上述した装置では、基材に対して第1印刷層,第2印刷層,カモフラージュパターン層の3層を3回に亘るオフセット印刷により行なっている。紙やフィルムなどの媒体に複数層の画像の印刷をインクジェットプリンターによって行なう場合には、複数回の印刷を同一の媒体に行なうように制御するものが考えられる。例えば、3層の画像の印刷を行なう場合には、1回目の印刷として通常の印刷と同様に第1層の画像を印刷し、その後、媒体を排出するのではなく、媒体を印刷開始時の位置(ホームポジション)に戻し、2回目の印刷として第1層の画像に重ねて第2層の画像を印刷し、再び、媒体をホームポジションに戻して第2層の画像に重ねて第3層の画像を印刷する、ことが考えられる。即ち、複数層の印刷については、同一の媒体に通常の印刷を複数回に亘って繰り返すことによって行なうことができる。この場合、複数層に亘ってホームポジションに戻す操作が必要になり、画像の印刷に時間を要し、生産性が低いという課題がある。
本発明の画像処理装置及びこれを備える画像形成装置並びに画像処理方法は、媒体への複数層の画像の形成を迅速に行なうことを主目的とする。
本発明の画像処理装置及びこれを備える画像形成装置並びに画像処理方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の第1の画像処理装置は、
画像形成用データに基づいて媒体に対して所定幅のパス毎に画像を形成する画像形成装置に用いられる前記画像形成用データを作成処理する画像処理装置であって、
前記媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを取得する取得手段と、
前記取得した層毎の画像層データから前記所定順に同一のパスのデータを取り出して前記所定順に合成してパスデータを作成すると共に各パスデータの間に次のパスに移動するための信号を埋め込んで画像形成用データを作成する画像形成用データ作成手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第1の画像処理装置では、媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを取得し、取得した層毎の画像層データから所定順に同一のパスのデータを取り出して所定順に合成してパスデータを作成し、作成した各パスデータの間に次のパスに移動するための信号を埋め込んで画像形成用データを作成する。これにより、同一のパスに対しては複数層に亘る画像形成を行なってから次のパスに移動することを繰り返して複数層の画像層データによる画像形成を行なうことができる。したがって、媒体に第1層の画像を形成した後に媒体を画像形成開始時の位置(ホームポジション)に戻し、第1層に形成された画像に重ねて第2層の画像を形成するような、層の画像の形成とホームポジションへの戻しとを繰り返して複数層の画像を形成するものに比して、ホームポジションへの戻しに必要な時間と第2層以上の層数におけるパスの移動に必要な時間とを不要なものとすることができ、複数層の画像の形成を迅速に行なうことができる。
こうした本発明の第1の画像処理装置において、前記画像形成用データ作成手段は、前記画像層データにおける対応するパスに画像のデータがないとき、前記所定順の次の画像層データがあるときには次の画像層データにおける対応するパスのデータを取り出し、前記所定順の次の画像層データがないときにはそれまでに取り出したパスのデータを前記所定順に合成して前記パスデータを作成する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、パスのデータが存在しない画像層データがある場合でも、複数層の画像の形成を行なうことができる。
本発明の第2の画像処理装置は、
画像データから媒体に対して所定幅のパス毎のデータを入力して画像形成する画像形成実行手段を有する画像形成装置における前記パス毎のデータを作成処理する画像処理装置であって、
前記媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを前記画像データとして取得する取得手段と、
前記取得した層毎の画像層データから前記所定順に画像形成に係るパスのデータを取り出すと共に該取り出したパスのデータを前記所定順に前記画像形成実行手段に出力するデータ処理手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第2の画像処理装置では、媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを画像データとして取得し、取得した層毎の画像層データから所定順に画像形成に係るパスのデータを取り出すと共に取り出したパスのデータを所定順に画像形成実行手段に出力する。これにより、同一のパスに対しては複数層に亘る画像形成を行なってから次のパスに移動することを繰り返して複数層の画像層データによる画像形成を行なうことができる。したがって、層の画像の形成とホームポジションへの戻しとを繰り返して複数層の画像を形成するものに比して、ホームポジションへの戻しに必要な時間と第2層以上の層数におけるパスの移動に必要な時間とを不要なものとすることができ、複数層の画像の形成を迅速に行なうことができる。
