JP2012211082A - シリカ容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大型、高寸法精度、高耐久性の、シリカを主な構成成分とするシリカ容器を、安価な比較的低品位のシリカ粉体を主原料として、投入エネルギー量を少なく、低コストで製造するためのシリカ容器の製造方法、及び、このようなシリカ容器を提供する。
【解決手段】 シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ容器の製造方法であって、少なくとも、シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ基体を形成し、該シリカ基体の内表面上に、シリカゾルからゾル−ゲル法によって透明シリカガラス層を形成するシリカ容器の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、シリカを主な構成成分とするシリカ容器及びその製造方法に関し、特には、低コスト、大型、高寸法精度、高耐久性のシリカ容器及びその製造方法に関する。
シリカガラス(石英ガラスとも呼ばれる)は、シリコンウェーハ等の半導体材料の熱処理用ボート治具、熱処理用チャンバー、洗浄容器、シリコン半導体溶融容器、及びシリコン結晶引上げルツボ等として使用されている。しかしながら、これらシリカガラス原料としては高価な四塩化ケイ素等の化合物や高純度化処理された石英粉、水晶粉を用いなければならず、またシリカガラス溶融温度や加工温度は約2000℃と高温であるため、エネルギー消費量が多く地球温暖化ガスの1つとして考えられている二酸化炭素の大量排出を引き起こしてしまう。
例えば特許文献1及び特許文献2では、シリコン単結晶引上げ用シリカガラスルツボの製造方法が示されている。ここでは、回転するカーボン製型枠の中に高純度化処理された石英粉を投入、成形し、上部からカーボン電極を押し込みカーボン電極に加電することによりアーク放電を起こし、雰囲気温度を石英粉の溶融温度域(1800〜2100℃程度と推定)まで上昇させて石英粉を溶融焼結させる。この高コストな製造方法は現在も使用されているものである。
省エネルギー対策として、例えば特許文献3では、少なくとも2つの特性の異なるシリカガラス粒子、例えばシリカガラス粒とシリカガラス微粉体と純水を混合して水含有懸濁液(スラリー)とし、次いで型枠内で加熱成形し、乾燥後に高温下で焼結してシリカ含有複合体を得る方法(スリップキャスト法)が示されている。
また、特許文献4では少なくとも粒径100μm以下のシリカガラス粒子と粒径100μm以上のシリカガラス顆粒及び水の混合水溶液(スラリー)の作製、成形用型枠への注入、次いで乾燥、焼結により不透明シリカガラス複合容器を作製する方法が示されている。
しかし、これら従来のスリップキャスト法では、乾燥工程や焼結工程での水分の蒸発による成形体の収縮、割れが大きく、寸法精度の高い肉厚の大型シリカガラス成形体を低コストで作製することはできなかった。
特公平4−22861号公報 特公平7−29871号公報 特開2002−362932号公報 特開2004−131380号公報
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、大型、高寸法精度、高耐久性の、シリカを主な構成成分とするシリカ容器を、安価な比較的低品位のシリカ粉体を主原料として、投入エネルギー量を少なく、低コストで製造するためのシリカ容器の製造方法、及び、このようなシリカ容器を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ容器の製造方法であって、少なくとも、シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ基体を形成し、該シリカ基体の内表面上に、シリカゾルからゾル−ゲル法によって透明シリカガラス層を形成することを特徴とするシリカ容器の製造方法を提供する。
また、この場合、前記ゾル−ゲル法による透明シリカガラス層の形成を、前記シリカゾルを、少なくともシリコンアルコキシド、アルコール及び水を混合することによって作製する工程と、該シリカゾルを前記シリカ基体の内表面上に塗布する工程と、該シリカ基体の内表面に塗布されたシリカゾルをゲル化させてシリカウェットゲル層に変化させる工程と、該シリカウェットゲル層を乾燥させてシリカドライゲル層とする工程と、該シリカドライゲル層を、O含有雰囲気下にて1200〜1500℃の範囲で焼成して透明シリカガラス層とする工程とによって行うことが好ましい。
このように、シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ基体を形成し、該シリカ基体の内表面上に、シリカゾルからゾル−ゲル法によって透明シリカガラス層を形成するシリカ容器の製造方法であれば、大型、高寸法精度、高耐久性の、シリカを主な構成成分とするシリカ容器を、投入エネルギー量を少なく、低コストで製造するためのシリカ容器の製造方法とすることができる。また、シリカ基体を、安価な比較的低品位のシリカ粉体を主原料として作製しても、シリカ容器内層の形成方法としてゾル−ゲル法を応用することにより、シリカ容器の収容物への汚染を防ぎつつも、容器内層形成の際の焼成温度を低下させることができ、さらなる低コスト化を実現できる。
また、本発明のシリカ容器の製造方法では、前記シリカ基体の形成を、骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉、及び、非晶質シリカからなり、平均粒径が前記第一の原料粉の平均粒径よりも小さい第二の原料粉を準備する工程と、前記第一の原料粉と前記第二の原料粉とが混合された混合粉体を作製する工程と、前記混合粉体を、回転対称性を有する外型枠の内壁に導入し、前記外型枠を回転させながら、前記混合粉体を前記外型枠に応じた所定形状とする工程と、前記所定形状とした混合粉体を、前記外型枠と内型枠とで挟み、該混合粉体を加圧することによりシリカ基体を仮成形する加圧成形工程と、前記シリカ基体をO含有雰囲気下にて焼成する工程とによって行うことができる。
また、本発明のシリカ容器の製造方法では、前記シリカ基体の形成を、骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉、及び、非晶質シリカからなり、平均粒径が前記第一の原料粉の平均粒径よりも小さい第二の原料粉を準備する工程と、前記第一の原料粉と前記第二の原料粉と水とを含有するシリカ基体形成用混合スラリーを作製する工程と、前記シリカ基体形成用混合スラリーを、回転対称性を有する鋳込み型枠の中に導入する工程と、前記鋳込み型枠に導入したシリカ基体形成用混合スラリーを加熱脱水することによりシリカ基体を仮成形する工程と、前記シリカ基体をO含有雰囲気下にて焼成する工程とによって行うこともできる。
シリカ基体の形成をこれらのように行えば、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できる能力を有し、高寸法精度、高耐久性、特に耐熱変形性を有するシリカ容器を、少ないエネルギー消費量で、高生産性かつ低コストで製造することができる。
また、これらのようにシリカ基体の形成を行う場合、上記のシリカ容器の製造方法において、前記シリカ基体を仮成形した後に、前記ゾル−ゲル法による透明シリカガラス層の形成を、前記シリカゾルを、少なくともシリコンアルコキシド、アルコール及び水を混合することによって作製する工程と、該シリカゾルを前記仮成形したシリカ基体の内表面上に塗布する工程と、該シリカ基体の内表面に塗布されたシリカゾルをゲル化させてシリカウェットゲル層に変化させる工程と、該シリカウェットゲル層を乾燥させてシリカドライゲル層とする工程と、該シリカドライゲル層を、O含有雰囲気下にて1200〜1500℃の範囲で焼成して透明シリカガラス層とする工程とによって行うものであり、前記シリカ基体のO含有雰囲気下での焼成を、前記シリカドライゲル層の焼成と同一の工程で行うことが好ましい。
このように、シリカ基体のO含有雰囲気下での焼成を、シリカドライゲル層の焼成と同一の工程で行えば、シリカ容器の製造工程を少なくすることができ、シリカ容器の製造をさらに低コストで行うことができる。
また、前記第一の原料粉を、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したものとすることが好ましい。
このように、第一の原料粉を、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したものとすれば、より安価なシリカ原料から製造し、低コストのシリカ容器とすることができる。
またこのような、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したシリカ粉を原料としても、本発明のシリカ容器の製造方法であれば、容器に収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。
また、前記第一の原料粉のシリカ純度を99.9〜99.999wt.%(Si以外の不純物金属元素の濃度合計値が10wt.ppm以上から1000wt.ppm以下の範囲)とすることが好ましい。
このように、本発明のシリカ容器の製造方法の場合、原料とする第一の原料粉のシリカ純度を99.9〜99.999wt.%と比較的低純度のものとしても、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。従って、きわめて安価に原料粉を準備することができる。
また、前記混合粉体又は前記シリカ基体形成用混合スラリーを作製する前に、前記第二の原料粉を、少なくとも有機質バインダー及び純水と混合して顆粒体作製用混合スラリーとし、該顆粒体作製用混合スラリーを乾燥させることにより、前記第二の原料粉をバインダーコーティングされた顆粒体とし、該第二の原料粉の顆粒体を用いて前記混合粉体又は前記シリカ基体形成用混合スラリーを作製することができる。
このように、混合粉体又はシリカ基体形成用混合スラリーを作製する前に、第二の原料粉をバインダーコーティングされた顆粒体とし、該第二の原料粉の顆粒体を用いて混合粉体又はシリカ基体形成用混合スラリーを作製するようにすれば、第二の原料粉の取り扱いが簡便になる。
