JP5832778B2 - オーディオ用インシュレータ及びその評価方法 - Google Patents

オーディオ用インシュレータ及びその評価方法 Download PDF

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Description

本発明はオーディオ機器である、スピーカー、アンプ、CDプレイヤー、アナログプレイヤー等に用いられるインシュレータ、及び、このインシュレータの評価方法に関するものである。
オーディオの分野においては、原音に限りなく近い音の追及が、オーディオ機器である、アンプ、スピーカー、CDプレイヤー、ケーブルなどの各コンポーネンツにおいてなされてきた。アナログからデジタルの時代に移行し、様々な革新的技術が投入されたにもかかわらず、録音から再生に至る過程の技術にはまだ限界があって、人間の聴覚が知覚する程には、原音を忠実に再現できないのが現状である。オーディオ機器が原音(たとえばオーケストラの生演奏の音)に追従できない要因の一つに、振動がオーディオ機器に与える影響がある。周知のように、オーディオ機器は自ら振動を発生するとともに、外部から様々な振動の影響を受けている。アンプの場合は電源トランスの交流基本信号とその高調波成分による「うなり」が発生する。CDプレイヤーの場合はディスクを回すモーターが振動源となる。スピーカーの場合、コーンを駆動するボイスコイルの反力がスピーカー・エンクロージャー(箱)本体を振動させる。この振動がスピーカーを設置した床面に伝達され、床面を含む部屋全体の持つ複雑な固有振動モードを励起させる。原音に複雑に重畳された外乱振動は、再びスピーカー本体を振動させる。この時発生する混変調歪(サブハーモニクス)がオーディオ機器の音質を劣化させるという仮説が提唱されているが、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動が、再生音の品位を低下させる重要な要因であるという点は、間違いのない事実であると思われる。
オーディオ機器の音質を改善するものとして、インシュレータがある。アナログ時代、ハウリングを抑止するために、インシュレータは主にアナログプレイヤーと床面との間に設置され、振動の伝達を遮断する手段として必須のものであった。アナログからCDプレイヤーに移行して、インシュレータはハウリング防止対策ではなく、オーディオ機器の音質を改善し、リスナーの好みの音に調整するチューニング手段として用いられるようになった。インシュレータの適用により、音質が変ることは良く知られているが、その効果をもたらすメカニズムについては、理論的に十分解明されているとは言えず、経験的、試行錯誤的に開発されたものが多い。過去、インシュレータとして用いられているものに、次の二つのタイプがある。
(1)フローティング方式インシュレータ
このタイプのインシュレータは、振動の遮断(シャットアウト)を目的としたもので、剛性の小さい緩衝体が用いられる。緩衝体として、ゴム材を用いたもの、スプリングコイルを用いるもの、空気を封じ込めたエアーフローティング・ボード、磁力の反発力を利用したものなどがある。
(2)硬質材料によるインシュレータ
インシュレータのもうひとつのタイプは硬質材を用いるものである。近年、前述した緩衝体に代わり、オーディオ機器が発生する振動を効果的に吸収し、外部へ逃すことを目的とした硬質材、たとえば、木材、樹脂、金属、セラミック等を用いたもの、及びこれらの素材を多層構造にした複合タイプが考案され商品化されている。この複合タイプについては、特開平10-246284号(特許文献3)に開示されている。硬質インシュレータの場合は、良質な音響用素材のキャラクターを利用した再生音のチューニング手段として用いられる。
たとえば、
(a)金属系材料
真鍮:キラリとした明るいブリリアントな響き
銅:重厚感があってパワフル
銀:芯のとおりが良く、音の立ち上がり・立ち下がりが素早い
金:ふくよかさで艶やか
(b)木材系材料
アフリカ黒檀:固いが刺激的ではない音(楽器に使用される)
縞黒檀:アフリカ黒檀より柔らかい
桜:柔らかく芳純
一方、円錐形状のスパイクは、「円柱→円錐→円錐の頂点→床面」の方向には振動が伝達され易く、その逆方向には伝達されにくい効果を利用したもので、スピーカーの設置に多用されている。たとえば、複数個のスパイクを直列に配置した構造が特許第3848987号(特許文献1)に開示されている。
図35に示すダブルスパイク構造の振動防止支持装置は、スパイク受け600と、第1のスパイク601と、第2のスパイク602と、スパイク受け600に入れられた液体603とで構成される。第1のスパイク601は円柱部分がスパイク受け600の円筒の内壁と接するようにスパイク受け600の下端に挿入される。第2のスパイク602は、同様に第1のスパイク601の上面の中心に設けた窪みに円錐部分の頂点を置いている。スパイク受け600と、第1のスパイク601間の狭い隙間に満たされた液体603は、両部材600、601間の振動を絶縁する効果を有する。
特許第3848987号 特開2006-200734号公報 特開平10-246284号公報
以下、オーディオ用インシュレータとして、上述した2つの従来方式が抱える課題を整理すると、次のようである。
(1)フローティング方式インシュレータの課題
上述したゴム製インシュレータの場合は、ゴムの粘弾性による過剰な制振作用により、音に生気を与える高周波数成分まで減衰してしまうため、音の輪郭が曖昧となり、音質に混濁感が生じるという欠点があった。
スプリング方式の場合、ばね剛性と搭載物の質量できまる固有振動、及び、複数の高調波振動が広い周波数領域に渡って発生するため、この振動が音に与える影響をどう回避するかが大きな課題となる。
エアーフローティング・ボード、及び、磁力の反発力を利用したインシュレータの場合、オーディオ機器は床面に対して完全非接触で浮上できる。この完全非接触浮上により、音の透明感、立体感、分解能の向上などの効果が注目されている。反面、オーディオ機器から床面に伝達される振動は、インシュレ−タで完全遮断されるために、リスナーの好み、音楽のジャンルなどに合わせた音質のチューニングが硬質材料インシュレータと比べて難しく、音が没個性的になるという欠点があった。また、完全非接触浮上式の場合、適用対象のスピーカーによって、低域の力感・定位感が低下する、低音が引き締まらず空間に浮遊した不自然な感じ(ブーミー)になるという欠点が指摘されている。この現象の理論的究明がなされた報告例はまだ見出していないが、本発明者の研究では、インシュレータのばね剛性と搭載物(スピーカー)で決まる固有振動数が小さくなり過ぎるがゆえに発生する、スピーカー本体の前後振動に起因すると思われる。
(2)硬質材料インシュレータの課題
硬質材料インシュレータの場合は、良質な音響用素材の選択により、オーディオ機器が発生した高周波振動を効果的に吸収し、外部へ逃すことはできる。しかし、低周波数(たとえば、数十Hz以下)の振動を減衰させることはできない。円錐形状のスパイクの場合、及びこのスパイクを直列に多段に組み合わせた場合も同様である。特許文献1には、スパイクの円筒面とこの円筒を収納するスパイク受けの間の狭い隙間に、粘性流体であるシリコンオイルを封入する方法が開示されている。しかし、この粘性流体による振動減衰作用は周波数に比例するため、低い周波数では振動減衰効果を得るのは困難である。
スピーカーが設置される民間住宅の床面は、通常20〜100Hzを固有値とする分布振動モードを持っている。前述したように、スピーカーの振動が床面に伝達されると、床面を含む部屋全体の持つ複雑な固有振動モードを励起させる。この低周波の床面振動とスピーカー本体の振動の相互干渉がもたらす音質の劣化は、硬質材料インシュレータでは基本的に回避できない。
従来から工業用分野の防振装置に用いられてきた吸振体(たとえば、特許文献2)は、数Hzから500Hz程度の範囲の機械振動の伝達を遮断するだけで実用上十分である場合が多い。吸振体を構成する材料は、耐候性と耐衝撃性を有する塩ビ系やポリプロピレン系などの樹脂、熱可塑性エラストマなどが用いられる。工業用分野の防振装置では、高周波振動を音のチューニングに利用するという概念はなく、そのため、音響振動の構造面・材料面での伝搬特性については、なんら配慮されていない。
さて、本発明者らはオーディオ用インシュレータとして上述した2つの従来方式が抱える課題を解決するインシュレータ(図1参照)を既に提案し出願中である。すなわち、下記(1)(2)の両インシュレータの長所を「同時に併せ持つ」ことができることを特徴とするものである。
(1)フローティング方式インシュレータの長所
可聴域における低周波振動のほぼ完全な遮断作用が得られるため、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動の影響を回避でき、音の奥域感、分解能、透明感の向上などの効果が得られる。
(2)硬質材料によるインシュレータの長所
高周波域での響きの親和性を考慮した音響用素材を採用することにより、素材が持つキャラクターを利用した再生音のチューニングが図れる。
上記(1)(2)の長所を併せ持つために、図1に一例を示すインシュレータ構造を提案した。上記インシュレータ(特許出願中)は、良質な音響用素材で構成された長い筒形形状の上部スリーブ(風鈴部材)が下部スリーブ(固定部)を、太い線径を有するスプリングコイルを介在して、収納する構造になっている。すなわち、上部スリーブ内部はスプリングコイルを収納する空洞を有し、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部を大気解放端とする筒型形状、すなわち、「風鈴」に近い形状となっている。このインシュレータをスピーカー底面に配置してスピーカーを支持して試聴実験を行った結果、音の定位感、密度感、透明感が大幅に向上すると共に、深みのある音色と余韻が再生音に加味されて、スケール感(空間性)が飛躍的に向上する効果が得られた。筒型形状の上部スリーブを設けない場合でも音響特性の改善が図れるが、上部スリーブ(風鈴部材)の装着効果は、それをさらに上回るものである。既提案では、この音響効果をもたらす原理を、次ぎの仮説に基づいて説明した。オーディオ機器搭載部→インシュレータ設置面に至る振動の経路を振動伝播経路ΦZとする。太い線径を有するスプリングコイルは、オーディオ機器が発生する振動を床面側に伝播する「音響管」(Sound tube)としての役割を担う。さらに、この振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを筒型形状部材で構成すると、「風鈴効果」(Wind bell effect)ともいうべき前述した顕著な音響特性の改善が図れる。すなわち、前記振動伝播経路ΦZに風鈴の振動系ΦRを組み合わせることにより、良質な音響用素材がもたらす音響効果が一層増強されるのである。
本発明は、「風鈴効果」をもたらす既提案で記載した上記仮説をインシュレータ本体と、風鈴部材単体の加振実験により検証し、振動伝達メカニズムの詳細な解明を図ると共に、さらなる音響特性向上のための新たな知見を見出したものである。
具体的に、請求項1の発明は、音響素材を上下の部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータの部材のひとつを風鈴部材として、この風鈴部材の一方を固定端、もう一方を自由端で構成し、前記風鈴部材単体の中央部を固定して、前記風鈴部材単体にインパルス加振を与えて、前記風鈴部材近傍に配置された集音マイクから得られる音圧波形の包絡線が初期値に対して36.8%まで減衰する時間を風鈴時定数Tとしたとき、T>0.05秒となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、インシュレータ本体の振動伝達特性における共振ピーク値の分布と、風鈴部材単体の音圧特性の共振ピーク値の分布はほぼ一致するため、インシュレータ本体を用いなくても、風鈴部材単体の打音特性を測定することで、インシュレータ本体の振動伝達特性を推定できることに着目したものである。風鈴部材が満足すべき最も重要な風鈴特性の条件とは、風鈴時定数Tがある値以上を有することである。本研究により、風鈴が有する余韻は再生音に空間の拡がり感(奥域感、臨場感)をもたらすことが分かった。この効果により、ステレオ再生において、スピーカーの背景に壮大なオーケストラの空間がスピーカーから離脱して、奥深く、かつホログラフィックなイメージで展開される。多くの試聴実験の結果から、T>0.05秒となるように風鈴部材の材料と形状を選択すれば、余韻がほとんどない場合(T≒0の場合)と比べて、明らかに「空間の拡がり感」が向上する効果が得られた。
具体的に、請求項2の発明は、風鈴時定数T>0.1秒となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、T>0.1秒となるように風鈴部材を構成すれば、再生音楽のジャンルを問わず、満足のいく結果が得られる。
具体的に、請求項3の発明は、音響素材を上下の部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータの部材のひとつを風鈴部材として、この風鈴部材の一方を固定端、もう一方を自由端で構成し、この風鈴部材単体の中央部を固定した状態で、前記風鈴部材の基音周波数f1>1500Hzとなるように前記風鈴部材の材質と形状を設定したものである。
すなわち、本発明においては、1次共振周波数f1は風鈴部材の形状と材質によって決定される。多数のリスナーによるスピーカー試聴実験の結果では、風鈴部材の基音周波数が低すぎると、再生音楽のジャンルによっては、高音域で固有音が耳ざわりとなるという指摘があった。基音周波数をf1>1500Hzに設定すれば、リスナーの多くが満足できる結果が得られた。
