JP2012180414A - 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法 - Google Patents

繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2012180414A
JP2012180414A JP2011042901A JP2011042901A JP2012180414A JP 2012180414 A JP2012180414 A JP 2012180414A JP 2011042901 A JP2011042901 A JP 2011042901A JP 2011042901 A JP2011042901 A JP 2011042901A JP 2012180414 A JP2012180414 A JP 2012180414A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
resin
producing
composite structure
resin composite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2011042901A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5724459B2 (ja
Inventor
Nobuo Terashi
信夫 寺師
Hisashi Ito
寿 伊東
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Bakelite Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Bakelite Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Bakelite Co Ltd filed Critical Sumitomo Bakelite Co Ltd
Priority to JP2011042901A priority Critical patent/JP5724459B2/ja
Publication of JP2012180414A publication Critical patent/JP2012180414A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5724459B2 publication Critical patent/JP5724459B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Reinforced Plastic Materials (AREA)
  • Casting Or Compression Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】機械的特性に優れた成形体を効率よく製造可能な成形体の製造方法、および、成形されることで前記成形体を簡単に製造することができる繊維樹脂複合構造体を効率よく製造可能な繊維樹脂複合構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】成形体は、繊維片2と、樹脂等からなるマトリックス3と、からなる複合材料で構成されたものである。このような成形体を製造する方法(本発明の成形体の製造方法)は、複合材料で構成された素形体10に対して、繊維片2以外の成分を選択的に除去する加工を施すことにより、素形体10を所定の形状に裁断する工程と、裁断後の素形体10(繊維樹脂複合構造体100)を成形型内で加圧加熱成形し、成形体を得る工程と、を有する。素形体10中の繊維片2以外の成分(マトリックス3)を選択的に除去する加工は、素形体10にウォータージェットWを噴射するウォータージェット加工が好ましく用いられる。
【選択図】図3