また、前記混合粉体又は前記シリカ基体形成用混合スラリーを作製する際の前記第一の原料粉と前記第二の原料粉との配合比を、(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}が5wt.%以上50wt.%未満とすることが好ましい。
このように、混合粉体又はシリカ基体形成用混合スラリーを作製する際の前記第一の原料粉と前記第二の原料粉との配合比を、(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}が5wt.%50wt.%未満とすれば、シリカ容器の製造コストを十分に低減しながらも、寸法精度や耐久性を十分に確保することができる。
また、前記混合粉体又は前記シリカ基体形成用混合スラリーを、Alを含有するものとすることが好ましい。
このように、混合粉体又はシリカ基体形成用混合スラリーを、Al(アルミニウム元素)を含有するものとすれば、不純物金属元素の容器内表面への拡散を防止する効果を付与することができる。
また、本発明のシリカ容器の製造方法では、前記シリカゾルにCa、Sr、Baの少なくとも一種の元素を添加すること、及び、前記透明シリカガラス層を形成した後に、該透明シリカガラス層の内表面にCa、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含む溶液を塗布することの少なくともいずれか一方を行うことが好ましい。また、この場合、前記シリカゾルに添加するCa、Sr、Baの合計の元素濃度を50〜5000wt.ppmとすること、及び、前記透明シリカガラス層の表面に塗布した溶液のCa、Sr、Baの合計の元素濃度を5〜500μg/cmとすることの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
このように、本発明のシリカ容器の製造方法において、シリカゾルにCa、Sr、Baの少なくとも一種の元素を添加すること、及び、透明シリカガラス層を形成した後に、該透明シリカガラス層の内表面にCa、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含む溶液を塗布することの少なくともいずれか一方を行えば、製造後のシリカ容器を、1300〜1600℃のような高温下で使用する際に、透明シリカガラス層が再結晶化し、収容する内容物への不純物汚染をより低減させることができるとともに、透明シリカガラス層表面のエッチングや溶解を抑制することができる。また、特に上記のような濃度であればさらに効果的である。
また、前記シリカドライゲル層のO含有雰囲気下での焼成の後、連続してN濃度が95vol.%以上の雰囲気下で焼成を行うことができる。
このように、シリカドライゲル層のO含有雰囲気下での焼成の後、連続してN濃度が95vol.%以上の雰囲気下で焼成を行えば、透明シリカガラス層中の溶存酸素ガスを放出し、該溶存酸素ガスの濃度を調節することができる。
また、本発明のシリカ容器の製造方法では、前記シリカ容器を、シリコン単結晶引上げ用ルツボとして使用するものとすることができる。
このように、本発明のシリカ容器の製造方法によって製造されたシリカ容器は、シリコン単結晶引上げ用ルツボとして好適に使用することができる。その結果、シリコン単結晶製造のための総投入エネルギーや総コストを低減することができる。
また、本発明は、回転対称性を有するシリカ容器であって、少なくとも、気泡を含有し、白色不透明であり、かさ密度が1.90〜2.15g/cmであり、シリカ純度が99.9〜99.999wt.%(Si以外の不純物金属元素の濃度合計値が10wt.ppm以上から1000wt.ppm以下の範囲)である不透明シリカ層からなるシリカ基体を有し、該シリカ基体の内側に、実質的に気泡を含有せず、無色透明であり、かさ密度が2.18〜2.21g/cmであり、Cを10〜1000wt.ppmの元素濃度で含有する透明シリカガラス層を有するものであることを特徴とするシリカ容器を提供する。
このようなシリカ容器であれば、低コストのシリカ容器でありながらも、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できる能力を有し、大型であり、高寸法精度、高耐久性を有する安価なシリカ容器とすることができる。また、透明シリカガラス層中の炭素(C)の存在により耐熱変形性を向上させることができる。
この場合、前記シリカ基体が、Alを5〜500wt.ppmの元素濃度で含有し、OH基を1〜100wt.ppmの濃度で含有し、Li、Na、Kの各元素濃度が30wt.ppm以下であるものであり、前記透明シリカガラス層がOH基を1〜200wt.ppmの濃度で含有するものであることが好ましい。
このようなシリカ基体及び透明シリカガラス層を有するシリカ容器であれば、より効果的に収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できるシリカ容器とすることができる。
また、前記透明シリカガラス層がCa、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含有するものであること、及び、前記透明シリカガラス層の内表面側に、さらに、Ca、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含有する塗布層を有することの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。また、この場合、前記透明シリカガラス層が含有するCa、Sr、Baの合計の元素濃度が50〜5000wt.ppmであること、及び、前記塗布層に含有されるCa、Sr、Baの合計の元素濃度が5〜500μg/cmであることの少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
このように、シリカ容器が、透明シリカガラス層がCa、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含有するものであること、及び、透明シリカガラス層の内表面側に、さらに、Ca、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含有する塗布層を有することの少なくともいずれか一方を満たすものであれば、シリカ容器を1300〜1600℃程度の温度下において透明シリカガラス層が再結晶化し、収容する内容物への不純物汚染をより低減させることができるとともに、シリカガラス表面のエッチングや溶解を抑制することができる。また、特に上記のような濃度とすればさらに効果的である。
また、前記透明シリカガラス層の含有するO分子の濃度が、該透明シリカガラス層から測定用試料を切り出し、該測定用試料のガス放出量を真空下において1000℃に加熱して測定した場合に、5×1015分子/cm以下であることが好ましい。また、前記透明シリカガラス層のTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ta、Wの各元素濃度が10wt.ppb以下であることが好ましい。
このような透明シリカガラス層の含有するO分子の濃度、金属元素濃度とすれば、収容する内容物から製造される製品に対するこれらO分子及び金属元素による悪影響を抑えることができるシリカ容器とすることができる。
以上のように、本発明に従うシリカ容器の製造方法であれば、安価な比較的低品位のシリカ粉体を原料とし、これを成形、焼成して所定形状のシリカ容器を得るものであり、大型であり、高寸法精度、高耐久性を有し、かつエネルギー消費量の少ない、高生産性かつ低コストの製造方法及びシリカ容器を得ることができる。
また、本発明に従うシリカ容器であれば、低コスト、低エネルギー消費量で得られるシリカ容器でありながらも、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できる能力を有するのみならず、高温で長時間使用しても熱変形しにくく、内容物による容器内表面のエッチングや溶解が少なく、大型であり、高寸法精度、高耐久性を有する安価なシリカ容器とすることができる。
本発明に係るシリカ容器の製造方法の概略を示すフローチャート図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、ゾル−ゲル法による透明シリカガラス層の形成方法の一例を示すフローチャート図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、シリカ基体の形成方法の一例を示すフローチャート図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、シリカ基体の形成方法の別の一例を示すフローチャート図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法において、シリカ基体の形成をシリカ粉体原料を用いて行う場合に、シリカ粉体原料からシリカ基体を仮成形する様子を示す概略説明図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法において用いることができる鋳込み型枠を模式的に示す概略断面図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、焼成工程の一例を模式的に示す説明図である。 本発明に係るシリカ容器の製造方法における、シリカウェットゲル層の形成工程の一例を模式的に示す説明図である。
前述のように、従来のシリカ容器の製造では、加工温度や熱処理温度が高いなど、製造における投入エネルギーが大きく、二酸化炭素を大量に排出しているという問題があった。また、特許文献3、4のようなシリカ複合材料の製造方法では、寸法精度の高い肉厚の大型シリカガラス成形体を製造することができない、という問題があった。
本発明者らは、このような問題に鑑み、検討したところ、以下のような課題を見出した。
まず、金属シリコン溶融及びシリコン結晶製造用のルツボ等のシリカ容器では、加熱高温雰囲気での容器内部の均熱性が必要とされる。そのためには少なくともシリカ容器を2重構造とし、外側は多孔質の白色不透明シリカガラスとし、内側は実質的に気泡を含まない無色透明シリカガラスとすることが第1の課題である。
また、特にこのようなシリコン結晶製造用ルツボ等のシリカ容器は、シリコン結晶の大口径化に従って大型シリカ容器が必要とされてきており、金属シリコン溶融時のシリカ容器自体の軟化、変形を防止することが第2の課題である。