具体的に、請求項4の発明は、前記風鈴部材の基音周波数f1>2500Hzに設定したものである。
すなわち、本発明においては、さらに高い基音周波数f1>2500Hzに設定すれば、リスナーのほぼ全員が賛同する極めてナチュラルな音響特性が得られた。
具体的に、請求項5の発明は、前記風鈴部材の基音周波数f1は風鈴部材の開口部が「楕円形状」になる共振モードとなるように設定したものである。
すなわち、本発明においては、風鈴部材を筒形形状にして、かつ基音の周波数(1次共振周波数)を風鈴部材の開口部が「楕円形状」になる共振モードとなるように、風鈴部材の形状を決めることにより、f>f1の高周波数領域で、多くの倍音による共振、すなわち、風鈴部材の開口部が「三つ葉形状」になる共振モード、風鈴部材の開口部が「十字形形状」になる共振モード等を利用できる。
具体的に、請求項6の発明は、内周面を固定端、外周面を自由端とする複数個の部材を多段に重ねて風鈴部材を構成したものである。
すなわち、本発明においては、高周波領域においてより多くの共振モードを持たせる方法を示すものである。前記部材をたとえば円盤形状にすれば、各円盤の厚み、あるいは材質を変えることにより、共振モードの形態は同一のままで、各円盤の共振周波数f1〜fnを変えることができる。真円ではなく非真円の複雑な形状にすれば、さらに多様な振動モードが得られる。薄型円盤に用いる音響素材として、銅合金、マグネシウム、天然水晶、チタン、石英、ローズウッド材、ケヤキ材、大理石、ハイカーボン鋳鉄、強化ガラスなどが適用できる。
具体的に、請求項7の発明は、音響素材を上部支持部材と下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータの部材のひとつを風鈴部材として、この風鈴部材単体の中央部を固定した状態で、前記風鈴部材単体が有する複数の共振周波数の中で、最も低周波で、最も余韻の長い基音の周波数をf1、前記音響素材のばね剛性と前記上部支持部材に搭載されるオーディオ機器の質量で決まる共振周波数をf0として、前記上部支持部材を励振させたときの前記上部支持部材の振動特性は前記共振周波数f0と前記共振周波数f1の範囲で共振点を有しないように構成したものである。
すなわち、本発明においては、「低い周波数では振動を遮断し、逆に高い周波数では振動伝達を利用する」という既提案インシュレータの基本的概念と、それを実現するための具体的手段を検証するもので、下記(1)(2)の両インシュレータの長所を「同時に併せ持つ」ことができることを特徴とするものである。
(1)フローティング方式インシュレータの長所
搭載物の質量と弾性部材のばね剛性で決まる2次系の除振特性により、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動の影響を回避する。
(2)硬質材料によるインシュレータの長所
高周波域において、多くの共振モードを有する風鈴部材の振動系ΦRは、オーディオ機器が発生する振動系ΦZに相乗されて、音響管を通じてオーディオ機器から設置面側に伝搬される。風鈴部材の有する高周波における共振特性、余韻、うなりなどの風鈴特性により、音響特性の向上と再生音のチューニングが図れる。
但し、硬質材料インシュレータとして、従来から商品化されているものは、音響インピーダンスの高い良質な音響用材料を縦方向(縦振動の主伝達経路Φzの方向)に配置、あるいは複数の音響インピーダンスの異なる音響素材を縦方向に重畳して配置したもので、本発明のように振動伝播経路ΦZから分岐して並列配置された振動系を有するものではない。
具体的に、請求項8の発明は、前記音響素材はフローティング方式インシュレータに用いられる機械ばね、あるいは空気、あるいは磁性体で構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記音響素材にフローティング方式に用いられる弾性支持部材を用いることで、弾性支持部材の軸方向剛性KZと搭載物の質量Mで決まる共振周波数f0を十分に低く設定できる。すなわち、質量Mとばね剛性KZで決まる2次振動系の周波数特性により、共振周波数f0以上で振動遮断作用が得られる。また、オーディオ機器自身を加振源とする振動によって、弾性支持された風鈴部材の固有振動が励起され易くなり、高周波域での風鈴効果(Wind bell effect)による音響特性の改善がより効果的に図れる。
具体的に、請求項9の発明は、前記共振周波数f0<20Hzに設定したものである。
すなわち、本発明においては、人の可聴域下限値を20Hzとしたとき、20Hzよりも低い周波数から振動遮断作用が得られるように、インシュレータを構成したものである。
具体的に、請求項10の発明は、前記上部支持部材に装着された前記音響素材はX軸とY軸とZ軸の3軸方向に加わる変動荷重によって、3軸方向に弾性変形可能となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、オーディオ機器(たとえばスピーカー)が発生する振動は、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向の振動成分Ψx、ΨY、Ψzを有することに着目したものである。したがって、前記音響素材がX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に弾性変形可能ならば、オーディオ機器が発生した振動Ψ(=Ψx・i+ΨY・j+Ψz・k)は風鈴部材を3軸方向に加振する。その結果、風鈴部材の有する高周波領域における多くの共振モードが励起され易くなり、風鈴特性による音響特性の向上効果が一層顕著に得られる。
具体的に、請求項11の発明は、前記音響素材のX軸方向剛性KX、及び、Y軸方向剛性KYは、Z軸方向剛性KZと同オーダーの値となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、たとえばスピーカーを対象としたとき、前記音響素材のX軸方向、あるいはY軸方向の剛性が弱すぎると、スピーカーのボイスコイルの反力を受けてスピーカー本体が振動し易くなる。その結果、低域の力感・定位感が低下し、低音が引き締まらず空間に浮遊した不自然な感じ(ブーミー)になるという点に注目したものである。
具体的に、請求項12の発明は、スパイク円錐部とスパイク受け部で構成されるスパイク方式インシュレータにおいて、オーディオ機器の荷重を支持する荷重支持部からスパイク円錐部に至る振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを有し、かつこの振動伝播経路ΦRは前記スパイク円錐部、もしくは、このスパイク円錐部の上部を収納する概略筒型形状部材で構成したものである。
すなわち、本発明においては、スパイク方式インシュレータに風鈴効果を持たせたものである。スパイク側スリ−ブ内部はスパイク円柱部とスパイク円錐部を収納する空洞を有し、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部を大気解放端とする筒型形状、すなわち、「風鈴」に近い形状で構成した。この構成により、従来スパイク方式に風鈴部材を装着するだけのシンプルな構造で、風鈴効果を得ることができる。
具体的に、請求項13の発明は、前記スパイク受け部はX軸とY軸とZ軸の3軸方向に加わる変動荷重によって、3軸方向に弾性変形可能に構成したものである。
すなわち、本発明においては、オーディオ機器(たとえばスピーカー)は、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向から本インシュレータを加振するため、スパイク受け部を3軸方向に弾性変形可能に支持することにより、風鈴部材は高周波域でより多くの共振モードを励起し易くなる。
具体的に、請求項14の発明は、音響素材を上下の部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータの部材のひとつを風鈴部材として、この風鈴部材の一方を固定端、もう一方を自由端で構成し、前記風鈴部材単体の中央部を固定して、前記風鈴部材単体にインパルス加振を与えたとき、前記風鈴部材近傍に配置された集音マイクから得られる音圧波形の包絡線は、局所的に起伏する波形であるうなりが相乗される構成としたものである。
すなわち、本発明においては、スピーカー試聴実験の結果から、風鈴部材の有する適度な大きさのうなり(ゆらぎ)の存在は、再生音に潤い感、豊饒感を与えることに着目したものである。
具体的に、請求項15の発明は、音響素材を上部支持部材と下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータの部材のひとつを風鈴部材として、前記風鈴部材を加振させたときの振動が減衰するまでの余韻の長さ、及び、減衰曲線に含まれるうなり、及び、前記風鈴部材の有する高周波領域における共振モードなどの風鈴特性を基に、音楽ジャンル、又は、オーディオ機器の特性、又は、リスナーの好みに合せたインシュレータの特性を設定したものである。
すなわち、本発明においては、下記(1)〜(4)の設計は、風鈴部材単体の風鈴特性として得られる点に注目したものである。
(1)風鈴の余韻・・・空間の拡がり感(奥域感、臨場感)の向上
(2)風鈴の有する高周波領域における多数の共振モード・・・音像の定位感(フォーカス感)、分解能の向上
(3)風鈴の基音を高い共振周波数に設定する・・・ナチョラルでクセがなく、耳ざわりない音
(4)風鈴のうなり(ゆらぎ)・・・居心地の良さ、潤い感、豊饒感の向上
開発者の感性に頼らざるをえず、試行錯誤的に開発されてきた従来オーディオ用インシュレータと異なり、本発明インシュレータにおいては、上記(1)〜(4)の設計は理論的に遂行可能である。
具体的に、請求項16の発明は、風鈴部材の余韻が長い場合をクラシック音楽用、風鈴部材の余韻が短い場合をジャズ音楽用に分けて、前記インシュレータの特性を設定したものである。
すなわち、本発明においては、オーディオ機器が再生する音楽ジャンルの違いによって、風鈴の余韻の長さを示す風鈴時定数Tの設定に、適正値があることに注目したものである。通常、広い演奏会場(コンサートホール)で演奏されるクラッシックの場合は、風鈴時定数Tは大きめに設定する方が好ましい。一方、比較的小さな会場で演奏される場合の多いジャズの場合は、風鈴時定数Tはやや小さめに設定する方が好ましい。総じて言えば、クラッシックはライブで、ジャズはデッドな響きが好まれるのである。
具体的に、請求項17の発明は、インシュレータのオーディオ機器搭載側に設置されたセンサAと、インシュレータの設置面側に配置されたセンサBと、前記センサA側、あるいは、前記センサB側のいずれかに設置された振動スピーカーと、センサAから検出された振動レベルをXA、センサBから検出された振動レベルをXBとして、前記2つの検出振動レベルXB及び、XAからインシュレータの振動遮断特性を求めたものである。
すなわち、本発明においては、加振源である振動スピーカーをセンサA側に設置した場合は、前記XAに対する前記XBの伝達関数G(s)(=XB/XA)により、インシュレータに加えられた振動が床面に伝搬されるのを抑制する振動遮断効果を求めることができる。逆に、振動スピーカーをセンサB側に設置した場合は、前記XBに対する前記XAの伝達関数G(s)(=XA/XB)により、床面の振動がオーディオ機器に伝搬されるのを抑制する振動遮断効果を求めることができる。加振源に振動スピーカーを用いることにより、オーディオ用インシュレータが評価すべき適正な周波数測定範囲を設定できる。また、ピエゾアクチュエータのような予圧構造を設ける必要はなく、加振対象物(たとえば、インシュレータの上部スルーブ)の上に搭載するだけでよい。
具体的に、請求項18の発明は、音響素材を上部支持部材と下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータの部材のひとつを風鈴部材として、この風鈴部材単体の振動減衰特性、及び、又は周波数応答特性からインシュレータ本体の振動伝達特性を推定したものである。
すなわち、本発明においては、風鈴部材単体が有する振動特性が、インシュレータ本体の振動伝達特性に支配的な影響を与えることに注目したものである。この結果から、インシュレータ本体を用いなくても、風鈴部材単体の振動特性を、実験、あるいは振動解析などで求めることにより、インシュレータ本体の振動伝達特性を設定できる。
具体的に、請求項19の発明は、概略中央部が設置面に固定された風鈴部材単体と、この風鈴部材近傍に配置された集音マイクと、前記風鈴部材単体をインパルス加振したとき、前記集音マイクから得られる音圧信号を基に、風鈴部材単体の振動減衰特性、周波数応答特性を求めたものである。
すなわち、本発明においては、インシュレータ本体を用いなくても、風鈴部材単体の打音特性を求めることで、インシュレータ本体の振動伝達特性を推定できる。
具体的に、請求項20の発明は、音響素材を上部支持部材と下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータの部材のひとつを風鈴部材として、この風鈴部材単体の中央部を固定した状態で、前記風鈴部材単体が有する複数の共振周波数の中で、最も低周波で、最も余韻の長い基音の周波数をf1としたとき、聴覚上の耳障り感、ナチョナル感から前記f1の値を設定したものである。
すなわち、本発明においては、多数のリスナーによるスピーカー試聴実験の結果から、風鈴の基音周波数f1を適正値に設定すれば、リスナーのほぼ全員が賛同する極めてナチュラルな音響特性が得られる。
