本発明が解決しようとする課題はスピーカ装置を構成する二大要素であるスピーカユニットとキャビネットに関して、振動伝播の起点であるスピーカユニットの振動の軽減であり、さらにキャビネットの振動の軽減である。従来技術ではいずれもキャビネット振動やスピーカユニット振動は減少するがスピーカ装置全体の振動への対処の見地から見ると包括的でなく部分的である点と、振動抑制部材とその構造自体が新たな振動源となる点と、製造の困難性が増す点の難点がある。本発明はこのような従来有していた問題を解決して、スピーカの振動体以外の振動の全てを抑制して高品位の音とするという観点にて、高解像度の音の放音を実現するものであり、振動抑制によりスピーカユニットフレームとキャビネットの非振動の静止点として成立させ、スピーカユニットの本来の振動体の前後振動により高解像度のリアルな再生音をもたらすものである。
以上の課題を解決するために請求項1に記載の発明はスピーカユニットの振動体とダンパーやエッジなど可動部と取付けに必要な部分を除く、スピーカユニット裏側のフレーム表面などの全ての表面の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成することを課題の解決手段とする。
請求項2に記載の発明はスピーカフレームの粘弾性体層のなかに剛性を持つ補助部材を有することを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項3に記載の発明はスピーカユニット取付けバッフル裏側の、スピーカユニット取付け部とそれより40mm以上大きい範囲で形成される円環状の全域に亘り、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を2mm以上の厚さで形成することを課題の解決手段とする。
請求項4に記載の発明はバッフル裏側の粘弾性体層のなかに剛性を持つ補助部材を有することを特徴とする請求項3に記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項5に記載の発明はスピーカユニット取付けバッフル表側の、スピーカユニット取付け部とそれより40mm以上大きい範囲で形成される円環状の全域に亘り、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を2mm以上の厚さで形成することを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかに記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項6に記載の発明はバッフル表側の粘弾性体層のなかに剛性を持つ補助部材を有することを特徴とする請求項5に記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項7に記載の発明はキャビネット壁面のすべて面の内面あるいは外面のいずれかの全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1〜請求項6いずれかに記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項8に記載の発明はキャビネット壁面のすべての面の内外面の全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1〜請求項6いずれかに記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項9に記載の発明はキャビネットの各面のすべての接合面に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1〜請求項8いずれかに記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項10に記載の発明はキャビネット壁面に関して、細分化した壁面構成材料を、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を0.5mm以上の厚さの形成により集成して構成する請求項1〜請求項9いずれかに記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項11に記載の発明はスピーカ装置に重量物を配する請求項1〜請求項10いずれかに記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項12に記載の発明は束縛部材にて粘弾性体層の外側から与圧を与える請求項8に記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項13に記載の発明はキャビネット部のおもな容量部分として魔法瓶を使用し、魔法瓶の内面および外面の全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項14に記載の発明はキャビネット部のおもな容量部分として蛇腹ダクトを屈曲して用い、蛇腹ダクトの外面の全域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を2mm以上の厚さで形成する請求項8に記載のスピーカ装置であることを課題の解決手段とする。
請求項1に記載の発明による、スピーカユニットの振動体とダンパーやエッジなど可動部と取付けに必要な部分を除く、スピーカユニット裏側のフレーム表面などの全ての表面の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成することは粘弾性体の内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことも含めて、スピーカユニットのフレームに対する制振層形成と剛性の強化となり、スピーカユニットの振動体の振動と同時に磁石とダンパーとエッジによって引き起こされるスピーカフレームの強い振動について、その振動を抑制すると共にその振動の減衰を早める。図20にてスピーカユニットの振動体の前進と磁石の後退が同時に起こり、それがスピーカユニットのフレームを前と後ろに引くこととなり、フレーム振動が始まるが、粘弾性体層の形成が非拘束型制振層の形成となり制振が発揮され、特にフレームの凹状部分は振動の発生点でありここが拘束型制振層の形成に近い形となり、制振性が増す。