JP2012206099A - 海洋生物の遊泳を阻害する方法および海洋生物の付着を抑制するシステムおよび方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 海洋生物の遊泳を阻害する方法として、海洋生物を含有する水に、粒径が1〜999nmであるCO2ナノバブルを注入する工程を含むようにする。
【選択図】図10
Description
そこで、従来から、例えば、特許文献1〜5に開示されるように、次亜塩素酸ナトリウム溶液や二酸化塩素などの塩素系薬剤を冷却水に注入することにより、冷却水流路への海洋生物の付着を抑制することが行われている。また、特許文献6に開示されるように、二酸化炭素のマイクロバブル(以下、CO2マイクロバブルという)を冷却水に溶解させることにより、冷却水流路への海洋生物の付着を抑制する方法が報告されている。
本発明に係る海洋生物の遊泳を阻害する方法は、海洋生物を含有する水に、CO2ナノバブルを注入する工程を含む。
供給する水の一例として、例えば、海水であっても良く、具体的には、後述するように熱交換のための水が挙げられ、二酸化炭素の水への溶解量を低く抑えながら、注入された水に含まれる海洋生物が熱交換水流路に付着するのを抑えることが可能となる。
海洋生物の遊泳を阻害すれば、例えば、海洋生物を含有する水の容器に、海洋生物が付着するのを防いだり、水から海洋生物を回収・除去したりするのが容易になる。なお、付着は変態という形態変化を伴う現象であるため、一定の割合の個体が麻痺状態になる環境下であれば、ほぼすべての個体が付着を忌避する可能性が高いと考えられる。
図1は、本発明の一実施形態として説明する、熱交換水流路への海洋生物の付着を抑制するシステムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本発明に係る、熱交換水流路への海洋生物の付着を抑制するシステム(以下、単に「システム」と称する。)100は、海2に面する敷地に建設された火力発電所10を備える。火力発電所10は、燃料貯蔵設備12、LNGタンク14、発電設備16、LNG気化器17、取水路20、および、放水路22などを備える。
ここで、熱交換対象設備は特に限定されないが、例えば、火力発電所などの発電プラントが備える、復水器やLNG気化器であっても良い。
なお、本実施形態では、復水器18Aおよび18Bで加温された海水を有効に利用するべく、放水路22の一部は、LNG気化器流路27へと通じている。これにより、復水器18Aおよび18Bで加温された海水は、LNG気化器17へと送られるため、復水器18Aおよび18Bで発生した熱を利用して、LNG気化器17を加温することができる。LNG気化器17と熱交換後の、LNG気化器流路27内部を流れる海水は、放水路22へと合流する。放水路22は、合流したLNG気化器流路27内部を流れる海水を、放出口26を通じて海へと放出する。
特に、取水路20については、復水器18Aおよび18Bを効率よく冷却するべく、低い水温の海水を取り込めるように、取水口24を陸地からかなり離れた沖合に設けるため、取水路20は非常に長くなって、海洋生物の付着の影響を受けやすい。また、LNG気化器流路27については、復水器18Aおよび18Bで加温された海水が流れることより、海洋生物が繁殖しやすい状態となっており、さらに、LNG気化器17との熱交換の効率を向上させるべく、流路直径が放水路22よりも細くなっているため、海洋生物が付着した場合の影響を受けやすい。
加えて、復水器18Aおよび18Bで加温された熱交換のための海水に、CO2ナノバブルを注入することによって、特にLNG気化器流路27の内壁面における、貝等の海洋生物の付着をさらに抑制している。
また、復水器18Aおよび18Bで加温された海水にCO2ナノバブルを注入する際、LNG気化器流路27の入り口に近い箇所で、特定のCO2ナノバブルを注入することが好ましい。それによって、LNG気化器17と熱交換が行われるLNG気化器流路27の内壁面に対する海洋生物の付着を抑制し、LNG気化器流路27の熱交換機能の低下を効果的に防いでいる。
図2に示すように、取水路20は、復水器18Aおよび18Bとの接続部、即ち、復水器流路29Aおよび29Bとの接続部に、それぞれ第1の海水ポンプ30Aおよび30Bを備える。第1の海水ポンプ30Aおよび30Bは、取水口24を通じて、海水を海2から取水路20へと吸入する。
CO2ボンベ46からCO2ライン47に流入する二酸化炭素は、減圧弁48で大気圧になるように圧力を調整され、流量調節弁49で流量を調整されて、CO2ナノバブル発生装置40に送られる。この二酸化炭素は、CO2ナノバブル発生装置40に第2の海水ポンプ44が取り込んだ海水の流水の力によって装置内が負の圧力となることで、自動的に装置内に取り込まれる。このようにしてCO2ナノバブル発生装置40に取り込まれた二酸化炭素は、CO2ナノバブル発生装置40において、CO2ナノバブルとなる。