具体的に、請求項21の発明は、錫が含まれた銅合金で風鈴部材を構成し、錫の含有率によりインシュレータの音響特性を設定したものである。
すなわち、本発明においては、銅合金を風鈴部材として用いた場合、錫Snの含有率が高い程、長い風鈴時定数Tと、大きな振幅のうなりが得られる点に注目したものである。風鈴部材のインパルス応答特性に観測される適度なうなり(ゆらぎ)の存在は、再生音に潤い感、豊饒感を与える。したがって、風鈴部材に銅合金を用いて、錫Snの含有率を設定することにより、空間の拡がり感、再生音に加味される潤い感、豊饒感の調節ができる。
具体的に、請求項22の発明は、請求項7で構成されるオーディオ用インシュレータの上部支持部材を加振させて得られる風鈴特性を基に、音楽ジャンル、又は、オーディオ機器の特性、又は、リスナーの好みに合せたインシュレータの特性を設定したものである。
すなわち、本発明においては、上部支持部材を加振させて得られる上部支持部材の振動特性、あるいは、上部支持部材と床面間の伝達関数を測定することにより、風鈴部材がインシュレータ本体に与える風鈴特性を求めることができる。
難加工性材料である石英、チタン、天然水晶、大理石などを用いて、あるいはこれらの素材を積層して多様な高周波特性を持たせていた従来の硬質材料インシュレータと異なり、風鈴効果を用いた本発明のインシュレータは、単一素材を用いて、風鈴形状を選択することにより、高周波域における音のチューニングが図れる。本発明のインシュレータの適用により、奥域感、分解能、透明感、低域力感などの音響特性の大幅な向上が図れると共に、音楽のジャンル、リスナーの好みなどを考慮した音響特性の選択ができる。
また、従来、開発者の感性に頼らざるを得ず、試行錯誤的に開発されてきた従来インシュレータと異なり、本発明インシュレータ評価方法により、インシュレータの音響特性設計は理論的に遂行可能である。その効果は顕著である。
本発明の実施形態1を示すオーディオ用インシュレータで、図1aは上面断面図(図1bのA-A断面図)、図1bは正面断面図 本発明インシュレータで2組のスピーカーを支持した場合の試聴実験におけるオーディオ・システムのモデル図 風鈴効果の仮説を検証するためにおこなった、インシュレータ本体を用いた実験方法を示すモデル図 FFTで処理された周波数に対する振動加速度特性を示すもので、図4aは加速度センサ(A)により検出された振動レベルXA、図4bは加速度センサ(B)により検出された振動レベルXBを示すグラフ 図5aは上記XAに対する上記XBの伝達関数G(s)(=XB/XA)を示すグラフ、図5bは系の入力XAと出力XBの因果関係の度合を示すコヒーレンス関数を示すグラフ 振動遮断特性の理論解析によるグラフ 上部スリーブ単体のインパルス応答を求める実験方法のモデル図 図8aは図7の実験から得られた音圧の立体波形図を示すもので、図8bはインパルス応答特性を示すグラフ FFTで処理された周波数に対する音圧レベルの測定結果を示すグラフ 図10a〜図10cは上部スリーブを対象にFEM固有値解析の結果を示す図 図11a〜図11cは上部スリーブを対象にFEM固有値解析の結果を示す図 図12a〜図12cは上部スリーブを対象にFEM固有値解析の結果を示す図 上部スリーブを対象にFEM固有値解析の結果を示す図 供試部品Aのインパルス応答特性を示すグラフ 図15(a)〜図15(e)は、中心周波数を各種設定し、1/3オクターブバンドパスフィルタによる供試部品Aのインパルス応答のグラフ 供試部品Bのインパルス応答特性を示すグラフ 供試部品Cのインパルス応答特性を示すグラフ 供試部品Dのインパルス応答特性を示すグラフ 低周波数域におけるインシュレータの振動遮断効果を求める実験方法を示すモデル図 図20aは本発明インシュレータに設置された加速度センサ(A)により検出された振動レベル、図20bは加速度センサ(B)により検出された振動レベルを示すグラフ 図21aは従来スパイク方式・インシュレータに設置された加速度センサ(A)により、図21bは加速度センサ(B)により検出された振動レベルを示すグラフ FFTで処理された周波数に対する本発明インシュレータの振動遮断特性を、従来スパイク方式・インシュレータと対比のもとで求めたグラフ 本発明の実施形態2に係るオーディオ用インシュレータであり、図23aは上面図(図23bのA-A矢視図)、図23bは正面断面図 本発明の実施形態3に係るオーディオ用インシュレータであり、図24aは上面図、図24bは正面断面図である 図25a〜図25cは薄型円盤を対象にFEM固有値解析結果を示す図 図26a〜図26cは薄型円盤を対象にFEM固有値解析結果を示す図 薄型円盤を対象にFEM固有値解析の結果を示す図 本発明の実施形態4に係るオーディオ用インシュレータであり、図28aは上面図(図28bのA-A矢視図)、図28bは正面断面図 本発明の実施形態5に係るオーディオ用インシュレータであり、図29aは、従来スパイク方式インシュレータの正面断面図、図29bは本発明によるスパイク方式インシュレータをオーディオ機器に装着した場合の正面断面図 中間部で風鈴部材単体をスパイク支持できない構造に対して、風鈴特性を求めるためのインパルス加振実験の方法を示す図 本発明の実施形態6に係るオーディオ用インシュレータであり、図31aは上面図、図31bは正面断面図(図31aのA-A矢視図) 風鈴部材の中央部を針状のスパイク先端で支持できない構造に対して、風鈴特性を求めるインパルス加振実験の方法を示す図 本発明の実施形態7に係るオーディオ用インシュレータの風鈴部材の形状を示す図であり、図33aは上面図、図33bは正面断面図 図34a〜図34dは、図33で示した形状の前記上部スリーブのFE固有値解析の結果を示す図 オーディオ用インシュレータの従来例で2段スパイク構造を示す図
以下、本発明を次のステップで説明する。
[1]風鈴効果をもたらす原理(仮説)の検証実験
[2]さらなる音響特性向上のための方策
[3]本発明によるオーディオ用インシュレータのスピーカー試聴実験
まず上記[1]について説明する。
[1-1]検証実験に用いる供試インシュレータ
図1は、本発明の実施形態1に係るオーディオ用インシュレータであり、図1aは上面断面図(図1bのA-A断面図)、図1bは正面断面図である。基本構造は既提案(特許出願中)のオーディオ用インシュレータと同一であるが、風鈴効果の仮説を検証する実験に用いたものである。1は風鈴部材である上部スリーブ(上部支持部材)、2は下部スリーブ(下部支持部材)、3は下部スリーブ2の中央部に突設して形成された筒部、4は筒部3の外周部に装着されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。上部スリーブ1と下部スリーブ2は音響用材料として良好な特性を有する真鍮(表4の供試部品A)を用いた。サージング防止部材4は、円筒状の筒部4aと、半径方向へ延びて突設された複数の粘弾性片4bにより構成される。上部スリーブ1は下部スリーブ2上部に配置され、両スリーブ1、2の内部に音響素材であるスプリングコイル5が設けられている。ここで、本明細書における音響素材とは、「上下の部材で挟持されて、オーディオ機器の荷重を支持する部材」と広義に解釈する。フローティグ方式インシュレータの場合は、機械ばねであるスプリングコイル、空気ばね、磁石などを指し、硬質材料シンシュレータの場合は、木材、樹脂、金属、石英などを指すものとする。あるいは、スパイク方式インシュレータの場合は、円錐部と円柱部で構成される部分を示す。6、7はスプリングコイル5を装着した状態で、両スリーブ1,2の軸芯が一致した状態を保つための両スリーブに形成された位置決め部である。粘弾性片4bは、スプリングコイル5の内周面に、変形して常に接触した状態を保っている。サージング防止部材4の高さは、スプリングコイル5がスピーカーなどの搭載物によって圧縮された時の最小寸法よりも小さく形成されている。8は上部スリーブ1の上端面でオーディオ機器(図示せず)を搭載する荷重支持部、9はインシュレータ設置面(床面)である。すなわち、上部スリーブ内部はスプリング構造部を収納する空洞を有し、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部を大気解放端(自由端)とする筒型形状、すなわち、「風鈴」に近い形状となっている。また、風鈴が糸で吊り下げられて妙なる音色を奏でることができるように、上部スリーブ1の上端部は完全固定ではなく、X軸、Y軸、Z軸方向はスプリングコイル5により弾性支持されている。荷重支持部8に搭載されるオーディオ機器(たとえばスピーカー)は、図1a、図1bに示すように、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向から本インシュレータを加振する。すなわち、各軸はΨx、ΨY、Ψzの振動成分を有し、ベクトルで表現すれば、Ψ=Ψx・i+ΨY・j+Ψz・kである。そのため、スプリングコイル5で支持された上部スリーブ1には、前記振動Ψによって、高周波数における後述する様々な振動モードが励起される。本明細書では、インシュレータを構成する前記上部スリーブに相当する部品を「風鈴部材」と呼ぶことにする。
図2は、本インシュレータを適用したオーディオ・システムの矢視図である。11、12は左右に配置された2チャンネルのステレオ用スピーカーであり、各々のスピーカー本体部はボード13、14の上に搭載された4個のインシュレータによって支持されている。各インシュレータの配置方法をわかり易くするために、右側スピーカー12を浮上した状態で図示している。15a〜15d、及び、16a〜16dは左右のスピーカー11、12の底面4隅に配置されたインシュレータである。
[1-2]風鈴効果の仮説
さて、風鈴効果について、本発明者が提唱した仮説は次ぎのようである。
(1)オーディオ機器を振動発生源として、この振動がオーディオ機器から床面まで伝達される振動の主伝搬経路をΦZとする。すなわち、振動伝播経路ΦZは、オーディオ機器が搭載される荷重支持部8→上部スリーブ1→スプリングコイル5→インシュレータ設置面9に至る振動の経路である。太い線径を有するスプリングコイル5は、オーディオ機器が発生する振動を床面に伝播する「音響管」(Sound tube)としての役割を担う。
(2)主振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRは、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部10を大気解放端(自由端)とする筒型形状部材(風鈴部材)で構成する。音の高さ、強弱、余韻の長さ、うなり、倍音(基音の整数倍周波数の音)などの多くの要因で決まる音色を有する風鈴の振動系ΦRは、前記振動伝播経路ΦZに相乗されて、音響管を通じてオーディオ機器から床面側に伝搬される。従来、多層構造インシュレータ(たとえば、特許文献3)として商品化されているものは、音響インピーダンスの異なる各種硬質材料を縦方向(縦振動の主伝達経路Φzの方向)に重ね合わせたもので、本発明のように振動伝播経路ΦZから分岐して並列配置された振動系を有するものではない。
(3)風鈴の有する高い基本固有振動数とその高調波成分(倍音)は、音像の定位感、立体感を向上させる。ちなみに、ステレオ再生における定位感、立体感は高音域の特性に依存する。また音が減衰する時の余韻は、再生音に音響空間の広がりと深み、芳醇な味わいを与える。
[1-3]風鈴効果の仮説を検証する実験
[1-3-1]高周波域における振動遮断特性の測定
風鈴効果の上記仮説(1)(2)を検証するためにおこなった実験方法を図3に示す。図3において、51は供試インシュレータ、52は前記供試インシュレータの上部に搭載された重り、53は床面、54は供試インシュレータの上部スリーブ側面に装着された加速度センサ(A)、55は床面53に設置された加速度センサ(B)である。供試インシュレータ51は、風鈴部材である上部スリーブ56(上部支持部材)、下部スリーブ57(下部支持部材)、サージング防止部材58、スプリングコイル59(音響素材)から構成される。前記上部スリーブの外径φ74mm、前記上部スリーブの開口部側内径φ60mm、密閉部側内径φ54mm、前記上部スリーブ高さ63mm、材料は真鍮(快削黄銅鋼:表4における供試部品A)である。本実施例で用いたスプリングコイル59の材料は、ばね材料として用いられる硬鋼線(SWC)であり、下記の仕様で用いた。
上部スリーブ56に搭載された重り52の負荷質量M=4.5Kgである。またインシュレータ側面から20mm離れた床面に加速度センサ(B)55を設置した。インシュレータに与える加振源として、m=15gの重り60(釣り用ナス型重り4号)をL=280mmの長さの糸で吊るして、Φ=45degの角度から降下させて、インパルス応答を求めるために用いるインパクト・ハンマーの代用とした。また、前記重りmが最下点に降下したときに、前記上部スリーブの開口端近傍に衝突するように配置した。
図4はFFTで処理された周波数に対する振動加速度特性を示すもので、図4aは前記上部スリーブに装着された加速度センサ(A)54により検出された振動レベルXAである。すなわち、図4aは、前記上部スリーブに搭載されたオーディオ機器(たとえば、スピーカー)によって、前記上部スリーブを励振させたときの振動特性を示すものである。図4bは床面53に設置した加速度センサ(B)55により検出された振動レベルXBである。図5aは上記XAに対する上記XBの伝達関数G(s)(=XB/XA)であり、振動遮断特性を示す。見方を変えれば、前記上部スリーブに加えられた振動が、前記スプリングコイルを経由して、前記下部スリーブ(床面53)に伝搬される「振動の伝達し易さ」を示すものである。図5bは系の入力XAと出力XBの因果関係の度合を示すコヒーレンス関数γであり、γは0から1の間の値をとる。γ=1の場合は、その周波数において、系の出力がすべて測定入力に起因していることを示しており、γ=0の場合、その周波数fについては、系の出力は測定入力に全く無関係であることを示す。すなわち、コヒーレンス関数γが1に近い程、測定結果の信頼性は高い。コヒーレンス関数γ≒1で、かつ、振動がピーク値を有する周波数(概略値)を抽出した結果を表2に示す。