スピーカユニットのフレーム部分はキャビネット接し、しかもダンパーとエッジを介して振動体に接している部分であり、ここの振動が音のにごりに強い影響を及ぼしているので、ここの振動を抑えることが一番の基本であり、十分に抑えないで他の対策を進むと取りきれないひずみを残すこととなるので最も肝心である。粘弾性体層の形成はスピーカフレームの裏側の振動体側にも行いたいがスピーカユニットのその場所にあとで塗布するのは困難が伴うので塗布不可能域とするが、スピーカユニットの製造工程で塗布し、層形成することは効果をさらに推し進める。さらに粘弾性体は層の厚さの増加とともに剛性も有するので、スピーカユニットのフレーム振動を抑え、これによる余剰振動の減少と早期減衰が、歪の少ない再生音の実現となり、フレーム振動によりマスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、音のリアリティの向上となる。なお音質の評価は聴感覚による評価が最も厳しく、音色や響きや定位や奥行きを総合して、アコースティック楽器の実物と比較しながら微妙な違いを検出する。
請求項2に記載の発明による、スピーカフレームの粘弾性体層のなかに剛性を持つ補助部材を有する請求項1に記載のスピーカ装置であることは振動体振動とその反作用による磁石の振動は強く、スピーカユニット裏面のフレーム表面などのスピーカユニットの裏面の全ての表面に対して粘弾性体層の形成による制振は10mmを越える厚さとなるので、その層のなかに剛性を持った補助部材を有することにより、スピーカユニットのフレームと補助部材との間でそれまでの非拘束型から拘束型に近い形での制振層となり制振の効果を増すとともに、補助部材は第2のスピーカフレーム、それも振動を抑えたフレームの役割を果たし、このフレーム振動の減少によりひずみの少ない音を得る。
請求項3に記載の発明による、スピーカユニット取付けバッフル裏側の、スピーカユニット取付け部とそれより40mm以上大きい範囲で形成される円環状の全域に亘り、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を2mm以上の厚さで形成する請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置であることは粘弾性体の内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことも含めて、スピーカユニットによって引き起こされるスピーカマウント部周辺のバッフルの振動に対する制振層形成と剛性の強化となり、振動を抑制すると共にその振動の減衰を早める。この余剰振動の減少と早期減衰が、歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。
請求項4に記載の発明による、バッフル裏側の粘弾性体層のなかに剛性を持つ補助部材を有することを特徴とする請求項3に記載のスピーカ装置であることはスピーカユニットの振動とそれによるスピーカユニット取付け部周辺のバッフルの振動は強く、スピーカマウント部周辺のバッフルの振動に対するバッフル裏面への制振層形成による制振は10mmを越える厚さとなるので、その層のなかに剛性を持った補助部材を有することにより、スピーカユニットのフレームと補助部材との間でそれまでの非拘束型から拘束型に近い形での制振層となり制振の効果を増すとともに補助部材は第2のバッフル、それも振動を抑えたバッフルの役割を果たし、このフレーム振動の減少によりひずみの少ない音を得る。
請求項5に記載の発明による、スピーカユニット取付けバッフル表側の、スピーカユニット取付け部とそれより40mm以上大きい範囲で形成される円環状の全域に亘り、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を2mm以上の厚さで形成する請求項1〜請求項4いずれかに記載のスピーカ装置であることは粘弾性体の内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことも含めて、スピーカユニットによって引き起こされるスピーカマウント部周辺のバッフルの振動に対するバッフルの両面からの制振層形成と剛性の強化となり、その振動を抑制すると共にその振動の減衰を早める。この余剰振動の減少と早期減衰が、歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。
請求項6に記載の発明による、バッフル表側の粘弾性体層のなかに剛性を持つ補助部材を有することを特徴とする請求項5に記載のスピーカ装置であることはスピーカユニットの振動とそれによるスピーカユニット取付け部周辺のバッフルの振動は強く、スピーカマウント部周辺のバッフルの振動に対するバッフル表面への制振層形成による制振は10mmを越える厚さとなるので、その層のなかに剛性を持った補助部材を有することにより、その層のなかに剛性を持った補助部材を有することにより、スピーカユニットのフレームと補助部材との間でそれまでの非拘束型から拘束型に近い形での制振層となり制振の効果を増し、このフレーム振動の減少によりひずみの少ない音を得る。
請求項7に記載の発明による、キャビネット壁面のすべて面の内面あるいは外面のいずれかの全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1〜請求項6いずれかに記載のスピーカ装置であることは粘弾性体の内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことも含めて、キャビネット構成面への制振層形成と剛性の強化となり、スピーカフレームの強い振動とスピーカマウント部周辺の振動の抑制に加えて、スピーカキャビネットの壁面全てのその振動を抑制すると共にその振動の減衰を早める。この余剰振動の減少と早期減衰が、スピーカフレームの余剰振動により、歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。
