JP2012198769A - 機械要素部品の再使用判断方法 - Google Patents

機械要素部品の再使用判断方法 Download PDF

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Abstract

【課題】専門家によらなくても、機械要素部品が再使用可能か否かを判断できるようにする。
【解決手段】機械要素部品に、その機械要素部品の種類、製造時期、製造ロット、製造履歴のうちの少なくとも一つを含む識別情報を記録して外部から電磁的方法によりその識別情報を読み取り可能であるICタグを取り付けておき、このICタグを読み取れる点検装置の記憶部に、上記識別情報に対応した点検項目及びその判断基準を記録しておき、その機械要素部品に対応した点検項目を表示部に表示させ、結果情報を入力部から受け付けて、その結果情報を判断基準と対比して、再使用の可否を表示部に表示させるものとする。
【選択図】図2

Description

この発明は、機械要素部品のメンテナンスにあたり、再使用の可否を判断する方法に関する。特に、機械要素部品の使用現場などのメンテナンスの専門家がいない状況でも間違いのない判断を下せる方法に関する。
あらゆる機械は使用すれば摩耗し、劣化していくことが避けられない。そのため、継続的に使用するためにはきめ細かい診断と適切なメンテナンスが欠かせない。しかし、機械が複雑になるほど、機械要素部品を構成する構成部品の数は膨大になる。その膨大な数の構成部品の全てについて製造時の条件や製造時点を常に把握しておき、それぞれの構成部品に適した診断及びメンテナンスを行うことは現実的には困難であった。同種の構成部品であっても、製造条件によって性質も異なり、同一の基準で判断できない場合もあったからである。
一方、そういった機械の要素部品を管理する方法として、個々の要素部品にICタグを埋め込む方法が検討されている。ICタグは固有の識別情報を読み出すだけでなく。書き込みも可能であり、製造工程の属性や条件等を記録し、後からそれを情報として読み取ることができる。
例えば特許文献1には、要素部品を構成するそれぞれの構成部品についての材料や鍛造、熱処理といった製造工程、組立工程等の条件をICタグに記録して、構成部品のいずれかに取り付け、出荷時の任意時にICタグの記録情報を読み取って、材料や製造条件等の確認を行う機械要素商品の品質管理方法が記載されている。これによると、出荷後もICタグを読み取ることで、材料や加工条件までが把握できるため、不具合が生じた場合の原因究明等を容易に行うことができる。
特開2006−53670号公報
しかし、特許文献1に記載の方法は、製造メーカーや専門機関が検査する際には極めて有効であるが、複数の部品からなる機械の場合、個々の部品のそれぞれについての専門家が常に現場にいるわけではない。このため、機械を構成する要素部品ごとに、専門家を呼び寄せたり、その要素部品の製造メーカーに送って診断しなければならず、その移動の間は機械を使用することができず、使用者にとっては負担が大きかった。特に、遠隔地など輸送が困難であったり、輸送コストが負担しきれない場所で用いられる機械要素部品では、診断自体が不可能となる場合もあった。
そこでこの発明は、製造メーカーやメンテナンスの専門家が常駐しているような場所に送ることなく、使用現場やその近くにおいて手軽にかつ確実性が高い診断を行えるようにすることを目的とする。
この発明は、
機械要素部品に、その機械要素部品の種類、製造時期、製造ロット、製造履歴のうちの少なくとも一つを含む識別情報を記録して外部から電磁的方法によりその識別情報を読み取り可能であるICタグを取り付けておき、
上記機械要素部品を使用した後に点検して再使用可能か否か判断するにあたり、
上記ICタグの識別情報を読み取り可能な通信部と、上記識別情報に対応した点検項目及びその判断基準を記録した記憶部と、上記点検項目及び判断結果を表示可能な表示部と、上記点検項目についての結果情報を入力可能な入力部と、上記入力部から入力された上記結果情報を上記判断基準と対比して再使用の可否を判断して上記判断結果を得る判断部とを有する点検装置を用いて、
上記機械要素部品が有する上記ICタグに含まれる上記識別情報を上記通信部により読み取って、上記表示部に表示される上記点検項目に従って点検を行い、その点検項目を実行した上記結果情報を上記入力部に入力し、上記表示部に表示される上記判断結果によることで、上記の課題を解決したのである。
