JP2012214287A - 繊維強化複合材料成形体およびその製造方法ならびにそれを用いたエレベータかご - Google Patents
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Abstract
【課題】難燃性を保持しながら、密着性に優れた金属層を備えた繊維強化複合材料成形体と、その製造方法と、それを適用したエレベータかごとを提供する。
【解決手段】難燃性の繊維強化複合材料成形体4は、炭素等の補強繊維1aにマトリクス樹脂1bを含浸させた繊維強化複合材料層1と、その表面に形成された金属層2とを備えている。金属層2は、粗面化された繊維強化複合材料層1の表面に形成された、無電解めっき層を含む下地層2aと、電解めっき層からなる上地層2bとを有する。
【選択図】図1
【解決手段】難燃性の繊維強化複合材料成形体4は、炭素等の補強繊維1aにマトリクス樹脂1bを含浸させた繊維強化複合材料層1と、その表面に形成された金属層2とを備えている。金属層2は、粗面化された繊維強化複合材料層1の表面に形成された、無電解めっき層を含む下地層2aと、電解めっき層からなる上地層2bとを有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、繊維強化複合材料成形体およびその製造方法ならびにそれを用いたエレベータかごに関し、特に、難燃性の繊維強化複合材料成形体と、そのような繊維強化複合材料成形体の製造方法と、そのような繊維強化複合材料成形体を用いたエレベータかごとに関するものである。
炭素等の補強繊維に樹脂(マトリクス樹脂)を含浸させた繊維強化複合材料成形体は、軽量で、かつ、高い剛性を有することから、電気・電子機器、鉄道車両、航空機、建築材料など幅広い分野で使用されている。しかし、含浸樹脂(マトリクス樹脂)自身は非常に燃えやすく、火災によって構造部材が着火して燃焼するため、含浸樹脂には難燃性であることが求められている。
特に、このような繊維強化複合材料成形体をエレベータかごに適用するにあたっては、国土交通省建築基準法に定める「発熱性試験」と「ガス有毒性試験」から成る難燃性試験とに合格する必要がある。
これに対し、たとえば、特許文献1には、難燃性、耐熱性および防食性に優れた建築材料等に幅広く使用される不燃性断熱パネルの技術が開示されている。この不燃性断熱パネルでは、フェノール樹脂フォーム層の片面あるいは両面に、樹脂をコートしたアルミニウム箔が一体的に積層されている。
しかしながら、上述した断熱パネルでは、次のような問題点があった。すなわち、成形体に曲面が存在する場合、その曲面にアルミニウム箔を貼り付ける際にアルミニウム箔に皺がよることがある。また、加工時にバリが発生することがある。さらに、成形体の表面に対するアルミニウム箔の密着性が低く、難燃性試験後にアルミニウム箔が剥離すること等の課題がある。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、難燃性を保持しながら、密着性に優れた金属層を備えた繊維強化複合材料成形体を提供することであり、他の目的は、そのような繊維強化複合材料成形体の製造方法を適用することであり、さらに他の目的は、そのような繊維強化複合材料成形体を適用したエレベータかごを提供することである。
本発明に係る繊維強化複合材料成形体は、繊維強化複合材料層と金属層とを備えている。繊維強化複合材料層は、互いに対向する第1主表面および第2主表面を有し、少なくとも第1主表面が粗面化されている。金属層は、繊維強化複合材料層の第1主表面に形成され、粗面化された第1主表面に接する第1金属層を含んでいる。
本発明に係る繊維強化複合材料成形体の製造方法は、以下の工程を備えている。所定の金型の上に、補強繊維を載置する。補強繊維の上に、樹脂透過性を有する離型用シートおよび樹脂拡散用シートを順次載置する。順次載置された補強繊維〜樹脂拡散用シートをバギングフィルムにて覆う。順次載置された補強繊維〜樹脂拡散用シートが位置するバギングフィルム内の空間を真空引きする。バギングフィル内の空間に樹脂を導入し、導入した樹脂を、樹脂拡散用シートを介して補強繊維に含浸させる。含浸した樹脂を硬化させて、繊維強化複合材料層を形成する。離型用シートを剥がすことにより、樹脂拡散用シートを取り除き、繊維強化複合材料層を金型から取外す。金型から取外された繊維強化複合材料層の少なくとも一方の第1主表面に所定のエッチング処理を施すことにより、第1主表面を粗面化する。粗面化された第1主表面に、無電解めっきによる無電解めっき層を含む第1金属層を有する金属層を形成する。
本発明に係るエレベータかごは、上述した繊維強化複合材料成形体を適用したエレベータかごであって、かご室とかごドアとを備えている。かご室は、床板、天井板、側板および背板によって形づくられ、床板、天井板、側板および背板をそれぞれ成す4つのパネルのうち、少なくともいずれかのパネルに繊維強化複合材料成形体が適用されている。かごドアは、背板と対向するように、かご室に取付けられている。
本発明によれば、難燃性と密着性に優れた繊維強化複合材料成形体を得ることができる。
本発明によれば、難燃性と密着性に優れた繊維強化複合材料成形体を容易に製造することができる。
本発明によれば、難燃性と密着性に優れたエレベータかごを得ることができる。
実施の形態1