請求項8に記載の発明による、キャビネット壁面のすべての面の内外面の全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1〜請求項6いずれかに記載のスピーカ装置であることは粘弾性体の内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことも含めて、キャビネットの内外面への制振層形成と剛性の強化となり、スピーカフレームの強い振動とスピーカマウント部周辺の振動の抑制に加えて、スピーカキャビネットの壁面全てのその振動を壁面の両面から抑制すると共にその振動の減衰を早める。この余剰振動の減少と早期減衰が、歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。これによりスピーカ装置の二大要素であるスピーカユニットとキャビネットの可能なすべての面に非拘束制振層が形成されることとなり不要振動は全て減衰する。
請求項9に記載の発明による、キャビネットの各面のすべての接合面に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1〜請求項8いずれかに記載のスピーカ装置であることは粘弾性体の内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことも含めて、スピーカ装置を構成する各面の共振が伝播することを防止することであり、スピーカユニットの制振、キャビネット各面の制振と相俟って、余剰振動の減少と早期減衰に寄与し、歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。キャビネットの振動は強いものであり、振動を大幅に抑えるには壁面の粘弾性体層の厚さが大幅に増大するので、同一の粘弾性体材料で各壁面を隔離して、スピーカユニットへの悪影響の現象を果たすものでもある。なお注意点は粘弾性体ゆえに力が加わり続けると粘性のために徐々に変形してキャビネットが破損することで、この防止には接合部付近の粘弾性体の断面積を大幅に増やすことが有効で、例えば内側と外側のそれぞれに10mm以上の盛り上げをして十二分の剛性を得て、変形を防ぐ。
請求項10に記載の発明による、キャビネット壁面に関して、細分化した壁面構成材料を、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を0.5mm以上の厚さの形成により集成して構成する請求項1〜請求項9いずれかに記載のスピーカ装置であることは粘弾性体の内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことも含めて、スピーカ装置を構成する各面の強い共振の発生を抑止することとなり、各面を細分化された構成材料を粘弾性体層で隔離して、さらには複層構造にして強い共振点をなくすることが、細分化した構成材料同士が拘束型制振層に準ずる形となり、スピーカユニットの制振と相俟って、余剰振動の減少と早期減衰に寄与し、これが歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。
請求項11に記載の発明による、重量物を配する請求項1〜請求項10いずれかに記載のスピーカ装置であることは粘弾性体層によりスピーカユニットの共振とスピーカ装置を構成する各面の共振の発生を抑止した上で、残る作用反作用の振動P6をスピーカの数倍以上の重量の重量物を配置により減少させることである。この重量物の配置がスピーカユニットを非振動の静止点に近いかたちとして作用反作用振動の悪影響を減少させ、これが歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。この重量物自体が新たな共振の発生とさせないために配置にあたっては粘弾性体層の上に配して、さらにその全体を粘弾性体層で覆う。
請求項12に記載の発明による、束縛部材にて粘弾性体層の外側から与圧を与える請求項8に記載のスピーカ装置であることは粘弾性体層によりスピーカユニットの共振とスピーカ装置を構成する各面の共振の発生を抑止した上で残る振動をさらに束縛部材にてキャビネットの外側から与圧を与えることは質量の増加を少なく効果的に振動を抑制させることとなり、これが歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。この場合順序を逆にして、束縛部材による加圧ののちに粘弾性体層の形成では制振されるが、束縛部材による振動も発生し、それを粘弾性体では抑えきれないので、粘弾性体層の形成の上に拘束部材による与圧印加の順序であり、さらにその上に粘弾性体層を形成すると効果がさらに上がる。
請求項13に記載の発明による、キャビネット部のおもな容量部分として魔法瓶を使用し、魔法瓶の内面および外面の全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置であることは魔法瓶の遮熱性に伴う真空層の音の遮断効果と減圧による与圧効果と軽量で強度がある利点を活用し、金属の共振の発生に対しては内外部への粘弾性塗布により内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことにより制振して、キャビネット振動による直接放出音がなく、小型軽量でひずみの少ないスピーカ装置を実現する。
請求項14に記載の発明による、キャビネット部のおもな容量部分として蛇腹ダクトを屈曲して用い、蛇腹ダクトの外面の全域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を2mm以上の厚さで形成する請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置であることは後方開放型スピーカ装置の振動体の裏面に関してキャビネットからの悪影響が少ないという特徴を生かして、その低音再生域を下方に伸ばすために蛇腹ダクトを用いたものであり、経路長の確保のためにダクトを屈曲させて反射させるものである。ダクトの振動を抑えるために粘弾性体の内部損失が大きく、振動エネルギーを熱エネルギーに変え、自身の共鳴がないことを活用して外面の全域に粘弾性体の非拘束制振層を形成したものであり、このことにより、背面圧力の少ない伸びやかな音の低音域までの再生が実現する。
