複数のセルを直列に接続することにより構成されるバッテリにおいては、セル相互間で、主としてセル製造過程において生じる容量のばらつき(以下、適宜「容量アンバランス」と表現する)が存在する。ここで、「容量」とは、セルの物理的蓄電能力としての最大充電量を意味し、容量アンバランスが生じると、この容量に対する実際の充電量の比率等として規定されるSOC(State Of Charge:充電状態又はその指標値)が、セル毎にばらつく要因となる。
このSOCは、実践的運用面においては、過充電や過放電を防止する見地から重要な指標である。より具体的には、例えば、SOCが適宜設定され得る上限値(例えば、80〜90%前後)に到達したセルに対しては、それ以上の充電は控えるべきであり、またSOCが適宜設定され得る下限値(例えば、10〜20%前後)に達したセルに対しては、積極的に充電を推進すべきである。
このようなSOCのばらつき(以下、適宜「SOCアンバランス」と表現する)を考慮した何らの制御則も構築されていない場合、バッテリの充放電が、個々のセルのうちSOCの相対的に高い或いは相対的に低いセルに律束される形となり、バッテリを効率的に利用することが難しくなる。また、一時的な過充電又は過放電等も生じ易くなり、バッテリに高い耐久性が要求されることからしてコストの増加を招き易い。
ここで、各セルの電圧は、SOCに対して必ずしもリニアな関係にない。例えば、ある上下限値により挟まれた中間電圧領域において、SOCの変化に対する電圧の変化は一義的でなく、且つ緩慢である。従って、特許文献1に開示されるセルバランス補正装置のように、セル相互間の電圧値を比較して充電量を制御しても、実際には、セル相互間で生じるSOCアンバランスは十分に解消されない。そのため、上述した如きバッテリの利用効率の低下や、バッテリの負荷増大等といった諸問題を回避することが出来ない。
一方、特許文献2に開示される充電制御装置における「残存容量」とは、上述のSOCを意味するから、この装置によれば、SOCアンバランスを解消する旨の効果を期待することができる。然るに、この装置では、上述した容量とSOCとの関係性が考慮されていないため、容量アンバランスに起因するSOCの変化速度のばらつきが、SOCアンバランスを生じさせる要因となる。即ち、この装置では、元々SOCアンバランスが発生していることが前提であり、既に生じたSOCアンバランスを解消することは出来ても、SOCアンバランスの発生を未然に防ぐことは出来ない。
このように、特許文献1及び特許文献2に開示された装置を含む従来の技術には、複数のセルが直列接続された各種のバッテリにおいて、複数のセル相互間で生じるSOCアンバランスを十分に解消することが困難であるという技術的問題点がある。
本発明は、係る技術的問題点に鑑みてなされたものであり、セル相互間で生じるSOCアンバランスを好適に解消可能な車両の充電装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る第1の車両の充電装置は、複数のセルが直列に接続されてなるバッテリを搭載する車両において該バッテリを充電するための充電装置であって、外部電源と、前記外部電源から供給される電力を前記複数のセルの各々に対し選択的に充電可能な充電回路と、前記バッテリのSOCを特定するバッテリSOC特定手段と、前記各々の容量を特定するセル容量特定手段と、前記特定されたバッテリのSOCが基準値以上である場合に前記複数のセルのうち前記特定された容量が相対的に大きいセルに優先的に前記電力が供給されるように前記充電回路を制御する制御手段とを具備することを特徴とする(請求項1)。
本発明に係る「バッテリ」とは、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の各種二次電池セルが複数直列接続されてなる充電可能な蓄電装置を意味し、好適な一形態としては、概ね数V程度の出力電圧を有するこの種のセルが百〜数百個程度接続されてなる、出力電圧数百V程度の二次電池を意味する。
本発明に係る第1の車両の充電装置によれば、その動作時には、バッテリSOC特定手段によりバッテリのSOC(以下、適宜「バッテリSOC」と略称する)が特定される。尚、本発明における「特定」に係る実践的態様は、例えば検出、算出、推定、同定、選択或いは取得等を含むものであって、如何様にも限定されない。
本発明に係る「SOC」とは、先述したように、セルの容量(即ち、最大充電量)に対する実際の充電量の割合に相当する指標値を意味する。また、「充電量」とは、充電された電気量或いはエネルギ量を意味する。SOCは、通常、セルの満充電状態において100(%)、完全放電状態において0(%)となるように設定されるが、予め設定された規則に従って設定される或いは規格化される限りにおいて、その実践的態様に制限は無い。
バッテリSOCは、バッテリ全体のSOCを意味しており、好適な一形態としては、バッテリ全体の容量(セル各々の容量の総和)に対するバッテリ全体の充電量(セル各々の充電量の総和)の割合としての平均化SOC、又は当該平均化SOCに実践上の各種要請に応じた適宜の補正が施されてなる平均化SOC相当値等を意味する。尚、このバッテリSOCは、必ずしもその時点のバッテリの状態を規定する値でなくてよく、将来的な(例えば、数秒〜数分後の)バッテリの状態を規定する値であってもよい。
バッテリSOCは、例えば、バッテリ又はセルの出力電圧、出力電流或いは温度等に基づいたマップ適合等の手法により、或いは公知の各種演算等により特定されてもよい。或いは、バッテリの入出力電流が把握可能である場合には、当該入出力電流の時間積分値や時間積算値等の各種時間推移に関する情報から、ある時点からのバッテリSOCの変化量が推定され、バッテリSOCの特定に適宜利用されてもよい。また、セル各々のSOC(以下、適宜「セルSOC」と表現する)を特定可能な構成であれば、このセルSOCと、セル各々の容量(以下、適宜「セル容量」と表現する)とに基づいてバッテリSOCが特定されてもよい。尚、バッテリSOCの特定手法については、ここに例示したものに限らず公知の各種手法を適用可能であることは言うまでもない。
一方、本発明に係る外部電源とは、バッテリの充電に供すべき電力を充電装置に供給可能な電力源を広く包括する概念であり、好ましい一態様においては、太陽電池のような独立したエネルギ源であってもよい。但し、本発明に係る外部電源は、必ずしもバッテリから独立してなるエネルギ源に限定されるものではなく、例えば、バッテリの電力の一部を、DC−DCコンバータ等を介して電圧変換及び電位分離を行った後に充電装置に供給するものであってもよい。
ここで、バッテリSOCが、この種の車両の走行制御上参照すべき参照値として好適である点に鑑みれば、セルSOCとバッテリSOCとは理想的には一致すべきであるが、実際には、セルの製造過程やバッテリの構成過程等において生じるセル相互間の容量アンバランスに起因して、セルSOCは、バッテリSOCと一致せず、且つ相互間でばらつくことが多い。このようなSOCアンバランスは、バッテリSOCよりも小さいセルSOCを有する一部のセルにおける過放電や、バッテリSOCよりも大きいセルSOCを有する一部のセルにおける過充電等の発生要因となる。或いは、このような過充電や過放電の発生を防止する観点からバッテリの充放電がセルSOCの相対的に大きい又は小さいセルに律束された場合には、バッテリの効率的な利用を難しくする。
ところで、SOCの定義に鑑みれば、セル容量は、セルSOCの変化量或いは変化速度に影響する。より具体的には、外部電源から均等に電力が供給される場合、セルSOCの変化量は、セル容量が大きい(小さい)程、小さく(大きく)なる。このため、容量の大きいセルと小さいセルとの間で生じるSOCアンバランスの度合いは、バッテリSOCが高くなるに連れて大きくなる。特に、このような過程を辿って、セル容量の小さいセルが物理的満充電(例えば、SOC=100(%))近傍のSOC領域に近付くと、セル容量が比較的大きいセルに十分な容量が残存しているにもかかわらず、セル容量が比較的小さいセルの過充電を防止する見地から、それ以上の充電制御を諦めざるを得ないといった事態が生じ得る。このような事態が生じると、バッテリ全体の容量を有効に利用することが出来ない。
このような事情から、バッテリの有効利用を図る観点からは、SOCアンバランスの発生自体を未然に抑止し得る制御則が必要となるが、セル容量を何ら勘案しない制御則に従った従来の充電制御は、このようにSOCアンバランスが実現象として生じた場合に、生じたSOCアンバランスを解消することに主眼が置かれており、SOCアンバランスの発生自体を抑制することは殆ど不可能である。
このような、セル容量に想到しない各種の従来技術が有する技術的問題を克服するため、本発明に係る第1の車両の充電装置は、セル容量特定手段によりセル各々についてセル容量が特定され、この特定されたセル容量に基づいて制御手段が充電制御を行う構成となっている。制御手段は、特定されたバッテリSOCが基準値以上である場合に、特定された容量が相対的に大きいセルに優先的に電力が供給されるように充電回路を制御する。
ここで、「優先的に電力が供給される」とは、充電量にアドバンテージが与えられることを広く包含する趣旨であり、好適には更に、時系列上の充電開始タイミングが他に先んじることを含み得る。従って、充電量にアドバンテージを与えるにあたっての実践的態様としては各種の態様が許容される趣旨である。例えば、特定されたセル容量或いはセル容量の区分に応じて(この場合の「応じて」とは、セル容量の大小が充電量の大小に夫々対応することを意味する)充電量が段階的又は連続的に変化させられてもよい。尚、このような優先的な電力供給には、一部のセルに対し充電を行わない旨の制御態様が含まれるが、実践的には、一又は複数ターンに一回は、セル容量の大小に関係なく幾ばくかの充電がなされるのが好適である。
尚、あるセルが「容量が相対的に大きい」セルであるか否かは、例えば、然るべき基準容量との比較をもって判定されてもよい。例えば、この種の基準容量として、セル容量を全てのセルについて平均してなる平均化セル容量が採用される場合、この平均化セル容量よりもセル容量の大きいセルが「容量が相対的に大きい」セルと扱われてもよい。
このように、本発明に係る第1の車両の充電装置によれば、バッテリSOCが基準値以上である場合、定性的には、バッテリが高SOC領域にある場合において、相対的にみて容量に余裕があるセルに優先的に電力が振り分けられる。
このため、充電量に対する感度が相対的に高い、セル容量が相対的に小さなセルにおけるセルSOCと、充電量に対する感度が相対的に低い、セル容量が相対的に大きなセルにおけるセルSOCとの乖離を防ぐことが、少なくともその度合いを緩和することができる。即ち、セル相互間のSOCアンバランスの発生を防止或いは緩和することができ、バッテリを有効に利用することが可能となるのである。このような本発明に係る第1の車両の充電装置により奏される実践上有益なる効果は、SOCアンバランスの発生を前提として当該SOCアンバランスの発生後に発動する、SOCアンバランス解消に係る各種の措置に対して明らかに優越するものである。