すなわち、この発明の要点は、専門家が介在しない場所でも機械要素部品の診断が行える点検装置とそのための環境を整えた点にある。この点検装置には、その機械要素部品の識別情報に対応した点検項目と、その点検項目の判断基準とが記録されてある。利用者がこの点検装置で機械要素部品のICタグを読み取ると、そのICタグの識別情報から、その識別情報に対応した、すなわち、その機械要素部品に適した点検項目が点検装置の表示部に表示される。利用者は機械要素部品の型番やロットなどについての専門知識を持たなくても、その表示された内容に従って点検を行えばよい。点検後に利用者がその結果情報を点検装置に入力すれば、点検装置は上記の判断基準に基づいて、その機械要素部品がまだ利用できるものであるか否か、すなわち再利用可能か否かを判断してその判断結果を表示部に表示する。これにより、専門家でない利用者が難しい判断を下す必要もなく、統一的な基準により使用の継続ができるか否かが判断できる。
点検項目を一つではなく複数件とし、一の点検項目を表示した際にはその一の点検項目についての上記結果情報の入力を受け付け可能とし、上記一の点検項目についての上記結果情報の入力を待って、続く他の点検項目を上記表示部に表示し、全ての上記点検項目についての上記結果情報の入力を待って、全ての上記判断基準についての判断を行った上で、上記判断結果を得るようにすると、本発明の利用者が迷うことなく順番に指示された通りの点検を行うことができるので、簡便でありながらより詳細かつ確実な点検が可能となる。
さらに有効な手段としては、再使用判断を行う機械要素部品の使用時間や使用条件からなる使用情報を利用する手段が挙げられる。この使用情報を上記入力部から入力可能とし、上記記憶部がその使用情報に応じて再使用の可否を判断するための基準である履歴判断基準を記憶してあり、上記判断部での判断において、上記使用情報と上記履歴判断基準との対比を併せて行うことで再使用の可否を判断して上記診断結果を得るようにすると、その場での点検のみならず、耐久時間や使用環境に応じた利用履歴も加味してより適切な判断が下せるようになる。
また、上記の再使用の可否を決定した後に、上記点検項目、上記使用情報、上記判断結果などを上記ICタグに書き込むようにしておくと、後々でそれらの内容を参照することができるので有益である。再使用する場合には、それまでの過去の経歴を後から参照でき、再使用を止める場合でも、その機械要素部品が何故再使用できないのかを後から知ることができるからである。上記点検項目、上記使用情報、上記判断結果は、全部でなくてもよく、必要に応じてそれらの一つ、あるいはそれらの一部を選択すればよい。
上記点検装置はバッテリーを有し、持ち運び可能であることが望ましい。電源が無かったり、電源の確保が違う場所であっても再使用の判断が容易にできるようになる。特に、人里離れた環境で用いる機械要素部品の診断の場合に有効である。
一方で、上記点検装置はネットワーク機能を有していてもよい。それにより、上記識別情報と、上記使用情報、上記判断結果、又はその両方とを、別途設けた機械要素部品管理データベースに送信して登録させるようにすると、機械要素部品管理データベースを参照することで、当該機械要素部品が現役で稼働しているか否かを一元管理することができるし、ICタグに入りきらない詳細な情報をまとめて保管し、利用することもできる。また、使用できなくなるまでの耐久時間について分析することもできる。
また、上記点検装置がネットワーク機能を有するのであれば、上記点検項目及びその判断基準を予め上記点検装置に記録させておかなくても、上記読取部で読み取った上記識別情報を元に、別途設けた点検項目管理データベースに送信し、そこに記録されている上記識別情報に対応した上記点検項目及びその判断基準を受信して再使用の判断を行うことができる。これにより、対象とする機械要素部品の数をほとんど無制限に増やすことができ、また、上記点検装置を製造した後に製造された機械要素部品にも対応可能となる。
上記機械要素部品が、さらに複数の構成部品からなる場合、上記機械要素部品自体だけでなく、それぞれの構成部品がICタグを有している場合、それぞれの構成部品の全ての判断基準を満たすか否かによって、上記機械要素部品の再使用の可否の判断を行うようにすると、詳細かつ確実性の高い診断を行うことができる。
こうして診断及び再使用判断を行うのに適した機械要素部品としては、例えば軸受装置が挙げられる。軸受装置を構成するシールリングや起動輪などの複数の構成部品のそれぞれにICタグが取り付けられており、それぞれの構成部品の形状や型番に適した点検と判断が行えるとよい。
複数の構成部品からなる上記機械要素部品についてそれぞれのICタグを読み取る場合には、上記構成部品ごとに分解した上で行うと、他の構成部品によってICタグが覆われている構成であっても問題なく読み取り、診断、判断を行うことができる。
