[0023] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示したものである。この装置は、
− 放射ビームB(例えばUV放射又はDUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
− パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
− 基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板Wを正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
− パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ又は複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSとを備える。
[0024] 照明システムILは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁、静電型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
[0025] 支持構造MTはパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスMAの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスMAが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。この支持構造MTは、パターニングデバイスMAを保持するために、機械式、真空、静電等のクランプ技術を使用することができる。支持構造MTは、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影システムPSなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
[0026] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。通常、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
[0027] パターニングデバイスMAは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
[0028] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁光学システム及び静電光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なしてもよい。
[0029] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
[0030] リソグラフィ装置は、2つ以上のテーブル(又はステージ若しくは支持体)、例えば、2つ以上の基板テーブル又は1つ又は複数の基板テーブルと1つ又は複数のセンサ若しくは測定テーブルの組合せを有するタイプであってもよい。このような「マルチステージ」機械では、複数のテーブルを並列に使用でき、あるいは1つ又は複数の他のテーブルを露光のために使用しながら、1つ又は複数のテーブル上で準備ステップを実施することができる。リソグラフィ装置は、基板、センサ及び測定テーブルと同様に並列に使用できる2つ以上のパターニングデバイステーブル(又はステージ若しくは支持体)を有していてもよい。
[0031] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源SOとリソグラフィ装置とは、例えば放射源SOがエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDを用いて放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源SOが水銀ランプの場合は、放射源SOがリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
[0032] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータILの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(通例それぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータILを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。放射源SOと同様、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一部を形成すると考えてもよいし、又は考えなくてもよい。例えば、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一体化部分であってもよく、又はリソグラフィ装置とは別の構成要素であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置は、イルミネータILをその上に搭載できるように構成することもできる。任意選択として、イルミネータILは着脱式であり、別に提供されてもよい(例えば、リソグラフィ装置の製造業者又は別の供給業者によって)。
[0033] 放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MAに入射し、パターニングデバイスMAによってパターニングされる。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTは、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めできるように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。通常、支持構造MTの移動は、第1のポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、支持構造MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分Cの間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、パターニングデバイスMA上に複数のダイを設ける状況では、パターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
