JP2012214324A - 窒化ガリウム結晶の成長方法 - Google Patents

窒化ガリウム結晶の成長方法 Download PDF

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Abstract

【課題】攪拌構造体を内部に配置する坩堝のセットを容易とさせることが可能な窒化ガリウム結晶の成長方法の提供。
【解決手段】フラックス法を用いた窒化ガリウム結晶の成長方法であって、ガリウム3bの融点よりも高い融点を有するフラックス剤としてのナトリウム3aを溶融状態で坩堝11内に保持させると共に、溶融状態のナトリウム3aに浸るように攪拌構造体52,80を坩堝11内に配置するフラックス剤供給工程と、フラックス剤供給工程の後に、ナトリウム3aの融点未満の温度まで冷却して、ナトリウム3aを上記攪拌構造体と共に固化させる冷却工程と、冷却工程の後に、ガリウム3bの融点以上、且つ、ナトリウム3aの融点未満の温度で、坩堝11内において固化させたナトリウム3aの上にガリウム3bを保持させる原料供給工程と、を有するという手法を採用する。
【選択図】図4

Description

本発明は、窒化ガリウム結晶の成長方法に関するものである。
次世代半導体材料として期待されている窒化ガリウム(GaN)の製法の一つとしては、数MPaの高圧窒素雰囲気中、800℃〜1000℃のNa/Ga融液に結晶担持体(例えば、サファイヤ+GaN層からなる種基板)を浸漬させ、その結晶担持体上にGaN結晶を成長させる結晶成長方法(所謂、フラックス法)が知られている。
下記特許文献1には、フラックス法において、余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得るべく、混合融液を攪拌する攪拌構造体(攪拌翼や邪魔板等)を備える結晶成長装置が開示されている。
特開2005−247615号公報
フラックス法を実施するには、先ず、坩堝内に、原料であるガリウム(Ga)やフラックス剤(例えば、ナトリウム(Na))を供給する必要があるが、ガリウムやフラックス剤は、固体状態であると嵩張るため、攪拌構造体を備える場合は液体状態で供給することが好ましい。しかしながら、ガリウムとフラックス剤とを溶融させると、溶融したガリウムとフラックス剤とが反応して合金化し、この合金が、上記攪拌構造体を内部に配置する坩堝のセットを困難とさせる場合がある。具体的には、当該合金が、坩堝内に配置された邪魔板を浮き上がらせ、また、混合融液への攪拌翼の差し込みを妨害し、さらに、この影響で坩堝の蓋が閉められないことがある。
本発明は、攪拌構造体を内部に配置する坩堝のセットを容易とさせることが可能な窒化ガリウム結晶の成長方法の提供を目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、坩堝内に配置された攪拌構造体を用いてガリウムとフラックス剤との混合融液を攪拌しつつ、窒素ガスを上記混合融液に溶解させるフラックス法を用いた窒化ガリウム結晶の成長方法であって、上記ガリウムよりも融点が高い上記フラックス剤を溶融状態で上記坩堝内に保持させると共に、溶融状態の上記フラックス剤に浸るように上記攪拌構造体を上記坩堝内に配置するフラックス剤供給工程と、 上記フラックス剤供給工程の後に、上記フラックス剤の融点未満の温度まで冷却して、上記フラックス剤を上記攪拌構造体と共に固化させる冷却工程と、上記冷却工程の後に、上記ガリウムの融点以上、且つ、上記フラックス剤の融点未満の温度で、上記坩堝内において固化させた上記フラックス剤の上に上記ガリウムを保持させる原料供給工程と、を有するという手法を採用する。
この手法を採用することによって、本発明では、フラックス剤を坩堝内で一度全量溶かした後に攪拌構造体と共に固化させ、当該固化させたフラックス剤の上に、ガリウムの融点以上、且つ、フラックス剤の融点未満でガリウムを保持させる。これにより、坩堝内においてフラックス剤とガリウムとを固液分離状態とさせることができ、フラックス剤は安定した固体状態であるため、ガリウムとの合金化が抑制され、また、ガリウムは液体状態であるため、原料の嵩張りが低減され、さらに、ガリウムがフラックス剤の表面を覆うことで、フラックス剤の酸化を防止することができる。
