JP2012187872A - 液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子のエージング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電特性に優れ、長期に亘って良好な吐出特性を維持することができる液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子のエージング方法を提供する。
【解決手段】 ニッケル酸ランタン層を備える第1電極を形成する工程、ニッケル酸ランタン層上方に圧電体層を形成する工程、及び圧電体層上方に第2電極を形成する工程を備える圧電素子形成工程と、圧電素子に対して印加する最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧を印加するエージング工程と、を備える。
【選択図】 なし
【解決手段】 ニッケル酸ランタン層を備える第1電極を形成する工程、ニッケル酸ランタン層上方に圧電体層を形成する工程、及び圧電体層上方に第2電極を形成する工程を備える圧電素子形成工程と、圧電素子に対して印加する最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧を印加するエージング工程と、を備える。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射ヘッドのエージング方法に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドの製造方法及び圧電素子のエージング方法に関する。
液体噴射ヘッドの代表的な例としては、ノズルからインク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。インクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、インク滴を噴射するノズルと連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズルからインク滴を吐出させるものがある。また、インクジェット式記録ヘッドに採用される圧電素子としては、例えば、一対の電極とこれらの電極間に挟持される圧電体層とからなるものが知られている。
このようなインクジェット式記録ヘッドを製造する際、各圧電素子の変位特性が均一化されるように、成膜技術により均一な圧電体層を形成し、フォトリソグラフィー法等を用いて各圧電素子を高精度に形成している。しかしながら、このような圧電素子は、駆動波形の印加によって経時的に変位量が低下してしまうという問題があった。したがって、かかる圧電素子を搭載したインクジェット式記録ヘッドは、長期間使用すると吐出特性が低下してしまう。
そこで、例えば、実使用時よりも高電圧及び高周波数の駆動信号を圧電素子に所定パルス数印加して圧電素子を駆動するエージング工程を実施している(特許文献1参照)。このように、実使用時よりも高い電界強度で圧電素子を駆動して圧電体層を分極させることにより、変位量の変動を小さく抑えることができ、長期使用による変位量の低下を抑制することができる。
しかしながら、上述したエージング工程を実施すると、圧電素子の本来有する圧電特性を低下させてしまうという問題があった。
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、圧電特性に優れ、長期に亘って良好な吐出特性を維持することができる液体噴射ヘッドの製造方法及び圧電素子のエージング方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極、圧電体層、及び第2電極を含む圧電素子と、を備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、ニッケル酸ランタン層を備える第1電極を形成する工程、前記ニッケル酸ランタン層上方に圧電体層を形成する工程、及び前記圧電体層上方に第2電極を形成する工程を備える圧電素子形成工程と、前記圧電素子に対して印加する最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧を印加するエージング工程と、を備えることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、圧電素子の圧電特性を低下させることなく、経時的な変位量の低下を抑制することができる。すなわち、圧電特性に優れ、長期に亘って良好な吐出特性を維持した液体噴射ヘッドを提供することができる。
かかる態様では、圧電素子の圧電特性を低下させることなく、経時的な変位量の低下を抑制することができる。すなわち、圧電特性に優れ、長期に亘って良好な吐出特性を維持した液体噴射ヘッドを提供することができる。
本発明の好適な実施態様としては、前記圧電体層は、Pb、Zr、及びTiを含む圧電材料からなるからなるものが挙げられる。また、前記圧電体層は、(100)面に優先配向しているものが挙げられる。
また、本発明の好適な実施態様としては、前記圧電体層は、厚さが700nm以下である。
本発明の他の態様は、第1電極、圧電体層、及び第2電極を備える圧電素子のエージング方法であって、前記第1電極はニッケル酸ランタン層を備え、前記圧電体層は前記ニッケル酸ランタン層上方に形成されたものであり、前記圧電素子に対して印加する最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧を印加するエージング工程と、を備えることを特徴とする圧電素子のエージング方法にある。
かかる態様では、圧電素子の圧電特性を低下させることなく、経時的な変位量の低下を抑制することができる。