[0034] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
[0035] 1.ステップモードにおいては、支持構造MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームBに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
[0036] 2.スキャンモードにおいては、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームBに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分Cの(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分Cの(スキャン方向における)高さが決まる。
[0037] 3.別のモードでは、支持構造MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームBに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
[0038] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
[0039] 投影システムPSの最終要素と基板との間に液体を提供する構成は、3つの一般的なカテゴリに分類できる。これらは、浴槽タイプの構成、いわゆる局所液浸システムと、オールウェット液浸システムである。浴槽タイプの構成では、実質的に基板Wの全体と、任意選択で基板テーブルWTの一部が液体の浴槽に浸される。
[0040] 局所液浸システムは、液体が基板の局所区域にのみ提供される液体供給システムを使用する。液体によって充填された空間は、基板の上面より平面視で小さく、液体によって充填される区域は、その区域の下を基板Wが移動している間、投影システムPSに対して実質的に静止している。図2〜図7は、そのようなシステムで使用することができる異なった供給デバイスを示す。液体を局所区域に封止する封止特徴部が存在する。提案されているこれを配置する方法の1つが、PCT特許出願公開WO99/49504号に開示されている。
[0041] オールウェット構成では、液体は閉じ込められない。基板上面の全体と基板テーブルの全部又は一部が液浸液に覆われる。少なくとも基板を覆う液体の深さは小さい。液体は、基板上の液体の薄膜などの膜であってもよい。液浸液は、投影システムと投影システムに対向する対向面(そのような対向面は基板及び/又は基板テーブルの表面であってもよい)に、又はその領域内に供給することができる。図2〜図5の液体供給デバイスのいずれもそのようなシステムで使用することができる。しかし、封止特徴部が存在しないか、活性化されていないか、通常より効率が落ちるか、又はその他の点で液体を局所区域にのみ封止する効果がない場合がある。
[0042] 図2及び図3に図示されているように、液体は、少なくとも1つの入口によって基板上に、好ましくは最終要素に対する基板の動作方向に沿って供給される。液体は、投影システムの下を通過した後に少なくとも1つの出口によって除去される。基板が−X方向にて要素の下でスキャンされると、液体が要素の+X側にて供給され、−X側にて取り上げられる。図2は、液体が入口を介して供給され、低圧源に接続された出口によって要素の他方側で取り上げられる構成を概略的に示したものである。図2の図では、液体が最終要素に対する基板の動作方向に沿って供給されるが、こうである必要はない。最終要素の周囲に配置された入口及び出口の様々な方向及び数が可能であり、一例が図3に図示され、ここでは両側に出口を持つ4組の入口が最終要素の周囲に規則的パターンで設けられる。液体のフローの方向は、図2及び図3に矢印で示されていることに留意されたい。
[0043] 局所液体供給システムを備える液浸リソグラフィの別の解決法が図4に図示されている。液体が、投影システムPSのいずれかの側にある2つの溝入口によって供給され、入口の半径方向外側に配置された複数の別個の出口によって除去される。入口は、投影される投影ビームが通る穴が中心にあるプレートに配置することができる。液体は、投影システムPSの一方側にある1つの溝入口によって供給され、投影システムPSの他方側にある複数の別個の出口によって除去されて、投影システムPSと基板Wの間に液体の薄膜の流れを引き起こす。どの組合せの入口と出口を使用するかの選択は、基板Wの動作方向によって決定することができる(他の組合せの入口及び出口は動作しない)。流体のフローの方向と基板Wの方向は図4に矢印で示されていることに留意されたい。
[0044] 提案されている別の構成は、液体供給システムに液体閉じ込め構造を提供する構成である。液体閉じ込め構造は、投影システムの最終要素と基板テーブルとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在する。そのような構成を図5に示す。
[0045] 図5は、液体閉じ込め構造12を有する局所液浸システム又は流体ハンドリングシステムを概略的に示す。液体閉じ込め構造12は、投影システムの最終要素と基板テーブルWT又は基板Wとの間に空間の境界の少なくとも一部に沿って延在する。(以下の説明で、基板Wの表面という表現は、明示的に断りのない限り、追加的に又は代替的に、基板テーブルの表面も意味することに留意されたい。)液体閉じ込め構造12はXY平面内で投影システムに対して実質的に静止しているが、Z方向(光軸の方向)には相対運動があってもよい。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12と基板Wとの間に封止が形成され、封止はガスシール(ガスシールを備えたこのようなシステムが欧州特許出願公開EP−A−1,420,298号に開示されている)又は液体シールなどの非接触封止であってもよい。