Description

本発明は、繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法に関するものである。
機械部品等の構造体は、高い負荷に耐え得る必要性から、金属材料で構成されることが一般的である。
近年、機械部品の軽量化、静音化、低コスト化等の観点から、金属材料に代えて樹脂材料を繊維片で補強した複合材料の採用が進んでいる。
例えば、特許文献1には、繊維補強材に樹脂を含浸させてなる繊維強化樹脂製歯車が開示されている。この歯車は以下のようにして製造されている。
まず、繊維片を水中に離解分散させ、スラリーを調製する。次いで、このスラリーから抄造法により不織布を得る。そして、打ち抜き加工により不織布をドーナツ型に打ち抜いた後、打ち抜かれた不織布に樹脂を含浸させ、さらに含浸させた樹脂を硬化させることで繊維強化樹脂成形体を得る。最後に、この繊維強化樹脂成形体に機械切削を施すことで歯車を得ている。
ところが、このような方法で製造された歯車には、外周部の機械的強度が低いという問題がある。
特開2007−138146号公報
本発明の目的は、機械的特性に優れた成形体を効率よく製造可能な成形体の製造方法、および、成形されることで前記成形体を簡単に製造することができる繊維樹脂複合構造体を効率よく製造可能な繊維樹脂複合構造体の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) 複数の繊維片が樹脂を含むマトリックス中に分散してなる複合材料で構成された繊維樹脂複合構造体を製造する方法であって、
前記複合材料で構成された素形体に対して、前記繊維片以外の成分を選択的に除去する加工を施すことにより、前記素形体を所定の形状に裁断する工程を有することを特徴とする繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(2) 前記素形体中の前記繊維片以外の成分を選択的に除去する加工は、ウォータージェット加工である上記(1)に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(3) 前記ウォータージェット加工は、媒体として液体のみを用いる加工である上記(2)に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(4) 前記素形体は、前記樹脂の粉末と前記繊維片とを液中に分散させ、抄造することにより製造されたものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(5) 前記素形体は、前記繊維片を液中に分散させ、抄造することにより基材を製造した後、該基材に前記樹脂を含浸させることにより製造されたものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(6) 前記樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(7) 前記素形体中の前記樹脂は、半硬化状態の熱硬化性樹脂である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(8) 前記繊維片は、樹脂繊維片、ガラス繊維片および炭素繊維片のうちの少なくとも1種である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法により得られた繊維樹脂複合構造体を成形型内で成形し、成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
本発明によれば、機械的特性に優れた成形体を効率よく製造することができる。特に、裁断を施されて得られた加工面についても、機械的特性の低下を防止することができるので、駆動する機械部品等に好適に利用可能な成形体を効率よく製造することができる。
また、本発明によれば、成形することで上記成形体を簡単に製造可能な繊維樹脂複合構造体を効率よく製造することができる。
本発明の成形体の製造方法により製造される成形体を模式的に示す断面図である。 本発明の成形体の製造方法の実施形態を説明するための図である。 本発明の成形体の製造方法の実施形態を説明するための図である。 本発明の成形体の製造方法の実施形態を説明するための図である。
以下、本発明の繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の成形体の製造方法により製造される成形体は、樹脂と繊維片とを含む複合材料で構成されたものであり、機械部品のような複雑な形状の構造体にも適用できるように、所望の形状をとり得る。したがって、本発明では、成形体の製造過程において前記複合材料からなる素形体を所望の形状に裁断する過程を経ることで、最終的に所望の形状の成形体を実現している。このため、成形体の表面の少なくとも一部は裁断に伴う加工面になっている。
本発明の成形体の製造方法は、素形体を裁断する際に、素形体中の繊維片を実質的に切断することなく、繊維片以外の成分を選択的に除去する加工を施す工程を有するものである。このような工程を有することにより、加工面近傍における繊維片が、裁断する前の当初の長さ、すなわち成形体を補強するのに十分な長さを維持するものとなる。その結果、成形体の加工面近傍は、内部と同等の機械的特性を有するものとなる。
また、前記複合材料からなる素形体を裁断してなる繊維樹脂複合構造体は、形成しようとする成形体の最終形状に対応したキャビティを有する成形型により成形されることで、所望の形状の成形体を形成し得るものである。すなわち、繊維樹脂複合構造体は、前記成形体を製造するための前駆体であり、成形型等を用いて成形体がとるべき最終形状に成形されることで、前記成形体を容易に製造し得るよう構成されたものである。このような繊維樹脂複合構造体では、少なくとも一部の表面において、繊維片の長手方向の端部が突出するよう配置されている。成形の際には、この繊維片の突出部が表面に押し付けられるように成形されることで、表面の機械的特性を特に高めることに寄与する。したがって、上記のような突出部を有する繊維片(突出繊維片)を有する繊維樹脂複合構造体は、機械的特性に優れた成形体を簡単に製造し得るものである。
なお、成形体の機械的特性とは、表面の変形し難さといった機械的強度、耐摩耗性、疲労強度等の物理的特性の総称である。
<成形体>
まず、本発明の成形体の製造方法により製造される成形体について説明する。
図1は、本発明の成形体の製造方法により製造される成形体を模式的に示す断面図である。
図1に示す成形体1は、前述したように、樹脂と繊維片2とを含む複合材料で構成されている。すなわち、繊維片2は、樹脂やその他の成分からなるマトリックス3中に分散しており、複合材料全体を補強するよう作用する。
(繊維片)
成形体1中に含まれる繊維片2は、いかなる材料で構成されたものでもよいが、具体的には、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、セルロース繊維片のような樹脂繊維片の他、ガラス繊維片、炭素繊維片、金属繊維片、セラミック繊維片、ロックウール、綿繊維片、絹繊維片、木質繊維片等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合したものが用いられる。
このうち、繊維片2としては、樹脂繊維片、ガラス繊維片および炭素繊維片のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これらの繊維片2は、十分な引張強度を有するとともに、優れた耐候性を有するものとなるため、複合材料を補強する繊維片2として有用である。
成形体1中に含まれる繊維片2としては、平均長さが好ましくは0.5〜20mm程度、より好ましくは1〜15mm程度のものが用いられる。繊維片2の長さが前記範囲内であれば、繊維片2の分散状態が均一になるので、成形体1の機械的特性をムラなく均一に高めることができる。
なお、繊維片2の平均長さが前記下限値未満である場合、繊維片2同士が絡まる確率が低下し、成形体1の機械的特性を十分に高めることができないおそれがある。一方、繊維片2の平均長さが前記上限値を超える場合、多数の繊維片2が絡まり合う確率が高くなり、繊維片2を均一に分散させることができないおそれがある。
また、繊維片2の繊維径は、0.5〜30μm程度であるのが好ましく、1〜20μm程度であるのがより好ましい。繊維片2の繊維径が前記範囲内であれば、繊維片2に十分な引張強度と均一な分散性とが付与される。
なお、繊維片2の繊維径が前記下限値未満である場合、繊維片2の構成材料によっては繊維片2の引張強度が低下するおそれがある。一方、繊維片2の繊維径が前記上限値を超える場合、成形体1中において繊維片2を均一に分散させることができず、機械的特性が不均一になるおそれがある。
また、成形体1中の繊維片2の濃度(含有量)は、10〜90体積%程度であるのが好ましく、20〜80体積%程度であるのがより好ましい。これにより、成形体1の機械的特性を確実に高めることができる。