尚、セル各々についてのセル容量は、例えば、セルSOCが得られている状況においては、このセルSOCとセル毎の充電量とから求めることが出来る。また、セル容量は、セルの製造過程等において生じるセル毎に固有のものであるから、車両を走行させる過程で力行や回生等により激しく変化するセルSOCと較べれば経時的に略不変である。この点に鑑みれば、セル容量を、例えば、製造工程や後工程の一環として予め求めておき、例えばROM等の不揮発性記憶領域を有する記憶装置に制御上のパラメータとして格納しておくことも好適にして可能である。
逆言すれば、セルSOCを直接の制御対象とする構成では、セルSOCが車両の走行条件に大きく影響され、経時的に激しく増減することに鑑みて、セルSOCの特定を頻繁に実施する必要がある。これに対し、セル容量とセルSOCとの関係性を考慮した本願においては、セルSOCと較べて殆ど不変であるセル容量を参照するため、SOCとしてはバッテリSOCを特定するのみでよく、またセルSOCが変化するのを待たずしてセルSOCの変化そのものを抑制可能であることからして即応性に優れるのである。
尚、バッテリSOCとの比較に供される基準値は、予め実験的に、経験的に又は理論的に策定可能な固定又は可変な値であり、その数値範囲を限定することが本願の趣旨に沿わないことは自明である。また、本発明に係る第1の車両の充電装置における上述した効能を発現させ得る数値又は数値範囲としての基準値が存在することもまた、セル容量とセルSOCとの関係からして明らかである。
上述した課題を解決するため、本発明に係る第2の車両の充電装置は、複数のセルが直列に接続されてなるバッテリを搭載する車両において該バッテリを充電するための充電装置であって、外部電源と、前記外部電源から供給される電力を前記複数のセルの各々に対し選択的に充電可能な充電回路と、前記バッテリのSOCを特定するバッテリSOC特定手段と、前記各々の容量を特定するセル容量特定手段と、前記特定されたバッテリのSOCが基準値未満である場合に前記複数のセルのうち前記特定された容量が相対的に小さいセルに優先的に前記電力が供給されるように前記充電回路を制御する制御手段とを具備することを特徴とする(請求項2)。
本発明に係る第2の車両の充電装置は、制御手段以外の構成において、上述した本発明に係る第1の車両の充電装置と共通であり、制御手段の作用が異なる構成となっている。
上述したように、セル容量は、セルSOCの変化量或いは変化速度に影響し、外部電源から均等に電力が供給される場合、セルSOCの変化量は、セル容量が大きい(小さい)程、小さく(大きく)なる。このため、容量の大きいセルと小さいセルとの間で生じるSOCアンバランスの度合いは、バッテリSOCが変化するに連れて大きくなる。特に、このような過程を辿って、セル容量の小さいセルが完全放電(例えば、SOC=0(%))近傍のSOC領域に近付くと、セル容量が比較的大きいセルに十分な容量が残存しているにもかかわらず、セル容量が比較的小さいセルの過放電を防止する見地から、それ以上の放電制御を諦めざるを得ないといった事態が生じ得る。このような事態が生じると、バッテリ全体の容量を有効に利用することが出来ない。
このような事情から、バッテリの有効利用を図る観点からは、SOCアンバランスの発生自体を未然に抑止し得る制御則が必要となるが、セル容量を何ら勘案しない制御則に従った従来の充電制御は、このようにSOCアンバランスが実現象として生じた場合に、生じたSOCアンバランスを解消することに主眼が置かれており、SOCアンバランスの発生自体を抑制することは殆ど不可能である。
このような、セル容量に想到しない各種の従来技術が有する技術的問題を克服するため、本発明に係る第2の車両の充電装置において、制御手段は、特定されたバッテリSOCが基準値未満である場合に、特定された容量が相対的に小さいセルに優先的に電力が供給されるように充電回路を制御する構成となっている。
尚、あるセルが「容量が相対的に小さい」セルであるか否かは、例えば、然るべき基準容量との比較をもって判定されてもよい。例えば、この種の基準容量として、セル容量を全てのセルについて平均してなる平均化セル容量が採用される場合、この平均化セル容量よりもセル容量の小さいセルが「容量が相対的に小さい」セルと扱われてもよい。
このように、本発明に係る第2の車両の充電装置によれば、バッテリSOCが基準値未満である場合、定性的には、バッテリが低SOC領域にある場合において、相対的にみて容量に余裕が無いセルに優先的に電力が振り分けられる。
このため、充電量に対する感度が相対的に高い、セル容量が相対的に小さなセルにおけるセルSOCと、充電量に対する感度が相対的に低い、セル容量が相対的に大きなセルにおけるセルSOCとの乖離を防ぐことが、少なくともその度合いを緩和することができる。即ち、セル相互間のSOCアンバランスの発生を防止或いは緩和することができ、バッテリを有効に利用することが可能となるのである。このような本発明に係る第2の車両の充電装置により奏される実践上有益なる効果は、SOCアンバランスの発生を前提として当該SOCアンバランスの発生後に発動する、SOCアンバランス解消に係る各種の措置に対して明らかに優越するものである。
尚、バッテリSOCとの比較に供される基準値は、予め実験的に、経験的に又は理論的に策定可能な固定又は可変な値であり、その数値範囲を限定することが本願の趣旨に沿わないことは自明である。また、本発明に係る第1の車両の充電装置における上述した効能を発現させ得る数値又は数値範囲としての基準値が存在することもまた、セル容量とセルSOCとの関係からして明らかである。
尚、第1の車両の充電装置に係る制御手段の作用と、第2の車両の充電装置に係る制御手段の作用とは、基準値によって規定される数値範囲が干渉しない限りにおいて相互いに干渉することはなく、また相互に協調することによって、SOCアンバランスの発生を抑制する旨の効果をより顕著に奏し得る。また、第2の車両の充電装置に係る基準値と、第1の車両の充電装置に係る基準値とは必ずしも一致している必要はなく、第2の車両の充電装置に係る基準値が一種の下限値として、第1の車両の充電装置に係る基準値が、当該下限値よりも大きい一種の上限値として設定されていてもよい。この場合、この上下限値によって挟まれた一種の不感帯領域においては、各セルについて均等に電力を供給する通常の、或いは他の充電制御が行われてもよい。
本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の一の態様では、前記特定されたバッテリのSOCと前記基準値との偏差に基づいて前記各々に対する充電量の配分を決定する第1配分決定手段を更に具備し、前記制御手段は、前記各々が前記決定された配分に従って充電されるように前記充電回路を制御する(請求項3)。
この態様によれば、第1配分決定手段の作用により、バッテリSOCと基準値との偏差に基づいて、個々のセルに対する充電量の配分が決定される。制御手段は、この決定された配分に従って個々のセルが順次充電されるように充電回路を制御する。
ここで「充電量の配分」とは、制御手段が充電回路を制御するにあたっての一の制御サイクルにおける、個々のセルの充電量の重み付けを広く包含するものであり、必ずしも充電量そのものを意味しない(例えば、充電時間であってもよい)が、セル相互間の充電量の大小関係は、この配分により一義的に規定される。
従って、この態様によれば、セル相互間のSOCアンバランスを、より好適に是正することができる。
第1配分決定手段を備えた本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の一の態様では、前記第1配分決定手段は、前記偏差に加え、前記特定された容量及び前記バッテリと前記外部電源を除く前記車両の電気負荷との間の電力の入出力に係る前記バッテリの入出力電流に基づいて前記配分を決定する(請求項4)。
第1又は第2の車両の充電装置に係る充電量の制御は、将来的なSOCアンバランスの発生を、セル容量の差異から予見する構成となっている。
一方、外部電源からの充電時における、バッテリの充放電収支は、必ずしもゼロでない。特に、車両走行中においては、例えばモータ等の電気負荷を力行駆動するのに要する放電制御や、当該電気負荷からの回生電力を吸収するための充電制御が、その規模の大小はさておき必要となることが多い。
ここで、バッテリの充放電収支が全体として放電側に傾いている(即ち、充電量<放電量なる関係が成立する)場合、容量の小さいセル程SOCの低下速度は高くなり、バッテリの充放電収支が全体として充電側に傾いている(即ち、充電量>放電量なる関係が成立する)場合、容量の小さいセル程SOCの上昇速度は高くなる。
これらの点に鑑みれば、バッテリが車両に備わる電気負荷との間で電力の入出力を行っている場合においては、将来的な(車両が走行する過程で、SOCに予期せぬ大きな変化が生じないうちに遅滞なく到達し得る時間領域であり、例えば数秒〜数分後を意味する)バッテリSOCの変化も考慮した方が、セル相互間のSOCアンバランスの発生を是正する上でより効果的である。この態様によれば、バッテリSOCと基準値との偏差に加え、セル容量とバッテリの入出力電流とを考慮した上で充電量の配分が決定されるため、将来的なSOCの変化をより正確に予見しSOCアンバランスをより効果的に是正することが可能となる。
尚、例えば、カーナビゲーション装置等、車両の近未来的な走行経路を予見し得る構成の車両においては、車両の位置情報や、設定された走行路又は目的地等に基づいて、上述した近未来的なバッテリSOCの変化を推定することも可能であり、このような近未来的なバッテリSOCの変化が考慮される場合には、将来的なSOCアンバランスの発生をより好適に抑制することも可能である。
本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の他の態様では、前記各々のSOCを特定するセルSOC特定手段を更に具備し、前記制御手段は、前記複数のセルのうち前記特定された各々のSOCが前記特定されたバッテリのSOC未満となるセルに優先的に前記電力が供給されるように前記充電回路を制御する(請求項5)。
この態様によれば、セルSOC特定手段により、セル各々についてセルSOCが特定され、特定されたセルSOCがバッテリSOC未満となるセルに優先的に電力が供給される。従って、本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置によるSOCアンバランスの発生防止に係る措置が講じられているにもかかわらず何らかの理由によりSOCアンバランスが発生した場合等において、セルSOCそのものを参照値として、SOCアンバランスを的確に是正することが可能となる。
尚、実践的運用面において、制御手段による充電回路の制御サイクルは、個々のセルにおいて充電により促されるSOCの変化速度に対して十分に速い。従って、一制御サイクルの実行期間中に個々のセルのSOCが変化することは稀であり、その点において、SOCアンバランスは、制御手段の作用を受けて、基本的に収束する方向に変化する。
