JP2012180860A - 軸受の固定構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】電動パワーステアリング装置のモータの出力や路面からの外力によりピニオン軸を支持する軸受に大きな軸力が生じた場合でも、加締リングの変形を防ぐことができる軸受の固定構造を提供する。
【解決手段】加締リング3により軸受2を軸1へ固定する軸受固定構造であって、前記軸1に形成された円環状の溝5の隅を丸めた溝底6aと円環状の加締リング3とを接触させずに浮かす構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、軸受の固定構造、特に、電動式パワーステアリング装置のピニオン軸を軸支する軸受をピニオン軸に固定するための軸受の固定構造に関する。
燃費向上を目的として、自動車用のステアリング装置に電動パワーステアリング装置を採用するケースが増えてきており、より大型の自動車へ搭載したいという要求がある。このため、電動パワーステアリングを構成する各部品には、従来よりも高い強度が必要されるようになった。
一般的によく用いられているラック・ピニオン式ステアリング装置において、ピニオン軸を支持する軸受のうち、ステアリングホイール側の軸受の固定方法には、ピニオン軸に形成された円環状の溝に円筒状の加締リングを加締める方法が採用されている。
この円環状の溝の断面形状には、応力集中を防ぐために隅を丸めた形状が用いられている。
先行技術の軸受の固定構造としては、特許文献1と特許文献2に示されているものがある。加締リングにより玉軸受の内輪をピニオン軸に固定する場合に生じやすい、加締リングとピニオン軸との間の隙間が発生しないようにした軸受の固定構造が、特許文献1に開示されている。
軸および軸にその軸方向位置を固定する部品の製造誤差があっても、軸に対して部品を確実に固定することができる軸受の固定構造が、特許文献2に開示されている。
図5は、従来の軸受200の固定構造の要部断面を示している。図5に示されているように、加締リング300が溝500の隅の丸み部600と接触している。
ここで、軸受200に軸力F0が生じた場合に、加締リング300が軸100から受ける反力F1の方向は、接触面の法線方向であることから、溝500の隅の丸み部600と接触している部分には、軸径方向の分力F2が生じる。
この分力F2により加締リング300の径が拡げられた場合には、加締リング300は、溝500の隅の丸み部600をすべるように軸方向に移動するため、軸受200を軸方向に保持することができなくなる。
特開2008−57589号公報 特開2007−9940号公報
特許文献1および特許文献2の軸受の固定構造は、円環状の溝に円筒状の加締リングを加締めたものであり、軸受、軸、加締リングの形状を工夫することにより、軸と加締リングの間に隙間が生じることを防ぎ、軸受を確実に固定するものである。このような固定構造は図5に示す固定構造と同様に、加締リングが溝の奥まで入り、溝の隅の丸みと接触している。軸受に軸力が生じた場合に加締リングが軸から受ける反力の方向は接触面の法線方向であることから、溝の隅の丸みと接触している部分には、軸径方向の大きな分力が生じる。この分力により加締リングの径が拡げられた場合には、加締リングは溝の隅の丸みをすべるように軸方向に移動するため、軸受を軸方向に保持することができなくなるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動パワーステアリング装置のモータの出力や路面からの外力によりピニオン軸を支持する軸受に大きな軸力が生じた場合にも、加締リングにかかる荷重の径方向分力を低く抑えて、加締リングの変形を防ぐことができる軸受の固定構造を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)円環状の加締リングにより軸受を軸へ固定する軸受の固定構造であって、
前記軸に形成された円環状の溝の一端側の隅を丸めた丸み部の溝底と前記加締リングとが接触しないように構成されたことを特徴とする軸受の固定構造。
(2)前記加締リングの一端側に凸条を設けることにより、前記溝底に前記加締リングが接触しないように構成されたことを特徴とする上記(1)に記載の軸受の固定構造。
(3)前記加締リングは、その内側に面取り部が設けられたことにより、前記溝底に前記加締リングが接触しないように構成されたことを特徴とする上記(1)に記載の軸受の固定構造。
(4)前記溝は、前記溝底よりも軸径の大きい突起が設けられたことにより、前記溝底に前記加締リングが接触しないように構成されたことを特徴とする上記(1)に記載の軸受の固定構造。
本発明の軸受の固定構造によれば、軸受に大きな軸方向の力が生じた場合において、加締リングが隅の丸み部の溝底と接触していないことから、加締リングにかかる荷重の径方向分力を低く抑えることができるため、加締リングの変形を防ぎ、軸受を保持する力を従来よりも向上することができる。
本発明の軸受の固定構造を示す第1実施形態の要部拡大断面図である。 本発明の軸受の固定構造を示す第1実施形態の加締め前後の断面図である。 本発明の軸受の固定構造を示す第2実施形態の要部拡大断面図である。 本発明の軸受の固定構造を示す第3実施形態の要部拡大断面図である。 従来例の軸受の固定構造を示す要部拡大断面図である。
以下、図面に基づいて本発明にかかる軸受の固定構造の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の軸受の固定構造の第1実施形態における加締め後を示し、図2は加締め前の状態を示している。
本実施形態の軸受の固定構造では、軸1には溝5が形成されている。この溝5には、軸受2と反対側に円環状の溝丸み部6が形成され、その溝丸み部6に向って溝深さが深くなるように構成されている。そして、加締リング3には、凸条4が形成されており、この凸条4が、溝肩7に係合していることで、加締リング3が溝5に入り難くい構成である。この構成により、加締リング3が溝5の隅の丸み部6の溝底6aに接触しない浮いた状態となる。