実施の形態1に係る難燃性の繊維強化複合材料成形体について説明する。図1に示すように、難燃性の繊維強化複合材料成形体4は、炭素等の補強繊維1aにマトリクス樹脂1bを含浸させた、基材としての繊維強化複合材料層1と、その表面に形成された所定の金属層2とを備えた成形体である。繊維強化複合材料層1は、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、あるいは、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法によって成形される。金属層2は、下地層2aと上地層2bを含み、たとえば、下地層2aとして銅めっき層が形成され、上地層2bとしてニッケルめっき層が形成されている。後述するように、金属層2と繊維強化複合材料層1との密着性を高めるために、繊維強化複合材料層1の表面は粗面化されて、その粗面化された表面に接するように金属層2が形成されている。
実施の形態1に係る難燃性の繊維強化複合材料成形体について説明する。図1に示すように、難燃性の繊維強化複合材料成形体4は、炭素等の補強繊維1aにマトリクス樹脂1bを含浸させた、基材としての繊維強化複合材料層1と、その表面に形成された所定の金属層2とを備えた成形体である。繊維強化複合材料層1は、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、あるいは、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法によって成形される。金属層2は、下地層2aと上地層2bを含み、たとえば、下地層2aとして銅めっき層が形成され、上地層2bとしてニッケルめっき層が形成されている。後述するように、金属層2と繊維強化複合材料層1との密着性を高めるために、繊維強化複合材料層1の表面は粗面化されて、その粗面化された表面に接するように金属層2が形成されている。
なお、ハンドレイアップ法とは、炭素繊維等にマトリクス樹脂を含浸させたプリプレグと称されるシートを手作業により所定の型の上で積層し、硬化させた後に離型する成型方法である。また、VaRTM法とは、所定の型に炭素繊維等を配置し、これをフィルムシートにより密閉して、真空下でマトリクス樹脂を含浸させ熱硬化させる成型方法である。
繊維強化複合材料層1は、電気伝導性に乏しい材料である。このため、繊維強化複合材料層1の表面に金属層2を形成する工程では、無電解めっきによって所望の厚さの無電解めっき層を形成するか、あるいは、まず、無電解めっきによって繊維強化複合層の表面に無電解めっき層を形成し、その後、その無電解めっき層を電極として、電気めっきによって、無電解めっき層の表面に電解めっき層を形成することができる。
この金属層を形成する工程は、主に、脱脂・整面工程、表面粗化工程、触媒化工程、活性化工程およびめっき処理工程からなる。その各工程の概要を以下に示す。なお、各工程間では、水洗処理が行われることになる。
(脱脂・整面工程)
この工程では、被処理面(繊維強化複合材料層の表面)の油脂、指紋、埃等を除去すると同時に、次工程におけるエッチング液と被処理面との濡れ性を改善する目的で、被処理面に脱脂処理が施される。処理液としては、たとえば、アルカリタイプの脱脂剤を用いることができる。
この工程では、被処理面(繊維強化複合材料層の表面)の油脂、指紋、埃等を除去すると同時に、次工程におけるエッチング液と被処理面との濡れ性を改善する目的で、被処理面に脱脂処理が施される。処理液としては、たとえば、アルカリタイプの脱脂剤を用いることができる。
(粗面化工程)
この工程では、基材に対してめっき層の良好な密着性を得るために、被処理面を粗面化する処理が施される。まず、被処理面におけるエッチングを選択的に促進させるために、被処理面にプリエッチング処理を施して、表面近傍の組織を膨潤化させるとともに、低分子物質を溶出させる。次に、酸等によって被処理面にエッチング処理を施すことにより、被処理面に凹凸を形成し、被処理面を粗面化する。粗面化された繊維強化複合材料層の表面の粗さは、中心線平均粗さRaが0.1〜5μm程度の粗さになる。こうして、粗面化された被処理面に形成された凹凸(空孔)に金属層を析出させることで、アンカー効果による金属層の被処理面への物理的な密着力を得ることができる。
この工程では、基材に対してめっき層の良好な密着性を得るために、被処理面を粗面化する処理が施される。まず、被処理面におけるエッチングを選択的に促進させるために、被処理面にプリエッチング処理を施して、表面近傍の組織を膨潤化させるとともに、低分子物質を溶出させる。次に、酸等によって被処理面にエッチング処理を施すことにより、被処理面に凹凸を形成し、被処理面を粗面化する。粗面化された繊維強化複合材料層の表面の粗さは、中心線平均粗さRaが0.1〜5μm程度の粗さになる。こうして、粗面化された被処理面に形成された凹凸(空孔)に金属層を析出させることで、アンカー効果による金属層の被処理面への物理的な密着力を得ることができる。
(触媒化工程)
めっき液中の還元剤の酸化を開始させるためには、被処理面を触媒化処理する必要がある。この工程は、無電解めっきの析出に必要な触媒核を被処理面に吸着させる工程である。触媒は、キャタリスト─アクセレレーター法によって被処理面に付与される。被処理面を塩化パラジウム─塩化第一スズ保護コロイド溶液からなる触媒液に浸漬することにより、被処理面に触媒を付与することができる。
めっき液中の還元剤の酸化を開始させるためには、被処理面を触媒化処理する必要がある。この工程は、無電解めっきの析出に必要な触媒核を被処理面に吸着させる工程である。触媒は、キャタリスト─アクセレレーター法によって被処理面に付与される。被処理面を塩化パラジウム─塩化第一スズ保護コロイド溶液からなる触媒液に浸漬することにより、被処理面に触媒を付与することができる。
(活性化工程)
被処理面に析出したスズは無電解めっき液に不要である。このため、この工程では、その析出したスズを酸またはアルカリを用いて除去し、パラジウムを活性化させる。