[0046] 液体閉じ込め構造12は、投影システムPSの最終要素と基板Wとの間の空間11内に少なくとも部分的に液体を封じ込める。液体が基板Wの表面と投影システムPSの最終要素との間の空間11内に閉じ込められるように、基板Wへの非接触封止16を投影システムPSのイメージフィールドの周囲に形成することができる。空間11は、投影システムPSの最終要素の下に位置しそれを取り囲む液体閉じ込め構造12によって少なくとも部分的に形成される。液体は、液体入口13によって投影システムPSの下の空間及び液体閉じ込め構造12内に流し込まれる。液体は、液体出口13によって除去することができる。液体閉じ込め構造12は、投影システムの最終要素から上に少し延在することができる。液体のバッファが提供されるように、液面は最終要素より上に上昇する。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12は、上端で、投影システム又はその最終要素の形状にぴったりと一致する、例えば円形の内周を有する。底部で、内周は、イメージフィールドの形状、例えば矩形にぴったりと一致するが、これはそうでなくてもよい。
[0047] 液体は、液体閉じ込め構造12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成されるガスシール16によって空間11内に封じ込められてもよい。ガスシールは気体によって形成される。ガスシール内の気体は、圧力を受けて入口15を介して液体閉じ込め構造12と基板Wの間のギャップに提供される。気体は出口14を介して抽出される。気体入口15での正圧力、出口14の真空レベル、及びギャップのジオメトリは、液体を閉じ込める内側への高速の気体フロー16が存在するように構成される。バリア部材12と基板Wとの間の液体にかかる気体の力が液体を空間11に封じ込める。入口/出口は、空間11を取り囲む環状の溝であってもよい。環状の溝は連続していてもよいし、又は不連続であってもよい。気体フロー16は、空間11内に液体を封じ込める効果がある。このようなシステムは、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする米国特許出願公開US2004−0207824号に開示されている。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12はガスシールを有しない。
[0048] 液浸リソグラフィ装置の1つ又は複数の表面は、故意に液浸液に対して特定の接触角を有するか、又は接触角を超えるようにすることができる。例えば、液浸液は、ある条件下で表面との間に、静止状態について、70°以上又は80°以上といった、通常60°以上の接触角、例えば静止接触角を成す。ある実施形態では、リソグラフィ装置の1つ又は複数の表面は液浸液に対して疎液性とすることができる。すなわち、例えば液浸液は、例えば露光中などリザーバ中の液浸液の使用温度にて、静止条件下で表面との間に、例えば90°から130°の範囲又は100°から120°の範囲から選択された、100°以上、110°以上、120°以上又は130°以上といった、通常90°以上の接触角、例えば静止接触角を成す。表面の平面に対して実質的に平行に移動した状態で、表面に対する液体の後退接触角は、50°と90°の間といった50から100°の間にあり、望ましくは60°以上、ある実施形態では70°以上である。ある実施形態では、これは80°と86°の間とすることもできる。前進接触角は、90°から130°の範囲にあり、望ましくは120°以下である。ある実施形態では、前進角は90°と100°の間である。これらの接触角はすべて、液浸システムの正常な使用温度、例えば22℃で定義される。
[0049] 液浸リソグラフィでは、液体の位置を制御しなければならない。1つ又は複数のある表面上で疎液性コーティング(例えば水の場合は疎水性)を使用すると、液体、例えば液体メニスカスの位置の制御を補助することができる。
[0050] 液浸液が表面との間で成す接触角は、液浸液の制御に使用される。例えば、基板テーブルWTの上部(接触)表面上では高い接触角が望ましい。何故なら、これは例えば投影システムPS下でテーブルを交換する間に、液体を失うことなく液体閉じ込め構造12に対して基板テーブルWTが移動することができる速度を上げることができるからである。液体を失うと、例えば基板テーブルWT上の汚染及び/又は局所的熱負荷、及び/又は液浸液中の気泡の生成をもたらすことがあるので望ましくない。液浸リソグラフィ装置を通したスループットを増大させるために、高速であることが望ましい。
[0051] 液浸液が接触する接触表面などの液浸リソグラフィ装置の他の表面も、様々な理由で場合によっては例えば乾燥を容易にするために疎液性であることが望ましい。
[0052] ある接触角を超えるコーティング、例えば疎液性コーティングで覆われることがある他のコンポーネント又はコンポーネントの部分の例は、基板テーブル、粘着可能な平面シート、投影システムの最終要素、任意の流体ハンドリング構造12の部分及び/又は閉鎖表面を含む。基板テーブルWTの側面の部分を疎液性コーティングで覆うことができ、側部分は基板Wと基板テーブルWTの間のギャップに流路を形成する。粘着可能な平面シート(例えばステッカ)は、表面に表面特性を提供する、及び/又はオブジェクト、センサ(透過イメージセンサ(TIS)、ドーズ量センサ、スポットセンサ、及び/又は干渉計(例えば干渉計波面測定センサ))に隣接するギャップをまたぐことができる。投影システムPSの最終要素の疎液性コーティングされた表面は、例えば流体ハンドリング構造の頂部上で光軸から半径方向外側に移動する液体を制限し、それによって液浸液を液浸空間に閉じ込めるために、光路から外れた表面とすることができる。流体ハンドリング構造12の部分は、例えば投影システム及び/又はその下面の少なくとも部分に面する流体ハンドリング構造12の上面でよい。
[0053] 閉鎖表面とは、基板の代わりに流体ハンドリング構造12の下に配置することができるダミー基板、第2のテーブル又は2つのテーブル間のブリッジング要素などのオブジェクトの表面である。閉鎖表面は、例えば投影システムPS下でのテーブルスワップ中、例えば基板を交換する間に、流体ハンドリング構造の開口をブロックするために使用する表面である。閉鎖表面は、ダミー基板、ブリッジング要素、又は別個のテーブルとするか、それを含むことができる。テーブルはダミー基板を使用して交換し、交換中に空間11内に流体を閉じ込める。ブリッジング要素(スワップブリッジと呼ぶことができる)としての閉鎖表面は後退可能であり、テーブルのうち1つの一部とすることができる。ブリッジング要素は、例えば投影システムPS下でのテーブル(例えば2つの基板テーブル又は基板テーブルと測定テーブル)のスワップ中に、少なくとも2つのテーブル(例えば基板テーブルと測定テーブル、又は2つの基板テーブル)間のギャップに存在するダミー基板として機能することができる。ブリッジング要素は、例えば少なくともブリッジング要素が投影システムPSの下を通過する継続時間中に、テーブルに取り付けることができる。ある実施形態では、閉鎖表面は測定テーブルなどの別個のテーブルの部分とすることができる。
