JP2012210653A - 熱加工制御鋼板の溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板の成分を用いて計算されるフェライトパーライト組織の硬さよりも、実際の硬さがビッカース硬さで20以上硬くなっている熱加工制御鋼板を溶接するにあたり、本溶接の止端部に、化粧盛溶接を行い、応力集中部を溶接熱影響部から離れたところに位置するようにし、かつ、鋼材と最軟化部の硬さの差を15以下に制限することで、軟化部へのひずみ集中を回避することで、耐脆性破断特性を確保する。
【選択図】図3
Description
前記鋼板の突き合わせ部に形成した開先部を溶接し、前記開先部の溶接が終了した後に、前記開先部を有する鋼板の表面側の開先止端部に化粧盛溶接を形成させ、前記化粧盛溶接によって形成された溶接熱影響部の最軟化部のビッカース硬さと前記Hvbの差ΔHvの絶対値を15以下とすることを特徴とする熱加工制御鋼板の溶接方法。
Hvb≧Hfp+20 ・・・(式1)
Hfp=90.9X+114 ・・・(式2)
ここで、X=C+Si/24+Mn/5+Cu/10+Ni/18+Cr/5+Mo/2.5+V/5+Nb/5であり、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Nbは、それぞれ熱加工制御鋼板の質量%による各化学成分値である。
(3) 前記化粧盛溶接を行う際の溶接入熱量が0.6〜1.4kJ/mmであることを特徴とする(1)に記載の熱加工制御鋼板の溶接方法。
(4) 前記開先内の溶接を行う際の溶接入熱量が2.0〜3.5kJ/mm、かつパス間温度が350℃以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱加工制御鋼板の溶接方法。
(5)前記開先部は、開先角度が途中で変化しており、ルート側の開先角度が20°〜35°で、表面側の開先角度がルート側より5°以上広くなっていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱加工制御鋼板の溶接方法。
本発明では、制御圧延、制御冷却等により490〜690MPaの引張強度を有する熱加工制御鋼板を対象としている。
このフェライトパーライト組織の硬さ(以下、Hfpとする)を推定する式がいくつか発表されているが、そのうちの1つに以下の(式2)で表される推定式がある。なお、硬さは、ビッカーススケールで表記したときの硬さである。
ここで、X=C+Si/24+Mn/5+Cu/10+Ni/18+Cr/5+Mo/2.5+V/5+Nb/3であり、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Nbは、熱加工制御鋼板の質量%による各化学成分値である。
なお、硬さは、ビッカーススケールで表記されている場合、その値を3で割るとkg/mm2の単位での鋼材強度に、あるいは、3.3倍すると、MPaの単位での鋼材強度に換算することができるので、硬さそのものは、強度そのものを表していると考えることができる。
一般に、塑性ひずみが鋼材に導入されると、その部分は、塑性ひずみ導入前より脆化する。そのため、脆性破壊発生位置は、化粧盛溶接の止端部から、ひずみ集中部へ移動する危険がある。すなわち、図2(b)は、塑性ひずみが蓄積したことにより脆化した部分から破断が発生していることを説明している。
これに対し、通常の圧延鋼板では、軟化が発生しないため、ひずみ集中も発生せず、それによる脆化も発生しない。すなわち、図2(b)のような現象は生じない。熱加工制御鋼板を用いて、化粧盛溶接で耐脆性破壊特性を確保しようとする場合、このような現象に注意する必要がある。
Hvb≧Hfp+20 ・・・・(式1)
ここで、Hvbは熱加工制御鋼板の表面下1mm位置で測定されるビッカース硬さである。
一方、この差が小さいときは、軟化現象が顕著にはならない。この場合は、従来技術が有効な領域である。本発明では、軟化現象が生じる継手を対象としているため、HvbとHfpの差が20未満である場合は、顕著な軟化現象が発生しなく、従来技術で効果が発現できるため、本発明の対象外とする。
ΔHv=最軟化部の硬さ−Hvb
とすることにする。
この場合、最軟化部の硬さが鋼材硬さより低い場合は、ΔHvがマイナスになるが、こうすることによりどちらがより軟らかくなったかを表現することができる。なお、単に硬さの差をいう場合は、ΔHvの絶対値がそれに相当する。