かかる態様では、圧電素子の圧電特性を低下させることなく、経時的な変位量の低下を抑制することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′線断面図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′線断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、一方の面とは反対側の面となる他方面側から異方性エッチングすることにより、圧力発生室12が形成されている。そして、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向と称し、これと直交する方向を第2の方向と称する。また、流路形成基板10の圧力発生室12の第2の方向の一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
インク供給路14は、圧力発生室12の第2方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、マニホールド100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路15は、インク供給路14の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(第1方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路15を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、インク供給路14と、連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の一方面は、振動板を構成する弾性膜50によって画成されている。
一方、流路形成基板10の圧力発生室12等の液体流路が開口する一方面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱融着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10のノズルプレート20とは反対側の面には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55が形成されている。
また、絶縁体膜55上方には、第1電極60と、第1電極60の上方に設けられる圧電体層70と、圧電体層70の上方に設けられた第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。なお、ここで言う上方とは、直上も、間に他の部材が介在した状態も含むものである。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、第1電極60は圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
ここで、図2(b)に示すように、本実施形態の第1電極60は、例えば、白金からなる配線層61と、配線層61上に形成されたニッケル酸ランタン層(LNO層)62との二層から構成されるものである。
かかるニッケル酸ランタン層62は、結晶の配向面が(001)面に優先配向(自然配向)する。このニッケル酸ランタン層62は、圧電体層70の配向制御層として機能する。ニッケル酸ランタン層62は、より具体的には、ニッケル酸ランタン層62上に圧電体層70をエピタキシャル成長により形成した際に、圧電体層70の結晶を(100)面に優先配向させるためのものである。ニッケル酸ランタンとしては、LaNiO3、La3Ni2O6、LaNiO2、La2NiO4、La3Ni2O7、La4Ni3O10等が挙げられ、本実施形態では、LaNiO3を用いた。
また、本実施形態では、配線層61は、白金からなる白金層としたが、これに限定されず、例えば、イリジウム、酸化イリジウムを含む酸化イリジウム層、白金層と酸化イリジウム層の積層構造等が挙げられる。
配線層61の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜100nm程度とすればよい。また、ニッケル酸ランタン層62の厚さも特に限定されないが、例えば10〜100nm程度とすればよい。本実施形態では、配線層61の厚さを100nmとし、ニッケルランタン層の厚さを40nmとした。
また、圧電体層70は、電気機械変換作用を示す圧電材料からなるものであればよいが、圧電材料の中でも一般式がABO3で表現されるペロブスカイト型結晶構造を有し、金属としてPb、Zr、及びTiを含む強誘電体材料からなるのが好ましい。鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、及びチタン(Ti)を含む強誘電体材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のAサイトの鉛やBサイトのジルコニウム及びチタンの一部と置換して他の元素を含むものが挙げられる。Aサイトの置換元素としては、例えば、ランタン、バリウム、ストロンチウム、カルシウム等が挙げられ、Bサイトの置換元素としては、例えば、鉛、ニオブ等が挙げられる。圧電体層70の圧電材料としては、具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。
本実施形態においては、圧電体層70は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる。かかる圧電体層70はニッケル酸ランタン層62上方(本実施形態では直上)に設けていることにより、(100)面に優先配向する。なお、本発明で「(100)面に優先配向している」とは、全ての結晶が(100)面に配向している場合と、ほとんどの結晶(例えば、90%以上)が(100)面に優先配向している場合と、を含むものである。
また、本実施形態における圧電体層70は、厚さが、例えば、1.5μm以下のものが挙げられ、本実施形態では、700nmとした。
第2電極80としては、Ir,Pt,タングステン(W),タンタル(Ta),モリブデン(Mo)等の各種金属の何れでもよく、また、これらの合金や、酸化イリジウム等の金属酸化物が挙げられる。
このような各圧電素子300の第2電極80には、流路形成基板10のインク供給路14の端部近傍まで延設された金(Au)等のリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加される。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