また、繊維片2には、樹脂との密着性、親和性を高める表面処理をあらかじめ施してもよい。表面処理としては、例えば、紫外線照射処理、電子線照射処理、プラズマ照射処理、表面層形成処理等が挙げられる。
このうち、表面層としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤のようなカップリング剤、各種界面活性剤、各種油剤等が挙げられる。
(樹脂)
樹脂としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレン サルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(繊維片の状態)
成形体1は、前述したように、素形体を裁断する過程を経た後、最終形状に成形されることにより形成されたものである。
従来、このような素形体の裁断は、バイト、エンドミルのような工具、打ち抜き金型等を用いて行われていた。
しかしながら、これらの加工ツールは、素形体を完全に切断するよう加工するので、樹脂はもちろん、繊維片も切断してしまう。このため、裁断後の加工面近傍では、繊維片が短く切断されてしまい、繊維片が本来有する補強機能が損なわれる。その結果、得られた成形体では、加工面(端面)近傍の機械的特性が著しく低下し、機械部品等としての利用が困難になっていた。
これに対し、成形体1では、裁断による加工面近傍において、繊維片2が実質的に切断されることなく残存している。このため、このような成形体1は、加工面近傍においても繊維片2の補強機能が保持されることとなり、加工面における機械的特性の低下が防止される。その結果、所望の形状を有し、大きな負荷に耐え得る機械部品等に適用可能な成形体1が得られる。
ここで、成形体1の加工面近傍とは、加工面の表面から繊維片2の平均長さに相当する厚さの領域である。この厚さの領域は、成形体1の加工面の機械的特性に大きな影響を及ぼす領域であるが、従来の成形体では、この領域に含まれる繊維片は短く切断されていたため、機械的特性の低下を招いていた。
しかしながら、本発明により製造される成形体1では、この領域の繊維片2は、加工面近傍より内側に含まれる繊維片2と同等の長さを維持している。具体的には、加工面近傍より内側に含まれる繊維片2の平均長さを1としたとき、加工面近傍に含まれる繊維片2の平均長さは、0.6〜1に相当する長さになっている。このような長さを維持していれば、加工面近傍においても内側と同等の高い機械的特性を有するものが得られる。
また、成形体1の内側に含まれる繊維片2の平均長さを1としたとき、加工面近傍に含まれる繊維片2の平均長さは0.6〜1とされるが、好ましくは0.7〜1とされ、より好ましくは0.8〜1とされる。
なお、成形体1中に含まれる繊維片2の平均長さは、以下のようにして測定される。
加工面近傍や内部に含まれる繊維片2については、引っ張って抜き取ったものあるいは全体が表面に露出しているものを合計100本選び、その平均値を算出することで繊維片2の平均長さが求められる。場合によっては、マトリックス3を溶融または溶解し、繊維片2を抜き取り易くしてもよい。
一方、成形体1の内側に含まれる繊維片2の単位体積当たりの含有量を1としたとき、加工面近傍に含まれる繊維片2の単位体積当たりの含有量は、質量比で1〜1.4であるのが好ましく、1.1〜1.4であるのがより好ましく、1.2〜1.4であるのがさらに好ましい。これにより、成形体1は、加工面近傍に含まれる繊維片2の長さが単に長いだけでなく、加工面近傍に含まれる繊維片2の濃度(密度)までもが高いものとなる。その結果、加工面近傍における機械的特性をさらに強化することができ、より大きな負荷に耐え得る機械部品等に適用することが可能になる。
なお、成形体1に含まれる繊維片2の単位体積当たりの含有量は、5mmの体積の成形体1を切り出し、マトリックス3を溶融または溶解して除去するとともに、残存した繊維片2の質量を測定することで求められる。また、樹脂抽出が困難な場合は、繊維片2およびマトリックス3の真比重と、成形体1の比重から、成形体1に含まれる繊維片2の単位体積当たりの含有量を求めることもできる。
また、繊維片2同士は、絡み合っているのが好ましいが、互いに離れていても補強機能は十分に発揮される。
また、繊維片2の分散状態は、加工面近傍以外では均一に分散しているのが好ましく、繊維片2の分布方向は、全体でランダムであっても、所定の面内においてランダムであっても、あるいは所定の方向に配向していてもよい。
<成形体の製造方法>
次に、上述した成形体1の製造方法(本発明の成形体の製造方法)について説明する。
図2〜4は、それぞれ本発明の成形体の製造方法の実施形態を説明するための図である。
成形体1の製造方法は、樹脂と繊維片2とを含む複合材料で構成された素形体10を得る素形体形成工程と、素形体10に対し、繊維片2以外の成分(マトリックス3)を選択的に除去する加工方法により、所定の形状に裁断し、繊維樹脂複合構造体100を得る裁断工程と、得られた繊維樹脂複合構造体100を成形型20に投入し、最終形状に成形することで成形体1を得る成形工程と、を有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、成形体1を切り出すための母材となる素形体10を得る。
この素形体10は、(i)複合材料を含む分散液から湿式抄造により製造する方法、(ii)繊維片2から不織布等の布帛を製造し、これに樹脂やその他の成分を含浸させる方法、等により製造される。
このうち、(i)の方法では、まず、樹脂、繊維片2、およびその他の成分を、分散媒に添加し、分散液を調製する。
樹脂は、粒子状、針状、鱗片状のような粉体として添加される(図2(a)に示す樹脂粉30参照)。このうち、粒子状であるのが好ましく、その平均粒径は0.5〜100μm程度であるのが好ましく、1〜50μm程度であるのがより好ましい。
また、樹脂には、前述した各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が用いられるが、熱溶融型および自硬化型に設定された状態で用いられるのが好ましい。これにより、後述する加圧成形における固化または硬化を容易に行うことができる。
具体的には、上記のような状態に設定された熱硬化性樹脂としては、もともと自硬化型の樹脂の場合、加熱等により半硬化させたもの(半硬化物)、あるいは、非自硬化型の樹脂の場合、硬化剤の添加により半硬化させたもの(半硬化物)等が挙げられる。なお、このような状態は「Bステージ」ともいわれる。
例えば、フェノール樹脂の半硬化物は、フェノール類とアルデヒド類とを混合し、さらに樹脂化触媒を添加し、加熱した後、還流反応を行い、最後に未反応物および反応残渣を除去することにより製造される。加熱温度は、樹脂を完全に硬化させない程度に設定され、例えば100〜140℃程度であるのが好ましい。
また、変性樹脂を得る場合は、樹脂化触媒とともに変性剤を添加するようにすればよい。
なお、例えば自硬化型のレゾール型フェノール樹脂を製造する場合には、樹脂化触媒として、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物または酸化物、バリウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物または酸化物、アンモニア、トリエチルアミンのようなアミン類等の中から選択された1種または2種以上が用いられる。
以上のようにして、自硬化型の樹脂を、熱溶融型に設定することができる。
一方、例えば非自硬化型のノボラック型フェノール樹脂を製造する場合には、自硬化型の場合と同様のプロセスで製造されるが、樹脂化触媒としては異なるものが用いられる。この樹脂化触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、シュウ酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸等の酸の中から選択された1種または2種以上が用いられる。
その後、得られたノボラック型フェノール樹脂に所定量の硬化剤を添加する。この硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミンのような硬化剤が挙げられる。硬化剤の添加量は、樹脂を完全に硬化させない程度に設定され、一例として、樹脂100質量部に対して1〜20質量部程度とされる。
以上のようにして、非自硬化型の樹脂を、熱溶融型および自硬化型に設定することができる。
また、得られた半硬化物は、必要に応じて粉砕することにより、前述した粉体の樹脂が得られる。粉砕方法としては、例えば、ハンマーミル、ジェットミル等の粉砕装置が得られる。さらに、ふるいがけ等の分級処理を施すことにより、樹脂の粒径を調整することができる。
また、樹脂が熱可塑性樹脂である場合、加熱により溶融し、その後の加熱終了後には固化するため、後述する加圧加熱成形における固化を容易に行うことができる。