全般的効果をさらに記せば、図20に示す振動の伝播の過程の模式図を見て判るように、最初の振動開始で音が出ると同時に起こるスピーカユニット内をはじめとする振動伝播や各所の変形に対して、その起点であるスピーカフレーム振動をはじめとして、キャビネット内のすべてを制振することにより、図20のA、B、Cの振動発生と伝播による余剰振動が減少し、包括的にも対処がなされる。これにより例えば高域をシンバル音、低域をベース音、全体としてピアノ音や弦楽器音とボーカル音の再現性、それに定位と分解能に着目して試聴にて効果確認をおこなうと、結果はそれぞれに対して大幅のリアリティ向上の効果を奏する。この結果は全音域の全音量に対して不要振動の低減や、振動相殺の低減の効果をもたらしていることを示し、聴感はどの音量でも、どの音域でも明瞭な音となり、歯切れが良くなり、打楽器の臨場感が良くなり、気配の音や聞こえなかった音が聞こえる効果をもたらし、目的とする高解像度の音の実現が進む。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。はじめに粘弾性体の比較と効果の基本確認を行う。対象の共鳴体として、直径61mm高さ111mmのガラスコップ4個を準備し、粘弾性体は接着剤系からの1種類に、振動抑制効果の高い建築シール剤系から2種類を加えて、これを塗布乾燥させて3mmの粘弾性体層を形成し、打撃時の音の測定を行う。それはイ:ガラスコップそのまま、ロ:1液型ウレタン系接着剤のボンドU928C−X、ハ:変性シリコーンシーラントのセメダインSM−202、ニ:同じく変性シリコーンシーラントのセメダインPOSシールSM−444である。段階的塗布にて、表裏全域への粘弾性体層形成による共鳴抑制効果が高いとの知見が得られ、表裏全域塗布での測定にて発生音の強さは、イに対して、ロでは3db、ハとニでは5dbの減少を示した。音の減衰時間はロでは変わらず、ハでは13、%ニでは28%の減少を示した。また音の高さはイの932Hzがロでは831Hz、ハとニでは784Hzと質量増加に伴い低下した。これにより粘弾性体層の形成による制振効果があり、とりわけPOSシールの制振効果が高いことの知見が得られる。
さらにこのPOSシールの確認として弦楽器の弦に塗布して、100Hzから600Hzとその倍音域までの音域での効果の差を確認した。使用楽器はクラシックギターで巻き線を含むナイロン弦である。POSシール塗布前に対して塗布乾燥後では、高音域の1番線のE弦では音の強さは6db減少、減衰時間は84%減少、2番線のB弦では6db減少、66%減少、3番線のG弦では15db減少、78%減少、4番線のD弦では9db減少、95%減少、5番線のA弦では12db減少、91%減少、低音域の6番線のE弦では15db減少、91%減少であり、どの音域でも減衰時間の短縮は大きく、音の強さも低音域では特に小さくなっていて、全体としてはピチカート奏法のような音でポコポコと小さく響くだけとなる。
これらの事前確認を経て、スピーカ装置に対して粘弾性体層を形成して、全音域をバランスよく含んだピンクノイズにて振動減衰の確認を行う。小型のスピーカ装置で、スピーカ口径は65mm、キャビネットの板厚は9mm、高さ198、幅125、奥行174mmで容積は6リットルである。聴感ではスピーカユニット裏側への塗布と表面振動が大きいフロントバッフルへのPOSシールの塗布、それも0.5mmの塗布厚で、音のもやもや感が減少し、それまでマスキングされていた高域の音がはっきりと再現され、変化が確認された。振動測定としては外面全ての0.5mm厚の塗布にて全体として3dbの振動減少が見られた。さらに裏面塗付とスピーカフレーム塗布、表面裏面の塗付増加と進み、全面が4mm以上の層の厚さとなった時点で、8dbの振動減少が確認された。キャビネット面を叩いた音の変化については側面中央部で強さは12db減少、減衰時間は60%減少、上面中央部では9db減少、51%減少し、粘弾性体塗布による振動抑制と早期減衰の効果は確認された。これらの結果から塗布の厚さは0.5mm以上にて十分な効果を発揮するとの見解に至った。塗布領域についてはキャビネット全域が好ましいが、必須域を絞ると、通常のキャビネット形状の六面体構成の直方体の上下面は狭小であり、剛性が強いので、その上下面を除く全ての面を必須として、直方体を立方体とみなして、66%以上の領域を必須域とする。
これに続いて、この粘弾性体層を形成し測定したスピーカ装置に加えて、PC用からフロアタイプまで、大小各種と各種方式のスピーカ装置、40セット以上に対してキャビネットの各面をアルコール脱脂したのちに粘弾性体を塗布して層の形成を行い、試聴にて同様の効果を確認した。変性シリコーンPOSシールは垂れないので垂直面にも塗布できるので作業性が良い。しかし乾燥には24時間の工程が必要となるが、これは粘弾性体であるが故の必要時間と見る。完全固着には5日ほどの時間を要するが、製作から実使用開始までに通常の範疇では許容できると考える。寿命や耐久性は建築材料であることもあってその安定性には問題がない。なおスピーカユニットの塗布域についてもスピーカユニットの裏側の全域が好ましいが、必須域を絞ると、裏側を構成するフレーム域とフレームの凹状部分とマグネットカバーのうち、フレームとフレームの凹状部分が最重要なので、スピーカユニット裏側全域の60%以上の領域を必要域とする。
<第1の実施の形態>
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第1の実施の形態はスピーカユニットの振動体とダンパーやエッジなど可動部と取付けに必要な部分を除く、スピーカユニット裏側のフレーム表面などの全ての表面の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成することを特徴とするスピーカ装置である。この粘弾性体の内部損失が大きく、自身の共鳴がないことが歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。なお図は断面構造を表しているが図の左側の正面から見ての幅方向はスピーカ幅より少し大きいか数倍の大きさであり、図ではスピーカフレーム部分についてそこに粘弾性体層を形成しているために音の後方放散ができないように見えるが、スピーカフレームには複数の大きな穴があけられており、フレームへの粘弾性体層の形成後も振動体からの音の後方放散に関しても問題は生じない。
