JP2012211370A - 電気抵抗層付き金属箔の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】抵抗素子の電気的特性を安定的に得ることができ、金属箔と金属箔上に配置される電気抵抗層との間の剥離を抑制可能で、且つ高いシート抵抗値を実現可能な電気抵抗層付き金属箔の製造方法を提供する。
【解決手段】光学的方法で測定した十点平均粗さRzが1μm以下であり、イオンビーム強度が0.70〜2.10sec・W/cm2のイオンビーム照射により処理された表面を有する金属箔上に、ニッケル、クロム、シリコンを含むスパッタリングターゲットを用いて、雰囲気気体として酸素を付与しながら気相成長法により電気抵抗層を形成させる工程を含む電気抵抗層付き金属箔の製造方法である。
【選択図】なし
【解決手段】光学的方法で測定した十点平均粗さRzが1μm以下であり、イオンビーム強度が0.70〜2.10sec・W/cm2のイオンビーム照射により処理された表面を有する金属箔上に、ニッケル、クロム、シリコンを含むスパッタリングターゲットを用いて、雰囲気気体として酸素を付与しながら気相成長法により電気抵抗層を形成させる工程を含む電気抵抗層付き金属箔の製造方法である。
【選択図】なし
Description
本発明は電気抵抗層付き金属箔の製造方法に関し、例えば、回路基板の表面又は内部に搭載可能な抵抗素子として利用可能な電気抵抗層付き金属箔の製造方法に関する。
最近、配線材料である銅箔上に更に電気抵抗材料からなる薄膜(電気抵抗層)を形成する技術が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。電子回路基板には電気抵抗素子が不可欠であるが、抵抗層を備えた銅箔を使用すれば銅箔上に形成された電気抵抗層をエッチングすることで抵抗素子が形成できる。抵抗の基板内蔵化により、従来のようにチップ抵抗素子を半田接合法を用いて基板上に表面実装する手法しかなかった場合に比べて、限られた基板の表面積を有効に利用することが可能となる。電気抵抗層としては、従来、例えばNiCr等の金属材料の抵抗体を使用することで、10ohm/sq〜250ohm/sq程度のシート抵抗値を得ていた。
しかしながら近年は、NiCr等の従来の金属材料で実現可能なシート抵抗値よりも、より高い抵抗値が要求されている。更に、NiCr等の従来の金属材料を用いると、抵抗素子を形成する際のエッチング液やエッチング選択性の影響、或いは、抵抗素子を形成した後の半田リフロー等の高温処理を行うことにより、強度の低下や最終的に得られる抵抗素子のシート抵抗値が所望の値から大きくずれる場合があり、十分な信頼性が得られない場合がある。
また、抵抗層を銅箔等の金属箔の表面上に形成して抵抗素子を形成する場合、少なくとも抵抗層と金属箔との間において剥離を生じさせない程度に接着強度を向上させる必要がある。一般に、金属箔表面の表面粗さを粗くすればするほど、金属箔と抵抗層との密着が向上するため、従来は、金属箔表面に粗化処理等の表面処理を行って表面粗さを増大させることが行われてきた。
しかしながら、金属箔の表面粗さを大きくしすぎると、金属箔上に形成される抵抗層の抵抗値のばらつきが大きくなる。特に、抵抗層を薄膜化する場合には、粗い金属箔の表面上に、例えばスパッタリング等により均一な薄膜状の抵抗層を形成しても、その表面粗さに起因して抵抗値ばらつきの増大が生ずる。その結果、所望の抵抗素子の電気的特性を安定的に得ることが難しくなる。
上記課題を鑑み、本発明は、抵抗素子の電気的特性を安定的に得ることができ、金属箔と金属箔上に配置される電気抵抗層との間の剥離を抑制可能で、且つ高いシート抵抗値を実現可能な電気抵抗層付き金属箔の製造方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、適切な金属箔上に、電気抵抗層として従来のNiCr等の金属合金層よりも固有値抵抗値が高い適切な材料をスパッタリングターゲットとして使用し、且つ電気抵抗層の製造時に雰囲気ガスとして酸素を付与することが有効であるとの知見を得た。
更に本発明者は電気抵抗層を配置する金属箔の表面特性について鋭意検討したところ、金属箔の表面を、従来のように粗化処理により特定の表面粗さの範囲(例えばRz6〜8μm)を有する表面に調節するのではなく、金属箔の表面に処理を施すことにより従来よりもむしろ表面粗さが小さくなるようにした金属箔を採用することにより、金属箔と抵抗層との剥離の抑制と、抵抗層の抵抗値ばらつきの低減を同時に実現可能であることを見出した。
