JP2012180340A - 脳機能低下抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】青大豆種子又はその溶媒抽出物を含有する脳機能低下抑制剤。
【選択図】なし
Description
例えば、ポリフェノール化合物は植物の二次代謝産物であり、植物界に普遍的かつ多種、多量に存在することが知られ、多彩な生理活性を示すため薬学、植物化学等の分野で以前から注目されてきた。健康食品分野で最近着目されている茶ポリフェノール、特にカテキン類は、抗菌、抗ウイルス、抗突然変異、抗酸化、血圧上昇抑制、血中コレステロール低下、抗う蝕、抗アレルギー、腸内フローラ改善、消臭等の様々な作用を持つことが知られている。
一般に、青大豆には、あきたみどりのように、種皮及び胚が緑色を呈する品種と、大袖振のように種皮のみが緑色を呈する品種が知られているが、本発明の青大豆は、いずれの品種であってもよい。好ましくは種皮及び胚が緑色を呈する品種である。また、青大豆であっても「臍」の色は、品種により黄、緑、暗褐色、黒と様々であるが、特に制限しない。
「完熟状態」とは、種子が発芽能力を有するまでに十分に成熟した状態をいう。一般に枝豆と称される未成熟な状態の大豆種子は、黄色大豆又は黒大豆であっても緑色を呈している。しかし、このような未成熟状態時のみに緑色を呈する品種は、本発明の青大豆には該当しない。また、ここでいう「緑色」とは、波長490nm〜570nmの反射光に基づいてヒトの眼によって認識される色彩をいう。したがって、「緑色」とは、前記波長の範囲内であれば、その濃度を制限するものではなく、例えば、淡緑色、黄緑色、緑、青緑色、濃緑色及び黒緑色を包含する。
上記の有機溶媒の中では、操作性や環境性の点から、室温で液体であるアルコール、例えば、炭素原子数1〜4の低級アルコールを用いるのが好ましく、残留溶媒による安全性の観点からはエタノールを用いるのがより好ましい。
したがって、本発明の脳機能低下抑制剤は、ヒト又は動物用の医薬、飲食品、飼料等として、あるいはそれらを製造するために有用である。
本発明の医薬の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等の経口剤、吸入剤、坐剤等の経腸製剤、点滴剤、注射剤等が挙げられる。これらのうちでは、経口剤が好ましい。
なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングされていてもよい。
上記医薬は、青大豆種子の溶媒抽出物の乾燥質量を基準として、成人1日当たり0.01〜100gの範囲で投与される。経口投与の場合、一般的な1日当たりの投与量は、0.1〜50gであるが、該抽出物は安全性の高いものであるため、その投与量をさらに増やすこともできる。上記1日当たりの投与量は、1回で投与してもよいが、数回に分けて投与してもよい。
上記1日当たりの投与量を適切に投与できるよう、本発明の医薬の剤型又は投与レジメンを、1日当たりの投与量が管理できる形にすることが望ましい。
具体的な飲食品の形態の例としては、緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、アルコール飲料、精製水等の飲料、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等が挙げられる。
本発明の飼料は飲食品とほぼ同様の組成や形態で利用できることから、本明細書における飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることが出来る。
上記飲食品及び飼料は、青大豆種子の溶媒抽出物の乾燥質量を基準として、成人1日当たり0.01〜100gの範囲で摂取される。好ましい1日当たりの摂取量は、0.1〜50gであるが、該抽出物は安全性の高いものであるため、その摂取量をさらに増やすこともできる。上記1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。
上記1日当たりの摂取量を適切に摂取できるよう、本発明の飲食品又は飼料の形態を、1日当たりの摂取量が管理できる形にすることが望ましい。
これらの添加剤の配合量は、本発明の医薬、飲食品及び飼料の剤型又は形態、当該添加剤の種類および所望する摂取量に応じて適宜決められるが、当該医薬、飲食品及び飼料中、0.01〜70質量%の範囲内であり、好ましくは0.1〜50質量%の範囲内である。
青大豆(エチゴミドリ)を破砕したもの1kgに水12Lを加え、95℃で60分間加熱して抽出を行った。遠心分離して沈殿を除去し、上清を濾過して不溶物を除去し、得られた濾液を凍結乾燥して粉末346gを得た。
普通大豆(フクユタカ)を破砕したもの400gに水4Lを加え、95℃で60分間加熱して抽出を行った。遠心分離して沈殿を除去し、上清を濾過して不溶物を除去し、得られた濾液を凍結乾燥して粉末145gを得た。
(サンプル)