被処理面に析出したスズは無電解めっき液に不要である。このため、この工程では、その析出したスズを酸またはアルカリを用いて除去し、パラジウムを活性化させる。
(めっき処理工程)
この工程では、触媒処理が施された被処理面に、無電解めっき処理によって無電解めっき層が形成される。その後、電気めっき処理を施す場合には、その無電解めっき層を電極として、さらに電解めっき層を形成することができる。また、必要に応じて中間層を設けることもできる。
この工程では、触媒処理が施された被処理面に、無電解めっき処理によって無電解めっき層が形成される。その後、電気めっき処理を施す場合には、その無電解めっき層を電極として、さらに電解めっき層を形成することができる。また、必要に応じて中間層を設けることもできる。
なお、上述した難燃性の繊維強化複合材料成形体では、その大きさはめっき処理するためのめっき槽の大きさで決まることになる。このため、所望の容量のめっき槽を用意することにより、大型の繊維強化複合材料成形体であっても比較的容易に製造することができる。
また、樹脂フォーム、無機質フォーム、シンタクチックフォーム、あるいは、ハニカム体をコア材として、そのコア材の両面に、繊維強化複合材料層を配置させてもよい。樹脂フォームとして、たとえば、フェノール樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、あるいは、ポリウレタン樹脂フォーム等がある。また、無機質フォームとして、たとえば、アルミニウムフォーム等がある。ハニカム体として、たとえば、アルミニウムハニカム、紙ハニカム、あるいは、ポリアラミド繊維紙のハニカムに、それぞれフェノールを含浸させたハニカム体がある。
実施の形態2
実施の形態2として、前述した繊維強化複合材料成形体を適用したエレベータかごを備えたエレベータ装置について説明する。図2に示すように、エレベータ装置は、エレベータかご30、巻上機32、ロープ33、釣合おもり34およびガイド35を備えている。巻上機32には、駆動シーブが設けられている。エレベータかご30と釣合おもり34は、駆動シーブに巻き掛けられたロープ33に吊り下げられている。昇降路内を昇降するエレベータかご30は、ガイド35によってガイドされる。
実施の形態2として、前述した繊維強化複合材料成形体を適用したエレベータかごを備えたエレベータ装置について説明する。図2に示すように、エレベータ装置は、エレベータかご30、巻上機32、ロープ33、釣合おもり34およびガイド35を備えている。巻上機32には、駆動シーブが設けられている。エレベータかご30と釣合おもり34は、駆動シーブに巻き掛けられたロープ33に吊り下げられている。昇降路内を昇降するエレベータかご30は、ガイド35によってガイドされる。
次に、エレベータかご30(かご室31)の構造について説明する。図3に示すように、エレベータかご30は、天板37、側板38、床板39等を含むかご室31のパネルと、かごドア36(図2参照)とを備えている。天板19、側板20、床板21等は、互いに隣接する箇所を、たとえば、アングル材のように、断面形状がL字形状の連結部材22によって連結される。このかご室31のパネルとして、前述した繊維強化複合材料成形体4が適用される。また、かご室31の他に、かごドア36のパネル、あるいは、乗場ドアのパネルにも、繊維強化複合材料成形体4を適用することができる。
なお、連結部材40としては、天板19等を高強度に固定することができるものであれば特に限定されるものではなく、前述した繊維複合材料成形体を適用してもよいし、金属を適用してもよい。
次に、そのようなパネルの構造について説明する。このエレベータかご30では、かご室31のパネルとして、コア材をスキン材(表面材)でサンドイッチしたサンドイッチパネルが適用される。前述した繊維強化複合材料成形体4は、そのスキン材として適用される。図4に示すように、サンドイッチパネル5では、発泡材等のコア材3の一方の面と他方の面との双方に、金属層2が形成された繊維強化複合材料層1が配置されている。
図5に示すように、繊維強化複合材料層1の表面には、エッチングにより凹凸が形成されて、繊維強化複合材料層1の表面が粗面化されている。金属層2は、その粗面化された繊維強化複合材料層1の表面に接するように形成されている。粗面化された繊維強化複合材料層の表面の粗さは、中心線平均粗さRaが0.1〜5μm程度である。
前述した繊維強化複合材料成形体4は、軽量で高い機械的強度を備えている。これにより、かご室を構成する天板37、側板38、床板39等のパネルとして、当該繊維強化複合材料成形体4を含むサンドイッチパネル5を適用することで、軽量で高強度なエレベータかご室を得ることができる。また、後述するように、難燃性にも優れ、金属層と繊維強化複合材料層との密着性にも優れる。
実施の形態3
ここでは、繊維強化複合材料成形体の製造装置と、それを用いた繊維強化複合材料成形体の製造方法について説明する。繊維強化複合材料成形体は、VaRTM法と称される、閉じられた空間内で繊維強化複合材料成形体となる所定の材料に樹脂を含浸させる手法を用いることによって製造される。
ここでは、繊維強化複合材料成形体の製造装置と、それを用いた繊維強化複合材料成形体の製造方法について説明する。繊維強化複合材料成形体は、VaRTM法と称される、閉じられた空間内で繊維強化複合材料成形体となる所定の材料に樹脂を含浸させる手法を用いることによって製造される。
