JP2012205655A - 細胞工学用支持体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 細胞を支持体の全体に容易に播種することができ、細胞に大きな力が加わることがなく、支持体内の細胞の量も略正確に把握することが可能な厚さ2mm以上の多孔質細胞支持体とその製造方法を提供する。
【解決手段】 300〜3000μmの平均孔径を有し空隙率75〜97%であって破壊強度が0.05〜2MPaのブロック状生体吸収性高分子体の厚さ2mm以上の上部と、2〜30μmの平均孔径を有する多孔質生体吸収性高分子体の下部から構成されることを特徴とする細胞工学用支持体とする。
【選択図】 なし
【解決手段】 300〜3000μmの平均孔径を有し空隙率75〜97%であって破壊強度が0.05〜2MPaのブロック状生体吸収性高分子体の厚さ2mm以上の上部と、2〜30μmの平均孔径を有する多孔質生体吸収性高分子体の下部から構成されることを特徴とする細胞工学用支持体とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、生体組織の代替品として使用され、特に形状安定性に優れ且つ内部に細胞を播種及び/または培養させることが可能な生体吸収性高分子材料からなる細胞工学用支持体及びその製造方法に関する。
近年、手術,外傷等によって喪失した生体組織を体細胞や幹細胞等によって再構築し、それを患者に移植することにより喪失した生体組織を再生する治療方法が行われている。この治療において生体組織を再生するためには、播種する細胞が生体組織を再建するまでの間に足場となる支持体(マトリックス)が重要となる。
従来の支持体としては、乳酸,グリコール酸,カプロラクトン等から成る生体吸収性高分子材料をジオキサンのような有機溶媒に溶解し、この溶液を凍結乾燥させて作製された孔径が5〜100μm程度のスポンジ状の細胞工学用支持体がある(例えば、特許文献1参照。)。また、このようなスポンジ状の細胞工学用支持体の作製時に溶液中に粒子径が約50〜約500μmの水溶性で無毒性の粒子状物質(例えば、塩化ナトリウム粉末等)を入れ、有機溶媒を取り除いて粒子状物質入りの生分解性高分子体を作製し、その後水を用いて粒子状物質を取り除くことで作製される約50〜約500μmの円形開放大孔と20μm以下の円形開放小孔とを持つ多孔質構造の生体吸収性高分子材料を細胞の支持体がある(例えば、特許文献2参照)。
細胞工学用支持体は細胞が播種された状態で使用されるが、前述した従来の多孔質構造を持つ支持体では、均一に細胞が播種されている状態の支持体とすることが難しいという問題があった。即ち、支持体は小孔構造を有する多孔質の三次元構造であるため、その中心部まで細胞を懸濁した培養液(以後、単に細胞懸濁液と呼ぶことがある)で満たすことが容易ではなく、例えば孔径が20μmより小さな支持体に厚さ2mm以上に渡って全体に細胞を播種することは非常に困難であった。
細胞懸濁液中に支持体を沈めてから大気圧より低い圧力あるいは真空とすることにより支持体中に細胞懸濁液を浸透させる方法も提案されている(例えば、特許文献3の請求項8参照。)。しかし実際には、このように負圧を利用しただけでは支持体全体に細胞懸濁液を浸透させることは難しいため、特許文献3の方法では細胞懸濁液を浸透させる経路をレーザー光等で形成している。また負圧を利用して圧力を大きく変化させることは細胞にとって好ましい状態ではなく、更に、細胞の量は懸濁液中の濃度で規定されるので、負圧を用いた方法では実際に支持体中に含まれた細胞の量を把握することが難しいという問題もあった。
本発明は前記の問題を鑑み、細胞を支持体の全体に容易に播種することができ、細胞に大きな力が加わることがなく、支持体内の細胞の量も正確に把握することが可能な厚さ2mm以上の多孔質細胞支持体とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、細胞が素通り可能な孔径の300〜3000μmの孔を有する特定の空隙率のブロック状の支持体を用いると容易に支持体全体に細胞を播種することが可能であることを利用し、その底を、細胞は通さず培養液を通す多孔質膜で塞ぐことによって前期課題が解決できることを見いだして本発明を完成させた。
即ち本発明は、300〜3000μmの平均孔径を有し空隙率75〜97%であって破壊強度が0.05〜2MPaのブロック状生体吸収性高分子体の厚さ2mm以上の上部と、2〜30μmの平均孔径を有する多孔質生体吸収性高分子体の下部から構成されることを特徴とする細胞工学用支持体である。このとき、上部:下部の厚さの比が、上部及び底部を通る縦断面で見たときに100:1〜10:2であることが好ましい。