また、シリコン結晶の作製時にシリカ容器に含まれている不純物金属元素、例えばアルカリ金属元素Li、Na、Kのみならず、特にTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ta、W等がシリコン結晶に取り込まれた場合、例えばソーラー用(太陽電池用)シリコンデバイスにおいて光電変換効率の低下を引き起してしまう。従って、シリカ容器に含まれる不純物がシリコン融液に拡散してこないようにシリカ容器に不純物の吸着固定作用及び不純物シールド作用を持たせることが第3の課題である。
また、シリコン結晶の作製時に、シリカ容器の成分そのものがシリコン融液に溶解し、そのために特に酸素元素が、シリコン結晶に取り込まれると、例えば、ソーラー用シリコンデバイスを製造する場合において光電変換効率の低下を引き起してしまう等の問題がある。従って、シリカ容器の内表面がシリコン融液に対して溶解しにくい(耐エッチング性のある)特性を有するものとすることが第4の課題である。
さらに、シリカ容器の表面層に酸素ガス(Oガス)や二酸化炭素ガス(COガス)等の気体分子が取り込まれていると、シリコン結晶作製時に、このような気体分子がシリコン融液中に放出され、気泡となって育成シリコン単結晶中に取り込まれてしまう。このように取り込まれた気体は、シリコン単結晶をウェーハとした場合に、ピンホールを形成し、著しく歩留まりを低下させる。従って、シリカ容器からのO分子等の気体放出量を低下させることが第5の課題である。
さらに、シリカ容器の製造工程において、できる限り加工温度や熱処理温度を下げることにより二酸化炭素の排出を少なくしたり、高純度化処理の必要のない低コストのシリカ原料を使用して低コストの製造方法とすることを第6の課題とした。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、以下では主に本発明を好適に適用できる一例として、太陽電池(太陽光発電、ソーラー発電)の材料とされる金属シリコン(Si)溶融用容器(ルツボ)として使用することができるシリカ容器の作製方法の説明を行うが、本発明はこれに限定されることなく、シリカを主な構成成分とする回転対称性を有するシリカ容器全般に広く適用することができる。
図1に本発明のシリカ容器の製造方法の概略を示す。
まず、図1(A)に示すようなシリカ基体51を形成する。シリカ基体51は、シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有する。
次に、図1(B)に示すように、シリカ基体51の内表面上に、シリカゾルからゾル−ゲル法によって透明シリカガラス層56を形成して、シリカ容器71を製造する。
本発明のシリカ容器71の基本的な構造は、図1(B)に示すように、外側のシリカ基体51と内側(内層)の透明シリカガラス層56からなる二層構造である。
シリカ基体51は、不透明シリカ層からなり、気泡を含有し、白色不透明であり、かさ密度が1.90〜2.15g/cmであり、このことにより加熱下においてシリカ容器71の内部の均熱性を向上させることが可能となる。また、本発明のシリカ基体51のシリカ純度が99.9〜99.999wt.%である。
また、シリカ基体51は、アルカリ金属元素リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)の各々の元素濃度を30wt.ppm以下としつつ、アルミニウム元素(Al)を5〜500wt.ppmの元素濃度で含有することが好ましい。Alの含有量は10〜100wt.ppmとすることがさらに好ましい。このようにAlを含有することで、不純物金属元素の吸着、固定を行うことができる。
また、シリカ基体51は、OH基を1〜100wt.ppmの濃度で含有することが好ましく、5〜50wt.ppm含有させることがより好ましい。OH基濃度の調整は後述するシリカ容器の製造における乾燥工程や焼結工程の雰囲気、温度、時間条件を変化させることなどによって行うことができる。このような濃度でOH基を含有することで金属不純物元素の吸着、固定作用を向上させることができる。
また、OH基濃度を上記のような上限とすれば、OH基濃度の増加による高温下におけるシリカガラスの粘性度の低下を招来することも抑制することができる。
また、Alを含有させる効果として、その他に、シリカガラスの高温下の粘性度を向上させることができ、高温下におけるシリカ容器の耐熱変形性を向上させることが挙げられる。
一方、本発明の透明シリカガラス層56は、実質的に気泡を含有せず、無色透明であり、かさ密度が2.18〜2.21g/cmである。不純物金属元素の含有量は、基体より少なく、高純度なものとする。
また、透明シリカガラス層56は、炭素元素(C)を10〜1000wt.ppmの元素濃度で含有する。Cの含有濃度は好ましくは20〜200wt.ppmである。Cは理論的メカニズムは不明であるが耐熱変形性を向上させる効果がある。
Cは高濃度で含まれると減圧下、かつ高温下でCOガス、COガス等のガス放出を引き起すという現象が生じ、例えば、シリコン溶融時やシリカ単結晶引上げ時にこれらのガス放出が生ずると、シリコン結晶中に取り込まれて、結晶中にピンホール等の構造欠陥を生成することがあるが、上記のような範囲の濃度であれば、このような現象を抑制することができる。
また、透明シリカガラス層56にCa、Sr、Baの少なくとも1種を含有させておくと、シリコン溶融時の1500℃前後の温度下において、シリカ容器の内表面が再結晶化し、クリストバライトを生成することにより、耐シリコン融液エッチング性を高めることが可能となる。さらに、透明シリカガラス層56にOガス(O分子)含有量を少なくすることにより、シリコン溶融時の酸素放出を低減させ、シリコン結晶中の酸素濃度の低減やピンホール等の結晶欠陥の生成を低減させることができる。
また、透明シリカガラス層56はOH基を1〜200wt.ppmの濃度で含有することが好ましく、10〜100wt.ppmとすることがさらに好ましい。OH基を含有することにより、不純物金属元素の拡散速度を低下させる効果がある。OH基の含有による透明シリカガラス層の耐エッチング性を低下させることを抑制して上記効果を得るために、上記のような濃度の上限とすることが好ましい。
また、本発明のシリカ容器71を、例えば太陽電池製造におけるシリコン単結晶連続引き上げ(マルチプリング)用容器のような、高耐久性が要求されるシリコン単結晶引上げ用ルツボとして用いる場合には、収容物のシリコン融液による透明シリカガラス層のエッチング溶解を低減する目的から、2族(2A族)のカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)の少なくとも一種を透明シリカガラス層56に含有させる工程を有することが好ましい。この場合、透明シリカガラス層56が含有するCa、Sr、Baの合計の元素濃度が50〜5000wt.ppmであることが好ましい。含有させる2族元素はSr又はBaであることがさらに好ましく、シリコン単結晶中に取り込まれづらい点からBaであることが特に好ましい。
このように透明シリカガラス層56にCa、Sr、Baを含有させておくと、シリコン溶融時の1500℃前後の温度下において、シリカ容器の内表面が再結晶化し、クリストバライトを生成することにより、耐シリコン融液エッチング性を高めることが可能となる。
また、透明シリカガラス層56の内側に、さらに、Ca、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含有する塗布層を有することによっても同様の効果が得られる。この場合、塗布層に含有されるCa、Sr、Baの合計の元素濃度が5〜500μg/cmとすることが好ましい。
このような結晶化促進剤については文献(特許3100836号、特許3046545号)に示されている。しかしながら本発明では、内層の透明シリカガラス層のかさ密度を2.18〜2.21(g/cm)、炭素(C)含有量を10〜1000wt.ppm、OH基濃度を1〜200wt.ppmと設定し、これに、Ca、Sr、Baをドーピング及び/又はコーティングすることにより、大幅な耐エッチング性の向上を達成するものである。特に炭素(C)とバリウム(Ba)を同時に含有させておくことは、シリカ容器のシリコン融液耐エッチング性の改善のみならず、高温下におけるシリカガラスの粘性度が高くなり耐熱変形性の向上に寄与する。
また、透明シリカガラス層56の含有するOガス(O分子)を少なくすることにより、特にシリコン単結晶引上げ用ルツボとしてシリカ容器71を用いる場合には、シリコン溶融時の酸素放出を低減させ、シリコン結晶中の酸素濃度の低減やピンホール等の結晶欠陥の生成を低減させることができる。
具体的には、透明シリカガラス層56の含有するO分子の濃度が、透明シリカガラス層56から測定用試料を切り出し、該測定用試料のガス放出量を真空下において1000℃に加熱して測定した場合に、5×1015分子/cm以下であることが好ましい。
また、透明シリカガラス層56のTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ta、Wの各元素濃度が10wt.ppb以下であれば、収容する内容物に対する金属元素による悪影響を抑えることができ、特にシリコン単結晶引上げ用ルツボとしてシリカ容器71を用いる場合に好ましい。
以下では、上記のようなシリカ容器の製造方法をより具体的に説明する。
まず、図1(A)に示したように、シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ基体51を形成する。
このシリカ基体51の形成方法の第一の態様(乾式法)を、図3を参照して説明する。
(工程A−1:シリカ基体用の各原料粉の準備)
まず、図3の(A−1)に示すように、シリカ容器を製造するにあたって原料となるシリカ粉を準備する。
ここで準備する原料粉は以下の通りである。
(a)骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉11、
(b)非晶質シリカからなり、平均粒径が第一の原料粉11の平均粒径よりも小さい(好ましくは球状である)第二の原料粉12。
なお、本明細書中では、シリカ純度(SiO純度)とは材料中のシリカ(SiO)分の割合を意味する。ただし、金属元素は不純物とするが、OH基やOガス、Nガス、COガス、COガス等のガス成分は不純物としては考えない。