こうした本発明の第2の画像処理装置において、前記データ処理手段は、前記画像層データにおける対応するパスに画像のデータがないとき、前記所定順の次の画像層データがあるときには次の画像層データにおける対応するパスのデータを取り出し、前記所定順の次の画像層データがないときには前記所定順の最初の画像層データにおける次のパスのデータを取り出す手段である、ものとすることもできる。こうすれば、パスのデータが存在しない画像層データがある場合でも、複数層の画像の形成を行なうことができる。
本発明の画像形成装置は、本発明の第1の画像処理装置または第2の画像処理装置、即ち、画像形成用データに基づいて媒体に対して所定幅のパス毎に画像を形成する画像形成装置に用いられる前記画像形成用データを作成処理する画像処理装置であって、前記媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを取得する取得手段と、前記取得した層毎の画像層データから前記所定順に同一のパスのデータを取り出して前記所定順に合成してパスデータを作成すると共に各パスデータの間に次のパスに移動するための信号を埋め込んで画像形成用データを作成する画像形成用データ作成手段と、を備える本発明の第1の画像処理装置、または、画像データから媒体に対して所定幅のパス毎のデータを入力して画像形成する画像形成実行手段を有する画像形成装置における前記パス毎のデータを作成処理する画像処理装置であって、前記媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを前記画像データとして取得する取得手段と、前記取得した層毎の画像層データから前記所定順に画像形成に係るパスのデータを取り出すと共に該取り出したパスのデータを前記所定順に前記画像形成実行手段に出力するデータ処理手段と、を備える本発明の第2の画像処理装置を備え、更に、前記パスの画像形成と共に画像形成に係る着色剤を媒体に定着させる定着手段を備えることを要旨とする。
本発明の画像形成装置は、本発明の第1の画像処理装置または第2の画像処理装置を備えるから、本発明の第1の画像処理装置または第2の画像処理装置が奏する効果、即ち、同一のパスに対しては複数層に亘る画像形成を行なってから次のパスに移動することを繰り返して複数層の画像層データによる画像形成を行なうことができるという効果や複数層の画像の形成を迅速に行なうことができるという効果を奏することができる。また、本発明の画像形成装置は、パスの画像形成と共に画像形成に係る着色剤を媒体に定着させる定着手段を備えるから、定着不足により画像がにじむなどの不都合を抑止することができる。
こうした本発明の画像形成装置において、前記着色剤は紫外線照射により定着する着色剤であり、前記定着手段は、着色剤による画像形成の直後に紫外線照射を行なう手段である、ものとすることもできる。
本発明の第1の画像処理方法は、
画像形成用データに基づいて媒体に対して所定幅のパス毎に画像を形成する画像形成装置に用いられる前記画像形成用データを作成処理する画像処理方法であって、
(a)前記媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを取得するステップと、
(b)前記取得した層毎の画像層データから前記所定順に同一のパスのデータを取り出して前記所定順に合成してパスデータを作成すると共に各パスデータの間に次のパスに移動するための信号を埋め込んで画像形成用データを作成するステップと、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第1の画像処理方法では、媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを取得し、取得した層毎の画像層データから所定順に同一のパスのデータを取り出して所定順に合成してパスデータを作成し、作成した各パスデータの間に次のパスに移動するための信号を埋め込んで画像形成用データを作成する。これにより、同一のパスに対しては複数層に亘る画像形成を行なってから次のパスに移動することを繰り返して複数層の画像層データによる画像形成を行なうことができる。したがって、層の画像の形成とホームポジションへの戻しとを繰り返して複数層の画像を形成するものに比して、ホームポジションへの戻しに必要な時間と第2層以上の層数におけるパスの移動に必要な時間とを不要なものとすることができ、複数層の画像の形成を迅速に行なうことができる。
本発明の第2の画像処理方法は、
画像データから媒体に対して所定幅のパス毎のデータを入力して画像形成する画像形成実行手段を有する画像形成装置における前記パス毎のデータを作成処理する画像処理方法であって、
(a)前記媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを前記画像データとして取得するステップと、
(b)前記取得した層毎の画像層データから前記所定順に画像形成に係るパスのデータを取り出すと共に該取り出したパスのデータを前記所定順に前記画像形成実行手段に出力するステップと、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第2の画像処理方法では、媒体に対して所定順に複数層に重ねて画像形成するための層毎の画像層データを画像データとして取得し、取得した層毎の画像層データから所定順に画像形成に係るパスのデータを取り出すと共に取り出したパスのデータを所定順に画像形成実行手段に出力する。これにより、同一のパスに対しては複数層に亘る画像形成を行なってから次のパスに移動することを繰り返して複数層の画像層データによる画像形成を行なうことができる。したがって、層の画像の形成とホームポジションへの戻しとを繰り返して複数層の画像を形成するものに比して、ホームポジションへの戻しに必要な時間と第2層以上の層数におけるパスの移動に必要な時間とを不要なものとすることができ、複数層の画像の形成を迅速に行なうことができる。