分散媒としては、上記構成要素を均一に分散し得るものであれば、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。
また、分散液における繊維片2の濃度は、特に限定されないが、0.1〜3質量%程度であるのが好ましく、0.2〜1質量%程度であるのがより好ましい。
このようにして得られた分散液から素形体10を湿式抄造する。湿式抄造では、網や布等の抄造帯で繊維片2を抄き上げる方法で素形体10を形成するが、この際、繊維片2は、樹脂やその他の成分が付着した状態で抄き上げられる。その後、圧搾し乾燥させることにより、繊維片2が、樹脂粉30やその他の成分からなるマトリックス3中に分散した、図2(a)に示すような素形体10が得られる。換言すれば、素形体10は、繊維片2の集合体にマトリックス3が分散してなるものである。なお、抄き上げの回数によって素形体10の厚さを適宜調整することができる。
湿式抄造には、丸網抄造機、円網抄造機、長網抄造機のような各種抄造機が用いられる。
なお、分散液に添加する前記その他の成分としては、例えば、硬化剤、酸化防止剤、難燃剤、耐光剤、紫外線吸収剤、光安定剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、分散剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤、導電剤、粘度調整剤、抗菌剤等が挙げられる。
また、素形体10中におけるこれらの成分の含有量は、特に限定されないが、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
一方、(ii)の方法では、まず、繊維片2から公知の方法により不織布を製造する。不織布の製造方法としては、例えば、繊維片2を気流に乗せて一定方向またはランダムに並べてシート状にする乾式法や、上述した湿式抄造と同様の湿式法等が知られている。なお、必ずしも不織布である必要はなく、織布であってもよい。
次いで、樹脂およびその他の成分を含む液状材料を調製する。ここで、液状材料中の樹脂は、溶融した状態になっている。そして、上記で得られた不織布に液状材料を含浸させる。その後、樹脂を固化させることにより、繊維片2の不織布にマトリックス3が分散してなる図2(b)に示すような素形体10が得られる。液状材料には、(i)の方法で説明したのと同様の分散媒が用いられる。また、液状材料の分散は、例えば、不織布を液状材料に浸漬する方法、不織布に液状材料を塗布する方法、不織布に液状材料を噴霧する方法等により行われる。
なお、上記(i)、(ii)の方法により製造された素形体10は、その後の裁断を施すことができる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
[2]次に、素形体10に裁断を施し、繊維樹脂複合構造体100を得る。
この裁断は、素形体10のうち繊維片2以外の成分を選択的に除去する加工方法により裁断する加工(選択的裁断)である。具体的には、例えば、ウォータージェット加工、エアージェット加工、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工のような加工媒体を吹き付ける加工方法や、樹脂やその他の成分(マトリックス)のみを溶解させる溶解液に接触させる加工方法、レーザー加工による方法等が用いられる。
図3は、ウォータージェット加工により図2(a)に示す素形体を裁断する様子を説明するための図である。
ウォータージェット加工は、細いノズルから加工対象に向けて高圧の水を噴射しつつノズルを走査させることにより、走査パターンに沿って所定形状の裁断を行う加工方法である。
素形体10に対して、図3(a)に示すようにウォータージェットWを当てると、素形体10のうち、マトリックス3のみがウォータージェットWの水勢によって除去され、繊維片2のほとんどは残存する。これは、繊維片2が極細い繊維であり、しかも一般にしなやかであるため、ウォータージェットWの水勢を受け流すことができるためである。このため裁断によって、マトリックス3のみが除去されることとなり、繊維片2は、図3(b)に示すように、その一端側がマトリックス3と繊維片2の絡まりによって固定され、他端側はウォータージェットWが除去した領域(裁断痕)に突出した状態で残存することとなる。その結果、素形体10を所定の形状に裁断することができる。このような裁断により素形体10から不要部分を除去した繊維樹脂複合構造体100が得られる。得られた繊維樹脂複合構造体100の加工面には、繊維片2の一部が突出した状態になる。ここで、繊維片2のうち、この突出した部分を突出部2aとし、突出部2aを有する繊維片2を特に突出繊維片という。
なお、繊維樹脂複合構造体100は、成形体1の形状(最終形状)に近く、それよりやや大きい形状に加工される。具体的には、後述する成形工程におけるマトリックス3の収縮率や成形によって折り曲げられる繊維片2の長さを踏まえ、それを加味した分だけ成形体1よりも大きい形状であればよい。
繊維樹脂複合構造体100は、繊維片2の配置等に特徴を有するものであり、後述する成形工程を経ることで成形体1を容易に製造し得るものである。
繊維片2のうち、突出繊維片以外の繊維片の平均長さを1としたとき、突出繊維片の平均長さは0.6〜1であるのが好ましく、0.7〜1であるのがより好ましく、0.8〜1であるのがさらに好ましい。突出繊維片の長さが前記範囲内であれば、繊維樹脂複合構造体100を後述する成形工程に供したとき、得られる成形体1は、その表面(裁断による加工面)近傍に十分な長さの繊維片を有するものとなる。その結果、成形体1の表面近傍では、繊維片2が本来有する補強機能が確実に発揮され、十分な機械的特性が発現する。
なお、繊維片2の平均長さは、前述した成形体1における繊維片2の平均長さと同様の方法で測定される。
ここで、ウォータージェット加工の条件は、特に限定されない。例えば、水圧は10〜500MPa程度であるのが好ましく、30〜300MPa程度であるのがより好ましい。水圧を前記範囲内に設定すれば、繊維片2を残存させつつマトリックス3のみを選択的に除去する裁断を、より確実に行うことができる。
また、ウォータージェット加工に用いる水には、水道水、純水、蒸留水、中水等が用いられ、特に限定されず、必要に応じてその他の液体(有機溶剤、または有機溶剤と水との混合液等)を使用してもよい。また、水に研磨材を混合するようにしてもよい。混合する研磨材としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ダイヤモンド、ガーネット、砂、カーボン、窒化ホウ素等が挙げられ、これらの1種または2種以上が組み合わせて用いられる。また、研磨材を用いる場合、その平均粒径は、特に限定されないが、50〜300μmであることが好ましく、100〜250μmであることがより好ましい。これにより、マトリックス3のみをより確実に除去することができる。
また、ウォータージェットWの外径(噴射ノズルの口径)は、特に限定されないが、繊維片2の平均長さの30%以下であるのが好ましく、0.5〜20%程度であるのがより好ましく、1〜15%程度であるのがさらに好ましい。これにより、裁断痕において繊維片2の突出部2aが突出するように加工することが確実に行える。一例として、噴射ノズルの口径は、0.1〜1mm程度であるのが好ましい。
さらに、噴射ノズルの先端と被加工物である素形体10との離間距離は、噴射ノズルと被加工物とが接触しなければ特に限定されないが、一例として1〜50mm程度であるのが好ましく、3〜30mm程度であるのがより好ましい。
なお、裁断に時間がかかる場合もあるが、できるだけ研磨材を添加しないで水(液体)のみを用いた方が、繊維片2の残存率を高めるという点では有効である。
一方、エアージェット加工は、水の代わりに空気等のガスを使用し、これを加工媒体として使用する加工方法である。エアージェット加工では、ガスを超音速まで加速し、得られた超音速噴流を素形体10に当てて裁断を行う。噴射ノズルの入り口におけるガス圧力は、2〜50MPa程度であるのが好ましく、3〜30MPa程度であるのがより好ましい。
また、サンドブラスト加工およびショットブラスト加工は、ガスの噴流に研磨材を添加して裁断を行う加工方法である。研磨材としては、前述したようなものが用いられる。
なお、エアージェット加工、サンドブラスト加工およびショットブラスト加工のいずれにおいても、噴流の外径(噴射ノズルの口径)は、繊維片2の平均長さの30%以下であるのが好ましく、0.5〜20%程度であるのがより好ましく、1〜15%程度であるのがさらに好ましい。
また、樹脂やその他の成分(マトリックス)のみを溶解させる溶解液を、裁断すべき領域に供給することでも、マトリックス3のみを除去することができる。この溶解液としては、繊維片2の構成材料の溶解性とマトリックス3の構成材料の溶解性とを考慮して適宜設定されるが、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド化合物、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンのようなラクトン化合物、メチルエチルケトンのようなケトン化合物等が好ましく用いられる。
