本発明は、半径方向の強度を損なうことなしに柔軟性を改良しつつ捩れおよび内在する応力を最小化する構造を有した血管内ステント向けられている。本発明はまた、リングおよび接続リンクの方向性のないパターンが組み込まれたステントに向けられている。
1つの態様において、本発明は、体内管腔に用いる柔軟な血管内ステントであって、共通の縦軸に沿って同軸に配置されるとともに相互に接続されて前記ステントを形成する複数の円筒リングを備え、前記円筒リングはそれぞれ第1の送給直径およびより大きい第2の植設直径とを具備している。各円筒リングは、隣接するリング間にある接続リンクの一端がそこに接続される開いたW字形(open W)あるいは蝶形(butterfly)パターンを有している。さらに、各リングは、複数の第1の山部、第2の山部、および第3の山部を有し、第3の山部に隣接して前記蝶形パターンが画成されている。各山部はある高さおよび頂点を有しており、第1の山部は第2の山部より高く、かつ第2の山部は第3の山部より高い。別の方法で説明すると、各円筒リングは、複数の第1の谷部、第2の谷部、および第3の谷部を有し、第3の谷部に隣接して蝶形パターンが形成されている。さらに各谷部はある深さおよび頂点を有しており、第1の谷部は第2の谷部より深く、かつ第2の谷部は第3の谷部より深い。
少なくとも1つの接続リンクが、各円筒リングを隣接する円筒リングに接続する。この接続リンクは、第2の山部に向かってステントの縦軸に対し横方向に延在する湾曲部分を具備している。加えて、波形の接続リンクの湾曲部分は、第2の山部と長手方向に同軸に配置することができる。また、各波形の接続リンクは、真っ直ぐでステントの縦軸と平行であるとともに第2の山部に対して円周方向にオフセットされた腕を有することができる。1つの特別な実施形態において、第1の山部は、波形の接続リンクに接続されるとともに、W字形または蝶形パターンに隣接して構成され、ステント端部のラッパ状の拡がりを最小化することによって応力を軽減する。
さらに本発明は、他のあるいは隣接する山部および谷部とは異なる半径あるいはまた高さを具備した山部および谷部を意図している。本発明のさらに他の態様においては、接続リンクあるいはまた円筒リングの少なくとも一部が、変化する厚みの構造あるいはまた変化する幅を具備することができる。
本発明のさらに別の態様は、方向性のないステントに向けられている。そのようなステントは、近位側あるいは遠位側に方向付けを特定してステント送給システム上に取り付ける必要がない。ステントの近位端における山部および谷部の構造は、遠位端における山部および谷部の構造に対して鏡像となっている。近位端および遠位端の円筒リングは、高い山部、中間の山部、低い山部、深い谷部、中間の谷部、および浅い谷部の様々な組合せを有することができる。さらに、方向性のないステントは、開いたW字形あるいは蝶形パターンを有することができる。1つの実施形態において、開いたW字形あるいは蝶形パターン構造の少なくとも2つが、ステントの長手方向に沿ってそれぞれ反対方向を向いている。加えて、方向性のないステントにおいて、波形の接続リンクの湾曲部分の全てが同じ方向を向いていないようにすることは予想される。ステントの近位端および遠位端がほぼ鏡像な構造あるいはステントの反対方向の端部と回転鏡像の構造にあり、かつリングの山部および谷部の構造がステントの長手方向に沿った1つ若しくは複数の位置において反転するので、この方向性のないステントは、ステント送給システム上にどちらの方向に向けても取り付けることができる。
本発明はまた、カスタマイズされた柔軟性、薬剤による被覆、あるいはまたX線不透過特性を具備した血管内ステントに向けられている。1つの実施形態において、本発明は、ステントの近位端あるいはまた遠位端が中央部より柔軟なステントに向けられている。この設計はまた、薬剤による被覆を有することができるが、薬剤による被覆率はステントの端部よりも中央部の方が高い。ステントの1つ若しくは複数の端部のX線不透過性は、ステントの中央部より高くすることができる。
1つの態様を考慮すると、本発明には、一方あるいは両方の端部が中央部より柔軟であり、かつ中央部における薬剤の被覆率が端部よりも高いステントが含まれる。したがって、体内管腔に用いる柔軟な血管内ステントは、共通の縦軸に沿って同軸に配置された複数の円筒リングを備える。少なくとも1つの接続リンクが、隣接する円筒リングを接続する。ステントは、第1の端部、中央部、および第2の端部を備え、端部の少なくとも1つが中央部より柔軟である。このステントは薬剤による被覆を有し、薬剤の被覆率は、端部の少なくとも1つよりも中央部において高い。
この実施形態は、以下の1つ若しくは複数の態様とすることができる。両方の端部を中央部より柔軟とすることができる。一方または両方の端部における少なくとも1つの接続リンクは、多数の湾曲部を具備した形状のような柔軟性を高める形状として、極めて柔軟なものとすることができる。少なくとも1つの端部における少なくとも1つ若しくは複数の円筒リングは、一様な大きさの山部を有する。少なくとも1つの端部における1つ若しくは複数の円筒リングは、U字形あるいはY字形の輪郭の部材を有することができる。中央部の少なくとも1つの接続リンクは、U字形の輪郭を有することができる。中央部の少なくとも1つの円筒リングは、蝶形パターンを具備した少なくとも1つの部材を有することができる。
