JP2012167314A - 金属ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集の少ない金属ナノ粒子を、高価な装置や複雑な操作を必要とすることなく製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】本発明の金属ナノ粒子の製造方法は流通方式によるものである。この製造方法は、金属源化合物と親水性有機溶媒と該金属源化合物に対して配位可能な有機化合物とを含む第1原料液と、親水性有機溶媒を含む第2原料液とを混合し、最終原料液を調製すること;および、最終原料液を加熱および加圧して親水性有機溶媒を超臨界状態として、ソルボサーマル法に供すること;を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属ナノ粒子の製造方法に関する。
金属系(例えば、金属酸化物)微粒子は、例えば、磁性体、蛍光体、導電体、透明電極等の様々な分野で用いられている。微粒子の中でも粒径がナノメートルサイズのいわゆるナノ粒子、特に粒径が10nm以下のナノ粒子は、量子効果が発現すると考えられている。このようなナノ粒子は、既存の微粒子で得られる種々の性能、特徴および効果を、大きく変革することが期待されている。ナノ粒子として優れた特性を得るために、粒径が小さく、かつ、粒径分布が均一なナノ粒子が求められている。
金属酸化物ナノ粒子の製造方法としていくつかの技術が提案されており、中でも、製造効率に優れる方法として、流通方式による製造方法が検討されている。流通方式による製造方法としては、超臨界状態の高温高圧水を用いる水熱合成法が知られている(特許文献1および2)。しかし、このような水熱合成法は、反応が高温である、原料液を冷却する必要がある、反応場のpHを制御する必要がある、等の種々の制約がある。
水熱合成法とは別の金属酸化物ナノ粒子の製造方法として、ソルボサーマル法が知られている。ソルボサーマル法は、水熱合成法に比べて反応速度が遅いので、金属酸化物ナノ粒子の製造方法として工業的に利用するためには反応速度を上げる必要がある。しかし、反応速度を大きくしようとすると(例えば、反応系に水を加えると)、反応の制御が困難であるという問題がある。その結果、流通方式の反応装置において流路に詰まりが生じたり、所望でない反応により原料液に沈殿が生じたりするという問題がある。
特開2010−69474号公報 特許第3663408号
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集の少ない金属ナノ粒子を、高価な装置や複雑な操作を必要とすることなく製造し得る方法を提供することにある。
本発明の金属ナノ粒子の製造方法は、流通方式によるものである。この製造方法は、金属源化合物と親水性有機溶媒と該金属源化合物に対して配位可能な有機化合物とを含む第1原料液と、親水性有機溶媒を含む第2原料液とを混合し、最終原料液を調製すること;および、該最終原料液を加熱および加圧して該親水性有機溶媒を超臨界状態として、ソルボサーマル法に供すること;を含む。
好ましい実施形態においては、上記最終原料液の調製から5分以内に該最終原料液の加熱および加圧が開始される。
好ましい実施形態においては、上記第1原料液中の上記金属源化合物濃度は2重量%以下である。
好ましい実施形態においては、上記第2原料液は、上記金属源化合物に対して配位可能な有機化合物をさらに含有する。
好ましい実施形態においては、上記最終原料液は、上記金属源化合物に対してモル比で10倍以上の上記有機化合物を含有する。
好ましい実施形態においては、上記加熱時の昇温速度は800℃/秒以上である。
好ましい実施形態においては、上記ソルボサーマル法における反応温度は200℃〜400℃であり、反応時間は30秒〜30分である。
好ましい実施形態においては、上記親水性有機溶媒はアルコールである。
好ましい実施形態においては、上記第2原料液は酸性化合物をさらに含有する。
本発明の製造方法によれば、流通方式のソルボサーマル法を採用し、さらに、2つの原料液を混合してから反応させることにより、粒径が小さく、粒径分布が均一で、凝集が少なく、かつ、晶癖が明確な金属ナノ粒子を、高価な装置や複雑な操作を用いることなく得ることができる。
本発明の好ましい実施形態による金属ナノ粒子の製造方法に用いられる、流通式反応装置の模式図である。 実施例1で得られた酸化チタンナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。 比較例1で得られた酸化チタン粒子のTEM画像である。 実施例2で得られたリン酸マンガンリチウムナノ粒子のTEM画像である。 比較例4で得られたリン酸マンガンリチウム粒子のTEM画像である。