以下では、第一及び第二のそれぞれの原料粉の準備について一つずつ説明する。
(第一の原料粉)
第一の原料粉11は、本発明に係るシリカ容器のうち、不透明シリカ層からなるシリカ基体の骨材となるものであり、シリカ基体の主な構成材料となるものである。
この第一の原料粉は例えば以下のようにしてシリカ塊を粉砕、整粒することにより作製することができるが、これに限定されない。
まず、直径5〜50mm程度の天然シリカ塊(天然に産出する水晶、石英、珪石、珪質岩石、オパール石等)を大気雰囲気下、600〜1000℃の温度域にて1〜10時間程度加熱する。次いで該天然シリカ塊を水中に投入し、急冷却後取出し、乾燥させる。この処理により、次のクラッシャー等による粉砕、整粒の処理を行いやすくできるが、この加熱急冷処理は行わずに粉砕処理へ進んでもよい。
次いで、該天然シリカ塊をクラッシャー等により粉砕、整粒し、粒径を好ましくは0.01〜5mm、より好ましくは0.1〜1mmに調整して天然シリカ粉を得る。
次いで、この天然シリカ粉を傾斜角度を有するシリカガラス製チューブから成るロータリーキルンの中に投入し、キルン内部を塩化水素(HCl)又は、塩素(Cl)ガス含有雰囲気とし、700〜1100℃にて1〜100時間程度加熱することにより高純度化処理を行う。ただし高純度を必要としない製品用途では、この高純度化処理を行わずに次処理へ進んでもよい。
以上のような工程後に得られる第一の原料粉は結晶質のシリカであるが、シリカ容器の使用目的によっては、第一の原料粉として非晶質のシリカガラススクラップを使用することもできる。
第一の原料粉の粒径は、上記のように、0.01〜5mmとすることが好ましく、0.1〜1mmとすることがより好ましい。
第一の原料粉のシリカ純度は、99.9wt.%以上とすることが好ましく、99.99wt.%以上とすることがさらに好ましい。また、本発明のシリカ容器の製造方法であれば、第一の原料粉のシリカ純度は99.999%以下と比較的低純度のものとしても、製造されるシリカ容器は、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。そのため、従来よりも低コストでシリカ容器を製造することができることになる。
(第二の原料粉)
第二の原料粉12は、本発明に係るシリカ容器のうち、不透明シリカ層からなるシリカ基体を第一の原料粉11とともに構成する材料となるものである。この第二の原料粉12に必要な条件は非晶質シリカからなること(非晶質シリカ粉)と、平均粒径が第一の原料粉の平均粒径よりも小さいことである。また、さらに球状であること(球状非晶質シリカ粉)が好ましい。
本発明のシリカ容器の製造方法において、シリカ基体を構成するために好ましい第二の原料粉12の粒径は0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜5μmである。第二の原料粉12としての非晶質シリカ粉の作製方法は特に限定されないが、大きく分けて湿式法のゾル−ゲル法(アルコキシド法)と乾式法の溶融法(溶射法、燃焼法)があり、各種の公知の方法(例えば、「高純度シリカの応用技術」(株式会社シーエムシー、1991年3月1日発行、PP.306−310)に概要が記載されている)によって作製することができる。また、第二の原料粉12としてはその他にも、四塩化珪素(SiCl)等の珪素化合物原料の火炎加水分解法によって作製するシリカガラス微粉体、いわゆるスート粉を用いることができる。この場合のスート粉の粒径も0.1〜10μm程度が好ましい。
なお、第一の原料粉11または第二の原料粉12に、例えば金属元素のアルミニウム(Al)を含有(ドープ)させておくと、製造するシリカ容器の不透明シリカ層からなるシリカ基体にアルミニウムを含有させることができる。Alを含有させると、後述のシリカガラス層中にOH基を含有する場合の効果と同様に、シリカ基体内部に含まれる不純物金属元素を固定したり不純物金属元素の拡散を低減させ、製造したシリカ容器に収容する被処理物に対する不純物金属元素汚染を防止する効果があるので好ましい。
このAlの含有方法は特に限定されず、水やアルコールに可溶性のAl化合物溶液に原料粉を浸漬して含浸させ、次いで一定速度で引き上げて乾燥するなどの方法を用いることができる。
また、このAlのドープは、後述する、第一の原料粉と第二の原料粉(または第二の原料粉の顆粒体)とを混合した後に行ってもよい。ドープ濃度は5〜500wt.ppmとすることが好ましく、10〜100wt.ppmとすることがさらに好ましい。
(付加的な工程:第二の原料粉の顆粒体の作製)
次に、上記した工程A−1において準備した第二の原料粉12をバインダーコーティングされた顆粒体とすることができる。このように顆粒体とすることで、第二の原料粉の取り扱いが簡便になるので好ましい。
第二の原料粉をバインダーコーティングされた顆粒体とするには、例えば以下のような手順により行うことができる。
まず、第二の原料粉12を、少なくとも有機質バインダー及び純水と混合して顆粒体作製用混合スラリーとする。具体的には、顆粒体のコアとなる非晶質シリカ粉である第二の原料粉12に、パラフィン系バインダー(融点40〜70℃)又はステアリン酸系バインダー(融点70〜150℃)を好ましくは重量比率1〜10wt.%程度さらに好ましくは2〜5wt.%程度混合し1〜10/secのせん断速度における粘性値30〜300mPa・Sとなるように純水を加え(水分率として10〜40%程度))、その後20〜30μmに設定されたメッシュフィルターにより異物を除去して顆粒体作製用の混合スラリー(シリカスラリー、懸濁液)を作製する。
有機バインダーは上記のパラフィン系バインダー、ステアリン酸系バインダーに限定されるものではないが、これらであれば、安価でありながらも比較的低温の熱処理下で安定して顆粒体を作製でき、シリカ基体を作製できるので好ましい。
また、有機バインダーはその他ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル系バインダー、エチルセルロース、メチルセルロース等を適宜複数種類混合してもよい。
この顆粒体作製用混合スラリーを乾燥させることにより、バインダーコーティングされた顆粒体を作製する。混合スラリーの乾燥方法は特に限定されないが、例えば、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)に投入してバインダーが表面にコーティングされている非晶質シリカ粉の顆粒体を作製することができる。このスプレードライヤーは円柱状のホッパー型チャンバーと該チャンバーの上部に設置された顆粒体作製用混合スラリーを噴霧する装置(アトマイザー)と、該チャンバーの横に設置された熱風給気ダクトと該チャンバー下部に設置された顆粒体捕集口からなる。熱風給気ダクトから流出する空気温度は使用するバインダーの融点より高く設定する必要があり、100〜250℃の範囲に設定する。これにより作製される顆粒体は、バインダーが表面にコーティングされた非晶質シリカ粉の集合体であり、粒径20〜200μmの範囲で所定の平均粒径に設定することが可能である。
(工程A−2:第一の原料粉と、第二の原料粉との混合)
次に、図3の(A−2)に示すように、第一の原料粉11と、第二の原料粉12とを均一に混合して混合粉体31を作製する。このときの第二の原料粉12は、上記のように、バインダーコーティングされた顆粒体としてもよい。
第一の原料粉と第二の原料粉の混合手法としては、比較的量が少ない場合には、V型ミキサー等を用いることもできるが、これに限定されない。
この混合粉体31を作製する際の第一の原料粉11と第二の原料粉12の混合比としては、(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}が5wt.%以上50wt.%未満であるようにすることが好ましく、10wt.%以上30wt.%以下とすることがさらに好ましい。これは以下のような理由による。
すなわち、製造コストを低減させる目的からは、なるべく第一の原料粉を多い割合とすることが好ましいからである。混合粉体中の第二の原料粉の混合比率を5wt.%以上とすれば、成形、焼成後のシリカ基体の空隙が多くなりすぎることもなく、かさ密度を十分に高くすることができる。その結果、シリカ容器の寸法精度や耐熱性を確保できる。
また、第二の原料粉の混合比率が高いほど、成形、焼成後のシリカ基体の空隙が少なくなり、かさ密度を比較的高くすることができるので、シリカ容器の寸法精度や耐熱性をより確保できるし、混合比率が50wt.%未満であれば、製造コストを十分に低く抑えることができる。
(工程A−3:混合粉体の外型枠への導入)
次に、図3の(A−3)に示すように、混合粉体31を成形するための回転対称性を有する外型枠に導入する。
この工程の様子を模式的に図5(a)に示す。
まず、図5(a)に示すように、混合粉体31を回転する外型枠101の内壁部へ徐々に投入し、回転による遠心力を利用しつつ、混合粉体31を外型枠101の内壁の形状に応じた所定の形状とする。またこのとき、内側成形用枠102等を利用して混合粉体31の内側形状を整えてもよい。
また、この混合粉体31の外型枠101への供給方法は特に限定されないが、例えば、攪拌用スクリュー104と計量フィーダ105を備えるホッパー103を用いることができる。この場合、ホッパー103に充填された混合粉体31を、攪拌用スクリュー104で攪拌し、計量フィーダ105で供給量を調節しながら供給する。
(工程A−4:混合粉体の加圧成形)
次に、図3の(A−4)に示すように、所定形状とした混合粉体31を、外型枠と内型枠とで挟み、混合粉体31を加圧することによりシリカ基体51を仮成形する。
この工程の様子を模式的に図5(b)、(c)に示す。
まず、図5(b)に示すように、上記工程A−3で所定形状とした混合粉体31に、内型枠となるプランジャ111を挿入し、外型枠101の回転を停止する。その後、プランジャ111を加圧し、0.1〜1MPaの所定の圧力に調整しつつ混合粉体31の温度が50〜300℃の所定の温度に達するまで昇温し、ある程度圧密して、バインダーが溶着するまで保持する。
次いで、図5(c)に示すように、プランジャ111を引き抜き室温まで放冷し、混合粉体31を加圧成形したシリカ基体51を得る。プランジャの材質はステンレススチール等の金属、グラファイト等のセラミックスが用いられるが、これに限定されない。