なお、上記機械要素部品が金属部分を有する場合は、ICタグとして、金属部分に貼り付けたり、埋め込んだりしても読み取り及び書き込みが可能なICタグを用いる必要がある。
上記点検項目は、必ずしも測定のための専用装置を必要とするものでなくてもよく、目視などで判断したり、ハンマーで叩くなどの方法で判断できるものも含む。機械要素部品によっては、そのような点検で十分な場合があり、専門家がいない場所では専用装置が無い場合も多いからである。
この発明により、機械要素部品の診断を行うにあたり、専門家を呼び寄せたり、製造メーカーなどに返送したりすることなく、利用者が現場で確実性の高い診断を簡便に行うことができ、再使用が可能か否かの判断を高い精度で行うことができる。
この発明を実施する第一の実施形態の概略図 この発明を実施する第一の実施形態の構成図 (a)型番−項目対応テーブル、(b)点検項目テーブル、(c)使用情報入力項目テーブル 機械要素部品が構造部品ごとにICタグを有する場合の例図 この発明を実施するフローチャートの例図
以下、この発明の実施形態について図を用いて説明する。
この発明は、機械要素部品11に識別情報を記録したICタグ12を取り付けて、点検装置21からその識別情報を読み取り、この点検装置21を用いて機械要素部品11の診断を行い、その機械要素部品11が再使用可能か否かの判断を表示させる、機械要素部品の再使用判断方法である。図1はこの発明を実施している第一の実施形態の概略図であり、図2はICタグ12と点検装置21との概念図である。ここでは機械要素部品11としてころ軸受を例に挙げる。内輪の外部に面した一箇所にICタグ12が設けてある。
まず、機械要素部品11に取り付けたICタグ12について説明する。このICタグ12は、通信部41が外部からの電波を受けて起こす電磁誘導によって、制御部43が、記憶部42に記憶された情報を読み出し、また、記憶部42へ情報を書き込み可能であるいわゆるパッシブ型のICタグを用いることができる。長期間に亘って機械要素部品11に取り付けておき、メンテナンスの時のみ読み出し書き込みが必要であるため、電源を必要とするアクティブ型の利用は適さない。また、読み取りを容易にするため、接触型ではなく、数センチから1メートル程度の範囲で電波により通信できるものであることが望ましい。
このICタグ12には、機械要素部品11を製造する際に、その種類、製造時期、製造ロット、製造履歴のうち少なくとも一つを含む識別情報50を記録してある。これらは、テキストデータとしてそのまま記録してあってもよいし、点検装置21との間で規格化したコードとして記録しておいてもよいし、型番として記録しておいてもよい。いずれの形態であっても、その識別情報50を参照することで、その機械要素部品11に対して適切な点検項目51を点検装置21が選択できるようにしてあればよい。
また、ICタグ12の記憶部42には空き領域を設けておき、後述する結果情報53、判断結果54、使用情報55等の情報を書き込み可能であるとよい。
なお、機械要素部品11が金属部分を有するものである場合、通常のICタグ12を用いたのでは、金属部分に磁力線が干渉されて正常な読み取りや書き込みが出来ない場合がある。このため、機械要素部品11が金属部分を有し、ICタグ12がそれに干渉しうる箇所に取り付けられるものである場合には、ICタグとして、金属部分に貼り付けたり埋め込んだりしても読み取り、書き込みに対応した機種を使用する必要がある。
次に、点検装置21について説明する。点検装置21は、少なくとも、通信部32,記憶部33、表示部34、及び入力部35と、それらを制御する制御部31とを備える装置である。
前記の通信部32は、ICタグ12の通信部41と通信可能な装置であり、無線を発生するコイルとそのための制御回路とを含む。
前記の記憶部33は、不揮発メモリからなり、診断の対象となる機械要素部品11についての識別情報50と、それに対応した点検項目51及びその判断基準52を記録してある。制御部31は、識別情報50をキーとして、その機械要素部品11の条件に適した点検項目51を読み出し、その点検項目51についての判断基準52も読み出す。また、必要に応じて、履歴判断基準56も読み出す。
この点検項目51とは、文章や図画の形で記録されたものであり、後述する表示部34に表示して、利用者に対して具体的な点検方法を伝えるものである。基本的には、再使用の可否を判断するための点検であるため、外観から視認できるものの有無の確認を含む非破壊検査である必要がある。外観から肉眼、あるいは拡大鏡などを用いて確認できる事項としては、例えば、剥離、焼き付き、割れ、欠け、破損、錆、圧痕、電食、摩耗などの有無が挙げられる。また、機械要素部品11ごとに独特の点検項目が存在する場合もあり、例えば機械要素部品11が軸受ならば、保持器の破損、スミアリング、かじり、フレッティング、クリープ、ピーリングなども外観から有無を確認できる事項である。その他、検査機器を用いた非破壊検査としては、写真撮影後の画像処理によって上記の視認する事項を確認する方法や、寸法測定、重量測定、硬度測定、回転調子のほか、X線写真撮影、磁粉探傷、螢光探傷、過流探傷といった測定もできる。
