JP2012212787A - 反射型マスクの製造方法、反射型マスク用イオンビーム装置、および反射型マスク - Google Patents

反射型マスクの製造方法、反射型マスク用イオンビーム装置、および反射型マスク Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、レジスト塗布、描画、現像、エッチング等の製造工程を増やすことなく、特殊なマスクブランクを準備する必要もなく、簡便に遮光領域を形成することが可能であり、高精度なパターン転写を実現することが可能な反射型マスクの製造方法、反射型マスク用イオンビーム装置、および反射型マスクを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層とを有する反射型マスクを準備する準備工程と、上記吸収層のパターンが形成された回路パターン領域の外周に、水素またはヘリウムのイオンビームを照射し、上記多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成し、上記基板上に上記低反射部および上記吸収層が積層された遮光領域を形成する遮光領域形成工程とを有することを特徴とする反射型マスクの製造方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、極紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)リソグラフィに用いられる反射型マスクに関するものである。
近年、半導体産業において、半導体デバイスの微細化に伴い、極紫外線(以下、EUVと呼称する。)を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。なお、EUVとは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2nm〜100nm程度の光のことである。このEUVリソグラフィにおいて用いられるマスクとしては、例えば特許文献1に記載されているような反射型マスクが提案されている。
このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層膜が形成され、上記多層膜上に露光光を吸収する吸収層が形成され、上記吸収層が部分的に除去されることにより吸収体パターンが形成されたものである。露光装置に装着された反射型マスクに入射した光は、吸収体のある部分では吸収され、吸収体のない部分では多層膜により反射されて、多層膜での反射による光像が反射光学系を通してウェハ上に転写される。
反射型マスクを用いてウェハ上にパターンを転写するに際しては、ステップアンドリピート方式と呼ばれる露光方式を用いられている。ステップアンドリピート方式は、ウェハを逐次移動(ステップ)して、繰り返し(リピート)露光する方法である。ステップアンドリピート方式の露光装置は、ステッパーと呼ばれている。
このステップアンドリピート方式で露光を行う場合、通常、ウェハから可能な限り多くのチップを取り出すため、反射型マスクにおける吸収体パターンが形成された回路パターン領域は互いに可能な限り近接して転写される。また、ステップアンドリピート方式の場合、一般に、回路パターン領域よりも若干広い領域を露光する。そのため、ウェハ上における隣接する露光領域では、露光領域が重なり合う領域(以下、多重露光領域と称する場合がある。)が生じる。例えば、矩形の露光領域の場合、1つの露光領域の角は他の3つの露光領域と重なり、4回露光されることになる。
多重露光領域では、複数回露光されるため、露光光の大部分が吸収体によって吸収されて1回の露光では実質的に解像に寄与しない露光量であったとしても、露光量が加算されて解像に寄与する量に達してしまう場合がある。その結果、不要なパターンが形成されることになり、高精度なパターンが得られないという問題が起こる。
また、反射型マスクにおいては、露光光はマスク面に対し垂直な方向から数度(通常6度程度)傾いた方向より入射される。吸収体は厚みを持つため、露光光が斜めから入射されることで、吸収体パターン自身の影が生じる。この影響を影効果と呼ぶ。影効果の度合いは、露光光に対する吸収体パターンの向きによって異なり、ウェハへの転写寸法に影響を与える。この影効果の問題は特に近年のパターンの微細化に伴い顕著になってきている。
上記影効果を抑制するためには、吸収体は薄い方が好ましい。しかしながら、吸収体の膜厚を薄くすると、吸収体による露光光の吸収が少なくなるため、上述の多重露光領域でのパターン不良の問題が大きくなる。
そこで、反射型マスクにおいて、多重露光領域を形成する、回路パターン領域の外周に位置する外周領域からの反射光を抑制するために、回路パターン領域の外周に遮光領域(遮光枠、遮光帯とも呼ばれる。)を形成することが提案されている(例えば特許文献2および特許文献3参照)。この遮光領域の態様として、特許文献2および特許文献3には、具体的に、多層膜を除去する、吸収体の膜厚を厚くする、2層の吸収体を積層する、あるいは、吸収体上に遮光膜を形成することにより、遮光領域を形成することが提案されている。また、多層膜にイオン注入またはフェムト秒レーザパルス光を照射することで多層膜の反射率を低下させて、遮光領域を形成することも提案されている。
特開2002−319542号公報 特開2009−141223号公報 特開2009−212220号公報
しかしながら、上述の方法のうち、多層膜を除去する方法、吸収体の膜厚を厚くする方法、2層の吸収体を積層する方法、吸収体上に遮光膜を形成する方法、多層膜にイオン注入する方法はいずれも、レジスト塗布、描画、現像、エッチングの各工程が必要となるため、製造工程が増え、製造コストが増大するという問題がある。また、吸収体の膜厚を厚くする方法や2層の吸収体を積層する方法では、厚膜の吸収層を有するマスクブランクや2層の吸収層が積層されたマスクブランクのような特殊なマスクブランクが用いられる場合もあり、マスクブランクの製造工程が増え、マスクブランクに欠陥が発生する原因となる。
さらに、特許文献3に記載されているような、多層膜にイオン注入して多層膜の反射率を低下させる方法の場合、イオンの注入深さはイオンの種類や加速エネルギー等によって異なる。イオンの注入深さが浅いと、多層膜の結晶性を十分に破壊することができないので、所望の反射率が得られない。また、イオンの原子量が大きいと、イオン衝突による物理的なスパッタ効果が発生し、吸収体や多層膜が除去されてしまう。遮光領域の反射率を低下させるには、露光光を吸収する吸収体がイオン注入後も残存していることが望ましい。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、レジスト塗布、描画、現像、エッチング等の製造工程を増やすことなく、特殊なマスクブランクを準備する必要もなく、簡便に遮光領域を形成することが可能であり、高精度なパターン転写を実現することが可能な反射型マスクの製造方法、およびその製造方法に用いられる反射型マスク用イオンビーム装置、さらにはその製造方法により得られる反射型マスクを提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層とを有する反射型マスクを準備する準備工程と、上記吸収層のパターンが形成された回路パターン領域の外周に、水素またはヘリウムのイオンビームを照射し、上記多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成し、上記基板上に上記低反射部および上記吸収層が積層された遮光領域を形成する遮光領域形成工程とを有することを特徴とする反射型マスクの製造方法を提供する。