かかる知見を基礎として完成した本発明は一側面において、光学的方法で測定した十点平均粗さRzが1μm以下であり、イオンビーム強度が0.70〜2.10sec・W/cm2のイオンビーム照射により処理された表面を有する金属箔上に、ニッケル、クロム、シリコンを含むスパッタリングターゲットを用いて、雰囲気気体として酸素を付与しながら気相成長法により電気抵抗層を形成させる工程を含む電気抵抗層付き金属箔の製造方法である。
本発明の電気抵抗層付き金属箔の製造方法は一実施態様において、電気抵抗層を形成させる工程が、電気抵抗層中の酸素濃度が20〜60at%となるように、雰囲気気体の酸素付与量を制御することを含む。
本発明の電気抵抗層付き金属箔の製造方法は別の一実施態様において、スパッタリングターゲットが、NiCrSi合金又はNiCrSiO合金を含む。
本発明の電気抵抗層付き金属箔の製造方法は更に別の一実施態様において、Niが2〜10at%、CrとSiの構成比率(Cr/(Cr+Si)×100[%])においてCrが73〜79at%、Oが10〜60at%含むスパッタリングターゲットを用いる。
本発明の電気抵抗層付き金属箔の製造方法は更に別の一実施態様において、雰囲気気体として酸素を0〜19vol%付与することを含む。
本発明の電気抵抗層付き金属箔の製造方法は更に別の一実施態様において、電気抵抗層上に熱可塑性樹脂層を更に配置することを更に含む。
本発明の電気抵抗層付き金属箔の製造方法は更に別の一実施態様において、金属箔が電解銅箔又は圧延銅箔である。
本発明によれば、抵抗素子の電気的特性を安定的に得ることができ、金属箔と金属箔上に配置される電気抵抗層との間の剥離を抑制可能で、且つ高いシート抵抗値を実現可能な電気抵抗層付き金属箔の製造方法が提供できる。
本発明の実施の形態に係る電気抵抗層付き金属箔の製造方法は、光学的方法で測定した十点平均粗さRzが1μm以下に調整された処理表面を有する金属箔上に、ニッケル、クロム、シリコンを含むスパッタリングターゲットを用いて、雰囲気気体として酸素を付与しながら気相成長法により電気抵抗層を形成させる工程を含む。
金属箔としては、例えば電解銅箔又は圧延銅箔を用いることができる。本実施形態の「銅箔」とは、銅箔の他に銅合金箔も含まれるものとする。なお、金属箔として電解銅箔を用いる場合は一般的な電解装置を用いて製造することが出来るが、本実施形態では、電解プロセスにおいて適切な添加剤を選択することや、ドラム回転速度の安定化など、銅箔の表面粗さが均一で厚みの一様な電解銅箔を形成しておくと好ましい。金属箔の厚みにも特に制限はないが、例えば箔厚が5〜70μm、特に箔厚が5〜35μmの金属箔が使用できる。
金属箔は、少なくとも一方の表面が、光学的方法で測定した十点平均粗さRzが1μm以下に調整された表面であることが好ましい。ここで、「光学的方法で測定した十点平均粗さRzが1μm以下、十点平均粗さRzのばらつきが±5%以内」の処理表面とは、0.2μm×0.2μm以下の分解能を持ち、光干渉式による光学的表面形状測定装置で測定した場合に得られる十点平均粗さRzの値を有する表面を意味する。
即ち、光干渉的表面形状測定装置により得られた粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートル(μm)で表した値で規定した場合の値を十点平均粗さRzとして定義するものである。
この測定方法を採用することにより、金属箔表面の表面粗さと抵抗層の抵抗値の相関関係をより具体的に把握することができる。言い換えれば、この測定方法によれば、平均粗さRzを所定の範囲内で大きくするにつれて一次関数的に抵抗層の抵抗値も上昇する傾向を評価できるため、製造者が、目標とする電気抵抗値に合わせて抵抗層の平均粗さRzを制御することにより、所望の電気抵抗値を有する抵抗層をより安定的に製造できる。
光干渉的表面形状測定機器としては、非接触3次元表面形状粗さ測定システム、品番NT1100(WYKOオプティカルプロファイラ(分解能0.2μm×0.2μm以下:Veeco社製))を用いることができる。システムの測定方式は、垂直走査型干渉方式(Vertical Scan Interferometry/VSI方式)であり、視野範囲は120μm×90μm、測定スキャン濃度が7.2μm/secである。干渉方式は、ミラウ干渉方式(対物レンズ50倍、内部レンズ1倍)である。
本実施形態においては、金属箔の粗さRzが1μm以下であれば、十分な密着強度を得ることができるが、粗さRzが0.5μm以下、更には0.4μm以下としても、本実施形態の効果を十分に発揮できる。粗さRzの下限値に特に制限はないが、例えば粗さRzは0.1nm以上とすることができる。
