JP2012201392A - 包装用フィルム、積層包装用フィルム、前記フィルムの製造方法、および前記フィルムを用いた包装方法 - Google Patents

包装用フィルム、積層包装用フィルム、前記フィルムの製造方法、および前記フィルムを用いた包装方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
高いガス透過性を有しつつヒートシール性も有する包装用フィルムを提供する。
【解決手段】
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)とを含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜40重量部であり、かつ前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(B)に由来する融点TmB2が100℃以下または前記融点TmB2が実質的に観測されない包装用フィルム。
【選択図】 図1A

Description

本発明は、包装用フィルムとして有用なフィルムに関する。
4−メチル−1−ペンテン重合体は嵩高い官能基を有するため、他の熱可塑性オレフィンフィルムに比べて密度が低い。このため4−メチル−1−ペンテン重合体を含むフィルムは、酸素ガスや炭酸ガスなどのガス透過性が高く、生鮮食品などの包装材などのガス透過性フィルムとして開発が進められている(例えば、特許文献1)。
また4−メチル−1−ペンテン重合体を含むフィルムは、酸素ガスと炭酸ガスのガス透過性に差があるため、MA包装(Modified Atmosphere Packaging)用に適している。MA包装とは、青果物の呼吸作用によってもたらされる酸素ガスの消費と炭酸ガスの蓄積によって変化した包装内部のガス組成を、大気よりも低酸素ガス濃度かつ高炭酸ガス濃度へと変え、その後の呼吸作用を抑制させて、鮮度保持を図る包装方式である。このため、酸素ガスの透過率よりも炭酸ガスの透過率が低いというガス選択透過性がある4−メチル−1−ペンテン重合体を含むガス透過性フィルムが、MA包装に適しているとされている(例えば、特許文献2)。
一方、包装用フィルムにはガス透過性のみならず、包装時のシール強度と、包装フィルムを剥がす際に、フィルムが破損あるいは亀裂を発生することなく、貼り合せ部で剥離できるイージーピール性が要求される(以下では、高いシール強度とイージーピール性を合わせ持つことをヒートシール性ともいう)。
4−メチル−1−ペンテン重合体は融点が高くヒートシール強度が低い。またじん性(靭性)が低いため、フィルムの取扱時あるいはフィルムの剥離時に、貼り合せ部で破損や亀裂が生じやすい。このため、ガス透過性とヒートシール性を併せもつ4−メチル−1−ペンテン重合体を含む包装用フィルムの開発が検討されている。具体的には、融点が低いポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂をヒートシール層として4−メチル−1−ペンテン重合体を含むガス透過層に積層することで、ヒートシール性を付与することが検討されている(例えば、特許文献3)。
また4−メチル−1−ペンテン重合体は包装用性が高いため、前記ヒートシール層との密着性が低く、ヒートシール層と4−メチル−1−ペンテン重合体を含む層との間に、さらにマレイン酸変性樹脂などの接着層を積層させ固定する必要がある。しかし、このように4−メチル−1−ペンテン重合体を含むガス透過性フィルムにヒートシール性を付与するために、ヒートシール層や接着層を積層させると、ヒートシール層や接着層によってガス透過性が低下するという問題があった。また、植物油などが含まれる食品の包装においては局所的に食品が発熱するため、包装材には200℃程度の耐熱性が要求されるが、融点の低いポリエチレンやポリプロピレンでは要求される耐熱性が得られないという問題があった。
特開平11−301691号公報 特開2000−301674号公報 特開2001−189051号公報
本発明は、従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、高いガス透過性を有しつつヒートシール性も有する包装用フィルムを提供することにある。
本発明の第一は包装用フィルムに関する。
[1]4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜40重量部であり、かつ前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(B)に由来する融点TmB2が100℃以下または前記融点TmB2が実質的に観測されない包装用フィルム。
[2]4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜40重量部であり、かつ前記(B)の示差走査熱量計(DSC)により測定される融点TmB1が100℃以下または前記融点TmB1が実質的に観測されない包装用フィルム。
[3]熱可塑性エラストマー(B)が、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーのいずれか1種類以上のエラストマーからなる、[1]ないし[2]に記載のフィルム。
[4]さらに、プロピレン(共)重合体(C)を含む請求項1に記載のフィルムであって、前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(C)に由来する融点TmC2が110〜175℃の範囲内にある、[1]ないし[3]のいずれか一項に記載の包装用フィルム。
[5]プロピレン(共)重合体(C)をさらに含み、(A)と(B)と前記(C)の合計100重量部に対して前記(C)が0.3〜30重量部である、[1]ないし[4]のいずれか一項に記載の包装用フィルム。
[6]熱可塑性エラストマー(B)の密度が850〜980kg/mである、[1]ないし[5]のいずれか一項に記載の包装用フィルム。
[7]フィルムの主面に垂直な切断面のTEM像(撮像範囲のフィルム厚さ方向の距離は15μm、かつ撮像面積は45μm)で、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)から実質的に構成される相と、熱可塑性エラストマー(B)から実質的に構成される相の相分散構造が観察される、[1]ないし[6]のいずれか一項に記載の包装用フィルム。
本発明の第二は積層包装用フィルムに関する。
[8][1]ないし[7]のいずれか一項に記載の包装用フィルムを少なくとも一方の主面の最表面の一部ないし全部に備える積層包装用フィルム。