本発明によれば、回路パターン領域の外周に、イオンビームの照射により多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成し、遮光領域を形成するので、上述のような製造工程を増やすことなく、特殊なマスクブランクを準備する必要もなく、簡便に遮光領域を形成することが可能である。また本発明によれば、原子量が小さい水素またはヘリウムのイオンビームを照射するので、イオンの進入深さが深くなるため、多層膜中のほぼすべての層にわたって周期構造の規則性を乱すことができ、反射率をかなり低くすることが可能である。さらに、水素またはヘリウムのイオンビームは物質透過性が高く、水素およびヘリウムは上述のように原子量が小さいため、水素またはヘリウムのイオンビームは吸収層を透過するので、多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部上には吸収層が残存し、基板上に低反射部および吸収層が積層された遮光領域を得ることができる。そのため、遮光領域の反射率をより一層低くすることが可能である。したがって本発明においては、高精度で回路パターンを転写することができる反射型マスクを製造することが可能である。
上記発明においては、上記遮光領域形成工程では、プラズマにより上記イオンビームを発生させることが好ましい。ICP(誘導結合プラズマ)などの簡易な手法で生成したプラズマを用いることで、イオンビームの照射範囲を広くすることができ、ある程度の大きさを有する遮光領域の形成に有利だからである。
また本発明においては、上記遮光領域形成工程では、上記回路パターン領域の端部と上記遮光領域の端部との距離が0.1μm〜1000μmの範囲内となるように、上記イオンビームを照射することが好ましい。上記距離の下限が上記値であれば、位相シフトにより解像度を向上させることができる。また、遮光領域形成工程でのプロセスマージンを考慮すると、上記距離の下限は上記値であることが好ましい。一方、上記距離が長すぎると、反射型マスクの回路パターンをウェハ上に転写した際に、多重露光領域でのパターン不良の発生を抑制することが困難となる。
また本発明は、水素またはヘリウムのイオンを発生させるプラズマイオン源と、上記プラズマイオン源から放出されたイオンをビームとし、反射型マスクに照射する光学系と、反射型マスクを保持するステージとを有することを特徴とする反射型マスク用イオンビーム装置を提供する。
本発明の反射型マスク用イオンビーム装置は、水素またはヘリウムのイオンを発生させるプラズマイオン源を備えており、水素またはヘリウムのイオンビームを照射するものであるので、イオンの進入深さが深くなるため、多層膜中のほぼすべての層にわたって周期構造の規則性を乱すことができ、反射率をかなり低くすることが可能である。したがって、本発明の反射型マスク用イオンビーム装置を用いることにより、上述のような製造工程を増やすことなく、特殊なマスクブランクを準備する必要もなく、簡便に遮光領域を形成することが可能である。また、高精度で回路パターンを転写することができる反射型マスクを製造することが可能である。また本発明によれば、プラズマイオン源としてICP(誘導結合プラズマ)などの簡易な手法で高密度なプラズマを生成するプラズマイオン源を用いることができ、またイオンビームの照射範囲を広くすることができ、ある程度の大きさを有する遮光領域を形成する場合に非常に有利である。
また本発明は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層とを有する反射型マスクであって、上記吸収層のパターンが形成された回路パターン領域と、上記回路パターン領域の外周に配置され、上記基板上に上記多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部および上記吸収層が積層された遮光領域とを有し、上記回路パターン領域の端部と上記遮光領域の端部との距離が0.1μm〜1000μmの範囲内であることを特徴とする反射型マスクを提供する。
本発明によれば、回路パターン領域の外周に、基板上に多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部および吸収層が積層された遮光領域を有し、遮光領域には吸収層が存在しているので、遮光領域の反射率をかなり低くすることができ、高精度なパターン転写を実現することができる反射型マスクとすることが可能である。また本発明によれば、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離が所定の範囲内であるので、本発明の反射型マスクの回路パターンをウェハ上に転写した際に、多重露光領域でのパターン不良の発生を効果的に抑制することが可能である。
本発明においては、原子量が小さい水素またはヘリウムのイオンビームを照射し、多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成し、基板上に低反射部および吸収層が積層された遮光領域を形成するので、上述のような製造工程を増やすことなく、特殊なマスクブランクを準備する必要もなく、簡便に遮光領域を形成することが可能であり、高精度なパターン転写を実現することが可能な反射型マスクを得ることができるという効果を奏する。
本発明の反射型マスクの製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の反射型マスクの一例を示す概略平面図である。 本発明の反射型マスクを用いたステップアンドリピート方式の露光の一例を示す模式図である。 本発明の反射型マスクにおける多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部の一例を示すTEM写真である。 本発明の反射型マスクの他の例を示す概略平面図である。 本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の反射型マスクの他の例を示す概略平面図である。 位相シフトによる解像度向上を説明するための模式図である。 本発明の反射型マスク用イオンビーム装置の一例を示す模式図である。 本発明の反射型マスクの他の例を示す概略断面図である。 本発明の反射型マスクの他の例を示す概略断面図である。 実施例1のシミュレーションによる加速電圧とイオン進入深さとの関係を示すグラフである。 実施例2における反射型マスクのイオン未照射部(正常な多層膜)とイオン照射部(周期構造の規則性を乱した多層膜)の反射率を示すグラフである。 実施例4において遮光領域を有さない反射型マスクを用いたときの露光回数と転写寸法との関係を示すグラフである。 実施例4において遮光領域を有する反射型マスクを用いたときの露光回数と転写寸法との関係を示すグラフである。
以下、本発明の反射型マスクの製造方法、反射型マスク用イオンビーム装置、および反射型マスクについて詳細に説明する。
A.反射型マスクの製造方法
まず、本発明の反射型マスクの製造方法について説明する。
本発明の反射型マスクの製造方法は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層とを有する反射型マスクを準備する準備工程と、上記吸収層のパターンが形成された回路パターン領域の外周に、水素またはヘリウムのイオンビームを照射し、上記多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成し、上記基板上に上記低反射部および上記吸収層が積層された遮光領域を形成する遮光領域形成工程とを有することを特徴とする。