4週齢のSAMP10マウス(日本エスエルシー株式会社)を購入し、1群12匹として下記表1に記載の3群に分け、各々異なる試験食を与えて飼育した。各群マウスに、表1記載の飼料を1月齢から12月齢まで自由摂取させた。下記試験1〜4に記載の手順でマウスの大脳湿重量の測定、及び学習・記憶能の測定を行った。各群における平均摂餌量は、青大豆摂取群5.6g±0.1/day、普通大豆摂取群5.1g±0.1/day、対照群5.7g±0.1/dayであった。
老化モデルマウスであるSAMP10では、加齢に伴い大脳湿重量が減少し大脳の萎縮が認められる。各群12月齢のマウスを深麻酔下で屠殺し、脳を取り出し、大脳湿重量を測定した。その結果、青大豆摂取群では12月齢における大脳の萎縮が抑制されていた(図1)。このことから、青大豆の摂取は加齢に伴う脳萎縮を抑制する作用があることが示唆された。一方、普通大豆摂取群では、対照群に比較し、さらに脳萎縮を進行させた。
学習能力低下抑制効果の判定は、11月齢の時点で、マウスが暗いところを好む性質を利用したステップスルー受動回避試験により行った。すなわち、下記手順により、飼育ケージに暗室を設置し、暗いところを好むマウスが暗室に入った時に弱い電気ショックを与えることによって、「暗室に入らないこと」をマウスに学習させ、学習に要する時間を測定し、各群間で比較した。
(方法)
(1)マウスを明室に入れ、1分後に暗室入り口のドアを開けた。
(2)ドアを開けてからマウスが暗室に移動するまでの時間を測定した。
(3)マウスが暗室に移動した時点でドアを閉め、50μAの電流を1秒間床に流し、
マウスに電気ショックを与えた。
(4)暗室の蓋を開け静かにマウスを取りだし、再び明室に入れた。
(5)1分後に上記と同様に暗室のドアを開け、マウスが暗室に入るまでの時間を測定し 、暗室に入ったら電気ショックを与えた。
(6)この試験を繰り返し、マウスが暗室に入らないで5分間明室に留まることができた 時点でテストを終了した。
(7)1匹につき最大5回の試験を行い、1回5分間のテスト時間の中で「明室に留まる
ことができなかった時間:(300−明室にいた時間(秒))」について合計時間 を求め、「学習に要した時間」とし、マウスの学習能を判定した。
(結果)
その結果、青大豆摂取群では学習に要する時間が対照群に比べ短く、青大豆には学習効果を高めるか、早める効果があることが示唆され、今回老化モデルで効果を確認していることから、加齢に伴う学習能の低下が抑制されていることが示唆された。普通大豆摂取群でも学習能低下抑制の傾向が見られたが、青大豆摂取群の方が作用は強かった(図2)。
学習能の判定を行った1ヶ月後(12月齢の時点)で、マウスが試験2で行った「暗室に入らないこと」の学習を記憶しているかどうか調べるため、再びステップスルー受動回避試験を下記手順にて行い、暗室に入らなかったマウスの割合を求めた。
(方法)
(1)11月齢時、試験2のステップスルー受動回避試験を行った翌日に、記憶能強化の ため再度同じ受動回避試験を行い、マウスが暗室に入らないで5分間明室に留まる ことができた時点でテストを終了した。これによりマウスは2日間で最大10回の テストを受けた。
(2)1ヶ月後に再び受動回避試験を行った。
(3)5分間明室に留まることができたマウスは、試験を「記憶していた」と判断した。 一方、5分以内に暗室に入ってしまったマウスは試験を「記憶していなかった」と 判断した。試験は1回で終了した。
(4)下記の式に従い、試験を行ったマウスの中で「記憶していた」マウスの割合を求
め、記憶能を判定した。
学習記憶率=「記憶していた」マウス数/各群のマウス数
(結果)
その結果、青大豆摂取群では対照群、普通大豆摂取群に比べ「記憶していた」マウスが多く存在していた(図3)。このことから、青大豆は記憶を延長させる作用があることが示唆された。一方、普通大豆摂取群では、対照群に比較し、さらに「記憶していた」マウスが減少しており、普通大豆では学習記憶能を低下させることが示唆された。
マウスが新しいところを探索する性質を利用し、Y字迷路を用いた空間作業記憶試験を行った。すなわち、マウスは本来、ルート選択の際、以前とは異なるルートを選択するので、Y字迷路では、3方向のアームのそれぞれに向かうが、記憶が低下すると同じアームを選択する割合が増える。したがって、アーム探索行動を定量することで記憶能とすることができる。具体的には、下記の手順にて行った。
(方法)
(1)Y迷路(室町機械(株)、MYM-01M)を用い、No.1のアームにマウスを静かに置 いた。
(2)8分間自由に探索させ、その間マウスが侵入したアーム(No.1〜3)の順番と探 索回数(総エントリー数)を記録した。
(3)マウスが連続して3つの異なるアームを探索した場合は、各々のアームを探索した
ことを「記憶していた」と判断し、その回数(自発的交替行動数)を求めた。
(4)下記の式に従い自発的交替行動率を求めた。
自発的交替行動率=自発的交替行動数/(総エントリー数−2)
この自発的交替行動率をマウスの空間作業記憶能の指標とした。
(結果)
その結果、対照群に比べ、普通大豆及び青大豆摂取群のマウスは自発的交替行動率が高く、さらに青大豆摂取群は、普通大豆摂取群に比べても自発的交替行動率が高かった(図4)。このことから、青大豆は、記憶能の改善作用または、記憶能の低下を予防する作用があることが示唆された。
リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(Ptgds遺伝子産物)は、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβタンパク質と結合して、その脳内での凝集を抑えることで、アルツハイマー病の進行遅延に役割を果たすと考えられている(非特許文献3)。この酵素をコードする遺伝子(brain:Ptgds)について、青大豆の投与により実際に遺伝子発現の増加がおこるかどうかを調べた。
(方法)
Ptgds遺伝子の確認試験として、以下の手順で試験を行った。
細胞としてはマウスBalb/cマウスより脾臓細胞を調製し使用した。細胞は各ウェルあたり5×106個となるよう培養プレートに分注し、10%FBSを含むRPMI1640培地で培養した。細胞の活性化剤としてカルシウムイオノフォアA23187終濃度 0.5μM及びホルボールエステル終濃度0.5ng/mlを添加し、さらに本発明品1の青大豆水抽出物又は比較品1の普通大豆水抽出物をそれぞれ終濃度で200μg/mlとなるよう添加し、37℃、5%CO2の条件下、6時間培養した。培養した細胞から全RNAをTaKaRa FastPure(登録商標)RNA Kit(タカラバイオ株式会社)を用いて抽出し、この全RNAを鋳型にPrimeScript RT reagent Kit(タカラバイオ株式会社)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを作成した。作成したcDNAを鋳型に定量的PCRによりmRNA量を定量した。定量的PCRにはSYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(タカラバイオ株式会社)を用い、プライマーは以下の配列のものを使用した。定量結果はβアクチンの定量結果で補正した。
5'-ACTGACACGGAGTGGATGCT-3'(配列番号2)
β-Actin: 5'-TGCACCACACCTTCTACAATGA-3'(配列番号3)
5'-CAGCCTGGATAGCAACGTACAT-3'(配列番号4)
結果を図5に示す。青大豆摂取群では、普通大豆摂取群に比べてPtgds遺伝子発現量は顕著に増大した。本発明の脳機能低下抑制剤の投与により、リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素の発現量を亢進せしめ、その結果アルツハイマー病等の脳機能障害を抑制することができると期待される。
試験5と同様の手順で、アルツハイマー病の増悪因子として知られているアミロイドβ様タンパク1をコードする遺伝子Aplp1についても、青大豆の投与により遺伝子発現の変化がおこるかどうかを調べた。
(方法)
Aplp1遺伝子の確認試験として、以下の手順で試験を行った。
細胞としてはマウスNeuroblastoma細胞SH-SY5Yを使用した。細胞は各ウェルあたり1×106個となるよう培養プレートに分注し、10% FBS, 45% Minimum Essential Medium, 45% Nutrient Mixture F-12 HAM培地で培養した。ここに本発明品1の青大豆水抽出物又は比較品1の普通大豆水抽出物を終濃度で200μg/mlとなるよう添加し、37℃、5%CO2の条件下、6時間培養した。培養した細胞から全RNAをTaKaRa FastPure RNA Kit(タカラバイオ株式会社)を用いて抽出し、この全RNAを鋳型にPrimeScript(登録商標)RT reagent Kit(タカラバイオ株式会社)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを作成した。作成したcDNAを鋳型に定量的PCRによりmRNA量を定量した。定量的PCRにはSYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(タカラバイオ株式会社)を用い、プライマーは以下の配列のものを使用した。定量結果はβアクチンの定量結果で補正した。
5'-TCTGTCGGCTTTAGGCAGGTTC-3'(配列番号6)
β-Actin: 5'-TGCACCACACCTTCTACAATGA-3'(配列番号3)
5'-CAGCCTGGATAGCAACGTACAT-3'(配列番号4)
結果を図6に示す。青大豆摂取群では、普通大豆摂取群に比べてAplp1遺伝子発現量は顕著に減少した。本発明の脳機能低下抑制剤の投与により、アミロイドβ様タンパク1の発現量を低下せしめ、その結果アルツハイマー病等の脳機能障害を抑制することができると期待される。
Claims (5)
- 青大豆種子又はその溶媒抽出物を含有する脳機能低下抑制剤。
- 脳萎縮抑制作用を有する請求項1記載の抑制剤。
- 記憶力低下抑制作用を有する請求項1記載の抑制剤。
- 学習能力低下抑制作用を有する請求項1記載の抑制剤。
- 認知症の抑制作用を有する請求項1記載の抑制剤。
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