本発明の別の態様において、ステントは、その残りの部分より柔軟な一端を備えることができる。これは、典型的には、身体内部のカーブを通って湾曲するときにステントの先端となり、かつステントの残りの部分がその後に続く、ステントの遠位端である。そのようなステントは、共通の縦軸に沿って同軸に配置された複数の円筒リングを備える。少なくとも1つの接続リンクが、隣接する円筒リングを接続する。ステントは、第1の端部、中央部、および第2の端部を備える。端部のうちの少なくとも1つが、中央部より柔軟である。
本発明の別の態様では、ステントが、中央部よりX線不透過性が高い少なくとも1つの端部を備える。そのようなステントは、共通の縦軸に沿って同軸に配置された複数の円筒リングを備える。少なくとも1つの接続リンクが、隣接する円筒リングを接続する。ステントは、第1の端部、中央部、および第2の端部を備える。端部のうちの少なくとも1つが、中央部よりX線不透過性が高い。
このタイプのステントは、一方または両方の端部が中央部より高い表面領域密度を有する設計とすることができる。したがって、金属製のステントにおいては、より大きな表面領域密度を有する端部の方が中央部よりもX線不透過性が高い。
したがって、本発明は、身体内部における所与の環境あるいはまた特定の患者のための設計要件を満たすべく、ステント設計をカスタマイズするためのオプションを、ステントの設計者に提供する。
本発明のこれらのおよび他の特徴と効果は、添付の図面とともになされる、本発明の原理を例証として示す以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかとなる。
ここで、本発明の単なる実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。
図面を参照すると、本発明が図1〜図9Bに示されているが、それらは説明のために与えられた単なる実施形態であり、それらに限定されるものではない。
ここで図1に戻ると、本発明の例示的なステント30は、例えば図2A〜図2Bに示されているように使用の際には円筒構造であるにもかかわらず、そのパターンを明瞭に見ることができるように平坦な状態で示されている。このステントは、典型的に管状部材から成形されるが、図1に示したように平坦な板材から成形して円筒構造に丸めることもできる。
図1〜図3Bに示したように、ステント30は、該ステントの周りで円周方向に延びる複数の円筒リング40から構成されている。ここで認められるべきことは、図示されているより少ないあるいは多い円筒リングがあっても良いということである。これらのリングは、共通の縦軸に沿って同軸に配置されるとともに、接続リンク54によって相互に接続されてステントを形成している。接続リンク54は、ほぼ真直ぐな部材(図5を参照)とすることもできるし、あるいは図示したように1つ若しくは複数の湾曲または屈曲を含むことができる。さらに、波形部分を有した接続リンクは、ステントに沿ったあらゆる場所に若しくは選択した場所に構成することができる。ステントは、ある送給直径42(図2A)を有するとともに、植設直径44(図3Aおよび図3B)に拡大する。ステントは、近位端46および遠位端48を備えている。典型的に、このステントは管からレーザ切断することが意図されているので、分離した部分はない。
図2Bを詳しく参照すると、各円筒リングは、ステントの最も外側の表面を定める円筒外壁面52と、ステントの最も内側の表面を定める円筒内壁面53とを具備している。接続リンク54は、1つの円筒リング40を隣接する円筒リング40に接続している。接続リンク54がステントの軸線方向の柔軟性を損なうことを防止するために、湾曲部56が接続リンク54に組み込まれている。湾曲部56は1つ若しくは複数の実質的に真直ぐな部分58に接続されているが、真直ぐな部分58はステントの縦軸に対して実質的に垂直となっている。したがって、ステントを曲がりくねった血管、例えば冠状動脈に通して送給するときに、波形の接続部の湾曲部56および真直ぐな部分58は、ステントが長手方向内に撓むようにして、目標部位へのステントの送給を実質的に改良する。接続リンクにおける湾曲部および真っ直ぐな部分の数は、柔軟性が異なる構造を達成するために、図示したものよりも増加させあるいは減少させることができる。ある実施形態(図示せず)において、接続部を複数の湾曲部56および真直ぐな部分58から構成し得ることは、予期されるところである。真っ直ぐな部分をステントの縦軸に対して実質的に垂直とすることにより、接続リンク54は湾曲部56においてほぼヒンジの様に作用し、圧着(crimp)された状態および拡大した状態の両方において柔軟性をもたらす。接続リンク54の数は、ステントを圧着した状態および拡大した状態における軸線方向の柔軟性を変化させるべく調整することができる。