本発明の第三は包装用フィルムの製造方法に関する。
[9]4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、示差走査熱量計(DSC)で得られる融点TmB1が100℃以下または前記融点TmB1が実質的に観測されない熱可塑性エラストマー(B)とを含んでなり、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜20重量部の溶融混練物を成形する工程を含む、[1]ないし[7]のいずれか一項に記載の包装用フィルムの製造方法。
本発明の第四は本発明の包装用フィルムを用いた包装方法に関する。
[10]酸素を吸収あるいは消費し炭酸ガスを発生する被包装体を[1]ないし[8]のいずれか一項に記載の包装用フィルムで覆う第一の工程と、前記包装用フィルム同士をヒートシールする第二の工程と、を含む、包装方法。
本発明の一実施形態に係る包装用フィルムの基材層のMD方向に平行な断面TEM写真である。 本発明の一実施形態に係る包装用フィルムの基材層のTD方向に平行な断面TEM写真である。
1.包装用フィルム 本発明の包装用フィルムは、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜40重量部であり、かつ前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(B)に由来する融点TmB2が100℃以下または前記融点TmB2が実質的に観測されない包装用フィルムである。
または、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜40重量部であり、かつ前記(B)の示差走査熱量計(DSC)により測定される融点TmB1が100℃以下または前記融点TmB1が実質的に観測されない包装用フィルムである。
(1)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)とは、4−メチル−1−ペンテンから導かれる繰り返し単位を有していればよく、それ以外の制限はない。つまり、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体とは、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体であっても、4−メチル−1−ペンテン以外の4−メチル−1−ペンテンと共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。なお、後述するプロピレン(共)重合体(C)など、本願明細書における「(共)重合体」とは、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と同様に単独重合体も共重合体も含むことを意味する。前記4−メチル−1−ペンテンと共重合可能なモノマーとは、具体的には、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素原子数2〜20のオレフィン(以下「炭素原子数2〜20のオレフィン」という)が挙げられる。
4−メチル−1−ペンテンと共重合される炭素原子数2〜20のオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン等が含まれ、フィルムに適度な可とう性を付与するという観点からは、炭素原子数10〜18のオレフィンが好ましい。
4−メチル−1−ペンテンと共重合される炭素原子数2〜20のオレフィンは、一種類であってもよいし、二種類以上を組み合わせてもよい。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体における、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位の割合は通常、85モル%以上であり、後述するガス透過性を向上させるという観点からは90モル%以上が好ましい。4−メチル−1−ペンテン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンに由来する構成単位の割合は15モル%以下、10モル%以下であることが好ましい。4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位の割合が85モル%未満であると、フィルムの密度が大きくなり、分子量が大きなガス成分のガス透過性が低くなる。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)は、包装用フィルムとして破れにくくするという観点からは、結晶性の高い重合体であることが好ましい。結晶性の重合体としては、アイソタクチック構造を有する重合体、シンジオタクチック構造を有する重合体のいずれであってもよいが、特にアイソタクチック構造を有する重合体であることが好ましく、また入手も容易である。さらに、4−メチル−1−ペンテン系重合体は、フィルム状に成形でき包装用フィルムとして使用に耐える強度を有していれば、立体規則性も特に制限されない。
本発明の4−メチル−1−ペンテン重合体(A)のASTM DM1505に準拠して測定される密度は、825〜840(kg/m)であるのが好ましく、830〜835(kg/m)であるのがさらに好ましい。密度が前記範囲よりも小さいとフィルムの機械的な強度が低下し、包装用として用い場合、破れやすいなどの問題が発生する恐れがある。一方、前記範囲よりも密度が大きいと、ガス透過性が低下する傾向がある。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)の、ASTM D1238に準拠して260℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、後述する熱可塑性エラストマー(B)と押出機内で混ざりやすく、共押出できる範囲であれば特に規定されないが、0.5〜50g/10minであり、より好ましく1〜30g/10minである。MFRが上記範囲であれば、比較的均一な膜厚に押出成形しやすい。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)は、オレフィン類を重合して直接製造してもよく、高分子量の4−メチル−1−ペンテン系重合体を、熱分解して製造してもよい。また、4−メチル−1−ペンテン系重合体は、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、あるいは沸点の差で分取する分子蒸留などの方法で精製されていてもよい。