さて、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部61を大気解放端とする筒型形状部材(風鈴部材)である前記上部スリーブは、後述するFEM解析結果で示すように、様々な振動モードを有する。代表的な振動モードとして、FEM解析結果との対比から、前記上部スリーブの開口部が「楕円形状」で変形するモードはf=3500Hz(図10a)、「三つ葉形状」に変形するモードはf=8500Hz(図10b)、「十字形状」に変形するモードはf=15000Hz(図11c)と推定される。
従来、工業用分野の防振装置などに用いられる吸振装置は、搭載物の質量とばね剛性で決まる2次振動系の周波数特性により、共振周波数f0以上での振動遮断作用が得られる効果を利用したものである。図6は、図3の実験と同一条件(負荷質量M=4.5Kg、スプリングコイルのばね剛性KZ=8.13N/mm)における振動遮断特性を下式により理論的に求めたものである。
理論的に求められる2次振動系の除振特性(図6)と、前述した実験結果(図5a)を比較すると、除振特性は高周波数域において大きく異なる。理論(図6)では、共振点(f0=6.77Hz)より高い周波数域において、周波数に対する振動遮断特性の勾配は-40dB/decであり、振動遮断レベルは大きく降下していく。しかし、実験結果(図5a)では、予想に反して、広い高周波数帯域で複数個の高いピーク値を有する振動分布となる。f>2000Hzの高周波数領域においては、-50dB以下の暗振動レベルの振動遮断特性を全域で維持していると思われたインシュレータは、f=3500Hz、f=7700Hzで-30dB、f=13800Hzで-15dBのピーク値を有する振動分布となることが分かった。但し、上記ピーク値以外は-40dB以下であるため、高周波数域においても振動遮断性能は維持されているのである。工業用防振では実用上支障のない-30dB(1/31.6倍)の数値は、オーディオ再生における人間の優れた聴覚には無視できない値である。ちなみに、楽器が奏でる音は高調波の倍音成分を有し、ステレオ再生における音場感・定位感は高音域の特性に依存する。すなわち、各楽器の再生音の倍音成分が強調されることで、音像の定位感、奥域感が向上される。
[1-3-2]高周波振動遮断特性の測定結果要約
本実験により確認された実験(図5a)と理論(図6)の差異の存在が、風鈴効果の上記仮説[1-2]を検証するものである。すなわち、
(1)各共振点(表2)における図5bのコヒーレンスγの高さから、共振点における高周波振動は、前記上部スリーブから前記スプリングコイルを介在して、明らかに設置面に伝搬されている。すなわち、前記スプリングコイルは、オーディオ機器が発生する高周波振動を設置面側に伝播する「音響管」(Sound tube)としての役割を担う。
(2)高周波域において、多くの共振モード(表2)を有する前記上部スリーブ(風鈴部材)の振動系ΦRは、オーディオ機器が発生する振動系ΦZに相乗されて、音響管を通じてオーディオ機器から設置面側に伝搬される。[1-4]節の実験で後述するが、高周波域における多くの共振モードは、上部スリーブ単体の振動特性によって決まる。また、図4aに示すように、上部スリーブ56に搭載されたオーディオ機器は、各共振点において大きく励振される。したがって、風鈴部材の風鈴特性が、高周波域における再生音に与える影響は、図4aの振動特性によって決まる。
(3)但し、共振点以外の高周波数域では、振動伝達レベルは-40dB以下であり、十分な振動遮断効果が得られる。[1-6]節の実験で後述するが、加振源に50Hzから1000Hzまでの低周波のサインスイープ信号を与えた場合、上記低周波数域では十分な振動遮断効果が得られる。
(4)すなわち、本発明インシュレータは下記(i)(ii)の従来方式インシュレータの長所を併せもつことができる。
(i)フローティング方式インシュレータの長所
(ii)硬質材料によるインシュレータの長所
低周波域では、十分な振動遮断効果が得られる本発明のインシュレータの高周波域における1次の共振周波数は十分に高く、f=3500Hzである。高周波域では高周波振動を励起する要素は設置面には通常存在しないため、オーディオ機器と床面間との間の相互干渉による振動が再生音の品位を低下させることはない。本発明インシュレータでは、高周波域の上記振動伝達特性(図5a)、及び、上部スリーブ56の上記振動特性(図4a)は、再生音の分解能、定位感、透明感の向上に寄与すると共に、良質な音響用材料の選択により、リスナーの好みに合せた再生音のチューニングに利用できる。
スプリングコイルで構成されるインシュレータを対象としたとき、実験と理論の前述した差異について究明した研究例は、他に類をみない。この理由として、工業用分野の防振装置に用いられる吸振装置は、数Hzから500Hz程度の範囲の機械振動伝達を遮断するだけで実用上十分である場合が多く、高周波振動を音のチューニング、音響特性の改善に利用するという概念はなかった。それゆえに、高周波音響振動の伝搬特性を求めるアプローチはなされなかったと思われる。ちなみに、前記上部スリーブに装着された加速度センサ(A)の測定結果(図4a)で、f=12000Hz近傍(図4aのAA)でピーク値を有するにもかかわらず、振動伝達特性(図5a)の同周波数近傍でピーク値が表れないのは、インパルス加振による局所振動によるものと思われる。
[1-4]上部スリーブ単体のインパルス加振実験
[1-4-1]実験方法
前述した実験(図3)は、複数個の部品で構成されるインシュレータ全体を用いたインパルス加振実験により、インシュレータの振動伝達特性を求めたものであった。実験に用いたインシュレータは、前述したように、上部スリーブ(上部支持部材)56、下部スリーブ(下部支持部材)57、サージング防止部材58、スプリングコイル(音響素材)59から構成される。これらの部品の中で、風鈴を構成する上部スリーブ56単体が有する振動特性が、インシュレータ本体の振動伝達特性に与える影響の度合いを評価する実験を行った。図7にその実験方法を示す。供試部品である上部スリーブ71は、前述した実験(図3)に用いたインシュレータ構成部品と同一仕様(真鋳製:供試部品A)のものである。前記上部スリーブの上面中央部に形成されたボルト締結用の穴72を利用して、床面73に設置された木製スパイク74により前記上部スリーブを支持した。また、前記上部スリーブ側面から300mm離れた床面に集音マイク75を設置した。前記上部スリーブに与える加振源として、前述した実験(図3)同様に、m=15gの重り76(釣り用ナス型重り4号)をL=280mmの長さの糸で吊るして、Φ=45degの角度から降下させて、インパルス応答を求めるために用いるインパクト・ハンマーの代用とした。また、前記重りmが最下点に降下したときに、前記上部スリーブの開口端近傍に衝突するように配置した点も、前述した実験(図3)と同様である。
図8aは、図7の実験から得られた音圧の立体波形図を示すもので、縦軸が音圧の強さ(dB)、横軸が周波数、斜軸が時間(秒)である。図8bは、後述するインパルス応答特性の一例である。
[1-4-2]周波数に対する音圧レベル
図9はFFTで処理された周波数に対する音圧レベルの測定結果であり、表3にピーク値を有する各周波数を示す。表2と表3の対比から、インシュレータ本体の振動伝達特性における共振ピーク値の分布と、上部スリーブ56単体の音圧特性の共振ピーク値の分布はほぼ一致する。すなわち、上部スリーブ56単体(風鈴部材)が有する振動特性が、インシュレータ本体の振動伝達特性に支配的な影響を与えることが分かる。この結果から、インシュレータ本体を用いなくても、上部スリーブ51単体の打音特性を測定することで、インシュレータ本体の振動伝達特性を推定できることがわかる。
[1-4-3]固有値解析結果と実験の対比
図10〜図13は、上記実験で用いた前記上部スリーブ(供試部品A)を対象に、FEM固有値解析を行ったものである。解析条件として、真鋳(表4の供試部品A)の縦弾性係数E=98GPa(9990Kgf/mm)、密度ρ=8.5g/cm3、拘束条件として前記上部スリーブ上端面(図1の8)の中央部近傍を完全固定した。以下、固有値解析結果と上記実験結果を対比してみる。図10aは、風鈴の開口部が「楕円形状」になる1次の共振モード(解析ではf=3650Hz)を示すもので、実験におけるf=3500Hzの共振に相当する。図10bは、風鈴の開口部が「三つ葉形状」になる共振モード(解析ではf=8690Hz)を示すもので、実験におけるf=8500Hzの共振に相当する。図11aの共振モード(解析ではf=12900Hz)が実験(図9)で計測されない理由として、軸方向の変形を伴う図11aの共振モードは、半径方向の上記インパルス加振では励起されないからだと思われる。図11b、及び、風鈴開口部が「十字形形状」の図11cの共振モード(解析ではf=14300Hz、及び、f=15100Hz)は、実験におけるf=14300〜15000Hzの範囲の共振に相当する。
図12a〜図12cの共振モードは、実験において共振ピークが密集しているf=16000〜17000Hzの範囲の共振に相当すると思われる。
[1-4-4]インパルス応答特性
図14は、図7に示した実験によりインパルス応答特性(風鈴の打音の余韻)を求めたものである。ここで、インパルス応答による波形のエンベロープ(包絡線)を次のような1次遅れ系の応答に近似する。
このとき、Y(t)=0.368Y0なる時間を風鈴の時定数Tとして定義する。Y0は、t=0における初期値である。図14から時定数T=0.25秒である。図15(a)〜図15(e)は、中心周波数を各種設定して、1/3オクターブ・バンドパスフィルタを用いた場合のインパルス応答特性を求めたもので、たとえば、中心周波数をfmとしたとき、JIS規格から上記バンドパスフィルタの帯域幅は、下限値f1=0.8909×fm、上限値f2=1.1225×fmとなる。図15aの中心周波数fm=3.15kHzであり、風鈴の開口部が「楕円形状」になる1次の共振モードf=3500Hzが含まれている。
他のグラフの振幅と減衰時間(余韻)の大きさの比較から、この1次の共振モードf=3500Hzが風鈴の音響特性に最も大きな影響を与えていることが分かる。
図15cの中心周波数fm=8kHzのグラフは、風鈴の開口部が「三つ葉形状」になる共振モードf=8500Hzが含まれている。図15eの中心周波数fm=16kHzのグラフは、風鈴の開口部が「十字形形状」になる共振モード(f=14300〜15000Hzの範囲)が含まれる。中心周波数fm=8kHz、fm=16kHzのグラフの振幅、減衰時間共に無視できない程大きい。風鈴部材(前記上部スリーブ)の高周波域におけるこの共振特性が、再生音の定位感、密度感、透明感等の向上に寄与すると共に、減衰時間(余韻)の長さがスケール感(空間性)を向上させる効果になると思われる。また、図14のバンドパスフィルタを通さないAll Pass波形、バンドパスフィルタを通した図15a、図15b、図15cのいずれの減衰曲線のエンベロープにも、低い周期のうなりが相乗されている。
[1-4-5]上部スリーブの材質を変えた場合のインパルス応答特性
以下、前記上部スリーブの材質を変えた場合(供試部品B〜D)のインパルス応答特性を、図16〜図18に示す。また、前述した実験結果(供試部品A)も含めて、各供試部品の風鈴時定数を求めた結果を表4に示す。
供試部品Bの場合、風鈴時定数Tは供試部品Aと比べて小さく、また減衰曲線のエンベロープにうなりは観測されない。特筆すべきは、供試部品D(りん青銅)のインパルス応答特性であり、風鈴時定数が供試部品のなかで最も長く、T=0.4秒で、また大きな振幅のうなりを有する。供試部品Aの(快削黄銅鋼)の錫Snの含有率が1.2%弱であるのに対して、りん青銅は錫Snの含有率が10.5%ある銅合金である。小田原風鈴として知られる砂張材(さはり材)は、錫Snの含有率が20%以上含まれる銅合金である。ちなみに、風鈴は日本独特の文化ではなく、その歴史は古く世界中に存在する。風鈴が奏でる透明感のある深い音色と余韻のある音は遠くまでよく響き、風が吹くたび、細く凛と鳴り響く。銅合金を風鈴として用いた場合、錫Snの含有率が高い程、長い風鈴時定数と、大きな振幅のうなりが得られる。後述するように、風鈴部材のインパルス応答特性に観測される適度なうなり(ゆらぎ)の存在は、再生音に潤い感、豊饒感を与えることが分かった。したがって、風鈴部材に銅合金を用いて、錫Snの含有率を設定することにより、空間の拡がり感、再生音に加味される潤い感、豊饒感の調節が可能である。
[1-5]風鈴部材が満足すべき風鈴特性の条件
ここで、風鈴部材(実施形態1の場合は上部スリーブ1)が有する次の音響特性をオーディオ用の「風鈴特性」として定義する。具体的な数値限定の値は、図7における風鈴部材(前記上部スリーブ)単体のインパルス加振実験の条件により求められるものとする。
(1)基音の周波数f1以上で、高いピーク値を有する多くの共振点を有する