ステント30は、交互に並ぶ複数の山部(頂部、peak)および谷部(valley)を具備したリングを有するものとしてさらに説明することができる。山部および谷部は、類似のあるいは異なる寸法とすることができる。1つの実施形態において、リングは、隣接するリング間の接続リンクが接続される、1つ若しくは複数の開いたW字形あるいは蝶形の支柱パターンを具備することができる。すなわち、リングは、複数の低い山部60、高い山部61、中間の山部62、浅い谷部90、深い谷部91、および中間の谷部92を具備することができる。山部および谷部は、様々な長さの支柱および頂点112から成形される。1つの実施形態において、支柱には、短い支柱66、長い支柱67、および中間の支柱68が含まれる。これらの支柱の長さは、所望の拡大直径を達成するべく変更することができる。図示したように、開いたW字形あるいは蝶形のパターンは、1つの低い山部60、2つの短い支柱66、1つの長い支柱67、1つの中間の支柱68によって画成されている。支柱は、特定の用途に応じて湾曲させあるいは真直ぐとすることができる。また、図示したように、各山部はある高さを持っており、高い山部は中間の山部よりも背が高く、中間の山部は低い山部よりも高い。加えて、各谷部はある深さを持っており、深い谷部は中間の谷部より深く、かつ中間の谷部は浅い谷部より深い。他の実施形態において、より広い範囲の高さのタイプの山部、あるいはまたより広い範囲の深さのタイプの谷部を有することができる。
さらに、1つの態様において、ステント30は、1つ若しくは複数のY字形パターンの支柱をさらに備えることができる。図2Bを参照すると、Y字形パターンは、1つの中間の谷部92、1つの長い支柱67、および1つの中間の支柱68によって画成されている。
また、本発明のステントが、低い山部、高い山部および中間の山部とは異なる高さを持つ、少なくとも1つの追加的な山部(図示せず)をさらに備え得ることもまた予想することができる。また、このステントは、浅い谷部、中間の谷部および深い谷部とは異なる深さを持つ、少なくとも1つの追加的な谷部(図示せず)を更に備えることができる。例えば、1つの実施形態は、4つの異なる高さの山部および4つの異なる深さの谷部を備えることができる。さらに、山部および谷部の数は、用途に応じ各リングにおいて変更することができる。したがって、例えばステントを冠状動脈内に植設する場合は、冠状動脈より直径が大きい末梢血管内にステントを植設する場合よりも少ない数の山部および谷部が必要となる。さらに、山部および谷部の数は、拡大直径を変更するべく調整することができる。さらに、様々なサイズの山部および谷部の順序若しくは並びは、1つのリングにおいてはあるいは1つのリングから他のリングへと変化させることができるし、隣接するリングにおける様々な山部および谷部は一直線上に揃えることもできるし互いにオフセットさせることもできる。ここで理解されるべきことは、開いたW字形のパターンの定義には、異なる高さおよび深さの1つ若しくは複数の山部および谷部を含む複数の頂点の存在が含まれなければならないが、それには限定されないということである。
1つの特定の実施形態において、図示されているように、各リング40の山部60、61および62は近位端46の方へ向きが定められ、かつ各リング40の谷部90、91および92は遠位端48の方に向きが定められている。これらのリングは、互いに相対的に同じ位相で配置することができる。すなわち、1つのリングの山部は、1つのリングの幅にリング間の隙間を加算しただけ隣接するリングの山部から離すことができる。同様に、1つのリングの谷部は、1つのリングの幅にリング間の隙間を加算しただけ隣接するリングの谷部から分離される。
前述のように、ある状況下では、位相をずらして(図示せず)、すなわち1つのリングの山部の頂点を隣接するリングの山部の頂点から円周方向にオフセットさせて配置することが望ましい。山部、谷部および接続リンクをこのように配置することは、望ましい拡大能力、半径方向の高い強度、高い柔軟性を持つとともに充分に壁を覆って血管を支持するステントをもたらす。
例えば図1〜図2Bに見ることができるように、湾曲部56および真直ぐな部分58は、圧着されたときに、湾曲部56および真直ぐな部分58に対してちょうど遠位側となるスペース内にその中間の山部62が入れ子となるように設計されてきた。この入れ子構造は、ステント30を送給システム上にタイトに圧着して、小さい圧着外径を達成できるようにする。
図2A〜図2Bを参照すると、圧着あるいは圧縮プロセスは、波形の接続リンク54をその湾曲部56とともに、中間の山部62のより近くへと円周方向に移動させる。様々なステント支柱、湾曲部、接続リンク、山部および谷部は、ステントを圧着しあるいは圧縮するときに互いに接触させることができるが、支柱66、67、68、頂点112および接続リンク54の重なりを回避することが望ましい。
ここで図4を参照すると、1つの実施形態において、接続リンク54の腕76は、低い山部60の頂点112に取り付けられている。腕の長さは、異なる実施形態において変更することができる。接続リンク54の他端78は、中間の谷部92の頂点112に取り付けられている。特に、この実施形態において、ステントが圧縮された状態および拡大された状態の両方のときに、低い山部60および腕76の総計の高さ「H」は中間の山部62の長さより長い。これは、カテーテルまたは他のステント送給装置上にきつく圧縮されるステントをもたらす。また、そのような構造は、波形の接続リンク54と中間の山部62との間の重なりを回避するために用いることができる。加えて、中間の山部62および高い山部61の円周方向の配置は、中間の山部62および高い山部61の接続リンク54の腕78への接触を回避するために変更することができる。