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である画像形成処理装置としての機能を有する加飾成形システム10の構成の概略の一例を示す構成図である。本実施形態の加飾成形システム10は、図示するように、透明な樹脂製のシート(例えばポリフィルム)として形成された媒体Sがロール状に巻かれてなるロール36から媒体Sを引き出してインクを吐出することにより画像を印刷するプリンター20と、画像が印刷された後の媒体Sを所望の三次元形状に立体成形する成形装置40と、プリンター20と通信可能に接続され媒体Sに形成すべき画像を入力して印刷データに処理して出力する画像処理装置の機能を有する汎用のパソコン(PC)50とを備えている。
プリンター20は、装置全体を制御するコントローラー21と、インクを媒体Sに吐出する印刷機構25と、ロール36から媒体Sを引き出しながら搬送する送り機構32とを備えている。コントローラー21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムを記憶しデータを書き換え可能なフラッシュメモリー23と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM24などを備えている。このコントローラー21は、PC50からの印刷データを受信すると共に印刷処理を実行するよう印刷機構25や送り機構32を制御する。印刷機構25は、キャリッジベルト31によりキャリッジ軸30に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ26と、インクに圧力をかけノズル27からインク滴を吐出する印刷ヘッド28と、各色のインクを収容したカートリッジ29とを備えている。印刷ヘッド28は、キャリッジ26の下部に設けられており、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式により、印刷ヘッド28の下面に設けられたノズル27から各色のインクを吐出して媒体S上にドットを形成するものである。なお、インクへ圧力をかける機構は、ヒーターの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。カートリッジ29は、本体側に装着され、紫外線の照射により媒体Sに定着する着色剤としてシアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),ブラック(k)のcmykの各色のインクにクリア(cl)とホワイト(w)のインクを個別に収容しており、この収容したインクを図示しないチューブを介して印刷ヘッド28へ供給する。印刷ヘッド28におけるノズル27の配置の一例を図2に示す。図示するように、印刷ヘッド28には、左からブラック(k),シアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),クリア(cl),ホワイト(w)の順に直線状の複数の吐出孔として形成された6列のノズル列(総称としてのノズル27)が形成されている。また、印刷ヘッド28の各ノズル列の両サイドに紫外線を照射するランプを内蔵した紫外線照射部UVa,UVbが取り付けられている。この紫外線照射部UVa,UVbは、印刷ヘッド28が図2において左側から右側に移動しながら印刷するときには紫外線照射部UVaからの紫外線の照射によりノズル列から媒体Sに吐出したインクを直ちに媒体Sに定着し、印刷ヘッド28が図2において右側から左側に移動しながら印刷するときには紫外線照射部UVbからの紫外線の照射によりノズル列から媒体Sに吐出したインクを直ちに媒体Sに定着する。なお、クリア(cl)は、透明であり、着色されていないため、インクとして考えるのは不適であるとの考えもあるが、本実施形態ではインク(透明インク)として取り扱うものとする。また、送り機構32は、駆動モーター33により駆動されて媒体Sを搬送する送りローラー34などを備えている。
成形装置40は、媒体Sの上方側に配置される上型部41と、媒体Sの下方側に配置される下型部42とを備えている。上型部41や下型部42には、図示しない金型がセットされており、上下の金型で媒体Sを挟み込むことにより媒体Sを三次元形状に成形する。なお、成形装置40による成形は、加熱成形であってもよいし、加圧成形であってもよい。また、この成形装置40にセットされる金型は、複数種の異なる金型を交換可能なものとした。なお、媒体Sは、成形前あるいは成形後に、プリンター20と成形装置40との間に配置された切断機37により所定長さに切断される。