[0054] 特定の接触角を超える接触角の表面、例えば疎液性表面は、少なくとも1つの疎液基を含むことができる。疎液基は、表面の疎液性質を担う基である。疎液基は、メチル、エチル、CF3、CF2及びFで構成される非網羅的リストから選択することができる。これらの基は疎水性である。メチル基の方が疎液性が高いので、エチル基よりも好ましい。表面はコーティングを含むことができる。表面又はコーティングは例えばC及びH系の任意の材料で作成することができ、それはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(テフロン(登録商標)の商品名で入手可能)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、ポリイソブチレン(PIB、ブチルゴム)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、パラフィン、ヘキサトリアコンタン、ポリt−ブチルメタクリレート(PtBMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリプロピレン(PP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリブタジエン、ナイロン1010、ポリトリフルオロエチレン及び/又はポリn−ブチルメタクリレート(PnBMA)を含むが、これらに限定されない。表面又はコーティングは、例えばSi及びOを、及び任意選択でC、H及びFのうち少なくとも1つ(例えば米国特許出願公開US2009−0206304号又は2009年12月3日出願の米国特許出願US61/266,314号に開示されているような材料)を含み、Lipocer(商標)と呼ばれることもある化合物で作成することができる。表面又はコーティングは、例えばDLN−Fで作成することができる。ダイヤモンド様ナノ合成物(DLN)コーティングは、付着しない用途で実績がある品質のコーティングである。これは高い硬度と低い表面粗さを示す。その低い界面自由エネルギーと組み合わせると、UV抵抗性の疎水性コーティング用途に適切な候補となる。DLNは炭素及び水素系のコーティングであり、sp2(グラファイト)とsp3(ダイヤモンド)結合の混合である構造を有し、追加の珪素及び酸素のネットワークが組み込まれる。DLN−Fの場合は、図6に示すようにフッ素のネットワーク(各フッ素原子が炭素原子に結合している)も追加され、図6では炭素原子は点がある大きい円であり、珪素原子は斜線の小さい円であり、酸素原子は炭素原子と珪素原子との間の大きい斜線の円であり、フッ素原子は炭素原子に結合した小さい空白の円である。DLN−Fコーティングは非晶質材料であり、PECVD反応器内で約200℃の温度及び約10−3トルの室圧のプラズマ処理によって形成することができる。図10の実験では、250nmの層厚でガラス板にコーティングを施した。
[0055] 液浸リソグラフィ装置の多くのコンポーネントは、液浸液に対して特定の接触角範囲を有する表面を有する。したがって表面は液体に対してある表面特性を有する。このような表面は疎液性又は親液性、例えば水に対して疎水性又は親水性とすることができる。このような表面は、例えば液体の損失を防止するために、液体の位置制御の補助に使用することができる。液体の位置が正確に制御されない場合は、望ましくない測定誤差及び/又は欠陥の増加につながることがある。ある実施形態では、コーティングは表面特性を提供するために使用することができる。表面特性、例えば疎液性コーティングは、使用中に液浸液がコーティングとの間に成す接触角の劣化を被ることがある。劣化は、投影ビームによる照射及び/又は液浸液への曝露が原因となることがある。
[0056] 液浸液がコンポーネントの表面と、又は(本明細書で述べるように)コンポーネントの表面を提供するコーティングと成す接触角が範囲の限界を外れる、例えば特定の閾値を上回るか下回る場合は、接触角を復元する措置を執らねばならない。さもないと機械の性能が劣化することがある。(劣化したコーティングに言及した場合、それは他に明記しない限り、コーティングがない表面の表面特性の劣化への言及を含む。)それを実行する1つの方法は、コンポーネントを交換することである。これは望ましくない。何故なら、コンポーネントの交換に伴う費用、及びコンポーネントを交換する必要性に由来する装置の停止時間があるからである。代替的又は追加的に、粘着可能な平面シート、例えばステッカを表面上に配置することができる。ステッカは、液浸液との間に所望の接触角特性を有する。この方法も望ましくないことがある。何故なら、ステッカを適切に貼り付けるために装置からコンポーネントを取り外す必要があることがあり、それにより装置の停止時間が必要となるからである。ステッカは特定の最小厚さを有し、したがってステッカを貼り付けると表面のレベルが変化することがある。ステッカを貼り付けると、表面のトポグラフィが変化することがあるので望ましくない。また、ステッカを貼り付けると、それが貼り付けられた表面の機械的特性及び/又はそれが貼り付けられた表面の光学的特性が変化することがある。
[0057] 表面の接触角の変化は、表面上に液浸液、例えば超純水が存在した結果であることもある。接触角は、投影/パターン付ビームなどのビームによる照射で劣化することがある。最も顕著な劣化は、液浸液と接触し、投影ビームPBによって同時に照射される表面の劣化である。投影ビーム(特に193nmであるが、365、248、157又は126nmなどの他の波長もある)は、液浸液の光イオン化を引き起こすことがある。光イオン化の1つ又は複数の生成物が、次に(表面が親液性であるか疎液性であるかにかかわらず)表面の疎液及び/又は親液基(以降では「活性基」”active group”と呼ぶ)と反応して、表面の接触角を減少させることがある。例えば、活性基(例えば疎液基)が液浸液の光イオン化の生成物と反応した結果、基(例えば疎液基)の性質が変化するか、表面から基が失われることがある。例えば、Nobuyuki Ichinose他、”Excimer Laser-Induced Surface Reaction of Fluoropolymers with Liquid Water”、Macromolecules, 1996, 29(11)、1996年5月20日を参照されたい。