本発明の金属ナノ粒子の製造方法は、流通方式を採用する。図1は、本発明の好ましい実施形態による金属ナノ粒子の製造方法に用いられる、流通式反応装置の模式図である。以下、このような装置を用いた本発明の金属ナノ粒子の製造方法の一例を説明する。
<混合工程>
まず、第1原料液供給部11に第1原料液M1が準備され、第2原料液供給部12に第1原料液M2が準備される。第1原料液M1は、任意の適切な手段(例えば、プランジャーポンプ)により第1原料液供給路13から混合部15に送られる。第2原料液M2は、任意の適切な手段(例えば、プランジャーポンプ)により第2原料液供給路14から混合部15に送られる。混合部15およびそれに続く拡散混合部16において、第1原料液M1と第2原料液M2とが混合されて、最終原料液FMが調製される。
第1原料液M1は、金属源化合物と親水性有機溶媒と当該金属源化合物に対して配位可能な有機化合物とを含む。金属源化合物としては、所望の金属ナノ粒子が得られる限り任意の適切な化合物を用いることができる。金属源化合物の具体例としては、金属アセテート、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属カルボニル化合物、金属塩(例えば、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩、金属酢酸塩)、β−ジケトン金属錯体、金属アミン錯体、金属アセトン錯体、金属アセチルアセトナートが挙げられる。金属源化合物に含まれる金属元素としては、例えば、周期律表の1A族から4B族の金属、およびランタノイドの金属が挙げられる。金属元素の具体例としては、Li、Ba、Sr、Y、Ti、Zr、Ce、Mn、Co、Hf、Zn、Al、In、Si、Snが挙げられる。金属源化合物には2種以上の金属元素が含まれていてもよい。
第1原料液中の金属源化合物の含有量は、好ましくは2重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以下であり、特に好ましくは0.25重量%以下である。含有量がこのような範囲であれば、粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集の少ない金属ナノ粒子を得ることができる。さらに、供給路における詰まりを良好に防止することができる。金属源化合物の含有量の下限は、好ましくは0.01重量%である。含有量が当該下限値より低いと、金属ナノ粒子が形成されない場合がある。
親水性溶媒としては、所望の金属ナノ粒子が得られる限り任意の適切な親水性溶媒を用いることができる。親水性溶媒の代表例としては、アルコールが挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−エトキシメタノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘプタノール、ベンジルアルコールが挙げられる。沸点が100℃以下であるアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)が好ましい。得られる金属ナノ粒子分散液の濃縮時の環境負荷が低く、かつ、蒸留などによる回収が容易であるからである。
上記金属源化合物に対して配位可能な有機化合物(以下、配位有機化合物とも称する)は、以下のような機能を有する:(1)第1原料液M1中での金属源化合物を安定化し、(2)高温、高圧下での反応場において生成する核を安定化することにより、粒子径の増大や粒子同士の凝集などを防止し、および、(3)生成するナノ粒子の表面を有機修飾することを可能にする。配位有機化合物の代表例としては、グリコール誘導体、エタノールアミン類、β−ジケトン類、カルボン酸およびα−ヒドロキカルボン酸類、α−ヒドロキシカルボニル誘導体が挙げられる。具体的には、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ジエタノールアミン、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、酢酸、乳酸、アセトインなどが好適に用いられる。なお、配位有機化合物は、第1原料液のみに含まれていてもよく、第1原料液および後述の第2原料液の両方に含まれていてもよい。配位有機化合物の含有量は、後述の最終原料液において、金属源化合物に対するモル比で好ましくは10倍以上であり、さらに好ましくは50倍以上である。このような含有量であれば、上記の効果がさらに顕著となる。