次に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法の一例について、図3〜図7を参照して説明する。なお、図3〜図7は、圧力発生室の第2方向の断面図である。
まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO2)等からなる二酸化シリコン膜を熱酸化等で形成する。次いで、図3(b)に示すように、弾性膜50上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。
次に、図4(a)に示すように、第1電極60を形成する。具体的には、まず、絶縁体膜55上に配線層61を形成する。配線層61の形成方法は特に限定されないが、スパッタリング法等により全面に形成する。その後、スパッタリング法、レーザーアブレーション法やMOCVD法等により、ニッケル酸ランタン層62を形成する。
次いで、第1電極60上に、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は特に限定されないが、例えば、有機金属錯体を溶媒に溶解・分散した溶液を塗布乾燥し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、MOD(Metal−Organic Decomposition)法やゾル−ゲル法等の化学溶液法を用いて圧電体層70を形成できる。その他、レーザーアブレーション法、スパッタリング法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法などで形成してもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順例としては、まず、図4(b)に示すように、第1電極60上に、金属錯体、具体的には、Pb、Zr及びTi、必要に応じて含有させる他の金属を含む錯体を、目的とする組成比になる割合で含むゾルやMOD溶液(前駆体溶液)をスピンコート法などを用いて、塗布して圧電体前駆体膜71を形成する(塗布工程)。
塗布する前駆体溶液は、例えば、圧電体層70となる圧電材料の構成金属をそれぞれ含む有機金属錯体を、各構成金属が所望のモル比となるように混合し、該混合物をアルコールなどの有機溶媒を用いて溶解または分散させたものである。圧電材料の構成金属を含む有機金属錯体としては、例えば、金属アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。鉛(Pb)を含む有機金属錯体としては、例えば酢酸鉛などが挙げられる。ジルコニウム(Zr)を含む有機金属錯体としては、例えばジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等が挙げられる。チタニウム(Ti)を含む有機金属錯体としては、例えば、チタニウムイソプロポキシド等のチタニウムアルコキシドなどが挙げられる。
次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば150〜200℃)に加熱して一
定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば
300〜400℃)に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。な
お、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO2、
CO2、H2O等として離脱させることである。乾燥工程や脱脂工程の雰囲気は限定され
ず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば
300〜400℃)に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。な
お、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO2、
CO2、H2O等として離脱させることである。乾燥工程や脱脂工程の雰囲気は限定され
ず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
次に、図4(c)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定温度、例えば650〜800℃程度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。この焼成工程においても、雰囲気は限定されず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
なお、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。
次に、図5(a)に示すように、圧電体膜72上に所定形状のレジスト(図示無し)をマスクとして、例えば、第1電極60及び圧電体膜72の1層目をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。
次いで、レジストを剥離した後、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返して複数の圧電体膜72からなる圧電体層70を形成することで、図5(b)に示すように複数層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。なお、本実施形態では、圧電体膜72を積層して設けたが、1層のみでもよい。また、1層以上の圧電体膜72を形成した後に、チタン(Ti)からなる中間チタン層を形成し、その後、再び、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を行って1層以上の圧電体膜72を形成して、圧電体層70としてもよい。