風鈴は複数の共振周波数の音を有する。これら共振周波数の音の中で、最も低周波数で、最も余韻の長い音が風鈴の基音である。k=1を基音の周波数f1としたとき、基音の周波数f1<f<20000Hzの範囲で、音圧、あるいは振動レベルが有効なピーク値を有するk=3以上の倍音成分(共振周波数)を有することが好ましい。高周波領域における多くの共振モード(倍音)の存在は、ステレオ再生における音像の定位感(フォーカス感)、分解能を大きく向上させる。また、より多くの共振モードを有する程、クセのない自然な音が得られる。石英、チタンなど高価で難加工性の複数部材を積層することで、多様な周波数特性を得るように構成された従来硬質インシュレータと異なり、本発明インシュレータでは風鈴部材の形状を変えることにより、共振周波数の数と分布は自在に設定できる。周波数15000〜20000Hzは人の可聴域を超える場合が多いが、楽器の倍音成分が可聴域以上にある場合でも、再生音のクオリティーに少なからぬ影響を与えることが知られている。したがって、15000〜20000Hzの範囲に存在する共振ピークは、ステレオ再生における音像の定位感、分解能の向上に有効と考えてよい。上記有効な共振ピークとして、インシュレータ本体の振動伝達特性を求めた図3の実験を基本モデルとして、コヒーレンスγ≒1でかつ顕著なピーク値を有するものを選べばよい。高周波領域で風鈴部材に多くの数の共振ピークを持たせるためには、風鈴部材をより複雑な形状で形成すればよい。既提案(特許出願中)で開示しているように、筒型スリ−ブの形状を軸非対称にする、たとえば、筒型形状の外周部包絡線は真円でなく多角形にする、円筒形状ではなく円錐中空形状にする、などの方策を施せばよい。あるいは、実施形態7で後述するように、円筒部の内外周面は曲率半径の異なる円弧を組み合わせた形状にする、または、実施形態4(図28)で後述するように、風鈴部材に曲面部を形成する方法も効果的である。
(2)風鈴時定数Tが、再生音楽のジャンルに合せて適正値に設定されている
ここで、風鈴部材が満足すべき重要な風鈴特性の条件とは、風鈴時定数Tが適正値を有することである。試聴実験の結果、風鈴(前記上部スリーブ)が有する余韻は再生音に空間の拡がり感(奥域感、臨場感)をもたらすことが分かった。これは本研究が見出した最も重要な発見である。従来の硬質材料式、フローティング式を含むいかなるインシュレータも、インシュレータを構成する部品を風鈴と見なして、その風鈴の余韻を「空間の拡がり感」の向上に利用するという発想はなかった。この効果により、ステレオ再生において、スピーカーの背景に壮大なオーケストラの空間がスピーカーから離脱して、奥深く、かつホログラフィックなイメージで展開される。多くの試聴実験の結果から、T>0.05秒となるように風鈴部材の材料と形状を選択すれば、余韻がほとんどない場合(たとえば、表4の材料CでT≒0の場合)と比べて、明らかに「空間の拡がり感」が向上する効果が得られた。さらにT>0.1秒ならば、音楽ジャンルを問わず、十分に満足いく効果が得られる。スピーカー試聴実験を重ねた結果、オーディオ機器が再生する音楽ジャンルの違いによって、風鈴時定数Tの設定に適正値があることが分かった。通常、広い演奏会場(コンサートホール)で演奏されるクラッシック音楽の場合は、風鈴時定数Tは大きめに設定する方が好ましい。一方、比較的小さな会場で演奏される場合が多いジャズ音楽の場合は、風鈴時定数Tはやや小さめに設定する方が好ましい。総じて言えば、クラッシックはライブで、ジャズはデッドな響きが好まれるのである。
たとえば、文献(石井伸一郎、リスニングルームの音響学、誠文堂新光社)によれば、リスニングルームにおける部屋全面積に対する吸音壁の比率は、クラッシックは17%、ジャズは22%、ホームシアターは27%としている。
風鈴時定数Tが適正値を有する風鈴部材を得るためには、素材の選定が決め手となる。表4に示すように、供試部品Aの場合は銅合金である快削黄銅鋼を用いた。供試部品D(りん青銅)の実験結果(図18)に示すように、錫の含有率が多い銅合金は、風鈴時定数Tをより大きくできる。
(3)風鈴部材の基音周波数f1が適正な範囲に設定されている
風鈴は複数の周波数の音を有する。これら周波数の音の中で、最も低周波数で、余韻の長い音が風鈴の基音である。この基音の概略整数倍の周波数が倍音成分となる。基音の周波数(1次共振周波数)は、たとえば、図1の実施例では、風鈴(上部スリーブ1)の開口部が「楕円形状」になる共振モードである。多数のリスナーによるスピーカー試聴実験の結果では、風鈴の基音周波数f1が低すぎると、再生音楽のジャンルによっては、高音域でクセのある固有音が耳ざわりとなるという指摘があった。基音周波数をf1>1500Hzに設定すれば、リスナーの多くが満足できる結果が得られ、さらに高い周波数f1>2500Hzに設定すれば、リスナーのほぼ全員が賛同する極めてナチュラルな響きが得られた。
ちなみに、聴覚的に耳障りな騒音を特定する調査において、人が最も不快に感じる騒音は、聴覚が特に敏感な3000〜4000Hzのピーク雑音であると報告されている。また、制振・制音材料が目標とする遮音(静音)特性において、耳障り音として低減する周波数の範囲は1500〜4500Hzであるとされる。これらの周波数と比べて、風鈴の基音周波数f1の下限値を比較的小さく設定しても聴覚上支障の無い理由は次のようである。オーディオ機器(たとえば、スピーカー)が再生する音楽を直接音すれば、この直接音に対して共振ピークによる音圧レベルの増加分は、単独では聴き取れない微弱な値である。この微弱な音圧レベルの増加分が音像の定位感、立体感を向上させる効果として、人の優れた聴覚をアシストするのである。
風鈴の基音周波数f1の上限値については次のようである。前述したように、ステレオ再生における音像の定位感、分解能などの向上のために、可聴域内に3次(k=3)以上の共振モードまで含まれるのが好ましい。固有値解析結果[1-4-3]を参照して、人の可聴域値を20000Hzとして、3次の共振モードが20000Hz以下に含まれる基音周波数(1次)の上限値を求めると、fMAX=4800Hzである。したがって、f1<4800Hzに設定すればよい。風鈴部材の基音周波数f1は、実施形態1(図1)を例にとれば、上部スリーブ1の厚みと材質によって決定される。同一の材質ならば、前記上部スリーブの厚み(外半径と内半径の差の平均値)が大きい程、長さLが短い程、f1は高くなる。同一の形状ならば、縦弾性係数が大きい材料程、f1は高い。
(4)インパルス応答波形のエンベロープに、適度な「うなり」を有する
周波数fnとそれにほとんど近い周波数fn+1の純音を重ねると、周波数Δf=fn+1-fnで波形のエンベロープ(包絡線)が変化して、一次のうなりが発生する。二つの周波数の比率が整数に近い場合も、周波数Δf=mfn+1-nfnの高次のうなりが発生する。スピーカー試聴実験の結果、風鈴部材の有する適度な大きさのうなり(ゆらぎ)の存在は、再生音に潤い感、豊饒感を与えることが分かった。
ちなみに、ゆらぎに含まれる波動の周波数をfとすると、人の生体リズムや自然界には、1/fのゆらぎがあることが知られている。この1/fのゆらぎの波長が聴覚を通して脳に働きかけ、脳の自律神経の調整によって、感情、情緒を安定させると言われている。
ここで、「オーディオ用風鈴特性」を求めるための、風鈴部材(図1の場合は上部スリーブ1)のインパルス加振実験の「基準条件」を下記のように定めるものとする。風鈴部材の上面中央部近傍を床面に設置された木製スパイクで支持すると共に、風鈴部材側面から300mm離れた床面に集音マイクを設置する。m=15gの重りをL=280mmの長さの糸で吊るして、Φ=45degの角度から降下させて、風鈴部材に与える加振源とする。集音マイクから得られる音圧情報を基に、周波数特性、過渡応答特性を求める。
[1-6]低周波域における振動遮断特性の測定
本発明インシュレータの低周波域における振動遮断効果を求めるために、従来インシュレータと対比の基で、行った実験方法を図19に示す。151は供試インシュレータ、152は前記供試インシュレータの上部に搭載された重り、153はこの重りの上に装着された振動スピーカー、154は床面、155は重り152の側面に装着された加速度センサ(A)、156は床面154に設置された加速度センサ(B)である。本実験に用いた本発明インシュレータは、インパルス応答を求めた図3の実験で用いたインシュレータと同一仕様である。また、重り152の負荷質量M=4.5Kg、インシュレータ側面から20mm離れた床面に加速度センサ(B)を設置した点も、図3の実験と同一条件である。従来インシュレータ(詳細構造は図示せず)は、スパイク方式として既に商品化されているものである。インシュレータの加振源として用いた振動スピーカー153は、それ自身がエンクロージャー(容積)を持たず、音楽信号などを固い平板に振動で伝えるものである。加振源に振動スピーカーを用いることにより、オーディオ用インシュレータが評価すべき適正な周波数測定範囲を設定できる。また、ピエゾアクチュエータのような予圧構造を設ける必要はなく、加振対象物(たとえば、前記上部スルーブ、あるいはこの上部スリーブに搭載された重り)の上に搭載するだけでよい。図20は本発明インシュレータを対象として、振動スピーカーに、f=50Hz〜1000Hzのサインスイープ信号を与えて加振させた場合について、FFTで処理された周波数に対する振動加速度特性を示すものである。図20aは重り152に装着された加速度センサ(A)155により検出された振動レベルXA、図20bは床面154に設置した加速度センサ(B)156により検出された振動レベルXBである。図21は、供試インシュレータを従来インシュレータ(スパイク方式)に置き換えて、同一条件で行った実験結果である。図22は上記XAに対する上記XBの伝達関数G(s)(=XB/XA)を求めたグラフであり、供試インシュレータに加えられた振動が床面に伝搬されるのを抑制する振動遮断効果を示すものである。
(1)本発明インシュレータの場合、f=50Hz〜600Hzの範囲では、-30dBから-40dBの範囲で、またf>600Hzでは-50dB以下の振動遮断効果が得られる。
(2)従来スパイク方式インシュレータの場合、f=260Hz近傍で、+15dBのピーク値を有する。またf=350Hz近傍まで振動遮断特性G>0であり、振動遮断効果は得られない。
(3)f=1000Hzにおいて、本発明インシュレータは従来スパイク方式と比べて、振動遮断効果は-30dB程大きい。
ちなみに、本実験方法では、低周波数領域での振動遮断特性を求めるために、駆動源に振動スピーカーを用いた。高周波数領域までフラットな出力特性を有する駆動源、たとえば超磁歪スピーカーを用いれば、本実験方法を用いて、より広い周波数範囲まで振動遮断特性を求めることができる。
[1-7]実験結果の総括
低周波域における振動遮断特性を測定した[1-6]節の実験結果、及び、インパルス応答により、高周波域における振動遮断特性を求めた[1-3]節の実験結果から、本発明インシュレータが有する振動伝達特性の特徴を要約すれば、次のようである。すなわち、風鈴部材単体(図1の上部スリーブ1)が有する複数の共振周波数の中で、最も低周波で、最も余韻の長い音を前記風鈴部材単体が有する周波数f1の基音とする。図3の実験結果では、基音の周波数f1=3500Hzである。音響素材のばね剛性KZ(8.13N/mm)とインシュレータに搭載されるオーディオ機器の質量M(4.5Kg)で決まる共振周波数をf0とする。この場合、f0=6.77Hzである。本発明インシュレータでは、前記上部スリーブを励振させたときの前記上部スリーブの振動特性(図4a)は、前記共振周波数f0と前記共振周波数f1の範囲で共振点を有しないように構成することができる。すなわち、上記2つの実験結果は、「低い周波数領域(f0<f<f1)では振動を遮断し、逆に高い周波数領域(f>f1)では振動伝達を利用して音のチューニングを図る」という既提案インシュレータの基本的概念が、具体的手段(図1の構造)によって実現できることを検証するものである。
本実施例(図1)のインシュレータは、「上部スリーブ1→下部スリーブ2」に至る振動伝播経路Φzに、減衰性が小さく、固有音響インピーダンスの高い材料だけを用いたために、低周波域で振動を遮断し、高周波域で振動を通過させる「ハイパス・フィルタ」の特性を有する。多くの機械要素部品、たとえば、ゴム、質量とバネ、ダンパーなどのほとんどは、低周波域では振動を通過させ、高周波域において振動を遮断する「ローパス・フィルタ」の特性を有する。通常、ハイパス・フィルタの特性を有する機械要素、及び、機械要素の組み合わせは存在しない。この点で、本実施例のインシュレータは極めて特殊な振動伝達特性を有するのである。但し、実施形態1のハイパス・フィルタの特性は風鈴効果を得るための十分条件であるが、必要条件ではない。この点については、以下、補足(1)で後述する。
[1-8]補足(1)
実施形態1におけるインシュレータの振動伝達のメカニズムについて、図1を用いて補足する。線径が太いスプリングコイル5を一様断面の「音響管」とみなしたとき、オーディオ機器が発生した高周波の音響振動は、荷重支持部8から、らせん状の音響管内を矢印10のごとく伝搬していく。ここで、「オーディオ機器(図示せず)→上部スリーブ1の荷重支持部8→音響管(スプリングコイル5)→下部スリーブ2→設置面9」に至る振動の伝達を、前述したように、振動伝播経路Φzとする。実施例では、荷重支持部8から入射した音波が、スムーズに音響管(スプリングコイル5)内に透過し、さらに設置面9まで伝搬できるように、両部材1、2は、スプリングコイル5(鋼)と同レベルの固有音響インピーダンスzが大きな金属(真鍮)を用いた。ちなみに、ρを媒質の密度、cを音速として、固有音響インピーダンスz=ρcである。また、同実施例における振動伝播経路Φzには、減衰性が大きく固有音響インピーダンスの小さなゴム、樹脂などの材料は介在させず、オーディオ機器が発生した高周波振動は、金属材料だけを通してスプリングコイル5に伝達するように構成した。この構成により、図3の実験結果が示すように、多くの共振点を有する高周波振動は、音響管5を経由してオーディオ機器から設置面9に伝搬されるのである。ここで、次の仮定を設ける。