図6に示すように、繊維強化複合材料成形体を製造する製造装置では、繊維強化複合材料成形体となる材料(二点鎖線)が載置される金型11と、載置された材料を上方から覆うバギングフィルム12と、バギングフィルム12内の空間を外部と遮断するシール材13とを備え、さらに、バギングフィルム12内を真空引きする真空ポンプ14と、バギングフィルム12内へ樹脂を供給する樹脂タンク15とを備えている。また、樹脂タンク15から供給される樹脂をバギングフィルム12内に導入する樹脂注入口16が設けられている。さらに、バギングフィルム12内を排気する排気口17が設けられている。
次に、上述した製造装置による繊維強化複合材料成形体の製造方法の一例について説明する。まず、たとえば、炭素繊維によって構成される補強繊維を所定の形状に裁断する。次に、その補強繊維1bを金型11の上に載置する(図7参照)。次に、補強繊維1bの上に樹脂透過性離型用シート(ピールプライ)18および樹脂拡散シート(フローメディア)19を順次載置する(図7参照)。次に、補強繊維1bの周囲にシール材13を配置する(図7参照)。次に、樹脂注入口16と排気口17を設置する(図7参照)。次に、載置された補強繊維1b等を覆うようにバギングシート12を被せ、シール材13にてバギングシート12内の空間を外部と遮断する(図7参照)。
次に、真空ポンプ14を駆動させてバギングシート12内の空気を排気する(図7参照)。次に、樹脂タンク15の樹脂(マトリクス樹脂)に、所定の硬化剤および硬化促進剤を混ぜる(図7参照)。次に、その樹脂を樹脂注入口16からバギングシート12内の空間に注入し、補強繊維1bにマトリクス樹脂1aとして含浸させて硬化させる(図7参照)。次に、マトリクス樹脂1aが硬化した後、樹脂拡散用シート19とともに樹脂透過性離型用シート18を剥がし、マトリクス樹脂1aを含浸させた補強繊維1bからなる繊維強化複合材料層1を金型11から取り外す。こうして、所定の形状に成形された繊維強化複合材料層1が完成する。
次に、繊維強化複合材料層1の表面に金属層を形成する。まず、図8に示すように、繊維強化複合材料層1の表面に付着している、油脂、指紋、埃等の汚れ21を除去するとともに、次工程におけるエッチング液と被処理面との濡れ性を高めるために、所定の脱脂剤にて、繊維強化複合材料層1の表面に脱脂処理を施す。
次に、繊維強化複合材料層の表面にプリエッチング処理を施して、表面近傍の組織を膨潤化させるとともに、低分子物質を溶出させる。次に、図9に示すように、酸等によって繊維強化複合材料層1の表面にエッチング処理を施すことにより、繊維強化複合材料層1の表面にエッチングホール22を形成し、繊維強化複合材料層1の表面を粗面化する。この繊維強化複合材料層1の表面の粗さは、中心線平均粗さRaが0.1〜5μm程度の粗さになる。
次に、繊維強化複合材料層1を、たとえば、塩化パラジウム─塩化第一スズ保護コロイド溶液からなる触媒液に浸漬することにより、図10に示すように、エッチングホール22が形成されて粗面化された繊維強化複合材料層1の表面に触媒核(パラジウム−スズコロイド)23を吸着させる。繊維強化複合材料層1の表面に析出した触媒核のうちスズは、無電解めっき液に不要である。そこで、次に、その析出したスズを、酸またはアルカリを用いて除去し、パラジウムを活性化させる。
次に、無電解めっき処理を施すことによって、繊維強化複合材料層の表面に無電解めっき層を形成し、さらに、その無電解めっき層を電極として、電気めっき処理を施すことによって、電解めっき層を形成する。こうして、図11に示すように、繊維強化複合材料層1の表面に、金属層の下地層2aが形成される。
ここで、発明者らの評価によれば、下地層として銅めっき層を形成する場合、無電解めっき層の厚みは数nm程度であり、その無電解めっき層の上にムラなく電解めっき層を形成しようとすると、下地層の厚みは薄くても5μm必要になることがわかった。一方、電解めっき層を厚くするにしたがい、反りが大きくなる傾向にあり、また、生産性も阻害され、コストも上昇してしまうことになることから、電解めっき層は薄い方が好ましく、適切な厚みを設定する必要があることがわかった。
次に、その下地層を電極として、電気めっき処理を施すことにより、電気めっき層が形成される。こうして、図12に示すように、下地層2aの上に金属層の上地層2bが形成される。ここで、発明者らの評価によれば、上地層として、ニッケルめっき層を形成する場合、その厚みは、剥離や亀裂を抑制する観点から、2〜3μm程度にすることが望ましいことがわかった。こうして、繊維強化複合材料層1の表面に金属層2が形成された繊維強化複合材料成形体が完成する。
上述した繊維強化複合材料成形体では、繊維強化複合材料層の表面に金属層が形成されていることで、国土交通省建築基準法に定める発熱性試験において、試験中に着火することがなく、優れた難燃性を有することがわかった。また、金属層が、エッチング処理を施すことにより粗面化された繊維強化複合材料層の表面に接するように形成されることで、アンカー効果による金属層の繊維強化複合材料層の表面への物理的な密着力が得られて、試験後において金属層の大きな剥離がないことがわかった。しかも、樹脂を含浸させた補強繊維を基材(繊維強化複合材料層)とすることで、繊維強化複合材料成形体として、軽量でかつ高い強度が得られる。
なお、上述した製造方法では、繊維強化複合材料層1の表面に下地層と上地層の金属層を形成する場合について説明したが、金属層として下地層だけを形成し、その下地層の表面に、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、あるいは、シリコーン(silicone)系樹脂によるコーティング処理を施してコーティング材を形成しても、所望の難燃性が得られることが発明者らの評価によってわかった。特に、シリコーン系樹脂の場合、その塗布量は、発火(燃焼)を抑えて防錆効果を確保するために、30g/m2以上50g/m2以下に設定することが望ましいことが発明者らの評価によってわかった。