粘性と弾性の両方を含んだ性質を持つ粘弾性体の中でも、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤は内部損失が大きいのでスピーカフレームとキャビネットへの最適な制振層形成となり、これがスピーカフレームとキャビネットの振動抑制と剛性強化に有効で、さらに内部損失が大きいことは自身に音の共鳴などの二次障害がないことにつながる。ヤング率5MPa付近、ゴム硬度30付近に最適点があるが、異種の塗り重ねで硬度を順次落として傾斜性の層形成とするとさらに効果的である。例えばブチルゴムやピッチ、アスファルトやゴムや金属材料などそれぞれ粘性が非常に高かったり、弾性が高かったり、剛性も強かったりするが、その複合体も含めて、取り扱いや作業性や室内配置での使用と耐久性を総合してみるとバランスが悪い。粘弾性体、とりわけ変性シリコーンシーリング材のPOSシールを代表として、塗布面との親和性が良く、流動性がなく、乾燥収縮や膨張が少なく、耐久性が良く、そして何よりも塗り重ねて厚みを増しても固まった後の共振が少なくしかも剛性も増加することはスピーカ装置の振動抑制としての良い素材と言いうる。スピーカユニット後方の全域を目指して制振する理由は発生している振動がユニット全体に亘っており、ある領域を制振しても効果が限られる上に振動エネルギーに大きな変化がなく、共振個所も変化するので、包括的に全周囲に粘弾性体層を形成することが内部損失の増大と、剛性の向上によるねじり・スベリ・圧縮拡大の応力に対する強化が実現され、振動を抑制する。なお塗布に当たってはスピーカユニットとの接着面強度を確保することが重要でアルコール脱脂またはプライマー処理を行うことが必須である。
スピーカユニットSPのフレームSPdの振動が粘弾性体層により抑制されるので、フレーム振動が重畳していた振動体による振動P1による前方放出音が明瞭になり、まず高音域再生でそれが確認され、粘弾性体層の厚さの増加とともに低音域が歯切れも良くなり、最後に中音域が澄んでくる。スピーカフレームの振動は振動体の振動によるダンパーの振動と振動体エッジの振動により引き起こされるとともに振動体の振動の伝播と振動体振動の作用反作用による磁石の振動が重畳したものであり、これへの制振を十分に行うことが基礎として必要である。これが不十分であるとほかへの対策の進行とともにスピーカユニット共振のひずみが残り全体の解決が遅れる。スピーカフレームなどの後部への粘弾性体の塗布が十分であるかは例えばスピーカユニットを前後逆に取り付けて、普段聞き取れないスピーカ背面の音を聞こえるようにして粘弾性体層の厚さを増して全音域で澄んで聴こえるまで厚さを増す方法が良く、12mmを超え、粘弾性体フレームとも言いうる状態ともなる。さらにスピーカフレームの幅を超えて粘弾性体層がオーバーハングしても良いし、スピーカフレームの足の数が少なく、スピーカフレームの開口が大きい場合には粘弾性体で直接にフレームの足部を追加しても良い。
なお通常のスピーカフレームは鉄を材料にしているが、プラスチックの時には粘弾性体層による振動改善の効果は大きく、ハイクラスといわれるアルミダイキャストを材料にしている場合にも粘弾性体層の形成による効果は大きい。このスピーカの背面全域およびスピーカ取り付けのバッフル周辺に粘弾性体層を形成することは単一の振動体のシングルコーンスピーカを例にして述べてきたが、2ウェイ、3ウェイなどのマルチウェイのスコーカ、トィータにても同様の中高音域の共振の状態なので粘弾性体層の形成による制振は適用でき、さらにはここで例示しているシングルコーンのダイレクトラジエータタイプと呼ばれる直接放射型のスピーカ以外のスピーカ、すなわちドームスピーカの裏側やホーンスピーカにおいてもドライバーとホーンの裏面と外側に粘弾性体層の形成は適用できる。さらにスピーカ構造に関しても密閉型のみならず、位相反転のバスレフ型、後面開放型、バックロードホーン型などに関しても本発明の粘弾性体層の形成による制振はスピーカユニット振動とキャビネット振動、とりわけ前面バッフル振動に対して密閉箱形式と同様に制振効果を表す。
<第2の実施の形態>
図3は、本発明の第2の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第2の実施の形態はスピーカフレームの粘弾性体層のなかに剛性を持つ補助部材を有する図2のスピーカ装置であり、振動体振動とその反作用による磁石の振動は強いので、スピーカユニット裏面のフレーム表面などのスピーカユニットの裏面の全ての表面に対して粘弾性体層の形成による制振は10mmを越える厚さとなるので、その層のなかに剛性を持った補助部材を有することが拘束制振に近い形となり、制振の効果を増し、ひずみの少ない音を得る。この剛性を持つ補助部材は3mm厚、幅10mm、長さ30mmの鉄プレートや同じ長さほどのボルト類などの金属や木質材、プラスチックで、その剛性が制振の効果を高めるとともに粘弾性体がその補助材料の固有振動を制振することももたらす。
<第3の実施の形態>
図4は、本発明の第3の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第2の実施の形態はスピーカ取付けバッフル裏側の、スピーカユニット取付け部とそれより40mm以上大きい範囲で形成される円環状の全域に亘り、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層2fを2mm以上の厚さで形成する図2のスピーカ装置である。図4のキャビネット裏面のスピーカユニットマウント部近傍に粘弾性体層2fを円環状に形成することであり、このことが粘弾性体の内部損失により、スピーカユニットの振動の抑制に加えて、振動しているスピーカユニットのマウント部の周辺バッフルの振動を抑制して、歪の少ない再生音を実現し、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。スピーカマウント部周辺はスピーカユニットによる振動が大きく、この振動を抑制することはスピーカユニット内の振動を抑えることの次に重要である。
<第4の実施の形態>
図5は、本発明の第4の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第4の実施の形態はバッフル裏側の粘弾性体層のなかに剛性を持つ補助部材を有する図4のスピーカ装置であることはスピーカユニットの振動とそれによるスピーカ取付け部周辺のバッフルの振動は強いので、スピーカマウント部周辺のバッフルの振動に対するバッフル裏面への制振層形成による制振は10mmを越える厚さとなるので、その層のなかに剛性を持った補助部材を有することが拘束型制振に近い形となり、制振の効果を増し、ひずみの少ない音を得る。この剛性を持つ補助部材の材質は3mm厚の鉄プレートなどの金属や木質材、プラスチックで、その剛性が制振の効果を高めるとともに粘弾性体がその補助材料の固有振動を制振することももたらす。
<第5の実施の形態>