第1原料液M1は、水を含まないことが好ましい。水を含まないことにより、例えば金属源化合物が金属アルコキシドのような加水分解性を有する化合物である場合には、原料液中での反応を防止することができる。その結果、所望の粒径および粒径分布を有するナノ粒子を得ることができ、かつ、原料液中での反応進行を原因とした詰まりの発生などを防止することができる。
第2原料液M2は、親水性有機溶媒を含む。親水性溶媒の具体例は、第1原料液に関して記載したとおりである。第2原料液に含まれる親水性溶媒は、第1原料液に含まれる親水性溶媒と同一であってもよく、異なっていてもよい。
第2原料液M2は、好ましくは水を含む。水を含有することにより、以下の効果が得られ得る:すなわち、後述の反応工程において親水性有機溶媒が超臨界状態となると、親水性有機溶媒は非極性となり、水相(金属源化合物と親水性有機溶媒と配位有機化合物と用いられる場合には酸性化合物とを含む;以下、反応相とも称する)と親水性有機溶媒とが分離する。したがって、上記反応相は、親水性有機溶媒相に分散した液滴となり、当該液滴中に金属源化合物(および、用いる場合には酸性化合物)が取り込まれる。液滴中で反応が進行することにより、粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集の少ない金属ナノ粒子が得られる。
第2原料液M2は、好ましくは、酸性化合物をさらに含有する。当該酸性化合物は、代表的には、金属ナノ粒子の非金属原料および/または触媒であり得る。酸性化合物の具体例としては、塩酸、リン酸が挙げられる。酸性化合物を第2原料液に含有することにより(すなわち、金属源化合物と別個に供給することにより)、第1原料液の安定性を顕著に向上させることができる。その結果、所望の粒径および粒径分布を有する金属ナノ粒子を得ることができる。第2原料液中の酸性化合物の含有量は、目的とする金属ナノ粒子の組成、第1原料液中の金属源化合物量、第1原料液M1と第2原料液M2との供給量の比などに応じて決定され得る。また、配位有機化合物が第2原料液に含有される場合には、第2原料液中の配位有機化合物の含有量は、酸性化合物に対するモル比で好ましくは10倍以上であり、さらに好ましくは50倍以上である。
混合部15への第1原料液M1の供給量(供給路13における送液量)と第2原料液M2の供給量(供給路14における送液量)との比は、目的や得られるナノ粒子の所望の特性に応じて適切に設定され得る。本発明においては、流通方式を採用する水熱合成法と異なり、混合部15およびそれに続く拡散混合部16のサイズや形状に関する制約がないことが特徴の1つである。例えば、混合部15には、内径が好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上の一般的なT字型混合器を用いることができ、拡散混合部16には、内径が好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上の金属チューブを用いることができる。本発明によれば、このような一般的な混合器を用いても、粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集の少ない金属ナノ粒子を工業的に十分に利用可能な生産性で得ることができる。
以上のようにして、混合部15およびそれに続く拡散混合部16において、最終原料液FMが調製される。
<反応工程>
上記で調製された最終原料液FMは、反応部21に送られてソルボサーマル法に供される。反応部21においては、最終原料液が加熱および加圧されて最終原料液中の親水性有機溶媒が超臨界状態とされる。このことにより、上記のとおり、当該親水性有機溶媒は非極性となり、反応相と親水性有機溶媒とが分離する。したがって、反応相は、親水性有機溶媒相に分散した液滴となり、当該液滴中に金属源化合物(およびその核、ならびに、用いられる場合には酸性化合物)が取り込まれる。液滴中で反応が進行することにより、粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集の少ない金属ナノ粒子が得られる。本発明によれば、上記の特定の2つの原料液(すなわち、第1原料液および第2原料液)を用いてソルボサーマル法を行うことにより、工業的に十分な反応速度で、かつ、反応系や反応装置に特別・精密な制御を行うことなく、粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集の少ない金属ナノ粒子を得ることができる。以下、反応工程の詳細を説明する。