更に本発明は、有機溶媒に生体吸収性高分子材料が溶解された溶液にその有機溶媒には溶解せず且つ生体吸収性高分子材料を溶解しない液で溶解する粒径が100〜2000μmの粒子状物質を略均一に混合し凍結した後に乾燥して有機溶媒を取り除くことによって粒子状物質を含有した孔径が5〜50μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製し、この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから粒子状物質を前記生体吸収性高分子を溶解しない液で溶解して取り除いた後、篩にかけて100〜3000μmの平均粒径の生体吸収性顆粒状多孔質物質とし、これらの生体吸収性顆粒状多孔質物質を所定形状の容器内に入れて加圧し加熱して300〜3000μmの平均孔径を有し空隙率75〜97%であって破壊強度が0.05〜2MPaのブロック状生体吸収性高分子体(上部)を作製し、 一方で、生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解し、この溶液を凍結乾燥させた後にプレスすることで作製できる平均孔径が2〜30μmのメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)、あるいは、生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解し、粒子径が50〜500μmであって水溶性で無毒性の粒子状物質を入れ、有機溶媒を取り除いて粒子状物質入りの生体吸収性高分子体を作製し、その後水を用いて粒子状物質を溶解させて取り除くことで作製される50〜500μmの円形開放大孔と2〜30μmの円形開放小孔とを持つ多孔質生体吸収性高分子体(下部2)を作製し、該上部と、下部1または下部2との接着面を加熱するか用いた生体吸収性高分子材料を溶解させる有機溶媒で溶かして上部と下部とを溶着することを特徴とする細胞工学用支持体の作製方法である。このとき、生体吸収性顆粒状多孔質物質を500〜3000g/cm2で加圧した状態の体積を保って60〜200℃の条件で加熱することが好ましい。
本発明は、細胞を支持体の全体に容易に播種することができ、細胞に不要な力が加わることがなく、支持体内に播種された細胞の量も正確に把握することが可能な厚さ2mm以上の細胞工学用支持体とその製造方法である。
本発明で用いる生体吸収性高分子材料は、生体に安全であり、一定期間体内でその形態を維持できれば特に限定することなく用いることができる。例えば、従来から用いられているポリグリコール酸,ポリ乳酸,乳酸−グリコール酸共重合体,ポリ−ε−カプロラクトン,乳酸−ε−カプロラクトン共重合体,ポリアミノ酸,ポリオルソエステル及びそれらの共重合体中から選択される少なくとも一種を例示することができ、中でもポリグリコール酸,ポリ乳酸,乳酸−グリコール酸共重合体が米国食品医薬庁(FDA)から人体に無害な高分子として承認されていること及びその実績の面から最も好ましい。生体吸収性高分子材料の重量平均分子量は5,000〜2,000,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜500,000である。
本発明に係る細胞工学用支持体において、その上部を構成する300〜3000μmの平均孔径を有し空隙率75〜97%であって破壊強度が0.05〜2MPaのブロック状生体吸収性高分子体は、細胞を自由に通す300〜3000μmの孔を有し空隙率75〜97%のブロック状の多孔質生体吸収性の高分子体である。平均孔径が300μmより小さいと細胞を自由に通す効果が少なくなり内部まで十分に細胞を播種することができなくなる。3000μmよりも大きいと支持体の強度が低下してしまう。なお、生体吸収性高分子材料内に粉末状のリン酸カルシウム、例えばハイドロキシアパタイトやβ三リン酸カルシウムを分散させてもよい。
本発明に係る細胞工学用支持体において、その上部を構成するブロック状生体吸収性高分子体の空隙率は75〜97%であることが必要である。本発明で空隙率とは、体積が同じである同じ材料を用いた場合において、孔のあいている材料の重量をW1,孔のあいていない材料の重量をW2としたときに、(1−W1/W2)×100で示される数値を言う。このブロック状生体吸収性高分子体は、空隙率が75%未満では空隙が少ないため細胞の培養効率が不足してしまい、97%を超えると生体吸収性高分子材料が少ないため強度が低下してしまい細胞の足場としての機能を低下させることになり細胞の培養効率が不足するため適切ではない。
上部のブロック状生体吸収性高分子体の破壊強度が0.05MPa未満では形状に関係なく生体内で必要とされる形を維持することができず、一方、2MPaを超える破壊強度のものを作製することは難しい。なお、本願での破壊強度とは直径10mm×高さ2mmの円柱状の試験体をクロスヘッドスピード1mm/分で圧縮させた際の圧縮破壊強度を意味する。