図1〜図4に開示したような複雑なパターンにより、ステントの各部分の拡大率を変化させることができる。したがって、本発明の1つの態様は、ステントが均一にかつ一様に拡大するように、各頂点112に異なる曲率半径を与える。ここで図4を詳しく参照すると、高い山部61に対応する第1の半径71は、中間の山部62に対応する第2の半径72より小さい曲率半径となっている。一般的に、ある山部に組み合わされている支柱がより長いほど、ステントのその部分はより容易に拡大するため、2つの長い支柱67を具備している山部にはより小さい半径が組み合わされる。同様に、山部、例えば高い山部61の支柱67より短い支柱66を具備している低い山部60において、より短い支柱66によって作り出されるより堅い曲げモーメントを埋め合わせるために、頂点112はより容易に拡大するより大きな曲率半径73を具備している。さらに他の実施形態においては、異なるタイプの山部および谷部が、一様に拡大するのではなく異なる張力で拡大するように、各山部および各谷部の曲率半径を調整することができる。加えて、中間の山部62および高い山部61の円周方向の配置は、一様な拡大を達成するために変更することができる。
浅い谷部90の半径75もまた、ステントの一様な拡大をもたらすために変更することができる。中間の支柱68および短い支柱66によって成形される浅い谷部は、長い支柱67および短い支柱66によって成形される浅い谷部に比較すると、ステントが拡大するときに、よりゆっくりと拡大する傾向にあるので、中間の支柱68を具備している浅い谷部にはより大きい曲率半径を組み込むことができる。したがって、第1の浅い谷部90Aの第3の半径75は、隣接する第2の浅い谷部90Bの第4の半径75より大きくすることができる。浅い谷部の曲率半径を変更することにより、ステントはより均一に拡大するとともに1つの円筒リングにおいて隣接する部分の拡大率の変化を埋め合わせることができる。
公知技術の典型的なステントは、圧縮された状態から拡大された状態となるにつれて大きな歪が生じる。ステントの拡大によって生じる歪が接続リンクに角度を付けるので、ゆがんだステントに帰着する。図5を参照すると、低い山部60によって互いに接続された2つの浅い谷部90を含む、開いたW字形の蝶形パターン94が示されている。この蝶形パターン94は、ステント30が拡大する間に山部60、61、62、谷部90、91、92、支柱66、67、68および接続リンク54上に作用する歪を減少させるように設計されている。また、蝶形パターン94の設計は、より良い圧着特性の達成を容易にする。低い波頭および長い波頭が直線的な接続リンクからはるかに離れて配置されているので、圧着の間、長い波頭および短い波頭は直線的な接続リンクに衝突する前に長い距離を移動することになるからである。それは、被覆の損傷を防止しあるいはその可能性を最小化するので、ステントを薬で被覆するときに特に有益である。さらに、両方の谷部90は、圧着されたステントが曲がりくねった部分を通る際に動いていかなる湾曲にも対応する2つの分離した要素であるため、蝶形のW字形の波頭はステントの柔軟性を高めることになる。
上述したように、湾曲部を含むより多くのあるいはより少ない接続リンク54が、隣接する円筒リング40の間に配設されていることもまた設計的な特徴である。図5に示すように、隣接する円筒リングを接続するために、波形の接続リンク54に加えて真っ直ぐな接続リンク84を含めることもできる。真っ直ぐな接続リンクは、波形の接続リンクの付属物として、安定をもたしてステントの長さの変化を助けるために用いることができる。
さらに、真っ直ぐな接続リンクは、ステント端部のような局部的な領域により高い剛性をもたらすべく、様々な他のアプローチに用いることができる。例えば、ステントの挿入リング40A、40B、40C(図1)よりも、ステント端部46、48(図2B)の円筒リングの間に、より多くの真っ直ぐな接続リンクを組み込むことが望ましい。実際に、1つの予想される実施形態においては、全ての接続リンクを実質的に真っ直ぐな形態とすることができる。
本発明の別の態様では、図6に示したように、ステント30は、長い支柱67、短い支柱66、中間の支柱68、各山部60、61、62、各谷部90、91、92および波形の接続リンク54を含む円筒リング40の各要素のそれぞれが、ステントの長さに沿って変化する厚みを具備するように成形される。例えば、波形の接続リンク54は、その延長部分78よりも腕76の方を厚くすることができる。そのような構造は、半径方向の強さを維持しつつ配備の際の圧力を減少させる。さらに、短い支柱66、長い支柱67および中間の支柱68は、変化する柔軟性をリングに作り出すため、それらの長さに沿ってそれらの厚み(半径方向の厚み)を変化させることができる。また、1つの予想されるアプローチにおいては、低い山部60が有する短い支柱66は、半径方向に厚い部分80をその中央に具備するとともに半径方向に薄い部分82をその端部の近傍に具備することができる。他の実施形態(図示せず)として、ステントの近位端46のリング40Eあるいはまた遠位端48のリング40は、ステントの他の円筒リング40より半径方向により厚いものとすることができる。ここで認められるべきことは、近位端のリング40Eが、ステント30の残りのリングとは異なる独特の形態を具備し得ることである。