図1(a)〜(d)は、本発明の反射型マスクの製造方法の一例を示す工程図である。まず、図1(a)に示すように、基板2上に多層膜3とキャッピング層4と吸収層5とが順に積層されたマスクブランクを準備する。次いで、図1(b)に示すように、吸収層5をパターニングして、反射型マスク21を作製する(準備工程)。この反射型マスク21は、吸収層5のパターンが形成された回路パターン領域11と、回路パターン領域11の外周に配置され、回路パターン領域11以外の領域である外周領域12とを有している。次に、図1(c)〜(d)に示すように、回路パターン領域11の外周に、水素またはヘリウムのイオンビーム27を照射して、多層膜3の周期構造の規則性を乱し、低反射部3aを形成する。この低反射部3aでは、多層膜3の周期構造の規則性が乱されているので、EUV反射率の低い領域となる。これにより、基板2上に低反射部3aおよび吸収層5が積層された遮光領域13が形成される(遮光領域形成工程)。このようにして、反射型マスク1が得られる。
本発明によれば、回路パターン領域の外周に、イオンビームの照射により多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成し、遮光領域を形成するので、レジスト塗布、描画、現像、エッチング等の製造工程を増やすことなく、特殊なマスクブランクを準備する必要もなく、簡便に遮光領域を形成することが可能である。
また、特許文献3に記載されているような、レジストパターンを利用して多層膜にイオン注入する方法では、加速エネルギーを強くするとレジストパターンをイオンが透過してしまうおそれがあるため、遮光領域を精度良く形成することは困難である。
これに対し本発明においては、イオンビームを照射して遮光領域を形成しており、イオンビームは直進性を有するので、精度良く遮光領域を形成することが可能である。
図2は、本発明の反射型マスクの製造方法により製造される反射型マスクの一例を示す概略平面図であり、図3は、本発明により製造される反射型マスクを用いたステップアンドリピート方式の露光の一例を示す模式図である。図2に示すように、反射型マスク1は、回路パターン領域11(図中、二点鎖線で示す。)と、回路パターン領域11の外周に配置され、回路パターン領域11以外の領域である外周領域12と、回路パターン領域11の外周に配置され、外周領域12内に配置された遮光領域13(図中、網かけで示す。)とを有している。図3に、ウェハ51と反射型マスク1の各領域との関係を示す。図2に示す反射型マスク1を用いて、図3に示すように、ウェハ51の4箇所に回路パターンを転写する場合、ステップアンドリピート方式により4回の露光が行われる。通常は、回路パターン領域11よりも若干広い領域で露光するため、露光領域15(図中、破線で示す。)は回路パターン領域11よりも多少広くなる。また、ウェハ51から可能な限り多くのチップを取り出すため、回路パターン領域11は互いに可能な限り近接して転写される。そのため、ウェハ51においては、複数回露光され、露光領域15が重なり合う領域(多重露光領域)が存在し、例えばウェハ51の中央部は4回露光されることとなる。さらに、ウェハ51の中央部では、回路パターン領域11でも他の3回の露光の外周領域12と重なることとなる。
従来のような、レジストパターンを利用して多層膜にイオン注入する方法では、上述のように、加速エネルギーを強くするとレジストパターンをイオンが透過してしまうおそれがあるため、イオンのエネルギーを弱くする必要があり、エネルギーが弱いと注入するイオンの散乱も大きく遮光領域の端部の位置制御は難しく、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部とはある程度の間隔をおいて離れていることが望ましい。しかしながら、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部とが大きく離れていると、本発明により製造される反射型マスクを用いてステップアンドリピート方式の露光を行った場合、ウェハの多重露光領域において反射型マスクの遮光領域による遮光効果が得られず、パターン不良が発生してしまう。
これに対し本発明においては、イオンビームを照射して遮光領域を形成しており、イオンビームは直進性を有するので、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部とが近接するように遮光領域を形成することができる。したがって、本発明により製造される反射型マスクを用いてステップアンドリピート方式の露光を行った場合、ウェハの多重露光領域において反射型マスクの遮光領域による遮光効果を十分に得ることができる。
さらに本発明において、水素およびヘリウムは原子量が小さいので、イオンの進入深さが深くなるため、多層膜中のほぼすべての層にわたって周期構造の規則性を乱すことができ、反射率をかなり低くすることが可能である。
また、イオンの原子量が大きい場合は、イオン衝突による物理的なスパッタ効果が発生するが、イオンの原子量が照射対象物と比較して十分に小さい場合は、スパッタ効果が発生しにくくなる。水素またはヘリウムのイオンビームは物質透過性が高く、原子量が小さい水素またはヘリウムのイオンビームは吸収層を透過することができるので、吸収層を除去することなく、吸収層の下に形成されている多層膜の周期構造の規則性を乱すことができる。そのため、遮光領域には、すなわち多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部上には、吸収層が残存しており、基板上に低反射部および吸収層が積層された遮光領域を得ることができる。したがって、遮光領域の反射率をより一層低くすることが可能である。
よって本発明においては、本発明により製造される反射型マスクを用いてステップアンドリピート方式の露光を行った場合、ウェハにおける多重露光領域の露光量を極めて少なくすることができ、高精度なパターン転写を実現することが可能となる。
なお、「多層膜の周期構造の規則性を乱す」とは、多層膜を構成する各層の界面や、多層膜の周期構造を不明瞭にすることをいう。図4は、本発明における多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部の一例を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。図4において、多層膜3では2種類の層が約40層ずつ(約40対)形成されており、多層膜3の上側の領域Uでは約30対について層の界面や周期構造が不明瞭となっており、周期構造の規則性が乱されている。層の界面や周期構造が不明瞭であると、EUVの反射特性が損なわれる。そのため、低反射部はEUV反射率の低い領域となる。
以下、本発明の反射型マスクの製造方法における各工程について説明する。
1.準備工程
本発明における準備工程は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層とを有する反射型マスクを準備する工程である。
本発明において、準備工程は、例えば、市販のマスクブランクを用いて吸収層をパターニングする工程であってもよく、マスクブランクを作製した後、吸収層をパターニングする工程であってもよい。
以下、反射型マスクを構成する各層およびそれらの形成方法について説明する。
(1)多層膜
本発明における多層膜は、基板上に形成されるものであり、本発明の反射型マスクを用いたEUVリソグラフィにおいてEUVを反射するものである。