なお、溶解液を供給する領域の幅は、前述した噴流の外径と同程度であるのが好ましい。
また、レーザー加工では、マトリックス3のみを揮発または溶融して除去し得るよう、波長、出力、光源等を適宜選択すればよい。さらに、マトリックス3に発熱剤を混合しておくことにより、レーザー照射によりマトリックス3のみを自己発熱させ、マトリックス3のみを除去するようにしてもよい。発熱剤としては、例えば、グラファイト等が挙げられる。
なお、上記裁断を行う際には、加工媒体、例えばウォータージェット加工の場合はウォータージェットを素形体の表面に対して二次元的に走査しつつ加工するが、三次元的に走査するようにしてもよい。これにより、立体形状を切り出すことも可能になる。
[3]次に、繊維樹脂複合構造体100を成形型20のキャビティ21内に投入し、加圧成形する(図4(c)参照)。これにより、成形体1が得られる。
繊維樹脂複合構造体100のうち、マトリックス3の形状および寸法を、成形型20のキャビティ21の形状および寸法に合わせて設定するのが好ましい。これにより、成形型20のキャビティ21内に納められた繊維樹脂複合構造体100のうち、突出部2aを有する繊維片2の少なくとも一部は、図4(d)に示すように、キャビティ21の内壁によってマトリックス3側に折り曲げられ、マトリックス3の加工面に押さえつけられることとなる。その結果、突出部2aを有する繊維片2は、その一端側が成形体1の内側方向を指向するとともにマトリックス3によって固定され、他端側(突出部2a)はマトリックス3の加工面に沿って延在するよう配置されたものとなる。なお、成形体1の内側方向とは、成形体1の加工面より内側の方向であれば、特に限定されない。
また、突出部2aがこの状態を維持したまま、繊維樹脂複合構造体100のマトリックス3は、加熱によって一旦溶融し、その後加圧成形されつつ固化または硬化する。その結果、繊維片2がマトリックス3中に分散してなる成形体1が得られる。そして、突出部2aを有する繊維片2の少なくとも一部は、マトリックス3の加工面に沿って延在した状態で固定される。
なお、得られた成形体1には、上述したように、加工面近傍に、一端側が成形体1の内側方向を指向し、他端側が加工面に沿って延在するよう配置された繊維片2が多数含まれることとなる。具体的には、加工面近傍に含まれた繊維片2のうち、個数基準で20%以上のものが前記配置をとるよう構成されていれば、成形体1は優れた機械的特性を享受するものとなる。なお、この割合は、好ましくは30%以上とされ、より好ましくは50%以上とされる。
加圧加熱成形における加圧力は、マトリックス3の組成等に応じて適宜設定されるが、例えば、0.5MPa以上であるのが好ましく、1〜50MPa程度であるのがより好ましく、2〜30MPa程度であるのがさらに好ましい。加圧力を前記範囲内とすることにより、繊維片2を切断することなく、複合材料の機械的強度を十分に高めることができる。そして、寸法精度が高く固化または硬化後の変形が抑制された成形体1の製造が可能になる。
また、加圧成形時における加熱温度は、マトリックス3中の樹脂が溶融温度以上(熱可塑性樹脂の場合)または硬化温度以上(熱硬化性樹脂の場合)であればよく、それに応じて適宜設定されるが、一例を挙げると、140〜350℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。
さらに、加圧成形時における固化(冷却)時間(熱可塑性樹脂の場合)または硬化時間(熱硬化性樹脂の場合)は、樹脂の固化または硬化速度にもよるが、例えば、30秒〜30分程度であるのが好ましく、1〜20分程度であるのがより好ましい。これにより、変形の少ない成形体1の製造が可能になる。
このようにして製造された成形体1では、裁断により得られた加工面に沿って繊維片2の一部(突出部2a)が延在している(図4(d)参照)。このため、成形体1では、加工面近傍Sに繊維片2が集中して配置されることとなり、加工面近傍Sの機械的特性の低下が防止される。特に、加工面に沿って繊維片2が延在するように配置された結果、加工面近傍Sは、成形体1の内部Cに比べて機械的特性にとりわけ優れたものとなる。よって、成形体1は、駆動する機械部品等に好適に利用することができる。
また、突出部2aが加工面近傍Sに沿って配置された結果、加工面近傍Sにおける単位体積当たりの繊維片2の含有量は相対的に高くなる。したがって、この含有量は、内部Cにおける単位体積当たりの繊維片2の含有量よりも高い値になる。
以上のようにして機械的特性に優れた成形体1を効率よく製造することができる。
なお、成形体1としては、例えば、平歯車、内歯車、ラック、はすば歯車、すぐばかさ歯車、フェースギア、ウォームギアのような各種歯車、スプロケット、カム、リンク機構、軸、軸受等の各種機械要素の他、自動車、自転車、航空機、鉄道車両、建設機械、船舶のような乗り物、工作機械、加工機、産業用ロボットのような産業機械等の各種構成部品等に適用可能である。特に各種歯車等の機械要素では、歯面やキー溝等の摩擦が発生する箇所が多いため、本発明が好適に適用される。
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば成形体には、その表面に任意の構成物(例えば被覆層等)が付加されていてもよい。また、本発明の成形体の製造方法は、さらに任意の目的の工程を有していてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.歯車の製造
(実施例1)
まず、平均長さ3mm、繊維径12μmのパラ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラ」)と、平均粒径15μmのフェノール樹脂粉末(住友ベークライト(株)製の、PR−50731、PR−51723、PR−53529を1:1:1の質量比で混合したフェノール樹脂粉末)とを、4:6の質量比で混合し、繊維片の濃度が0.5質量%になるように水に分散させて分散液を調製した。
次いで、湿式抄造機により、分散液からシート状の素形体を抄造した。素形体の形状は、縦50mm×横50mm×厚さ5mmである。
次いで、ウォータージェット加工により、素形体に裁断を施し、平歯車用の繊維樹脂複合構造体を切り出した。なお、ウォータージェット加工における加工条件は以下の通りである。
<加工条件>
・水圧 :200MPa
・加工媒体 :水道水のみ
・ノズル口径:100μm
・離間距離 :10mm(噴射ノズルの先端と素形体との距離)
・走査速度 :500mm/分
得られた繊維樹脂複合構造体について、加工面を光学顕微鏡で観察したところ、加工面に向かって突出する多数の繊維片の存在が確認された。
次いで、得られた繊維樹脂複合構造体を成形型のキャビティ内に投入し、以下の成形条件で加圧加熱成形した。
<成形条件>
・加熱温度 :200℃
・加圧力 :30MPa
・成形時間 :10分
以上のようにして成形体からなる平歯車を得た。得られた歯車は、歯先円直径50mm、基準円直径48mm、歯数48個の平歯車である。
得られた平歯車の加工面を光学顕微鏡で観察したところ、繊維樹脂複合構造体で観察された繊維片の突出部は折り曲げられ、加工面に沿うように分布していることが認められた。
(実施例2)
平均長さ3mm、繊維径12μmのパラ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラ」)と、平均長さ3mm、繊維径10μmのメタ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「コーネックス」)と、平均粒径15μmのフェノール樹脂粉末(住友ベークライト(株)製の、PR−50731、PR−51723、PR−53529を1:1:1の質量比で混合したフェノール樹脂粉末)とを、2:2:6の質量比で混合し、繊維片の濃度が0.5質量%になるように水に分散させて分散液を調製した。
その後、得られた分散液を用い、実施例1の場合と同様にして平歯車を得た。
(実施例3)
平均長さ3mm、繊維径12μmのパラ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラ」)と、平均長さ6mm、繊維径9μmのガラス繊維の繊維片と、平均粒径15μmのフェノール樹脂粉末(住友ベークライト(株)製の、PR−50731、PR−51723、PR−53529を1:1:1の質量比で混合したフェノール樹脂粉末)とを、4:1:5の質量比で混合し、繊維片の濃度が0.5質量%になるように水に分散させて分散液を調製した。
その後、得られた分散液を用い、実施例1の場合と同様にして平歯車を得た。
(実施例4)