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を重合反応により直接製造する場合には、例えば4−メチル−1−ペンテンおよび炭素原子数2〜20のオレフィンの仕込量、重合触媒の種類、重合温度、重合時の水素添加量などを調整することにより、融点、立体規則性および分子量等を制御する。4−メチル−1−ペンテン系重合体の重合反応により製造する方法は、公知の方法であってよい。例えば、チーグラナッタ触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用いた方法により製造され、好ましくはメタロセン系触媒を用いて製造されうる。一方、4−メチル−1−ペンテン系重合体を、より高分子量の4-メチル-1-ペンテン系重合体を熱分解して製造する場合には、熱分解の温度や時間を制御することで、所望の分子量に制御する。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)は、前述のように製造したもの以外にも、例えば三井化学株式会社製TPX等、市販の重合体であってもよい。
(2)熱可塑性エラストマー(B)
本発明の包装用フィルムに含まれる熱可塑性エラストマー(B)は、本発明の包装用フィルム自体、すなわち少なくとも前述の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と混合している状態のものに対して示差走査熱量計(DSC)により測定される融点TmB2が100℃以下または実質的に融点TmB2が観測されないものであるか、前記(B)について走査熱量計(DSC)により測定される融点TmB1が100℃以下または実質的に融点TmB2が観測されないものである。
融点TmB1または融点TmB2を後述するヒートシールをする際の温度より低く調整するか、そもそも融点を有さない熱可塑性エラストマー、すなわち低結晶性かつ熱可塑性のエラストマーを用いることで、前記成形時の温度で熱可塑性エラストマー(B)と、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)が微分散したアロイ構造(相分散構造ともいう)を形成し、ガス透過性を大きく損なうことなく、フィルムの靭性とヒートシール性を向上させることができる。
熱可塑性エラストマー(B)単体の融点TmB1と、前記包装用フィルム中の熱可塑性エラストマー(B)の融点TmB2は、通常、ほぼ同じだが、前述の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)や後述する他の成分の結晶性が高い場合に、それらの結晶成分の影響により熱可塑性エラストマー(B)自体の融点が変化することがある。また同様に融点を有さない熱可塑性エラストマー(B)を用いても、フィルム中の融点TmB2が観測されることがある。通常、TmB1とTmB2の差は20℃以内になる。また融点TmB1が100℃以下または融点TmB1が実質的に観測されない熱可塑性エラストマー(B)を用いることで、上記融点TmB2が100℃以下または実質的に融点TmB2が観測されない包装用フィルムを得ることができる。熱可塑性エラストマー(B)としては、上記融点を有する熱可塑性エラストマーならば特に限定されないが、具体例としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。
オレフィン系エラストマーは、具体例として、プロピレン・α−オレフィン共重合体、すなわちプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。プロピレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは、好ましくは炭素数2〜20のα−オレフィンである。炭素数2〜20のα−オレフィンの例には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンおよび1−デセン等が含まれ、好ましくはエチレン、1−ブテンである。プロピレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィンは、1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。プロピレン・α−オレフィン共重合体は、より好ましくはプロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体である。
スチレン系エラストマーとは、ハードセグメントとしてポリスチレンと、ソフトセグメントであるポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンとポリイソプレンの共重合物、或いはそれらの水素添加物からなるものである。水素添加はポリブタジエンやポリイソプレンの一部のみであっても良いし、全てが水素添加されていても良い。このようなスチレン系エラストマーがカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基などの官能基により変性されていることにより良好な接着性を付与することができる。変性スチレン系エラストマーの市販品としては、「タフテック」(旭化成ケミカルズ社製、登録商標)、「クレイトン」(クレイトンポリマージャパン社製、登録商標)、「ダイナロン」(JSR社製、登録商標)、「セプトン」(クラレ社製、登録商標)、「SIBSTER」(株式会社カネカ製、登録商標)等が挙げられる。
オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマーは、従来公知の製造方法、例えばチーグラーナッタ触媒あるいはメタロセン系触媒の存在下に、前記エラストマーを構成する単量体(モノマー)を共重合させることで得ることができる。具体的には、プロピレン・α-オレフィン共重合体は、プロピレンと、プロピレン以外のα−オレフィンとを共重合させることにより得ることができる。
熱可塑性エラストマー(B)のJIS K7113−2に準拠して測定される23℃における引張弾性率は、1〜50MPaが好ましく、3〜45MPaがより好ましい。前記範囲よりも引張弾性率が小さいと、フィルムのハンドリング性が低下する。一方、前記範囲よりも引張弾性率が大きいと、本発明のフィルムの柔軟性や靭性が低下し、ヒートシール性が低下することが懸念される。
また熱可塑性エラストマー(B)のASTM DM1505に準拠して測定される密度は850〜980kg/m3であることが好ましく、860〜970kg/m3がより好ましい。