本発明者らは、種々の繊維強化複合材料成形体を作製して、その難燃性評価を行った。作製した繊維強化複合材料成形体とその難燃性評価結果について説明する。
1. 繊維強化複合材料成形体について
1−1. 発明例
(発明例1)
繊維強化複合材料成形体の作製
(1)基材としての繊維強化複合材料層の作製
まず、補強繊維として、寸法100mm×100mm×3mmの炭素繊維を用意した。次に、前述したVaRTM法により、炭素繊維にマトリクス樹脂を含浸させて、所定の形状の繊維強化複合材料層を作製した。
1−1. 発明例
(発明例1)
繊維強化複合材料成形体の作製
(1)基材としての繊維強化複合材料層の作製
まず、補強繊維として、寸法100mm×100mm×3mmの炭素繊維を用意した。次に、前述したVaRTM法により、炭素繊維にマトリクス樹脂を含浸させて、所定の形状の繊維強化複合材料層を作製した。
このとき、補強繊維として、トレカ(登録商標)T300(東レ株式会社製)を用い、マトリクス樹脂として、リポキシ(登録商標)R806(昭和高分子株式会社製)を用いた。また、硬化剤として、有機過酸化物328E(化薬アクゾ株式会社製)を用い、硬化促進剤として、リゴラック(登録商標)コバルトO(昭和高分子株式会社製)を用いた。
(2)金属層の形成
次に、作製された繊維強化複合材料層の表面に、以下に示す工程によって、下地層として銅めっき層を形成し、上地層としてニッケルめっき層を形成した。
次に、作製された繊維強化複合材料層の表面に、以下に示す工程によって、下地層として銅めっき層を形成し、上地層としてニッケルめっき層を形成した。
(a) 脱脂・整面
まず、繊維強化複合材料層を、アルカリ性脱脂剤(エースクリーン(商標)A−220(奥野製薬工業株式会社製))50g/lの水溶液(温度50℃)に5分間浸漬した。
まず、繊維強化複合材料層を、アルカリ性脱脂剤(エースクリーン(商標)A−220(奥野製薬工業株式会社製))50g/lの水溶液(温度50℃)に5分間浸漬した。
(b) 表面粗化
次に、繊維強化複合材料層を、N,N-ジメチルホルムアミド(温度25℃)に5分間浸漬した後、無水クロム酸400g/lと98%硫酸400g/lを含む水溶液(温度67℃)に10分間浸漬した。その後、繊維強化複合材料層を、35%塩酸と還元剤(トップキャッチ(登録商標)CR−200(奥野製薬工業株式会社製)を含む水溶液(温度25℃)に1分間浸漬し、繊維強化複合材料層の表面に付着したクロム化合物を除去した。
次に、繊維強化複合材料層を、N,N-ジメチルホルムアミド(温度25℃)に5分間浸漬した後、無水クロム酸400g/lと98%硫酸400g/lを含む水溶液(温度67℃)に10分間浸漬した。その後、繊維強化複合材料層を、35%塩酸と還元剤(トップキャッチ(登録商標)CR−200(奥野製薬工業株式会社製)を含む水溶液(温度25℃)に1分間浸漬し、繊維強化複合材料層の表面に付着したクロム化合物を除去した。
(c) 触媒化
次に、プリディップ処理として、繊維強化複合材料層を、35%塩酸50ml/l(温度25℃)に1分間浸漬させた後、塩化パラジウム─塩化第一スズ保護コロイド溶液からなる温度30℃の触媒液(塩化パラジウム0.32g/l、塩化第一スズ29g/l、35%塩酸300ml/l)に6分間浸漬し、繊維強化複合材料層の表面に触媒化処理を施した。
次に、プリディップ処理として、繊維強化複合材料層を、35%塩酸50ml/l(温度25℃)に1分間浸漬させた後、塩化パラジウム─塩化第一スズ保護コロイド溶液からなる温度30℃の触媒液(塩化パラジウム0.32g/l、塩化第一スズ29g/l、35%塩酸300ml/l)に6分間浸漬し、繊維強化複合材料層の表面に触媒化処理を施した。
(d) 活性化
次に、繊維強化複合材料層を、硫酸100g/l(温度40℃)に5分間浸漬し、上記触媒化処理によって吸着したパラジウム─スズ化合物のスズを除去し、パラジウムを活性化した。
次に、繊維強化複合材料層を、硫酸100g/l(温度40℃)に5分間浸漬し、上記触媒化処理によって吸着したパラジウム─スズ化合物のスズを除去し、パラジウムを活性化した。
(e) 金属層形成
次に、繊維強化複合材料層の表面に金属層を形成した。まず、下地層として、密着性の高い無電解銅めっき層および電気銅めっき層を形成し、次に、上地層として防食性のあるニッケルめっき層を電気めっきにより形成した。その工程を以下に示す。
次に、繊維強化複合材料層の表面に金属層を形成した。まず、下地層として、密着性の高い無電解銅めっき層および電気銅めっき層を形成し、次に、上地層として防食性のあるニッケルめっき層を電気めっきにより形成した。その工程を以下に示す。
繊維強化複合材料層を、金属塩として硫酸銅10g/l、還元剤としてホルマリン20ml/l、pH緩衝剤として水酸化ナトリウム10g/l、錯化剤としてEDTA4Naを25g/lをそれぞれ含有する自己触媒型無電解銅めっき液(温度70℃)に5分間浸漬して、無電解銅めっき層を形成した。
次に、繊維強化複合材料層を、硫酸銅200g/l、硫酸55g/l、塩化物イオン40mg/lを含有する銅めっき液(温度25℃)に、電流密度3A/dm2のもとで10分間浸漬して、無電解めっき層の上に電解銅めっき層を形成した。こうして、下地層として、厚さ5〜7μmの銅めっき層(銅被膜)を形成した。
次に、通常のワット浴を用い、繊維強化複合材料層を、硫酸ニッケル300g/l、塩化ニッケル50g/l、ホウ酸40g/lを含有するニッケルメッキ液(温度60℃)に、電流密度3A/dm2のもとで5分間浸漬して、下地層の上に、上地層として、厚さ2〜3μmのニッケルめっき層(ニッケル被膜)を形成した。なお、下地層の厚みは3〜15μmにしてもよいが、上地層の厚みはこれ以上厚くしない方が好ましい。