ここで図7に戻ると、1つの予想される実施形態においては、少なくとも1つの円筒リング40が山部および谷部の反復するパターンを有している。すなわち、例えば各パターン部分88は、低い山部60、浅い谷部90B、高い山部61A、深い谷部91、高い山部61B、中間の谷部92、中間の山部62、および浅い谷部90Aを順番に有している。このパターン部分は、所望の拡大直径の円筒リングをもたらすために、必要に応じて何回も反復させることができる。また、隣接する円筒リングは、1つの波形の接続リンク54によって1つのパターン部分毎に接続することができる。例えば、波形の接続リンクは、1つの円筒リングの低い山部60を、隣接する円筒リングの中間の谷部92に接続することができる。さらに、1つのパターン部分毎に、複数の波形の接続リンク54あるいは真っ直ぐな接続リンク84(図5)があっても良い。他の予想される実施形態において、接続リンク54、84は、様々なタイプの山部60、61、62および谷部90、91、92のいずれかを、任意の他のタイプ若しくは同じタイプの山部あるいは谷部に接続することができる。隣接する円筒リングは、互いに同じ反復パターンあるいは異なる反復パターンを具備することができる。
ここで、図1を参照すると、1つの実施形態において、本発明のステントは、4つの山部および4つの谷部を含む反復パターン部分を備えるとともに、第1のリング40Aの低い山部60が隣接する第2のリング40Bの中間の谷部92と長手方向に同軸に配置されつつ接続されている。第2のリング40Bの低い山部60は、隣接する第3のリング40Cの中間の谷部92と長手方向に同軸に配置されつつ接続されている。言い換えると、第2のリング40Bのパターンは第1のリング40Aのパターンに対して回転しており、かつ第3のリングの40Cのパターンは第2のリング40Bのパターンに対して回転している。この回転パターンは、3つ目の円筒リング毎に低い山部が長手方向に同軸に配置されることに帰着する。そのような3つのリングを同軸に配置する設計は、追加の長さをステントに追加する必要があるときに繰り返すことができる。少なくとも1つの実施形態において、ステント30の最も近位側の端部46Aまたは最も遠位側の端部46Bは、全ての長さが等しい支柱66、67または68を具備した波形部分の列40Eを具備することができる。
本発明のステント30の他の実施形態は、開いたW字形あるいは蝶形の支柱パターン(図8を参照)を備えており、ステント30の再配置された部分構造が、ステントの端部46、48がラッパ状に広がる可能性に対処するパターンをもたらしている。このことを達成するために、深い谷部91を画成している長い支柱67が接続リンク54に接続されるとともに、中間の谷部92を画成している支柱67、68がそれに対して円周方向に隣接して配置されている。このようにして、W字形あるいは蝶形構造から放出された応力は、1本の長い支柱67および1本の中間の支柱68ではなく、一対の長い支柱67に伝達される。
ここで図9A〜図10Bを参照すると、ステント30のもう1つの態様が、方向性のないステントとして実現されている。特に、方向性のないステントを送給装置上に取り付けるときに、ステントの近位端あるいは遠位端を送給装置の遠位端に対してその向きを定めても、その有効性は等しい。したがって、方向性のないステントは、近位側および遠位側の好ましい方向付けなしに位置決めして、ステント送給装置(図示せず)、例えばバルーンカテーテル上に取り付けることができる。図9A〜図9Bは、方向性のないステントの一部分の代表的な特徴を製造された状態(平坦および円筒)で示しており、かつ図9A〜図9Bは、方向性のないステントの一部分の代表的な特徴を圧縮された状態(平坦および円筒)で示している。
方向性のないステントの一実施形態において、ステント30の最も近位側の端部46の円筒リング40上にある山部60、61、62のすべての頂点112が遠位側を向いており、かつ最も遠位側の端部48の円筒リング40上にある山部60、61、62のすべての頂点112が近位側を向いている。同様に、最も遠位側の端部48の円筒リング40の谷部90、91、92の全てが近位側を向いており、かつ最も近位側の端部46の円筒リング40の谷部の全てが遠位側を向いている。言い換えると、近位端46の円筒リング40の全ての山部が、遠位端48の円筒リング40の全ての山部を向いている。加えて、近位端46のリング40上の全ての谷部が、遠位端48のリング40の全ての谷部の方を向いている。
さらに他の態様においては、ステントの全長に沿って、ステント30の近位端46を向いた頂点112を具備する山部60、61、62、およびステントの遠位端48を向いた頂点を有する山部を、ほぼ等しい数で設けることができる。また、ステントの全長に沿って、ステント30の近位端46を向いた頂点112を具備する谷部90、91、92、およびステントの遠位端48を向いた頂点を具備する谷部を、ほぼ等しい数で設けることができる。
さらに他の態様(図示せず)においては、近位端46と遠位端48の間に配置された中間リング40のうち、少なくともいくつかが近位側を向いた頂点112を具備した山部60、61、62を有するとともに、いくつかの他のリングが遠位側を向いた頂点を具備した山部を有することが予想される。同様に、近位端46と遠位端48との間に配置された中間リング40のうち、少なくともいくつかが近位側を向いた頂点112を具備している谷部90、91、92を有するとともに、いくつかの他のリングが遠位側を向いた頂点を具備している谷部を有することができる。