図6は、本発明の第5の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第5の実施の形態はスピーカユニット取付けバッフル表側の、スピーカユニット取付け部とそれより40mm以上大きい範囲で形成される円環状の全域に亘り、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を2mm以上の厚さで形成する図4のスピーカ装置である。キャビネット表面のスピーカユニットマウント部近傍に粘弾性体層2fを円環状に形成することであり、このことが粘弾性体の内部損失により、スピーカユニットの振動の抑制に加えて、振動しているスピーカユニットのマウント部の周辺バッフルの振動を抑制して、歪の少ない再生音の実現となり、マスキングされていたスピーカユニットの振動体の微細音の再現となり、解像力の向上となり、リアリティの向上となる。スピーカマウント部周辺はスピーカユニットによる振動が大きく、この振動を裏面と表面の両面から抑制することは抑制効果を強め、特に表面側は外見上特異に感じるが表面振動の抑制と共振音の放出を防ぐ効果がある。
<第6の実施の形態>
図7は、本発明の第6の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第4の実施の形態はキャビネット壁面のすべて面の内面あるいは外面のいずれかの全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する図4のスピーカ装置である。図7においてはキャビネットの内面の全ての面の全域に粘弾性体層2bを形成しているが、このことが粘弾性体の内部損失により、スピーカ装置の振動体以外の全ての余剰振動の抑制がなされ、余剰振動による音のにごりが減少し、キャビネット振動によりマスキングされていたスピーカ振動体による振動P1による前方放出音が明瞭になる効果が発揮される。スピーカキャビネットの全ての壁面の全域を目指して制振する理由は発生している振動が壁面全体に亘っており、ある領域を制振しても効果が限られる上に振動エネルギーに大きな変化がなく、共振個所も変化するので、包括的に全壁面に粘弾性体層を形成することが内部損失の増大と、剛性の向上によるねじり・スベリ・圧縮拡大の応力に対する強化が実現され、振動を抑制する。
キャビネット面の構成材料としては木質系やプラスチック系のほかに、金属系、陶器磁器ガラス系、コンクリートや大理石を含む石系もあるが、共振や部分振動や表面振動が付随し、オルゴールモジュールを鳴らして接触させると共鳴による音の増大でこれがよく判る。上記に述べた制振のための粘弾性体はこれら各種の材料に対する親和性があり、層形成により叩いての音やオルゴール接触での共鳴も減少して制振効果が確認される。強弱の違いはあるが全ての面が振動しているがゆえに全ての面を制振する必要性があり、これを行うことがひずみの少ない音の実現につながる。この場合、キャビネットの裏側と表側では粘弾性体層による振動抑制効果が多少異なり、壁面振動の抑制のほかに表面の部分振動の抑制の差異や音の反射や放散での効果の違いもあり、どこにどれだけの厚さで実施するかについては効果確認が要されるとともに、商品としての外観上や外観性の向上それに製造工程上の観点も含めて選択される。
<第7の実施の形態>
図8は、本発明の第7の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第7の実施の形態はキャビネット壁面のすべての面の内外面の全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する図6のスピーカ装置である。図8に示すようにキャビネットの外面の全ての面の全域に粘弾性体層2a、キャビネット内面の全ての面の全域に粘弾性体層2bを形成しているので、このことが粘弾性体の内部損失によりスピーカ装置の振動体以外の全ての余剰振動の抑制、特にキャビネット振動の抑制が表面と裏面からなされ、制振力としては最大になり、余剰振動による音のにごりが減少し、キャビネット振動によりマスキングされていたスピーカ振動体による振動P1による前方放出音が明瞭になる効果が発揮される。キャビネット壁面の振動力は大きいので、粘弾性体の厚さの増大とともに音の変化にて効果の様子がわかるが、その飽和点は10mmを超える場合も多い。
<第8の実施の形態>
図9は、本発明の第8の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第9の実施の形態はキャビネットの各面のすべての接合面に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する図8のスピーカ装置である。キャビネット各面の接合面に粘弾性体層2cを1mm以上形成することは各面の振動のそれぞれの隣接面への振動の固体伝播の抑制で、スピーカユニットの振動体裏面からキャビネット内への振動は前面への音と同じエネルギーであり、空気伝播でキャビネットの各面で発生する振動は大きく、これにスピーカフレームからの振動の固体伝播による振動が加わり、しかも各面の振動が固体振動伝播として相互伝達され干渉しあうので、特にグランドピアノ音の再生にてはっきりとキャビネットによる音のにごりが確認され、この振動を各壁面内にとどめるために、振動を壁面制振と同様に粘弾性体層を形成して、振動を隔離するものである。
製作ではキャビネットを構成する各面の表面と裏面それに端面に1mm以上形成するように塗布して乾燥し、さらに各面のパネル端面に粘弾性体を追加塗布して釘やネジを使わずに接合して乾燥させる。このことによりキャビネット各面への粘弾性体層形成による余剰振動を抑制と共に、キャビネット各面間の固体振動伝播の緩衝がなされ、とりわけフロントバッフル1aへの振動の集約が減少し、スピーカユニットへ戻る固体振動伝播を減少させる。このことにより、キャビネット振動によりマスキングされていたスピーカ振動体による振動P1による前方放出音が明瞭になり、その効果はピアノ音が澄んだ音となって確認される
<第9の実施の形態>