[0058] ある実施形態では、液浸液に保護成分を供給する。保護成分は、液浸液の光イオン化の生成物のうち1つ又は複数との反応に基づいて選択される。ある実施形態では、保護成分は表面が示す接触角、すなわち、表面の疎液性又は親水性に影響する液浸液の光イオン化生成物のうち1つ又は複数、又はその全部と反応する。ある実施形態では、反応生成物及び保護成分自体が、液浸液の特性に悪影響を及ぼさない、又はその悪影響は限られている。このような特性には、実質的に一定の屈折率、泡がないこと、及び/又はリソグラフィ装置に使用されて液浸液と接触する材料に対する不活性などがある。ある実施形態では、液浸液の光イオン化の生成物に対する保護成分の反応(例えば電子親和力及び/又はラジカルに対する反応度)は、活性基に対する光イオン化の生成物の反応より強い。その結果、液浸液の光イオン化の生成物は、活性基よりも保護成分に対して反応する。この方法で、活性基が保護され、表面の疎液性又は親水性がさらに長続きするはずである。例えば液浸液に対して表面が示す接触角が維持される(例えば減少しない)はずである。
[0059] ある実施形態では、保護成分は5ppm以内、又は1ppm以内又は0.5ppm以内の量で存在する。ある実施形態では、保護成分は液浸液中に0.1ppm以上又は0.2ppm以上の量で存在する。この濃度レベルで、保護成分は(疎液性でも親液性でも)表面の活性基を保護する目的に有効である、例えば表面の接触角を維持する。しかし、濃度レベルは液浸液の結像特性に影響しないほど十分に低い量である。保護成分の所望の量は、保護成分の種類に応じて変更することがある。
[0060] 液浸液が超純水である場合、少なくとも0.1ppmという保護成分のレベルは、超純水中に許容可能な他の成分の濃度と比較して相対的に高い。超純水(UPW)の定義は、www.semi.orgから、例えば参照により全体を本明細書に組み込むものとする仕様SEMI F063 UPWから入手可能である。この仕様では、例えば溶解酸素は10ppb未満のレベルで存在し、溶解窒素は8〜18ppmのレベルであり、シリカの場合は0.5ppb未満のレベルであり、SiO2として溶解している形態では0.5ppb未満のレベルであることが必要である。イオン及び金属は通常、50ppt未満で存在する必要があり、場合によっては金属がそれより少ないことが望ましい。液浸液が、SEMI F063 UPWで定義されているような超純水の形態である場合、液浸液は、保護成分のレベルとは別個に、そのように定義された通りの超純水である。したがって、このような水の場合、少なくとも0.1ppmという保護成分のレベルは実際には極めて高い。
[0061] 1つの実施形態では、液浸液は溶媒として水を含む。単成分の溶媒及び保護成分以外で液浸液中にイオン又は金属がある場合、それは常に100ppt未満の量で存在する。ある実施形態では、液浸液中にシリカがある場合、それは常に1ppb未満の量で存在する。ある実施形態では、液浸液中に窒素がある場合、それは常に30ppm未満の量で存在する。ある実施形態では、液浸液中に全有機炭素(TOC)がある場合、それは常に10ppb未満の量で存在する。
[0062] 本発明の実施形態は、大部分は溶媒として水を含む液浸液に関して述べているが、本発明のある実施形態は他の液浸液にも適用可能であり、それは液浸リソグラフィ装置の放射の波長によって光イオン化すると変性する液浸液であることが望ましい。
[0063] 保護成分は、液浸液に対してある接触角を有するか、それを超える表面の活性基よりも、液浸液の光イオン化の1つ又は複数の生成物に対する反応が強い任意の成分である。1つの実施形態では、保護成分は酸素を含む。1つの実施形態では、保護成分は酸化防止剤を含む。酸化防止剤の幾つかの例はアスコルビン酸、レスベラトロール、エトキシキン及びポリフェノールであるが、そのうち1つ又は複数は、ある状況でリソグラフィ装置で使用するのに適切でない場合がある。アスコルビン酸及びレスベラトロールは水溶性である。エトキシキンは水との可溶性/混和性が中位の液体酸化防止剤である。ある実施形態では、酸化防止剤は固体ではない、及び/又は液体中の可溶性が高い。
[0064] 液浸液が溶媒として水を含む場合、光イオン化は、下式(1)で示すように水をH+イオンと−OHイオンと水和電子eaq −に解離させることになると予想することができる。フルオロポリマー(例えばPTFE)の場合、水和電子とフルオロポリマーとの反応経路は、Nobuyuki Ichinose他による上述の論文により、下式(2)〜(8)に示される。
[0065] したがって、保護成分は、活性基よりも液浸液の光イオン化の少なくとも1つの生成物に対して反応が強力でなければならない。ある実施形態では、保護成分は活性基よりも水和電子との反応が強力である。ある実施形態では、保護成分は水和電子及びラジカルのスカベンジャーとして作用する。例えば酸素とH+イオンが反応した結果、水及び/又は過酸化水素が形成されることがある。
[0066] 保護成分が液浸液中に溶解した気体である場合は、1ppmという上限が適切である。何故なら、1ppmという上限より上では、液浸液中で保護成分の泡が形成する可能性が高すぎることがあるからである。液浸液中の(例えば自然発生的な)泡の形成は望ましくなく、これは結像誤差につながり得る。このような結像誤差では、泡が投影ビームの経路内にあって、基板に結合される像の少なくとも一部を歪めることがある。
[0067] 保護成分が酸素である例では、1気圧及び20℃で水中に5ppmのレベルの酸素が飽和する。したがって、1ppmという最大レベルが、リソグラフィ装置の典型的な作業条件におけるわずか20%の飽和レベルになる。このレベルは、液浸液中で自然発生的に泡が形成され、それによって保護成分が液浸液中の溶液から出る可能性に関して、安全レベルであることが望ましい。
[0068] ある実施形態では、液浸液供給システム100によって液体閉じ込め構造12に液浸液を提供する。液浸液供給システム100は、保護成分を含む液浸液を液体閉じ込め構造12に提供するような構成である。