金属箔の表面には清浄化の為、表面処理が施される。具体的な表面処理手段としては、イオンビーム照射が行われるのが好ましい。金属箔表面にイオンビーム照射して表面の清浄化を図ることにより、金属箔とその上面に配置される抵抗層との密着強度が向上する。
イオンビーム照射は、照射量が少なすぎると密着強度が十分に得られない場合があり、逆に多すぎる場合は、電力消費量の増大により生産性が低下する。以下の条件に制限されるものではないが、例えば、イオンビーム強度が、0.70〜2.10sec・W/cm2、より好ましくは0.78〜1.50sec・W/cm2、とするのが好ましい。本実施形態で説明する「イオンビーム強度(sec・W/cm2)」とは次の式で算出される。
処理時間(sec)×イオンビーム電圧(V)×電流(A)/処理面積(cm2)
金属箔に対して照射する際のイオンビーム電力は、例えば製品幅が35cm、ラインスピードが0.65m/min(= 1.08cm/sec)の場合、
0.78(sec・W/cm2)×35(cm)×1.08(cm/sec)
=29.5(W)
となり、イオンビーム電力が約30W以上であれば充分な照射量となる。
処理時間(sec)×イオンビーム電圧(V)×電流(A)/処理面積(cm2)
金属箔に対して照射する際のイオンビーム電力は、例えば製品幅が35cm、ラインスピードが0.65m/min(= 1.08cm/sec)の場合、
0.78(sec・W/cm2)×35(cm)×1.08(cm/sec)
=29.5(W)
となり、イオンビーム電力が約30W以上であれば充分な照射量となる。
金属箔の表面処理を行った後は、表面処理後の金属箔の表面上に、気相反応法により電気抵抗層が形成される。気相反応法としては、スパッタリング装置等を用いた物理気相反応法が好適に用いられる。スパッタリング装置を用いる場合、スパッタリング装置の真空チャンバ内には、金属箔とスパッタリングターゲットが載置される。
スパッタリングターゲットの材料としては、電気抵抗層を形成した場合にNiCr合金よりも高い固有値抵抗値を示す金属材料を用いることが好ましく、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、シリコン(Si)を含むスパッタリングターゲットを用いることができる。Ni、Cr、Siを含むスパッタリングターゲット材料としては、以下に制限されないが、例えばNiCrSi合金、NiCrSiO合金などが利用可能である。Ni、Cr、Siを含むスパッタリングターゲット材料を使用することで、NiCr合金、或いはNiSiO合金等をスパッタリングターゲット材料とした場合に比べて、得られる電気抵抗層の高抵抗化及びシート抵抗値のバラツキの低減が図れるとともに、電気抵抗層の強度を向上させることができる。
また、本実施形態では、電気抵抗層形成時に酸素供給量を調節することにより、電気抵抗層中の酸素濃度を好適な範囲に調整でき、電気抵抗層の固有抵抗値を制御することが可能である。よって、スパッタリングターゲット材料の具体的組成に特に制限はなく、金属ターゲットであっても、酸化物ターゲットであってもよく、種々のスパッタリングターゲット材料を用いることができる。本発明によれば、スパッタリングターゲット材料を変更することなく、所望の固有抵抗値を有する電気抵抗層を形成することができるため、生産効率を向上できる。
以下に制限されるものではないが、例えば、スパッタリングターゲット材料としてNiCrSiO合金を使用する場合は、Niが2〜10at%(atomic %)、CrとSiの構成比率(Cr/(Cr+Si)×100[%])においてCrが73〜79at%、Oが10〜60at%含み、より好ましくはNiが2〜5at%、CrとSiの構成比率(Cr/(Cr+Si)×100[%])においてCrが76at%、Oが10〜60at%含む材料が好適に用いられる。
真空チャンバ内には、雰囲気気体として不活性ガスと反応性ガスが供給される。不活性ガスとしてはアルゴン(Ar)、窒素(N2)等が好適である。反応性ガスとしては、酸素ガスが用いられる。
酸素ガスは、最終的に得られる電気抵抗層中の酸素濃度が20〜60at%となるように、酸素付与量を制御することが好ましい。「電気抵抗層中の酸素濃度」とは、X線光電子分光法等により、電気抵抗層中の表面を数分程度アルゴンスパッタした後、極表面(深さ数nm程度)の酸素濃度を測定した場合の酸素濃度を意味する。電気抵抗層中の酸素濃度が20at%より小さい場合には、電気抵抗層のシート抵抗値が有意に向上しない場合がある。一方、電気抵抗層中の酸素濃度が60at%より大きい場合には、電気抵抗層が透明なガラス状になり所望の特性が得られない場合がある。