したがって、本発明によれば、攪拌構造体を内部に配置する坩堝のセットを容易とさせることができる。
本発明の実施形態における窒化ガリウム製造装置を示す構成図である。 本発明の実施形態における邪魔板を示す斜視図である。 本発明の実施形態における坩堝のセット手法を説明するための図である。 本発明の実施形態における坩堝のセット手法を説明するための図である。 本手法を採用しなかった場合の参考図である。 本発明の別実施形態における攪拌構造体を示す断面図である。 本発明の別実施形態における攪拌構造体を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明の実施形態における窒化ガリウム製造装置1を示す構成図である。
窒化ガリウム製造装置1は、フラックス法により種基板(結晶担持体)2上に窒化ガリウム(GaN)結晶を成長させ製造するものであり、種基板2及び混合融液3を保持する坩堝11とその外側を囲う外容器13とで構成される反応容器10と、反応容器10の外側を囲う断熱容器20と、断熱容器20の外側を囲う圧力容器30と、混合融液3を攪拌する攪拌装置40と、を有する。
坩堝11は、混合融液3を内部に保有する。この混合融液3は、原料となるガリウム(Ga)と、フラックス剤としてナトリウム(Na)とが溶融して混合したものである。なお、フラックス剤としては、ナトリウムの他に、他のアルカリ金属、あるいは、アルカリ土類金属等を用いることもできる。坩堝11は、その底部に種基板2を載置し、内部の混合融液3に浸漬させる構成となっている。坩堝11は、アルミナ、または、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、または、イットリアからなる耐熱性のセラミックス材から形成されている。
坩堝11の上部の開口部には、坩堝11と同一の材料から形成された蓋部材12が載置され、当該上部開口が閉塞されている。
坩堝11の外側を囲う外容器13は、ステンレス鋼から形成されている。外容器13には、外部からGaN結晶の原料となる窒素ガス(N)を導入する窒素ガス供給ポート17が接続されており、反応容器10内に窒素ガスが充填されるようになっている。
断熱容器20の断熱材には、例えばグラスウール等の繊維系断熱材が用いられる。断熱容器20の内側には、外容器13を囲んで加熱するヒーター21が設けられる。
圧力容器30は、圧力状態が変化した場合であってもその圧力に耐えられるように略円筒形状に形状設定された真空容器からなり、この円筒形の中心軸が鉛直方向となるように姿勢設定されている。また、圧力容器30には、内部の空気を真空排気する不図示の真空排気ポートが接続されている。
攪拌装置40は、磁気結合式の攪拌機であり、駆動軸41と、軸ケース42と、回転駆動装置43と、を有する。駆動軸41の一端側には、永久磁石(磁性体)44を外周面周方向おいて所定間隔を空けて複数備える内筒45が装着されている。軸ケース42は、駆動軸41の一端側を収容する収容空間S1を有する。収容空間S1には、内筒45の周面と接して、駆動軸41を軸周りに回転自在に支持する軸受46が設けられている。この軸ケース42は、非磁性体のステンレス鋼から形成され、圧力容器30に気密に密着固定されている。なお、駆動軸41もステンレス鋼から形成されている。
回転駆動装置43は、軸ケース42の外側に、永久磁石47を内周面周方向において所定間隔をあけて複数備える外筒48を備える。外筒48は、軸ケース42の外側に取り付けられた軸受49により軸周りに回転自在に支持されている。また、回転駆動装置43は、外筒48を軸周りに回転させるモーター50を備える。モーター50の回転軸と外筒48とはベルト51で接続されている。上記構成によれば、モーター50の駆動により外筒48が軸周りに回転すると、外筒48に固定された永久磁石47と内筒45に固定された永久磁石44とが軸ケース42を介して磁気的に作用し、駆動軸41が軸周りに回転する。