繊維片を、平均長さ3mm、繊維径15μmのポリアリレート繊維の繊維片((株)クラレ製「ベクトランHT」)に変更した以外は、実施例1の場合と同様にして平歯車を得た。
(実施例5)
ウォータージェット加工における加工媒体として、平均粒径110μmのガーネット粉末(研磨材)を添加した水道水を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、水道水中のガーネット粉末の濃度は10質量%とした。
(実施例6)
ウォータージェット加工における加工媒体として、平均粒径180μmのガーネット粉末(研磨材)を添加した水道水を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、水道水中のガーネット粉末の濃度は10質量%とした。
(実施例7)
ウォータージェット加工に代えてサンドブラスト加工を施すようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、加工条件は、以下の通りである。
<加工条件>
・ガス圧 :1MPa
・加工媒体 :空気+窒化ホウ素粉末(平均粒径3μm)
・ノズル口径:300μm
・離間距離 :0.5mm(噴射ノズルの先端と素形体との距離)
(実施例8)
まず、平均長さ3mm、繊維径12μmのパラ型アラミド繊維の繊維片(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラ」)を、濃度が0.5質量%になるように水に分散させて繊維片分散液を調製した。
次いで、湿式抄造機により、繊維片分散液からシート状の不織布を抄造した。不織布の形状は、縦50mm×横50mm×厚さ5mmである。
一方、平均粒径15μmのフェノール樹脂粉末(住友ベークライト(株)製の、PR−50731、PR−51723、PR−53529を1:1:1の質量比で混合したフェノール樹脂粉末)を、濃度が0.5質量%となるように水に分散させて樹脂分散液を調製した。
次いで、不織布と同等の大きさのキャビティを有する成形型に不織布を入れ、キャビティ内を減圧後、キャビティ内に樹脂分散液を注入して不織布に含浸させた。不織布に含浸した樹脂の量は、不織布:樹脂の質量比が4:6となる量であった。
その後、樹脂が含浸した不織布を乾燥させることにより、縦50mm×横50mm×厚さ5mmの素形体を得た。
次いで、実施例1と同様にしてウォータージェット加工および加圧加熱成形を施すことにより、成形体からなる平歯車を得た。
(実施例9)
縦50mm×横50mm×厚さ1mmの不織布を5枚積層し、これを基材として素形体を製造するようにした以外は、実施例8と同様にして平歯車を得た。
(実施例10)
繊維片を、平均長さ6mm、繊維径9μmのガラス繊維の繊維片に変更した以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。
(実施例11)
繊維片を、平均長さ6mm、繊維径8μmの炭素繊維の繊維片に変更した以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。
(実施例12)
フェノール樹脂粉末に代えてエポキシ樹脂粉末(三菱化学(株)製、YX4000の粉末)を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、成形温度は150℃とした。
(実施例13)
フェノール樹脂粉末に代えてナイロンMC901粉末を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。なお、成形温度は250℃とした。
(比較例1)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例1と同様にして平歯車を得た。
(比較例2)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例8と同様にして平歯車を得た。
(比較例3)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例10と同様にして平歯車を得た。
(比較例4)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例11と同様にして平歯車を得た。
(比較例5)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例12と同様にして平歯車を得た。
(比較例6)
ウォータージェット加工に代えて、打ち抜き型による打ち抜き成形加工を施すようにした以外は、実施例13と同様にして平歯車を得た。
2.歯車の評価
2.1 繊維片の長さおよび単位体積当たりの含有量の評価
各実施例および各比較例で得られた平歯車(以下、「評価用歯車」という。)について、裁断による加工面近傍に含まれる繊維片の平均長さと、加工面近傍より内側に含まれる繊維片の平均長さとを測定した。そして、後者の平均長さを1としたとき、前者の平均長さの相対値を算出した。
また、各評価用歯車について、加工面近傍に含まれる繊維片の単位体積当たりの含有量と、加工面近傍より内側に含まれる繊維片の単位体積当たりの含有量とを測定した。そして、後者の含有量を1としたとき、前者の含有量の相対値を算出した。
2.2 疲労強度の評価
各評価用歯車について、以下のようにして疲労強度の評価を行った。
まず、評価用歯車に回転軸を装着し、モーターで回転させるよう設定した。
一方、ステンレス鋼(SUS304)で構成された相手歯車を用意し、所定の負荷がかかる回転軸を装着した。負荷(トルク)の大きさは、10N・mとした。また、相手歯車の形状、寸法は、各評価用歯車と同じにした。
次いで、評価用歯車と相手歯車とを噛合せ、評価用歯車に接続したモーターを駆動させた。この際、モーターの回転数は1000rpmとした。
そして、評価用歯車が壊れ、空回りが生じるまでの時間を評価した。なお、この評価は、比較例1、2、3、4、5、6で得られた評価用歯車で計測された時間をそれぞれ1として、対応する実施例1〜7、8〜9、10、11、12、13で得られた評価用歯車で計測された時間の相対値を比較することで行った。
2.3 表面強度の評価
各評価用歯車について、以下のようにして加工面の表面強度の評価を行った。
まず、評価用歯車を切断し、歯部の1つを切り出した。そして、歯部の歯面に外径1mmのピンゲージを歯面に対して垂直方向に2.5mm/分の速度で押し当て、歯部が破壊されるときの荷重を測定した。なお、歯部が破壊したか否かは、歯面の亀裂の有無を目視で確認することにより判断した。そして、比較例1、2、3、4、5、6で得られた評価用歯車で測定された荷重をそれぞれ1として、対応する実施例1〜7、8〜9、10、11、12、13で得られた評価用歯車で測定された荷重の相対値を評価した。
以上、2.1〜2.3の評価結果を表1に示す。
Figure 2012180414
表1から明らかなように、各実施例で得られた平歯車(以下、「実施例の平歯車」という。)では、加工面近傍に含まれる繊維片の長さが、加工面近傍より内側に含まれる繊維片の長さと同等程度であることが認められた。このことから、実施例の平歯車の加工面近傍では、繊維片が実質的に切断されることなく残存していることが推察される。
一方、各比較例で得られた平歯車(以下、「比較例の平歯車」という。)では、加工面近傍に含まれる繊維片の長さが、加工面近傍より内側に含まれる繊維片の長さより著しく短くなっていた。このことから、比較例の平歯車の加工面近傍では、繊維片が切断されていることが推察される。
また、疲労強度の評価から、実施例の平歯車は、比較例の平歯車に比べて十分な疲労強度を有していることが認められた。なお、実施例の平歯車の歯面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、歯面に沿って繊維片が延在している様子が認められたのに対し、比較例の平歯車の歯面には、歯面に繊維片の横断面が露出していた。
また、表面強度の評価から、実施例の平歯車は、比較例の平歯車に比べて高い表面強度を有していることが認められた。
2.4 断面の観察
平歯車の歯面の様子を確認するため、各平歯車を厚さが半分になるように切断した。そして、切断面をSEMで観察したところ、実施例の平歯車では、歯面近傍の繊維片の多くは、その一端部が歯面よりも内側に入り込んでいる一方、他端部は歯面に沿って延在している様子が認められた。したがって、このような繊維片は、一端部が歯面より内側に入り込んでいることで確実に固定されている一方、他端部が歯面を覆うように延在していることとなる。このように配置された繊維片が存在することで、実施例の平歯車では、疲労強度および歯面の表面強度が高くなっていると推察される。
一方、比較例の平歯車では、繊維片が短く切断されており、歯面に沿って延在する繊維片はほとんど存在していなかった。
1 成形体
2 繊維片
2a 突出部
3 マトリックス
30 樹脂粉
10 素形体
20 成形型
21 キャビティ
100 繊維樹脂複合構造体
S 加工面近傍
C 内部
W ウォータージェット