さらに、ステント30の各リング40には、ステントの近位端46を向いた頂点112を具備している山部60、61、62、およびステントの遠位端48を向いた頂点を具備している山部を、ほぼ等しい数で設けることができる。また、ステントの各リングには、ステントの近位端を向いた頂点を具備している谷部90、91、92、およびステントの遠位端を向いた頂点を具備している谷部を、ほぼ等しい数で設けることができる。
さらに、1つのリング40上にある山部60、61、62の頂点112の全てを同じ方向で軸線方向に並べて配置する必要はない。例えば、リング40上の山部60、61、62のうちいくつかの頂点112が遠位側48を向き、リング40上に山部のいくつかの頂点が近位側46を向くことができる。また、リング40上の谷部90、91、92のいくつかの頂点112が遠位側48を向き、リング40上に谷部のいくつかの頂点が近位側46を向くことができる。加えて、リングは、互いに回転方向にオフセットし、あるいは同じ位相となるように構成することができる。
図9Aに示したように、方向性のないステントは、長手方向において互いに反対に向きが定められた少なくとも2つの蝶形パターンを備えている。さらに、あるアプローチにおいては、反対方向に向きを定めた蝶形パターンが同じリング上にあるいは異なるリング上にあるように、ステントを構成することが望ましい。例えば、蝶形部分94C、蝶形部分94Dに対し長手方向に反対方向を向いている。
少なくとも1つの追加的な実施形態においては、波形の接続リンク54の湾曲部56の全てが、方向性のないステントにおいて同じ方向を向いているわけではない。例えば、図8A〜図9Bに示したように、波形の接続リンク54Aの湾曲部56Aは、波形の接続リンク54Bの湾曲部56Bに対し円周方向に反対を向いている。
さらにまた、本発明の方向性のないステントが、図9Bに示されている円周方向内に反対を向いている波形の接続部に加えて、図9Aの反対方向を向いている蝶形パターンの両方を備え得ることは予想される。さらに、必要な場合には、そのような特徴を方向性のステントに組み込むこともできる。
加えて、方向性のないステント(図9〜図10Bを参照)においては、波形の接続リンク54の湾曲部56に隣接したままとなるように、中間の支柱68を構成することができる。さらにまた、方向性のないステントの各実施形態において、波形の接続リンク54の腕76は、典型的に低い山部60に接続される。
他の態様においては、W字形あるいは蝶形のパターンを備えない、方向性のないステント30もまた予想される(図11を参照)。すなわち、この実施形態(図11)を除いて図9Aの様な方向性のないパターンもまた予想され、ステント30はW字形あるいは蝶形の構造を備えていないしかしながら、このステント30は、その近位端あるいは遠位端がステント送給システムの遠位端の方を向くようにして、送給装置上に取り付けることができる。したがって、ステント30は、その近位端40上の山部61、62の遠位側を向いている頂点112、およびその遠位端48上の山部61、62の近位側を向いている頂点112を備える。同様に、最も遠位側の端部48の谷部91、92が近位側を向き、かつ最も近位側の脚部46の谷部91、92が遠位側を向いている。前述したアプローチと同様に、ステント30のリング40を画成する構造および端部46、48の間に介装された接続リンク54は、所望の通りに構成することができ、したがって近傍側あるいは遠位側にまたは円周方向に反対方向にあるいは同じ方向にその向きを定めることができる。
ここで本発明の別の態様に戻ると、「カスタマイズされた」ステントは、所望のステント特性の設計要件を最も良く満たす、カスタマイズされた部分を有することができる。例えば、異なるパターン設計は、特別なパターン設計に特有の利点を有している。非限定的な具体例として、薬剤の被覆率は、特定の設計要件を満たすように変更することができる。より高い被覆率のパターンは、薬剤の分配にも有用である。
「カスタマイズされた」ステント設計の他の実施形態として、ある領域においてステントの柔軟性を変えることが送給性を改善し得る。ステントは、伝統的にその長さの全体にわたって1つのパターンで設計されてきた。しかしながら、本発明によると、例えば送給性および薬剤の分配といった競合する設計要件を満たすべく、パターンの柔軟性を変更することができる。
顧客の要求を最も良く満たすために、異なるパターンは、1つのステントに組み合わせ、あるいはステントの異なる部分に用いることができる。あるいは、パターンの全体を変えることなしに所望のカスタム設計を達成するために、ステント支柱の厚みおよび幅を変更する(すなわち、変化する厚み/幅)ことができる。さらに別の方法として、特別な要件を達成するために、異なる材料を一緒に用いることができる。
「カスタマイズされた」ステント設計の一実施形態について考慮すると、図12は、その中央部よりもその端部の方がより柔軟で、かつ端部よりも中央部の方が薬剤による被覆率が高いステントをブロック図の形態で表している。端部のより大きな柔軟性は、ステントを拡大させるときの送給性を改善し、かつこの設計は縁部による受傷を最小化する。
中央部における多数の接続リンクは、このステントがカーブの周辺に配備されるときに、従来技術ステントにおける「救援列車」および「2枚貝の口開き」の影響を最小化する。そのようにカーブした状態は、しばしば身体の内部で見られる。