熱可塑性エラストマー(B)のASTM D1238に準拠して260℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と押出機内で混ざりやすく、共押出できる範囲であれば特に規定されない。後述するように熱可塑性エラストマー(B)のハンドリング性などを向上させるため、プロピレン(共)重合体(C)と熱可塑性エラストマー(B)とを混合させ混合物を作成した後、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と前記混合物を押出機内で混ぜる場合、熱可塑性エラストマー(B)とプロピレン(共)重合体(C)との混合物のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1〜50g/10minであり、より好ましく3〜40g/10minである。MFRが上記範囲であれば、比較的均一な膜厚に押出成形しやすい。
本発明の包装用フィルムに含まれる熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)の合計100重量部に対して1〜40重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましい。上記比率で、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とが含まれることで、後述するように成分Aと成分Bが適度に相分散し、例えば包装用フィルムとして本発明を用いた場合、ガス透過性を大きく損なうことなく、ヒートシール性を付与することができる。
本発明の包装用フィルムは、比較的結晶性が高い4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー組成物(B)とが相分離しそれぞれが分散している構造(相分散構造)をもつことが好ましい。具体的には、本発明の包装用フィルムの主面に垂直な切断面のTEM像(撮像範囲のフィルム厚さ方向の距離は15μm、かつ撮像面積は45μm)で海島構造または積層構造が観察され、前記海部が前記4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)から実質的に構成され、前記島部が前記プロピレン系エラストマー組成物(B)から実質的に構成される、相分散構造を有するのが好ましい。なお「実質的に構成される」とは、成分(A)または成分(B)のいずれかに相溶しやすい化合物を含んでもよいことを意味する。具体的には、後述する成分(C)は成分(B)と相溶しやすいため、成分(C)を含む本発明の包装用フィルムにおいては、島部分は成分(B)と成分(C)が相溶したものになる。
図1Aは、本発明の包装用フィルムのMD方向に平行な断面のTEM画像の一例であり、図1Bは、本発明の包装用フィルムのTD方向に平行な断面のTEM画像の一例である。図1Aおよび図1Bに示されるように、MD方向、TD方向のフィルム断面TEM像には、フィルム表面と平行な方向に伸びた明部、すなわち暗部に比べて電子密度が低い部分が見られる。
このような相分散構造は、本発明の包装用フィルムの断面を薄切片化して観察した透過型電子顕微鏡(TEM)画像により「明暗構造」として観察されうる。図1AのTEM画像では、例えば「明部」が、電子密度が相対的に低い4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A);「暗部」が、電子密度が相対的に高い熱可塑性エラストマー(B)ないし、熱可塑性エラストマー(B)後述するプロピレン(共)重合体(C)など比較的熱可塑性エラストマー(B)と相溶性が高く4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)との相溶性が低い化合物の混合物であると考えられる。
前記相分散構造が本発明の効果に及ぼすメカニズムは、必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。すなわち、前記のような相分離構造を有する包装用フィルムにガスが接触すると、嵩高く電子密度が低い4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)から実質的になる相である海部(連続相)を経由してガスが透過する。また成分Aから実質的になる相と成分Bから実質的になる相の間の界面の微細な隙間からガスが透過する。一方、成分Aに比べてガス透過性が低い熱可塑性エラストマー(B)から実質的になる相は島状に包装用フィルム中に分布しているため、フィルム中のガスの透過を大きく阻害しない。また後述するヒートシール時の加熱により本発明のフィルム表面近傍の熱可塑性エラストマー(B)から実質的になる島部分が溶解ないし軟化し、前記フィルム表面に広がるためヒートシール性が発現すると考えられる。
(3)プロピレン(共)重合体(C)
本発明の包装用フィルムは、プロピレン(共)重合体(C)をさらに含んでもよい。このようなプロピレン(共)重合体(C)を含むことで、原料の混練時あるいはフィルム成形時のブロッキングの抑制する効果やフィルム成形性を改善するなどの効果が期待できる。
プロピレン(共)重合体(C)は、実質的にはプロピレンの単独重合体であるが、プロピレン以外のα−オレフィンなどを微量含んでもよく、いわゆるホモポリプロピレン(hPP)、ランダムポリプロピレン(rPP)およびブロックポリプロピレン(bPP)のいずれでも良い。ポリプロピレンにおける、プロピレン以外のα−オレフィンの含有量は、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。
本発明の包装用フィルムにプロピレン(共)重合体(C)を含まれる場合は、本発明のフィルム自体、すなわち少なくとも前述の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)と成分Cが混合している状態のものに対して、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点TmC2が110℃〜175℃にあることが好ましく、120〜170℃がより好ましい。
実質的にプロピレン(共)重合体(C)のみなからなるプロピレン(共)重合体(C)単体の融点TmC1と、前記包装用フィルム中のプロピレン(共)重合体(C)の融点TmC2は、通常、ほぼ同じであるが、融点が低いまたは融点を実質的に有さない熱可塑性エラストマー(B)と、融点が高い4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)を混練して、分散構造を形成すると、TmC2がTmC1より高くあるいは低くなる場合があるが、通常、TmC1とTmC2の差は20℃以内である。