Claims (9)

  1. 複数の繊維片が樹脂を含むマトリックス中に分散してなる複合材料で構成された繊維樹脂複合構造体を製造する方法であって、
    前記複合材料で構成された素形体に対して、前記繊維片以外の成分を選択的に除去する加工を施すことにより、前記素形体を所定の形状に裁断する工程を有することを特徴とする繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  2. 前記素形体中の前記繊維片以外の成分を選択的に除去する加工は、ウォータージェット加工である請求項1に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  3. 前記ウォータージェット加工は、媒体として液体のみを用いる加工である請求項2に記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  4. 前記素形体は、前記樹脂の粉末と前記繊維片とを液中に分散させ、抄造することにより製造されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  5. 前記素形体は、前記繊維片を液中に分散させ、抄造することにより基材を製造した後、該基材に前記樹脂を含浸させることにより製造されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  6. 前記樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である請求項1ないし5のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  7. 前記素形体中の前記樹脂は、半硬化状態の熱硬化性樹脂である請求項1ないし5のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  8. 前記繊維片は、樹脂繊維片、ガラス繊維片および炭素繊維片のうちの少なくとも1種である請求項1ないし7のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の繊維樹脂複合構造体の製造方法により得られた繊維樹脂複合構造体を成形型内で成形し、成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
JP2011042901A 2011-02-28 2011-02-28 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法 Expired - Fee Related JP5724459B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011042901A JP5724459B2 (ja) 2011-02-28 2011-02-28 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011042901A JP5724459B2 (ja) 2011-02-28 2011-02-28 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012180414A true JP2012180414A (ja) 2012-09-20
JP5724459B2 JP5724459B2 (ja) 2015-05-27