上部を構成する、300〜3000μmの平均孔径を有し空隙率75〜97%であって破壊強度が0.05〜2MPaのブロック状生体吸収性高分子体の作製方法は、有機溶媒に生体吸収性高分子材料が溶解された溶液にその有機溶媒には溶解せず且つ生体吸収性高分子材料を溶解しない液で溶解する粒径が100〜2000μmの粒子状物質を略均一に混合し凍結した後に乾燥して有機溶媒を取り除くことによって粒子状物質を含有した孔径が5〜50μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製し、この多孔質生体吸収性高分子をミル等で粉砕してから粒子状物質を前記生体吸収性高分子を溶解しない液で溶解して取り除いた後、篩にかけて100〜3000μmの平均粒径の生体吸収性顆粒状多孔質物質とし、これらの生体吸収性顆粒状多孔質物質を所定形状の容器内に入れて加圧し加熱して作製する。
加圧の条件は生体吸収性顆粒状多孔質物質の材質,形状や大きさによって異なるが、500〜3000g/cm2であることが好ましい。この加圧条件から外れると、水分に触れたときの体積変化が大きくなってしまう。更に、500g/cm2未満ではブロック状細胞工学用支持体の形状安定性が不足してしまう虞があり、3000g/cm2を超えると細胞が十分に増殖可能な孔が残り難い。より好ましくは1000〜2000g/cm2である。
加熱の条件も生体吸収性顆粒状多孔質物質の材質,形状や大きさによって異なるが、前記の加圧を行った状態で体積を保って加熱するのであれば60〜200℃の範囲であればよい。60℃未満では顆粒状の生分解性多孔質高分子同士の結合が弱くなり顆粒を集めてブロック体とすることが難かしくなる傾向がある。一方、200℃を超えると顆粒状の生分解性多孔質高分子が変性してしまう虞がある。
下部の2〜30μm未満の平均孔径を有する多孔質生体吸収性高分子体は、全ての細胞を完全には通過させずに培養液を通すためのフィルターの役目を果たす。
下部の2〜30μm未満の平均孔径を有する多孔質生体吸収性高分子体の作製方法は、生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解し、この溶液を凍結乾燥させることで作製できる孔径が5〜100μm程度のスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体をプレスして平均孔径が2〜30μmのメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体を得る方法がある。あるいは、溶液中に粒子径が50〜500μmの水溶性で無毒性の粒子状物質(例えば、塩化ナトリウム粉末等)を入れ、有機溶媒を取り除いて粒子状物質入りの生体吸収性高分子体を作製し、その後水を用いて粒子状物質を溶解させて取り除くことで作製される50〜500μmの円形開放大孔と2〜30μmの円形開放小孔とを持つ多孔質生体吸収性高分子体を得る方法がある。
本発明において多孔質生体吸収性高分子体1は、細胞懸濁液を上方向から流す際に細胞が全て支持体外に流れ出てしまうことを防ぐために支持体の下部に配置されるものであるから、支持体の形状に合わせる必要があり、下部の全面を覆う形状であることが好ましい。例えば、上部の形状が直方体の支持体であれば、下部は底面全体を覆うように支持体を構成するよう上部に接着(溶着)固定され配置される。上部の形状が球形であれば、少なくとも直径の下から1/4の高さを覆うように下部が配置されていることが好ましい。
上部:下部の厚さの比は上部及び底部を通る縦断面で見たときに100:1〜10:2であることが好ましい。
本発明に係る細胞工学用支持体を製造する際に上部を構成するブロック状生体吸収性高分子体と下部を構成する多孔質生体吸収性高分子体を溶着するには、加熱により行う方法と、生体吸収性高分子体を構成する生体吸収性高分子材料を溶解させる有機溶媒を介して行う方法との何れかを採用するのが好ましい。有機溶媒としては予め生体吸収性高分子材料を溶解させたものを使用してもよい。
本発明に係る細胞工学用支持体の使用時に播種される細胞は、例えば、表皮細胞,ケラチン生成細胞,脂肪細胞,肝細胞,神経細胞,神経膠細胞,星状膠細胞,上皮細胞,乳房表皮細胞,鳥細胞,内皮細胞,間葉細胞,真皮線維芽細胞,間皮細胞,造骨細胞,平滑筋細胞,横紋筋細胞,靭帯線維芽細胞,腱線維芽細胞及び軟骨細胞,骨髄細胞,骨芽細胞,歯胚細胞,歯根膜細胞,歯髄細胞,体性幹細胞,またはES細胞等が用いられる。