このように圧電体層70を形成した後は、図6(a)に示すように、圧電体層70上に白金等からなる第2電極80をスパッタリング法等で形成し、各圧力発生室12に対向する領域に圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして、第1電極60と圧電体層70と第2電極80からなる圧電素子300を形成する。なお、圧電体層70と第2電極80とのパターニングでは、所定形状に形成したレジスト(図示なし)を介してドライエッチングすることにより一括して行うことができる。その後、必要に応じて、600℃〜800℃の温度域でポストアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
次に、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後に、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚さに薄くする。
次に、図7(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110上に、マスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。
そして、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面のマスク膜52を除去した後にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIとする。
なお、このように各チップサイズに分割した後は、各圧電素子300を駆動させて変位量を安定させるエージング工程を実施する。このエージング工程とは、各圧電素子300の変位量のばらつきを適宜調整するためのものであり、各圧電素子300に対して最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧をエージング電圧として印加するものである。ここでいう最大駆動電圧差とは、圧電素子300(液体噴射ヘッド)を実使用する際の駆動パルスの最大電圧と最小電圧との差を指す。これら最大電圧及び最小電圧は、駆動回路120により予め設定される駆動電圧である。かかる駆動電圧は、インクジェット式記録ヘッドが液体(インク)を吐出する際に圧電素子300に印加する電圧である。
ここで、本実施形態の駆動パルスの最大電圧と最小電圧の設定について簡単に説明する。インクジェット式記録ヘッドを構成する圧電素子300の圧電体層70は、電界を変化させると、抗電界Ecを境として分極の正負が反転するヒステリシス特性を有するものである。このような圧電体層70の抗電界Ecは、圧電素子300に印加する電圧を変化させて圧電素子300の変位量を測定し、圧電素子300の変位方向が反転する分極点を測定することで取得することができる。なお、圧電体層70には、2つの抗電界Ec1,Ec2(Ec1<Ec2)が存在する。そして、実使用の際には、圧電素子300には、分極の正負が反転しないように電圧を印加する。本実施形態では、圧電体層70の圧電特性を最大限に活かすように駆動電圧を設定した。具体的には、抗電界Ec1となる電圧Vc1よりもわずかに高い電圧を最小電圧として設定し、飽和分極電圧よりわずかに低い電圧を最大電圧として設定した。このように駆動電圧を設定することにより、圧電体層70の圧電特性を最大限活かすことができる。なお、最大電圧及び最小電圧は、耐久性、インク滴の大きさ、インク滴の吐出速度等に合わせて、適宜、設定されるものであり、これに限定されるものではない。
ここで、インクジェット式記録ヘッドを駆動する駆動電圧パルスの一例について図8を参照して説明する。なお、図8は、駆動電圧パルスを示す波形図である。
駆動電圧パルスは、第1電極60を基準電位として、第2電極80に印加される。駆動電圧パルスは、図8に示すように、駆動電圧Vを基準電圧V1から、この基準電圧V1よりも低い吐出準備電圧V2まで降下させて圧力発生室12の容積を膨張させる膨張工程400と、吐出準備電圧V2を所定の期間保持する第1の保持工程401と、駆動電圧Vを吐出準備電圧V2から基準電圧V1よりも高い吐出電圧V3まで上昇させて圧力発生室12の容積を収縮させる収縮工程402と、吐出電圧V3を所定の期間保持する第2の保持工程403と、駆動電圧Vを吐出電圧V3から基準電圧V1まで降下させる電圧降下工程404とで構成されている。そして、このような駆動電圧パルス200が圧電素子300に出力されると、膨張工程400によって圧電素子300が圧力発生室12の容積を膨張させる方向に変形することにより、ノズル開口21のメニスカスが押し出される。次いで、収縮工程402によって圧電素子300が圧力発生室12の容積を収縮させる方向に変形して、ノズル開口21のメニスカスが圧力発生室12側から大きく押し出され、ノズル開口21からインク滴が吐出される。すなわち、この駆動電圧パルスは、いわゆる押し打ち式のものである。
上述したように、最大駆動電圧差とは、実使用する際の駆動パルスの最大電圧と最小電圧との差を指す、すなわち、図8におけるV3とV2との差を指す。本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、例えば、V1が17.5V、V2が−2V、V3が33Vであり、最大駆動電圧差が35Vとなる。なお、ここでは押し打ち式を用いて説明したが、引き打ち式の場合も同様に、駆動パルスの最大電圧と最小電圧との差が最大駆動電圧差となる。
そして、エージング電圧は、最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧とする。本実施形態のように、液体噴射ヘッドの最大駆動電圧差が35Vである場合は、21〜24.5Vのエージング電圧を印加すればよい。
また、エージング電圧の印加時間は、例えば、10〜60分であり、本実施形態では、例えば、22.5Vを26分(1.2億ショット)とした。
エージング電圧としては、単一周波数の波形、例えばサイン(sin)波、三角波、台形波、矩形波等が挙げられる。
本実施形態では、ニッケル酸ランタン層62を備える第1電極60を形成し、最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧を印加するエージング工程を行うことにより、圧電素子300の圧電特性を低下させることなく、経時的な変位量の低下を抑制することができる。すなわち、圧電特性に優れ、長期に亘って良好な吐出特性を維持した液体噴射ヘッドを製造することができる。