以下の例に制限されないが、例えば、スパッタリングターゲットとして、Niが4at%、Crが60at%、SiOが36at%のNiCrSiO合金を用いて電気抵抗層を蒸着させる場合は、真空チャンバ内に0〜19vol%、好ましくは2〜17vol%程度のガス中酸素比率で酸素を付与することで電気抵抗層中の酸素濃度を20〜60at%に制御できる。
スパッタリングの際に導入する酸素濃度に変動があると、電気抵抗層中のシート抵抗値のバラツキが大きくなる場合がある。そのため、スパッタリング時の真空チャンバ内への酸素付与量は厳密に管理することが好ましい。例えば、電気抵抗層のシート抵抗値のバラツキを±5%以内とするためには、真空チャンバ内の酸素濃度の変位を0.5%以内、より好ましくは0.3%以内となるように管理することが好ましい。濃度管理は、例えば、マスフローコントローラー等を用いることで、±0.1%程度に管理することができる。
電気抵抗層上には熱可塑性樹脂を更に配置してもよい。熱可塑性樹脂層としては、例えば回路基板に適用されるエポキシ系、ポリイミド系、ガラスエポキシ系のボンディングシート、ボンディングフィルム、又はポリイミド及びエポキシ樹脂を含むプライマー(塗料)等が好適に使用される。熱可塑性樹脂層の形成方法に特に制限はない。例えば、金属箔の表面と電気抵抗層との間に固体状のシート又はフィルムを重ね、熱圧着により接合させてもよいし、液状のプライマーを金属箔の表面上に塗布し、乾燥後、熱圧着により接合させることもできる。熱可塑性樹脂層の層厚にも特に制限はないが、少なくとも1μm以上の樹脂層を形成すれば接合強度を向上させることができ、樹脂層の層厚はより好ましくは、5〜50μmである。
本発明の実施の形態に係る電気抵抗層付き金属箔を回路基板内に組み込む際は、例えば、回路基板上に電気抵抗層付き金属箔の電気抵抗層側を接触させ、熱圧着等により回路基板と電気抵抗層付き金属箔とを接合する。次いで、金属箔上にフォトレジスト膜をスピン塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングする。次いで、反応性イオンエッチング(RIE)等でパターニングされたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして金属箔及び電気抵抗層の一部を除去し、フォトレジスト膜を除去する。回路基板上に残る金属箔上に更にフォトレジスト膜をスピン塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて抵抗素子の長さ、表面積に準じた形状にパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして金属箔を除去し、フォトレジスト膜を除去することによって、回路基板上に抵抗素子を形成する。その後公知の多層配線技術により抵抗素子上に絶縁層及び配線層を形成すれば、回路基板内に抵抗素子が埋設できる。
(その他の実施の形態)
上記のように本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものではなく、この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。例えば、電解箔と電気抵抗層との密着性をより高めるために、電解箔上に例えば特願2009−503343号に開示されるような任意の合金層(銅−亜鉛合金層と安定化層)を形成させても構わない。このように、本発明はここでは明示していない様々な態様を含むことは勿論であり、実施段階においてはその要旨を逸脱しない範囲において変形して具体化され得る。
上記のように本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものではなく、この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。例えば、電解箔と電気抵抗層との密着性をより高めるために、電解箔上に例えば特願2009−503343号に開示されるような任意の合金層(銅−亜鉛合金層と安定化層)を形成させても構わない。このように、本発明はここでは明示していない様々な態様を含むことは勿論であり、実施段階においてはその要旨を逸脱しない範囲において変形して具体化され得る。
以下に本発明の実施例を示すが、以下の実施例に本発明が限定されることを意図するものではない。
−電気抵抗層(NiCrSiO合金)と金属箔との界面の強度評価−