(工程A−5:雰囲気加熱処理によるシリカ基体の焼成)
この工程では、まず、シリカ基体51をO(酸素ガス)含有雰囲気下で焼成することによりシリカ基体51を不透明シリカ層からなるものとする。ただし、この工程は後述するように、シリカドライゲル層の焼成と同一の工程で行うことができる。
図7を参照しながら説明する。
シリカ基体51を外型枠101から取り出し、高純度アルミナボードを保温材とし、二珪化モリブデンをヒーター306とする電気抵抗加熱炉301内に設置する。なお、電気抵抗加熱炉301は、その他、雰囲気ガスを供給するガス供給口302、雰囲気ガスを排出するガス排出口303、ガス供給口302、ガス排出口303を通過するガスをそれぞれ制御する開閉バルブ304、305等を具備している。
次いで、大気ガス等のO(酸素ガス)含有雰囲気にて、室温から1000℃に至るまで50℃/時間〜200℃/時間の昇温速度にて昇温し、シリカ基体51に含まれているバインダー等の有機物質を酸化、燃焼、除去する。次いで1000℃から1200〜1500℃に至るまでに、20℃/時間〜100℃/時間にて昇温し、引き続き1200〜1500℃好ましくは1300〜1400℃の範囲の所定温度にて、1〜10時間保持し、シリカ基体51中の第一の原料粉11であるシリカ骨材と第二の原料粉12との混合粉体31を焼結させる。焼結中の電気抵抗加熱炉301内の雰囲気は酸素ガス含有雰囲気のままでも良いし、又は窒素ガス100%雰囲気に置換することも可能であり、原料粉の特性に対応して、任意に選定することができる。
このようにして形成したシリカ基体51に、ゾル−ゲル法により透明シリカガラス層56を形成してシリカ容器71を製造する(図3の(B))。
以下では、シリカ基体51の形成方法の第二の態様(湿式法)を、図4を参照して説明する。
(工程A’−1:シリカ基体用の各原料粉の準備)
まず、図4の(A’−1)に示したように、第一の原料粉11及び第二の原料粉12を準備する。
ここで準備する各原料粉は前述のシリカ基体の形成方法の第一の態様の工程A−1と同様とすることができる。また、第二の原料粉12を顆粒体としてもよいことも同様である。
(工程A’−2:第一の原料粉と第二の原料粉と水とを含有するシリカ基体形成用混合スラリーを作製する工程)
次に、図4の(A’−2)に示すように、第一の原料粉11と第二の原料粉12と水とを含有するシリカ基体形成用混合スラリー41を作製する。第二の原料粉12は顆粒体の状態から混合されてもよい。
このシリカ基体形成用混合スラリー41の作製は、具体的には下記のように、(a)第一の原料粉と第二の原料粉の混合、(b)混合スラリーの作製、(c)スラリーの均質混合、(d)スラリーの真空脱ガス、等の各サブステップを経て行うことができるが、これに限定されるものではない。
(a)第一の原料粉と第二の原料粉の混合
まず、第一の原料粉11を主原料とし、第二の原料粉12を、好ましくは5wt.%以上50wt.%未満、より好ましくは20〜40wt.%範囲で均一に混合する。ここでの原料粉の混合比率により、シリカ基体形成用混合スラリー41を作製する際の第一の原料粉11と第二の原料粉12との配合比が決まる。上記シリカ基体の形成方法の第一の態様における混合粉体31の場合と同じ理由から、製造コストを低減させる目的からは、なるべく第一の原料粉を多い割合とすることが好ましい。第二の原料粉の混合比率を5wt.%以上とすれば、脱水・成形、焼成後のシリカ基体の空隙が多くなりすぎることもなく、かさ密度を十分に高くすることができる。その結果、シリカ容器の寸法精度や耐熱性を確保できる。また、第二の原料粉の混合比率が高いほど、成形、焼成後のシリカ基体の空隙が少なくなり、かさ密度を比較的高くすることができるので、シリカ容器の寸法精度や耐熱性をより確保できるし、混合比率が50wt.%未満であれば、製造コストを十分に低く抑えることができる。混合手法としては、比較的量が少ない場合、V型ミキサーを用いることもできるが、この手法に限定されるわけではない。
(b)スラリー(混合水溶液)の作製
上記で作製した第一の原料粉11、第二の原料粉12の混合粉を主原料として95〜80wt.%、純水を5〜20wt.%とする。シリカ容器作製中の不純物汚染には注意が必要であり、シリカ基体中のLi、Na、Kの各濃度が30wt.ppm以下となるようにシリカ基体形成用混合スラリー41を作製することが好ましく、3wt.ppm以下とすることがさらに好ましい。
また、このシリカ基体形成用混合スラリー41にアルミニウム元素(Al)を含有させ、焼成後のシリカ容器71のシリカ基体51中にAlを5〜500wt.ppm程度含有させるようにすることが好ましい。Al濃度の調整は、微量の硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウムのいずれかを、純水やアルコールに溶解混合することなどによって行うことができる。なお、このスラリーに含有させるAlは原料粉に含まれていてもよく、その場合には原料粉由来のAlをそのまま利用することもできる。
また、このスラリーには、さらに必要に応じて分散剤(例えばポリアクリル酸塩)消泡剤(例えばポリエチレングリコール)、潤滑剤(例えばステアリン酸、ワックス)、結合剤(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリステレンアクリル系レジン、パラフィン系ワックス、エポキシレジン、メチルセルロース、エチルセルロース)を適量混合することができる。
(c)スラリーの均質混合
円筒状シリカガラス容器及びシリカガラスボールから成るボールミルの中に混合液を投入し1〜2時間混合する。作製されたスラリーの密度は1.7〜2.1g/cm好ましくは1.8〜2.0g/cmとし、粘性度は1〜10/secのせん断速度において300〜3000mPa・secとする。
(d)スラリーの真空脱ガス
シリカガラスチャンバー内にスラリーを設置し、室温下にて10Pa以下の真空度で1〜30min真空脱ガス処理を行う。ただし、この処理は作製されるシリカ容器の用途によっては行わない場合もある。
(工程A’−3:シリカ基体形成用混合スラリーの鋳込み型枠への導入)
次に、図4の(A’−3)に示すように、シリカ基体形成用混合スラリー41を成形するための回転対称性を有する鋳込み型枠に導入する。
この鋳込み型枠の様子を模式的に図6に示す。鋳込み型枠210は、基本的には石膏等の多孔質セラミックまたは多孔質プラスチック等の材質からなる、鋳込み内型211と鋳込み外型212とから成り、鋳込み外型212にはスラリーを注入するためのスラリー鋳込み口213が開口している。
この鋳込み型枠210の、スラリーを導入する空間(鋳込み内型211と鋳込み外型212の間の空間)の形状が、形成するシリカ基体51の形状、さらに最終的に製造するシリカ容器71の形状に影響する。例えば、図6(a)に示すように形成するシリカ基体内部の底面が略平面状になるようにしても、図6(b)に示すようにシリカ基体内部の底面が曲面状になるようにしてもよく、製造するシリカ容器の用途等によって適宜選択することができる。
(工程A’−4:シリカ基体形成用混合スラリーの加熱脱水)
次に、図4の(A’−4)に示すように、上記の工程A’−3で鋳込み型枠に導入したシリカ基体形成用混合スラリー41を、型に入ったスラリーをクリーンオーブン内に入れ、室温から5〜20℃/時間で昇温後、100〜200℃にて10〜100時間保持して、水分を蒸発させ乾燥する。これにより、シリカ基体51を仮成形する。
(工程A’−5:雰囲気加熱処理によるシリカ基体の焼成)
次に、図4の(A’−5)に示すように、シリカ基体51を酸素含有雰囲気下で焼成することによりシリカ基体51を不透明シリカ層からなるものとする。この工程は、前述のシリカ基体の形成方法の第一の態様の工程A−5と同様とすることができる。また、後述のシリカドライゲル層の焼成と同一の工程で行うことができることも同様である。
このようにして形成したシリカ基体51に、ゾル−ゲル法により透明シリカガラス層56を形成してシリカ容器71を製造する(図4の(B))。
以上のようにシリカ基体51を形成した後、図1(B)に示したように、シリカ基体51の内表面上に、シリカゾルからゾル−ゲル法によって透明シリカガラス層56を形成して、シリカ容器71を製造する。
本発明では、いわゆるゾル−ゲル法によって内層の透明シリカガラス層56を形成する。本発明では、シリコンテトラメトキシド(オルト珪酸テトラメチル(tetramethyl orthosilicate、通称TMOS)、テトラメトキシシランとも呼ばれる)やシリコンテトラエトキシド(オルト珪酸テトラエチル(tetraethyl orthosilicate、通称TEOS)、テトラエトキシシランとも呼ばれる)等のシリコンアルコキシドにメチルアルコールやエチルアルコール等のアルコールを混合してシリカゾルとし、それを水の存在下で加水分解し、重縮合反応を行わせてコロイド粒子を得てゲル化し、それを厚膜状にシリカ基体51内表面に形成してウェットゲルとし、次いで乾燥によりドライゲルとし、次いで焼成により透明シリカガラス化する。
なお、化学反応式としては以下の通りである。
Si(OR)+4HO → Si(OH)+ROH
Si(OH) → SiO+2H
(ただし、RはCH、C等を示す。)
本発明のゾル−ゲル法による透明シリカガラス層56の形成の具体的な方法の一例を図2を参照して説明する。
(工程B−1:シリカゾルの原料準備)
まず、図2の(B−1)に示すように、シリカゾルの原料として、少なくともシリコンアルコキシド、アルコール及び水を準備する。
ここで準備するシリコンアルコキシドは特に限定されないが、上記のようにシリコンテトラメトキシドやシリコンテトラエトキシド等を用いることができる。また、アルコールも同様に特に限定されないが、メチルアルコールやエチルアルコール等を用いることができる。また、複数種のシリコンアルコキシド、複数種のアルコールを用いてもよい。
また、このシリカゾルの原料として、同時にカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)の少なくとも一種の元素を添加することもできる。シリカゾルに添加するCa、Sr、Baの合計の元素濃度を50〜5000wt.ppmとすることが好ましく、より好ましくは100〜500wt.ppmである。このように、Ca、Sr、Baをシリカゾルの原料として添加しておけば、製造後のシリカ容器を、1300〜1600℃のような高温下で使用する際に、透明シリカガラス層56が再結晶化し、収容する内容物への不純物汚染をより低減させることができるとともに、透明シリカガラス層56表面のエッチングや溶解を抑制することができる。