従来のように、最大駆動電圧差よりも高い電圧をエージング電圧として印加すると、圧電素子300の変位特性を低下させてしまうという問題があり、圧電体層70が膜厚1.0μm以下のような薄いものからなる場合はこの問題が顕著であった。しかしながら、本実施形態では、実使用時よりも低い電圧でエージング工程を行っているので、エージング工程での圧電体層70の変形が実使用時よりも小さくなり、過剰に圧電体層70にダメージを与えて圧電素子300の変位特性を低下させるという虞がない。
なお、最大駆動電圧差の60%未満のエージング電圧を印加すると、変位量のばらつきの調整が不十分となる虞があり、また、70%より大きくすると、圧電素子300の圧電特性を低下させる虞がある。また、第1電極60がニッケル酸ランタン層62を備えていない場合は、上記のエージング工程を実施しても、圧電特性が低下してしまう。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例
に限定されるものではない。
に限定されるものではない。
(実施例1)
実施形態1と同様の方法により、最大駆動電圧差が35Vのインクジェット式記録ヘッドを製造した。なお、第1電極60を厚さ50nmの白金からなる配線層61と、配線層61上に設けられる厚さ40nmのニッケル酸ランタン層62とし、圧電体層70は、厚さ700nmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなり(100)面に優先配向しているものとし、第2電極80を厚さ50nmのイリジウムからなるものとした。また、エージング工程では、電圧22.5V,1.2億パルスのエージング電圧を印加した。
実施形態1と同様の方法により、最大駆動電圧差が35Vのインクジェット式記録ヘッドを製造した。なお、第1電極60を厚さ50nmの白金からなる配線層61と、配線層61上に設けられる厚さ40nmのニッケル酸ランタン層62とし、圧電体層70は、厚さ700nmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなり(100)面に優先配向しているものとし、第2電極80を厚さ50nmのイリジウムからなるものとした。また、エージング工程では、電圧22.5V,1.2億パルスのエージング電圧を印加した。
(比較例1)
エージング工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、インクジェット式記録ヘッドを製造した。
エージング工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、インクジェット式記録ヘッドを製造した。
(比較例2)
エージング電圧を45Vとした以外は実施例1と同様にして、インクジェット式記録ヘッドを製造した。
エージング電圧を45Vとした以外は実施例1と同様にして、インクジェット式記録ヘッドを製造した。
(試験例1)
実施例1及び比較例1〜2のインクジェット式記録ヘッドに対して、所定の駆動パルスを連続的に印加する耐久試験を実施して、圧電素子の変位低下率を求めた。結果を表1及び図9に示す。なお、実施例1及び比較例1については、エージング工程前に圧電素子の変位量を測定し、これを基準として変位変化率を求めた。また、耐久試験で圧電素子に印加した駆動パルスは、電圧35V,周波数50kHz のsin波形であり、変位測定時に印加した駆動パルスは、電圧25V,周波数800Hzの台形波形である。
実施例1及び比較例1〜2のインクジェット式記録ヘッドに対して、所定の駆動パルスを連続的に印加する耐久試験を実施して、圧電素子の変位低下率を求めた。結果を表1及び図9に示す。なお、実施例1及び比較例1については、エージング工程前に圧電素子の変位量を測定し、これを基準として変位変化率を求めた。また、耐久試験で圧電素子に印加した駆動パルスは、電圧35V,周波数50kHz のsin波形であり、変位測定時に印加した駆動パルスは、電圧25V,周波数800Hzの台形波形である。
表1及び図9に示すように、エージング工程を行っていない比較例1では、30億パルスで大きく低下してしまい、変位量の経時変化が非常に大きいものであった。また、駆動電圧よりも高い電圧をエージング電圧として印加した比較例2では、0〜190億パルスにおける変位量の経時変化は小さかったが、エージング工程後に大きく変位量が低下してしまっていた。すなわち、エージング工程により、圧電特性(変位量)が低下してしまうことが確認された。
これに対し、耐久試験前に駆動電圧の65%の電圧をエージング電圧として印加した実施例1のインクジェット式記録ヘッドでは、エージング工程による変位低下率が小さく、また、190億パルス印加後もほとんど変位が低下していなかった。
(試験例2)
実施例1及び比較例1〜2のインクジェット式記録ヘッドの圧電素子300について、東陽テクニカ社製「FCE−1A」で、φ=400μmの電極パターンを使用し、周波数1kHz、−1V〜24Vの三角波を印加して、エージング前(「初期」と表記する)、エージング後(「ag後」と表記する)、30億ショット後(「30億」と表記する)のI(電流密度)−V(電圧)の関係を求めた。実施例1の結果を図10に、比較例1の結果を図11に、比較例2の結果を図12に示す。
実施例1及び比較例1〜2のインクジェット式記録ヘッドの圧電素子300について、東陽テクニカ社製「FCE−1A」で、φ=400μmの電極パターンを使用し、周波数1kHz、−1V〜24Vの三角波を印加して、エージング前(「初期」と表記する)、エージング後(「ag後」と表記する)、30億ショット後(「30億」と表記する)のI(電流密度)−V(電圧)の関係を求めた。実施例1の結果を図10に、比較例1の結果を図11に、比較例2の結果を図12に示す。
また、実施例1及び比較例1〜2のインクジェット式記録ヘッドを構成する圧電素子300の圧電体層70は、印加する電界を変化させると、抗電界Ecを境として分極の正負が反転するヒステリシス特性を有するものである。上記の結果より、抗電界Ecの電圧変化率及び電流変化率を求めた。結果を表2に示す。