セルSOC特定手段を備えた本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の一の態様では、前記特定された各々のSOCと前記特定されたバッテリのSOCとの偏差に基づいて前記各々に対する充電量の配分を決定する第2配分決定手段を更に具備し、前記制御手段は、前記各々が前記決定された配分に従って充電されるように前記充電回路を制御する(請求項6)。
この態様によれば、第2配分決定手段の作用により、個々のセルに関するセルSOCとバッテリSOCとの偏差に応じて、個々のセルに対する充電量の配分が決定される。制御手段は、この決定された配分に従って個々のセルが順次充電されるように充電回路を制御する。
従って、この態様によれば、既に生じてしまったSOCアンバランスを好適に是正することができる。
第2配分決定手段を備えた本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の一の態様では、前記第2配分決定手段は、前記偏差に加え、前記特定された容量及び前記バッテリと前記外部電源を除く前記車両の電気負荷との間の電力の入出力に係る前記バッテリの入出力電流に基づいて前記配分を決定する(請求項7)。
この態様によれば、特定されたセル容量とバッテリの入出力電流とに基づいて、充電量の配分が決定される。従って、既に発生したSOCアンバランスを、将来的なセルSOCの変化を予見しつつ是正することが可能となり、実践上極めて有益である。
尚、この際、第1配分決定手段の場合と同様に、バッテリの入出力電流として、カーナビゲーション装置等から取得される推定値を使用することも可能である。
第1又は第2配分決定手段を備えた本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の他の態様では、前記第1又は第2配分決定手段は、前記バッテリが放電状態にある場合に前記特定された容量が小さいセルに優先的に前記電力が供給されるように前記配分を決定する(請求項8)。
この態様によれば、バッテリが放電状態(即ち、放電量>充電量となる状態)にある場合に、容量の小さいセルにより優先的に充電がなされるように充電量の配分が決定される。このため、容量の小さなセルには、より多くの充電量が割り当てられることになり、容量の小さなセルの過放電を回避しつつSOCアンバランスを効果的に抑制することが可能となる。
第1又は第2配分決定手段を備えた本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の他の態様では、前記第1又は第2配分決定手段は、前記バッテリが充電状態にある場合に前記特定された容量が大きいセルに優先的に前記電力が供給されるように前記配分を決定する(請求項9)。
この態様によれば、バッテリが充電状態(即ち、放電量<充電量となる状態)にある場合に、容量の大きいセルにより優先的に充電がなされるように充電量の配分が決定される。このため、容量の大きなセルには、より多くの充電量が割り当てられることになり、容量の小さなセルの過充電を回避しつつSOCアンバランスを抑制することが可能となる。
第1又は第2配分決定手段を備えた本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の他の態様では、前記各々が前記決定された配分に従って充電されるように、前記複数のセルを複数のグループに分割する分割手段を更に具備し、前記制御手段は、前記分割されたグループ毎に充電がなされるように前記充電回路を制御する(請求項10)。
外部電源の出力電圧と、個々のセルの出力電圧とが大きく乖離している場合、例えばDC−DCコンバータ等における、電力変換に要する負荷が大きくなる。このような負荷の増大は、電力損失に繋がり、また、充電回路を保護する観点からも改善の余地がある。特に、出力電圧が数V程度であるセルを数百個直列に接続して構成されるバッテリにおいては、その傾向が顕著となり易い。
この態様によれば、分割手段により複数のセルが複数のグループにグループ化され、グループ毎に充電が実行される。
ここで、複数のグループに属するセルの充電量は必然的に多くなり、いずれのグループにも属さないセルの充電量はゼロとなる。従って、分割手段が、このグループの分割パターンを適宜に変化させれば、決定手段により決定された配分を実現することが可能となる。即ち、外部電源から電力を供給するにあたっての電力損失を軽減しつつ、SOCアンバランスを抑制することが可能となり、バッテリを効率的に利用する見地からみて好適である。
本発明に係る第1又は第2の車両の充電装置の他の態様では、前記外部電源は太陽電池である(請求項11)。
この態様によれば、外部電源として太陽電池が搭載されるため、太陽光を利用した効率的な発電が可能であり、バッテリを効果的に充電することができる。例えば、車両の駐車中に発電を行ってバッテリを充電すると共に、相応の充電がなされた段階で、或いは車外からドライバが戻ってくるのに同期して、充電されたバッテリからの電力供与により適宜空調装置を稼動させる等といった制御も可能である。
本発明に係る第1又は第2の車両充電装置の他の態様では、前記外部電源と前記各々との間を電気的に絶縁する絶縁手段を更に具備する(請求項12)。
この態様によれば、外部電源とセル各々とが電気的絶縁状態に保たれるため、バッテリ及び外部電源双方の安全性がより好適に確保される。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10の構成を概念的に表してなるブロック図である。
図1において、車両10は、ECU100、ハイブリッド駆動装置200、バッテリ300、電動補機400、太陽電池500及び充電システム600を備えた、本発明に係る「車両」の一例たるハイブリッド車両である。
ECU100は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、車両10の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットである。ECU100は、ROMに格納される制御用のプログラムに従って、後述する充電制御を実行可能に構成されている。
尚、ECU100は、係る充電制御を実行するにあたって、本発明に係る「バッテリSOC特定手段」、「セル容量特定手段」及び「制御手段」の夫々一例として機能するように構成されている。
ハイブリッド駆動装置200は、車両10のパワートレインである。ハイブリッド駆動装置200は、車両10の動力源として不図示のエンジン及び複数のモータを備え、またこれら動力源から供給される駆動力を駆動軸へ伝達するための、回転二自由度の差動機構(プラネタリギアユニット)を含む伝達機構を備える。
ハイブリッド駆動装置200は、複数の走行モードを選択可能であり、車両10は、その運転条件に応じて、常時システム効率が最大となる走行モードで走行することができる。ハイブリッド駆動装置200は、ECU100の制御を受けて、エンジン出力のみで車両10を走行させることも、モータ出力のみで車両10を走行させることも、またエンジン出力とモータ出力とを相互に協調させつつ車両10を走行させることもできる。即ち、車両10は、所謂シリーズ・パラレルハイブリッド車両である。
尚、ハイブリッド駆動装置200の詳細な構成は、本発明の本質との相関が薄いため、説明の煩雑化を防ぐ目的からここでは省略するが、ハイブリッド駆動装置200の構成及びその制御態様としては、無論公知の各種態様を適用可能である。また、本発明に係る「車両」とは、この種のハイブリッド車両に限らず、モータのみで走行可能な電気自動車(EV)であってもよい。或いは、車両10の動力源は、燃料の燃焼エネルギを運動エネルギに変換して動力として取り出すことが可能な機関を包括する概念としての内燃機関(上記エンジンもまた内燃機関の一形態である)のみであってもよい。
バッテリ300は、1.5V内外の出力電圧を有するリチウムイオン電池セルCLn(nはセル番号を意味する)が、N個(例えば、N=200程度)直列に接続された、概ね300V程度の出力電圧を有する高出力バッテリである。バッテリ300のセルCLn(n=1,2,・・・,N)の出力電圧Vn(n=1,2,・・・,N)は、不図示の電圧センサ等により検出され、ECU100により一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
電動補機400は、バッテリ300からの供給電力で稼動する、電気駆動型の補機であり、例えば、エアコンディショナ、パワーウィンドウ或いはヘッドライト等を指す。
太陽電池500は、光起電力効果により照射光から起電力を生成する複数の単位セルが複数直列に接続された、本発明に係る「外部電源」の一例たる太陽電池である。尚、本発明に係る外部電源としては、このような太陽電池に限らず各種の電源を使用可能であるが、太陽電池は、太陽光を利用した自力発電が可能であるから、車両への搭載を前提とする場合には、外部電源として好適である。
充電システム600は、太陽電池500の発電電力をバッテリ300に充電可能に構成されたシステムである。充電システム600は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によりその動作が制御される構成となっている。
ここで、図2を参照し、充電システム600の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、充電システム600の構成を概念的に表してなるブロック図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、充電システム600は、DC−DCコンバータ610、放電リレーC1、入力電流計620、充電回路630及び出力電流計640を備える。
DC−DCコンバータ610は、太陽電池500の出力電圧をバッテリ300のセルCLn各々に適した電圧まで降圧する変圧装置である。
入力電流計620は、バッテリ300の入力電流Iinを検出可能に構成されたセンサである。検出された入力電流Iinは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
充電回路630は、個々のセルCLn(n=1,2,・・・,N)に夫々接続された第1リレーAn(n=1,2,・・・,N)及び第2リレーBn(n=1,2,・・・,N)を備え、各リレーのスイッチング状態に応じて、太陽電池500の発電電力を各セルに選択的に供給可能な、本発明に係る「充電回路」の一例である。
例えば、太陽電池500の発電電力をセルCL1のみに充電する場合、ECU100は、第1リレーA1と第2リレーB1とをオン状態に制御する。その結果、第1リレーA1、セルCL1、第2リレーB1及び放電リレーC1を含む閉ループが形成され、セルCL1への充電が実現される。ECU100は、第1リレーAn及び第2リレーBnのオン時間を制御することにより、個々のセルCLnへの充電時間、即ち充電量を制御する構成となっている。この充電量の制御は、後述する充電制御により実現される。