この硬さの差が15を上回る場合は(この場合はΔHv<−15となる)、最軟化部に歪が集中し、そこでの靱性が劣化するため、この値を設定した。なお、硬さの差が15であるとき、熱加工制御鋼板の引っ張り強度と溶接熱影響部の最軟化部の引っ張り強度の差が約50MPaあることを意味する。
最軟化部硬さの値は、最も硬さが低くなった点とその隣接点のより硬さの低い側の位置の硬さとの平均値を最軟化部硬さとする。鋼板硬さHvbは、最軟化部から母材側に3mm離れた点とその点を含むトータル4点の測定結果の平均値として決める。
こうして、化粧盛溶接による熱影響部の最軟化部硬さと、熱加工制御鋼板の硬さHvbを知ることができ、それにより、ΔHvを決定することができる。上記の例では、ΔHvは9.75である。本発明を適用する場合には、事前にこのような試験を行い、ΔHvが所定の値になっていることを確認することが望ましい。
しかし、継手性能に影響を与えない範囲で、本溶接の入熱量を調整することはできるし、本溶接が多層盛溶接の場合は、パス間時間を調節することによっても前記最軟化部のビッカース硬さに影響を与えることはできる。
この継手から、図4に示す場所からシャルピー試験片を採取した。シャルピー試験片のノッチの位置は、以下で測定する最軟化部硬さの位置になるようにした。同時に、その継手から、マクロ試験片を採取し研磨した後、ナイタールエッチングして金属組織を現出した。そして、継手鋼材の上面から1mm深さの位置を上面に平行にして、溶接金属部からHv硬さを測定した。荷重1kgで、0.5mm間隔で測定して、継手の硬さ分布を得た。
最軟化部の硬さは、この硬さ分布で最もやわらかくなった点とその隣接点のうち、より硬さの低い側の位置の硬さとの平均値として決定した。鋼材硬さHvbは、最軟化部から母材側に3mm離れた点とその点を含むトータル4点の平均とした。化粧盛溶接による熱影響部の最軟化部硬さと、熱加工制御鋼板の硬さを知ることができ、それにより、ΔHvを決定した。
歪が集中する場合、その分歪集中部のシャルピー値は減少するが、この値は歪集中する前のシャルピー値にも影響されるため、荷重負荷前のシャルピー値と荷重付加後のシャルピー値の比で評価することにした。
これに対して、比較例の継手No.51〜55では、vEa/vEb比が全て0.5を下回っており、歪集中による靱性劣化が顕著になっていることがわかる。この例では、表1からわかるようにHvbとHfpの差が全て20を上回っていて、軟化の影響が出やすい鋼板を用いているが、表2からわかるように化粧盛溶接の入熱量及びΔHvが本発明の範囲外であったためと考えられる。
Claims (5)
- 鋼板の表面下1mm位置で測定されるビッカース硬さHvbと該鋼板の成分を用いた下記(式2)によって定義されるHfpが、下記(式1)を満たす熱加工制御鋼板の溶接方法であって、
前記鋼板の突き合わせ部に形成した開先部を溶接し、前記開先部の溶接が終了した後に、前記開先部を有する鋼板の表面側の開先止端部に化粧盛溶接を形成させ、前記化粧盛溶接によって形成された溶接熱影響部の最軟化部のビッカース硬さと前記Hvbの差ΔHvの絶対値を15以下とすることを特徴とする熱加工制御鋼板の溶接方法。
Hvb≧Hfp+20 ・・・(式1)
Hfp=90.9X+114 ・・・(式2)
ここで、X=C+Si/24+Mn/5+Cu/10+Ni/18+Cr/5+Mo/2.5+V/5+Nb/5であり、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Nbは、それぞれ熱加工制御鋼板の質量%による各化学成分値である。 - 前記化粧盛溶接を行う際の溶接入熱量が0.6〜2.5kJ/mmであることを特徴とする請求項1に記載の熱加工制御鋼板の溶接方法。
- 前記化粧盛溶接を行う際の溶接入熱量が0.6〜1.4kJ/mmであることを特徴とする請求項1に記載の熱加工制御鋼板の溶接方法。
- 前記開先内の溶接を行う際の溶接入熱量が2.0〜3.5kJ/mm、かつパス間温度が350℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱加工制御鋼板の溶接方法。
- 前記開先部は、開先角度が途中で変化しており、ルート側の開先角度が20°〜35°で、表面側の開先角度がルート側より5°以上広くなっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱加工制御鋼板の溶接方法。
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