(1)スプリングコイル5の上端面と上部スリーブ1の間に、減衰性が十分に大きな材料(たとえば、粘弾性ゴム)を介在させる。
(2)スプリングコイル5の下端面と下部スリーブ2の間に、減衰性が十分に大きな上記材料を介在させる。
上記(1)の場合、風鈴部材(上部スリーブ1)と上記材料(粘弾性ゴム)を直接接触させることになり、風鈴部材の高周波振動を減衰させてしまうために、風鈴効果は明らかに低下する。上記(2)の場合、高周波振動はスプリングコイル5の下端面まで伝搬するが、設置面9には伝わらない。たとえば、図3の実験の場合では、加速度センサ(B)から振動は検出できず、下部スリーブ2が有する風鈴効果は期待できない。また、振動伝搬の上流側である上部スリーブ1の高周波振動を減衰させるように影響を与える。上記(1)(2)の場合、荷重支持部8から設置面9に至る振動伝達特性は、ハイパス・フィルタの特性を有しない。要約すれば、音響素材に機械ばね(スプリングコイル)を用いて、風鈴部材が高周波振動を励起し易くするためには、振動伝播経路Φzを形成する各部材は、減衰性が小さく、固有音響インピーダンスが同レベルの高い材料、具体的にはz>107Ns/m3の材料を用いるのがベストである。但し、風鈴の振動系ΦRは、振動系ΦZに対して並列に存在するため、振動伝搬経路に減衰性の大きな材料が介在した場合でも、風鈴部材(オーディオ機器が搭載された上部支持部材)の共振現象は存在するため、風鈴効果は多少なりとも得られる。
音響素材にフローティング方式シンシュレータとして用いられるエアーを封じ込めた空気式、あるいは磁力の反発力を利用した磁石式を用いた場合、振動伝播経路Φzには空隙部が介在するため、荷重支持部から設置面に至る振動伝達特性は、ハイパス・フィルタの特性を有しない。しかし、空隙部の振動減衰性能は小さいために、風鈴部材の共振現象は失われず、風鈴効果はスプリングコイルを用いた場合と同様に得られる。
[1-9]補足(2)
図23は、本発明の実施形態2に係るオーディオ用インシュレータであり、前述した実施形態1におけるインシュレータを逆配置して、オーディオ機器を搭載した場合を示す。図23aは上面図(図23bのA-A矢視図)、図23bは正面断面図である。図1bと図23bを比較すれば、上部スリーブ1は下部筒部101に相当し、下部スリーブ1は上部筒部102に相当する。すなわち、本実施例では、図1における上部スリーブ1と下部スリーブ2を逆配置して、下部スリーブ2側にオーディオ機器を搭載した場合を示す。この場合でも風鈴効果を得ることができる。図23において、101は下部筒部(下部支持部材)、102は上部筒部(上部支持部材)、103は上部筒部102の中央部に突設して形成された中央筒部、104は中央筒部103の外周部に装着されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。下部筒部101と上部筒部102の内部にスプリングコイル105(音響素材)が設けられている。106、107はスプリングコイル105の位置決め部、108は上部筒部102の上端面でオーディオ機器109を搭載する荷重支持部、110は下部筒部101の床面側設置端面、1111は床面である。本実施例の場合、上部筒部102のX軸、Y軸、Z軸方向はスプリングコイル105により弾性支持されている。荷重支持部108に搭載されるオーディオ機器(たとえばスピーカー)は、図23a、図23bに示すように、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向から本インシュレータを加振する。各軸はΨx、ΨY、Ψzの振動成分を有し、ベクトルで表現すれば、Ψ=Ψx・i+ΨY・j+Ψz・kである。また、線径が太く外径の大きなスプリングコイル105は、柔らかいばね剛性と「音響管」としての役割を兼ねており、「オーディオ機器109→荷重支持部108→上部筒部102→音響管(スプリングコイル105)→下部筒部101→床面111」に至る振動伝播経路Φzが存在する。さらに、下部筒部101、及び上部筒部102は、振動伝播経路Φzから分岐した振動伝播経路ΦRを有し、前記振動Ψによって励起された風鈴部材の振動(風鈴特性を有する)は振動伝播経路ΦRを経て、振動伝搬経路Φzに合流して床面111に振動伝搬される。そのため、実施形態1で示した程顕著ではないが、「風鈴効果」は少なからず得られる。たとえば、上部筒部102がスリーブ形状ではなく、平端面構造で十分な風鈴効果が得られない場合でも、床面に設置した下部筒部101が「風鈴部材」としての役割を担う。前記下部筒部内部は前記スプリングと前記サージング防止部材を収納する空洞を有し、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部を大気解放端(自由端)とする筒型形状、すなわち、「風鈴」に近い形状となっている。この場合、下部筒部101にオーディオ機器が発生した振動が伝搬され易いように、上記振動伝搬経路Φzに介在する部材は、スプリングコイル105と同オーダーの高い固有音響インピーダンスを有する材料で構成するのが好ましい。また、本実施例の場合、下部筒部101の「オーディオ用風鈴特性」を求める評価方法は、下部筒部101を用いて、図7に示した方法に準ずればよい。風鈴部材として振動が励起され易いように、下部筒部101の底面をたとえば凸形形状にして、中央部だけ床面110に接する形状でもよい。サージング防止部材104が装着された中央筒部103に相当する部分を、下部筒部101に設ける構造でもよい。
本実施例(実施形態2)の場合は、実施形態1と比べて風鈴効果は抑制される。この点を利用して、リスナーの好み、音楽ジャンル、オーディオ機器の特性などに合せて、実施形態1と実施形態2(逆配置)を随時入れ替えてもよい。
[2]さらなる音響特性向上のための方策
以下、前節の風鈴効果をもたらす原理(仮説)の検証実験から得られた知見を基に、さらなる音響特性向上のための方策について述べる。
図24は、本発明の実施形態3に係るオーディオ用インシュレータであり、複数個の薄型円盤を多層に重ねて風鈴部材を構成した場合を示す。本実施例は、高周波領域における多くの共振モード(倍音)の存在は、ステレオ再生における音像の定位感(フォーカス感)、分解能を向上させると共に、多くの共振モードを有する程、クセのない自然な音が得られるという点に注力したものである。図24aは上面図、図24bは正面断面図である。201は上部スリーブ(上部支持部材)、202は下部スリーブ(下部支持部材)、203は下部スリーブ220の中央部に突設して形成された中心軸、204は筒部3の外周部に装着されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。上部スリーブ201は下部スリーブ202上部に配置され、両スリーブ201、202の内部にスプリングコイル(音響素材)205が設けられている。206、207はスプリングコイル5を装着した状態で、両スリーブ201,202の軸芯が一致した状態を保つための両スリーブに形成された位置決め部である。
208a〜208eは、上部スリーブ201の外周部に装着された円盤である。これらの複数の円盤は各円盤間に装着されたリング209a〜209d、上部スリーブ下端部210、上部スリーブ201の上端部に設けられたリング形状の止めねじ211によって、一定間隔で上部スリーブ201に固定されている。止めねじ211の着脱により、本実施例では各円盤は自在に交換可能である。本実施例では、上部スリーブ201、及びこの上部スリーブに装着された複数個の前記円盤で構成される部分が、「風鈴部材」となる。図25a〜図25c、図26a〜図26c、図27は円盤外径φ74mm、内径φ60mm、円盤の厚み5mm、材料に鋼材を用いた場合の固有値解析結果の一例であり、1次共振周波数f1=4400Hzから16200Hzまでの各共振モードを示すものである。したがって、本実施例の構造によれば、各円盤208a〜208eの厚み、あるいは材質を変えることにより、共振モードの形態は同一のままで、各円盤の共振周波数f1〜fnを変えることができる。真円ではなく非真円の複雑な形状にすれば、さらに多様な振動モードが得られる。薄型円盤に用いる音響素材として、銅合金、マグネシウム、天然水晶、チタン、石英、ローズウッド材、ケヤキ材、大理石、ハイカーボン鋳鉄、強化ガラスなどが適用できる。ちなみに、他の実施例における上部・下部スリーブにもこれらの材料が適用できる。
薄型円盤を多層に重ねて風鈴部材を構成する代わりに、複数の円筒部材を組み合わせて風鈴部材を構成してもよい。この場合、各円筒部材の外径寸法が異なる構造にして、伸縮可能な望遠鏡を縮小した状態で、各円筒部材が非接触の状態を保てる構造にすればよい。風鈴部材を円筒部材にすれば、X軸、Y軸方向の外力に対して振動を励起し易くなり、より一層風鈴効果を得ることが出来る。
図28は、本発明の実施形態4に係るオーディオ用インシュレータであり、スパイク方式インシュレータに風鈴部材を装着した場合を示す。図28aは上面図(図28bのA-A矢視図)、図28bは正面断面図である。
本インシュレータの構造は、スパイク構造部301とスパイク受け部302から構成されるが、スパイク構造部301はオーディオ機器側に設置したものである。303はスパイク支持部、304はスパイク円柱部、305はスパイク円錐部、306は厚い肉厚の金属で形成された曲面部を有するスパイク側スリ−ブ(風鈴部材)である。部材303〜306により、スパイク構造部301を構成している。307はオーディオ機器(想像線)、308は上部筒部、309は下部ベース、310はサージング防止部材(振動発生防止手段)、311はスプリングコイル(弾性部材)、312はスパイク先端受け皿である。部材308〜312により、小径・小型のスパイク受け部302を構成している。オーディオ機器307からスパイク構造部301のスパイク円柱部304→スパイク円錐部305→スパイク受け部302の上部筒部308→スプリングコイル311→床面313に至る振動の経路を振動伝播経路ΦZとする。本実施例では、この振動伝播経路ΦZから分岐した「風鈴効果」(Wind bell effect)をもたらす振動伝播経路ΦR(筒型形状部材)を、スパイク構造部301側に形成した。すなわち、本実施例において、スパイク側スリ−ブ306内部はスパイク円柱部304、スパイク円錐部305を収納する空洞を有し、一方の端部を密閉構造、もう一方の端部を大気解放端とする筒型形状、すなわち、「風鈴」に近い形状となっている。オーディオ機器(たとえばスピーカー)は、図28a、図28bに示すように、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向の振動成分Ψx、ΨY、Ψzを有する。本実施例では、スパイク円錐部305の先端を受ける上部筒部308は、スプリングコイル311によって、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に弾性変形可能に支持されている。したがって、スプリングコイル311のばね剛性が適度に柔らかければ、オーディオ機器が発生した振動Ψ(=Ψx・i+ΨY・j+Ψz・k)はスパイク側スリ−ブ306(風鈴部材)を3軸方向に加振する。この風鈴部材の振動が前記振動伝播経路ΦRを経て前記振動伝播経路ΦZに合流して、スパイク受け部302の方向に伝搬される。この結果、風鈴部材の有する余韻が再生音に空間の拡がり感(奥域感、臨場感)をもたらすと共に、高周波領域における多くの共振モードが音像の定位感(フォーカス感)、分解能の向上をもたらす点は、前述した実施例同様である。従来のスパイク方式のように、スパイク受け部302に相当する部材を完全剛体で構成した場合でも、3軸方向の振動成分Ψx、ΨY、Ψzは完全には無くならないため、風鈴効果は多少なりとも得られる。しかし、本実施例と比べてその効果のレベルは低減する。また、スパイク受け部302に内蔵するスプリングコイル311の軸方向剛性KZと搭載物の質量Mで決まる共振周波数f0を可聴域以下に設定すれば、質量Mとばね剛性KZで決まる2次振動系の周波数特性により、共振周波数f0以上で振動遮断作用が得られる点も前述した実施例同様である。本実施例では、風鈴部材に曲面部314を有するスリ−ブ306を用いた。一般に用いられる風鈴は曲面形状を有する場合が多く、この曲面形状による高周波域での共振特性により、音に一層の深みと余韻を与えることができる。但し、一般の風鈴と本実施例の形状の違いは、風鈴部材を支持するための平端部315を有することである。本実施例で用いた風鈴部材の形状は、本発明の他の実施例にも適用できる。
図29は、本発明の実施形態5に係るオーディオ用インシュレータであり、通常スピーカーに標準装備されているスパイク方式インシュレータの装着箇所を利用して、本発明インシュレータに置き換える方法を示す。
図29aは、オーディオ機器に装着された従来スパイク方式インシュレータ、図29bは本発明によるスパイク方式インシュレータをオーディオ機器に装着した場合を示す。図29aにおいて、501はオーディオ機器(想像線)、502はスパイク円柱部、503はスパイク円錐部、504はスパイク先端受け皿、505はスパイクねじ部、506は床面である。図29bは、従来スパイク方式インシュレータが装着されていたオーディオ機器501に、本発明インシュレータを置き換えて装着した構造を示す。
551はスパイク円柱部、552はスパイク円錐部、553は厚い肉厚の金属で形成されたスパイク側スリ−ブ(風鈴部材)である。554は前記スパイク円柱部と一体化したスパイク支持部材、555は前記スパイク側スリ−ブとオーディオ機器501の間に介在して設けられた中間支持部材、556は前記スパイク円柱部と前記スパイク側スリ−ブを中間支持部材555に固定するためのボルト、557は中間支持部材555をオーディオ機器501に固定するためのボルトである。このボルト557は、既にオーディオ機器501に標準装備されていたスパイクねじ部505(図29a)と同種類のものを選択する。
558は床面、559はスパイク受け部である。このスパイク受け部には、実施形態4で示したように、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に弾性変形可能に支持されたものを適用すれば、より一層の風鈴効果を得ることができる。
図30は、実施形態4、実施形態5で用いた風鈴部材のように、中間部で風鈴部材単体をスパイク支持できない構造に対して、風鈴特性を求めるためのインパルス加振実験の方法を示すものである。701は風鈴部材、702は木製の補助部材、703は穴部、704は木製スパイクである。705はインパクト・ハンマーの代用である重り、706は集音マイクである。風鈴部材701に補助部材702を装着して、この円筒部材の穴部703にスパイク704の先端部を装着する。本加振実験に示すように、風鈴部材単体を中間支持できない場合は、風鈴部材単体の振動特性に影響を与えにくい補助部材(木製が好ましい)を、風鈴部材に装着すればよい。
図31は、本発明の実施形態6に係るオーディオ用インシュレータであり、図31aは上面図、図31bは正面断面図(図31aのA-A矢視図)である。
前述した実施例では、インシュレータはすべて単独のユニット、たとえば、実施形態1の場合は一対のスリーブ(上部スリ−ブ1と下部スリーブ2)の間にスプリングコイル5が装着される場合を示した。本実施例は、複数の独立したスプリングコイルを共通の上部ケースと下部ベースで挟みこむように配置したものである。
801は上部ケース(風鈴部材)、802は下部ベース、803a、803b、803cはスプリング・ユニットである。(803cの断面図は図示せず)たとえば、スプリング・ユニット803aは、スプリングコイル804a、中心支持部805a、サージング防止部材(振動発生防止手段)806aより構成される。また、スプリング・ユニット803a本体の下端部は、ボルト807aにより下部ベース802に締結され、その上端部のスプリングコイル804aは、上部ケース801に形成された窪み部808aに収納される。スプリング・ユニット803b、スプリング・ユニット803cも同一の構成である。上部ケース801の上面809にオーディオ機器が搭載される。
本実施例のインシュレータを1セットだけ用いて、たとえば、小型スピーカー、3点のスパイクで支持される筒型のスピーカー、あるいはCDプレイヤー等を搭載してもよい。あるいは、本実施例のインシュレータを複数セット用いて、大型のスピーカーを搭載してもよい。実施例では、上部ケース801は筒型形状で構成したが、長方形形状でもよい。この場合は、スプリング・ユニットは4個用いて、長方形の4隅に配置する構造でもよい。
図32は、実施形態6で用いた風鈴部材のように、外側寸法が大きく、風鈴部材の中央部を針状のスパイク先端で支持できない構造に対して、風鈴特性を求めるためのインパルス加振実験の方法を示すものである。
850は風鈴部材、854は木製スパイクであり、その上端面は平端部851を有する。852はインパクト・ハンマーの代用である重り、853は集音マイクである。風鈴部材850の重心位置に合せて、スパイク854の平端部851に風鈴部材850を搭載することで、インパルス加振実験を行えばよい。
ここで風鈴部材とは、実施形態1(図1)の場合は上部スリーブ1、実施形態2(図23)の場合は、下部筒部101、あるいは上部筒部102を示す。実施形態3(図24)の場合は複数個の円盤208a〜208eと上部スリーブ201、及び、リング209a〜209d、止めねじ211によって構成される部分を示す。実施形態4(図28)の場合はオーディオ機器側に装着された上部スリーブ306を示す。風鈴部材がインシュレータ本体に対して、ボルトなどで離脱防止となっている場合は、風鈴部材を単体の状態にして、風鈴特性を求める評価(図7で記載)をすればよい。
図33は、本発明の実施形態7に係るオーディオ用インシュレータの風鈴部材(上部スリーブ)の形状を示す図であり、図33aは上面図、図33bは正面断面図である。本実施例は、曲率半径の異なる形状を組み合わせて、上部スリーブ円筒部の外周側を非真円で形成したもので、風鈴部材に高周波領域でより多様な共振ピークを持たせたものである。901a、901bはO1を中心とする半径37mmの円筒部外周側、902a、902bはO2を中心とする半径61mmの円筒部外周側である。903は円筒部内周側である。
図34a〜図34dは、図33で示した形状の前記上部スリーブを対象に、FEM固有値解析を行ったもので、その一例を示す。解析条件として、真鋳(表4の供試部品Aと同じ)の縦弾性係数E=98GPa、密度ρ=8.5g/cm3、拘束条件として前記上部スリーブ上端面の中央部近傍を完全固定した。図34a、図34bは、風鈴の開口部が「楕円形状」になる2つの曲率半径の異なる形状を組み合わせてを示すもので、各共振周波数は、fa=3700Hz、fb=3710Hzであり、両者の共振周波数は僅かに、Δf=fb-fa=10Hzだけ異なっている。図34c、図34dは、風鈴の開口部が「三つ葉形状」になる2つの共振モードを示すもので、各共振周波数は、fc=9370Hz、fb=9570Hzであり、両者の共振周波数は、Δf=fc-fd=200Hz異なる。上記解析結果からわかるように、上部スリーブの円筒面を曲率半径の異なる形状を組み合わせて形成することにより、共振周波数の異なる複数個の同一共振モードが得られる。本実施例を適用し、高周波域において共振周波数の数を増すことにより、クセのない一層自然な音が得られる。また、前述したように、周波数faとそれにほとんど近い周波数fbの純音を重ねると、Δf=fb-faで波形の包絡線が変化して、うなりが発生する。うなりの周波数は10Hz以下で感じ易く、15Hzまで検知できるとされる。したがって、本発明インシュレータにおいて、うなり(ゆらぎ)の音響効果を積極的に利用するためには、本実施例の方法を適用すればよい。実施例では、902a、902bにO2を中心とする曲面を用いたが、平端面でもよい。また、この平端面、あるいは曲面を上部スリーブ900の外周面ではなく、内周面903に形成してもよい。本発明の他の実施例にも適用できるが、風鈴部材の内外周面の軸方向、あるいは円周方向に、たとえば線幅の異なる不連続な溝、あるいは、非周期的な凹凸面等を形成することで、風鈴部材に多様な高周波特性を持たせることができる。これらの形状を風鈴部材の内周面に形成し、外周面は真円に近い形状にすれば、インテリア性が要求されるオーディオ機器としてのインシュレータの美観を損なうことなく、音響特性の改善が図れる。本発明インシュレータの美観上の上記工夫は、一般の風鈴とおおいに異なる点である。
[3]補足
本発明インシュレータが有する振動特性と、この振動特性がもたらす主な音響効果を概略要約すれば次のようである。
(1)低周波数域における振動遮断特性・・・透明感・無歪感の向上
(2)風鈴の余韻・・・空間の拡がり感(奥域感、臨場感)の向上
(3)風鈴の有する高周波領域における多数の共振モード・・・音像の定位感(フォーカス感)、分解能の向上
(4)風鈴の基音を高い共振周波数に設定する・・・ナチョラルでクセがなく、耳ざわりない音
(5)風鈴のうなり(ゆらぎ)・・・居心地の良さ、潤い感、豊饒感の向上
上記(1)〜(5)は、風鈴部材単体の風鈴特性として得られるものである。開発者の感性に頼らざるをえず、試行錯誤的に開発されてきた従来オーディオ用インシュレータと異なり、本発明インシュレータにおいては、上記(1)〜(5)の設計は、本明細書が記載した方法により、理論的に遂行可能である。
本発明の実施形態1(図1)に係るオーディオ用インシュレータは、前述した「風鈴効果」を得るために設けた長い筒状のスリーブを利用して、インシュレータに搭載されたオーディオ機器に地震などによる衝撃的な水平方向外乱荷重が加わった場合、オーディオ機器の傾斜を最小限に抑えて、転倒を防止することができる。前述したように、スプリングコイル5の下端外周部は前記下部スリーブ2底面に形成された位置決め部6に、スプリングコイル6の上端外周部は上部スリーブ1底面に形成された位置決め部7に嵌まり込むようになっている。そのため、本インシュレータはスプリングコイル5を装着した状態で、両スリーブ1,2の軸芯が一致した状態を保つ。上部スリーブ1は、狭い半径方向の間隙(図1の寸法δ)を設けた状態で、下部スリーブ2を嵌め込むように配置される。一方、前述した「風鈴効果」を得るためには、前記上部スリーブは十分な長さLが必要である。すなわち、上部スリーブの長さLを大きくすることにより、(1)外乱荷重が加わった場合にスピーカーの傾斜量を小さくする、(2)十分な風鈴効果を得る、上記(1)(2)を同時に満足できる。多数のオーディオファイルを対象にした評価実験の結果、本インシュレータを適用するスピーカーの仕様(高さ、設置面積、質量など)に変更がある場合でも、間隙δ≦1.0mmに設定しておけば、スピーカーを取り換えても実用上はほとんど支障がなかった。実施形態1におけるインシュレータを逆配置した実施形態2(図23)の場合も同様に、2つのスリーブ間の間隙δを上記範囲に設定すればよい。本実施例で示したインシュレータの構造は、スピーカー以外のオーディオ機器、たとえば、アナログプレイヤー、CDプレイヤー、アンプなどに適用した場合にも、外乱荷重に対する機器設置上の安定性、安全性を確保できる。
実施例では、弾性部材として外径が軸方向で均一なスプリングコイルを用いたが、本発明のインシュレータに適用できる弾性部材はこれに限定されるものではない。たとえば、円錐コイルばね、皿バネ、あるいはこの皿ばねを多段に積み重ねた構造、竹の子ばね、輪ばね、渦巻きばね、薄板ばね、重ね板ばね、U字型ばねなど、オーディオ用インシュレータとして要求される形状、寸法などを考慮して選択すればよい。本発明では、これらの部材を総称して機械ばねと呼ぶ。
スプリングを用いて除振器を構成する場合、サージング共振現象が大きな問題となる。このサージングは、コイル素線に沿って伝搬される衝撃波が,ばねの有効部を往復するときのサージ速度から決定される共振現象であり、基本振動数に対する複数の高調波振動が広い周波数領域に渡って発生する。本実施例で使用するサージング防止部材4(4a,4b)は、粘弾性ゴムで構成した。衝撃に対して振動吸収性と内部減衰性に優れ、外力を受けてもほとんど反発せず、振動エネルギーを吸収する性質を持つ公知の制振材料である。実施例では、スプリングコイルのサージング現象を防止するために、円筒形状の筒部から半径方向に延びて突設された複数の粘弾性片を用いた。粘弾性片の突設枚数は実施例では、45°間隔で8枚となっているが、枚数は限定されず、8枚以下でも良いし、8枚以上であってもよい。あるいは、「音響管」としての効果は、後述する理由により低減するが、羽根状の粘弾性片を用いるのではなく、円柱状の粘弾性部材をスプリングコイルに圧入する構造でもよい。また、薄板形状の粘弾性部材をスプリングコイル内面に密着させる構造でもよい。あるいは、スプリングコイルの素材に粘弾性材料を被覆させたものを用いてもよい。なお、粘弾性部材は、前述のような部材に限られるものでなく、弾力性は小さいが元の形状に復帰する復元力を有する低反発ゴムのような素材でもよい。あるいは、従来からサージング防止対策として用いられている液体の中にスプリングを浸した構成でもよい。
実施例インシュレータに用いたスプリングコイルが、高周波振動を通過させる「音響管」としての役割を担う理由には、サージング防止部材4の形状がおおいに寄与している。前述したように、実施形態1(図1a)では、粘弾性部材がスプリングコイル5の内周面に完全密着する構造ではなく、半径方向に延びて突設された複数の粘弾性片4bが部分的にスプリングコイル5の内周面に接触している。そのため、波長が短くなる高周波域では、粘弾性片4bの振動減衰作用の影響を回避して通過する確率が向上する。また、波長の短い高周波域の振動では、弾性波はスプリングコイル5の線方向の部分的な伸縮になる。スプリングコイルの傾斜角をθとすれば、粘弾性片を変形させる軸方向成分(sinθ)は減衰作用に寄与するが、粘弾性片の内面を滑るだけの円周方向成分は振動減衰に寄与しない。上記実施例における、高周波振動を通過させるスプリングコイルの「音響管」としての機能は、上記粘弾性片4bの形状がおおいに寄与している。
本発明における高次の共振現象を抑制する振動発生防止手段には、質量と集中ばね定数だけで決まる単振動(1次の固有振動数)だけしか発生しないメカニズム構造も含むものとする。実施例では、本発明のインシュレータをスピーカーに適用する場合を示したが、オーディオ機器であるCDプレイヤー、アナログプレイヤー、プリアンプ、パワーアンプ、あるいは様々な楽器(たとえば、アコースティック楽器)、ピアノなどのいずれにでも適用でき、同様な効果が得られる。あるいは、床面に設置して用いる楽器、たとえば、チェロ、コントラバス(ダブル・ベース)のエンドピンの先に本発明のインシュレータを楽器の支えとして用いれば、樂器の音は大幅に改善される。この場合、エンドピン先端を受ける凹部を、インシュレータの上面(たとえば、図1では上部スリーブ1の荷重支持部8)に形成するか、あるいは凹部が形成された別部品を荷重支持部8に装着すればよい。オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動を低減させることで再生音の品位を向上させる効果、及び、高周波域の音響特性を向上させる風鈴効果は、オーディオ機器を上記楽器に置き換えても成り立つのである。したがって、本発明の名称である「オーディオ用」とは、広義に解釈して、これらの楽器も含まれるものとする。
また、実施例では、インシュレータはすべて床面に垂直配置する場合を示したが、インシュレータの姿勢を水平にして、例えば壁面にオーディオ機器を水平配置する場合でも適用できる。
[4]本発明によるオーディオ用インシュレータのスピーカー試聴実験
実施形態1におけるインシュレータ(図1)を用いて、材質の異なる風鈴部材(表4に示す供試部品A〜C)を各種取り換えて、試聴実験を行った。適用したスピ−カーはモニター用として定評のあるコンデンサ型(質量m=41Kg)である。上部スリーブ1(風鈴部材)と下部スリーブ2以外のインシュレータ部品はすべて共通であり、スプリングコイル5のばね剛性KZ(=8.13N/mm)と質量mで決まる固有値f0=4.49Hzである。図2に示すように、インシュレータをスピ−カー底面4隅に配置して、スピ−カーを支持した。表5の評価結果は、試聴実験に参加した7人のリスナーの合意を得て整理したものである。同表に風鈴部材が無い場合、すなわち、上部スリ−ブ1を取り外してスプリングコイル5で直接スピーカーを支持した場合の試聴実験の結果を対比して示す。表5において、風鈴部材を装着しない場合(表5の右端)でも搭載物の質量とばね剛性で決まる2次振動系の周波数特性により、共振周波数f0以上での振動遮断作用は得られる。したがって、インシュレータ本体を装着しない場合と比べて、各項目で格段に優れた特性を有する。但し、評価を分り易くするために、優劣は風鈴部材を装着しない場合(すべて△)に対する相対評価とする。結果を考察すれば、
(a)風鈴部材を装着しない場合と比べて、供試部品A〜C共、ほとんどすべての項目で評価は向上する。
(b)風鈴時定数Tが最も大きい供試部品Aの場合、すべての項目で評価は最も高い。供試部品Aは、風鈴の材料として用いられる銅合金である。風鈴は余韻が長い程、減衰性が低く、高周波域における多くの共振ピークを励起し易い。供試部品Aの有するこの風鈴特性が、音響特性向上に寄与していると思われる。
(c)しかし、風鈴時定数Tが最も小さい供試部品Cの場合でも、奥行感、分解能、透明感、トランジェント特性などで、風鈴部材が無い場合と比べて、高い評価が得られる。この理由として、風鈴の余韻の大小にかかわらず、高周波域に多少なりとも存在する共振ピークが、ステレオ再生における音像の定位感、分解能などの向上に寄与していると考えてよい。
(d)供試部品Aの場合、物理特性としての表現が難しい「音の雰囲気」が際立って高い。減衰曲線の包絡線に見られるうなり(ゆらぎ)の効果と思われる。
表5における、各評価項目の詳細は次のようである。
(a)奥域感(空間性・音場感・立体感)
スピーカーの背景に壮大なオーケストラの空間が、スピーカーから離脱して奥深く展開される。
(b)分解能(定位感・フォーカス感)
各楽器が視覚で見えるようにその存在感が分かり、音像(sound stage)の焦点が明確に定まる。
(c)透明感(S/N比)
複層する楽器音が混濁せず分離する。高域が繊細で歪み感が小さい。
(d)低域の力感(ダンピング)
低域が引き締まり、オーケストラの弦の低域音、ジャズのベース音が明確に定位して聴こえる。
(e)トランジェント特性
静寂の中で急峻な音の立ち上がり感と、立ち下り感(急峻に音が消える)が得られる。
(f)音の雰囲気
音の細部ではなく、音楽全体を潤い感漂う雰囲気(atmosphere)で、居心地良く、リラックスして聴ける。
56・・・上部支持部材(風鈴部材)
57・・・下部支持部材
59・・・音響素材
60・・・加振源

Claims (21)

  1. 音響素材と、前記音響素材の上側に設けられる風鈴部材と、前記音響素材の下側に設けられる下部支持部材と、を具備し、前記音響素材を前記風鈴部材と前記下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータであって、
    前記風鈴部材は、内部に前記音響素材が収容される空間を有する筒型形状に形成されており、その上端部がオーディオ機器側に設けられ、その下端部が大気解放端である自由端となるように設けられるものであり、
    前記風鈴部材単体の中央部を固定して、前記風鈴部材単体にインパルス加振を与えて、前記風鈴部材近傍に配置された集音マイクから得られる音圧波形の包絡線が初期値に対して36.8%まで減衰する時間を風鈴時定数Tとしたとき、T>0.05秒であることを特徴とするオーディオ用インシュレータ。
  2. 風鈴時定数T>0.1秒であることを特徴とする請求項1記載のオーディオ用インシュレータ。
  3. 音響素材と、前記音響素材の上側に設けられる風鈴部材と、前記音響素材の下側に設けられる下部支持部材と、を具備し、前記音響素材を前記風鈴部材と前記下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータであって、
    前記風鈴部材は、内部に前記音響素材が収容される空間を有する筒型形状に形成されており、その上端部がオーディオ機器側に設けられ、その下端部が大気解放端である自由端となるように設けられるものであり、
    前記風鈴部材単体の中央部を固定した状態で、前記風鈴部材単体にインパルス加振を与えて、前記風鈴部材近傍に配置された集音マイクから得られる前記風鈴部材の基音周波数f1がf1>1500Hzとなるように前記風鈴部材の材質と形状を設定したことを特徴とするオーディオ用インシュレータ。
  4. 前記風鈴部材の基音周波数f1>2500Hzに設定したことを特徴とする請求項3記載のオーディオ用インシュレータ。
  5. 前記風鈴部材の基音周波数f1は風鈴部材の自由端側の開口部が「楕円形状」になる共振モードであることを特徴とする請求項3記載のオーディオ用インシュレータ。
  6. 前記風鈴部材が、上下方向に延びる概略円筒状に形成された上部スリーブと、前記上部スリーブの外側周面に嵌合される穴を有した複数の円盤と、を備え、
    複数の前記円盤が当該円盤の内周面を固定端、外周面を自由端として、前記上部スリーブに沿って多段に重ねられていることを特徴とする請求項1記載のオーディオ用インシュレータ。
  7. 音響素材と、前記音響素材の上側に設けられる風鈴部材と、前記音響素材の下側に設けられる下部支持部材と、を具備し、前記音響素材を前記風鈴部材と前記下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータであって、
    前記風鈴部材は、内部に前記音響素材が収容される空間を有する筒型形状に形成されており、その上端部がオーディオ機器側に設けられ、その下端部が大気解放端である自由端となるように設けられるものであり、
    この風鈴部材単体の中央部を固定した状態で、前記風鈴部材単体にインパルス加振を与えて、前記風鈴部材近傍に配置された集音マイクから得られる前記風鈴部材単体が有する複数の共振周波数の中で、最も低周波で、最も余韻の長い基音の周波数をf1、前記音響素材のばね剛性と前記風鈴部材に搭載されるオーディオ機器の質量で決まる振動系の共振周波数をf0として、前記風鈴部材を励振させたときの前記風鈴部材の振動特性は前記共振周波数f0と前記共振周波数f1の範囲で共振点を有しないことを特徴とするオーディオ用インシュレータ。
  8. 前記音響素材はフローティング方式インシュレータに用いられる機械ばね、あるいは空気、あるいは磁性体であることを特徴とする請求項7記載のオーディオ用インシュレータ。
  9. 前記共振周波数f0<20Hzであることを特徴とする請求項8記載のオーディオ用インシュレータ。
  10. 前記風鈴部材に装着された前記音響素材はZ軸方向に延びており、当該音響素材はX軸とY軸とZ軸の3軸方向に加わる変動荷重によって、3軸方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項8記載のオーディオ用インシュレータ。
  11. 前記音響素材のX軸方向剛性KX、及び、Y軸方向剛性KYは、Z軸方向剛性KZと同オーダーの値であることを特徴とする請求項10記載のオーディオ用インシュレータ。
  12. オーディオ機器に取り付けられるスパイク支持部と、前記スパイク支持部から床面側へと突出するスパイク円錐部と、床面に設けられ、スパイク円錐部の先端を受けるスパイク受け部で構成されるスパイク方式インシュレータにおいて、オーディオ機器の荷重を支持する前記スパイク支持部からスパイク円錐部に至る振動伝播経路ΦZから分岐した振動伝播経路ΦRを有し、かつこの振動伝播経路ΦRは前記スパイク円錐部、もしくは、このスパイク円錐部の上部を収納する概略筒型形状部材で構成されることを特徴とするオーディオ用インシュレータ。
  13. 前記スパイク受け部はZ軸方向に延びており、当該スパイク受け部はX軸とY軸とZ軸の3軸方向に加わる変動荷重によって、3軸方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項12記載のオーディオ用インシュレータ。
  14. 音響素材と、前記音響素材の上側に設けられる風鈴部材と、前記音響素材の下側に設けられる下部支持部材と、を具備し、前記音響素材を前記風鈴部材と前記下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータであって、
    前記風鈴部材は、内部に前記音響素材が収容される空間を有する筒型形状に形成されており、その上端部がオーディオ機器側に設けられ、その下端部が大気解放端である自由端となるように設けられるものであり、
    前記風鈴部材単体の中央部を固定して、前記風鈴部材単体にインパルス加振を与えたとき、前記風鈴部材近傍に配置された集音マイクから得られる音圧波形の包絡線は、局所的に起伏する波形であるうなりが相乗されていることを特徴とするオーディオ用インシュレータ。
  15. 音響素材と、前記音響素材の上側に設けられる風鈴部材と、前記音響素材の下側に設けられる下部支持部材と、を具備し、前記音響素材を前記風鈴部材と前記下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータであって、
    前記風鈴部材は、内部に前記音響素材が収容される空間を有する筒型形状に形成されており、その上端部がオーディオ機器側に設けられ、その下端部が大気解放端である自由端となるように設けられるものであり、
    前記風鈴部材を加振させたときの振動が減衰するまでの余韻の長さ、及び、減衰曲線に含まれるうなり、及び、前記風鈴部材の有する高周波領域における共振モードの風鈴特性を基に、音楽ジャンル、又は、オーディオ機器の特性に合せたインシュレータの特性が設定されていることを特徴とするオーディオ用インシュレータ。
  16. 風鈴部材の余韻が長い場合をクラシック音楽用、風鈴部材の余韻が短い場合をジャズ音楽用に分けて、前記インシュレータの特性を設定することを特徴とする請求項15記載のオーディオ用インシュレータの評価方法。
  17. 音響素材と、前記音響素材の上側に設けられる風鈴部材と、前記音響素材の下側に設けられる下部支持部材と、を具備し、前記音響素材を前記風鈴部材と前記下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータの評価方法であって、
    前記風鈴部材は、内部に前記音響素材が収容される空間を有する筒型形状に形成されており、その上端部がオーディオ機器側に設けられ、その下端部が大気解放端である自由端となるように設けられるものであり、
    この風鈴部材単体の音の周波数応答特性、及び、又は振動減衰特性からオーディオ用インシュレータ全体の振動伝達特性を推定したことを特徴とするオーディオ用インシュレータの評価方法。
  18. 概略中央部が設置面に固定された風鈴部材単体と、この風鈴部材近傍に配置された集音マイクと、前記風鈴部材単体をインパルス加振したとき、前記集音マイクから得られる音圧信号を基に、風鈴部材単体の振動減衰特性、周波数応答特性を求めることを特徴とする請求項17記載のオーディオ用インシュレータの評価方法。
  19. 音響素材と、前記音響素材の上側に設けられる風鈴部材と、前記音響素材の下側に設けられる下部支持部材と、を具備し、前記音響素材を前記風鈴部材と前記下部支持部材で挟持するように構成されるオーディオ用インシュレータであって、
    前記風鈴部材は、内部に前記音響素材が収容される空間を有する筒型形状に形成されており、その上端部がオーディオ機器側に設けられ、その下端部が大気解放端である自由端となるように設けられるものであり、
    この風鈴部材単体の中央部を固定した状態で、前記風鈴部材単体にインパルス加振を与えて、前記風鈴部材近傍に配置された集音マイクから得られる前記風鈴部材単体が有する複数の共振周波数の中で、最も低周波で、最も余韻の長い基音の周波数をf1としたとき、前記f1の値をf1>1500Hzに設定したことを特徴とするオーディオ用インシュレータ。
  20. 錫が含まれた銅合金で風鈴部材を構成し、錫の含有率によりインシュレータの音響特性を設定することを特徴とする請求項15記載のオーディオ用インシュレータ。
  21. 請求項7で構成されるオーディオ用インシュレータの風鈴部材を加振させて得られる風鈴特性を基に、音楽ジャンル、又は、オーディオ機器の特性、又は、リスナーの好みに合せたインシュレータの特性を設定することを特徴とするオーディオ用インシュレータ。
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