PC50は、装置全体の制御を司るコントローラー51と、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリであるHDD55と、プリンター20などの外部機器とのデータの入出力を行うネットワークインターフェイス(I/F)56と、ユーザーが各種指令を入力するキーボードやマウスなどの入力装置57と、各種情報を表示するディスプレイ58とを備えている。コントローラー51は、各種制御を実行するCPU52や各種制御プログラムを記憶するフラッシュメモリー53、データを一時的に記憶するRAM54などを備えている。このPC50は、ディスプレイ58に表示されたカーソルなどをユーザーが入力装置57を介して入力操作すると、その入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。コントローラー51やHDD55、I/F56、入力装置57、ディスプレイ58などは、バス59によって電気的に接続され、各種制御信号やデータのやり取りができるよう構成されている。
このPC50のHDD55には、図示しないアプリケーションプログラムや変形画像処理プログラム60,印刷ドライバー70などが格納されている。変形画像処理プログラム60は、媒体Sの成形に伴う変形により成形品(成形後の媒体S)の表面に形成されている画像(文字や模様などを含む)に生じる形状ずれや色ずれを補正するために用いられるプログラムや、画像を綺麗にはっきりと見栄えよく見せるために画像の下地として白色の白層を形成するプログラムや、背面からの点灯により画像の一部を浮き上がらせて見せるために他の部分を遮光する遮光層を形成するプログラムなどにより構成されている。この変形画像処理プログラム60は、三次元の画像(絵柄)モデルを編集する3D絵柄編集部61と、成形に伴う形状ずれを補償する形状補償部62と、成形に伴う色ずれを補償する色補償部63と、を有している。
3D絵柄編集部61は、成形前の媒体Sに形成した画像の編集と成形後の媒体Sに形成した画像の編集とを実行する機能を有している。
形状補償部62は、媒体Sの成形時の外形の変形によって生じる成形品表面の意匠(文字や模様)の形状変化を、目的の形状に補正する形状補償を実行する機能を有している。この形状補償部62による形状補償処理では、まず、縦横に等間隔の複数の格子点を有する四角形(正方形)を要素とするグリッド92を平面状の媒体に構成した画像を作成する(図3(a))。なお、図示の都合上、グリッド92の格子点は実際よりも少ない(間引いた)状態で図示し、格子点の間隔はプリンター20のドットの形成間隔(例えば、720dpiや1440dpiなど)よりも広いものとした。また、これらの各格子点の初期位置(変形前の位置)の位置情報は保持されるものとした。次に、目的の製品の形状に成形されるように媒体を変形させる処理を行ない、変形前後のグリッド92の各格子点の位置情報を入力して変形後の各格子点の三次元座標位置や各格子点の歪み方向や歪み量を算出する。そして、この算出結果に基づいて、成形後の立体物の三次元の画像モデルを作成し、作成した三次元の画像モデルをディスプレイ58へ表示処理する(図3(b))。次に、使用者の入力操作によって三次元の画像モデル上で絵柄の位置が指定されると、指定された位置に絵柄としての印刷対象の画像を配置し(図3(c))、二次元変換指示が入力されると、三次元での座標値を二次元の座標値に変換して変換後の画像を表示する(図3(d))。このようにして、成形後に目的とする絵柄となる形状の画像が成形前の媒体上に形成され、成形前に媒体Sに印刷すべき版下データを作成することができる。なお、図3(d)の版下データの画像が媒体Sに印刷されて成形された結果の成形品を図3(e)に示す。
色補償部63は、媒体Sの成形時の変形によって生じる画像の色合いの変化を反映させるために色補償変換ルックアップテーブル(LUT)64を用いて目的の色合いに補正する色補償を実行する機能を有している。色補償変換LUT64は、媒体Sの変形後の成形体で発色すべき目的色の色値(目標色)と、媒体Sの変形率(面積変化率(%))と、媒体S上に形成するインク量との関係を経験的に定めた対応関係テーブルである。図4に色補償変換LUT64の一例を示す。図4に示すように、色補償変換LUT64において、色値(目標色)と媒体Sの面積変形率(%)とが指定されると、指定された面積変形率(%)で媒体Sが変形したのちに指定した色値(目標色)になる各色のインク量が導き出される。色補償変換LUT64では、同じ色値(目標色)において、変形後の面積変形率(%)が大きいほど着色剤の形成量が大きくなる傾向に設定されている。また、この色補償変換LUT64は、格納されている各値の間のデータを周知の四面体補間処理を行うことによって、より格子点データの多いLUTに展開して利用されるものとした。なお、図4では、インク量としては通常の印刷で用いるインク量の最大量を100として表わし、色補償変換LUT64の一部のみを示した。色補償部63による色補償処理は、まず、変形加工前後のグリッド92の各格子点の位置情報を取得し、取得した各格子点の位置情報からグリッド92の各要素としての各四角形の面積変化率Δsを算出すると共に各格子点のLab値を取得する。位置情報の取得は、上述した形状補償処理で説明した変形前後の格子点の三次元座標をそれぞれ取得することにより行なう。各四角形の面積変化率Δsの算出は、取得した各格子点の変形前後の位置情報から変形前後の四角形の面積をそれぞれ算出して、変形後の四角形の面積を変形前の面積で除することにより行なう。なお、変形前の各四角形の面積はすべて同一であるため一定値を用いてもよい。Lab値の取得は、入力された画像のRGB値やCMYK値などの色の情報に基づいて各格子点に対応する位置の形状補償処理後の画像の色値を求め、求めた色値をLab値に変換することにより取得することができる。