表2及び図10に示すように、実施例1のインクジェット式記録ヘッドは、エージング工程による電圧変化及び電流変化が小さく、また、30億ショット後の電圧変化及び電流変化が小さいことから、圧電体層70の変位量がほとんど低下しないことが確認された。
これに対し、表2及び図11に示すように、エージング工程を行っていない比較例1のインクジェット式記録ヘッドは、30億ショット後の電圧変化及び電流変化が非常に大きかった。また、表2及び図12に示すように、比較例2ではエージング工程後と30億ショット後の電圧変化及び電流変化は小さかったが、エージング工程により電圧及び電流が大きく低下しており、エージング工程により変位が低下していた。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。本実施形態では、一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割した後に、エージング工程を行ったがこれに限定されず、一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する前にエージング工程を行ってもよく、例えば、圧力発生室12を形成した後に行うことができる。
以上、本発明の実施形態1について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。本実施形態では、一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割した後に、エージング工程を行ったがこれに限定されず、一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する前にエージング工程を行ってもよく、例えば、圧力発生室12を形成した後に行うことができる。
実施形態1では、第1電極60の抵抗値を低下させるために配線層61を備えるものとしたが、第1電極60はこれに限定されるものではない。第1電極60は、ニッケル酸ランタン層を備え且つニッケル酸ランタン層が圧電体層70と接触するように設けられているものであればよく、例えば、ニッケル酸ランタン層のみからなるものとしてもよく、配線層を挟むようにニッケル酸ランタン層を二層備えるものとしてもよい。
また、上述した実施形態1では、流路形成基板10として、結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、結晶面方位が(100)面のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図13は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図13に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
また、上述したインクジェット式記録装置では、インクジェット式記録ヘッドI(ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッドIが固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
また、実施形態1では、所定のエージング工程を備える液体噴射ヘッドの製造方法について説明したが、本発明の圧電素子のエージング方法は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子のエージング方法に限定されない。例えば、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター、赤外センサー、超音波センサー、感熱センサー、圧力センサー、焦電センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー等の各種センサー等の圧電素子のエージング方法にも適用することができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 第1電極、 62 ニッケル酸ランタン層、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 300 圧電素子
Claims (5)
- 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極、圧電体層、及び第2電極を含む圧電素子と、を備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、
ニッケル酸ランタン層を備える第1電極を形成する工程、前記ニッケル酸ランタン層上方に圧電体層を形成する工程、及び前記圧電体層上方に第2電極を形成する工程を備える圧電素子形成工程と、
前記圧電素子に対して印加する最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧を印加するエージング工程と、
を備えることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。 - 前記圧電体層は、Pb、Zr、及びTiを含む圧電材料からなることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
- 前記圧電体層は、(100)面に優先配向していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
- 前記圧電体層は、厚さが700nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
- 第1電極、圧電体層、及び第2電極を備える圧電素子のエージング方法であって、
前記第1電極はニッケル酸ランタン層を備え、前記圧電体層は前記ニッケル酸ランタン層上に形成されたものであり、
前記圧電素子に対して印加する最大駆動電圧差の60%以上70%以下の電圧を印加するエージング工程と、を備えることを特徴とする圧電素子のエージング方法。
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