プロピレン(共)重合体(C)の含有量は、成分Aと成分Bと前記成分(C)の合計100重量部に対して、0.3〜30重量部であることが好ましく、0.5〜25重量部であることがより好ましい。プロピレン(共)重合体(C)の含有量が5重量部未満であると、熱可塑性エラストマー(B)がブロッキングしやすい場合がある。一方、20重量部を超えると、本発明のフィルムを包装用として用いた場合、ガス透過性やヒートシール性が低下する可能性がある。
(4)その他の成分
本発明の包装用フィルムは、上記の成分Aと成分Bおよび/または成分(C)から実質的になるのが前述の相分離構造を形成する上で好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂や添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例には、耐熱安定剤、耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、および帯電防止剤等が含まれる。添加剤の含有量は、本発明のフィルムを構成する樹脂組成物全体100質量部に対して0.0001〜10質量部とすることが好ましい。
(5)積層体
本発明の包装用フィルムは、他のフィルムと積層させた積層フィルム(積層包装用フィルムともいう)としても用いることができる。本発明のフィルムのガス透過性やヒートシール性を活かすため、ヒートシールにより固定される対象と接触させられるように、本発明の包装用フィルムを、積層包装用フィルムの少なくとも一方の主面の表面層(最外層ともいう)の一部または全表面に用いるのが好ましい。また前記フィルムのさらに表層に、ガス透過性を阻害しない程度に、後述する薄いスキン層を形成してもよい。また機械的な強度や耐熱性を調整するために、被成形材料と接触させない基材層を備えてもよい。
(スキン層)
スキン層は、後述する本発明のフィルムの製造時に形成される前記フィルム中の成分が偏在することで形成されるものであってもよいし、共押出法によって形成されるものであってよいし、前記包装用フィルムを製造後、さらに他のフィルムをラミネートして形成してもよく、塗布法などにより、液状の材料を塗工し乾燥させることで形成してもよく、特に限定されないが、スキン層はガス透過性やヒートシール性を有する材料で形成されていることが好ましく、具体的には、前述した4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)ないし成分Aの含有量が多い樹脂が例として挙げられる。
スキン層は、ガス透過性を損ねない程度の引張弾性率や厚さであることが好ましく、具体的には厚さが1〜10μm程度であることが好ましい。また積層包装用フィルムは、中間層を有していてもよい。前記中間層の少なくとも一方の主面には、本発明の包装用フィルムが備えられており、ヒートシール時には中間層は被成形材料に接触しないように用いるのが好ましい。
(基材層)
基材層は、本発明の積層包装用フィルムの機械的な強度などを調整するために用いられる。具体的には、プロピレン(共)重合体、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)および/またはプロピレン(共)重合体(C)との混合物であって前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10重量部未満の混合物、ポリエチレンテレフタラートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、およびこれらの混合物が例として挙げられる。これらの材質で形成された基材層と積層させることで、破れにくいなど、より包装に適した包装用フィルムとすることができる。
基材層の厚さは、通常、5〜40μmであり、好ましくは5〜25μm、更に好ましくは10〜25μmである。基材層の厚さが上記範囲内であると、耐破れ性が発揮される。また、基材層の厚さを上記範囲内とすることで、ガス透過性を大きく損ねることがない。
(接着層)
基材層と表面層との間には接着層を配置してもよい。接着層を配置することで、基材層と表面層の接着をより確実なものとし、使用時に剥離する等の不具合を効果的に抑制することができる。
接着層は、接着樹脂によって形成することができる。接着樹脂の具体例としては、少なくとも一部が不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の酸無水物によりグラフト変性された変性4−メチル−1−ペンテン系重合体;この変性4−メチル−1−ペンテン系重合体とα−オレフィン系重合体を含む混合物;ポリオレフィン系エラストマー等を挙げることができる。接着層の厚さは、ガス透過を阻害しない厚さであることが好ましく、具体的には4〜6μm程度である。
本発明の積層包装用フィルムの層構造としては、表面層を「A」、基材層を「B」、接着層を「C」、スキン層を「S」とすると、S/A(2層構造)、A/B(2層構造)、A/B/A(3層構造)、A/C/B(3層構造)、S/A/B(3層構造)、S/A/B/A/S(5層構造)等がある。なお積層体ではない本発明の包装用フィルムは、上記表記ではA(単層構造)と表記される。
本発明の包装用フィルムの好ましい厚さは特に限定されないが、10〜300μmであることが好ましく、50〜200μmであることが更に好ましい。包装用フィルムの厚さが10μm未満であると、取り扱い性が低下したり、剥離時に切れたりする場合がある。一方、300μm超であると、イージーピール性が低下する場合がある。本発明の包装用フィルムを用いた積層包装用フィルムの場合も、同様に、前記積層体全体の厚さは10〜300μmであることが好ましく、50〜200μmであることが更に好ましい。
本発明の包装用フィルムのJIS K7127に準拠して測定される23℃における引張弾性率は、60〜500MPaが好ましく、70〜400MPaがより好ましい。引張弾性率が小さすぎると、本発明の包装用フィルムのハンドリング性が低下して、前記フィルムが変形しやすくなる。また引張弾性率が前記範囲よりも大きいと、イージーピール性が損なわれる恐れがある。
2.包装用フィルムの製造方法