あるいは、形状補償処理後の画像を含む図示しない編集画面をディスプレイ58上に表示して入力装置57を用いた画像の色の指定を受け付け、受け付けた色に基づいて各格子点に対応する位置の色値を求め、求めた色値をLab値に変換することにより取得することができる。グリッド92の各格子点のLab値や各四角形の面積変化率Δsを取得すると、各格子点のLab値と四角形の面積変化率Δsを用いて色補償変換LUT64から得られる変形前のインク量としてのcmyk値を処理対象の格子点のcmyk値を設定し、格子点のcmyk値を色補償後の画像データとして作成しHDD55に保存する。ここで、本実施形態では、Lab値と面積変化率Δsとが色補償変換LUT64に登録されている場合には、色補償変換LUT64から対応する値を導出して処理対象の格子点のcmyk値に設定し、Lab値や面積変化率Δsが色補償変換LUT64に登録されていない場合には、色補償変換LUT64から近似するcmyk値を抽出して補間処理により求めた値を処理対象の格子点のcmyk値に設定するものとした。なお、この色補償後の画像データは、本実施形態では、画像形成のインク量としてのcmyk値は通常の印刷範囲を超える量として設定される部位も存在する。
印刷ドライバー70は、アプリケーションプログラム側から受けた印刷ジョブをプリンター20で直接印刷処理可能な印刷データへ変換してプリンター20へ出力(送信)するプログラムである。この印刷ドライバー70は、変形画像処理プログラム60で作成された色補償後の画像データを印刷可能な印刷データ(画像形成用データ)に変換してプリンター20へ出力する機能を有している。上述したように、色補償後の画像データにおけるcmyk値は通常の印刷範囲を超える量として設定される部位も存在するため、印刷ドライバー70は、色補償後の画像データを通常の印刷範囲内の複数の画像データ(以下、画像層データという。)に展開し、この複数の画像層データを用いて複数回に亘って重ねて印刷する画像形成用データを作成する。
次に、こうして構成された本実施形態の加飾成形システム10の処理、特に色補償後の画像データを用いて印刷する際の処理について説明する。図5は、印刷ドライバー70により実行される画像形成用データ作成処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、HDD55に記憶され、色補償部による色補償処理がなされた後に印刷指示が入力されたときに実行される。なお、印刷指示の実行指示は、例えば、色補償処理後に、変形画像処理プログラム60の図示しない編集画面がディスプレイ58に表示された状態で、編集画面上の印刷実行ボタンを入力装置57でクリックすることにより入力されるものなどとすればよい。
画像形成用データ作成処理ルーチンが実行されると、印刷ドライバー70は、まず、色補償後の画像データを複数の画像層データに展開する処理を実行する(ステップS100)。ここで、通常の印刷範囲における最大値としてのcmyk値の各々を100とし、cmyk値が178,225,25,0であるとしたときには、例えば、cmyk値が100,100,25,0である第1層の画像層データと、cmyk値が78,100,0,0である第2層の画像層データと、cmyk値が0,25,0,0である第3層の画像層データと、の3層の画像層データに展開することができる。この例では、第1層の画像層データから順に通常の印刷範囲における最大値に近くなるようcmyk値を設定するものとしたが、各層で均等となるように各層の画像層データにおけるcmyk値を設定するものとするなど、各層の画像層データにおけるcmyk値の展開は如何なるものとしても構わない。本実施形態では説明を容易にするため、第1層の画像層データから順に通常の印刷範囲における最大値に近くなるようcmyk値を設定するものとし、具体例として図6に例示するA層,B層,C層が第1層,第2層,第3層の画像層データである場合を考える。図6の例の左端の数字は印刷ヘッド28の走査(パス)であり、この例では、A層,B層,C層の各画像層データにおけるハッチングされているパスには有意なcmyk値が設定されており、空白のパスには全てが値0のcmyk値が設定されている。即ち、A層の画像層データは1〜8までの全てのパスで印刷が必要なデータであり、B層の画像層データは2,4,7を除くパスで印刷が必要なデータであり、C層の画像層データは1,5,6のパスだけが印刷が必要なデータである。図7は、図6の具体例のA層、B層、C層の画像層データを用いて媒体Sに印刷したときの層の状態を示す説明図である。図中、媒体Sの上方の数字は各層のパスを示す。図7に示すように、図6の具体例では、1,5,6のパスではA層,B層,C層の全てで印刷が行なわれ、3,8のパスではA層,B層,で印刷が行なわれ、2,4,7のパスではA層だけで印刷が行なわれる。