以下の実施例及び比較例に示す各サンプルは、電気抵抗層スパッタの前処理としてイオンビーム源を備えた、CHA社製Vaccume WEB Chamber(14inch幅)を使用して作製した。イオンビーム源にはカーフマン型イオンビーム源6.0cm×40cm Linear Ion Source(ION TECH INC製)を使用した。イオンビーム源の電源は同社MPS−5001で、イオンビームの最大出力はおよそ3W/cm2である。
以下の実施例及び比較例に示す各サンプルは、電気抵抗層スパッタの前処理としてイオンビーム源を備えた、CHA社製Vaccume WEB Chamber(14inch幅)を使用して作製した。イオンビーム源にはカーフマン型イオンビーム源6.0cm×40cm Linear Ion Source(ION TECH INC製)を使用した。イオンビーム源の電源は同社MPS−5001で、イオンビームの最大出力はおよそ3W/cm2である。
厚さ18μmの電解銅箔を用意した。金属箔の表面(粗面)の光学的方法で測定した十点平均粗さRzは0.51μmであった。上述のスパッタ装置を用いて、ラインスピード、IB電圧、IB電流を表1に示す条件に調整し、電解銅箔の粗面を表面処理した。比較例1〜3、実施例1〜4のイオンビーム強度はそれぞれ0.24sec・W/cm2(比較例1)、0.39sec・W/cm2(比較例2)、0.58sec・W/cm2(比較例3)、0.78sec・W/cm2(実施例1、3)、0.97sec・W/cm2(実施例2、4)である。
次いで、4質量at%ニッケル(Ni)と60at%クロム(Cr)と18at%シリコン(Si)と18at%酸素(O)とよりなるスパッタリングターゲットを用いて、反応ガスとして酸素を付与しながら銅箔上に電気抵抗層を形成した。実施例3及び4に対しては電気抵抗層上に更に液状プライマーを平均塗布厚み5μmとなるように塗布し、塗布後に乾燥させて熱可塑性樹脂を形成した。実施例1〜2及び比較例1〜3の電気抵抗層上或いは実施例3及び4の熱可塑性樹脂層上に、エポキシ樹脂をガラスクロスに含浸させたエポキシ基材(プリプレグ:パナソニック電工製R−1661)を熱圧着により接合させ、IPC規格(IPC−TM−650)に基づくピール試験によりピール強度を測定した。結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜4では金属箔−電気抵抗層間の剥離は生じず、抵抗層−基板間で剥離した。一方、比較例1〜3では、金属箔−電気抵抗層間の剥離が生じ、電気抵抗層のピール強度は測定不能であった。
−酸素供給による電気抵抗層のシート抵抗値への影響−
厚さ18μmの電解銅箔を使用した。金属箔の表面(粗面)の光学的方法で測定した十点平均粗さRzは0.8μmであった。この電解銅箔を上記のスパッタリング装置(CHA社製14inchメタライザ)の真空チャンバ内にセットし、ラインスピード0.88m/minで搬送した。まずこの銅箔上に、IB電圧400V、IB電流100mAで、銅箔表面全体を表面処理(清浄化処理)した。イオンビーム強度はいずれも0.73sec・W/cm2である。
更にこの表面処理の後に、at%比でNi/Cr/SiO=4/60/36からなるスパッタリングターゲットを用いて、スパッタ電力2.8kWで38秒間、スパッタリングを行った。この際、雰囲気ガスとしてアルゴンガスを使用し、反応ガスとして酸素を表2に示す条件で真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧が5×10-3Toll前後となるよう(総供給ガス供給量でおよそ75sccm)に調整し、電解銅箔上に酸素濃度15〜68at%のNiCrSiOからなる電気抵抗層を形成した。
厚さ18μmの電解銅箔を使用した。金属箔の表面(粗面)の光学的方法で測定した十点平均粗さRzは0.8μmであった。この電解銅箔を上記のスパッタリング装置(CHA社製14inchメタライザ)の真空チャンバ内にセットし、ラインスピード0.88m/minで搬送した。まずこの銅箔上に、IB電圧400V、IB電流100mAで、銅箔表面全体を表面処理(清浄化処理)した。イオンビーム強度はいずれも0.73sec・W/cm2である。
更にこの表面処理の後に、at%比でNi/Cr/SiO=4/60/36からなるスパッタリングターゲットを用いて、スパッタ電力2.8kWで38秒間、スパッタリングを行った。この際、雰囲気ガスとしてアルゴンガスを使用し、反応ガスとして酸素を表2に示す条件で真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧が5×10-3Toll前後となるよう(総供給ガス供給量でおよそ75sccm)に調整し、電解銅箔上に酸素濃度15〜68at%のNiCrSiOからなる電気抵抗層を形成した。