本発明の包装用フィルムは、任意の方法で製造されうるが、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)と、示差走査熱量計(DSC)で得られる融点TmB1が100℃以下または融点TmB1が実質的に観測されない熱可塑性エラストマー(B)とを含んでなり、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して10〜50重量部の溶融混練物を成形する工程を含む製造方法で製造するのが好ましい。
また具体的なフィルムの成形方法は、たとえば、1)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)のペレットと熱可塑性エラストマー(B)のペレットとを押出機で溶融混練し、押出成形して包装用フィルムを製造する方法(ドライブレンド法);2)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とを二軸押出機等で溶融混練してペレタイズしたメルトブレンド樹脂を、再度押出機にて溶融混練して押出成形して包装用フィルムを製造する方法(メルトブレンド法);3)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)を押出機等で溶融混練してペレタイズしたメルトブレンド樹脂を、プレス機で所定の厚みにプレスする方法(プレスフィルム法)などがある。
前記1)および2)の押出成形により包装用フィルムを製造する場合、押出温度は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とを均一に混練し、均一な厚みに成形できる温度であればよく、例えば230〜290℃程度とすることができる。押出成形は、例えばTダイやインフレーションダイ等を有する公知の押出機にて行うことができる。
前記3)のプレス成形により包装用フィルムを製造する場合、プレス条件は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とを溶融させて均一な厚みのシートに成形できる条件に設定されればよい。プレス温度は、例えば230〜290℃程度とすることができる。プレス成形は、公知のプレス機にて行うことができる。
また前述のプロピレン(共)重合体(C)を添加する場合は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)とは別に、プロピレン(共)重合体(C)を添加してもよいが、予め熱可塑性エラストマー(B)とプロピレン(共)重合体(C)を混練し混合物(以下、組成物(D)ともいう)を作成した後、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と混練した方が、包装用フィルムの製造がしやすい場合がある。これは室温近傍においても粘着性がある熱可塑性エラストマー(B)を単独ではハンドリングしにくく、またペレット状に成形し保存した場合、ペレット同士で固着する場合があるのに対し、融点が高いプロピレン(共)重合体(C)と成分Bとを予め混合し、組成物(D)を作成することで、粘着性を低下させハンドリング性などを向上させることができるためである。また予め前記相分散構造の島部分となる成分である組成物(D)を作成した後、前記相分散構造の海部となる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)とを混ぜてフィルムを製造することで、相分散構造を形成しやすくなると考えられる。
本発明の包装用フィルムは、前述の通り、優れたガス透過性とヒートシール性とを有する。このため、本発明のフィルムは、さまざまな物の包装にもちいることができるが、特に酸素ガスと反応し炭酸ガスを発生させる物、具体的には青果物などを包装するMA包装に好適である。果物など、酸素ガスの透過率が高すぎると、呼吸作用が活発に行なわれ、糖や酸などの味成分や栄養分が消費されてしまい鮮度が急激に低下する。一方、ガス透過度が低すぎると、呼吸作用が抑制され発酵が始まり、アルデヒドやエタノールが発生し、異臭が発生しやすくなる。このことから、青果物の種類や熟度により変化する鮮度保持に適切なガス組成を達成するため、適度なガス透過性とガス選択性を有するMA包装用フィルムとして、本発明のフィルムは好適に用いることができる。
3.包装用フィルムを用いた包装方法
本発明の包装用フィルムは、前述の青果物などの包装用フィルムとして好適に用いられる。本発明の包装方法は、青果物などの酸素を吸収あるいは消費し炭酸ガスを発生する被包装体を本発明の包装用フィルムで覆う第一の工程と、前記包装用フィルム同士をヒートシールする第二の工程と、を含む。
前記第一の工程では、青果物などの酸素を吸収あるいは消費し炭酸ガスを発生する被包装体を本発明の包装用フィルムの上に置き、前記被包装体を包装用フィルムで包み込む、または包装用フィルムを折り曲げて覆う。包む方法は、通常用いられる方法を採用することができ、特に限定されないが、人手で行なってもよいし既存の包装装置を用いて行なってもよい。
前記第二の工程では、第一の工程で被包装体を覆った包装用フィルムの重なりあった部分を加熱することでヒートシールを行なう。ヒートシール方法は、通常用いられる方法で行なわれ、特に限定されないが、インパルスシーラーなどによって実施される。またヒートシールする際には、前記包装用フィルムの重なり部分を、成分(B)の融点以上の温度に加熱した後、冷却する。これにより、主に成分(B)が溶解し融着することで、前記重なり部分が固定化され、シールされる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。
(1)4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)
拡張性基材フィルムに含まれる4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)として、表1に示される4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)(商品名 TPX DX310、三井化学(株)製)、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A2)(商品名 TPX MX002、三井化学(株)製)、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A3)(商品名 TPX MX004、三井化学(株)製)、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A4)(商品名 TPX RT31、三井化学(株)製)、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A5)(商品名 TPX DX845、三井化学(株)製)を用いた。さらに、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)〜(A5)の1)引張弾性率(室温)2)MFRを、以下のようにして測定した。その結果を表1に示す。