尚、放電リレーC1は、バッテリ300が充電制限状態にある場合に、太陽電池500の出力を放電するためのリレーであり、端子が図中開放側の端子(図中接続されている側の端子と異なる端子)に接続された場合に、太陽電池500の出力が図示ハッチング表示された負荷抵抗で消費される構成となっている。尚、本実施形態においては、放電リレーC1は、基本的に図示する接点状態に維持されるものとする。
<実施形態の動作>
以下に、本実施形態の動作について適宜図面を参照して説明する。
<充電制御の概要>
始めに、ECU100により実行される充電制御の概要について説明する。
先ず、図3を参照し、バッテリ300のセルCLn(n=1,2,・・・,N)におけるセル充電率SOCn(n=1,2,・・・,N)について説明する。ここに、図3は、バッテリ充電率SOCmeanとセル充電率SOCnとの関係を例示する図である。尚、「充電率」とは、容量に対する充電量(電荷量)の比率を意味する。バッテリ充電率SOCmeanとは、バッテリ300全体で平均化された充電率であり、本発明に係る「バッテリのSOC」及び上述した「バッテリSOC」の一例である。セル充電率SOCnとは、セルCLn各々の充電率であり、本発明に係る「各々のSOC」及び上述した「セルSOC」の一例である。
図3において、横軸に平均充電率SOCmeanが表され、縦軸に出力電圧が表される。
バッテリ300のセルCLn(n=1,2,・・・,N)は、主として製造工程におけるばらつきにより、相互いに容量アンバランスを生じている。ここで、図3において、説明の簡略化の観点から、夫々セル容量CP1、CP2(CP1>CP2)及びCP3(CP3<CP2)を有する三種類のセルについて、セル充電率を例示すると、夫々図示実線、破線及び鎖線のようになる。
ここで特に、容量アンバランスが生じているにもかかわらず各セルに均等に充電が行われた場合、図示するように、セル充電率にもアンバランス(即ち、SOCアンバランス)が生じる。例えば、図3において、バッテリ充電率SOCmeanが20(%)である場合、セル容量CP1のセル(即ち、容量最大のセル)のセル充電率は30(%)であり、容量CP3のセル(即ち、容量最小のセル)のセル充電率は5(%)である。また、バッテリ充電率SOCmeanが70(%)である場合、セル容量CP1のセルのセル充電率は60(%)であり、セル容量CP3のセルのセル充電率は90(%)である。
このような、セル相互間のSOCアンバランスは、バッテリ300の安定的運用(過充電及び過放電の回避並びに充放電制限領域の縮小)を図る観点からは望ましくない。また、図示するように、容量が相対的に小さいセル程、充放電量に対するセル充電率の感度が高く(即ち、変化幅が大きく)、セル充電率は、放電側では相対的に枯渇し易く、充電側では相対的に飽和し易い傾向がある。このため、実際にSOCアンバランスを是正するに際しては、セル容量を勘案する必要がある。
尚、図示の通り、セル充電率SOCnの大部分の領域において、出力電圧はセル充電率SOCnの変化に対し非常に緩慢である。従って、出力電圧をモニタして充電量を制御したところで、セル相互間のSOCアンバランスを是正することは実践上不可能に近い。また、完全放電領域に近いSOC領域(図3で言えば、SOC=5%)における過放電及び満充電領域に近いSOC領域(図3で言えば、SOC=90%)における過充電を防止する観点から言えば、このようなSOCアンバランスが発生すること自体が望ましくない。
本実施形態においてECU100により実行される充電制御は、セル容量Cn(n=1,2,・・・,N)とバッテリ充電率SOCmeanとに基づいて、セル相互間のSOCアンバランスの発生自体を抑制する制御である。充電制御の実践的制御フローについては後述するが、充電制御は、定性的には、バッテリ充電率SOCmeanが大きい場合には容量の大きなセルに優先的に太陽電池500の発電電力を供給し、バッテリ充電率SOCmeanが小さい場合には小容量のセルに優先的に太陽電池500の発電電力を供給する制御である。
充電制御の詳細について説明する前に、図4を参照し、充電制御によって奏される実践上有益なる効果について説明する。ここに、図4は、バッテリ充電率SOCmeanとセル充電率SOCnとの関係を例示する他の図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、図4(a)は、バッテリ充電率SOCmeanが高い場合において大容量のセル(容量CP1のセル)に優先的に充電がなされた場合に相当する図である。バッテリ充電率SOCmeanが高い場合において相対的大容量のセルに優先して充電を行うと、充電量に対する感度が相対的に高い小容量のセル(容量CP3のセル)におけるセル充電率の上昇が緩慢となり、充電量に対する感度が相対的に低い大容量のセルにおけるセル充電率との乖離が抑制される。その結果、図4(a)では、バッテリ充電率SOCmeanが70(%)の場合において、容量CP1を有する大容量セルのセル充電率は65(%)、容量CP3を有する小容量セルのセル充電率は75(%)となり、図3に例示される程の大規模なSOCアンバランスは、その発生自体が抑制される。
また、図4において、図4(b)は、バッテリ充電率SOCmeanが低い場合において小容量のセル(容量CO3のセル)に優先的に充電がなされた場合に相当する図である。バッテリ充電率SOCmeanが低い場合において相対的小容量のセルに優先して充電を行うと、充電量に対する感度が相対的に高い小容量のセル(容量CP3のセル)におけるセル充電率の低下が緩慢となり、充電量に対する感度が相対的に低い大容量のセル(容量CP1のセル)におけるセル充電率との乖離が抑制される。その結果、図4(b)では、バッテリ充電率SOCmean=20(%)の場合において、容量CP1を有する大容量セルのセル充電率は25(%)、容量CP3を有する小容量セルのセル充電率は15(%)となり、図3に例示される程の大規模なSOCアンバランスは、その発生自体が抑制される。
<充電制御の詳細>
次に、図5を参照し、本実施形態に係る充電制御の詳細について説明する。ここに、図5は、充電制御のフローチャートである。
図5において、ECU100は、充電時間決定処理を実行し(ステップS100)、各セルへの充電量の配分比を充電時間として決定する。その後、充電処理を実行し(ステップS200)、充電時間決定処理により決定された充電時間に従って、充電回路630の駆動制御を介して各セルへの充電を順次実行する。充電制御は、これらの繰り返しにより成立する。尚、ステップS100及びS200を含む一制御ルーチンの実行時間(周期)は、充電による、バッテリ充電率SOCmean及び各セルのセル充電率の変化速度よりも十分に速いものとなっている。
次に、図6を参照し、充電時間決定処理について説明する。ここに、図6は、充電時間決定処理のフローチャートである。
図6において、先ずバッテリ充電率SOCmeanが推定される(ステップS101)。バッテリ充電率SOCmeanは、バッテリ300における平均化されたSOC(充電率)であり、その推定手法は各種のものが公知であるため、ここではその詳細については省略する。例えば、バッテリ充電率SOCmeanは、バッテリ300の出力電圧をパラメータとするマップから選択された近似値と、バッテリ300の充放電電流値を積算処理して得られる充放電量(正で充電)とに基づいて、一定の周期で求められてもよい。また、各セルのセル容量Cn(n=1,2,・・・,N)が求められる構成においては、これらとバッテリ300の充放電量とからバッテリ充電率SOCmeanが推定されてもよい。
バッテリ充電率SOCmeanが推定されると、更にセル容量推定処理が実行され(ステップS300)、引き続いてSOCt決定処理が実行される(ステップS400)。
ここで、図7を参照し、セル容量推定処理について説明する。ここに、図7は、セル容量推定処理のフローチャートである。
図7において、ECU100は、初期化が完了しているか否かを判別する(ステップS301)。初期化が完了していなければ(ステップS301:NO)、ECU100は、セル容量Cn(n=1,2,・・・,N)を予め設定された初期値に設定する(ステップS302)。初期化が完了しているか(ステップS301:YES)又はステップS302において初期化が実行された場合、ECU100は、カウンタnに「0」を設定してカウンタリセット状態とする(ステップS303)。続いて、ECU100は、カウンタを「1」インクリメントする(ステップS304)。これ以降、カウンタnにより規定されるセルに対する個別の処理が開始される。
ECU100は、n番目のセルCLnのセル電圧Vnを取得する(ステップS305)。続いて、セルCLnの充電量Qnを推定する(ステップS306)。尚、充電量Qnは、それまでの充放電電量の時間積分値であり、ECU100が、常時更新しつつ管理する値である。
続いて、ECU100は、取得されたセル電圧Vnが上限電圧Vh以下であるか否かを判別する(ステップS307)。セル電圧Vnが上限電圧Vhより大きい場合(ステップS307:NO)、ECU100は、下記(1)式に従って、n番目のセルCLnにおけるセル充電率SOCnを算出する(ステップS308)。
ここで、(1)式におけるSOChは、SOCの上限値(%)であり、SOChoは、SOCの上限値の基準値(%)である。これらは夫々予め設定された定数である。
n番目のセルについてセル充電率SOCnが算出されると、ECU100は、この算出されたセル充電率SOCnと先に取得されたn番目のセルの充電量Qnとにより規定される下記(2)式に従って、セル容量Cnを算出する(ステップS309)。n番目のセルについてセル容量Cnが算出されると、処理はステップS314に移行される。
一方、ステップS307において、取得されたセル電圧Vnが上限電圧Vh以下である場合(ステップS307:YES)、ECU100は、セル電圧Vnが下限電圧Vl以上であるか否かを判別する(ステップS310)。セル電圧Vnが下限電圧Vl未満である場合(ステップS310:NO)、ECU100は、下記(3)式に従って、n番目のセルCLnのセル充電率SOCnを算出する(ステップS311)。
ここで、(3)式におけるSOClは、SOCの下限値(%)であり、SOCloは、SOCの下限値の基準値(%)である。これらは夫々予め設定された定数である。
n番目のセルについてセル充電率SOCnが算出されると、ECU100は、この算出されたセル充電率SOCnと先に取得されたn番目のセルの充電量Qnとにより規定される上記(2)式に従って、容量Cnを算出する(ステップS312)。n番目のセルについてセル容量Cnが算出されると、処理はステップS314に移行される。
一方、ステップS310において、取得されたセル電圧Vnが下限電圧Vl以上である場合(ステップS310:YES)、即ち、セル電圧Vnが、下限電圧Vlと上限電圧Vhとによって規定される電圧領域にある場合、図3に例示されるように、電圧とセル充電率との相関は曖昧である。そこで、ECU100は、n番目のセルに関するセル容量Cnの値として、前回の更新値を使用し、下記(4)式に従って、n番目のセルに関するセル充電率SOCnを算出する(ステップS313)。ステップS313が実行されると、処理はステップS314に移行される。