ステントをより柔軟にする他のアプローチには、必要に応じて、支柱を端部においてより細くあるいはまたより狭くすることが含まれる。同様に、接続リンクの寸法は、例えば「U字形」の接続部の高さあるいはまた幅を増加させることによって増加させることができる。また、リングを接続する接続部の数は、ステントの所望の領域における柔軟性を高めるために減少させることができる。接続部における折り返しの数を増やすこともまた柔軟性を改善する。
薬剤の被覆率を変化させる1つの方法は、より高い薬材被覆率を持つことになる領域に、ステントの他の領域より多くの表面領域を設計することである。所定の領域における表面領域は、例えば支柱をより大きくあるいはより厚くすることにより、またはステントの所定の領域において接続部あるいはまた支柱の数を増やすことによってステントの表面領域を増やすことにより、増加させることができる。中央部におけるより高い薬剤被覆率は、より高いおよびより低い投与量の領域を最小化することによって、より均一な薬剤の分配をもたらす。
ステント上での薬剤被覆性率変化させる他のアプローチは、ステント上の特定の場所を被覆する薬剤の量を変化させるステント被覆方法を用いることである。例えば、スプレー法を用いてステントを被覆する場合、ステント上の位置の関数として被覆密度を変化させるために、スプレー装置は、数値制御システムによってプログラムすることができる。これは、ステントをスプレーで被覆するときに、例えばスプレー速度をステントの長手方向に沿って変化させることによって実行することができる。異なるやり方でコーティングを付加する公知の技術を用いることもできる。
図13〜図15は、このタイプの非限定的な典型的な設計を示している。この設計は、より柔軟な端部と、中央部におけるより高い薬物分布を有している。図13は、柔軟な遠位側および近位側の端部146、148を有したステントを示している。遠位端146は、3つのリング140A〜140Cを具備している。リング140Aにおいては、例えばU字形の部材201とM字形の部材200とが交互に並んでいる。このパターンは、リング140Bおよび140Cにおいても繰り返されている。遠位端146のリングは、湾曲部分により多くの屈曲を具備した接続リンク203で相互に接続されている。
近位端148もまた、リング140F〜140Hを有している。遠位端のリング140Hは、相対的にU字形の一連の部材を有している。しかしながら、谷部160、162がいくらか異なる形状を具備していることは注目される。谷部160は鋭い先端を具備しているが、谷部162はより四角くなっている。これらの相対的に鋭い谷部160と相対的に四角い谷部162は、図13に示すように交互に並んでいる。リング140Gはリング140Aにより似ていて、M字形およびU字形の部材を有しており、これはリング140Fにもあてはまる。リングは140F〜140Hは、湾曲部により多くの屈曲を具備した接続リンクによって相互に接続されている。
遠位端146の設計および近位端148の設計は、2つの端部を中央部よりもいくらか柔軟なものにしている。中央部は、例えば140Dおよび140Eといったリングを有している。これらのリングは、交互に並ぶ開いたW字形あるいは蝶形パターンの接続部のパターンを具備しているが、接続部は真っ直ぐ(図示せず)あるいは波形の輪郭を有している。140Dおよび140Eといったリングは、波形の接続リンクで相互に接続されている。
図13の設計の最終的な結果は、端部146、148が中央部よりも柔軟であるということである。これは、例えばステントが身体内部の急なカーブ内に配備されるときに有利である。
図14は、図13のステントが配備されてはいるが曲がっていないときに現れる状態を示している。柔軟な遠位側および近位側の端部が、遠位側および近位側の端部より柔軟でない中央部とともに図示されている。
図15は図14のステントが湾曲したときに現れる状態を示している。中央部は、柔軟ではあるが、両方の端部より柔軟でない。上述したように、ステントを拡大するときに、端部のより大きな柔軟性が送給性を改善する。この設計はまた、血管の内部における縁部による受傷を最小化する。
図13〜図15のステントの他の態様は、ステント上における薬剤の被覆の分布である。薬剤による被覆(図示せず)は、ステントの遠位側あるいは近位側より中央部に多く集中させることができる。図13の設計においては、例えば支柱および接続リンクのパターンが、遠位側あるいは近位側の端部より大きな表面領域が中央部にあるようなものとなっている。したがって、中央部における薬剤被覆の分布は、この設計においては端部における薬剤被覆の分布より大きくなっている。
ここでさらに他の設計に戻ると、図16にブロック図で描かれている設計のステントは、その1つ若しくは複数の他の領域よりも柔軟な遠位端を具備している。1つの実施形態においては、遠位端はステントの残りの部分より柔軟である。これは送給性にとって有用である。遠位端が一旦カーブした部分を通り抜けると、ステントの残りの部分がその後に続いてカーブを通り抜けるからである。
図17の成果を達成するために、中央部120のパターンが遠位側あるいは近位側の端部に対して実行されるように、図13のステント設計を変更することができる。残りの端部は、図13に示したようにより柔軟なパターンを具備することができる。したがって、一端はより柔軟である。この場合、より柔軟であるのは遠位端であるが、このより大きな柔軟性を達成するために、いずれかの端部100、102のパターンを利用できることは注目されなければならない。