また、後述するように、透明シリカガラス層56へのドーピングのためのCa、Sr、Baの混合は、以降の工程でも行うことができる。
(工程B−2:シリカゾルの作製)
次に、図2の(B−2)に示すように、上記工程B−1で準備したシリカゾルの原料を混合して、シリカゾル61とする。
このとき、上記のようにシリカゾル61に、Ca、Sr、Baを添加してもよい。このようなCa、Sr、Baの添加は、例えば、水又はアルコールに溶解するCa、Sr、又はBaの化合物のアルコキシド、塩化物、硝酸塩又は炭酸塩を選び、この化合物をシリカゾル調整時に所定量混合することにより行うことができる。
(工程B−3:シリカゾルのシリカ基体の内表面上への塗布、及び、工程B−4:ゲル化)
次に、図2の(B−3)及び(B−4)に示すように、シリカゾル61をシリカ基体51の内表面上に塗布し、ゲル化させてシリカウェットゲル層62に変化させる。
ここでのシリカゾル61のゲル化の方法は、公知のゾル−ゲル法における方法を適宜用いることができる。以下には本発明において用いることができるシリカゾルのゲル化の方法の一例を示すが、これに限定されるものではない。
まず、シリカゾル61に酸触媒として塩酸(HCl)又は/及び硝酸(HNO)を添加し、pHを2〜5に調整を行う。次いで、シリカゾル61をシリカ基体51内部に注入し、シリカ基体51を軸回転させ、また同時に回転軸を適時傾斜させつつゲル化させ、シリカウェットゲル層62とする。またシリカゾル61の中に高純度四塩化ケイ素(SiCl)の加水分解法によるシリカガラス微粉体(スート粉)やシリカガラス短繊維を複合材料として混合するとその後の乾燥、焼成工程における厚膜状ゲル層のひび割れを防止する効果があるので好ましい。加水分解時のpH調整範囲は2〜5とするが、pHが小さい時は加水分解は速やかに起こる一方で、コロイド凝集が進みづらくゲル化に時間を要してしまう。このようなpHであれば、シリカドライゲルの密度は高くなる。反対にpHが大きい時はゲル化の時間を短くすることができるが、シリカドライゲル密度は低くなる。シリカドライゲル密度とゲル化の時間のバランスを考慮すると、より好ましいpH範囲は3〜4である。pHの調整は塩酸、硝酸の濃度調整より行ったり、アンモニアの添加によって行うことができる。
また、シリカゾル61をシリカ基体51の内表面上に塗布した後、ゲル化を行う際に、シリカゾル又はゲル化のための反応溶液にCa、Sr、Baを添加してもよい。
Ca、Sr、Baの添加の方法は上記と同様に、例えば、水又はアルコールに溶解するCa、Sr、又はBaの化合物のアルコキシド、塩化物、硝酸塩又は炭酸塩を選び、この化合物をシリカゾル調整時に所定量混合することにより行うことができる。また、その濃度も上記と同様とすることができる。
このシリカゾル61のシリカ基体51の内表面上への塗布、及びゲル化は、例えば、図8に示すようなシリカウェットゲル層形成装置401を用いて行うことができるが、これに限定されるものではない。
図8に示すシリカウェットゲル層形成装置401は、クリーンオーブン402内に設置された、シリカ基体51を支持する回転枠404と、回転枠404を駆動するための駆動装置付き架台403と、雰囲気の温度を調節するヒーター406a、406b等を具備する。シリカウェットゲル層形成装置401は、その他、雰囲気ガスを供給するガス供給口407aとその流量等を制御する開閉バルブ407b、ガスを排出するガス排出口408aとその流量等を制御する開閉バルブ408b等を具備している。
このシリカウェットゲル層形成装置401を用いてシリカ基体51の内表面上への塗布、及びゲル化を行うには、まず、シリカ基体51を回転枠404に支持させ、次いで上記シリカゾル61をシリカ基体51の中に投入し、ゲル化を行う。ゲル化の方法は上記のように公知のゾル−ゲル法における種々の条件を用いることができる。
(工程B−5:シリカウェットゲル層の乾燥)
次に、図2の(B−5)に示すように、シリカウェットゲル層62を乾燥させてシリカドライゲル層63とする。
この乾燥の条件は特に限定されないが、例えば、清浄な空気雰囲気にて室温から50〜200℃まで徐々に加熱して水を蒸発させ、3〜30日間かけてシリカウェットゲルをシリカドライゲルとすることができる。
(工程B−6:シリカドライゲル層の焼成)
次に、図2の(B−6)に示すように、シリカドライゲル層63を、O(酸素ガス)含有雰囲気下にて1200〜1500℃の範囲で焼成して透明シリカガラス層56とする。
なお、このシリカドライゲル層63のO含有雰囲気下での焼成の後、連続してN濃度が95vol.%以上の雰囲気下で焼成を行うことが好ましい。
このシリカドライゲル層63の焼成は、例えば、前述の工程A−5と同様に、図7に示した電気抵抗加熱炉301、及び方法によって行うことができる。
具体的には、まず、シリカドライゲル層63が内側表面上に形成されたシリカ基体51を図7に示したような電気抵抗加熱炉301内に設置する。
次いで、徐々に昇温させ1200〜1500℃にて1〜10時間程度保持し焼成を行う。雰囲気は当初大気ガスなどのO含有ガス雰囲気が必要であるが、最後は窒素ガス雰囲気(N濃度が95vol.%等)に置換すると透明シリカガラス層56中の含有O(溶存酸素ガス)が放出されるので、シリカ容器から放出されたOが収容物に取り込まれることが好ましくない用途、特にシリコン溶融用ルツボとしての用途に好ましい。
または、窒素ガスに水素ガスを1〜5%程度混合して焼成すると、透明シリカガラス層56中に残っている酸素ガスが水分子に変化して、さらに外部へ脱ガスしやすくなり、含有O(溶存酸素ガス)の少ない透明シリカガラス層56が得られる。
シリカガラス層56のシリカガラス密度の制御は前述の通りシリカウェットゲル層62形成時のpH値の調整等により行うことが可能であるが、またシリカドライゲル層63の焼成の際のガス雰囲気、温度、時間条件等によっても制御することができる。OH基濃度の制御はシリカドライゲル焼成時のガス雰囲気、温度、時間条件により可能である。
また透明シリカガラス層56の不純物濃度は各種原料の高純度化や各処理工程における工程汚染を改善することにより、低減することができる。さらに、炭素(C)の含有量について、Cは当初シリコンアルコキシド原料に含まれているものであり、その後のシリカウェットゲル層62の乾燥条件、及びシリカドライゲル層63の焼成における雰囲気、温度、時間条件により任意の値に制御することができる。
なお、シリカドライゲル層63の焼成と前述のシリカ基体51のO含有雰囲気下での焼成は、同一の工程で行うことができる。
この場合、シリカ基体51の形成を、上記の工程A−1からA−4まで(第一の態様)、又は工程A’−1からA’−4まで(第二の態様)を経て行った後、シリカドライゲル層63の作製までを、工程B−1からB−5までを経て行う。その後、工程A−5又は工程A’−5のシリカ基体51のO含有雰囲気下での焼成と、工程B−6のシリカドライゲル層63のO含有雰囲気下での焼成を同一の工程で行う。このときのO含有雰囲気下での焼成条件は、シリカドライゲル層63の焼成雰囲気に合わせることが好ましく、すなわち、焼成温度は1200〜1500℃とすることが好ましい。また、O含有雰囲気下での焼成を行った後、連続してN濃度が95vol.%以上の雰囲気下で焼成を行うことも上記と同様に好ましい。
シリカ基体51の仮成形後、シリカ基体51の焼成前でも、シリカゾル61の塗布を行うことができれば、このような態様を取ることができる。
このようにして、本発明のシリカ容器71を得ることができるが、必要に応じて以下のようにシリカ容器の洗浄を行う。
(シリカ容器の洗浄、乾燥)
例えば、フッ化水素酸水溶液(HF)1〜10%程度にて、5〜30分間の表面エッチングを行い、次いで純水で洗浄し、クリーンエア中で乾燥させてシリカ容器を得る。
(塗布層の形成)
さらに、本発明では、透明シリカガラス層56の内表面にカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)の少なくとも一種を含む溶液を塗布する工程を設けることができる。
作製されたシリカ容器71の内表面部分(すなわち透明シリカガラス層56の内表面)に、結晶化促進剤としてCa、Sr、Baの少なくとも1種以上をコーティングする。これらCa、Sr、Baの硝酸塩、塩化物、炭酸塩のいずれかの水溶液又はアルコール溶液を作製し、これを透明シリカガラス層56の内表面に塗布し、乾燥させる。このCa、Sr、Baの合計の元素濃度は、5〜500μg/cmとすることが好ましい。
この処理は、シリカ容器の用途に応じて行わない場合もある。
以上のような工程を経て、上記したような、図1(B)に示す本発明に係るシリカ容器71を製造することができる。
シリカ容器71を構成する各層のうち、シリカ基体51は、気泡を含有し、白色不透明であり、不透明シリカ層からなる。また、シリカ基体51のかさ密度は典型的には1.90〜2.15g/cmであり、このようなかさ密度であれば、シリカ基体51の耐熱変形性をより高くすることができる。
また、本発明のシリカ容器71の場合、シリカ基体51はシリカ純度が99.9〜99.999wt.%のような比較的低純度であっても、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1、2、3に示した本発明のシリカ容器の製造方法に従い、シリカ容器を以下のように製造した。
まず、第一の原料粉11を以下のように準備した(工程A−1)。
天然珪石を100kg準備し、大気雰囲気下で、1000℃、10時間の条件で加熱後、純水の入った水槽へ投入し、急冷却した。これを乾燥後、クラッシャーを用いて粉砕し、粒径30〜300μm、シリカ(SiO)純度99.999wt.%、総重量80kgのシリカ粉(天然珪石粉)とした。
また、以下のように、第二の原料粉12を準備した(工程A−1)。
溶融法によって球状非晶質シリカ粉(第二の原料粉)を合成した。この球状非晶質シリカ粉は、粒径0.2〜5μm、平均粒径1μm、平均比表面積4m/g、重量20kgであった。
このようにして準備した第二の原料粉12を、以下のようにしてバインダーコーティングされた顆粒体とした。