本発明に係る細胞工学用支持体の使用方法は、先ず予め必要とされる形状に作製された細胞工学用支持体に水,生理食塩水,培養液等の水溶液を満たし、その後、支持体を水分吸収体上に静置する。水分吸収体は支持体から適宜水分を吸収可能な素材であれば特に限定されずに使用される。例えば、セルロース系,紙系の濾紙,水分吸収性高分子材,無機質あるいは有機質材料からなる多孔質ブロック材が好ましい。
静置後には支持体から水分が多く吸収される前に速やかに、予め調整された細胞懸濁液を支持体の上側から支持体に向かって滴下させる。このとき、細胞懸濁液が支持体の外側を伝わって水分吸収体に流れることを防ぐように滴下速度を調整する。
この方法によれば、細胞工学用支持体中に予め含まれていた水溶液が吸収体に吸収されると共に上側から滴下された細胞懸濁液が外圧を加えなくても容易に支持体中に水溶液と入れ替わるように支持体中に浸透していくため、細胞に外圧を加えることなく支持体内に細胞懸濁液を均一に入れることが可能である。また、下部に細胞が通過しない層があるために細胞懸濁液中の細胞全てを支持体中へ入れることが可能であり、結果として支持体内に入れた細胞の量も正確に把握することが可能となるのである。
以下、本発明を実施例により具体的に示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<細胞工学用支持体>
<実施例1>
ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)ブロック+PLGAメンブレン
分子量250,000のDL−乳酸/グリコール酸共重合体をジオキサンに溶解させた後、粒径500μmの塩化ナトリウムと混合した後、凍結乾燥してジオキサンを除去して塩化ナトリウム粒子を含む平均孔径25μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製した。この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから水を用いて塩化ナトリウム粒子を取り除いた後、300〜710μmの篩に順次かけて平均粒径490μmの生体吸収性顆粒状多孔質物質とした。この生体吸収性顆粒状多孔質物質を型に入れ1500g/cm2の圧力を保ったまま、温度105℃で加熱することによって、孔のサイズが平均540μm,空隙率85%,直径9mmで厚さ3mm,破壊強度が0.25MPaのブロック状生体吸収性高分子(上部)を作製した。なお、各実施例に記載の破壊強度は第15段落に記載した条件で測定した。
一方で、分子量250,000のDL−乳酸/グリコール酸共重合体をジオキサンに溶解させた後、型に流し込んで凍結乾燥してから厚さが1/10になるようプレスし、厚さ0.2mmのメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)を作製した。このメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体の平均孔径は20μmであった。
メンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)φ9mmの円盤に成形したものを上部の下に配置してから温度68℃で加熱することによって、上部と下部からなる細胞工学用支持体を作製した。
<実施例1>
ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)ブロック+PLGAメンブレン
分子量250,000のDL−乳酸/グリコール酸共重合体をジオキサンに溶解させた後、粒径500μmの塩化ナトリウムと混合した後、凍結乾燥してジオキサンを除去して塩化ナトリウム粒子を含む平均孔径25μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製した。この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから水を用いて塩化ナトリウム粒子を取り除いた後、300〜710μmの篩に順次かけて平均粒径490μmの生体吸収性顆粒状多孔質物質とした。この生体吸収性顆粒状多孔質物質を型に入れ1500g/cm2の圧力を保ったまま、温度105℃で加熱することによって、孔のサイズが平均540μm,空隙率85%,直径9mmで厚さ3mm,破壊強度が0.25MPaのブロック状生体吸収性高分子(上部)を作製した。なお、各実施例に記載の破壊強度は第15段落に記載した条件で測定した。
一方で、分子量250,000のDL−乳酸/グリコール酸共重合体をジオキサンに溶解させた後、型に流し込んで凍結乾燥してから厚さが1/10になるようプレスし、厚さ0.2mmのメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)を作製した。このメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体の平均孔径は20μmであった。
メンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)φ9mmの円盤に成形したものを上部の下に配置してから温度68℃で加熱することによって、上部と下部からなる細胞工学用支持体を作製した。
<実施例2>
ポリL-乳酸(PLLA)ブロック+PLLAメンブレン
分子量250,000のポリL−乳酸をクロロホルムに溶解させた後、粒径500μmの塩化ナトリウムと混合した後、凍結乾燥してジオキサンを除去して塩化ナトリウム粒子を含む孔径20μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製した。この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから水を用いて塩化ナトリウム粒子を取り除いた後、710〜1000の篩にかけて平均粒径840μmの生体吸収性顆粒状多孔質物質とした。この生体吸収性顆粒状多孔質物質を型に入れ800g/cm2の圧力を保ったまま、温度180℃で加熱することによって、孔のサイズが平均460μm,空隙率87%,直径9mmで厚さ2mm,破壊強度が0.8MPaのブロック状生体吸収性高分子(上部)を作製した。
一方で、分子量250,000のポリL−乳酸をクロロホルムに溶解させた後、型に流し込んで凍結乾燥してから厚さが1/10になるようプレスし、厚さ0.15mmのメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)を作製した。
メンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)φ9mmの円盤に成形したものを上部の下に配置してから温度180℃で加熱することによって、上部と下部からなる細胞工学用支持体を作製した。
ポリL-乳酸(PLLA)ブロック+PLLAメンブレン
分子量250,000のポリL−乳酸をクロロホルムに溶解させた後、粒径500μmの塩化ナトリウムと混合した後、凍結乾燥してジオキサンを除去して塩化ナトリウム粒子を含む孔径20μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製した。この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから水を用いて塩化ナトリウム粒子を取り除いた後、710〜1000の篩にかけて平均粒径840μmの生体吸収性顆粒状多孔質物質とした。この生体吸収性顆粒状多孔質物質を型に入れ800g/cm2の圧力を保ったまま、温度180℃で加熱することによって、孔のサイズが平均460μm,空隙率87%,直径9mmで厚さ2mm,破壊強度が0.8MPaのブロック状生体吸収性高分子(上部)を作製した。
一方で、分子量250,000のポリL−乳酸をクロロホルムに溶解させた後、型に流し込んで凍結乾燥してから厚さが1/10になるようプレスし、厚さ0.15mmのメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)を作製した。
メンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)φ9mmの円盤に成形したものを上部の下に配置してから温度180℃で加熱することによって、上部と下部からなる細胞工学用支持体を作製した。
<実施例3>
ハイドロキシアパタイト含有ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)ブロック+PLLAメンブレン
分子量250,000のDL−乳酸/グリコール酸共重合体をテトラヒロドフランに溶解させた後、粒径20μmのハイドロキシアパタイトと粒径500μmの塩化ナトリウムと混合した後、凍結乾燥してジオキサンを除去して塩化ナトリウム粒子を含む平均孔径31μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製した。この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから水を用いて塩化ナトリウム粒子を取り除いた後、150〜710μmの篩にかけて平均粒径320μmの生体吸収性顆粒状多孔質物質とした。この生体吸収性顆粒状多孔質物質を型に入れ800g/cm2の圧力を保ったまま温度110℃で加熱することによって、孔のサイズが平均620μm,空隙率78%,直径9mmで厚さ2mm,破壊強度が0.35MPaのブロック状生体吸収性高分子(上部)を作製した。