こうして色補償後の画像データを複数の画像層データに展開すると、印刷ドライバー70は、対象パスの設定を行なう(ステップS110)。この設定は、媒体Sの印刷を行なうパスの順に行なう。図6の具体例では1〜8の順に対象パスの設定が行なわれる。対象パスが設定されると、全ての画像層データに対して順に、画像層データから対象パスのデータを取得し、対象パスのデータに有意なcmyk値が存在するか否かにより対象パスに印刷すべき画像があるか否かを判定し、対象パスのデータに印刷すべき画像があるときには対象パスのデータをパスデータとして追加する処理(ステップ120〜S140)、を繰り返す(ステップS150)。なお、ステップS130で対象パスのデータに印刷すべき画像がないと判定されたときには対象パスのデータをパスデータとして追加することなく、次の画像層データから対象パスのデータを取得する処理に戻る。対象パスのデータのパスデータへの追加は、パスデータが存在しないときには対象パスのデータを対象の新たなパスデータとし、パスデータが存在しているときには対象パスのデータをそのパスデータに追加するのである。こうして全ての画像層データにおける対象パスについての処理を完了すると、パス送り信号をパスデータに付加する(ステップS160)。そして、ステップS110〜S160の処理を全てのパスに対して行なうと(ステップS170)、作成した各パスデータにパス送り信号を付加したものを画像形成用データとしてHDD55に保存して(ステップS180)、本ルーチンを終了する。
図8は、図6の具体例を用いて作成された画像形成用データの一例を示す説明図である。図示するように、画像形成用データは、パス1のパスデータはA層のパス1のデータ(A1),B層のパス1のデータ(B1),C層のパス1のデータ(C1)が連結されて作成されており、パス2のパスデータはA層のパス2のデータ(A2)だけで作成されており、パス3のパスデータはA層のパス3のデータ(A3),B層のパス3のデータ(B3)が連結されて作成されており、パス4のパスデータはA層のパス4のデータ(A4)だけで作成されている。そして、各パスデータは、ステップSの間にパス送り信号が付加されている。
図9は、図6〜図8の具体例による画像形成用データをプリンター20に出力したときの媒体Sと印刷ヘッド28の動作を模式的に示す説明図である。図中、左端の数字はパスであり、細線矢印は印刷ヘッド28の移動を示す。図8の画像形成用データでは、パス1ではA層のパス1のデータ(A1),B層のパス1のデータ(B1),C層のパス1のデータ(C1)が順にプリンター20に出力されるから、プリンター20は印刷ヘッド28を3回に亘ってパス1を走査して各走査でデータ(A1)〜データ(C1)におけるcmyk値に応じたシアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),ブラック(k)のインク量をノズル27から吐出して画像形成する。このとき、印刷ヘッド28の紫外線照射部UVa,UVbは、前述したように、図2において印刷ヘッド28を左側から右側に移動しながら印刷するときには紫外線照射部UVaから紫外線を照射し、図2において印刷ヘッド28を右側から左側に移動しながら印刷するときには紫外線照射部UVbから紫外線を照射する。したがって、データ(A1)に基づいて印刷を終了したときには、データ(A1)によって媒体Sに吐出されたインクは紫外線照射部UVaまたは紫外線照射部UVbによる紫外線照射によって定着していることになる。このため、データ(B1)に基づいてA層に重ねてB層を印刷してもA層のインクが媒体Sに定着していないことによって生じるB層のインクがにじむなどの不都合を抑止することができる。パス1の3回に亘る印刷ヘッド28による印刷が終了すると、パス送り信号により、送り機構32により媒体Sが送られ、次のパス2の印刷が可能な状態となる。パス2では、A層のパス2のデータ(A2)だけがプリンター20に出力されるから、プリンター20は印刷ヘッド28を1回だけパス2を走査してデータ(A2)におけるcmyk値に応じたシアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),ブラック(k)のインク量をノズル27から吐出して画像形成する。そして、パス2の1回の印刷ヘッド28による印刷が終了すると、パス送り信号により、送り機構32により媒体Sが送られ、次のパス3の印刷が可能な状態となる。パス3では、A層のパス3のデータ(A3)とB層のパス3のデータ(B3)とが順にプリンター20に出力されるから、プリンター20は印刷ヘッド28を2回に亘ってパス3を走査してデータ(A3)とデータ(B3)におけるcmyk値に応じたシアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),ブラック(k)のインク量をノズル27から吐出して画像形成する。そして、パス3の2回の印刷ヘッド28による印刷が終了すると、パス送り信号により、送り機構32により媒体Sが送られ、次のパス4の印刷が可能な状態となる。こうした処理をパス8まで繰り返し、画像形成用データに基づく印刷を終了する。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の図5の画像形成用データ作成処理ルーチンのステップS100の処理を実行する印刷ドライバー70が「取得手段」に相当し、図5の画像形成用データ作成処理ルーチンのステップS110〜S180の処理を実行する印刷ドライバー70が「画像形成用データ作成手段」に相当する。