断熱容器20及び圧力容器30には、駆動軸41が挿通する挿通孔(以下、断熱容器20の挿通孔を第1孔部22、圧力容器30の挿通孔を第2孔部31と称する)が形成されている。第1孔部22と第2孔部31との間には、軸方向に伸縮自在で、且つ、軸方向と直交する方向に偏心自在なベローズ管(伸縮管)53が設けられている。ベローズ管53は、断熱容器20と圧力容器30との間において駆動軸41を囲うと共に、その一端側で第1孔部22を気密に囲うように取り付けられ、その他端側で第2孔部31を気密に囲うように取り付けられている。なお、第2孔部31は軸ケース42の収容空間S1と気密に連通しており、第1孔部22より外側には、ベローズ管53、第2孔部31及び収容空間S1が連通した気密空間が形成される構成となっている。この構成によれば、断熱容器20からの高温ガスの流出を抑制することができる。
軸ケース42から下方に延びる駆動軸41の他端側は、圧力容器30、断熱容器20、外容器13及び坩堝11を挿通され、混合融液3中に至る構成となっている。本実施形態の駆動軸41は、第1駆動軸41Aと第2駆動軸(攪拌構造体)41Bとが軸継手60により係合して構成されている。第2駆動軸41Bは、その他端側先端部に攪拌翼52を備えており、混合融液3中で攪拌翼52が軸周りに回転することで、混合融液3を攪拌する。なお、第1駆動軸41Aは、軸ケース42によって回転自在に支持され、第2駆動軸41Bは、坩堝11の蓋部材12に設けられたすべり軸受70Aにより回転自在に支持され、さらに、外容器13に設けられたすべり軸受70Bにより回転自在に支持されている。
第2駆動軸41Bは、反応容器10に挿通する軸体41b1と、軸方向(鉛直方向)で外容器13に係止可能に設けられた係止部41b2と、を有する。なお、軸体41b1と係止部41b2とは、分離可能に嵌合する構成となっている。
すべり軸受70Aは、軸体41b1が挿通する坩堝11の蓋部材12に形成された挿通孔(以下、第3孔部11aと称する)に載置されている。すべり軸受70Aは、その内周面(すべり面)で軸体41b1を軸支する構成となっている。本実施形態のすべり軸受70Aは、高温雰囲気下におかれるため、耐熱性、耐摩耗性を併せ持つ、アルミナ、または、YAG、または、イットリアから形成されたセラミックス軸受から構成されている。
すべり軸受70Aと軸体41b1との間には隙間が形成されている。この隙間は、すべり軸受70Aの内周径を、軸体41b1の外周径より大きく設計することにより形成される。この隙間は、Na蒸気の漏出を防ぎつつ窒素ガスを坩堝11内に供給することができる大きさに管理されている。この機能を十分に発揮できる隙間の大きさは、実験結果や経験則から、1mm以下が適当であるとされている。本実施形態では、加熱による熱膨張率を考慮して、この隙間の片側の大きさが0.1mm〜0.2mmとなるように、製作時にすべり軸受70Aの内周径及び駆動軸41の外周径を精度管理している。
一方、すべり軸受70Bは、軸体41b1が挿通する外容器13に形成された挿通孔(以下、第4孔部13aと称する)に載置されている。本実施形態のすべり軸受70Bは、高温雰囲気下におかれるため、耐熱性、耐摩耗性を併せ持つ、アルミナ、または、YAG、または、イットリアから形成されたセラミックス軸受から構成されている。すべり軸受70Bと軸体41b1との間の隙間は、すべり軸受70Aと軸体41b1との間の隙間に比べて十分に小さく管理され、窒素ガスの流出を抑制する構成となっている。すべり軸受70Bは、係止部41b2と軸方向(鉛直方向)で対向し、第2駆動軸41Bの自重の少なくとも一部(本実施形態では第2駆動軸41Bの自重の略全て)を軸方向で受ける構成となっている。
係止部41b2は、軸継手60の一部を構成する。係止部41b2は、軸体41b1の端部から半径方向(水平方向)両側に延在する略板形状を有する。一方、第1駆動軸41Aは、係止部41b2と組んで軸継手60を構成すると共に、係止部41b2を跨ぎ、且つ、係止部41b2の厚みより大きな距離で設けられる一対の棒体41a1を有する。