1)引張弾性率(室温)
ASTM−0638に準拠し、射出成形体について弾性率を測定した。
2)MFRの測定
ASTM D1238に準拠して、温度240℃または260℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
3)融点の測定
JIS K7121に準拠してピーク温度から求めた。
(2)熱可塑性エラストマー(B)
(合成例1)
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、100gの1−ブテン、および1.0mmolのトリイソブチルアルミニウムを常温で仕込んだ後、重合装置内の温度を40℃に昇温して、プロピレンで系内の圧力を0.76MPaになるように加圧した。次いで、重合装置内の圧力を、エチレンで0.8MPaに調整した。次いで、0.001mmolのジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドと、アルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)とを接触させたトルエン溶液を、重合装置内に添加し、内温40℃、エチレンで系内圧力を0.8MPaに保ちながら20分間重合させた後、20mlのメタノールを添加して重合反応を停止させた。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出させて、真空下130℃で12時間乾燥させて、36.4gの熱可塑性エラストマー(B1)を得た。
(合成例2)
プロピレン、エチレンおよび1−ブテンの共重合比を表2に示すように変更した以外は、合成例1と同様にして熱可塑性エラストマー(B2)を得た。
合成例1、2で得られた熱可塑性エラストマー(B1)〜(B2)の組成を表にまとめた。その結果を表2に示す。なお表中のmol%は、熱可塑性エラストマー(B)中のプロピレン、エチレン、1−ブテンの合計を100mol%とした場合のモル%である。
(3)組成物(D)の合成
熱可塑性エラストマー(B)とプロピレン(共)重合体(C)との混合物である組成物(D)を以下のようにして合成した。
(合成例3)
合成例1で得られた90重量部の熱可塑性エラストマー(B1)と、プロピレン(共)重合体(C)として10重量部のホモポリプロピレン(C1)(プライムポリマー製F107BV、融点=160℃、260℃でのMFR=14g/10分)とを200℃で2軸押出機にて混練し、組成物(D1)を得た。
(合成例4)
合成例2で得られた85重量部の熱可塑性エラストマー(B2)と、プロピレン(共)重合体(C)として15重量部のホモポリプロピレン(C1)(プライムポリマー製F107BV、融点=160℃、260℃でのMFR=14g/10分)とを混練した以外は、合成例4と同様にして組成物(D2)を得た。
得られた組成物(D1)〜(D2)のMFRを前述と同様にして測定した。また4)引張弾性率(室温)および5)密度以下のように測定し、融点は前記3)融点と同様にして測定した。それらの結果を表3に示す。
4)引張弾性率(室温)
JIS K7113−2に準拠し、試験温度を室温(23℃)、試験速度を200mm/分とし、フィルムのMD方向における弾性率を測定した。引張弾性率は、S−Sカーブにおいて、伸び量ゼロを起点とししたS−Sカーブの接線の傾きから算出した。
5)密度
ASTM D1505に準拠して測定した。
(合成例5)
96重量部の4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と、4重量部の合成例4で得られた組成物(D2)を260℃で2軸押出機にて混練し、混合物(E1)を得た。
(合成例6〜15)
合成例5において、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)、組成物(D)、さらにプロピレン(共)重合体(C)を表4および表5に示す割合で混練にした以外は、合成例5と同様にして、混合物(E2)〜(E10)を得た。得られた混合物(E1)〜(E10)のMFRを前述と同様にして測定した。その結果を表4に示す。

(実施例1)
包装用フィルムの原料として混合物E1を、フルフライト型のスクリューを備えた押出機に投入し、溶融混練させ、押出温度を260℃とし、溶融樹脂を単層Tダイで押出し成形した。
(実施例2〜10、比較例1〜2)
包装用フィルムの原料として混合物E1を表5や表6に示されるような原料に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用フィルムを得た。なお比較例1や2については、成分(A)のみを用いてフィルムを作成した。
(比較例3)
4−メチル−1−ペンテン共重合体(A1)と組成物(D2)を、それぞれ別のフルフライト型のスクリューを備えた押出機に投入し、それぞれの別の押出機内で溶融混練させた。次に、押出温度を230℃とし、(A1)の層と(D2)の層の2層の溶融樹脂を多層ダイ内で積層させて共押出し成形し、2層構造のフィルムを得た。
実施例および比較例で得られたフィルムの、4)引張弾性率(室温)を前述のように評価し、6)ガス透過率や7)ヒートシール性を以下のようにして評価した。これらの結果を表5および表6に示す。さらに一部の実施例のフィルムについて8)TEM観察を以下のようにして行った。これらの結果を図1Aおよび図1Bに示す。
6)ガス透過率の測定
JIS K7126−1(圧力センサー法)に準拠して評価した。具体的には、差圧法ガス透過率測定装置(東洋精機製作所製)を用いて、試験温度23℃、試験湿度0%RHにて、フィルム測定面積を5cmにして測定した。フィルム測定面積は、中央部に直径25mmの孔を開けたモダンコトロール社(モコン社)製の粘着材付きアルミマスクを2枚用意し、前記2枚のマスクで測定対象とするフィルムを挟み込むように積層して調整した。なお中央部の孔が2枚のマスクで重なるように配置している。
7)ヒートシール性評価