多層膜の材料としては、一般的に反射型マスクの多層膜に使用されるものを用いることができ、中でも、EUVに対する反射率が極めて高い材料を用いることが好ましい。反射型マスク使用時においてコントラストを高めることができるからである。例えば、EUVを反射する多層膜としては、通常、Mo/Siの周期多層膜が用いられる。また、特定の波長域で高い反射率が得られる多層膜として、例えば、Ru/Siの周期多層膜、Mo/Beの周期多層膜、Mo化合物/Si化合物の周期多層膜、Si/Nbの周期多層膜、Si/Mo/Ruの周期多層膜、Si/Mo/Ru/Moの周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ruの周期多層膜等も用いることができる。
多層膜を構成する各層の膜厚や、各層の積層数としては、使用する材料に応じて異なるものであり、適宜調整される。例えば、Mo/Siの周期多層膜としては、数nm程度の厚さのMo膜とSi膜とが40層〜60層ずつ積層された多層膜を用いることができる。
多層膜の厚みとしては、例えば280nm〜420nm程度とすることができる。
多層膜の成膜方法としては、例えば、イオンビームスパッタ法やマグネトロンスパッタ法などが用いられる。
(2)吸収層
本発明における吸収層は、多層膜上にパターン状に形成されるものであり、本発明の反射型マスクを用いたEUVリソグラフィにおいてEUVを吸収するものである。
吸収層の材料としては、EUVを吸収可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Ta、TaN、Taを主成分とする材料、Cr、Crを主成分としN、O、Cから選ばれる少なくとも1つの成分を含有する材料等が用いられる。さらに、TaSi、TaSiN、TaGe、TaGeN、WN、TiN等も使用可能である。
吸収層の成膜方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、CVD法、蒸着法などが用いられる。
吸収層をパターン状に形成する方法としては、通常、フォトリソグラフィー法が用いられる。具体的には、多層膜が形成された基板上に吸収層を形成し、この吸収層上にレジスト層を形成し、レジスト層をパターニングし、レジストパターンをマスクとして吸収層をエッチングし、残存するレジストパターンを除去して、吸収層をパターン状に形成する。フォトリソグラフィー法としては、一般的な方法を用いることができる。
(3)キャッピング層
本発明においては、多層膜と吸収層との間にキャッピング層が形成されていてもよい。キャッピング層は、多層膜の酸化防止や、反射型マスクの洗浄時の保護のために設けられるものである。キャッピング層が形成されていることにより、多層膜の最表面がSi膜やMo膜である場合には、Si膜やMo膜が酸化されるのを防ぐことができる。Si膜やMo膜が酸化されると、多層膜の反射率が低下するおそれがある。
本発明において、多層膜上に後述のバッファ層が形成されている場合には、通常、多層膜上にキャッピング層およびバッファ層の順に積層される。
キャッピング層の材料としては、上記機能を発現するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、SiやRu等が挙げられる。
また、キャッピング層の厚みとしては、例えば2nm〜15nm程度とすることができる。
キャッピング層の成膜方法としては、スパッタリング法等を挙げることができる。
(4)バッファ層
本発明においては、多層膜と吸収層との間にバッファ層が形成されていてもよい。バッファ層は、下層の多層膜に損傷を与えるのを防止するために設けられるものである。バッファ層が形成されていることにより、吸収層をドライエッチング等の方法でパターンエッチングする際に、下層の多層膜がダメージを受けるのを防止することができる。
バッファ層の材料としては、耐エッチング性が高いものであればよく、通常、吸収層とエッチング特性の異なる材料、すなわち吸収層とのエッチング選択比が大きい材料が用いられる。バッファ層および吸収層のエッチング選択比は5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上である。さらに、バッファ層の材料としては、低応力で、平滑性に優れた材料であることが好ましい。特にバッファ層の平滑性は、0.3nmRms以下であることが好ましい。このような観点から、バッファ層の材料は、微結晶またはアモルファス構造であることが好ましい。
このようなバッファ層の材料としては、例えば、SiO、Al、Cr、CrN等が挙げられる。
また、バッファ層の厚みとしては、例えば2nm〜25nm程度とすることができる。
バッファ層の成膜方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法などが挙げられる。Crを用いる場合は、RFマグネトロンスパッタ法によりCrターゲットを用いてArガス雰囲気下で、多層膜上にCrを成膜するのが好ましい。
多層膜上にバッファ層が形成されている場合には、吸収層のパターニング後に、露出しているバッファ層を剥離してもよい。バッファ層の剥離方法としては、一般的なバッファ層の剥離方法を用いることができ、例えばドライエッチング等を挙げることができる。
(5)基板
本発明に用いられる基板としては、一般的に反射型マスクの基板に使用されるものを用いることができ、例えば、ガラス基板や金属基板を使用することができる。中でも、ガラス基板が好ましく用いられる。ガラス基板は、良好な平滑性および平坦度が得られるので、特に反射型マスク用基板として好適である。ガラス基板の材料としては、例えば、石英ガラス、低熱膨張係数を有するアモルファスガラス(例えばSiO−TiO系ガラス等)、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等が挙げられる。また、金属基板の材料としては、例えば、シリコン、Fe−Ni系のインバー合金等が挙げられる。
基板は、反射型マスクの高反射率および転写精度を得るために、平滑性が0.2nmRms以下であることが好ましく、また平坦度が100nm以下であることが好ましい。なお、平滑性を示す単位Rmsは、二乗平均平方根粗さであり、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。また、平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を示す値である。この値は、基板表面を元に最小二乗法で定められる平面を焦平面としたとき、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある最も低い位置の高低差の絶対値である。また、上記平滑性は10μm角エリアでの平滑性であり、上記平坦度は142mm角エリアでの平坦度である。
また、基板の厚みとしては、例えば6mm〜7mm程度とすることができる。
(6)導電膜
本発明においては、基板の多層膜および吸収層が形成されている面の反対面に導電膜が形成されていてもよい。導電膜は、本発明の反射型マスクを露光装置の静電チャックに吸着させるために設けられるものである。このような導電膜を有することにより、露光時に反射型マスクを容易、かつ、強固に露光装置に固定することが可能となり、パターン転写精度および製造効率を向上させることができる。
導電膜の材料としては、一般的に反射型マスクの導電膜に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、導電性を示すCr、CrN等の金属または金属化合物が用いられる。
また、導電膜の厚みとしては、例えば30nm〜150nm程度とすることができる。
導電膜の成膜方法としては、スパッタリング法等を挙げることができる。また、導電膜をパターン状に形成する場合、その形成方法としては、マスクを介したスパッタリング法やフォトリソグラフィー法等を用いることができる。
2.遮光領域形成工程