上記構成の軸継手60によれば、第1駆動軸41Aが軸周り(例えば平面視時計回り)に回転すると、一対の棒体41a1が係止部41b2を厚み方向で挟み込むように接触し、係合する。そして、第1駆動軸41Aと第2駆動軸41Bとが一体回転することとなる。第2駆動軸41Bが回転すると、攪拌翼52によって混合融液3に旋回流が生まれる。
坩堝11内には、攪拌翼52によって形成された旋回流を打ち消し、攪拌流を形成する邪魔板(攪拌構造体)80が配置されている。邪魔板80は、坩堝11と同一のセラミックス材であるアルミナ、または、YAG、または、イットリアから形成されているが、坩堝11とは別体で形成されている。すなわち、セラミックス材は、その脆性特性から複雑な形状の加工が難しく、また、例えば、邪魔板80を削り出し等により坩堝11内に一体形成しても、その根元にR(曲率)が付いたりする等して、攪拌翼52による旋回流を十分に打ち消すことができずに、邪魔板80として満足いく機能を得ることが困難となるためである。
図2は、本発明の実施形態における邪魔板80を示す斜視図である。
邪魔板80は、坩堝11の形状に沿って接触可能な略U字状の第1の部材81と、もう一つの同様の略U字状の第2の部材82とを組み合わせて形成されている。第1の部材81及び第2の部材82のU字状の底部中央には、それぞれ嵌合溝が形成されている。邪魔板80は、第1の部材81と第2の部材82とを、互いのU字状の底部中央84において平面視で略直交に十字交差して嵌め合せることで形成されている。
上記構成の邪魔板80は、ネジ等の固定具を用いることなく、坩堝11の底部と蓋部材12との間に配設され、蓋部材12と係止可能となっている。すなわち、坩堝11内には窒素ガスや混合融液3が収容されるので、ネジ孔等を形成することは好ましくなく、また、坩堝11内は高温(800℃〜1000℃)になるため、固定具の熱膨張により亀裂や割れ等が生じるおそれがあり、さらに、上述したように、セラミックス材の加工が難しく、加工費の上昇や部品点数の上昇を招くため、ネジ等の固定具を用いないこととしている。但し、邪魔板80の坩堝11内における旋回流による振れ回り(回転)を抑制するため、蓋部材12に、邪魔板80のそれぞれの頂部と、回転方向(軸周り方向)で係止可能な係止溝12aを形成している。したがって、邪魔板80と蓋部材12とは接触可能な構成となっている。
続いて、上記構成の窒化ガリウム製造装置1に坩堝11をセットする手法について、図3及び図4を参照して説明する。
図3及び図4は、本発明の実施形態における坩堝11のセット手法を説明するための図である。図5は、本手法を採用しなかった場合の参考図である。なお、図3〜図5においては、視認性の向上のため種基板2を不図示としている。
仮に、図5に示すように、邪魔板80が固定されないままの状態で、原料であるガリウムと、フラックス剤であるナトリウムと、を液体状態で坩堝11内に供給してしまうと(若しくは、坩堝11内でガリウムとナトリウムとを溶融させて接触させると)、ガリウムとナトリウムが反応し、合金化して析出する(図5中、符号100で示す)。この合金100により、坩堝11内で未固定の邪魔板80が持ち上がると、蓋部材12を載置して坩堝11の開口部を隙間なく閉塞することが困難となる。また、合金100の析出の度合いによっては、攪拌翼52を混合融液3に差し込むことが不可能となる場合がある。蓋部材12の浮きが生じると、坩堝11と蓋部材12との隙間から、結晶成長中に蒸発したナトリウムが拡散現象により漏れ出し、装置内の構造物に付着、腐食させて、装置にダメージを与え、断熱材を汚染し、また、結晶育成条件(NaとGaの比率)の変化を招き、結晶成長にも悪影響を及ぼす。
対して、本手法では、次のような手法を採用する。なお、以下の手法は、気密性の高い箱型装置の中で作業環境から隔離した状態で、原料やフラックス剤を取り扱うことのできるグローブボックス内で行うことが好ましい。