これらの点検項目51について、表示部34に表示する内容は、上記のような単語だけでなく、その調べ方を文章や図画によってわかりやすく示すことができると望ましい。例えば、機械要素部品11が軸受である場合、「軌道面の剥離の有無を3倍以上の拡大鏡を用いて確認して下さい」といった具体的指示内容となる。その内容は、専門装置を必要としない目視やハンマー叩きでの聞き取りであったり、X線写真装置やスペクトル分析装置などの専門装置を必要として、出力結果を解析したりするものであってもよいが、特にこの発明の実施にあたり、専門装置を必要とせずに診断できる点検項目51のみからなると、専門家ではない利用者が現場に近い環境で本発明を実施するのに好ましい。
また、前記の判断基準52とは、前記の点検項目51で示された診断内容に応じて、機械要素部品11を再使用してもよいか否かを判断するための基準である。例えば、前記の点検項目51が「目視での剥離の有無の確認」「目視での錆の確認」「拡大鏡での圧痕の確認」「光源下での摩耗の有無の確認」「SEMでの剥離の有無の確認」といった「Yes」や「No」で受ける回答に対しては、例えばそれぞれ「No」であれば再使用の判断にあたりその項目は合格である、という設定となる。また、分析装置や測定装置で数値などが得られるような点検項目51である場合には、その数値に対して、上限や下限が設定されており、その設定された値の範囲であればその項目は合格である、という設定となる。
これらの内容は、識別情報50に対応した一つ又は複数のテーブルの形で記憶部33に記録されてあればよい。例えば図3に示すように、ICタグ12から受信した識別情報50(ここでは部品の型番とする。)から、型番−項目対応テーブルを参照して実行すべき点検項目51の項目番号を求め、その項目番号で点検項目テーブルを検索して、点検酷目51の表示内容と、それに対応した判断基準を読み出す、といった方式が挙げられる。
この他に、前記の記憶部33には、点検項目51で要求され、後述する入力部35から入力される、使用情報55に応じて再使用の可否を判断するための基準である履歴判断基準56が記録されており、制御部31は、使用情報55が入力された場合にこの履歴判断基準56を参照して判断を行う。使用情報55とは、例えば、その機械要素部品11の使用時間や、使用時の荷重、使用時の回転速度、使用時の温度条件、使用の頻度などの使用条件といった、その時点における診断内容ではなく、その診断の前における使用の具体的内容である。履歴判断基準56の具体的内容は、上記の使用情報55に対して、使用時間が一定時間以上であれば再使用を不可としたり、荷重が一定値以上の使用回数が一定値以上であれば不合格とする、といった内容である。その例を図3(c)に示す。
前記の表示部34は、一般的な液晶ディスプレイなどであるとよい。また、上記の点検項目51がテキストデータや図画データだけでなく音声データも含む場合には、表示部34はスピーカーを備えていてもよい。ここに、利用者は表示部34に表示された点検項目51に従って点検を行う。
前記の入力部35は、タッチパネルやボタン、キーボードなど、少なくともYes/Noの判断を入力できるものであることが必要であり、数値や文字入力ができるものであるとより好ましい。利用者はこの入力部35から、上記の点検項目51に従って行った点検の結果の正否や測定結果の数値などである結果情報53を入力する。
前記の制御部31は、入力部35から結果情報53が入力されると、予め読み込んでおいた、又はその時点で読み込む判断基準52に従って、条件を満足するか否か判断する判断部36として動作する。点検項目51が一つである場合には、その判断部36としての結果に従い、条件が合格であればその機械要素部品11が再使用可能であると判断し、その判断結果54を得て、表示部34へ出力する。
一方、点検項目51が複数ある場合は、一つの点検項目51についての結果情報53の入力が終わったら、次の点検項目51を表示して、それについての結果情報53の入力を受け付ける状態で待機する。これを、全ての点検項目51について行う。上記の判断部36としての動作は、全ての点検項目51についての結果情報53が入力され終わってから、一括して判断を行ってもよいし、一つ一つの結果情報53が入力されるごとに判断を行ってもよい。