一方で、分子量250,000のポリL−乳酸をジオキサンに溶解させた、粒径500μmの塩化ナトリウムと混合した後に型に流し込んで凍結乾燥し、その後、水を用いて塩化ナトリウム粒子を取り除き乾燥させて、厚さ0.2mmの薄いスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体(下部2)を作製した。この多孔質生体吸収性高分子体は、平均300μmの円形開放大孔と平均8μmの円形開放小孔とを有していた。
薄いスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体(下部2)φ9mmの円盤に成形したものを上部の下に配置してから温度80℃で加熱することによって、上部と下部からなる細胞工学用支持体を作製した。
ハイドロキシアパタイト含有ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)ブロック+PLLAメンブレン
分子量250,000のDL−乳酸/グリコール酸共重合体をテトラヒロドフランに溶解させた後、粒径20μmのハイドロキシアパタイトと粒径500μmの塩化ナトリウムと混合した後、凍結乾燥してジオキサンを除去して塩化ナトリウム粒子を含む平均孔径31μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製した。この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから水を用いて塩化ナトリウム粒子を取り除いた後、150〜710μmの篩にかけて平均粒径320μmの生体吸収性顆粒状多孔質物質とした。この生体吸収性顆粒状多孔質物質を型に入れ800g/cm2の圧力を保ったまま温度110℃で加熱することによって、孔のサイズが平均620μm,空隙率78%,直径9mmで厚さ2mm,破壊強度が0.35MPaのブロック状生体吸収性高分子(上部)を作製した。
一方で、分子量250,000のポリL−乳酸をジオキサンに溶解させた、粒径500μmの塩化ナトリウムと混合した後に型に流し込んで凍結乾燥し、その後、水を用いて塩化ナトリウム粒子を取り除き乾燥させて、厚さ0.2mmの薄いスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体(下部2)を作製した。この多孔質生体吸収性高分子体は、平均300μmの円形開放大孔と平均8μmの円形開放小孔とを有していた。
薄いスポンジ状の多孔質生体吸収性高分子体(下部2)φ9mmの円盤に成形したものを上部の下に配置してから温度80℃で加熱することによって、上部と下部からなる細胞工学用支持体を作製した。
<細胞の準備>
細胞1 ヒト腸骨骨髄液から採取した間葉系幹細胞
ヒト腸骨骨髄液から採取した細胞を10%FBS,DMEM培地で懸濁した後、有核細胞数1×105細胞個/10cm2を培養皿へ移し、37℃にて5%炭酸ガス存在下で培養した。3日目で培地を交換し、非接着細胞(造血系細胞)を除いた。以後3日に1回の割合で培地を交換した。bFGFは5日目から3ng/mlで培地に添加した。10日前後でほぼ集密的にまで増殖した。これらの培養皿をトリプシン(0.05%)+EDTA(0.2mM)で5分間インキュベートして、細胞を単離した。細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル,ベックマンコールター社製)で計測し、そして5,000細胞個/cm2の密度で細胞を播種した。この操作を繰り返して、ほぼ集密的(コンフルエント)になった二代目の継代培養皿から得た三代目の細胞を用いた。
細胞1 ヒト腸骨骨髄液から採取した間葉系幹細胞
ヒト腸骨骨髄液から採取した細胞を10%FBS,DMEM培地で懸濁した後、有核細胞数1×105細胞個/10cm2を培養皿へ移し、37℃にて5%炭酸ガス存在下で培養した。3日目で培地を交換し、非接着細胞(造血系細胞)を除いた。以後3日に1回の割合で培地を交換した。bFGFは5日目から3ng/mlで培地に添加した。10日前後でほぼ集密的にまで増殖した。これらの培養皿をトリプシン(0.05%)+EDTA(0.2mM)で5分間インキュベートして、細胞を単離した。細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル,ベックマンコールター社製)で計測し、そして5,000細胞個/cm2の密度で細胞を播種した。この操作を繰り返して、ほぼ集密的(コンフルエント)になった二代目の継代培養皿から得た三代目の細胞を用いた。
細胞2 ウサギの大腿骨・脛骨から採取した間葉系幹細胞