以上説明した本実施形態の加飾成形システム10によれば、色補償後の画像データを複数の画像層データに展開し、印刷ヘッド28の走査(パス)の各パスに対しての順に対象パスを設定し、複数の画像層データの順に、画像層データから対象パスのデータを取得し、対象パスのデータに有意なcmyk値が存在するか否かにより対象パスに印刷すべき画像があるか否かを判定し、対象パスのデータに印刷すべき画像があるときには対象パスのデータをパスデータとして追加する処理を繰り返して得られた各パスデータにパス送り信号を付加して画像形成用データを作成するから、この画像形成用データをプリンター20に出力して媒体Sに画像を印刷することにより、同一のパスに対して各画像層データに基づく印刷を行なってから次のパスに移動することを繰り返して媒体Sに画像を印刷することができる。したがって、媒体Sに第1層の画像を印刷した後に媒体Sを第1層の印刷開始時の位置(ホームポジション)に戻し、第1層に印刷した画像に重ねて第2層の画像を印刷するような、層の画像の印刷と媒体Sのホームポジションへの戻しとを繰り返して媒体Sに画像を印刷するものに比して、ホームポジションへの戻しに必要な時間や第2層以上の層数におけるパスの移動に必要な時間とを不要なものとすることができ、複数の画像層データに基づく媒体Sへの画像の印刷を迅速に行なうことができる。しかも、紫外線照射により媒体Sに定着するインクを用いると共に印刷ヘッド28のノズル列の両サイドに紫外線照射部UVa,UVbを設け、図2において印刷ヘッド28を左側から右側に移動しながら印刷するときには紫外線照射部UVaから紫外線を照射し、図2において印刷ヘッド28を右側から左側に移動しながら印刷するときには紫外線照射部UVbから紫外線を照射することにより、下層に重ねて上層を印刷しても下層のインクが媒体Sに定着していないことによって生じる上層のインクがにじむなどの不都合を抑止することができる。
上述した実施形態では、色補償後の画像データを複数の画像層データに展開し、印刷ヘッド28の走査(パス)の各パスに対しての順に対象パスを設定し、複数の画像層データの順に、画像層データから取得した対象パスのデータに有意なcmyk値が存在するパスのデータを連結したパスデータにパス送り信号を付加して画像形成用データを作成するものとしたが、画像層データから取得した対象パスのデータに有意なcmyk値が存在しないときでもそのパスのデータをパスデータに追加するものとしてもよい。この場合、有意なcmyk値が存在しないパスに対する印刷についてはプリンター20により判断するものとしてもよい。
上述した実施形態では、画像形成用データ作成処理に色補償後の画像データを複数の画像層データに展開する処理を含むものとしたが、色補償後の画像データを展開する処理については、画像形成用データ作成処理とは別の処理としてもよい。この場合、画像形成用データ作成処理では複数の画像層データを取得する処理から始めればよい。また、色補償後の画像データを展開する処理については、印刷ドライバー70が行なってもよいし、印刷ドライバー70とは別の機能ブロックにより実行するものとしてもよい。
上述した実施形態では、印刷ヘッド28が図1中左から右に移動するときも逆に右から左に移動するときも印刷ヘッド28からのインクの吐出による印刷を行なうものとしたが、印刷ヘッド28が図1中左から右に移動するときにだけ印刷ヘッド28からのインクの吐出による印刷を行なうものとしてもよいし、逆に印刷ヘッド28が図1中右から左に移動するときにだけ印刷ヘッド28からのインクの吐出による印刷を行なうものとしてもよい。この場合、紫外線照射部UVa,UBbは、印刷直後に紫外線を照射できる一方だけを備えるものとしてもよい。
上述した実施形態では、プリンター20は紫外線の照射により媒体Sに定着する着色剤としてシアン(c),マゼンタ(m),イエロー(y),ブラック(k)のcmykの各色のインクにクリア(cl)とホワイト(w)のインクを用いると共に印刷ヘッド28の各ノズル列の両サイドに紫外線を照射するランプを内蔵した紫外線照射部UVa,UVbを備えるものとしたが、媒体Sに迅速に定着する着色剤であれば紫外線の照射により媒体Sに定着する着色剤でなくても構わない。この場合、印刷ヘッド28に紫外線照射部UVa,UVbを備えないものとしてもよい。
上述した実施形態では、格子点に対応する四角形における変化の程度としての四角形の面積変化率Δsを用いて色補償変換LUT64から得られる変形前のシアン(c)、マゼンタ(m),イエロー(y)、ブラック(k)のインク量としてのcmyk値を処理対象の格子点のcmyk値に設定するものとしたが、画像の形成については媒体Sの変形を考慮しないものとしてもよい。
上述した実施形態では、成形前の媒体Sに形成した画像の編集と成形後の媒体Sに形成した画像の編集とを実行する機能を有する3D絵柄編集部61や、媒体Sの成形時の外形の変形によって生じる成形品表面の意匠(文字や模様)の形状変化を目的の形状に補正する形状補償を実行する機能を有する形状補償部62,媒体Sの成形時の変形によって生じる画像の色合いの変化を反映させるために色補償変換LUT64を用いて目的の色合いに補正する色補償を実行する機能を有する色補償部63を備えるものとしたが、媒体Sに画像を印刷してから立体形成するものに限定されるものではないから、3D絵柄編集部61や形状補償部62,色補償部63を備えないものとしてもよい。
上述した実施形態では、着色剤は、インクであるものとしたが、媒体S上に画像を形成する際に着色可能なものであれば特にこれに限定されない。例えば、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体、トナーなどの粉体などとしてもよい。