以上のようにして、発明例1として、繊維強化複合材料層の表面に、下地層と上地層を含む金属層を形成した繊維強化複合材料成形体を得た。
(発明例2)
まず、発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て繊維強化複合材料層を作製した。次に、発明例1の金属層の形成工程のうち、下地層を形成するまでの工程と同様の工程を経て、繊維強化複合材料層の表面に、下地層として厚さ5〜7μmの銅めっき層(銅被膜)を形成した。以上のようにして、発明例2として、繊維強化複合材料層の表面に、下地層だけからなる金属層を形成した繊維強化複合材料成形体を得た。
まず、発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て繊維強化複合材料層を作製した。次に、発明例1の金属層の形成工程のうち、下地層を形成するまでの工程と同様の工程を経て、繊維強化複合材料層の表面に、下地層として厚さ5〜7μmの銅めっき層(銅被膜)を形成した。以上のようにして、発明例2として、繊維強化複合材料層の表面に、下地層だけからなる金属層を形成した繊維強化複合材料成形体を得た。
(発明例3)
まず、発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て繊維強化複合材料層を作製した。次に、発明例1の金属層の形成工程のうち、下地層を形成するまでの工程と同様の工程を経て、繊維強化複合材料層の表面に、下地層として厚さ5〜7μmの銅めっき層(銅被膜)を形成した。次に、銅めっき層の表面に、防食目的としてシリコーン系樹脂によるコーティング処理を施した。シリコーン系樹脂のコート量を50g/cm2とした。以上のようにして、発明例3として、繊維強化複合材料層の表面に、下地層だけからなる金属層を形成し、シリコン樹脂によるコーティングを施した繊維強化複合材料成形体を得た。
まず、発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て繊維強化複合材料層を作製した。次に、発明例1の金属層の形成工程のうち、下地層を形成するまでの工程と同様の工程を経て、繊維強化複合材料層の表面に、下地層として厚さ5〜7μmの銅めっき層(銅被膜)を形成した。次に、銅めっき層の表面に、防食目的としてシリコーン系樹脂によるコーティング処理を施した。シリコーン系樹脂のコート量を50g/cm2とした。以上のようにして、発明例3として、繊維強化複合材料層の表面に、下地層だけからなる金属層を形成し、シリコン樹脂によるコーティングを施した繊維強化複合材料成形体を得た。
1−2. 比較例
発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て作製した繊維強化複合材料層に、以下に示す金属層を形成した繊維強化複合材料成形体を比較例とした。
発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て作製した繊維強化複合材料層に、以下に示す金属層を形成した繊維強化複合材料成形体を比較例とした。
(比較例1)
まず、発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て繊維強化複合材料層を作製した。次に、発明例1の金属層の形成工程のうち、下地層を形成するまでの工程と同様の工程を経て、繊維強化複合材料層の表面に、下地層として厚さ5〜7μmの銅めっき層(銅被膜)を形成した。次に、電気めっきによる処理時間を発明例1の場合よりも長くして、下地層の銅被膜の表面に、上地層として厚さ15〜25μmのニッケルめっき層(ニッケル被膜)を形成した。
まず、発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て繊維強化複合材料層を作製した。次に、発明例1の金属層の形成工程のうち、下地層を形成するまでの工程と同様の工程を経て、繊維強化複合材料層の表面に、下地層として厚さ5〜7μmの銅めっき層(銅被膜)を形成した。次に、電気めっきによる処理時間を発明例1の場合よりも長くして、下地層の銅被膜の表面に、上地層として厚さ15〜25μmのニッケルめっき層(ニッケル被膜)を形成した。
以上のようにして、繊維強化複合材料層の表面に、上地層として膜厚15〜25μmのニッケルめっき層を含む金属層を形成した繊維強化複合材料成形体を得た。
(比較例2)
まず、発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て繊維強化複合材料層を作製した。次に、発明例1の金属層の形成工程のうち、触媒化処理を施すまでの工程と同様の工程を経て、繊維強化複合材料層の表面に触媒化処理を施した。次に、触媒化処理を施した繊維強化複合材料層を、金属塩として硫酸ニッケル25g/l、還元剤として次亜リン酸ナトリウム20g/l、pH緩衝剤として酢酸ナトリウム10g/l、錯化剤としてクエン酸ナトリウム10g/lをそれぞれ含有する無電解ニッケルめっき液(温度40℃)に60分間浸漬し、無電解めっきにより厚さ2〜3μmのニッケルめっき層(ニッケル被膜)を形成した。
まず、発明例1の繊維強化複合材料層の作製工程と同様の工程を経て繊維強化複合材料層を作製した。次に、発明例1の金属層の形成工程のうち、触媒化処理を施すまでの工程と同様の工程を経て、繊維強化複合材料層の表面に触媒化処理を施した。次に、触媒化処理を施した繊維強化複合材料層を、金属塩として硫酸ニッケル25g/l、還元剤として次亜リン酸ナトリウム20g/l、pH緩衝剤として酢酸ナトリウム10g/l、錯化剤としてクエン酸ナトリウム10g/lをそれぞれ含有する無電解ニッケルめっき液(温度40℃)に60分間浸漬し、無電解めっきにより厚さ2〜3μmのニッケルめっき層(ニッケル被膜)を形成した。