[0069] コントローラ200を設けて、液浸液供給システム100を制御する。コントローラ200は液浸液供給システム100を制御して、液浸液に適正な組成を、望ましくは液浸液中に存在する適正な量の保護成分を提供する。
[0070] ある実施形態では、コントローラ200は液浸液供給システム100を(例えば液浸液供給システム100に信号を提供することによって)制御し、液浸液中に存在する保護成分の量を変更することができる。ある実施形態では、液浸液中の保護成分の濃度を感知し、保護成分の所望の濃度を達成するように、コントローラが液浸液供給システム100に提供する信号が相応して調整される。例えば、コントローラ200は、光センサなどのセンサを含み、液浸液中の成分の濃度を求めることができる。このようなセンサは、液浸液供給システム100内に位置決めされ、空間11内の液体、空間11に供給されている液体、又は空間11から除去されている液体を測定することができる。
[0071] ある実施形態では、コントローラ200は液浸液供給システム100を制御して、液浸リソグラフィ装置の特定の動作中に、第1の所望の範囲(例えば0.1〜5ppm又は0.1〜1ppm)で存在する保護成分を液浸液に提供することができる。例えば、リソグラフィ装置の動作の大部分で、第1の所望の範囲の保護成分を提供することができ、その動作は結像、位置合わせ、測定、及び/又は投影システムPS下での基板テーブルWT(又は測定テーブル)の移動のうち1つ又は複数の動作を含むが、これに限定されない。
[0072] ある実施形態では、特定の状況でコントローラ200は液浸液供給システム100を制御して、液浸液中の保護成分の量を増加させることができる。ある例では、コントローラ200は液浸液供給システム100に命令して、保護成分の量を第2の所望のレベル(例えば1ppm以上、又は2ppm以上、又は4ppm以上)に増加させる。ある実施形態では、コントローラ200は液浸液供給システム100を制御して、クリーニング動作中に保護成分の量を増加させる。それぞれの全内容を参照により本明細書に組み込むものとする米国特許出願公開US2008/0271747号、US2009/0091716号及びUS2009/0027635号に開示されているように、リソグラフィ装置のコンポーネントのクリーニング中に液浸液又はクリーニング液の酸素濃度を増加できることが望ましい。しかし、上述したように正常の動作中に液浸液の酸素濃度を増加させることは、液浸液中に泡が形成される危険が増大するので望ましくない。
[0073] 液体供給システム100は、図7に示すような膜300を使用して、保護成分を液浸液(例えば超純水の源)に導入することができる。液浸液供給システム100は膜300を含み、これは液浸流体が一方側で膜300を通過し且つ保護成分が膜300の他方側に存在するように配置される。
[0074] 膜300は、液浸液(通常は(超純)水)に対して無孔性であり、保護成分(例えば酸素などの気体)に対して多孔性であるかのように挙動する。膜300の液体側に加圧可能なはずであり(しかし、そうである必要はない)、液体は膜300を通過しないはずである。(少なくとも空気を、又は窒素、酸素などのその成分を使用して)気体側にも加圧することができる。気体は膜300の気体側から液体中に溶解するが、液体中に泡は形成されない。したがって、膜300は気体に対しては多孔性であるが、液体に対しては多孔性でないと見なすことができる。
[0075] ある実施形態では、膜300はポリプロピレンの中空ファイバのように繊維状で疎水性である。これによって(膜300の一方側にある気体の濃度と、液浸液が存在する膜の他方側にある気体の濃度との差により)気体が1方向でこれを通過することができる。しかし、これは液浸液が膜を通って気体のある側へと滲出することを防止する。
[0076] 第1の導管210は、保護成分を添加すべき液浸液を膜300の一方側へと案内し、第2の導管220は保護成分を膜300の他方側へと案内する。保護成分が膜300の一方側に、液体が膜300の他方側に存在するので、気体は膜300を通過して液体中に溶解する。膜300を越えて保護成分の流れを提供することが望ましく、したがって保護成分を膜300から離して案内するために第3の導管240を設ける。第4の導管230を設けて、膜300の他方側から液体を案内する。
[0077] 膜の表面積を最大化することが望ましい。望ましい実施形態は、膜が中空のファイバであり、液体が中空ファイバの内側を通過し、気体が中空ファイバの外側を通る(しかし逆も真となり得る)。このような実施形態の1つが図8に図示され、膜300で構成される中空ファイバ2000を通って液体が提供される。図8にはファイバが1本しか図示されていない。第2の導管220は並列の数本のファイバに接続することができる。
[0078] 図7の実施形態では、気体は中空ファイバ2000を囲むハウジング250に入り、導管210によってハウジング内へと案内された後にファイバ上を通る。ある実施形態では、気体は第3の導管230によってハウジングから案内される。
[0079] 気体の流れ及び液体の流れを提供するために、液体プロバイダ及び気体プロバイダを設ける。これは、例えば液体及び圧縮気体源を提供するポンプの形態を取ることができる。
[0080] 保護成分が気体状ではなく液体形であり、膜300全体の推進力が、膜300のいずれかの側の濃度を等しくする浸透圧である場合、同様の原理を用いることができる。
[0081] ある実施形態では、液浸液供給システム100は、脱ガスユニットを備える。脱ガスユニットは、液浸液中の溶液から気体を除去するために使用される。液浸液が、脱ガスユニットに入る前に所望の量より大量の保護成分を含む場合、脱ガスユニットを制御して、保護成分が所望の濃度になるように液浸液をガス抜きすることができる。これは、制御ユニット200(任意選択でセンサを含む)の制御下で実行することができる。この実施形態では、先行技術と比較して、脱ガスユニット(例えばドイツWuppertalのMembrane GmbHから入手可能なものなどの脱ガスユニット)は、液浸液が超純水の定義(SEMI F063 UPW)に確実に適合するようにするために動作しているわけではない。代わりに、脱ガスユニットは、ガス抜きの後で保護成分が液浸液中で比較的高いレベルに確実に維持されるようにするために動作する。