先ず、図3(a)に示すように、原料であるガリウムを供給する前に、フラックス剤であるナトリウム3aを、その融点(98℃)以上の温度までヒーター等で温めて、坩堝11内に供給する(フラックス剤供給工程)。このとき、溶融状態のフラックス剤を坩堝11内に供給してもよいし、固体状態のフラックス剤を坩堝11に投入した後に加熱してフラックス剤を溶融状態としてもよい。この手法によれば、ガリウムと比べて比率が大きいナトリウム3aを液体状態で坩堝11内に供給することができるため、嵩張りを抑制できる。これにより、嵩張り対策のためだけに坩堝11を大型化する必要はなくなる。
その後、図3(b)に示すように、坩堝11に供給したナトリウム3aを、その融点未満の温度まで冷却し、固化させる(冷却工程)。なお、当該冷却には、自然冷却を用いることができる。坩堝11をセットする場合は、予め、不純物となるナトリウム3aの表面に形成された酸化膜を除去する必要があるが、前工程において、ナトリウム3aを溶融させることで、その内部の微小空間(所謂、巣)の酸化膜も液面に浮かせることができる。液面に浮いた酸化膜は、ナトリウム3aの濡れ性の悪さにより、スプーン等で掬えないため、このように冷却し、固化させることで、容易にそぎ落とすことができる。なお、当該酸化膜の除去は、フラックス剤供給工程の前処理として行ってもよい。
また、当該冷却工程の前に、図3(a)に示すように、予め、坩堝11内に攪拌翼52や邪魔板80を配置することが好ましい(配置工程)。この手法によれば、図3(b)に示すように、ナトリウム3aと共に攪拌翼52や邪魔板80を固めて位置決めすることができる。このため、未固定状態の邪魔板80が浮くことを防止でき、また、坩堝11の嵩が無い場合であっても、攪拌翼52が後から差し込み不可となることを防止できる。なお、攪拌翼52を含む軸体41b1は、係止部41b2と分離し、不図示の保持部材を用いて、ナトリウム3aの融液中であって、坩堝11の底部から所定距離離間した状態で浮かせて配置することが好ましい。
次に、図4(a)に示すように、ガリウムの融点(38℃)以上、且つ、ナトリウムの融点(98℃)未満の温度で、ガリウム3bを供給し、ナトリウム3aとガリウム3bとを固液分離状態とする(原料供給工程)。このとき、溶融状態のガリウム3bを坩堝11内に供給してもよいし、固体状態のガリウム3bを坩堝11に投入した後に加熱してガリウム3bを溶融状態としてもよい。なお、作業効率の観点から、特に温度範囲を80℃〜90℃程度に設定することが好ましい。当該温度範囲に設定すると、ナトリウム3aは固体状態を保ったままとなる一方で、ガリウム3bは溶融して液体状態となる。ナトリウム3aは、安定した固体状態であるから、ガリウム3bとの合金化が抑制される。また、仮に固液界面で合金化が微小に生じたとしても、坩堝11の底部に析出することはないため、邪魔板80の浮きが生じることない。また一方で、ガリウム3bは、液体状態であるから、原料が嵩張ることはない。
次に、図4(b)に示すように、坩堝11の開口部に蓋部材12を載置し、坩堝11のセットを完了させる(蓋部材載置工程)。なお、軸体41b1の孔部41b3に、ピン83を差し込むことで、後に、ナトリウム3aを溶融させたときの攪拌翼52の落とし込みを防止することができる。前工程において、合金化が抑制されているため、邪魔板80の浮きが生じることはなく、邪魔板80を、坩堝11の底部と蓋部材12との間で挟み込みつつ、坩堝11の開口部に隙間無く蓋部材12を載置することが可能となる。
また、本手法によれば、ガリウム3bがナトリウム3aの表面を覆うため、ナトリウム3aが酸化することがなくなり、グローブボックス内で原料を納めた坩堝11を窒化ガリウム製造装置1にセットする作業中もナトリウム3aの酸化の恐れがないために、酸化防止による品質の良い結晶を得ることが可能となると共に、当該セット作業自身も落ち着いて安全に行うことができる。
以上の坩堝11のセットが完了したら、図1に示す窒化ガリウム製造装置1を用いて窒化ガリウム結晶を成長させる。