本発明における遮光領域形成工程は、上記吸収層のパターンが形成された回路パターン領域の外周に、水素またはヘリウムのイオンビームを照射し、上記多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成し、上記基板上に上記低反射部および上記吸収層が積層された遮光領域を形成する工程である。
イオンビームのイオンは、水素(H)またはヘリウム(He)である。水素やヘリウムは、安定したイオンビームを照射することができるという利点を有する。さらに、ヘリウムは、取扱いが容易であるという利点も有する。
イオンビームの生成には、プラズマイオン源にて発生させるプラズマを用いることが好ましい。プラズマを用いることで、イオンビームの照射範囲を広くすることができ、ある程度の大きさを有する遮光領域の形成に有利だからである。
プラズマイオン源は、水素またはヘリウムのイオンを発生させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、簡易な手法で高密度なプラズマを生成可能な、ICP等のプラズマ装置が挙げられる。
イオンビームとしては、水素またはヘリウムをイオン源とするものであればよく、通常、集束イオンビームが用いられる。集束イオンビームは、高度な加工が可能である。
イオンビームの照射条件としては、本発明により製造される反射型マスクを用いてステップアンドリピート方式の露光を行った場合、ウェハの多重露光領域における露光量を解像に寄与しない量とすることができる条件であればよく、イオン源の種類や、多層膜および吸収層の膜厚や材料等に応じて適宜選択される。具体的には、遮光領域の反射率が0.5%以下となるような条件であることが好ましい。
より具体的には、加速電圧は10kV〜100kVの範囲内であることが好ましく、中でも10kV〜50kVの範囲内、特に10kV〜40kVの範囲内であることがより好ましい。加速電圧が低すぎると、イオンの進入深さが多層膜の表面付近までとなり、遮光領域にて所望のEUV反射率を得ることが困難になる場合があり、加速電圧が高すぎると、反射型マスクがダメージを受けるおそれがあるからである。
また、イオン照射量は、1×1013 ions/cm2〜1×1019 ions/cm2の範囲内とすることができる。
イオンビームを照射する位置としては、回路パターン領域の外周であればよい。本発明においては、上述したように、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部とが近接するように遮光領域を形成することができる。すなわち、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離を小さくすることができる。
ここで、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離について説明する。
図1(a)〜(d)は本発明の反射型マスクの製造方法の一例を示す工程図であり、図5は本発明の反射型マスクの製造方法により製造される反射型マスクの一例を示す概略平面図であり、図5のA−A線断面図は図1(d)である。また、図6(a)〜(d)は本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図であり、図7は本発明の反射型マスクの製造方法により製造される反射型マスクの他の例を示す概略平面図であり、図7のB−B線断面図は図6(d)である。図1(d)および図5に示す反射型マスクは、回路パターン領域の吸収層による被覆面積が多い、いわゆるポジ型マスクであり、図6(d)および図7に示す反射型マスクは、回路パターン領域の吸収層による被覆面積が少ない、いわゆるネガ型マスクである。なお、図5および図7においてキャッピング層は省略されている。
ここで、「回路パターン領域」とは、吸収層のパターンが形成された領域をいう。回路パターン領域は、ステップアンドリピート方式の露光装置(ステッパー)に反射型マスクを装着したときに、認識され得る。図1(d)および図5に示すようなポジ型マスクの場合、回路パターン領域11(図中、二点鎖線で示す。)は、吸収層5のパターンが形成された領域であり、回路パターン領域11の少なくとも一部は吸収層5のパターンの開口部により画定され得る。一方、図6(d)および図7に示すようなネガ型マスクの場合、回路パターン領域11(図中、二点鎖線で示す。)は、吸収層5のパターンが形成された領域であり、吸収層5のパターンの開口部により画定され得る。
「回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離」とは、図5および図7に示すような回路パターン領域11(図中、二点鎖線で示す。)の外周の端部と遮光領域13(図中、一点鎖線で示す。)の内周の端部との距離d1〜d4をいう。
図8(a)、(b)は、位相シフトによる解像度向上を説明するための模式図である。一般に、反射型マスクにおいては、図8(a)に示すように、吸収層5を透過して多層膜3で反射された光L1と多層膜3で反射された光L2とが180度の位相差を与えるように、吸収層5の膜厚等が設計されている。吸収層5を透過して多層膜3で反射された光L1と多層膜3で反射された光L2とは位相が180度異なるため、吸収層5が形成されている領域と吸収層5が形成されていない領域との境界では、回折光同士が打ち消し合い、光強度が極めて小さくなる。すなわち、図8(b)に示すように反射率が極めて小さくなる。これにより、コントラストが向上し、転写精度が向上する。なお、位相差は原理上180度が最良であるが、実質的に175度〜185度程度であれば、解像度向上効果が得られる。
このような位相シフト効果を得るためには、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離は所定の値よりも大きいことが好ましい。すなわち、図8(c)に例示するように、吸収層5を往復する光Lを得るためには、下記式(1)を満足する必要があることから、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離は下記式(1)を満たすことが好ましい。
d>t×tanθ …(1)
ここで、式(1)中、tは吸収層の膜厚、θは露光光の入射角度を表す。
例えば、吸収層の膜厚tが66nm、露光光の入射角度θが6度のとき、d>6.9nmと算出され、吸収層の膜厚tが66nm、露光光の入射角度θが11度のとき、d>12.8nmと算出される。
したがって、回路パターン領域11の端部と遮光領域13の端部との距離dが上記式(1)を満たす場合には、回路パターン領域11と外周領域12との境界にて、反射率を極めて小さくすることができ、高精度なパターン転写を実現することが可能となる。
回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離は、上記のような位相シフト効果を考慮すれば、上記式(1)を満たしていればよい。一方、実際には、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離は、位相シフト効果に加えて、プロセスマージン、ステップアンドリピート方式の露光により形成される多重露光領域等に応じて適宜選択される。具体的に、イオンビームを照射する際には、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離が0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜500μmの範囲内、特に0.1μm〜300μmの範囲内となるように、イオンビームを照射することが好ましい。上記距離の下限が上記値であれば、位相シフトにより解像度を向上させることができる。また、遮光領域形成工程でのプロセスマージンを考慮すると、上記距離の下限は上記値であることが好ましい。一方、上記距離が長すぎると、反射型マスクの回路パターンをウェハ上に転写した際に、ウェハの多重露光領域に対する反射型マスクの遮光領域の遮光効果が得られず、パターン不良の発生を抑制することが困難となる。