上述した実施形態では、プリンター20は、インクを吐出するインクジェット式の印刷機構25を備えたものとしたが、特にこれに限定されず、レーザープリンターとしてもよいし、熱転写プリンターとしてもよいし、ドットインパクトプリンターとしてもよい。また、PC50のような画像形成処理装置としたが、画像形成処理方法としてもよいし、これを実行可能なプログラムの形式にしてもよい。
上述した実施形態では、パスデータにパス送り信号を付加して画像形成用データを作成し、これをプリンター20に出力して媒体Sに画像を印刷するものとしたが、印刷すべきパスのデータをプリンター20に出力してこのパスのデータに基づいてプリンター20が印刷している最中に次に印刷すべきパスのデータをプリンター20に出力するものとしてもよい。この場合の印刷処理ルーチンの一例を図10に示す。このルーチンは、HDD55に記憶され、色補償部による色補償処理がなされた後に印刷指示が入力されたときに実行される。印刷指示の実行指示は、例えば、色補償処理後に、変形画像処理プログラム60の図示しない編集画面がディスプレイ58に表示された状態で、編集画面上の印刷実行ボタンを入力装置57でクリックすることにより入力されるものなどとすればよい。以下に、図10の印刷処理ルーチンによる媒体Sへの画像の印刷について説明する。
図10の印刷処理ルーチンが実行されると、印刷ドライバー70は、まず、色補償後の画像データを複数の画像層データに展開する(ステップS200)。そして、対象パスを設定し(ステップS210)、全ての画像層データに対して順に、画像層データから対象パスのデータを取得し、対象パスのデータに有意なcmyk値が存在するか否かにより対象パスに印刷すべき画像があるか否かを判定し、対象パスのデータに印刷すべき画像があるときには対象パスのデータをプリンター20に出力すると共に出力したデータに基づく印刷が開始されるのを待つ処理(ステップS220〜S260)、を繰り返す。なお、ステップS230で対象パスのデータに印刷すべき画像がないと判定されたときには対象パスのデータをプリンター20に出力することなく次の画像層データから対象パスのデータを取得する処理に戻る。こうした処理により、有意なcmyk値が存在するパスのデータに基づく印刷が同一のパスに重ねて行なわれることになる。こうして全ての画像層データにおける対象パスについての処理を完了すると、パス送り信号をプリンター20に出力する(ステップS270)。これにより、プリンター20は媒体Sをパス分だけ送るから、重ねて印刷するパスが次のパスに移行する。そして、ステップS210〜S270の処理を全てのパスに対して行なうと(ステップS280)、本ルーチンを終了する。
ここで、図10の印刷処理ルーチンを実行する実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。この実施形態の図10の印刷データ処理ルーチンのステップS200の処理を実行する印刷ドライバー70が「取得手段」に相当し、図10の印刷データ処理ルーチンのステップS210〜S280の処理を実行する印刷ドライバー70が「データ処理手段」に相当する。
以上説明した図10の印刷処理ルーチンを実行する実施形態によれば、全ての画像層データに対して順に、有意なcmyk値が存在する対象パスのデータをプリンター20に出力してからパス送り信号をプリンター20に出力する処理を繰り返すことにより、同一のパスに対して各画像層データに基づく印刷を行なってから次のパスに移動することを繰り返して媒体Sに画像を印刷することができる。したがって、層の画像の印刷と媒体Sのホームポジションへの戻しとを繰り返して媒体Sに画像を印刷するものに比して、複数の画像層データに基づく媒体Sへの画像の印刷を迅速に行なうことができる。しかも、出力したパスのデータに基づいてプリンター20が印刷を開始した後に次の印刷すべきパスのデータを出力するから、プリンター20には2つ分のパスのデータを記憶する印刷用のメモリー容量があればよいから、プリンター20が搭載する印刷用のメモリー容量を小さくすることができる。
上述した図10の印刷処理ルーチンを実行する実施形態では、有意なcmyk値が存在するパスのデータをプリンター20に出力したときには、プリンター20によりそのデータに基づく印刷が開始されるのを待って、次の有意なcmyk値が存在するパスのデータをプリンター20に出力するものとしたが、プリンター20によりそのデータに基づく印刷の開始を待つことなく、次の有意なcmyk値が存在するパスのデータをプリンター20に出力するものとしてもよい。この場合、プリンター20からパスのデータの出力を停止する信号が出力されたときにプリンター20からパスのデータの出力を許可する信号が出力されるまでパスのデータをプリンター20に出力するのを待つものとしてもよい。
上述した図10の印刷処理ルーチンを実行する実施形態では、印刷ドライバー70が印刷処理ルーチンを実行するものとしたが、印刷ドライバー70では色補償後の画像データを複数の画像層データに展開する処理だけを行ない、それ以外の処理についてはプリンター20が行なうものとしてもよい。
上述した図10の印刷処理ルーチンを実行する実施形態では、有意なcmyk値が存在するパスのデータだけをプリンター20に出力するものとしたが、有意なcmyk値が存在しないパスのデータもプリンター20に出力するものとしてもよい。この場合、有意なcmyk値が存在しないパスに対する印刷についてはプリンター20により判断するものとしてもよい。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。