第二の原料粉12の20kgに対して、パラフィン系バインダー(融点55℃)100g、ステアリン酸系バインダー(融点100℃)100g、純水5kgを混合して、顆粒体形成用混合スラリーを作製した。この混合スラリーを、スプレードライヤーにより乾燥させ、バインダーコーティングされた顆粒体を作製した。このバインダーコーティングされた球状非晶質シリカ粉の顆粒体の、顆粒径は10〜100μmであり、平均は50μmであった。
次に、V型混合器を使用し、第一の原料粉11と第二の原料粉12の顆粒体を均一に混合し、混合粉体31とした(工程A−2)。
混合比は第一の原料粉11、80wt.%に対して第二の原料粉12の顆粒体を、20wt.%とした(すなわち、重量混合比(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}=20wt.%)。
次に、図5(a)に示すように、回転する円筒型ステンレススチール製外型枠101の内側へ混合粉体31を投入し、外型枠101の形状に合わせて均一の厚さになるように混合粉体31の形状を調整した(工程A−3)。
次に、図5(b)、(c)に示すように、外型枠101内部にステンレススチール製内型枠(プランジャ)111を挿入し、約3t加重により混合粉体31に0.1MPa(1kgf/cm)の圧力で加圧しつつ、プランジャ111を加熱することにより100℃に昇温して1時間保持した。
プランジャ111を引抜き、混合粉体31の成形体を形成し、これをシリカ基体51とした(工程A−4)。シリカ基体51の寸法は外径300mm、高さ300mm、厚さ10mmであった。
次に、シリカ基体51の焼成及び歪除去処理(アニール処理)を以下のようにして行った(工程A−5)。
図7に示すような二珪化モリブデンヒータ306を具備する、炉内寸法1m×1m×1mの高純度アルミナボードの耐熱材からなる電気抵抗加熱炉301内にシリカ基体51を設置した。そして、室温から1000℃まで200℃/時間の昇温速度で約5時間かけて昇温、1300℃まで20℃/時間の昇温速度で昇温した後、1300℃にて3時間保持した。
次いで1300℃から1150℃まで100℃/時間の降温速度で降温、1150℃で一時間保持し、1150℃から950℃まで20℃/時間の降温速度で降温し、除冷を行い、歪除去を行った。
次いで放冷して室温に戻した。
次に、シリカゾル61を作製した(工程B−1、B−2)。
メタノール(CHOH)1Lの中に純水(HO)8モル、アンモニア(NHOH)1モル、シリコンテトラメトキシド(通称TMOS)1モル混合してシリカ微粒子(高純度球状シリカガラス粉)を含むシリカゾルを作製した。
次に、まず、溶媒を蒸発させて、シリカ微粒子が30〜40wt.%になるように濃縮し、次いでこの濃縮したシリカゾルをシリカ基体51の中に投入し、塩酸水溶液(HCl)を添加してpHを3に調整し、シリカ基体51を回転撹拌させつつさらにTMOSを加えて加水分解させて、シリカ基体51内表面にシリカウェットゲル層62を形成した(工程B−3、B−4)。
次に、クリーンオーブンの中で、大気雰囲気下50〜200℃にてシリカウェットゲル層62を乾燥させて、シリカドライゲル層63が形成されたシリカ基体を得た(工程B−5)。
次に、工程A−5と同様の電気抵抗加熱炉301内にシリカドライゲル層63が形成されたシリカ基体を載置し、大気雰囲気下で室温から1000℃まで50℃/時で昇温、1250℃まで30℃/時で昇温、雰囲気を窒素ガス100%へ変えて1250℃で3時間保持した。次に、1250℃から900℃まで20℃/時で降温、室温まで冷却した。
このようにして製造したシリカ容器71を5wt.%フッ酸水溶液(HF)にて3分間洗浄後、純水洗浄し、乾燥させた。
(実施例2)
実施例1と同様に、ただし、第二の原料粉12としてAlドープ球状シリカ粉を使用することにより、シリカ基体51中のAl濃度を高めに調整した。また、シリカゾル61の原料にBa化合物を混合することにより、透明シリカガラス層56にBaを300wt.ppmドープした。
(実施例3)
図1、2、4に示した本発明のシリカ容器の製造方法に従い、シリカ容器を以下のように製造した。
まず、第一の原料粉11を以下のように準備した(工程A’−1)。
天然珪石90kg、シリカガラス塊10kgを準備し、大気雰囲気下で、1000℃、10時間の条件で加熱後、純水の入った水槽へ投入し、急冷却した。これを乾燥後、クラッシャーを用いて粉砕し、粒径30〜300μm、シリカ(SiO)純度99.99wt.%、総重量90kgのシリカ粉(天然珪石粉)とした。
次に、第二の原料粉12を、実施例2と同様にして準備した(工程A’−1)。
この第二の原料粉12を、実施例1の場合と同様の方法により、バインダーコーティングされた顆粒体とした。このバインダーコーティングされた球状非晶質シリカ粉(スート粉)の顆粒体の、顆粒径は10〜100μmであり、平均は50μmであった。
次に、V型混合器を使用し、第一の原料粉70wt.%に対して第二の原料粉の顆粒体を30wt.%を均一に乾式混合した。
この第一の原料粉と第二の原料粉の顆粒体の混合粉90wt.%に対して純水10wt.%、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム)を少量混合してスラリー状とした。次に、円筒型シリカガラス製容器、及びシリカガラスボールから成るボールミルにて1時間、このスラリーを均一混合した。この均一混合したスラリーに、密度が1.8〜1.9g/cm、粘度が1〜10/secせん断速度にて約500〜1000mPa・secになる様に、純水を適量加えて調整した。次に、このスラリーを容器に入れ、シリカガラスチャンバー内に設置し、室温にて10Pa以下の真空にて3分間真空脱ガス処理を行った。
このようにしてシリカ基体形成用混合スラリー41とした(工程A’−2)。
次に、図6(b)に示すような、石膏製の鋳込み型枠210の中へシリカ基体形成用混合スラリー41を注入した(工程A’−3)。
次に、クリーンオーブン中にて100℃で10時間保持、次いで200℃10時間保持し、その後室温まで冷却し、シリカ基体51を仮成形した(工程A’−4)。
次に、図7に示したような電気抵抗加熱炉301を用いて、シリカ基体51の焼成を行った(工程A’−5)。
二珪化モリブデンヒータ306を具備する、炉内寸法1m×1m×1mの高純度アルミナボードの耐熱材からなる電気抵抗加熱炉301内にシリカ基体51を設置した。そして、室温から1000℃まで200℃/時間の昇温速度で約5時間かけて昇温、1250℃まで20℃/時間の昇温速度で昇温した後、1250℃にて1時間保持した。
次いで放冷して室温に戻した。
次に、実施例2と同様に、シリカゾルから透明シリカガラス層56を作製した(工程B−1〜B−6)。なお、シリカゾル61の原料にBa化合物を混合することにより、透明シリカガラス層56にBaを300wt.ppmドープした。
このようにして製造したシリカ容器71を5%フッ酸水溶液(HF)にて5分間洗浄後、純水洗浄し、乾燥させた。
(実施例4)
基本的に実施例3と同様に、ただし、実施例3に比較して、第一の原料粉11としてすべてシリカガラススクラップ粉を使用することによりシリカ基体の焼成温度を低くすることができた。またシリカドライゲル層63の焼成温度をやや低め(1200℃)に設定することにより、透明シリカガラス層56中に含有される炭素(C)の含有量を高く設定することができた。
(比較例1)
概ね従来法に従ってシリカ容器(シリカルツボ)を作製した。すなわち、本発明のシリカ容器のシリカ基体に相当する部分も放電溶融(アーク溶融)によって形成した。
まず、第一の原料粉に相当する原料粉としてシリカ純度99.9999wt.%以上の高純度である天然石英粉(粒径30〜300μm)を準備した。また、本発明のシリカ容器のシリカ基体に相当する部分を作製する原料として第二の原料粉に相当するものを用いず、上記第一の原料粉に相当する高純度処理した天然石英粉のみを用いた。
これらの原料粉を用いて、空気雰囲気下で、カーボン製の回転枠に対して直接高純度天然石英粉を投入して回転枠内に遠心力を利用して石英粉層を形成し、これをカーボン電極で放電溶融して外層部(本発明のシリカ基体51に相当)を形成した。この間60分であり、外層部の温度は2000℃程度と推定される。
その後、外層部の内表面に高純度天然石英粉をホッパーから散布、放電溶融により内層部(本発明の透明シリカガラス層56に相当)を形成した。
(比較例2)
シリカ基体形成用原料としての有機バインダーを混合したシリカガラススクラップ粉をグラファイト型枠内で加圧成形し、次いで電気炉内にて大気雰囲気にし1200℃、5時間の焼成を行った。次いでこれを取り出し、上部からBaをドープした高純度天然石英粉を散布しつつアーク加熱法により溶融させて、シリカ基体の内表面部分に透明シリカガラス層(内層)を形成した。
[実施例及び比較例における評価方法]
各実施例及び比較例において製造したシリカ容器の物性、特性評価を以下のようにして行った。
(不純物金属元素濃度分析)
不純物金属元素濃度が比較的低い(高純度である)場合は、プラズマ発光分析法(ICP−AES、Inductively Coupled Plasma − Atomic Emission Spectroscopy)又はプラズマ質量分析法(ICP−MS、Inductively Coupled Plasma − Mass Spectroscopy)で行い、不純物金属元素濃度が比較的高い(低純度である)場合は、原子吸光光度法(AAS、Atomic Absorption Spectroscopy)で行った。
(かさ密度(比重))
水槽と精密重量計を使用して、アルキメデス法により測定した。
(各原料粉の粒径測定方法)
光学顕微鏡又は電子顕微鏡で各原料粉の二次元的形状観察及び面積測定を行った。次いで、粒子の形状を真円と仮定し、その面積値から直径を計算して求めた。この手法を統計的に繰り返し行い、粒径の範囲の値とした(この範囲の中に99wt.%以上の粒子が含まれる)。
(各層厚測定)
シリカ容器の側壁の全高さの半分部分における容器断面をスケールで測定することにより、シリカ基体及び透明シリカガラス層の厚さを決めた。
(OH基濃度測定)
赤外線吸収分光光度法で行った。OH基濃度への換算は、以下文献に従う。
Dodd,D.M. and Fraser,D.B.(1966) Optical determination of OH in fused silica. Journal of Applied Physics, vol.37, P.3911.