以上のようにして、繊維強化複合材料層の表面に、厚さ2〜3μmのニッケルめっき層からなる金属層を形成した繊維強化複合材料成形体を得た。
上述した各発明例に係る繊維強化複合材料成形体の構成と難燃性評価結果を表1に示し、各比較例に係る繊維強化複合材料成形体の構成と難燃性評価結果を表2に示す。次に、その難燃性評価結果について説明する。
2. 繊維強化複合材料成形体の難燃性評価
国土交通省建築基準法に定められている発熱性試験により、繊維強化複合材料成形体の難燃性を評価した。この発熱性試験は、縦横が100mm(厚さt<50mm)の試験体に、輻射強度50kW/m2の輻射熱(約650℃)を与えながら、イグナイターにて発生させる電気スパークを点火源として燃焼させる試験であり、経時的な発熱速度と総発熱量を求めることができる。この発熱性試験には、コーンカロリーメーターを用いた。発熱速度や発熱量は「酸素消費法」により算出した。これは、有機材料において燃焼により生ずる発熱量は物質の種類によらず、ほぼ一定の数値(酸素1kgあたり13.1MJ)になることを利用している。
国土交通省建築基準法に定められている発熱性試験により、繊維強化複合材料成形体の難燃性を評価した。この発熱性試験は、縦横が100mm(厚さt<50mm)の試験体に、輻射強度50kW/m2の輻射熱(約650℃)を与えながら、イグナイターにて発生させる電気スパークを点火源として燃焼させる試験であり、経時的な発熱速度と総発熱量を求めることができる。この発熱性試験には、コーンカロリーメーターを用いた。発熱速度や発熱量は「酸素消費法」により算出した。これは、有機材料において燃焼により生ずる発熱量は物質の種類によらず、ほぼ一定の数値(酸素1kgあたり13.1MJ)になることを利用している。
建築基準法では、材料の燃え難さのグレードの低い方から高い方へ、「難燃材料」、「準不燃材料」、「不燃材料」のカテゴリに分けられている。エレベータかごへ適用する材料には「難燃材料」以上のグレードが必要となる。具体的には、コーンカロリーメーターによる燃焼性試験において、試験開始から5分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えないことが合格基準とされる。
まず、発明例に係る繊維強化複合材料成形体に対する難燃性評価結果について説明する。繊維強化複合材料層の表面に、下地層(銅めっき層)だけからなる金属層を形成した発明例2では、コーンカロリーメーターによる発熱性試験による総発熱量は0であり、かつ、試験後の膨れ・剥離は全くなく、良好な結果となった。
金属層として、上地層に防食性のあるニッケルめっき層を形成した発明例1では、コーンカロリーメーターによる発熱性試験による総発熱量は0であり、発明例2の場合に比べて、試験後に微小な膨れが発生するものの、良好な結果となった。
防食性のあるシリコン樹脂によるコーティングを施した実施例3では、コーティング材が透明で、かつ、耐熱性が高いため、コーンカロリーメーターによる発熱性試験における輻射熱の反射を阻害せず、コーティング材が着火することはなく、発熱性試験の難燃レベルの規定を満たす結果となった。
次に、比較例に係る繊維強化複合材料成形体に対する難燃性評価結果について説明する。発明例1の場合よりも上地層のニッケルめっき層の厚い比較例1では、コーンカロリーメーターによる発熱性試験による総発熱量は0であるものの、試験中の輻射熱により上地層のニッケルめっき層が、下地層の銅めっき層とともに所々に剥離しているのが認められた。
無電解めっきによるニッケルめっき層を形成した比較例2では、コーンカロリーメーターによる発熱性試験による総発熱量は0であるものの、金属層の所々に膨れが発生し、銅めっき層よりも密着力が弱いことが判明した。
以上の評価結果から、下地層を密着力の高い銅めっき層としてその厚みを5〜7μmとし、上地層を防食性のあるニッケルめっき層としてその厚みを2〜3μmとした繊維強化複合材料成形体とすることで、国土交通省建築基準法規定の発熱性試験において難燃性を満足することが実証された。
なお、上述した実施の形態あるいは実施例では、下地層として銅めっき層を例に挙げ、上地層としてニッケルめっき層を例に挙げて説明した。金属めっき層の組み合わせとしては、銅−ニッケル−金と、銅−ニッケル−クロムの組み合わせがある。
また、金属層をめっき処理(無電解めっき処理、電解めっき処理)を施すことによって形成する場合を例に挙げて説明したが、粗面化された繊維強化複合材料層の表面との密着性が図れる手法であれば、めっき処理以外の手法によって金属層を形成してもよい。
今回開示された実施の形態および実施例は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、難燃性が要求されるエレベータかごを始め、建築関係等のパネルに有効に利用される。
1 繊維強化複合材料層、1a マトリクス樹脂、1b 補強繊維、2 金属層、2a 下地層、2b 上地層、3 コア材、4 難燃性繊維強化複合材料成形体、5 サンドイッチパネル、11 金型、12 バギングフィルム、13 シール材、14 真空ポンプ、15 樹脂タンク、16 樹脂注入口、17 排気口、18 樹脂透過性離型用シート、19 樹脂拡散シート、21 汚れ、22 エッチングホール、23 触媒核、30 エレベータかご、31 かご室、32 巻上機、33 ロープ、34 釣合おもり、35 ガイド、36 かごドア、37 天板、38 側板、39 床板、40 連結部材。