表2に示すように、電気抵抗層中の酸素濃度が20at%以下(比較例4)の場合は抵抗値が十分には向上しなかった。電気抵抗層中の酸素濃度が20〜60at%の範囲(実施例5〜8)においては、酸素濃度が上昇するにつれてシート抵抗値が上昇した。なお、電気抵抗層中の酸素濃度が68at%の場合(実施例9)には、抵抗層がガラス化した。
−半田フロー前後の電気抵抗層の抵抗値変動の影響−
実施例1の電解銅箔と同様の方法で形成した厚さ18μm、十点平均粗さRzが0.51μmの電解銅箔に対して、ラインスピード0.88m/min、イオンビーム強度0.73sec・W/cm2で表面処理し、at%比でNi/Cr/SiO=4/60/36からなるスパッタリングターゲットを用いて、表3に示すスパッタ電力でスパッタリングを行った。この際、雰囲気ガスとしてアルゴンガスを使用し、反応ガスとして酸素を表3に示す条件で真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧が5×10-3Toll前後となるよう(総供給ガス供給量が75sccm)に調整して電気抵抗層を作製し、比較例5、実施例10、11とした。次いで、比較例5、実施例10、11を用いて上述の液状プライマーを介してエポキシ樹脂基板と積層し、片面基板を作製し、その後エッチングにより抵抗素子を作製し、得られた抵抗素子の半田リフロー前後の電気抵抗値を測定した。結果を表3に示す。
実施例1の電解銅箔と同様の方法で形成した厚さ18μm、十点平均粗さRzが0.51μmの電解銅箔に対して、ラインスピード0.88m/min、イオンビーム強度0.73sec・W/cm2で表面処理し、at%比でNi/Cr/SiO=4/60/36からなるスパッタリングターゲットを用いて、表3に示すスパッタ電力でスパッタリングを行った。この際、雰囲気ガスとしてアルゴンガスを使用し、反応ガスとして酸素を表3に示す条件で真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧が5×10-3Toll前後となるよう(総供給ガス供給量が75sccm)に調整して電気抵抗層を作製し、比較例5、実施例10、11とした。次いで、比較例5、実施例10、11を用いて上述の液状プライマーを介してエポキシ樹脂基板と積層し、片面基板を作製し、その後エッチングにより抵抗素子を作製し、得られた抵抗素子の半田リフロー前後の電気抵抗値を測定した。結果を表3に示す。
表3に示すように、スパッタ時にO2を付与した実施例10、11の電気抵抗層はいずれも、スパッタ時にO2を付与しない比較例5に比べて、半田フロー前後の抵抗値の変化率が小さくなった。
Claims (7)
- 光学的方法で測定した十点平均粗さRzが1μm以下であり、イオンビーム強度が0.70〜2.10sec・W/cm2のイオンビーム照射により処理された表面を有する金属箔上に、ニッケル、クロム、シリコンを含むスパッタリングターゲットを用いて、雰囲気気体として酸素を付与しながら気相成長法により電気抵抗層を形成させる工程を含む電気抵抗層付き金属箔の製造方法。
- 前記電気抵抗層を形成させる工程が、前記電気抵抗層中の酸素濃度が20〜60at%となるように、雰囲気気体の酸素付与量を制御することを含む請求項1に記載の電気抵抗層付き金属箔の製造方法。
- 前記スパッタリングターゲットが、NiCrSi合金又はNiCrSiO合金を含む請求項1又は2に記載の電気抵抗層付き金属箔の製造方法。
- Niが2〜10at%、CrとSiの構成比率(Cr/(Cr+Si)×100[%])においてCrが73〜79at%、Oが10〜60at%含むスパッタリングターゲットを用いる請求項1又2に記載の電気抵抗層付き金属箔の製造方法。
- 雰囲気気体として酸素を0〜19vol%付与することを含む請求項4に記載の電気抵抗層付き金属箔の製造方法。
- 電気抵抗層上に熱可塑性樹脂層を更に配置することを更に含む1〜5のいずれか1項に記載の電気抵抗層付き金属箔の製造方法。
- 前記金属箔が電解銅箔又は圧延銅箔である請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気抵抗層付き金属箔の製造方法。
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