回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離は、上記範囲内であればよく、すべて同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば図5および図7に示す反射型マスクにおいて、回路パターン領域11の端部と遮光領域13の端部との距離d1〜d4はいずれも上記範囲内であればよく、同じであってもよく、異なっていてもよい。
多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成する際、多層膜を構成する層のうち、周期構造の規則性を乱す層の数としては、本発明により製造される反射型マスクを用いてステップアンドリピート方式の露光を行った場合、ウェハの多重露光領域における露光量を解像に寄与しない量とすることができれば特に限定されるものではない。例えば、多層膜中のすべての層の周期構造の規則性を乱してもよく、多層膜中の4分の3程度の層の周期構造の規則性を乱してもよい。遮光領域の反射率が所望の値、好ましくは0.5%以下になるのであれば、多層膜中のすべての層の周期構造の規則性を乱す必要はなく、反射型マスクへのダメージを軽減しつつ、多層膜の周期構造の規則性を乱すことができる。
遮光領域は、基板上に低反射部および吸収層が積層された領域である。反射型マスクにおいて、多層膜および吸収層に間にキャッピング層やバッファ層が形成されている場合には、遮光領域は、基板上に低反射部、キャッピング層、バッファ層、吸収層が積層された領域となり得る。
遮光領域の反射率としては、本発明により製造される反射型マスクを用いてステップアンドリピート方式の露光を行った場合、ウェハの多重露光領域における露光量を解像に寄与しない量とすることができれば特に限定されないが、0.5%以下であることが好ましい。
遮光領域は、回路パターン領域の外周に配置されていればよく、回路パターン領域の外周の一部に形成されていてもよく、回路パターン領域の外周全周に形成されていてもよいが、多重露光領域での不良パターンの発生を効果的に抑制するためには、回路パターン領域の外周全周に形成されていることが好ましい。
遮光領域の形状は、遮光領域を回路パターン領域の外周に配置することができる形状であればよいが、通常は枠状である。
遮光領域の寸法は、多重露光領域での不良パターンの発生を防ぐことができれば特に限定されるものではなく、反射型マスクの寸法、本発明により製造される反射型マスクを用いてステップアンドリピート方式の露光を行う場合の露光領域の寸法等により適宜調整される。
B.反射型マスク用イオンビーム装置
次に、本発明の反射型マスク用イオンビーム装置について説明する。
本発明の反射型マスク用イオンビーム装置は、水素またはヘリウムのイオンを発生させるプラズマイオン源と、上記プラズマイオン源から放出されたイオンをビームとし、反射型マスクに照射する光学系と、反射型マスクを保持するステージとを有することを特徴とするものである。
図9は、本発明の反射型マスク用イオンビーム装置の一例を示す模式図である。反射型マスク用イオンビーム装置30は、反射型マスク1を収容するチャンバー31と、反射型マスク1を保持するステージ32と、水素またはヘリウムのイオンを発生および放出するプラズマイオン源33およびプラズマイオン源33から放出されたイオンビームIBを反射型マスク1に照射する光学系34を有するイオンビーム照射系35と、反射型マスク1およびイオンビームIBのアライメントを行うために設けられた電子検出器36と、イオンビームIBを走査し、ステージ32、イオンビーム照射系35、電子検出器36およびモニタ38に接続された制御系37と、イオンビームIBの照射範囲を表示するモニタ38とを有している。
ステージ32は、反射型マスク1をXY方向に移動させ、反射型マスク1表面の任意の領域にイオンビームを照射することができるように走査される。
電子検出器36は、反射型マスク1に電子線を照射した際に発生した電子を確認することができるものである。多層膜と吸収層とは組成が異なるため、電子線を照射した場合に2次電子の発生量が異なる。そのため、濃淡の異なる画像が得られ、反射型マスクの回路パターン領域の位置情報が得られる。
制御系37は、ステージ32、イオンビーム照射系35、電子検出器36およびモニタ38に接続されており、モニタ38を見ながら反射型マスク1およびイオンビームIBのアライメントやイオンビームIBの照射範囲の設定を実施する。
イオンビーム照射系35は、プラズマイオン源33と光学系34とを有し、光学系34は、イオンビームIBを形成するアパチャ41および光軸調整部42と、イオンビームIBを集束させる対物レンズ43と、イオンビームIBを走査する偏向レンズ44とを有している。
本発明の反射型マスク用イオンビーム装置を用いて、反射型マスクにおける回路パターン領域の外周に遮光領域を形成する方法について説明する。
まず、反射型マスク用イオンビーム装置30において、反射型マスク1の回路パターン領域の位置情報を取得し、回路パターン領域の外周に水素またはヘリウムのイオンビームIBが照射されるように、反射型マスク1が設置されたステージ32を走査して反射型マスク1のアライメントを行う。ステージ32は、XY方向へ反射型マスク1を移動させるものであり、このステージ32を走査することによって、反射型マスク1およびイオンビームIBのアライメントを行う。
次に、反射型マスク1における回路パターン領域の外周にイオンビームIBを照射して、多層膜の周期構造の規則性を乱す。これにより、低反射部が形成され、基板上に低反射部および吸収層が積層された遮光領域が形成される。
本発明の反射型マスク用イオンビーム装置は、原子量が小さい水素またはヘリウムのプラズマイオン源を備え、水素またはヘリウムのイオンビームを照射するものであるので、イオンの進入深さが深くなるため、多層膜中のほぼすべての層にわたって周期構造の規則性を乱すことができ、反射率をかなり低くすることが可能である。したがって、本発明の反射型マスク用イオンビーム装置を用いることにより、上述のような製造工程を増やすことなく、特殊なマスクブランクを準備する必要もなく、簡便かつ高精度に遮光領域を形成することが可能である。また、高精度で回路パターンを転写することができる反射型マスクを製造することが可能である。また本発明によれば、プラズマイオン源を備えるので、イオンビームの照射範囲を広くすることができ、ある程度の大きさを有する遮光領域を形成する場合に非常に有利である。
以下、本発明の反射型マスク用イオンビーム装置における各構成について説明する。
1.イオンビーム照射系
本発明におけるイオンビーム照射系は、水素またはヘリウムのイオンを発生させるプラズマイオン源と、上記プラズマイオン源から放出されたイオンをビームとし、反射型マスクに照射する光学系とを有するものであり、反射型マスクに水素またはヘリウムのイオンビームを照射するものである。
プラズマイオン源としては、例えば、ICPイオン源などの簡易な手法で高密度なプラズマを生成するプラズマイオン源が用いられる。
イオンビームのイオンは、水素(H)またはヘリウム(He)のイオンである。水素やヘリウムは、原子量が小さくイオンの進入深さが深くなるだけでなく、安定したイオンビームを照射することができるという利点を有する。さらに、ヘリウムは、取扱いが容易であるという利点も有する。