本発明の包装用フィルム2枚をそれぞれ二つ折りにし、汚れ防止のため厚さ100μmのテフロン(登録商標)フィルムの間に挟んだものを試験片とした。次に、前記試験片をヒートシール試験機(テスター産業株式会社製、熱傾斜ヒートシールテスターTP-701-G)を用いて、上部温度220℃、下部温度70℃、シール幅を10mm、シール圧力を0.2MPa、シール時間1秒で熱融着(ヒートシールともいう)した。次に、試験片から熱融着した本発明の包装用フィルム取出し、幅を15mmの熱融着したサンプルを、シール強度試験機(日本電産ランポ株式会社製、フォースゲージFPG)を用いて、引張速度100mm/min.の引張速度で剥離(ピールともいう)し、その最大強度をヒートシール強度とした。またフィルムのじん性(靭性)が低いと、前記剥離時にフィルムが破断したり、亀裂が生じる。このような剥離時の破断などがなく、シールしたフィルムが剥がれた場合は、易剥離性(イージーピール性ともいう)を「○」として評価した。本発明でいうところのヒートシール性とは、一定のヒートシール強度を有し、かつイージーピール性をも有することを意味する。
8)TEM観察
実施例3のフィルムの、厚み100μmの試料片を用意した。この試料片を、MD方向と平行方向とTD方向に平行方向とで切り出して得た断面を、それぞれ透過電子顕微鏡(TEM、日立製作所製H−7650(装置名))を用いて、10000倍率でそれぞれ観察した。図1Aは、実施例3のフィルムのMD方向に平行な断面TEM写真であり、図1BはフィルムのTD方向に平行な断面TEM写真である。

表5に示されるように、実施例1〜10のフィルムは、比較例1〜3のフィルムに比べて、一定のガス透過率と優れたヒートシール性があることがわかる。特に、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)からなるフィルムである比較例1〜3と実施例を比べると、実施例のフィルムは、シール強度が高い上に易剥離性があり、極めて優れたヒートシール性を有するため、包装用フィルムとして優れていることがわかる。実施例1〜4を比べると、成分(A)が減少するほど、ガス透過係数が低下することがわかる。このことから、本発明のフィルムでは包装する物の腐敗性などに応じて、成分(A)の添加量を調整することで、ガス透過率を調整できることがわかる。また図1Aと図1Bの断面TEM写真から、実施例3のフィルムは相分散構造を有することがわかる。なお前記TEM写真の明部(相対的に淡い灰色の部分)は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)から実質的になる相、暗部(相対的に濃い黒い部分)は、熱可塑性エラストマー(B)とプロピレン(共)重合体(C)とから実質的になる相であると考えられる。
本発明の包装用フィルムは、一定のガス透過性を有し、かつ、ヒートシール性に優れるので、包装用フィルムとして幅広く用いることができる。特に、本発明のフィルムは炭酸ガスと酸素ガスの透過率に差があるため、MA包装用に好ましく用いられる。

Claims (10)

  1. 4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜40重量部であり、かつ前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(B)に由来する融点TmB2が100℃以下または前記融点TmB2が実質的に観測されない包装用フィルム。
  2. 4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含むフィルムであって、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜40重量部であり、かつ前記(B)の示差走査熱量計(DSC)により測定される融点TmB1が100℃以下または前記融点TmB1が実質的に観測されない包装用フィルム。
  3. 熱可塑性エラストマー(B)が、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーのいずれか1種類以上のエラストマーからなる、請求項1ないし2に記載のフィルム。
  4. さらに、プロピレン(共)重合体(C)を含む請求項1に記載のフィルムであって、前記フィルムについて示差走査熱量計(DSC)により測定される前記(C)に由来する融点TmC2が110〜175℃の範囲内にある、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の包装用フィルム。
  5. プロピレン(共)重合体(C)をさらに含み、(A)と(B)と前記(C)の合計100重量部に対して前記(C)が0.3〜30重量部である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の包装用フィルム。
  6. 熱可塑性エラストマー(B)の密度が850〜980kg/mである、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の包装用フィルム。
  7. フィルムの主面に垂直な切断面のTEM像(撮像範囲のフィルム厚さ方向の距離は15μm、かつ撮像面積は45μm)で、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)から実質的に構成される相と、熱可塑性エラストマー(B)から実質的に構成される相の相分散構造が観察される、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の包装用フィルム。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の包装用フィルムを少なくとも一方の主面の最表面の一部ないし全部に備える積層包装用フィルム。
  9. 4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と、示差走査熱量計(DSC)で得られる融点TmB1が100℃以下または前記融点TmB1が実質的に観測されない熱可塑性エラストマー(B)とを含んでなり、前記(B)の含有量が(A)と(B)の合計100重量部に対して1〜20重量部の溶融混練物を成形する工程を含む、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の包装用フィルムの製造方法。
  10. 酸素を吸収あるいは消費し炭酸ガスを発生する被包装体を請求項1ないし8のいずれか一項に記載の包装用フィルムで覆う第一の工程と、前記包装用フィルム同士をヒートシールする第二の工程と、を含む、包装方法。
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