ステップS314においては、カウンタnの値が、セル数N以上であるか否か、即ち、全てのセルについて、セル容量Cn及びセル充電率SOCnが算出されたか否かが判別される。カウンタnがN未満である場合には(ステップS314:NO)、処理はステップS304に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上であれば(ステップS314:YES)、セル容量推定処理が終了する。尚、算出されたセル容量Cn及びセル充電率SOCnの最新値は、常時ECU100がRAMに参照可能に記憶するものとする。
続いて、図8を参照して、SOCt決定処理について説明する。ここに、図8は、SOCt決定処理のフローチャートである。尚、SOCtは、バッテリ充電率SOCmeanの将来的な変化量を表し、充電時間決定処理における各セルの充電量配分比をより正確に決定するための補正要素となる。
図8において、ECU100は、入力電流Iinを取得する(ステップS401)。既に述べたように、本実施形態において、太陽電池500からバッテリ300へ供給される入力電流Iinは、入力電流計620により検出されている。但し、バッテリ充電率変化量SOCtの決定に供する入力電流Iinの値は、必ずしもこの検出された入力電流Iinそのものでなくてもよい。例えば、過去一定の時間範囲において検出された入力電流Iinの時間平均値であってもよい。また、このような検出された入力電流Iinとは別に、事前に決定された固定値であってもよい。或いは、外部電源が太陽電池500である点に鑑みれば、SOCtの決定に供する入力電流Iinは、時刻に相関する日射量から算出された推定値であってもよい。
次に、ECU100は、基準時間Δtを決定する(ステップS402)。基準時間Δtは、バッテリ充電率変化量SOCtに対応するその時点からの時間偏差である。分かり易く言えば、バッテリ充電率変化量SOCtは、その時点からΔt秒後におけるバッテリ充電率SOCmeanの変化量として規定される。ここで、基準時間Δtは自由に設定可能な値であるが、小さ過ぎても大き過ぎても実践上の意義が低下するため、予め実験的に、経験的に又は理論的に、太陽電池500による充電でバッテリ充電率SOCmeanにある程度の影響が現れると考えられる値に設定されている。
尚、制御上、基準時間Δtは、下記(5)式により表される。尚、(5)式において、a0(%)は、上述した「ある程度の影響」を表す、基準とするSOC変化率であり、Ib(A)は、入力電流Iinに対する感度を調整する調整定数である。これらの値は予め決定されている。
次に、ECU100は、バッテリ300の出力電流Ioutを取得する(ステップS403)。
尚、出力電流Ioutは、出力電流計640により検出される実測値であるが、基準時間Δtが近未来の時間値である点に鑑みれば、将来の予測値を使用するのも好適である。将来の出力電流Ioutを予測する場合、例えば、現在地の標高とΔt秒後に到達していると予測される地点の標高との差分(標高差)と、平均車速(移動速度)とに基づいて、Δt秒後の平均的な電流値を予測してもよい。このような出力電流の予測は、例えば、車両10にGPSを利用した測位システムとしての各種カーナビゲーションシステム等が備わっている場合には、比較的簡単に実現可能である。
出力電流Ioutを取得すると、ECU100は、下記(6)式に従って、Δt秒後のバッテリ充電率SOCmeanの変化量であるバッテリ充電率変化量SOCtを算出する(ステップS404)。バッテリ充電率変化量SOCtが算出されると、SOCt算出処理は終了する。
先ず、バッテリ充電率SOCmeanと出力電流Ioutとの関係は、下記(7)式により規定される。
ここで、式中のCmeanは、セル容量Cnの平均値たる平均セル容量であり、既にセル容量推定処理において求められたセル容量Cnを用いて、下記(8)式により規定される。
次に、時間に関するテーラー展開を用いて基準時間Δt秒後のバッテリ充電率SOCmeanであるSOCmean(t+Δt)が、下記(9)式の如くに推定される。
上記(9)式の右辺第2項は、バッテリ充電率変化量SOCtに相当するから、下記(10)式が成立する。
その結果、上記(6)式が導かれるのである。尚、このような算出手法は一例である。
図6に戻り、SOCt算出処理が終了すると、ECU100は、パラメータの初期化処理として、カウンタnを「0」に、平均充電要求値Fmeanを「0」に夫々設定する(ステップS102)。パラメータの初期化が終了すると、カウンタnが「1」インクリメントされ(ステップS103)、これ以降、n番目のセルCLnに対する充電要求値Fnの算出が開始される。尚、充電要求値Fnは、セル毎の充電時間に重み付けを与えるパラメータであり、正値で充電要求であることを表す。
ECU100は、下記(11)式に従って、セルCLnに関する充電要求値Fnを算出する(ステップS104)。尚、式中のSOCoは、バッテリ充電率SOCmeanの基準値であり、本発明に係る「基準値」の一例である。
ここで、(11)式の意味について補足する。上述したように、充電要求値Fnは正値で充電要求を意味するから、あるセルが充電対象となるためには、(11)式において相互に乗算される関係にある右辺第1項及び第2項は、いずれも正値であるか、いずれも負値である必要がある。
右辺第1項が正値であるためには、バッテリ充電率SOCmeanにバッテリ充電率変化量SOCtを加算した値(即ち、近未来のバッテリ充電率SOCmeanである)が、予め設定された基準値SOCoよりも大きいことが条件となる。また、右辺第2項が正値であるためには、セル容量が平均セル容量Cmeanよりも大きいことが条件となる。
これら両条件を総合すると、バッテリ充電率SOCmeanが基準値「SOCo−SOCt」よりも大きい場合、或いは将来の予測を含むバッテリ充電率「SOCmean+SOCt」が基準値SOCoよりも大きい場合(これらは、同義である)に、セル容量が平均セル容量よりも大きいセル(即ち、本発明に係る「容量が相対的に大きいセル」の一例である)に充電がなされることになる。また、その充電量配分は、バッテリ充電率の偏差の絶対値が大きい程、またセル容量の偏差の絶対値が大きい程大きくなる。これは、本発明に係る第1の車両の充電装置における制御手段の作用及び本発明に係る「第1配分決定手段」の作用に等しい。
一方、右辺第1項が負値であるためには、バッテリ充電率SOCmeanにバッテリ充電率変化量SOCtを加算した値(即ち、近未来のバッテリ充電率SOCmeanである)が、予め設定された基準値SOCo未満であることが条件となる。また、右辺第2項が負値であるためには、セル容量が平均セル容量Cmean未満であることが条件となる。
これら両条件を総合すると、バッテリ充電率SOCmeanが基準値「SOCo−SOCt」未満である場合、或いは将来の予測を含むバッテリ充電率「SOCmean+SOCt」が基準値SOCo未満である場合(これらは、同義である)に、セル容量が平均セル容量未満であるセル(即ち、本発明に係る「容量が相対的に小さいセル」の一例である)に充電がなされることになる。また、その充電量配分は、バッテリ充電率の偏差の絶対値が大きい程、またセル容量の偏差の絶対値が大きい程大きくなる。これは、本発明に係る第2の車両の充電装置における制御手段の作用及び本発明に係る「第1配分決定手段」の作用に等しい。
また、バッテリ充電率変化量SOCtの定義に係る上記(6)式から、バッテリ300の出力電流Ioutが正値を採る(即ち、充放電収支が放電側に傾いている)と、バッテリ充電率変化量SOCtは負値を採る。バッテリ充電率変化量SOCtが負値を採る場合、上記(11)式においてバッテリ充電率SOCmeanとバッテリ充電率変化量SOCtとの加算値が基準値SOCoを超え難くなるから、右辺第1項は相対的に負値を採り易くなり、必然的に相対的小容量セルへの優先的充電が促進される結果となる。
一方、バッテリ300の出力電流Ioutが負値を採る(即ち、充放電収支が充電側に傾いている)と、バッテリ充電率変化量SOCtは正値を採る。バッテリ充電率変化量SOCtが正値を採る場合、上記(11)式においてバッテリ充電率SOCmeanとバッテリ充電率変化量SOCtとの加算値が基準値SOCoを超え易くなるから、右辺第1項は相対的に正値を採り易くなり、必然的に相対的大容量セルへの優先的充電が促進される結果となる。即ち、バッテリ充電率変化量SOCtを考慮した充電要求値の決定プロセスは、本発明の請求項8及び9の概念を反映させたものであると言える。
充電要求値Fnを算出すると、ECU100は、下記(12)式に従って、平均充電要求値Fmeanを更新する(ステップS105)。平均充電要求値Fmeanが更新されると、処理はステップS106に移行する。
ステップS106では、カウンタnがN以上であるか否か、即ち、全てのセルについて充電要求値Fnが算出されたか否かが判別される。カウンタnがN未満であれば(ステップS106:NO)、処理はステップS103に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上であれば(ステップS106:YES)、処理はステップS107に移行する。
ステップS107では、再びパラメータの初期化処理として、カウンタnが「0」に、また充電要求値の平均偏差dFmeanが「0」に夫々設定される。パラメータの初期化処理が終了すると、カウンタnが「1」インクリメントされ(ステップS108)、処理がステップS109に移行する。
ステップS109では、下記(13)式に従って、充電要求値の平均偏差dFmeanが更新される。
充電要求値の平均偏差dFmeanを更新すると、ECU100は、カウンタnがN以上であるか否か、即ち、全てのセルについて充電要求値Fnが算出されたか否かを判別する(ステップS110)。カウンタnがN未満であれば(ステップS110:NO)、処理はステップS108に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上であれば(ステップS110:YES)、処理はステップS111に移行する。
ステップS111では、充電時間算出の準備処理として、カウンタnが「0」に、また充電要求値の平均偏差dFmeanの平方根が新たに充電要求値の平均偏差dFmeanとして設定される。準備処理が終了すると、カウンタnが「1」インクリメントされ(ステップS112)、処理がステップS113に移行する。
ステップS113において、ECU100は、下記(14)式に従って、セルCLnに対する充電時間Tnを決定する。尚、式中のToは、充電サイクル時間であり、概ね10ミリ秒〜数秒程度の時間である。また、式中のT1は、予め設定された充電時間調整パラメータである。