イオンビーム照射系は、水素またはヘリウムのプラズマイオン源を備え、水素またはヘリウムのイオンビームを照射することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なものを使用することができる。
なお、イオンビーム、照射条件等については、上記「A.反射型マスクの製造方法」に記載したので、ここでの説明は省略する。
2.ステージ
本発明におけるステージは、反射型マスクを保持するものである。ステージは、反射型マスクをXY方向に移動させ、反射型マスク表面の任意の領域にイオンビームを照射することができるように走査することができるものであれば特に限定されるものではない。
3.その他の構成
本発明の反射型マスク用イオンビーム装置は、上記イオンビーム照射系およびステージの他に、図9に例示するように、チャンバー、電子検出器、制御系、モニタ等を有していてもよい。
C.反射型マスク
次に、本発明の反射型マスクについて説明する。
本発明の反射型マスクは、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層とを有する反射型マスクであって、上記吸収層のパターンが形成された回路パターン領域と、上記回路パターン領域の外周に配置され、上記基板上に上記多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部および上記吸収層が積層された遮光領域とを有し、上記回路パターン領域の端部と上記遮光領域の端部との距離が0.1μm〜1000μmの範囲内であることを特徴とするものである。
本発明の反射型マスクについて、図面を参照しながら説明する。
図5は本発明の反射型マスクの一例を示す概略平面図、図10は図5のA−A線断面図である。図5および図10に例示するように、反射型マスク1は、基板2と、基板2上に形成された多層膜3と、多層膜3上に形成されたキャッピング層4と、キャッピング層4上にパターン状に形成された吸収層5とを有している。また、反射型マスク1は、吸収層5のパターンが形成された回路パターン領域11と、回路パターン領域11の外周に配置され、回路パターン領域11以外の領域である外周領域12と、回路パターン領域11の外周に配置され、外周領域12内に配置され、基板2上に多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部3aおよび吸収層5が積層された遮光領域13とを有している。そして、回路パターン領域11の端部と遮光領域13の端部との距離d1〜d4は所定の範囲内となるように設定されている。
図7は本発明の反射型マスクの他の例を示す概略平面図、図11は図7のB−B線断面図である。図7および図11に例示する反射型マスク1の構成は、上述の図5および図10に示す反射型マスク1の構成と同様である。
本発明によれば、回路パターン領域の外周に、基板上に多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部および吸収層が積層された遮光領域を有し、遮光領域には吸収層が存在しているので、遮光領域の反射率をかなり低くすることが可能である。
図5および図10に示す反射型マスクはポジ型マスクであり、図7および図11に示す反射型マスクはネガ型マスクである。なお、図5および図7においてキャッピング層は省略されている。
ここで、「回路パターン領域」とは、吸収層のパターンが形成された領域をいう。図5および図10に示すようなポジ型マスクの場合、回路パターン領域11(図5中、二点鎖線で示す。)は、吸収層5のパターンが形成された領域であり、回路パターン領域11の少なくとも一部は吸収層5のパターンの開口部により画定され得る。一方、図7および図11に示すようなネガ型マスクの場合、回路パターン領域11(図7中、二点鎖線で示す。)は、吸収層5のパターンが形成された領域であり、吸収層5のパターンの開口部により画定され得る。
「回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離」とは、図5および図7に示すような回路パターン領域11(図中、二点鎖線で示す。)の外周の端部と遮光領域13(図中、一点鎖線で示す。)の内周の端部との距離d1〜d4をいう。
本発明によれば、上記「A.反射型マスクの製造方法 2.遮光領域形成工程」の項に記載したように、回路パターン領域11の端部と遮光領域13の端部との距離d1〜d4が上記範囲内であることにより、回路パターン領域11と外周領域12との境界にて、反射率を極めて小さくすることができる。
また、上記距離が上記範囲よりも短いと、位相シフトによる解像度向上の効果が得られなかったり、遮光領域形成時のプロセスマージンが小さくなったりするおそれがある。一方、上記距離が上記範囲よりも長いと、反射型マスクの回路パターンをウェハ上に転写した際に、ウェハの多重露光領域に対する反射型マスクの遮光領域の遮光効果が得られず、パターン不良の発生を抑制することが困難となる。
したがって本発明においては、上記構成とすることにより、高精度なパターン転写を実現することができる反射型マスクとすることが可能である。
なお、反射型マスクを構成する基板、多層膜、吸収層、キャッピング層、回路パターン領域、遮光領域等の各構成、および、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離等については、上記「A.反射型マスクの製造方法」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
本発明の反射型マスクは、EUVを露光光として用いたリソグラフィ用の反射型マスクとして好ましく用いられる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
反射型マスクへのイオン進入深さの加速電圧依存性をシミュレーションにより算出した。計算モデルは、酸化珪素からなる基板上に、モリブデン(膜厚2.8nm)および珪素(膜厚4.2nm)の40対からなる多層膜と、ルテニウムからなるキャッピング層(膜厚2.5nm)と、タンタルからなる吸収層(膜厚66nm)とが順に積層された積層体において、吸収層表面に各種イオンを照射するものとした。イオンは、水素、ヘリウムの2種類とし、加速電圧は10kV〜100kVに設定した。
イオン照射により、多層膜の周期構造の規則性の乱れを発生させるためには、イオンが多層膜まで到達することが必要である。上記計算モデルにおいて、多層膜を構成する40層すべてに周期構造の規則性の乱れを発生させるためには、イオン進入深さは最大350nm必要となる。
図12に加速電圧とイオン進入深さとの関係を示す。この計算結果から、多層膜すべてに周期構造の規則性の乱れを発生させるためには、水素イオンでは18kV程度、ヘリウムイオンでは20kV程度の加速電圧で照射すればよいことがわかる。また、上記2種類のイオン種は、多層膜の周期構造の規則性に乱れを発生させる要件を満たすことがわかる。
[実施例2]
酸化珪素からなる基板上に、モリブデン(膜厚2.8nm)および珪素(膜厚4.2nm)の40対からなる多層膜と、珪素からなるキャッピング層(膜厚11nm)と、タンタルからなる吸収層(膜厚70nm)とが順に積層された積層体を準備した。積層体の吸収層の上から、ビームサイズ:1mm×1mm、加速電圧:20kV、照射量:2×1017ions/cm2でヘリウムのイオンビームを照射した。このとき、イオン照射部とイオン未照射部とで吸収層の膜厚に変化は見られなかった。その後、イオン照射部およびイオン未照射部のEUV反射率を測定するため、吸収層をすべてエッチング除去した。