また、図5に示すように、CO2ナノバブル発生装置40と接続していない側の注入管42の先端は屈曲せずに、注入管42の側面に設けた穴を注入口43としてもよい。このように、注入管42および注入口43として様々な構成が考えられる。
なお、注入管42は、同一箇所または複数個所に複数本あっても良い。
次に、本実施の一形態として、特定のCO2ナノバブルを熱交換のための水に注入することによって、熱交換水流路への海洋生物の付着を抑制する方法について説明する。
まず、第1の海水ポンプ30Aおよび30Bを用いて、海洋生物を含有する海水を、海2から取水口24を通じて取水路20へと吸入する。
CO2ナノバブル発生装置40から発生させたCO2ナノバブルを、取水路20へと取水した海水に、注入管42を通じて注入口43から注入する。このように、CO2ナノバブルを、海洋生物を含有する海水に注入することによって、二酸化炭素の水への溶解量を低く抑えながら、海洋生物の遊泳を阻害し、取水路20を含む熱交換水流路50への海洋生物の付着を抑制することができる。
放水された海水は、塩素系薬剤を一切含んでおらず、さらに、CO2ナノバブルは海水には溶解しにくいため大気へと放出されることから、海2に与える負荷が少ない点で非常に優れている。
天然海域からサンプリングしたアカフジツボ成体を、23℃の人工海水(八洲薬品株式会社製、アクアマリンS)に移した。アカフジツボ成体に、アルテミア幼生を毎日給餌し、毎日水換えをして飼育した。このように飼育している間に、ノープリウス幼生が孵出したので、光を当てて集めた。
8.5Lの水槽に、5Lの天然海水を入れた。自給式バブル発生装置の一つである、旋回流方式のバブル発生装置(バブル注入口の直径:40mm、アクアエアー社製)を用いて、0.1L/minの流量でCO2をバブル発生装置に供給することによって、CO2ナノバブルを含むCO2のバブルを発生させ、発生させたCO2のバブルを水槽中の海水に注入した。
CO2のバブルを注入し始めてから30秒〜1分後(試験1)、2分後(試験2)、および、5分後(試験3)にバブル発生装置を停止させた。発生装置停止直後から、0分後、10分後、20分後、および、30分後の海水について、アカフジツボ幼生の麻痺率、DO(Dissolved Oxygen、溶存酸素)、および、pHを測定した。また、これらの測定と併せて、注入したCO2のバブルのうち、CO2マイクロバブルの粒径の分布を、液中パーティクルカウンター(Particle measuring systems社製、LiQuilaz E20P、計測範囲:2μm〜125μm)を使用して測定した。
DOおよびpHの測定結果を、試験1については表2に、試験2については表3に、そして、試験3については表4に、それぞれ示す。また、計測したアカフジツボ幼生の麻痺率の結果を、試験1については図6に、試験2については図7に、そして、試験3については図8に、それぞれ示す。測定したCO2マイクロバブルの粒径の分布を、図9に示す。
一方、CO2供給時間が5分である試験3においては、多量のCO2が供給されたことにより、海水のpHが低下した結果、アカフジツボ幼生を加えた瞬間から1分後のアカフジツボ幼生の麻痺率は20〜45%であり、pHの影響が強く出てくるCO2供給停止直後から5分後では、麻痺率は60%以上となった。
実施例2において発生しているCO2ナノバブルの粒径分布を調べるべく、以下の実験を行った。なお、粒径分布を正確に測定するために、使用する天然海水は、孔径0.2μmのフィルターで予めろ過しておいた。
CO2のバブルを注入し始めてから1分後(試験1)、2分後(試験2)、および、3分後(試験3)に、それぞれ、CO2のバブルを注入した海水約200mLを、水槽から汲み出した。汲み出した海水約200mLを別の容器に移した。この海水を移した瞬間をCO2供給停止直後とし、CO2供給停止直後から30分後までの間に、ナノ粒子解析システム(Nanosight LM10、カンタムデザイン社製)を用いて、CO2ナノバブルの粒径分布を2〜5回測定した。また、CO2供給停止直後から30分後までの間に、DOおよびpHを、2〜4回測定した。
なお、実施例2においては試験3のCO2供給時間を5分としていたが、曝気時間が長くなると、海水中の塩分等の析出によるナノレベルの微細粒子の粒度分布をかく乱する可能性があることから、より精密な実験を行うために、実施例3においてはCO2供給時間を3分に設定した。