セルCLnに対する充電時間Tnを決定すると、ECU100は、カウンタnがN以上であるか否か、即ち、全てのセルについて充電時間Tnが算出されたか否かを判別する(ステップS114)。カウンタnがN未満であれば(ステップS114:NO)、処理はステップS112に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上になると(ステップS114:YES)、充電時間決定処理は終了する。充電時間決定処理において決定された各セルの充電時間は、引き続いて実行される充電処理において使用される。
次に、図9を参照し、充電処理(ステップS200)について説明する。ここに、図9は、充電処理のフローチャートである。
図9において、ECU100は、リレーC1を充電側にセットする(ステップS201)。
リレーC1が充電側にセットされると、ECU100は、カウンタnをリセットし(ステップS202)、続いてカウンタnを「1」インクリメントする(ステップS203)。
ECU100は、n番目の第1リレーAnをオン制御し(ステップS204)、同時にn番目の第2リレーBnをオン制御する(ステップS205)。両リレーをオン制御すると、セルCLnに電流が供給され、セルCLnのみが充電される。
ECU100は、この状態を、先に決定されたセルCLnの充電時間Tnだけ保持する(ステップS206)。充電時間Tnが経過すると、ECU100は、n番目の第1リレーAnをオフ制御し(ステップS207)、同時にn番目の第2リレーBnをオフ制御する(ステップS208)。このようにして、n番目のセルCLnに対する充電が終了する。
n番目のセルに対する充電が終了すると、カウンタnがN以上であるか否か、即ち、一充電サイクルにおいて、全てのセルについて充電が終了したか否かが判別される(ステップS209)。カウンタnがN未満であれば(ステップS209:NO)、処理はステップS203に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上であれば(ステップS209:YES)、即ち、一充電サイクルにおいて、全てのセルに充電がなされると、充電処理は終了する。
以上説明したように、本実施形態に係る充電制御によれば、バッテリ充電率SOCmeanと、その将来の変化代に相当するバッテリ充電率変化量SOCtとの総和が基準値SOCoより大きい場合には相対的大容量のセルに優先的に充電時間が配分され、当該総和が基準値SOCo未満である場合には相対的小容量のセルに優先的に充電時間が配分される。
従って、図4に例示されたように、セル相互間のSOCアンバランスの発生を未然に防止しつつ、各セルへの充電を遅滞なく実行することができる。即ち、その結果として、バッテリ300の充放電領域を拡大し、その容量を有効に利用することが可能となる。また、一部のセルが過充電或いは過放電に陥る事態も防止されるため、バッテリ300の寿命を延長させることも可能となる。
尚、本実施形態においては、セル容量Cnがセル充電率SOCnに基づいて推定されるが、セル容量Cnを取得するに際して、必ずしもセル充電率SOCnを推定する必要はない。セル容量Cnは、主としてセルの製造工程で定まるセル毎に固有の物性値である。従って、セル容量Cnは、例えば製造工程終了後、車両搭載前、或いは車両搭載後、車両が実走行に供される前等に、測定或いは推定しておくことも可能である。また、このような理由からセル容量Cnはセル充電率SOCnと較べて略不変であり、一旦求めてしまえば、ROM等に固定値として記憶させておくことが出来る。この場合、先のセル容量推定処理においては、単にROMから値を読み出すだけでよくなり、制御上の負荷が緩和される。また、本実施形態のようにセル充電率SOCnに基づいて推定する手法が採用されても、セル容量Cnが経時的に略不変である点に変わりはないから、一度セル容量推定処理を行ってしまえば、相当程度の長きにわたってセル容量推定処理は不要となる。この点からして、セル容量に基づいた充電制御は、ハイブリッド駆動装置200の動作状態に大きく影響されるセル充電率SOCtを制御パラメータとするSOCアンバランス是正措置と比較して良好な即応性を有していると言える。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る充電制御について説明する。第2実施形態に係る充電制御では、バッテリ300のセル各々のセル充電率SOCnとバッテリ充電率SOCmeanとの偏差、セル容量Cn及びバッテリ300の充放電状態に応じて、何らかの原因で生じたSOCアンバランスを是正するための制御である。第2実施形態に係る充電制御は、第1実施形態に係る制御と相容れないものではなく、第1実施形態に係る充電制御と相互に協調してよりSOCアンバランスの抑制に寄与し得る制御である。
第1実施形態に係る充電制御がSOCアンバランスの発生を未然に防ぐものであり、第2実施形態に係る充電制御が既に生じたSOCアンバランスを是正するものであるところ、一見、第1実施形態に係る充電制御の方が実践上大なる効果を有している。然るに、車両10に搭載されるバッテリ300は、車両10の走行条件に応じてバッテリ充電率SOCmean及びセル充電率SOCnが比較的激しく変化する。従って、第1実施形態に係る充電制御を行っていても、相応のSOCアンバランスは、低くない頻度で発生し得る。
一方、第2実施形態に係る充電制御は、セル充電率SOCnに基づいている分、第1実施形態に係る充電制御と較べてより綿密にSOCアンバランスを是正することが出来る。従って、一旦生じてしまったSOCアンバランスを抑制する段に至っては、第1実施形態に係る充電制御と較べて有効となり得るのである。
ここで、図10を参照し、第2実施形態に係る充電制御の詳細について説明する。ここに、図10は、充電制御のフローチャートである。
図10において、ECU100は、配分比決定処理を実行し(ステップS500)、各セルへの充電量の配分比を決定する。配分比が決定されると、充電処理が実行され(ステップS600)、充電回路630の駆動制御を介して各セルへの充電が実行される。充電制御は、これらの繰り返しにより成立する。
次に、図11を参照し、充電制御のサブルーチンである配分比決定処理の詳細について説明する。ここに、図11は、配分比決定処理のフローチャートである。尚、同図において、既出の各図と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図11において、ECU100は、バッテリ充電率SOCmeanを推定し(ステップS101)、セル容量推定処理を実行する(ステップS300)。尚、セル容量推定処理の実行後にバッテリ充電率SOCmeanの推定が行われてもよい。この場合、全セルについてセル容量Cnと充電量Qnが推定されているので、ECU100は、バッテリ300の全容量と全充電量とから、バッテリ充電率SOCmeanを簡便に求めることができる。
セル容量推定処理が終了すると、ECU100は、パラメータを初期化する(ステップS501)。具体的には、カウンタn、補正充電要求値の積算値Xint及び補正順伝要求値の最低値Xminを夫々「0」に設定する。パラメータの初期化が終了すると、カウンタnが「1」インクリメントされ(ステップS502)、これ以降、n番目のセルCLnに対する充電量配分比Snの算出が開始される。
即ち、ECU100は先ず、下記(15)式に従って、電流補正値aを決定する(ステップS503)。
電流補正値aが決定されると、ECU100は、下記(16)式に従って、SOC偏差ΔSOCnを算出する(ステップS504)。尚、SOC偏差ΔSOCnは、正値が充電要求を表す値である。
SOC偏差ΔSOCnが算出されると、ECU100は、下記(17)式に従って、補正充電要求値Xnを算出する(ステップS505)。補正充電要求値Xnは、セル容量及びバッテリの出力電流で補正されたSOC偏差に相当する。
先ず、充電量SOCn、SOCmeanとバッテリ300の出力電流Ioutとの間には、下記(18)式及び上述の(7)式及び(8)式に示される関係が成立する。
一方、上記(16)式により規定されるSOC偏差ΔSOCnのΔt秒後の将来値ΔSOCn(t+Δt)を予測する場合、下記(19)式が適用できる。
この(19)式に対し、上記(18)式及び(7)式を使用すると、下記(20)式が得られる。
これらの式から最終的に、上記(17)式及び(15)式が算出される。即ち、上記(17)式の補正充電要求値Xnは、上記(16)式で算出されたSOC偏差ΔSOCnに、太陽電池500による充電でSOCにa
o程度の影響が現れる時間が経過した後の値を加えた値を意味する。尚、ここでは、出力電流Ioutとして、出力電流センサ640で検出された出力電流Ioutが使用されるが、これに替えて将来の出力電流の予測値が使用されてもよい。
図11の説明に戻り、補正充電要求値Xnが算出されると、ECU100は、下記(21)式に従って、補正充電要求値の積算値Xintを算出する(ステップS506)。
続いて、ECU100は、補正充電要求値Xnが補正充電要求値Xnの最小値Xmin未満であるか否かを判別し(ステップS507)、最小値Xmin未満であれば(ステップS507:YES)、最小値Xminを補正充電要求値Xnに設定して(ステップS508)、処理をステップS509に移行させる。一方、補正充電要求値Xnが最小値Xmin以上であれば(ステップS507:NO)、処理はそのままステップS509に移行する。
ステップS509では、カウンタnがN以上であるか否か、即ち、全てのセルについて補正充電要求値Xnが算出されたか否かが判別される。カウンタnがN未満であれば(ステップS509:NO)、処理はステップS502に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上であれば(ステップS509:YES)、処理はステップS510に移行する。
ステップS510では、カウンタnが再びリセットされ、続いて、カウンタnが再び「1」インクリメントされる(ステップS511)。
次に、ECU100は、下記(22)式に従って、充電量配分比Snを算出する(ステップS512)。尚、Xbは、ゼロ除算防止の役割を有する、配分比の調整パラメータであり、予め実験的に定められた値である。
カウンタnによって規定されるセルCLnについて、充電量配分比Snが算出されると、カウンタnがN以上であるか否か、即ち、全てのセルについて充電量配分比Snが算出されたか否かが判別される(ステップS513)。カウンタnがN未満であれば(ステップS513:NO)、処理はステップS511に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上であれば(ステップS513:YES)、即ち、バッテリ300の全てのセルについて、充電量配分比Snが決定されると、配分比決定処理は終了する。尚、決定された充電量配分比Snは、引き続いて実行される充電処理において参照される。
次に、図12を参照し、充電処理について説明する。ここに、図12は、充電処理のフローチャートである。尚、同図において、図9と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図12において、ECU100は、カウンタnをリセットし(ステップS202)、続いてカウンタnを「1」インクリメントする(ステップS203)。