図10は、本発明の第9の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第9の実施の形態はキャビネット壁面に関して、細分化した壁面構成材料を、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を0.5mm以上の厚さの形成により集成して構成する図8のスピーカ装置である。図10に示すようにスピーカキャビネット壁面に関して、フロントバッフルの細分化した構成材料1e、後板の細分化した構成材料1f、天板の細分化した構成材料1g、底板の細分化した構成材料1hを、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層2dを2mm以上形成して集成して構成することであり、キャビネット構成の各面を、例えば100×30×15mmの小木片を粘弾性体により集成して構成することである。製作では平面上に木片を集めて粘弾性体を塗布して寄せ集めてパネルを製作し、多層の場合にはさらに粘弾性体により重ね合わせてパネルを完成させる。これをさらに釘やネジを使わずに粘弾性体を塗布して組み立てることとなるが、キャビネット表面側の粘弾性体層、裏面側の粘弾性体層の厚さを増加させて、面強度を低下させないようにする。
これにより図10にて木片間の各所に粘弾性体層が形成され、単に粘弾性体層を厚くすることのみでは解消しにくいキャビネットの各面の大きさでの強い共振振動が発生しにくくなり、キャビネット各面を叩いても音の発生がほとんどなくなり、キャビネット面の固有振動が減少したことを示す。同時に固体伝播の減少効果もあり、これまでのキャビネット表面側の粘弾性体層2a、裏面側の粘弾性体層2bによる振動抑制も効果を増し、キャビネット面の全体振動、部分振動、表面振動と各面の相互干渉も姿を消してゆく。このことにより、キャビネット振動によりマスキングされていたスピーカ振動体による振動P1による前方放出音が明瞭になり、その効果はピアノ音がさらに澄んだ音となって確認される。
<第10の実施の形態>
次に本発明の第10の実施の形態を説明する。
図11は実施例1におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この実施例1は重量物を配する図8のスピーカ装置である。図11に示すように、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を介してスピーカ重量の数倍以上の重量物3をキャビネット壁面に配することは図19におけるスピーカユニットの振動体振動の作用反作用による振動P6への対処としておこなう。この作用反作用による振動P6を減少させるには従来からスピーカ背面の磁石の背後に重量物を配することが行われてきたが、作用反作用振動の減少効果に相俟って、スピーカフレームの各所の部分振動と重量物自身の振動などの複雑な振動を生むという二次障害の発生をともなっていた。
本実施の形態では効果的に作用反作用による振動P6を減少させるために粘弾性体でスピーカフレーム振動を抑えて、さらにそのスピーカ取り付けマウントの周囲部にその粘弾性体層を介して重量物3を配する。この重量物はスピーカの磁気回路に影響を与えないために非磁性体が望ましいがスピーカユニットに磁気シールドがなされている場合にはこの限りではない。また重量物はスピーカマウント部のキャビネットの表面または裏面さらには両面に円環状にあるのが望ましく、粘弾性体層と重量物効果により、スピーカフレームSPdの振動の減少、フロントバッフル1aの全体振動、部分振動、表面振動の減少に、さらに作用反作用による振動P6の減少が加わる。スピーカユニットの数倍以上の重量にてスピーカユニットを非振動の静止点に近いかたちとなり、これにより音の落ち着きをもたらし、おとなしい音になったように感じとともに、再生音が明瞭となり微細音の再生が向上し、澄んだピアノ音が認識される。
図12は実施例2におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第2の実施例は実施例1と同様の重量物の配置であるが、構造は大幅に異なり、まず一番下に大きな重量物3を配して粘弾性体層を形成して制振し、その上にマグネット部が下でスピーカユニットを逆さに配し、その上に内外に粘弾性体層を形成したキャビネットを設け、さらにスピーカフレームなど全体の外殻部にさらに粘弾性体層を形成する配置である。この構造はスピーカユニットからの放音が通常と逆となるが、音の無指向性の音の放出となり、重量物も大きく重くすることが可能であり、作用反作用振動の軽減の効果は大きく期待できる。しかし通常はキャビネット内に隠れているスピーカフレームが外殻面に出てくるためにフレームや磁石部での振動が全て音として聴こえることになる。そのために通常のスピーカ裏面への粘弾性体層の形成によるいっそうの振動抑制が要される。これを乗り越えて振動を抑制した場合にはひずみの少ない音となり、スピーカ装置の新規のスタイルとなる。なお逆取り付けのためにダンパーによる逆位相の放音があるが、ダンパー面は通気性があるために問題とならない。
<第11の実施の形態>
図13は、本発明の第11の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第11の実施の形態は束縛部材にて粘弾性体層の外側から与圧を与える図8のスピーカ装置である。図13に示すように、スピーカフレームなどのスピーカ裏面キャビネット構成面の振動とキャビネット振動を粘弾性体層で抑制することに加えて、その層の上にスペース部材4cを介して被覆付針金ワイヤーなどの束縛部材4aとターンバックルなどのテンション印加部材4bでキャビネット各構成面とスピーカフレームに与圧を加えることであり、この束縛部材にさらに粘弾性体を塗布してもよい。これは粘弾性体によるスピーカフレームやキャビネット余剰振動の減少に、さらに与圧によるスピーカフレームやキャビネットの制振効果を加え、同時に束縛部材自体による新たな振動発生を粘弾性体により防ぐものである。これにより、キャビネット振動によりマスキングされていたスピーカ振動体振動による前方の空気振動P1による前方放出音がさらに明瞭になり、与圧による余剰振動のさらなる減少が特に打楽器の立ち上がりと立下りの音のリアリティの向上を引き起こす。
図13ではスピーカユニットを含めた与圧印加となっていてスピーカユニットとキャビネットの双方への与圧印加であり、スピーカ装置全体への総合的な振動抑制効果をねらっているが、締めすぎによるスピーカユニットやキャビネットの変形はひずみ音の発生となるので十分気をつける必要がある。ワイヤールートとしてはキャビネット外側を一周や、スピーカ装置の内部を介するが側面から出してキャビネット後方を回るルートもあり、本数とルートやスペース部材の高さなど与圧状態を確認しながら最適に選択する。テンション印加の方法はターンバックルやウインチのような機構でなく、針金のひねり上げでも良いが十分な力と緩みへの対処が必要である。