なお、上記表示部34の表示領域に余裕があるのであれば、複数の点検項目51を同時に表示させて入力を受け付けることも可能であるが、誤入力防止の観点から、点検項目51を一つ一つ表示することが好ましい。
また、前記の制御部31は、判断部36として、使用情報55について、履歴判断基準56に基づく判断を実行する。
さらにその上で前記の制御部31は、全ての点検項目51についての結果情報53と、使用情報55が入力され、全ての判断基準52及び履歴判断基準56についての判断が終わったら、それらの値を総合して、診断した機械要素部品11の再使用が可能であるか否かの判断を行う。基本的には一つでも条件を満たさない項目があれば再使用を不可とするものであるが、部品の種類と診断内容によっては、全点検項目のうち一定数以上の項目について条件をクリアすれば再使用を可とする場合もある。これは、機械要素部品11の機能や性質、属性により変わってくるものである。例えば、図示しないが、型番−項目対応テーブルに、列挙されたうちの何項目が満足すれば合格とする、といった条件を付与してもよい。
そのようにして得られた最終的な再使用の可否である判断結果54を表示部34に表示して、診断は終了する。これにより利用者はその機械要素部品11が再使用可能か否かの情報を得る。
その後、必要に応じて、機械要素部品11のICタグ12に、結果情報53,判断結果54、使用情報55を書き込んでもよい。判断結果54を書き込んでおくと、その機械要素部品11が再使用を認められたものであるか否かを、後からでも読み取って知ることができる。特に、再使用不可とされた機械要素部品11を再度使ってしまうエラーの防止に役立つ。また、結果情報53や使用情報55を記録しておくと、使用履歴、診断履歴として残すことができ、二回目以降の再使用のための診断にあたって、これらを前提の値として利用することもできる。
さらに、その他の機能について説明する。点検装置21が、ネットワーク機能部37を有する場合、記憶部33が揮発性メモリであってもよい。その場合、前記の点検項目51,判断基準52、履歴判断基準56等は、通常時には記録されていなくても、必要に応じてネットワーク機能部37を通じて、ネットワーク81を介して、外部に設けた点検項目管理データベース71に識別情報50を送信し、識別情報50に対応した点検項目51、判断基準52,履歴判断基準56等をダウンロードし、記憶部33に一時的に記憶して、上記と同様の判断を実行するようにすると好ましい。これにより、点検装置21が販売された後に製造された機械要素部品11についても対応することができる。ネットワーク機能部37自体は、ネットワーク上に存在する点検項目管理データベース71にアクセスできるものであれば、有線LANや無線LANを通じたインターネット接続機能であってもよいし、移動体通信機能であってもよい。一方、点検項目管理データベース71は、機械要素部品11の製造メーカーや販売代理店などが管理して、購入者に対してサービスを提供するとよい。
また、点検装置21がネットワーク機能部37を有する場合、再使用の判断途中、又は判断後に、識別情報50と共に、使用情報55や判断結果54などを、ネットワーク81上に設けた機械要素部品管理データベース61に送信すると好ましい。機械要素部品管理データベース61では、送信されてきたそれらの情報をテーブルに登録し、必要に応じて呼び出し可能とする。この機械要素部品管理データベース71を検索することで、例えば利用者の属する企業は、所有する機械要素部品11が現在使われているか、どの程度使用されているかといった情報を得ることができる。
なお、これらのデータベースは、ネットワーク81上で利用可能なサーバで記録、実行されるソフトウェアであるとよい。
さらにその他の機能として、点検装置21は、バッテリー39を内蔵していると好ましい。それにより、電源の無い、現場に近い場所で簡便に再使用の可否を判断することができる。
以上の実施形態における判断は、機械要素部品11が複数の構成部品からなるものであっても、ICタグ12に記録してある識別情報50からそれらの構成部品の全てについての点検項目51を参照可能であり、一括して再使用の可否を判断できるものである。
機械要素部品11が複数の構成部品からなり、それらの構成部品が個々にICタグを有する実施形態について説明する。図4に、内輪13、外輪14,保持器15,転動体16からなるころ軸受である機械要素部品11Aの断面図を示す。内輪13,外輪14,保持器15のそれぞれには、ICタグ12a,12b,12cが取り付けてある。