6週齢のウサギの大腿骨,脛骨から筋肉及び靭帯などを除いてこれを切除し、その両端を切断し、αMEM培地(10%FBS,32単位/ml ペンシリン,50μg/mlストレプトマイシン)で骨髄内を洗浄した。よく懸濁して骨髄液をほぐした後、300×gで5分間遠心分離して細胞を分離した。前記骨髄から約7×107個の有核細胞を得た。骨髄から採取した細胞をWBC3.75×107細胞個/75cm2で培養フラスコへ移し、37℃にて5%炭酸ガス存在下で培養した。3日目で培地を交換し、以後3日に1回の割合で培地を交換した。bFGFは5日目から3ng/mlで培地に添加した。10日前後でほぼ集密的にまで増殖した。これらの培養皿をトリプシン(0.05%)+EDTA(0.2mM)で5分間インキュベートして、細胞を単離した。細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル,ベックマンコールター社製)で計測し、そして5,000細胞個/cm2の密度で細胞を播種した。この操作を繰り返して、ほぼ集密的(コンフルエント)になった二代目の継代培養皿から得た三代目の細胞を用いた。
6週齢のウサギの大腿骨,脛骨から筋肉及び靭帯などを除いてこれを切除し、その両端を切断し、αMEM培地(10%FBS,32単位/ml ペンシリン,50μg/mlストレプトマイシン)で骨髄内を洗浄した。よく懸濁して骨髄液をほぐした後、300×gで5分間遠心分離して細胞を分離した。前記骨髄から約7×107個の有核細胞を得た。骨髄から採取した細胞をWBC3.75×107細胞個/75cm2で培養フラスコへ移し、37℃にて5%炭酸ガス存在下で培養した。3日目で培地を交換し、以後3日に1回の割合で培地を交換した。bFGFは5日目から3ng/mlで培地に添加した。10日前後でほぼ集密的にまで増殖した。これらの培養皿をトリプシン(0.05%)+EDTA(0.2mM)で5分間インキュベートして、細胞を単離した。細胞数をCoulterカウンター(Z1シングル,ベックマンコールター社製)で計測し、そして5,000細胞個/cm2の密度で細胞を播種した。この操作を繰り返して、ほぼ集密的(コンフルエント)になった二代目の継代培養皿から得た三代目の細胞を用いた。
上記の通り準備した細胞支持体をDMEM倍地中に浸漬させて減圧状態とし,培地を内部まで浸潤させた後,吸水体の上に移動して,上記の通り準備した移植細胞を滴下することにより播種し、各々の条件下で培養し、細胞移植治療材料を作製した。
<細胞の播種方法1>
軟骨分化用培養液(αMEM,グルコース4.5mg/ml,10−7M デキサメサゾン,50mg/ml アスコルビン酸2リン酸,10ng/ml TGF−b,6.25mg/ml インスリン,6.25mg/ml トランスフェリン,6.25ng/ml セレン酸,5.33mg/ml リノレイン酸,1.25mg/ml ウシ血清アルブミン)に200,000細胞個/mlの密度で懸濁させた移植細胞1(0.5ml)を細胞工学用支持体上に滴下して播種し、容器に培地とともに入れて37℃にて3日毎に培地を交換しながら4週間培養して骨組織再生用細胞移植体を作製した。
細胞に大きな力が加わることがなく細胞を細胞工学用支持体の全体に容易に播種することができ、細胞が外部に漏れ出ていないため支持体内に播種した細胞の量も正確に把握することが可能である。
軟骨分化用培養液(αMEM,グルコース4.5mg/ml,10−7M デキサメサゾン,50mg/ml アスコルビン酸2リン酸,10ng/ml TGF−b,6.25mg/ml インスリン,6.25mg/ml トランスフェリン,6.25ng/ml セレン酸,5.33mg/ml リノレイン酸,1.25mg/ml ウシ血清アルブミン)に200,000細胞個/mlの密度で懸濁させた移植細胞1(0.5ml)を細胞工学用支持体上に滴下して播種し、容器に培地とともに入れて37℃にて3日毎に培地を交換しながら4週間培養して骨組織再生用細胞移植体を作製した。
細胞に大きな力が加わることがなく細胞を細胞工学用支持体の全体に容易に播種することができ、細胞が外部に漏れ出ていないため支持体内に播種した細胞の量も正確に把握することが可能である。
<細胞の播種方法2>
軟骨分化用培養液(αMEM,グルコース4.5mg/ml,10−7M デキサメサゾン,50ng/ml アスコルビン酸2リン酸,10ng/ml TGF−b,6.25mg/ml インスリン,6.25mg/ml トランスフェリン,6.25ng/ml セレン酸,5.33mg/ml リノレイン酸,1.25mg/ml ウシ血清アルブミン)に200,000細胞個/mlの密度で懸濁させた移植細胞2(0.5ml)を細胞支持体2上に滴下して播種し、容器に培地とともに入れて37℃にて3日毎に培地を交換しながら4週間培養して骨組織再生用細胞移植体を作製した。