次に、ECU100は、n番目のセルCLnに対する一サイクル当たりの充電時間Tnを、下記(23)式に従って算出する(ステップS601)。
ここで、Toは、既出の充電サイクル時間である。尚、充電量配分比Snによって、セル間の充電量の重み付けは保持されているので、充電サイクル時間Toは、必ずしも固定値である必要はない。
充電時間Tnが算出されると、ECU100は、n番目の第1リレーAnをオン制御し(ステップS204)、同時にn番目の第2リレーBnをオン制御する(ステップS205)。両リレーをオン制御すると、セルCLnに電流が供給され、セルCLnのみが充電される。ECU100は、この状態を充電時間Tnだけ保持すると(ステップS206)、n番目の第1リレーAnをオフ制御し(ステップS207)、同時にn番目の第2リレーBnをオフ制御する(ステップS208)。このようにして、n番目のセルに対する充電が終了する。
n番目のセルに対する充電が終了すると、カウンタnがN以上であるか否か、即ち、一充電サイクルにおいて、全てのセルについて充電が終了したか否かが判別される(ステップS209)。カウンタnがN未満であれば(ステップS209:NO)、処理はステップS203に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上であれば(ステップS209:YES)、即ち、一充電サイクルにおいて、全てのセルに充電がなされると、充電処理は終了する。
以上説明したように、本実施形態に係るばらつき補正制御によれば、配分比決定処理によって決定された充電量配分比Snに従って、充電処理においてセル毎に充電が行われる。この際、充電量配分比Snは、セル充電率SOCnとバッテリ充電率SOCmeanとの偏差であるSOC偏差ΔSOCnに基づいて、SOCmeanに対してSOCnが小さいセル程、優先的に充電が行われるように決定される。従って、セル相互間のSOCのばらつきを効果的に是正することが可能であり、各セルの過充電及び過放電が防止されると共に、バッテリ300の稼動領域を拡大することが可能となる。
更に、本実施形態に係る配分比決定処理では、充電量配分比Snが、上記SOC偏差SOCnを、更にセル容量Cnと、バッテリ300の充放電状態(ここでは、出力電流Iout)に基づいて補正した補正充電要求値Xnに基づいて算出される。より具体的には、セル容量の大小が、セル充電率SOCCnの変化速度の低高に夫々対応する点に鑑み、バッテリ300の充放電状態を加味した上で、バッテリ300が放電状態であれば容量の小さいセルにより多くの充電がなされるように、またバッテリ300が充電状態であれば容量の大きいセルにより多くの充電がなされるように、補正充電要求値Xnが決定される。
このため、将来的なSOCアンバランスの発生を抑制又は回避しつつ、既に生じたSOCアンバランスを効果的に是正することができる。即ち、セル相互間のSOCアンバランスが、車両10の走行状態や運転条件の変化に対してよりロバストとなり、車両10の実運用上好適なバッテリ状態がより安定的に担保されるのである。
<第3実施形態>
第2実施形態に係る配分比決定処理は、基本的にバッテリ300の全セルに対して幾らかなり充電を実行することを前提としている。然るに、セル相互間の容量アンバランスが大きい(必然的に、SOCアンバランスも大きくなり易い)場合や、外部電源たる太陽電池500の発電電力が十分でない場合等には、十分な効果が得られない場合がある。特に、太陽電池500のように、日照条件や温度条件により発電電力が大きく変化し得る外部電源においては、そのような問題が顕在化し易い。
ここで、図13を参照し、本発明の第3実施形態として、このような観点から、充電を行うセルを適切に選択し得る配分比決定処理を含んだ充電制御について説明する。ここに、図13は、第3実施形態に係る充電制御のフローチャートである。尚、同図において、図10と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図13において、ECU100は、配分比決定処理を実行し(ステップS700)、セル選択の概念を適用した充電量配分比Snを決定する。その後、決定された充電量配分比Snに従って充電処理を実行する(ステップS600)。
ここで、図14を参照し、ステップS700に係る配分比決定処理について説明する。ここに、図14は、第3実施形態に係る配分比決定処理のフローチャートである。尚、同図において、図11と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図14において、セル容量推定処理が終了すると、ECU100は、パラメータを初期化する(ステップS701)尚、ステップS701では、カウンタn、補正充電要求値の最小値Xmin及び補正充電要求値の最大値Xmaxが夫々リセットされる。
一方、各セルについて補正充電要求値Xnが算出され(ステップS505)、ステップS507及びS508が実行されると、ECU100は、算出された補正充電要求値Xnが最大値Xmaxより大きいか否かを判別する(ステップS702)、補正充電要求値Xnが最大値Xmaxよりも大きければ(ステップS702:YES)、補正充電要求値Xnは最大値Xmaxに制限される(ステップS703)。補正充電要求値Xnが最大値Xmax以下であるか(ステップS702:NO)又は補正充電要求値Xnが最大値Xmaxに制限されると、処理はステップS509に移行する。
ステップS509において、全てのセルについて補正充電要求値Xnが算出された旨の判別がなされると(ステップS509:YES)、ECU100は、カウンタn及び補正充電要求値の積算値Xintをリセットし(ステップS704)、下記(24)式に従って、充電要求基準値Xsを算出する(ステップS705)。尚、式中におけるc及びdは、補正充電量を決定するための基準値であり、c/dが大きい程、充電がなされるセルが限定される意味合いを有する。
ECU100は、充電要求基準値Xsの算出後、カウンタnを「1」インクリメントし(ステップS706)、下記(25)式に従って、新たな補正充電要求値Xdnを算出する(ステップS707)。
続いて、ECU100は、算出された新たな補正充電要求値Xdnが負値であるか否かを判別する(ステップS708)。負値である場合(ステップS708:YES)、新たな補正充電要求値Xdnは「0」に再設定される(ステップS709)。
新たな補正充電要求値Xdnが「0」に再設定されるか、或いはステップS707で算出された新たな補正充電要求値Xdnが正値である場合(ステップS708:NO)、ECU100は、補正充電要求値の積算値Xintを下記(26)式に従って算出する(ステップS710)。
ステップS710が実行されると、カウンタnがN以上であるか否か、即ち、一サイクルにおいて、全てのセルについて補正充電要求値の積算値Xintが算出されたか否かが判別される(ステップS711)。カウンタnがN未満であれば(ステップS711:NO)、処理はステップS706に戻され、一連の処理が繰り返される。カウンタnがN以上であれば(ステップS711:YES)、処理はステップS510に移行され、第1実施形態と同様に充電量配分比Snがセル毎に決定される(ステップS512)。
このように、第3実施形態に係る配分比決定処理によれば、充電要求基準値Xsを設定することにより、補正充電要求値Xnが充電要求基準値Xs以下となるセルに対する充電を回避することができる。従って、セル相互間の容量アンバランスの規模や、外部電源の発電状態等に応じて、常に一定以上の効果の見込める充電量配分比Snを定めることができ、実践上有益である。
<第4実施形態>
充電システムの構成は、第1乃至第3実施形態のものに限定されない。ここで、そのような趣旨に基づいた本発明の第4実施形態について、図15を参照して説明する。ここに、図15は、本発明の第4実施形態に係る充電システム601の構成を概念的に表してなるブロック図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図15において、充電システム601は、充電回路630に替えて充電回路631を備え、更に高圧用のDC−DCコンバータ650を備える点において、第1及び第2実施形態と異なっている。
充電回路631は、全セル同時充電用のリレーD1及びE1を備える点において充電回路630と異なっている。即ち、リレーD1及びE1がオン制御されると、全てのセルCLnが充電対象となる。
ここで、リレーD1及びE1は、DC−DCコンバータ650に接続されている。DC−DCコンバータ650は、一セルの出力電圧相当まで太陽電池500の出力を低下させるDC−DCコンバータ610と較べて高圧出力のコンバータであり、比較的太陽電池500の発電電力が高い場合等においては、この高圧側に特化したコンバータの方が、電力損失が少なくて済むのである。
<第5実施形態>
充電システムの構成は、第1乃至第3実施形態のものに限定されない。ここで、そのような趣旨に基づいた本発明の第5実施形態について、図16を参照して説明する。ここに、図16は、本発明の第5実施形態に係る充電システム602の構成を概念的に表してなるブロック図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図16において、充電システム602は、DC―DCコンバータ660を備える点において充電システム600と異なっている。DC−DCコンバータ660は、一旦バッテリ300に蓄積された電力を再度各セルに振り分け直すためのコンバータである。即ち、この構成では、太陽電池500の他に、バッテリ300が一種の外部電源として機能する。このような構成によれば、より精細なSOCアンバランスの是正が可能である。
<第6実施形態>
充電量配分比Snに応じた配分処理の実践的態様は、図12の充電処理に限定されない。ここで、図17及び図18を参照し、本発明の第6実施形態として、充電量の配分に係る他の態様について説明する。ここに、図17は、第6実施形態に係る充電処理が実行された際の充電システム600の一の状態を例示する図である。また、図18は、第6実施形態に係る配分処理が実行された際の充電システム600の他の状態を例示する図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。また、図17及び図18においては、説明の煩雑化を防ぐ目的から、セルCL1〜CL5の5個のセルのみ表されるが、充電システムの構成は、第1乃至第3実施形態と同等であるとする。
図17において、セルCL3の充電量配分比が、他のセルの2倍であるとする。この場合、ECU100は、図17(a)に例示されるように、第1リレーA1と第2リレーB3をオン状態とする。その結果、セルCL1、CL2及びCL3が充電される。次に、ECU100は、図17(b)に例示されるように、第1リレーA3と第2リレーB5をオン状態とする。その結果、セルCL3、CL4及びCL5が充電される。従って、いずれの場合においても充電の対象となるセルCL3のみ、他と較べて充電量が2倍となる。