このような機械要素部品11Aについて再使用の可否を判断する場合、例えば、最初に点検装置21により、ICタグ12a,12b,12cの全てについて識別情報50a〜50cを読み取る。このとき、ICタグ12cは内輪13と外輪14との間の読み取りが困難な場所にあるため、ころ軸受を一旦分解して読み取るとよい。点検装置21は、それぞれのICタグ12a〜12cに記録された識別情報50a〜50cについての点検項目との対応テーブルを記憶部33に持つか、あるいは、ネットワーク上からダウンロードしてきて、一時的に保有している。その上で点検装置21は、全ての識別情報50a〜50cについても点検項目51を順に表示していき、全ての結果情報53の入力を受け付けて、一時的に記憶部33に保持する。最終的に全ての結果情報53が入力し終わった時点で、一時的に記憶部33に保持したそれらの結果情報53について、判断を行う。もちろんこのとき、使用情報54についての履歴判断基準56による判断を併用してもよい。それらの判断を総合して、判断結果54を得て、表示部34に表示する。さらに、必要に応じて、個々のICタグ12a〜12cへ使用情報55や判断結果54の書き込みを行ったのち、再使用可能であれば組み立てて再使用する。
次に、この発明にかかる再使用判断方法を実行する手順の例をフローチャートに従って説明する。この例とするフローチャートを図5に示す。
まず(S101)、利用者は、点検装置21を機械要素部品11のICタグ12に近づけて、識別情報50を読み取らせる(S102)。制御部31は読み取った識別情報50をキーとして記憶部33内のテーブルを検索し、点検項目51と判断基準52と履歴判断基準56を読み出す(S103)。なお、ここで点検項目51は、入力を求める使用情報55についての情報も含むものである。
制御部31は、まず使用情報55についての入力を促すメッセージを表示部34に表示させる(S104)。制御部31は、入力部35から、表示された情報に対応した使用情報55が入力されたら(S105)、形式上問題が無いデータかどうか判断する(S106)。例えば、Yes/Noで尋ねる点検項目に対して数値データが入力された場合にはエラーであるし、自然数しか採らないはずのデータで小数や負の数が入力されたような場合もエラーであると判断される。この場合、(S104)に戻る。形式上問題がないデータであれば、制御部31はその使用情報55を記憶部33に一時保存する(S107)。必要な使用情報55が複数あるのならば(S108)、次の使用情報55について、ここまでの手順(S104〜S107)を繰り返す。
次に(S111)制御部31は、点検項目51のうち、一つめの点検項目について表示部34に表示する(S112)。利用者はこの表示部34の表示内容に従い、目視や測定機器による点検を行う。点検が終わったら、入力部35から結果情報53が入力される(S113)。制御部31は、上記と同様に、その入力された情報が形式上問題が無いデータかどうかを判断し(S114)、問題がなければ制御部31はその結果情報53を記憶部33に一時保存する(S115)。nの値が点検項目51の数に一致すれば、そこで点検は終了となり(S116)、それ未満であれば(S117)、次の点検項目51を表示する(S112〜)。
点検が終了したら(S116)、制御部31(判断部36)は、記憶部33に一時保存した使用情報55及び結果情報53を読み出し、履歴判断基準56及び判断基準52と照らして、全ての項目が条件を満たしているか否かをチェックする(S121)。全ての結果が条件を満たせば、判断結果54は「正」となり、そうでなければ判断結果54は「否」となる。制御部31は、得られた判断結果54を表示する(S122)。利用者は判断の完了を受けて、必要に応じて点検装置21をICタグ12に近づけて、判断結果54と使用情報55とをICタグ12に書き込む(S123)。
以上で、一つの機械要素部品11についての再使用の判断を行うことができる(S131)。
11,11A 機械要素部品(軸受装置)
12、12a、12b、12c ICタグ
13 内輪
14 外輪
15 保持器
21 点検装置
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 入力部
36 判断部
37 ネットワーク機能部
39 バッテリー
41 通信部
42 記憶部
43 制御部
50,50a,50b,50c 識別情報
51 点検項目
52 判断基準
53 結果情報
54 判断結果
55 使用情報
56 履歴判断基準
61 機械要素部品管理データベース
71 点検項目管理データベース
81 ネットワーク

Claims (12)

  1. 機械要素部品に、その機械要素部品の種類、製造時期、製造ロット、製造履歴のうちの少なくとも一つを含む識別情報を記録して外部から電磁的方法によりその識別情報を読み取り可能であるICタグを取り付け、