細胞に大きな力が加わることがなく細胞を細胞工学用支持体の全体に容易に播種することができ、細胞が外部に漏れ出ていないため支持体内に播種した細胞の量も正確に把握することが可能である。
軟骨分化用培養液(αMEM,グルコース4.5mg/ml,10−7M デキサメサゾン,50ng/ml アスコルビン酸2リン酸,10ng/ml TGF−b,6.25mg/ml インスリン,6.25mg/ml トランスフェリン,6.25ng/ml セレン酸,5.33mg/ml リノレイン酸,1.25mg/ml ウシ血清アルブミン)に200,000細胞個/mlの密度で懸濁させた移植細胞2(0.5ml)を細胞支持体2上に滴下して播種し、容器に培地とともに入れて37℃にて3日毎に培地を交換しながら4週間培養して骨組織再生用細胞移植体を作製した。
細胞に大きな力が加わることがなく細胞を細胞工学用支持体の全体に容易に播種することができ、細胞が外部に漏れ出ていないため支持体内に播種した細胞の量も正確に把握することが可能である。
<細胞の播種方法3>
骨分化用培養液(αMEM,グルコース4.5mg/ml,10%FBS,10−7M デキサメサゾン,50μg/ml アスコルビン酸2リン酸,10mM βグリセロリン酸)に200,000細胞個/mlの密度で懸濁させた移植細胞1(0.5ml)を細胞支持体3上に滴下して播種し、容器に培地とともに入れて37℃にて3日毎に培地を交換しながら4週間培養して骨組織再生用細胞移植体を作製した。
細胞に大きな力が加わることがなく細胞を細胞工学用支持体の全体に容易に播種することができ、細胞が外部に漏れ出ていないため支持体内に播種した細胞の量も正確に把握することが可能である。
骨分化用培養液(αMEM,グルコース4.5mg/ml,10%FBS,10−7M デキサメサゾン,50μg/ml アスコルビン酸2リン酸,10mM βグリセロリン酸)に200,000細胞個/mlの密度で懸濁させた移植細胞1(0.5ml)を細胞支持体3上に滴下して播種し、容器に培地とともに入れて37℃にて3日毎に培地を交換しながら4週間培養して骨組織再生用細胞移植体を作製した。
細胞に大きな力が加わることがなく細胞を細胞工学用支持体の全体に容易に播種することができ、細胞が外部に漏れ出ていないため支持体内に播種した細胞の量も正確に把握することが可能である。
Claims (4)
- 300〜3000μmの平均孔径を有し空隙率75〜97%であって破壊強度が0.05〜2MPaのブロック状生体吸収性高分子体の厚さ2mm以上の上部と、2〜30μmの平均孔径を有する多孔質生体吸収性高分子体の下部から構成されることを特徴とする細胞工学用支持体。
- 上部:下部の厚さの比が、上部及び下部を通る縦断面で見た時に100:1〜10:2である請求項1に記載の細胞工学用支持体。
- 有機溶媒に生体吸収性高分子材料が溶解された溶液にその有機溶媒には溶解せず且つ生体吸収性高分子材料を溶解しない液で溶解する粒径が100〜2000μmの粒子状物質を略均一に混合し凍結した後に乾燥して有機溶媒を取り除くことによって粒子状物質を含有した孔径が5〜50μmの小孔構造を有する多孔質生体吸収性高分子を作製し、この多孔質生体吸収性高分子を粉砕してから粒子状物質を前記生体吸収性高分子を溶解しない液で溶解して取り除いた後、篩にかけて100〜3000μmの平均粒径の生体吸収性顆粒状多孔質物質とし、これらの生体吸収性顆粒状多孔質物質を所定形状の容器内に入れて加圧し加熱して300〜3000μmの平均孔径を有し空隙率75〜97%であって破壊強度が0.05〜2MPaのブロック状生体吸収性高分子体(上部)を作製し、
一方で、生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解し、この溶液を凍結乾燥させた後にプレスすることで作製できる平均孔径が2〜30μmのメンブレン状の多孔質生体吸収性高分子体(下部1)、
あるいは、生体吸収性高分子材料を有機溶媒に溶解し、粒子径が約50〜約500μmであって水溶性で無毒性の粒子状物質を入れ、有機溶媒を取り除いて粒子状物質入りの生体吸収性高分子体を作製し、その後水を用いて粒子状物質を溶解させて取り除くことで作製される50〜500μmの円形開放大孔と2〜30μmの円形開放小孔とを持つ多孔質生体吸収性高分子体(下部2)を作製し、
該上部と、下部1または下部2との接着面を加熱するか用いた生体吸収性高分子材料を溶解させる有機溶媒で溶かして上部と下部とを溶着することを特徴とする細胞工学用支持体の作製方法。 - 生体吸収性顆粒状多孔質物質を500〜3000g/cm2で加圧した状態の体積を保って60〜200℃で加熱する請求項3に記載の細胞工学用支持体の作製方法。
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