(透明シリカガラス層のOガス分子放出量の測定方法)
実施例、比較例のそれぞれのシリカ容器の透明シリカガラス層(内層)から10×50×厚さt1mmの寸法の両面鏡面研磨仕上げの測定用サンプルを作製し、これを真空チャンバー内に設置し、1000℃真空下におけるガス放出量を測定した。詳細は以下の文献に従う。
Nasu,S.et al.(1990) “Gas release of various kinds of vitreous silica”, Journal of Illuminating Engineering Institute of Japan, vol. 74, No.9, pp 595−600.
(炭素元素(C)含有量分析)
実施例、比較例のそれぞれのシリカ容器の透明シリカガラス層(内層)から作製した測定用サンプルをチャンバー内に設置し、酸素ガス含有雰囲気としつつ高周波誘導加熱燃焼させ、該サンプルと酸素ガスが反応して生成した一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)の量を赤外線吸収法により定量することにより炭素元素の含有量分析を行った。
(シリコン単結晶連続引上げ(マルチ引上げ)評価)
製造したシリカ容器の中に純度99.9999wt.%の金属ポリシリコンを投入し、昇温を行いシリコン融液とし、次いでシリコン単結晶の引上げを5回繰り返して行い(マルチ引上げ)、単結晶育成の成功率として評価した。引上げ条件は、CZ装置内を10Paの圧力のアルゴン(Ar)ガス100%雰囲気で、引上げ速度0.5mm/分、シリコン単結晶寸法を直径100mm、長さ200mmとした。また、1バッチの操業時間は約20時間とした。単結晶育成5回繰り返しの成功率の評価分類は以下の通りとした。
5回 ○(良好)
4回 △(やや不良)
3回以下 ×(不良)
(シリカ容器の耐熱変形性評価)
前記のシリコン単結晶連続引き上げにおいて、3回目終了後のシリカ容器の側壁上端部の内側への倒れ込み量を評価した。
内側への倒れ込み量が1cm未満 ○(良好)
内側への倒れ込み量が1cm以上2cm未満 △(やや不良)
内側への倒れ込み量が2cm以上 ×(不良)
(シリカ容器の製造コスト(相対的)評価)
シリカ容器の製造コストを評価した。特に、シリカ原料費、型枠と成形費、シリカ仮成形体の焼結費、溶融エネルギー費等の合計値を相対的に評価した。
コストが低い ○(従来製法コストの50%未満)
コストが中程度 △(従来製法コストの90〜50%)
コストが大きい ×(従来製法コストを100%とする)
(シリカ容器の透明シリカガラス層の不純物拡散防止効果)
製造したシリカ容器を、高純度アルミナボードの耐熱材とし、二珪化モリブデンをヒーターとする電気炉内に設置し、大気雰囲気、1450℃、12時間加熱処理を行った。次いで、該容器の内表面部分100μmをフッ化水素酸(HF)水溶液で洗浄除去した。次いで、該容器の内表面部分の厚さ100μmをフッ化水素酸(HF)50%水溶液にて溶解エッチング処理を行い、このエッチング溶液のアルカリ金属元素濃度値を分析することにより、シリカ純度の低いシリカ基体から高純度透明シリカガラス層への不純物金属元素の拡散が多かったか、少なかったかを評価した。
内表面厚さ100μm部分におけるLi、Na、Kの合計濃度値による分類は以下の通りとした。
0.1wt.ppm未満 ○(良好)
0.1以上〜1wt.ppm未満 △(やや不良)
1wt.ppm以上 ×(不良)
(シリカ容器の内表面結晶化効果)
製造したシリカ容器を、高純度アルミナボードを耐熱材とし二珪化モリブデンをヒーターとする電気炉内に設置し、大気雰囲気、1450℃、12時間加熱処理を行った。次いで該容器内表面部分の白色失透(クリストバライト結晶)部分を目視観察することにより再結晶化効果を評価した。再結晶化効果の評価分類は以下の通りとした。
全内表面積の80%以上が白色失透化 ○(良好)
全内表面積の50%以上〜80%未満が白色失透化 △(やや不良)
全内表面積の50%未満が白色失透化 ×(不良)
実施例1〜4、比較例1〜2で製造したそれぞれのシリカ容器の製造条件と、測定した物性値、評価結果をまとめ、下記の表1〜3に示す。
Figure 2012211082
Figure 2012211082
Figure 2012211082
表1〜3からわかるように、本発明に係るシリカ容器の製造方法に従った実施例1〜4では、比較例1より安価で、高生産性で供給できる低純度シリカ粒子を用いているにもかかわらず、単結晶引上げにおいて比較例1の従来のシリカ容器と遜色ない結果を出せるシリカ容器を製造することができた。
また、実施例1〜4では、比較例1、2に比較して、大幅に炭素元素(C)の含有量が多く、シリカ容器の耐熱変形性を向上させる効果が得られたものと思われる。一方で、炭素元素(C)の含有量が多すぎることもなく、製造したシリコン単結晶の品質に問題はなかった。さらに、実施例1〜4では、透明シリカガラス層に含有されるO分子濃度が、検出下限である1×1015(分子/cm)未満から、多くても2×1015(分子/cm)以下(実施例4)と低い。従って、これらのシリカ容器を用いて製造されるシリコン単結晶中にピンホール等の欠陥が発生しづらいものとなる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
11…第一の原料粉、 12…第二の原料粉、
31…第一の原料粉と第二の原料粉の混合粉体、
41…シリカ基体形成用混合スラリー、
51…シリカ基体、 56…透明シリカガラス層、
61…シリカゾル、 62…シリカウェットゲル層、 63…シリカドライゲル層、
71…シリカ容器、
101…外型枠、 102…内側成形用枠、
103…ホッパー、 104…攪拌用スクリュー、 105…計量フィーダ、
111…内型枠(プランジャ)、
210…鋳込み型枠、 211…鋳込み内型、 212…鋳込み外型、
213…スラリー鋳込み口、
301…電気抵抗加熱炉、 302…ガス供給口、 303…ガス排出口、
304、305…開閉バルブ、 306…ヒーター、
401…シリカウェットゲル層形成装置、 402…クリーンオーブン、
403…駆動装置付き架台、 404…回転枠、 406a、406b…ヒーター、
407a…ガス供給口、 407b…開閉バルブ、
408a…ガス排出口、 408b…開閉バルブ。

Claims (5)

  1. 回転対称性を有するシリカ容器であって、少なくとも、
    気泡を含有し、白色不透明であり、かさ密度が1.90〜2.15g/cmであり、シリカ純度が99.9〜99.999wt.%であり、Alを5〜500wt.ppmの元素濃度で含有し、OH基を1〜100wt.ppmの濃度で含有し、Li、Na、Kの各元素濃度が30wt.ppm以下であるものであり、不透明シリカ層からなるシリカ基体を有し、
    該シリカ基体の内側に、実質的に気泡を含有せず、無色透明であり、かさ密度が2.18〜2.21g/cmであり、Cを10〜1000wt.ppmの元素濃度で含有し、OH基を1〜200wt.ppmの濃度で含有する透明シリカガラス層を有するものであることを特徴とするシリカ容器。
  2. 前記透明シリカガラス層がCa、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含有するものであること、及び、前記透明シリカガラス層の内表面側に、さらに、Ca、Sr、Baの少なくとも一種の元素を含有する塗布層を有することの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする請求項1に記載のシリカ容器。
  3. 前記透明シリカガラス層が含有するCa、Sr、Baの合計の元素濃度が50〜5000wt.ppmであること、及び、前記塗布層に含有されるCa、Sr、Baの合計の元素濃度が5〜500μg/cmであることの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする請求項2に記載のシリカ容器。
  4. 前記透明シリカガラス層の含有するO分子の濃度が、該透明シリカガラス層から測定用試料を切り出し、該測定用試料のガス放出量を真空下において1000℃に加熱して測定した場合に、5×1015分子/cm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシリカ容器。
  5. 前記透明シリカガラス層のTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ta、Wの各元素濃度が10wt.ppb以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のシリカ容器。
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