<第12の実施の形態>
次に本発明の第12の実施の形態を説明する。
図14は実施例1におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この実施例1はキャビネット部のおもな容量部分として魔法瓶を使用し、魔法瓶の内面および外面の全域の70%以上の領域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を1mm以上の厚さで形成する請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置である。図14に示すようにポット状魔法瓶5aを配し、その内面と外面に粘弾性体層5cと5dを形成し、スピーカユニット周辺構造を1aや1bや1cで構成して、そのスピーカユニット内面と外面にも粘弾性体層2a・2b・2fを形成し、さらに魔法瓶との接続部にも粘弾性体層を構成した構造である。ポット状魔法瓶は廉価で入手性も良く、3リットルほどの容量まであるが、スピーカキャビネットとしての使用での最大の特徴は断熱効果のための真空層を音の遮断に活用する点であるが、ステンレス面を通じて音が内部から外部へと伝わるので、この魔法瓶の内面と外面の振動の発生と伝播を防ぐために粘弾性体層を形成し、その内部損失により制振を行う。これにより強い強度で軽量のキャビネットが出現し、このことはキャビネット振動に関しても振動が少ないことに加えて、その減衰も早く、スピーカユニットからの前方放出音にも歯切れよさの良い影響を与え、しかもキャビネットからの外部放出音が少ない利点を持つ。粘弾性体は0.5mmほどの塗布だけで金属の振動を抑えられるが1mmを超えると十分な制振となり、70%を覆えば100%に近い飽和の制振を得られる。
図15は実施例2におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この実施例2はポット状よりもさらに大容量の魔法瓶での新たな実施例である。大容量になると広口魔法瓶となりランチジャーや料理保温ジャーの用途があるが、開口部が大きいので魔法瓶の特長を生かすためにはスピーカユニット部と広口魔法瓶との間に二重の板と粘弾性体層で振動を抑える対処が必要で、これにより大容量の魔法瓶活用による音質の良いスピーカ装置が実現される。口径の大きいスピーカユニットのスピーカ装置にはそのキャビネットとして大きい容量の魔法瓶が必要とされるが広口となる。これにスピーカユニットの口径にマッチングする場合には魔法瓶内外と取り付け部への粘弾性体層の形成によりスピーカ装置として使用可能であるが、口径や向きがマッチングしない場合には図15の構造による魔法瓶の活用となる。さらにスピーカキャビネットとして容量が必要な場合にはポット形状魔法瓶でもジャー形状魔法瓶でも連結部を構成すれば2連・3連・4連の大容量構造への発展が可能である。
<第13の実施の形態>
図16は、本発明の第13の実施の形態におけるスピーカ装置の断面構造を表わしたものである。この第13の実施の形態はキャビネット部のおもな容量部分として蛇腹ダクトを屈曲して用い、蛇腹ダクトの外面の全域に対して、変性シリコーン系、ポリウレタン系の粘弾性シーリング材、エポキシ変性系、変性シリコーンエポキシ系、ウレタン系の粘弾性接着剤のいずれかあるいは複合である粘弾性体層を2mm以上の厚さで形成する請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置である。スピーカ装置のキャビネット部のおもな容量部分として蛇腹ダクト5fを音の内部反射のために屈曲して蛇腹を伸ばしきらない範囲で用い、蛇腹ダクトの外面の全域にたいして粘弾性体層5gを2mm以上の厚さで形成する。実際の製作ではスピーカに対してダクトの方は大幅に長いが、図では基本構造としてこれを示している。外面はダクトの振動防止と剛性の構成とダクト間の接触の防止のために制振し、厚さは厚いほど良くしかも凹凸のために一様にはならないが、2mm以上の厚さでもって全域を覆うことによって十分な制振効果となる。
実製作は直径80mm、蛇腹高低4mmのフレキシブルは排気ダクトと、直径110mm、蛇腹高低5mmのフレキシブル排気ダクトの各種と、ファンヒーター熱をコタツに導く蛇腹アルミダクト、直径11mm、収縮長さが0.8m、最大長さが2.7m、蛇腹高低5mmを、それぞれ伸張させるが、伸張しきらずに蛇行させ、さらにダクト外側全域に振動抑制のために粘弾性体を形成させた。これにて管状体での良く響く共振残響がない上に蛇腹での音の乱反射により、数倍の管長に相当する低域までの音が再生される。なお通常のキャビネットのように見えるボックスはスピーカ装置の外見作りとスピーカ装置の自立には必要であるが、スピーカキャビネットの機能はすべて蛇腹ダクトがおこなうのでボックスはなくとも良い。図17は第13の実施の形態におけるダクト内の音の反射の状態を表したもので、ダクト内部での反射の繰り返しにより実効ダクト長は数倍以上となり低音域の再生が可能になることがわかる。
上記の各実施例から、本発明のスピーカユニットのフレームとキャビネットへの粘弾性体層の内部損失による制振はスピーカユニットに関する非振動の静止点に近い形での振動体振動が実現することとなり、歪の少なく歯切れの良い音が実現される。このことはスピーカユニットが持つ本来の性能を引き出すことに役立つことを示し、現スピーカユニットの本来の価値実現となる。各種の実施例があることは場合に応じた展開ができることであり、PC用の小型スピーカ装置や普及帯の商品にては従来以上の高音質の実現であり、ハイクラスにてはさらにリアルな音の具現化となる。また従来よりも木材などの素材の使用が少なく高品質の音が実現できることはエコロジー面からも推奨される。高齢化社会の進行とともに音に関する心の満足度向上の果たす役割は大きく、音の良さが心地よさとなり、生活への潤いの増加となる。また非振動の静止点からの振動での放音の実現は振動体や振動機構などのさらなる進歩をも促進する。本発明は従来工程への塗布の追加であり、完成後の追加塗布や さらには使用後の改良としての追加塗布もできえることで、これは品質向上によるライフの延長である。また、分解や改良作業に対しても柔らかいのでカッティング可能で接合面は界面とならずに再接合できる点も特徴である。