図2を用いて、加締リング3の組み付けについて説明する。なお、本実施形態は、玉軸受をピニオン軸へ組み付ける状態を示し、図2はその加締め前の状態を示す断面図である。
加締め加工においては、図2に示すように、ピニオン軸1に、玉軸受2、加締リング3を、この順序に外嵌する。そして、玉軸受2の一端面34は、第1の段差面25に当接して停止する。また、加締リング3の一端部3aは、玉軸受2の他端面35に当接する。
そして、溝5の位置は加締リング3の装着時(加締め時)において、加締リング3の一端部が溝5の肩7に引っかかるように位置調整されている。
この状態において、図示しないカシメ冶具を、例えば、軸先端方向(図1中左側)から挿入する等により、加締リング3を軸方向に加締める。
この加締加工により、加締リング3には、加締め後に凸条4が形成され、溝5に入り難くなり、溝5の隅の丸み部6には接触せず、溝5の底に対して実質的に浮いた状態で装着される。
このように加締リング3が装着されている構成によれば、例えば、電動パワーステアリング装置のモータの出力や路面からの外力によりピニオン軸を支持する軸受に大きな軸力が生じた場合でも、加締リング3が隅の丸み部6と接触していないことから、加締リングにかかる荷重の径方向分力を低く抑えられるため、加締リングの変形を防ぎ、軸受を保持する力を従来よりも向上することができる。
なお、加締リング3の加締め方法としては、図2に示した軸方向の加締めに限定されるものではなく、径方向の加締めやローリングによる加締め等種々の加締め方法が可能である。
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態における要部断面図を示している。
本実施形態においては、軸1には溝5が形成されており、前掲の実施形態と同様に、溝5に加締リング3を加締めることにより、軸受2が固定されている。
本実施形態における加締リング3は、リング内周側の角部に面取り部10が設けられている。この面取り部10は、溝5の隅の丸み部6に対して十分に大きいものとして構成されている。
したがって、加締リング3は、その面取り部10が設けられたことによって、丸み部6の溝底6aと接触しない。
このように、本実施形態における加締リング3は、装着状態において、溝5の隅の丸み部6の溝底6aには接触せず、浮いた状態となる。したがって、例えば、電動パワーステアリング装置のモータの出力や路面からの外力によりピニオン軸を支持する軸受に大きな軸力が生じた場合には、加締リング3が隅の丸み部6と接触していないことから、加締リング3にかかる荷重の軸径方向分力を低く抑えられるので、加締リング3の変形は回避され、軸受2を保持する力を従来よりも向上することができる。なお、加締リング3の両端面に面取り部10が設けられているが、これは、組込み時に組込み方向を間違えるミスを防ぐため設けたものである。
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態における要部断面図を示している。
本実施形態においても、前掲の実施形態と同様に、軸1に設けられた溝5に加締リング3を加締めることにより、軸受2を固定する。
しかし、本実施形態における溝5には、溝5の隅の丸み部6から溝の中央部寄りの位置に突起9が形成されている。この突起9が形成されていることにより、加締リング3は、加締め時において、他端部3bが丸み部6の下側まで入り難くなる。このため、加締リング3は、溝5の隅の丸み部6の溝底6aとは接触しない状態となる。
したがって、加締リング3にかかる荷重の軸径方向分力を低く抑えられることができるので、加締リング3の変形は防止され、軸受2を保持する力を従来よりも向上することができる。
以上、本発明について、第1〜第3実施形態について説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良等が可能である。すなわち、第1〜第3実施形態のうち、任意の複数の実施形態を自由に組み合わせることができる。
また、本発明の実施形態の加締リングの形状は、加締治具の位置制御によっても実現することができる。さらに、上記実施形態では、軸受内輪を軸に固定する場合について説明したが、軸受外輪をハウジングに固定する場合にも、同様の固定構造を用いることができる。
1 軸
2 軸受
3 加締リング
4 凸条
5 溝
6 丸み部
6a溝底
7 溝肩
9 突起
10面取り部

Claims (4)

  1. 円環状の加締リングにより軸受を軸へ固定する軸受の固定構造であって、
    前記軸に形成された円環状の溝の一端側の隅を丸めた丸み部の溝底と前記加締リングとが接触しないように構成されたことを特徴とする軸受の固定構造。
  2. 前記加締リングの一端側に凸条を設けることにより、前記溝底に前記加締リングが接触しないように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の軸受の固定構造。
  3. 前記加締リングは、その内側に面取り部が設けられたことにより、前記溝底に前記加締リングが接触しないように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の軸受の固定構造。
  4. 前記溝は、前記溝底よりも軸径の大きい突起が設けられたことにより、前記溝底に前記加締リングが接触しないように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の軸受の固定構造。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015055289A (ja) * 2013-09-11 2015-03-23 日本精工株式会社 軸受の固定構造
JP2015124787A (ja) * 2013-12-25 2015-07-06 日本精工株式会社 転がり軸受用内輪の固定方法及び転がり軸受用内輪の固定構造物
JP2020059402A (ja) * 2018-10-10 2020-04-16 株式会社ジェイテクト ステアリング装置及びステアリング装置の製造方法

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