Family

ID=47011880

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011042901A Expired - Fee Related JP5724459B2 (ja) 2011-02-28 2011-02-28 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5724459B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019025685A (ja) * 2017-07-26 2019-02-21 日立化成株式会社 樹脂製歯車の製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0524041A (ja) * 1991-07-18 1993-02-02 Hitachi Chem Co Ltd プリプレグの製造方法
JP2001150432A (ja) * 1999-11-25 2001-06-05 Matsushita Electric Works Ltd プリプレグ及びプリプレグの製造方法及び積層板の製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0524041A (ja) * 1991-07-18 1993-02-02 Hitachi Chem Co Ltd プリプレグの製造方法
JP2001150432A (ja) * 1999-11-25 2001-06-05 Matsushita Electric Works Ltd プリプレグ及びプリプレグの製造方法及び積層板の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019025685A (ja) * 2017-07-26 2019-02-21 日立化成株式会社 樹脂製歯車の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5724459B2 (ja) 2015-05-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5908188B2 (ja) 端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品
JP5673375B2 (ja) 繊維樹脂複合構造体、成形体の製造方法及び成形体
JP6077132B2 (ja) ステンレス鋼−樹脂複合体及びそれを調製する方法
KR102320480B1 (ko) 탄소섬유 강화 성형 재료 및 성형체
JP4002294B2 (ja) 炭素繊維Ti−Al複合材料及びその製造方法。
JP5729017B2 (ja) 繊維樹脂複合構造体および成形体
CN105782243A (zh) 一种摩擦副激光微织构表面固体润滑处理方法
TWI653146B (zh) 無機非金屬與塑膠的複合體及其製備方法
JP2008002000A (ja) 繊維成形体およびその製造方法
EP2634159B1 (en) Carbon-fiber-reinforced silicon-carbide-based composite material
JP5724459B2 (ja) 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法
JP4019123B2 (ja) 炭素繊維Ti−Al複合材料及びその製造方法
JP5724460B2 (ja) 繊維樹脂複合構造体の製造方法および成形体の製造方法
JP5956150B2 (ja) 炭素繊維強化熱可塑性樹脂およびその成形品の製造方法
JP5660375B2 (ja) 摩擦材の製造方法
JP3343599B2 (ja) 摩擦材の製造方法
JP2011089060A (ja) 繊維強化樹脂複合体
JP4925649B2 (ja) 摺動部材用フェノール樹脂成形材料及びこれを用いた樹脂製摺動部品
JP2013203836A (ja) 炭素繊維複合成形体、炭素繊維サンドイッチ材、及びその炭素繊維複合成形体を含む自動車用フロアパン
JP6103299B2 (ja) 樹脂成形体の製造法及び樹脂製歯車の製造法
JP2004107661A (ja) 水中用摺動部材ならびにその製造方法
JP6004314B2 (ja) 金属基複合体の製造方法
JP3687143B2 (ja) 金属粉末射出成形体のバリ処理方法
KR20130090448A (ko) 기어펌프용 플라스틱 기어의 제조방법
JP2001335644A (ja) 樹脂成型体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140120

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20141114

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20141118

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150114

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150303

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150316

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5724459

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees