21の内周面を接着処理する(図3(c)(d)参照)。
また、第2チューブ31を折り畳んで第1チューブ21に内挿した後、第2チューブ31を広げ、第2チューブ31の外周面と第1チューブ21の内周面を接着処理してもよい。
このようにして製造することで、第1チューブにおいて周方向に引張応力が働き、第2チューブにおいて周方向に圧縮応力が働く擬似血管1a、すなわち、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働く擬似血管1aを実現することができる(図3(d)(e)参照)。
なお、擬似血管1aの中空部2a(32)は、第1チューブ21に内挿される前の第2チューブ31における中空部32(図3(c)参照)と比較して、第1チューブ21の内周面から受ける圧力のため、軸方向に垂直な面の断面積が少し小さくなっており、逆に第1チューブ21の外径は大きくなっている。また、この製造は手動でも自動でもいずれでもよい。また、接着処理は必須ではなく、状況に応じてその処理の有無を使い分ければよい。
さらに、第2チューブを第1チューブに内挿する際、第1チューブを広げるのではなく、第2チューブの外径が小さくなるように圧縮してもよく、また、第1チューブを広げるとともに、第2チューブを圧縮してもよい。
そのほか、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。例えば、擬似血管1は、直線状のものに限らず、曲線状のものや、分岐を有するものであってもよい。
また、擬似血管1の断面の形状は、円に限らず、楕円等の他の形状であってもよい。
さらに、1つめの方法におけるチューブは、多層であってもよく、また、その場合に各層が異なる素材からなるものであってもよい。
さらに、2つめの方法では2つのチューブを用いたが、本発明はこれに限らず、3つ以上のチューブを用いてもよい。ただし、その際は少なくとも1つのチューブを広げる、もしくは圧縮しなければ挿入できないチューブの組み合わせであることが条件となる。
以上、切開部を切開した場合、切開部が周方向に拡開して、盛り上がる擬似血管1、1aについて説明したが、この擬似血管1、1aによれば、切開部における拡開の程度と盛り上がりの程度とは、チューブを構成する樹脂材料の弾性力によって決まるところが大きい。なお、実際の動脈等の脈管を切開した場合、切開部における拡開の程度と盛り上がりの程度は、脈管ごとに異なるものである。よって、擬似血管の切開部における拡開の程度と盛り上がりの程度は、模擬する脈管と同程度となることが望ましい。
よって、以下においては、チューブを構成する樹脂材料を変更することなく、切開部における拡開の程度と盛り上がりの程度が調整された擬似血管1b〜1eについて説明する。
(変更例1)
まず、第1実施形態の擬似血管1の変更例である擬似血管1bについて説明する。
擬似血管1bは、図5(a)及び(b)に示すように、裏返すことにより外周面と内周面とが反転したチューブ40を用いるとともに、その反転後のチューブ40の外周面に、3つのスリット41が形成された擬似血管である。なお、チューブ40は、第1実施形態の擬似血管1を構成するチューブであり、詳細な説明は省略する。
このスリット41は、図5(a)に示すように、チューブ40の中心軸に対し平行となるよう直線状に形成されている。また、スリット41の深さは、図5(b)に示すように、チューブ41の厚さの半分以下となるように形成されている。
この擬似血管1bによれば、チューブ40の外周面に形成された3つのスリットが、チューブ40の外周面側で働く引張応力(図1(b)参照)を低減させる。よって、スリット41が形成されていない擬似血管1に比べて、切開部の拡開の程度を小さくすることができる。
一方で、擬似血管1bの内周面には、スリット41が形成されていない。そのため、擬似血管1bの内周面側の周方向に働く圧縮応力は、擬似血管1と同じであり、開口時の盛り上がりの程度が同等となる。
以上より、擬似血管1bによれば、切開時の盛り上がりの程度を維持しつつ、擬似血管1に比べて、切開部の拡開を抑えることが可能となる。
なお、擬似血管1bの製造方法について、チューブ40の内周面と外周面を反転させた後、反転後のチューブ40の外周面にスリット41を形成することにより製造できる。
または、図5(c)に示すように、残留応力が存在しない状態のチューブ40の内周面に、3つのスリット41を形成してから、チューブ40の内周面と外周面を反転させることによっても、擬似血管1bを製造することができる。
さらに、擬似血管1bについては、チューブ40の外周面に形成されるスリット41の深さ、幅、数を変更することによっても、切開部の拡開の程度を調整することができる。
具体的には、切開部の拡開の程度をより小さく調整したい場合には、スリット数を増加させること、スリットの深さをより深くすること、スリットの幅を大きくすることによって、切開部の拡開の程度を小さくすることができる。
そのほか、前述したスリット41は、擬似血管1bによれば、直線状であって、かつ、チューブ40の中心軸に平行となるように形成されているが、本発明はこれに限るものでない。チューブ40の周方向に働く引張応力を弱めることができれば、スリット41は、直線状でなくてもよく、また、チューブ40の中心軸に対して平行でなくてもよい。
なお、スリット41の深さがチューブの厚さの半分以下となるように形成されているのは、引張応力が存在する部分が、チューブ40の厚さの半分までだからである(図1(b)参照)。
(変更例2)
つぎに、図5(d)に示すように、第1実施形態の擬似血管1の変更例であって、切開部の盛り上がりを抑えた擬似血管1cについて説明する。
擬似血管1cは、図5(d)に示すように、裏返すことにより外周面と内周面とが反転したチューブ50を用いるとともに、その反転後のチューブ50の内周面に、3つのスリット51が形成された擬似血管である。
なお、このスリット51は、チューブ50の中心軸に対し平行になるよう直線状に形成されたものであって、かつ、深さがチューブ51の厚さの半分以下となるように形成されている。また、チューブ50は、第1実施形態の擬似血管1を構成するチューブであり、詳細な説明は省略する。
擬似血管1cによれば、スリット51がチューブの内周面側に働く圧縮応力を低減させるため、スリット51が形成されていない擬似血管1に比べて、切開部の盛り上がりを小さく抑えることができる。一方で、擬似血管1cの外周面側には、スリット51が形成されていないため、擬似血管1cの外周面側に働く引張応力は、擬似血管1と同じであり、切開時の拡開の程度が同等となる。
以上、擬似血管1cによれば、切開部の拡開の程度を維持しつつ、擬似血管1に比べて、切開部の盛り上がりを抑えることが可能となる。
なお、擬似血管1cの製造方法については、チューブ50の内周面と外周面を反転させた後に、チューブ50の内周面にスリット51を形成することにより製造できる。また、図5(e)に示すように、反転させる前のチューブ50の外周面に3つのスリット41を形成してから、内周面と外周面とを反転させることによっても、擬似血管1cを製造することができる。なお、スリット51は、変更例1のスリット41と同様に、深さ、幅、数を変更することによっても、切開部の程度を調整することができ、直線状に限られず、チューブ50の中心軸に対して平行でなくてもよい。
(変更例3)
つぎに、図6(a)に示すように、不均一な厚みからなるチューブ60からなる擬似血管1dについて説明する。
まず、擬似血管1dの製造方法から説明する。図6(b)は、擬似血管1dに用いられるチューブ60の断面図を示したものである。
図6(b)に示すように、チューブ60は、チューブ60の外周面の断面からなる外周円が上下方向に長い楕円形(以下、単に「外周円」という。)となっており、かつ、チューブ60の内周面の断面からなる内周円も上下方向に長い楕円形(以下、単に「内周円」という。)となっている。
そして、チューブ60は、外周円の中心に対して、内周円の中心が上方にあるように形成されており、上方から下方に向かって、チューブ60の厚みが次第に肉厚となるように形成されている。なお、チューブ60の上部の厚さは、模擬する動脈等の脈管の厚さとなるように形成されている。
つぎに、チューブ60を裏返して外周面と内周面を反転させることによって、図6(a)に示すように、外周円と内周円とが略真円となった擬似血管1dが製造される。
なお、擬似血管1dによれば、下部側が最も厚みが大きいため、チューブ60の他の部位に比べて、下部側に生じる残留応力は大きいものとなる。そのため、図6(b)に示すチューブ60を反転すると、下部チューブ60の下部側の残留応力により、左右方向に広がって、図6(a)に示すように、チューブ60が略真円となる。
以上、擬似血管1dの製造方法について説明したが、この製造方法によれば、第1実施形態の擬似血管1と比較して、下部側に強い残留応力が存在する擬似血管1dを製造できる。
そして、擬似血管1dにおいて、模擬する動脈等の脈管の厚さとなるように形成された上部側を切開すると、下部側に存在する強い残留応力によって、第1実施形態の擬似血管1に比べて、切開部の拡開が大きくなる。よって、擬似血管1dによれば、擬似血管1に比べて、切開部の拡開の程度を大きくすることが可能となる。
(変更例4)
つぎに、第1実施形態の擬似血管1の変更例である擬似血管1eについて説明する。擬似血管1eは、図7(a)に示すように、チューブ70と、そのチューブ70の外周面側を被覆する外層71との2層構造からなる。
チューブ70は、第1実施形態で説明した擬似血管1と同じ製造方法であって、裏返して外周面と内周面を反転させることにより、残留応力が存在するチューブ70である。
外層71は、チューブ70の外周面をコーティングする薄い層であって、中空部の両端を封止したチューブ70を未硬化の樹脂が入った樹脂槽に浸し、外周面に付着した樹脂を硬化させることにより形成された層である。
また、外層71は、チューブ70の外径よりも大きい内径を有する円筒状の型にチューブ70を内挿し、円筒状の型とチューブ70との隙間に樹脂を流し込んで成型することにより形成してもよい。
ここで、擬似血管1eは、切開部が模擬する動脈等の脈管の厚さとなるように、所定の外径と厚さ、たとえば、外径が1.0mm、厚さが0.4mmとなるように形成されている。
よって、チューブ70は、外周側に形成される外層71の厚みを考慮して、たとえば、外径が0.9mm、厚さが0.3mmとなるチューブが使用されており、一方で、外層71は、厚みが0.1mmとなるように形成されている。
以上、擬似血管1eの構成を説明したが、擬似血管1eによれば、2層構造からなるため、実際の血管構造に近い擬似血管であるといえる。つまり、チューブ70が血管の中膜(なお、ここでいう「中膜」には、中膜の外側及び内側にある弾性板が含まれるものとする。)に相当するとともに、チューブ70をコーティングする外層71が、中膜の外側にある外膜に相当する。したがって、擬似血管1eによれば、中膜と外膜とを備えた擬似血管を切開することができ、実際の血管を切開する状態に近い感触を体験できる。
さらに、擬似血管1eは、外層71の厚さ(本実施形態では、0.1mm)を考慮した分だけ、厚みが小さいチューブ70を使用している。なお、前述した第1実施形態の擬似血管1によれば、模擬する動脈等の脈管と同程度な厚みを有するチューブ11を用いられている。よって、擬似血管1eによれば、用いるチューブ70の厚さが薄くなるため、チューブ70に存在する残留応力が小さくなり、さらには、残留応力が存在しない外層71により擬似血管1e全体としての引張応力と圧縮応力が弱まり、切開部の拡開と盛り上がりを小さく抑えることができる。
なお、外層71の材料である樹脂は、熱硬化樹脂、光硬化樹脂などがあげられ、本発明において特に限定されるものでないが、チューブ70との接着性の観点から、チューブ70の材料と同じ樹脂であれば、外層71とチューブ70との接着性は向上するため、同じ材料の樹脂を使用するのが望ましい。
以上、第1実施形態の擬似血管1の変更例として、擬似血管1b〜1eについて説明したが、二つのチューブを組み合わせてなる擬似血管1aの変更例としては、外側にある第1チューブ21の内径をより小さくすること、又は、内側にある第2チューブの外径をより大きくすることによって、残留応力を強めることが可能である。
一方で、第2チューブ31の外径が第1チューブ21の内径よりも大きいという条件下で、外側にある第1チューブ21の内径をより大きくすること、又は、内側にある第2チューブの外径をより小さくすることにより、残留応力を弱めることが可能である。
以上、実施形態に係る擬似血管1、1aと、その変更例の擬似血管1b〜1eについて説明したが、本発明は上記説明したものに限定されない。
擬似血管1と擬似血管1b〜1eにおいて、チューブ11、40、50、60、70は、当初から樹脂を円筒形状に成形してなるチューブを用いていたが、たとえば、図8(a)に示すように、平坦なシート部材80を用いてもよい。
ただし、平坦なシート部材80を用いる場合には、次のような製造方法により、残留応力が存在するチューブとする必要がある。
平坦なシート部材80を、図8(b)及び(c)に示すように、平坦なシート部材80を反らせる(湾曲させる)。そして、図8(d)に示すように、平坦なシート部材80の両端同士が当接する程度反らせて、シート部材80を円筒形状とする。そして、円筒形状となったシート部材80の両端部を接着して、チューブ81を製造する。
このような製造方法によって製造されたチューブ81によれば、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働いているため、擬似血管1として用いることができる。
そのほか、チューブ81の製造に関し、平坦なシート部材80に替えて、図8(a)に示すように、一方の面側に向かって中央部が凸となるように湾曲したシート部材80aであってもよい。このように当初から湾曲したシート部材80aを用いることにより、チューブ81に生じる残留応力の変更させることが可能となり、切開部が所望の拡開と盛り上がりを有する擬似血管を製造することが可能となる。
なお、湾曲したシート部材80aを用いてチューブ81を製造する場合について簡単に説明する。図8(b)及び(c)に示すように、シート部材80aの中央部を他方の面側に向かって凸となるように、徐々に折り曲げる。そして、図8(d)に示すように、両端部が当接する程度折り曲げて、その両端部を接着させる。これによれば、平坦なシート部材80を用いて製造した場合に比べて、存在する残留応力が大きいチューブ81を製造することができる。
一方で、チューブ81に存在する残留応力を小さくしたい場合には、シート部材80aの中央部が凸となる向きが変わらないように、折り曲げることによって製造できる。
また、2層構造である擬似血管1eに関し、実際の血管構造における内膜に相当するものとして、擬似血管1eの内周面側にさらに薄膜である内層を形成してもよい。これによれば、より実際の血管を切開する状態に近い感触を体験することができるからである。
さらに、内層を備えた擬似血管1eによれば、用いるチューブ70の厚さがさらに薄くなるとともに、残留応力が存在しない内層が擬似血管1e全体としての引張応力と圧縮応力を弱めるため、切開部の拡開と盛り上がりをさらに小さく抑えることができる。
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であり、たとえば、上述した実施形態に示した構成を組み合わせてもよい。たとえば、擬似血管1dの最も外側に、擬似血管1eで示した外層41を形成してもよい。
1、1a、1b、1c、1d、1e 擬似血管
2、2a、12、22、32 中空部
3 切開部
11、21、31、40、50、60、70、81 チューブ(第1チューブ、第2チューブを含む。)
41、51 スリット
71 外層
80、80a シート部材
101 擬似血管
102 中空部
103 切開部

Claims (11)

  1. 円筒形状のチューブからなり、外周面側において周方向に引張応力が働き、内周面側において周方向に圧縮応力が働くことを特徴とする擬似血管。
  2. 前記円筒形状のチューブは、円筒状のチューブを裏返して外周面と内周面を反転させてなるチューブであることを特徴とする請求項1に記載の擬似血管。
  3. 前記円筒形状のチューブは、前記内周面の断面からなる内周円の中心が前記外周面の断面からなる外周円の中心に対して所定方向にずれていることにより、チューブの厚さが、所定方向の一方側が肉薄となるとともに他方側が肉厚となっていることを特徴とする請求項2に記載の擬似血管。
  4. 前記外周円と前記内周円とが前記所定方向に長い楕円形であることを特徴とする請求項3に記載の擬似血管。
  5. 前円筒形状のチューブは、シート部材を円筒形状となるように反らせるとともに、シート部材の両端を接着してなるチューブであることを特徴とする請求項1に記載の擬似血管。
  6. 外周面又は内周面にスリットを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の擬似血管。
  7. 前記擬似血管は、前記チューブの外周面を被覆する外層又は内周面を被覆する内層をさらに備え、
    前記チューブの厚さは、前記外層又は内層の厚さ分だけ薄く形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の擬似血管。
  8. 中空部を有する円筒形状のチューブである第1チューブと、
    前記第1チューブの内径よりも大きい外径である円筒形状のチューブであって、前記第1チューブの中空部に接触して配置された第2チューブと、を備え、
    前記第1チューブにおいて周方向に引張応力が働き、前記第2チューブにおいて周方向に圧縮応力が働く
    ことを特徴とする擬似血管。
  9. 請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の擬似血管の製造方法であって、
    円筒形状のチューブを、その一端から裏返して外周面と内周面を反転させる工程を含む
    ことを特徴とする擬似血管の製造方法。
  10. 請求項5に記載の擬似血管の製造方法であって、
    シート部材を円筒形状となるように反らせる工程と、
    円筒形状に反った前記シート部材の両端部を接着する工程と、を含む、
    ことを特徴とする擬似血管の製造方法。
  11. 請求項8に記載の擬似血管の製造方法であって、
    前記第1チューブの中空部を広げる工程と、
    前記中空部を広げた第1チューブに、外径が前記第1チューブの内径よりも大きい前記第2チューブを内挿する工程と、を含む
    ことを特徴とする擬似血管の製造方法。
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