Claims (13)
- 互いに対向する第1主表面および第2主表面を有し、少なくとも第1主表面が粗面化された繊維強化複合材料層と、
前記繊維強化複合材料層の前記第1主表面に形成され、粗面化された前記第1主表面に接する第1金属層を含む金属層と
を備えた、繊維強化複合材料成形体。 - 前記第1金属層は無電解めっき層を含む、請求項1記載の繊維強化複合材料成形体。
- 前記第1金属層の厚みは、薄くても5μm以上である、請求項1または2に記載の繊維強化複合材料成形体。
- 前記金属層は、前記第1金属層の表面に直接接するように形成された第2金属層を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化複合材料成形体。
- 前記第2金属層は電解めっき層である、請求項4記載の繊維強化複合材料成形体。
- 前記第2金属層の厚みは、2μm以上3μm以下である、請求項5記載の繊維強化複合材料成形体。
- 前記金属層を覆うように、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂およびエポキシ系樹脂のいずれかの樹脂によるコーティング材が形成された、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化複合材料成形体。
- 前記コーティング材として塗布される前記樹脂の量は30g/m2以上50g/m2以下である、請求項7記載の繊維強化複合材料成形体。
- 互いに対向する主表面を有し、発泡体およびハニカム体のいずれかからなるコア材を備え、
前記コア材の前記互いに対向する主表面のそれぞれに対し、前記繊維強化複合材料層の前記第2主表面を対向させる態様で、前記コア材を挟み込むように前記繊維強化複合材料層を配設した、請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化複合材料成形体。 - 所定の金型の上に、補強繊維を載置する工程と、
前記補強繊維の上に、樹脂透過性を有する離型用シートおよび樹脂拡散用シートを順次載置する工程と、
順次載置された前記補強繊維〜前記樹脂拡散用シートをバギングフィルムにて覆う工程と、
順次載置された前記補強繊維〜前記樹脂拡散用シートが位置する前記バギングフィルム内の空間を真空引きする工程と、
前記バギングフィル内の空間に樹脂を導入し、導入した前記樹脂を、前記樹脂拡散用シートを介して前記補強繊維に含浸させる工程と、
含浸した前記樹脂を硬化させて、繊維強化複合材料層を形成する工程と、
前記離型用シートを剥がすことにより、前記樹脂拡散用シートを取り除き、前記繊維強化複合材料層を前記金型から取外す工程と、
前記金型から取外された前記繊維強化複合材料層の少なくとも一方の第1主表面に所定のエッチング処理を施すことにより、前記第1主表面を粗面化する工程と、
粗面化された前記第1主表面に、無電解めっきによる無電解めっき層を含む第1金属層を有する金属層を形成する工程と
を備えた、繊維強化複合材料成形体の製造方法。 - 前記金属層を形成する工程は、電解めっきによる電解めっき層を含む第2金属層を形成する工程を含む、請求項10記載の繊維強化複合材料成形体の製造方法。
- 前記金属層を覆うように、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂およびエポキシ系樹脂のいずれかの樹脂によるコーティング材を形成する工程を備えた、請求項10記載の繊維強化複合材料成形体の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の繊維強化複合材料成形体を適用したエレベータかごであって、
床板、天井板、側板および背板によって形づくられ、前記床板、前記天井板、前記側板および前記背板をそれぞれ成す4つのパネルのうち、少なくともいずれかのパネルに前記繊維強化複合材料成形体が適用されたかご室と、
前記背板と対向するように、前記かご室に取付けられるかごドアと
を備えた、エレベータかご。
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JP2011082031A JP2012214287A (ja) | 2011-04-01 | 2011-04-01 | 繊維強化複合材料成形体およびその製造方法ならびにそれを用いたエレベータかご |
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---|---|---|---|---|
US20150336335A1 (en) * | 2013-01-09 | 2015-11-26 | Mitsubishi Electric Corporation | Fiber-reinforced composite material, method of producing same, and elevator component member and elevator car that use same |
CN110386535A (zh) * | 2018-04-12 | 2019-10-29 | 三菱电机株式会社 | 难燃性结构部件和使用了该难燃性结构部件的电梯轿厢 |
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- 2011-04-01 JP JP2011082031A patent/JP2012214287A/ja not_active Withdrawn
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