[0082] 液浸リソグラフィ装置における状態をシミュレートした状態にて、Lipocer(商標)及びDLN−Fコーティングで実験を実行した。例示的コーティングを193nmのレーザ照射で照射し、コーティング上の流量を1L/分、コーティング上の水の深さを20mmとした。使用したレーザは、10Wの設計出力、2000Hzの最大繰り返し率、5000mJの基底パルスエネルギー及び約25msのパルス長を有していた。平均エネルギーは0.7mJ/cm2/パルスであった。水の温度は22.2℃であった。水中の酸素濃度は0.2ppmと3.0ppmの間で変更した。実験の結果が図9及び図10にプロットされ、ここで後退接触角はy軸に、mJ/cm2単位の線量はx軸にプロットされている。
[0083] 図9は、リソグラフィ装置内での約5日間の露光に等しい約250から300J/cm2で、ある期間にわたるLipocer(商標)の後退接触角の変化を示す。0.2ppmの水中酸素濃度の結果を正方形で、1.0ppmの結果をダイヤモンド形で、3.0ppmの結果を三角形で示す。ここで見られるように、約5日間の露光後、0.2ppmの酸素濃度と3.0ppmの濃度とのコーティングの接触角の差は約10°である。これは、酸素濃度が高いほど後退接触角が大きいことを示す。この傾向は図9で明白であり、これはLipocer(商標)をDUVに露光し、液浸液と接触している間に、液浸液(例えば水)中に溶解酸素を含むと、後退接触角の経時的減少が減少する。実験結果は、保護成分、この例では酸素を組み込むことは、後退接触角の経時的減少の減少に関して有利であることを明白に示す。
[0084] 図10は、図9の結果と同じ状態でのDLN−Fの結果を示す。この場合も、液浸液中の酸素濃度が高いほど、後退接触角の減少が小さくなる結果となる。
[0085] 図9及び図10の実験で使用した溶解酸素の濃度は、(泡形成の危険があるために)高すぎることがあるが、その結果は実際に、液浸液中に保護成分(特に溶解酸素)があることの利点を示す。
[0086] ある実施形態では、使用中に液浸液と接触する少なくとも1つの疎液基を含む疎液性表面と、疎液性表面の少なくとも1つの疎液基よりも液浸液の光イオン化の生成物との反応が強力である保護成分を含む液浸液を提供するように構成された液浸液供給システムとを備え、保護成分が少なくとも0.1ppmの量で存在する液浸リソグラフィ装置が提供される。
[0087] ある実施形態では、保護成分が最大5ppmの量で存在する。ある実施形態では、保護成分は少なくとも0.2ppm又は最大1ppmの量で存在する。ある実施形態では、保護成分は0.2ppmと0.5ppmの間の量で存在する。ある実施形態では、保護成分は液浸液中に溶解した気体である。ある実施形態では、保護成分は酸素、酸化防止剤の群から選択された物質を含む。ある実施形態では、疎液基はメチル、エチル、CF3、CF2及び/又はFからなる群から選択される。ある実施形態では、疎液性表面はコーティングを含む。ある実施形態では、疎液性表面は、C及びHを含む化合物、DLN−F、PTFE、FEP、ETFE、PVDF、PFA、ポリイソブチレン(PIB、ブチルゴム)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、パラフィン、ヘキサトリアコンタン、ポリt−ブチルメタクリレート(PtBMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリプロピレン(PP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリブタジエン、ナイロン10、10、ポリトリフルオロエチレン、ポリn−ブチルメタクリレート(PnBMA)、及び/又は、Si及びOを含みオプションとしてC、H及びFのうち少なくとも1つを含む化合物、の群から選択された1つ又は複数の化合物を含む。ある実施形態では、液浸液は溶媒として水を含む。ある実施形態では、液浸液に単成分溶媒及び保護成分以外のイオン又は金属が存在する場合、それは常に100ppt未満の量である。ある実施形態では、液浸液中にシリカが存在する場合、それは常に1ppb未満の量である。ある実施形態では、液浸液中に窒素が存在する場合、それは常に30ppm未満の量である。ある実施形態では、液浸液中にTOCが存在する場合、それは常に10ppb未満の量である。ある実施形態では、液浸液供給システムは、液浸流体が一方側で自身を越えて流れ且つ保護成分が自身の他方側に存在するように配置された膜を含む。ある実施形態では、液浸リソグラフィ装置は、a)結像動作、b)位置合わせ動作、c)測定動作、d)投影システム下のテーブルの移動を含む動作からなる群から選択された液浸リソグラフィ装置の少なくとも1つの動作中に、所望の量だけ存在する保護成分を液浸液に供給するように液浸液供給システムを制御するような構成であるコントローラをさらに備える。ある実施形態では、コントローラは、クリーニング動作中に液浸液中の保護成分の量を増加させるように液浸液供給システムを制御するような構成である。ある実施形態では、液浸リソグラフィ装置は、基板を支持するように構成され、使用時に液浸液が接触する接触表面を備える基板テーブルをさらに備える。ある実施形態では、液浸リソグラフィ装置は、基板テーブルを支持するように構成され、使用時に液浸液が接触する接触表面を備える投影システムをさらに備える。ある実施形態では、液浸リソグラフィ装置は、投影システムの下の空間に液体を供給し、使用時に液浸液が接触する接触表面を備える液体閉じ込め構造をさらに備える。ある実施形態では、疎液性表面が接触表面である。
[0088] ある実施形態では、使用中に液浸液と接触する少なくとも1つの疎液基を含む疎液性表面と、疎液性表面の少なくとも1つの疎液基より液浸液の光イオン化の生成物との反応が強力である保護成分を含む液浸液を提供するように構成された液浸液供給システムとを備え、保護成分が少なくとも0.1ppmの量で存在する液浸リソグラフィ装置が提供される。
[0089] ある実施形態では、使用中に液浸液と接触する少なくとも1つの活性基を含み、液浸液に対して特定の接触角を有するか、それを上回る活性表面と、表面の少なくとも1つの活性基よりも液浸液の光イオン化の生成物に対する反応が強力である保護成分を含む液浸液を提供するように構成された液浸液供給システムとを備え、保護成分が少なくとも0.1ppmの量で存在する液浸リソグラフィ装置が提供される。