図17は、X線不透過性がより高い端部を備えたステントをブロック図として描いている。これは、例えばステントの他の部分より大きな金属密度を具備するように端部のリングを設計することによって、簡単に達成することができる。より大きな金属密度は、支柱、接続部、あるいはまたステントの他の部分の幅や厚みを増すことによって達成することができる。一方あるいは両方の端部がステントの他の領域よりもX線不透過性が高いステントを達成するために、X線不透過の特性を高める他の任意の公知技術の方法を用いることができる。
図12〜図17のステントは、任意の現在のステントあるいは薬剤を溶出させるステントとして同様に用いることができる。例えば、動脈のステントについては、カスタマイズしたステントを送給システム上に圧着し、心臓内の目標病変に動脈を通して送給することができる。ステントは、バルーンを適当な圧力に膨張させることによって配備することができる。
ここで注目されることは、このアプローチが、例えば冠状、末梢、頸動脈、神経、および他の種類のステントといった、身体の様々な部分のステントについて実施できることである。材料は、ステンレス鋼、コバルトクロム、ニッケルチタン、ポリマーステント材料や、ステントの製作に適していて従来公知のまたはステントのために開発される任意の将来材料とすることができる。
本発明のステントは、様々な方法で製作することができる。ステントを製作する1つの方法は、例えばステンレス鋼の管材料のような薄い壁の管状部材を切削し、ステントのための所望のパターンで管材料部分を除去しつつ、ステントを形成する金属製の管材料部分を相対的にそのまま残すというものである。ステントはまた、例えばタンタル、ニッケルチタン、コバルトクロム、チタン、形状記憶合金や超弾性合金、および金またはプラチナのような貴金属といった他の合金から製作することができる。本発明によると、従来技術において周知の機械制御レーザにより、所望のパターンで管材料を切削することが好ましい。
本発明のステントを成形するために、例えば異なるタイプのレーザや、化学エッチング、放電加工、平板をレーザカットしてそれを円筒に丸める方法、あるいは類似の方法といった他の方法を用いることができるが、それらの全ては現時点で公知の技術である。
本発明のステントは、ステンレス鋼以外の合金、例えば形状記憶合金から製作することができる。形状記憶合金は周知のものであり、ニッケルチタンおよびニッケルチタンバナジウムを含むが、これらに限定されるものではない。本発明のステントのパターンを成形するために、任意の形状記憶合金を管状に成形してレーザカットすることができる。周知のように、本発明のステントの形状記憶合金には、超弾性あるいは熱弾性マルテンサイト変態若しくは応力誘起マルテンサイトを呈するタイプを含むことができる。この種の合金は従来周知であり、ここでさらに説明する必要はない。
本発明のステントはまた、薬剤の一様な分布を保証する一様な表面領域を具備しているので、薬剤送給(すなわち治療薬の送給)に理想的に適している。典型的に、薬剤を含有するポリマーは、米国特許第6,824,559号および第6,783,793号に開示されているタイプのステント上に被覆される。なお、この参照によってその内容が本願明細書に組み込まれるものとする。
本発明のステント30が、例えば従来技術において公知のものと同様なバルーンカテーテル(図示せず)のような、ステント送給の装置あるいはシステム上に取り付け得ることは予想されることである。ステント送給装置は、その上にステントを取り付けるための遠位端と、患者の血管外に留まるように構成された近位端とを備える。ステント送給システムの実施形態は、2001年6月11日に出願された「血管内ステント(INTRAVASCULAR STENT)」という名称の米国特許第6,629,994号に開示されている。なお、この参照によってその全体が本願明細書に組み込まれるものとする。しかしながら、本発明は、開示したステント送給システムを用いる送給に限定されることは意図されず、公知技術の他のステント送給システムを用いることもできる。ステントは、カテーテルのバルーン部分上にきつく圧縮あるいは圧着され、患者の血管系を通って送給される間にバルーン上にきつく圧着されたままとなる。バルーンを膨張させると、ステントは半径方向外側に拡大して体内管腔、例えば冠状動脈に接触する。カテーテルのバルーン部分の空気を抜くと、カテーテル装置は患者から引き抜かれ、ステントは動脈内に植設されたままとなる。
同様に、本発明のステントは、自己拡大する合金、例えばニッケルチタン等から製作される場合、カテーテル上に圧縮されるとともに、このステントを患者の体内に植設する準備が完了するまで所定の場所に保持するべくその上にシース(図示せず)が配置される。そのようなシースもまた公知の技術である。ステントが意図された場所に配置されると、シースは引き戻され、ステントは自ら拡大して動脈の壁に接触する。自己拡大するステントを送給するためのカテーテルもまた公知の技術である。
ここで認められるべきことは、本発明が、その精神およびその基本的な特徴から逸脱することなく他の形態で具現化できるということである。したがって、説明した実施形態はあらゆる点において例示的なものであり限定的なものではないと考えられるべきである。本発明のある好ましい実施形態に関して説明してきたが、当業者にとって明らかである他の実施形態もまた本発明の範囲内にある。したがって、本発明の範囲が添付の請求の範囲だけを参照することによって定められることが意図される。