    上記機械要素部品を使用した後に点検して再使用可能か否か判断するにあたり、
    上記ICタグの識別情報を読み取り可能な通信部と、上記識別情報に対応した点検項目及びその判断基準を記録した記憶部と、上記点検項目及び判断結果を表示可能な表示部と、上記点検項目についての結果情報を入力可能な入力部と、上記入力部から入力された上記結果情報を上記判断基準と対比して再使用の可否を判断して上記判断結果を得る判断部とを有する点検装置を用いて、
    上記機械要素部品が有する上記ICタグに含まれる上記識別情報を上記通信部により読み取って、上記表示部に表示される上記点検項目に従って点検を行い、その点検項目を実行した上記結果情報を上記入力部に入力し、上記表示部に表示される上記判断結果により、上記機械要素部品の再使用の可否をその場にて決定する、機械要素部品の再使用判断方法。
  2. 上記点検項目が複数件であり、一の点検項目を表示した際にはその一の点検項目についての上記結果情報の入力を受け付け可能とし、上記一の点検項目についての上記結果情報の入力を待って、続く他の点検項目を上記表示部に表示し、
    全ての上記点検項目についての上記結果情報の入力を待って、全ての上記判断基準についての判断を行った上で、上記判断結果を得ることを特徴とする、請求項1に記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  3. 上記点検装置が、上記通信部からの上記識別情報の読み取りの後、上記機械要素部品の使用時間、使用条件、又はその両方を含む使用情報を上記入力部から入力可能であり、
    上記記憶部は、上記使用情報に応じて再使用の可否を判断するための基準である履歴判断基準を記憶してあり、
    上記判断部での判断において、上記使用情報と上記履歴判断基準との対比を併せて行うことで再使用の可否を判断して上記判断結果を得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  4. 上記決定の後に、上記結果情報、上記使用情報、及び上記判断結果の少なくとも一つ又はその一部を、上記通信部から上記ICタグに書き込むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  5. 上記点検装置がバッテリーを有し、持ち運び可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  6. 上記点検装置がネットワーク機能部を有し、上記識別情報と、上記使用情報、上記判断結果、又はその両方とを、別途設けた機械要素部品管理データベースに送信して登録させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  7. 上記点検装置がネットワーク機能部を有し、上記識別情報を上記通信部で読み取って、別途設けた点検項目管理データベースに送信し、上記識別情報に対応した上記点検項目及びその判断基準を受信して上記記憶部に一時的に記憶させるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  8. 上記機械要素部品が、さらに複数の構成部品からなり、それぞれの構成部品について上記ICタグを有しており、上記再使用の可否の判断は、上記機械要素部品を構成する上記サブ部品の全ての判断基準を満たすか否かによって行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  9. 上記機械要素部品は軸受装置であり、上記ICタグはその軸受装置の複数の構成部品に取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  10. 上記機械要素部品を、上記構成部品ごとに分解した上でそれぞれの上記ICタグを読み取ることを特徴とする請求項8又は9に記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  11. 上記機械要素部品が少なくとも金属部分を有し、上記ICタグが金属部分に貼り付け又は埋め込みした状態で読み取り及び書き込みが可能な対応ICタグである、請求項1乃至10のいずれかに記載の機械要素部品の再使用判断方法。
  12. 上記点検項目の全てが、測定のための専用装置を用いることなく判断可能であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の機械要素部品の再使用判断方法。
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