先ず、圧力容器30内部の空気を真空排気ポートから真空排気する。真空状態となった後、窒素ガス供給ポート17から窒素ガスを供給して反応容器10内を充填させる。この際、窒素ガス供給ポート17から供給された窒素ガスは、先ず外容器13内に充填される。外容器13内が充填されて加圧されると、すべり軸受70Aと駆動軸41との間の隙間がガス流路として機能し、外容器13内の窒素ガスが、坩堝11内に供給される。そして、内部圧力を、数十MPaまで加圧する。また、ヒーター21を駆動させて、内部温度を800℃〜1000℃まで加熱し、高温高圧雰囲気を形成する。
当該高温雰囲気になる過程で、坩堝11内のナトリウム3a及びガリウム3bは共に溶融状態となるが、一度、蓋部材12が隙間無く閉められれば、邪魔板80と坩堝11の底部との接触部間に合金100が析出し難くなり、また、合金100が析出しても邪魔板80が蓋部材12と接触することにより当該蓋部材12の重さで浮き上がりが抑制され、その結果、後の工程においても蓋部材12の浮きが生ずることはない。このため、坩堝11の開口部が蓋部材12によって隙間無く閉塞され、結晶育成中に蒸発したNa(ナトリウム)がその隙間から拡散し、装置内に付着するといったことを防止できる。また、結晶育成条件(NaとGaの比率)を一定に保持することができる。
そして、この高温高圧状態を維持し、Na(ナトリウム)によりN(窒素ガス)を混合融液3中に溶解させ易くし、混合融液3中でGa(ガリウム)とN(窒素)とを反応させて、種基板2上にGaN結晶を成長させる(所謂、フラックス法)。
この結晶成長過程において余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得るべく、攪拌装置40で混合融液3を攪拌させる。具体的には、モーター50の駆動により外筒48を軸周りに回転させて、磁気的作用により駆動軸41を軸周りに回転させ、攪拌翼52で混合融液3に旋回流を形成する。旋回流は、坩堝11と別体で、且つ、当該流れと直交して配置された板面を有する邪魔板80に衝突し、旋回成分が打ち消され、攪拌流となる。邪魔板80は、坩堝11の底部と蓋部材12との間に挟み込まれ、且つ、蓋部材12に形成された係止溝12aに係止することで、旋回流の衝突による自身の振れ回りが規制されるため、好適な攪拌流を形成することができる。このため、種基板2上に大型で高品質のGaN結晶を育成することができる。
したがって、上述の本実施形態によれば、坩堝11内に配置された攪拌翼52や邪魔板80等の攪拌構造体を用いてガリウムとフラックス剤との混合融液3を攪拌しつつ、窒素ガスを混合融液3に溶解させるフラックス法を用いた窒化ガリウム結晶の成長方法であって、上記フラックス剤は、ガリウム3bの融点よりも高い融点を有するナトリウム3aであり、ナトリウム3aを溶融状態で坩堝11内に保持させると共に、溶融状態のナトリウム3aに浸るように上記攪拌構造体を坩堝11内に配置するフラックス剤供給工程と、フラックス剤供給工程の後に、ナトリウム3aの融点未満の温度まで冷却して、ナトリウム3aを上記攪拌構造体と共に固化させる冷却工程と、冷却工程の後に、ガリウム3bの融点以上、且つ、ナトリウム3aの融点未満の温度で、坩堝11内において固化させたナトリウム3aの上にガリウム3bを保持させる原料供給工程と、を有するという手法を採用することによって、ナトリウム3aは安定した固体状態であるから、ガリウム3bとの合金化が抑制され、また、ガリウム3bは液体状態であるから、原料の嵩張りが低減される。さらに、ガリウム3bがナトリウム3aの表面を覆うことで、ナトリウム3aの酸化を防止することができる。
このため、本実施形態によれば、攪拌翼52や邪魔板80等の攪拌構造体を内部に配置する坩堝11のセットを容易とさせることができる。
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態では、攪拌構造体として攪拌翼52や邪魔板80を用いたが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、図6及び図7に示すような攪拌構造体を用いてもよい。