一方、図18において、セルCL3の充電量配分比のみがゼロであるとする。この場合、ECU100は、図18(a)に例示されるように、第1リレーA1と第2リレーB2をオン状態とする。その結果、セルCL1及びCL2が充電される。次に、ECU100は、図18(b)に例示されるように、第1リレーA4と第2リレーB5をオン状態とする。その結果、セルCL4及びCL5が充電される。従って、いずれの場合においても充電の対象とならないセルCL3のみ、充電が回避される。
図17及び図18に例示された原理を応用すれば、与えられた充電量配分比Snを実現し得るグループ化のパターン及びその切替パターンを計算することによって、セル間のSOCアンバランスを是正することができる。
<第7実施形態>
第1及び第2実施形態でも述べたように、個々のセルに対する充電時間或いは充電配分比を算出するにあたって、バッテリ充電率SOCmeanや出力電流Ioutの将来にわたっての変化を考慮すると、将来的なSOCアンバランスの発生を抑制することが出来るため実践上非常に有益である。このようなバッテリ300の将来の状態変化は、バッテリ300のその時点の出力電流Ioutに基づいて推定されてもよいが、車両10の近未来的な走行条件が把握出来る場合には、より正確な推定が可能となり得る。このような趣旨に基づいた、本発明の第7実施形態について説明する。
始めに、図19を参照し、第7実施形態に係る車両11の構成について説明する。ここに、図19は、車両11の構成を概念的に表してなるブロック図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図19において、車両11は、カーナビゲーション装置(以下、適宜「カーナビ装置」とする)700を備える点において、既出の各種実施形態に係る車両10と異なっている。
カーナビゲーション装置700は、車両11に搭載され、車両11の位置情報、車両11の周辺の道路情報(道路種別、道路幅、車線数、制限速度及び道路形状等)、信号機情報、車両11の周囲に設置された各種施設の情報、渋滞情報及び環境情報等を含む各種ナビゲーション情報をドライバに提供可能に構成された装置である。カーナビゲーション装置700は、ナビゲーション処理装置710、GPSアンテナ720、VICSアンテナ730及びディスプレイ装置740を備える。
ナビゲーション処理装置710は、ECU100と電気的に接続され、ECU100により上位に制御されると共に、カーナビゲーション装置700の動作全体を制御可能に構成された制御ユニットである。ナビゲーション処理装置710は、GPSアンテナ720及びVICSアンテナ730を介して取得されたデータを解析し、ECU100に対し必要なデータを供給可能に構成されると共に、後述するディスプレイ装置740に対し、各種ナビゲーション情報を表示させることが可能である。
GPSアンテナ720は、GPS衛星から供給されるGPS信号を受信可能に構成された通信手段である。GPSアンテナ720を介して得られたGPS信号は、ナビゲーション処理装置710により、ECU100が参照可能な車両11の位置データに適宜変換される。
VICSアンテナ730は、道路上にインフラ設備として設置された公知の各種電波ビーコン及び光ビーコンから、道路情報、信号機情報及び渋滞情報を含むVICS情報に関するデータを取得可能に構成された路車間通信手段である。VICSアンテナ730を介して得られたVICS情報に関するデータは、ナビゲーション処理装置710により、ECU100が参照可能な、車両11の走行路データに適宜変換される。
ディスプレイ装置740は、例えば車両11のフロントコンソールパネルに設置された液晶ディスプレイ装置である。ディスプレイ装置740は、ナビゲーション処理装置710の駆動制御に従って、ドライバに対し、上述の各種ナビゲーション情報を視覚情報(即ち、画像情報)として表示可能に構成されている。
このような構成を有する車両11における充電制御について、図20を参照して説明する。ここに、図20は、第7実施形態に係る充電制御のフローチャートである。尚、同図において、図10と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図20において、ECU100は、配分比決定処理を実行し(ステップS800)、充電量配分比Snを決定する。その後、決定された充電量配分比Snに従って充電処理を実行する(ステップS600)。
ここで、図21を参照し、第7実施形態に係る配分比決定処理について説明する。ここに、図21は、第7実施形態に係る配分比決定処理のフローチャートである。尚、同図において、図11と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図21において、セル容量推定処理が終了すると(ステップS300)、ECU100は、SOCt算出処理を実行する(ステップS900)。SOCt算出処理は、第1実施形態に係るSOCt決定処理と同様に、現時点からΔt秒(先述の基準時間である)後におけるバッテリ充電率SOCmeanの変化量を意味するバッテリ充電率変化量SOCtを算出する処理である。
ここで、図22を参照し、SOCt算出処理の詳細について説明する。ここに、図22は、SOCt算出処理のフローチャートである。
図22において、ECU100は、電動補機400の消費電力である補機消費電力Phを取得する(ステップS901)。また、車両11の平均車速vを取得する(ステップS902)。更に、車両11の走行抵抗推定値Dを取得する(ステップS903)。この際、補機消費電力Phは、電動補機400の稼動状態と補機消費電力Phとが対応付けられた消費電力マップから該当値が選択される。また、平均車速vは、過去一定期間における車速の平均値であり、車速を時間処理することにより得られる。
一方、走行抵抗推定値Dは、予め平均車速vと走行抵抗推定値Dとが対応付けられてなる走行抵抗マップを参照することにより取得される。ここで、図23を参照し、走行抵抗マップについて説明する。ここに、図23は、平均車速vと走行抵抗推定値Dとの関係を表す図である。
図23において、横軸及び縦軸に夫々平均車速v及び走行抵抗推定値Dが表される。図示するように、走行抵抗推定値Dは、平均車速v=0の場合にも一定値を採り、平均車速vの上昇と共にリニアに増加する。走行抵抗マップにおいては、図23に例示される関係が数値化されて記述されている。
図22に戻り、走行抵抗推定値Dを取得すると、ECU100は、ナビゲーション処理装置710に対して、現在の標高ho及びΔt秒経過後の標高htに関するデータを要求する(ステップS904)と共に、要求に応じてナビゲーション処理装置710から提供されるデータを取得する(ステップS905)。
ナビゲーション処理装置710からデータを取得すると、ECU100は、取得したデータが有効なデータであるか否かを判別する(ステップS906)。取得したデータが有効なデータでない場合(ステップS906:NO)、ECU100は、別手法でSOCtを算出する(ステップS911)。
尚、別手法によるSOCtの算出とは、図8のSOCt決定処理等によるSOCtの決定等を意味する。この場合、将来的なバッテリ出力電流Ioutの予測精度が若干低下するものの、将来的なバッテリ充電率SOCmeanの変化量を予測する概念は担保されており、将来的なバッテリ300の状態を推定することは問題無く可能である。
取得したデータが有効なデータである場合(ステップS906:YES)、ECU100は、標高差分Δh(Δh=ht−ho)を算出し(ステップS907)、下記(27)式に従って、車両走行用推定出力Pmeanを算出する(ステップS908)。尚、式中におけるmは車両重量(kg)であり、gは重力加速度(m/sec2)である。
続いて、ECU100は、エンジン推定出力Peを算出する(ステップS909)。
ここで、エンジン推定出力Peは、予め車両走行用推定出力Pmeanとエンジン推定出力Peとが対応付けられてなるエンジン出力マップから該当値を取得することにより算出される。ここで、図24を参照し、エンジン出力マップについて説明する。ここに、図24は、車両走行用推定出力Pmeanとエンジン推定出力Peとの関係を表す図である。
図24において、横軸及び縦軸に夫々車両走行用推定出力Pmean及びエンジン推定出力Peが表される。図示するように、エンジン推定出力Peは、車両走行用推定出力Pmeanが所定値未満の範囲ではゼロであり、所定値以上の範囲では、ある初期値(>0)からリニアに増加する。尚、車両走行用推定出力Pmeanが所定値未満の範囲でエンジン推定出力Peがゼロを採るのは、車両を走行せしめるのに要する出力が比較的低い領域においては、エンジン動力を使用することなくモータ等の電気負荷により、所謂EV(Electric Vehicle)走行を行うことが出来るからである。エンジン出力マップにおいては、図24に例示される関係が数値化されて記述されている。
エンジン推定出力Peが算出されると、ECU100は、最終的に、下記(28)式に従って、バッテリ充電率変化量SOCtを算出する(ステップS910)。尚、式中におけるVはバッテリ300の電圧である。バッテリ充電率変化量SOCtが算出されると、SOCt算出処理は終了する。
図21に戻り、ステップS503で電流補正値aが決定されると、ECU100は、SOC偏差ΔSOCnを算出する(ステップS801)。ここで、SOC偏差ΔSOCnは、上記(16)式において、SOCmeanをSOCmean’に置換することによって算出される。ここで、SOCmean’とは、即ち、上記SOCt算出処理において算出されたバッテリ充電率変化量SOCtをバッテリ充電率SOCmeanに加算した値(即ち、SOCmean’=SOCmean+SOCt)であり、将来的なバッテリ充電率SOCmeanの変化が予測的に考慮された、バッテリ300全体のSOCである。
ステップS801によりSOC偏差ΔSOCnが算出されると、第2実施形態と同様に、最終的に充電量配分比Snが算出され(ステップS512)、引き続く充電処理において、この充電量配分比Snに従ってセルCLnに順次充電が行われる。
このように、本実施形態によれば、バッテリ充電率SOCmeanに替えて、カーナビ装置700を利用して高精度に推定された将来的なバッテリ充電率変化量SOCtに基づくバッテリ充電率SOCmean’がSOC偏差ΔSOCの算出に供される。このため、バッテリ300におけるセル相互間のSOCアンバランスを、より安定的に是正することが可能となる。
尚、第1実施形態におけるSOCt決定処理に替えて、本実施形態において例示されたカーナビ装置700を利用した将来的なバッテリ状態の予測(即ち、SOCt算出処理)を使用することも勿論可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の充電装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。