EUV反射率計(EUV Technology社製、LPR1016−FS1515)を用いて、イオン未照射部(正常な多層膜)とイオン照射部(周期構造の規則性を乱した多層膜)の波長13.5nmにおける反射率を測定した。結果を図13に示す。イオン未照射部(正常な多層膜)とイオン照射部(周期構造の規則性を乱した多層膜)の反射率はそれぞれ61%と4%であり、イオン照射により反射率が低下することが確認された。
以上の結果から、吸収層の上からイオンビームを照射することにより、イオン照射部の多層膜の周期構造の規則性を乱し、EUVリソグラフィで問題とならない程度まで反射率を下げ得ることが実証された。
[実施例3]
酸化珪素からなる基板上にモリブデン(膜厚2.8nm)および珪素(膜厚4.2nm)の40対からなる多層膜を形成し、多層膜上にルテニウムからなるキャッピング層(膜厚2.5nm)を形成し、キャッピング層上にタンタルからなる吸収層(膜厚66nm)をエッチング加工したパターンを形成した。
反射型マスクにおける吸収層のパターンが形成された回路パターン領域の外周に、ヘリウムのICPイオン源を備えるイオンビーム装置を用いて、ビームサイズ:1mm×1mm、加速電圧:30kV、照射量:2×1017ions/cm2に設定したヘリウムのイオンビームを照射し、多層膜の周期構造の規則性を乱して、遮光領域を形成した。この際、回路パターンと遮光領域(イオン照射部)との距離が500nmとなるようにイオンビームを照射した。イオン照射部とイオン未照射部とでは吸収層の膜厚に変化は見られなかった。
イオン照射部およびイオン未照射部の反射率を上記EUV反射率計で測定したところ、回路パターンを構成する吸収層のパターンが形成されている部分の反射率が2%であったのに対し、イオン照射部(周期構造の規則性を乱した多層膜)(遮光領域)の反射率は0.1%であった。
また、遮光領域形成前後の反射型マスクの平坦度変化を計測したところ、平坦度に変化は観測されなかった。
一般的に、反射型マスクにおいては、基板の一方の面に多層膜および吸収層が形成され、他方の面に静電チャックのための導電膜が形成されており、応力がつりあっているため、平坦度が確保されている。
ここで、従来のように多層膜を除去して遮光領域を形成する場合、多層膜の除去面積によっては応力均衡が崩れ、反射型マスクの平坦度が劣化する。平坦度が劣化すると、リソグラフィ工程にてウェハに転写される回路パターンの位置精度が悪くなる。
これに対し、本発明においては、多層膜の周期構造の規則性を乱して遮光領域を形成するので、遮光領域での膜厚が厚く、応力の大きい多層膜および吸収層を除去しないため、遮光領域形成前後で反射型マスクの平坦度は変化しない。この点においても、本発明の有意性が確認された。
[実施例4]
酸化珪素からなる基板上にモリブデン(膜厚2.8nm)および珪素(膜厚4.2nm)の40対からなる多層膜を形成し、多層膜上にルテニウムからなるキャッピング層(膜厚2.5nm)を形成し、キャッピング層上にタンタルからなる吸収層(膜厚66nm)をhp225nm L/Sパターンに加工した回路パターンを形成した。
作製した反射型マスクの回路パターンを、キヤノン社製EUV露光装置SFET(Small Field Exposure Tool)を用い、ウェハ上のレジストに1/5縮小露光した。
まず、遮光領域の遮光特性を評価するため、遮光領域を有さない上記反射型マスクを用いて、図3に例示するように、ステップアンドリピート方式によりウェハ上に回路パターンを近接して4回露光し、露光領域が重なり合う領域(多重露光領域)を形成した。1回だけ露光したものつまり多重露光領域の無いものと、2〜4回露光したものつまり1〜3回露光領域が重なり多重露光領域が形成されたものとをそれぞれ準備した。露光後、レジストを薬液で現像することで、ウェハ上にhp45nm L/Sパターンを形成した。
多重露光領域によるレジスト寸法の変動量を測定したところ、図14に示すように、露光1回あたり、約3nmの寸法変動が測定された。一般的にウェハへの転写寸法の許容範囲は5%であることから、遮光領域を有さない反射型マスクの遮光領域の遮光能力は不足していることが確認された。
次に、遮光領域の効果を検証するため、反射型マスクの回路パターン領域の外周に、ヘリウムのICPイオン源を備えるイオンビーム装置を用いて、ビームサイズ:1mm×1mm、加速電圧:30kV、照射量:2×1017ions/cm2に設定したヘリウムのイオンビームを照射し、多層膜の周期構造の規則性を乱して、遮光領域を形成した。
その際、回路パターン領域の端部と遮光領域(イオン照射部)の端部との距離を100nmから1000μmの範囲で系統的に変化させて遮光領域を形成した。
作製した反射型マスクの回路パターンを、キヤノン社製EUV露光装置SFETを用い、ウェハ上のレジストに1/5縮小露光した。露光後のレジストを薬液で現像することで、ウェハ上にhp45nm L/Sパターンを形成した。
ウェハ上のレジスト寸法を計測することで、回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離が、ウェハ上のレジスト寸法に与える影響を測定したところ、図15に示すように、上記距離が1000μmの場合、4回露光を行っても、5%の寸法変動許容範囲を満足することが確認された。
本実験結果から、本発明の反射型マスクの遮光領域は優れた遮光特性を示し、遮光領域の設定は上記距離0.1μm〜1000μmの範囲内とすればよいことが確認された。
1 … 反射型マスク
2 … 基板
3 … 多層膜
3a … 低反射部
4 … キャッピング層
5 … 吸収層
11 … 回路パターン領域
12 … 外周領域
13 … 遮光領域
d,d1,d2,d3,d4 … 回路パターン領域の端部と遮光領域の端部との距離

Claims (5)

  1. 基板と、前記基板上に形成された多層膜と、前記多層膜上にパターン状に形成された吸収層とを有する反射型マスクを準備する準備工程と、
    前記吸収層のパターンが形成された回路パターン領域の外周に、水素またはヘリウムのイオンビームを照射し、前記多層膜の周期構造の規則性を乱して低反射部を形成し、前記基板上に前記低反射部および前記吸収層が積層された遮光領域を形成する遮光領域形成工程と
    を有することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
  2. 前記遮光領域形成工程では、プラズマにより前記イオンビームを発生させることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクの製造方法。
  3. 前記遮光領域形成工程では、前記回路パターン領域の端部と前記遮光領域の端部との距離が0.1μm〜1000μmの範囲内となるように、前記イオンビームを照射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射型マスクの製造方法。
  4. 水素またはヘリウムのイオンを発生させるプラズマイオン源と、
    前記プラズマイオン源から放出されたイオンをビームとし、反射型マスクに照射する光学系と、
    反射型マスクを保持するステージと
    を有することを特徴とする反射型マスク用イオンビーム装置。
  5. 基板と、前記基板上に形成された多層膜と、前記多層膜上にパターン状に形成された吸収層とを有する反射型マスクであって、
    前記吸収層のパターンが形成された回路パターン領域と、前記回路パターン領域の外周に配置され、前記基板上に前記多層膜の周期構造の規則性が乱された低反射部および前記吸収層が積層された遮光領域とを有し、
    前記回路パターン領域の端部と前記遮光領域の端部との距離が0.1μm〜1000μmの範囲内であることを特徴とする反射型マスク。
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