図6は、本発明の別実施形態における攪拌構造体を示す断面図である。図7は、本発明の別実施形態における攪拌構造体を示す斜視図である。なお、図6においては、視認性の向上のため種基板2を不図示としている。
図6に示すように、別実施形態における坩堝11内には、攪拌構造体として筒部材110が配置されている。この構成によれば、坩堝11内において鉛直方向に延びる2つの混合融液3の流路を筒部材110の内側と外側で形成することができ、液面から液底に向かう混合融液3の下降流と、液底から液面に向かう混合融液3の上昇流とが、混在することなく筒部材110の内側と外側との間で循環する。このため、循環流による攪拌を行いながら、液面で混合融液3に溶け込んだ窒素ガス成分を、速やかに混合融液3の液底に行き届き易くすることができる。
図6及び図7に示すように、筒部材110の下端開口部130には、坩堝11の底部に接地する脚部110aが周方向に間隔をあけて複数設けられている。一方、筒部材110の上端開口部120には、固定片140が周方向に間隔をあけて複数嵌合しており、筒部材110は、固定片140を介して坩堝11の底部と蓋部材12との間で挟持される構成となっている。上記構成の攪拌構造体を坩堝11内に配置する場合であっても、上述した実施形態と同様の手法を用いることによって、攪拌構造体の浮きを生じさせることなく、坩堝11のセットを容易とさせることができる。
また、例えば、上記実施形態では、フラックス剤としてナトリウムを例示したが、リチウム(Li)やマグネシウム(Mg)等を用いる場合であっても、同様に合金化の課題が生じ得るため、本手法を採用することが好ましい。
また、例えば、上記実施形態では、本手法をグローブボックス内で実施しているが、本手法は窒化ガリウム製造装置1に、当該装置の外から直接GaとNaを供給する場合にも適用できるものである。
また、例えば、上記実施形態では、結晶担持体として種基板2を用いたが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、基板以外にも、円柱や四角柱等の種々の形状がありうる。
1…窒化ガリウム製造装置(結晶成長装置)、2…種基板(結晶担持体)、3…混合融液、3a…ガリウム(原料)、3b…ナトリウム(フラックス剤)、11…坩堝、12…蓋部材、40…攪拌装置、41B…第2駆動軸(攪拌構造体)、52…攪拌翼(攪拌構造体)、80…邪魔板(攪拌構造体)、110…筒部材(攪拌構造体)

Claims (3)

  1. 坩堝内に配置された攪拌構造体を用いてガリウムとフラックス剤との混合融液を攪拌しつつ、窒素ガスを前記混合融液に溶解させるフラックス法を用いた窒化ガリウム結晶の成長方法であって、
    前記ガリウムよりも融点が高い前記フラックス剤を溶融状態で前記坩堝内に保持させると共に、溶融状態の前記フラックス剤に浸るように前記攪拌構造体を前記坩堝内に配置するフラックス剤供給工程と、
    前記フラックス剤供給工程の後に、前記フラックス剤の融点未満の温度まで冷却して、前記フラックス剤を前記攪拌構造体と共に固化させる冷却工程と、
    前記冷却工程の後に、前記ガリウムの融点以上、且つ、前記フラックス剤の融点未満の温度で、前記坩堝内において固化させた前記フラックス剤の上に前記ガリウムを保持させる原料供給工程と、を有することを特徴とする窒化ガリウム結晶の成長方法。
  2. 前記原料供給工程の後に、前記攪拌構造体と係止可能な蓋部材を、前記坩堝の開口部に載置する蓋部材載置工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム結晶の成長方法。
  3. 前記フラックス剤は、ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ガリウム結晶の成長方法。
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