[0090] いずれの実施形態でも、保護成分は最大5ppmの量で存在することができ、及び/又は保護成分は最大1ppmの量で存在することができ、及び/又は保護成分は0.2ppmと0.5ppmの間の量で存在することができ、及び/又は保護成分は液浸液中に溶解した気体でよく、及び/又は保護成分は酸素及び/又は酸化防止剤の群から選択された1つ又は複数の物質を含むことができ、及び/又は液浸液は溶媒として水を含むことができ、及び/又は液浸液に単成分溶媒及び保護成分以外のイオン又は金属が存在する場合、それは常に100ppt未満の量でよく、及び/又は液浸液中にシリカが存在する場合、それは常に1ppb未満の量でよく、及び/又は液浸液中に窒素が存在する場合、それは常に30ppm未満の量でよく、液浸液中に全有機酸素が存在する場合、それは常に10ppb未満の量でよく、及び/又は液浸液供給システムは、液浸流体が一方側で自身を越えて流れ且つ保護成分が自身の他方側に存在するように配置された膜を含むことができ、及び/又は液浸リソグラフィ装置は、a)結像動作、b)位置合わせ動作、c)測定動作、d)投影システム下のテーブルの移動を含む動作からなる群から選択された液浸リソグラフィ装置の少なくとも1つの動作中に、所望の量だけ存在する保護成分を液浸液に供給するように液浸液供給システムを制御するように構成されたコントローラをさらに備えることができ、及び/又はコントローラは、クリーニング動作中に液浸液中の保護成分の量を増加させるように液浸液供給システムを制御するように構成することができ、及び/又は液浸リソグラフィ装置は、基板を支持するように構成され、使用時に液浸液が接触する接触表面を備える基板テーブルをさらに備えることができ、及び/又は液浸リソグラフィ装置は、基板テーブルを支持するように構成され、使用時に液浸液が接触する接触表面を備える投影システムをさらに備えることができ、及び/又は液浸リソグラフィ装置は、投影システムの下の空間に液体を供給し、使用時に液浸液が接触する接触表面を備える液体閉じ込め構造をさらに備えることができ、疎液性、親液性又は活性表面は接触表面であることが好ましい。
[0091] ある実施形態では、少なくとも1つの疎液基を含む疎液性表面上に液体を提供することを含むデバイス製造方法が提供され、液体は、疎液性表面の少なくとも1つの疎液基よりも液浸液の光イオン化の生成物に対する反応が強力である保護成分を含み、保護成分は少なくとも0.1ppmの量で存在する。
[0092] ある実施形態では、使用中に液浸液と接触する少なくとも1つの疎液基を含む疎液性表面と、疎液性表面の少なくとも1つの疎液基よりも液浸液の光イオン化の生成物に対する反応が強力である保護成分を含む液浸液を提供するような構成である液浸液供給システムとを備え、保護成分が酸化防止剤である液浸リソグラフィ装置が提供される。
[0093] 理解されるように、上記任意のフィーチャを任意の他のフィーチャと一緒に使用することができ、本出願が対象とするのは明示された組合せに限定されない。
[0094] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に付与し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
[0095] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折及び反射光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組み合わせを指す。
[0096] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明の実施形態は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。さらに機械読み取り式命令は、2つ以上のコンピュータプログラムで実現することができる。2つ以上のコンピュータプログラムを、1つ又は複数の異なるメモリ及び/又はデータ記憶媒体に記憶することができる。
[0097] 1つ又は複数のコンピュータプログラムがリソグラフィ装置の少なくとも1つのコンポーネント内にある1つ又は複数のコンピュータプロセッサによって読み出される時に、本明細書に記載するあらゆるコントローラは各々、又は組み合わせて動作可能になる。コントローラは各々、又は組み合わせて、信号を受信、処理、送信するのに適した任意の構成を有する。1つ又は複数のプロセッサは、コントローラの少なくとも1つと通信するように構成されている。例えば、各コントローラは、上記方法のための機械読み取り式命令を含むコンピュータプログラムを実行する1つ又は複数のプロセッサを含むことができる。コントローラは、そのようなコンピュータプログラムを記憶するデータ記憶媒体及び/又はそのような媒体を収容するハードウェアを含むことができる。したがって、コントローラは、1つ又は複数のコンピュータプログラムの機械読み取り式命令に従って動作することができる。
[0098] 本発明の1つ又は複数の実施形態は、任意の液浸リソグラフィ装置に、特に液浸液が槽の形態で提供されるか、基板の局所的な表面領域のみに提供されるか、基板及び/又は基板テーブル上に閉じ込められないかにかかわらず、上述したタイプに適用することができるが、それに限定されない。閉じ込められない構成では、液浸液は基板及び/又は基板テーブルの表面上に流れることができ、したがって実質的に基板テーブル及び/又は基板の覆われていない表面全体が濡れる。このように閉じ込められていない液浸システムでは、液体供給システムが液浸液を閉じ込めることができない、又はある割合の液浸液閉じ込めを提供することができるが、実質的に液浸液の閉じ込めを完成しない。
[0099]本明細書で想定するような液体供給システムは、広義に解釈されたい。特定の実施形態では、これは、液体を投影システムと基板及び/又は基板テーブルの間の空間に提供する機構又は構造の組合せでよい。これは、1つ又は複数の構造、1つ又は複数の液体開口を含む1つ又は複数の流体開口、1つ又は複数の気体開口あるいは1つ又は複数の2相流用の開口の組合せを含んでもよい。これらの開口は、各々、液浸空間への入口(又は流体ハンドリング構造からの出口)あるいは液浸空間からの出口(又は流体ハンドリング構造への入口)であってもよい。ある実施形態では、空間の表面が基板及び/又は基板テーブルの一部でよいか、空間の表面が基板及び/又は基板テーブルの表面を完全に覆ってよいか、又は空間が基板及び/又は基板テーブルを囲んでもよい。液体供給システムは任意選択で、液体の位置、量、品質、形状、流量又は任意の他の特徴を制御する1つ又は複数の要素をさらに含むことができる。
[00100] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。