さらに、実施例2において高い麻痺効果を示した試験1の、CO2供給停止直後からの時間変化を示した図11(a)および(b)を見てみると、CO2供給停止1分後には、粒径40〜480nmのCO2ナノバブルが観測され、特に、CO2供給前(コントロール)ではほとんど検出されていない粒径300〜410nmのCO2ナノバブルが多量に観測されたことが分かる。この粒径300〜410nmのCO2ナノバブルは、時間の経過に伴って減少し、CO2供給停止5分後以降にはほとんど検出されなくなった。図10(b)が示すように、粒径300nm以上のCO2ナノバブルに絞って粒径分布の経時変化をみると、ナノバブルは発生後1分には高濃度分布を示すが、発生後5分以内には大きく減少した。
以上の実施例3の結果と、上述した実施例2の結果で示されるように、CO2ナノバブルの存在によって、アカフジツボ幼生の麻痺が引き起こされる。
ナノバブルは水中で消滅するときにフリーラジカルを発生することから、このフリーラジカルの発生を検出することによって、実施例2におけるCO2ナノバブルの存在を以下のように確認した。なお、実施例2と同様に、使用する天然海水は、孔径0.2μmのフィルターで予めろ過しておいた。
CO2のバブルを注入する前(コントロール)と、CO2のバブルを注入し始めてから1分後(試験1)および3分後(試験3)とに、CO2のバブルを注入した海水15mLを、それぞれ水槽から汲み出した。さらに、CO2のバブルを注入し始めてから1分後には、もう15mLの海水を汲み出し、こちらは10分間放置した(試験1−10分後)。
測定したESRスペクトルを、コントロールについては図12に、試験1については図13に、試験3については図14に、そして、試験1−10分後については図15に示す。
また、試験1−10分後の結果を示す図15には、図13において認められた水酸基ラジカルのピークが認められなかった。このことは10分間放置した間に、生成していたCO2ナノバブルは不安定化して水中で消滅してしまったことを示している。
10 火力発電所
12 燃料貯蔵設備
14 LNGタンク
16 発電設備
17 LNG気化器
18A,18B 復水器
20 取水路
22 放水路
24 取水口
26 放水口
27 LNG気化器流路
29A,29B 復水器流路
30A,30B 第1の海水ポンプ
32A,32B CO2ナノバブル注入装置
40 CO2ナノバブル発生装置
42 注入管
43 注入口
44 第2の海水ポンプ
46 CO2ボンベ
47 CO2ライン
48 減圧弁
49 流量調節弁
50 熱交換水流路
Claims (10)
- 海洋生物の遊泳を阻害する方法であって、前記海洋生物を含有する水に、粒径が1〜999nmであるCO2ナノバブルを注入する工程を含む阻害方法。
- 前記CO2ナノバブルの粒径が、40〜480nmであることを特徴とする、請求項1に記載の阻害方法。
- 前記CO2ナノバブルの粒径が、300〜410nmであることを特徴とする、請求項1に記載の阻害方法。
- 前記海洋生物がフジツボ類の幼生であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抑制方法。
- 熱交換水流路への海洋生物の付着を抑制するシステムであって、
前記海洋生物を含有する水を、熱交換対象設備に供給するための供給装置と、
前記供給された熱交換水を用いて、前記熱交換対象設備と熱交換するための熱交換器と、
前記熱交換対象設備と熱交換後の水を、前記熱交換対象設備から放出するための放出装置と、
前記海洋生物を含有する水、前記供給された水、及び、前記熱交換対象設備と熱交換後の水のいずれか一つ以上に、粒径が1〜999nmであるCO2ナノバブルを注入するための注入装置とを備えたシステム。 - 前記CO2ナノバブルの粒径が、40〜480nmであることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
- 前記CO2ナノバブルの粒径が、300〜410nmであることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
- 熱交換水流路への海洋生物の付着を抑制する方法であって、
海洋生物を含有する水を、熱交換対象設備に供給する工程と、
前記供給された水を用いて、前記熱交換対象設備と熱交換する工程と、
前記熱交換対象設備と熱交換後の水を、前記熱交換対象設備から放出する工程と、
前記海洋生物を含有する水、前記供給された水、及び、前記熱交換対象設備と熱交換後の水のいずれか一つ以上に、粒径が1〜999nmであるCO2ナノバブルを注入する工程とを含む抑制方法。 - 前記CO2ナノバブルの粒径が、40〜480nmであることを特徴とする、請求項8に記載の抑制方法。
- 前記CO2ナノバブルの粒径が、300〜410nmであることを特徴とする、請求項8に記載の抑制方法。
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