上記で調製された最終原料液FMは、調製から好ましくは5分以内に、さらに好ましくは1分以内に、特に好ましくは30秒以内に反応部21に送られて加熱および加圧に供される。このように最終原料液の調製から短時間で加熱および加圧を開始することにより、最終原料液中の成分同士の所望でない反応を抑制することができ、結果として、粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集の少ない金属ナノ粒子を得ることができる。一方、最終原料液の調製から加熱および加圧開始までの時間は、好ましくは3秒以上である。当該時間が短すぎると、親水性有機溶媒相に反応相の液滴を良好に形成できない場合があり、結果として、所望の金属ナノ粒子を形成できない場合がある。仮に反応相の液滴を良好に形成できる場合であっても、混合部15自体の形状および混合部15から反応部21への供給路の形状等の設計が非常に複雑となり、装置のコストが増大する場合が多い。さらに、このような複雑な装置は圧力損失が大きくなる場合が多く、大量生産に適さない場合が多い。最終原料液の調製から加熱および加圧開始までの時間は、混合部15から反応部21への供給路の長さ、ならびに、反応部21への最終原料液の供給速度を調整することにより制御することができる。
反応部21に送られた最終原料液は、上記のとおり、加熱および加圧されて最終原料液中の親水性有機溶媒が超臨界状態とされる。加熱時の昇温速度は、好ましくは800℃/秒以上であり、より好ましくは800℃/秒〜900℃/秒であり、さらに好ましくは800℃/秒〜850℃/秒である。このような非常に急速な加熱を行うことにより、昇温途中に反応による粒子の析出を伴うことなく、親水性有機溶媒を超臨界状態へと相変化させることが可能となり、親水性溶媒中に反応相が良好に分散した状態を達成し得る。また、反応相中に金属源化合物が急速に濃縮されるとともに、急速に反応が進行し、その結果反応物は高い過飽和状態を経由して析出することになり、所望の金属ナノ粒子を得ることが可能になる。加熱は、任意の適切な方式で行うことができる。このような急速な加熱は、例えば、流通式反応装置の微細化(例えば、流路の内径を好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下とすること)により実現することができる。
ソルボサーマル法における反応温度は、好ましくは200℃〜400℃であり、さらに好ましくは250℃〜350℃である。反応時の圧力は、好ましくは5MPa〜20MPaであり、さらに好ましくは6MPa〜15MPaである。本発明におけるソルボサーマル法によれば、水熱合成法に比べて低い温度およびマイルドな圧力で反応を進めることができる。加圧は、任意の適切な方式(例えば、背圧弁、圧力調節機能を有するシステム)を流通方式の連続式反応装置後方に組み込むことにより、行うことができる。本発明におけるソルボサーマル法の反応時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは30秒以上、特に好ましくは1分以上である。一方、反応時間の上限は、好ましくは30分、より好ましくは10分、さらに好ましくは5分である。反応時間は、反応部の流路長さおよび反応部における送液速度を調整することにより制御することができる。
本発明におけるソルボサーマル法においては、上記のとおり、超臨界状態となった最終原料液中の親水性有機溶媒は非極性となり、反応相と親水性有機溶媒とが分離する。その結果、反応相は、親水性有機溶媒相に分散した液滴となり、当該液滴中に金属源化合物(および、用いられる場合には酸性化合物)が取り込まれる。液滴中で反応(代表的には、金属源化合物の加水分解および脱水反応)が進行することにより、金属ナノ粒子31が得られる。本発明の製造方法によれば、粒径が小さく、粒径分布が均一で、かつ、凝集が少なく、加えて、晶癖が明確な金属ナノ粒子が得られ得る。
得られる金属ナノ粒子31の組成は、用いられる金属源化合物(および、用いられる場合には酸性化合物)に依存する。金属ナノ粒子としては、金属酸化物ナノ粒子、遷移金属複合酸化物ナノ粒子、金属塩ナノ粒子が挙げられる。原料の入手容易性等を考慮すると、多くの場合、金属酸化物ナノ粒子または金属塩ナノ粒子が得られ、特に金属酸化物ナノ粒子が得られ得る。金属ナノ粒子には、2種以上の金属元素が含まれていてもよい。例えば、金属源化合物として金属アルコキシドを用い、酸性化合物を用いない場合には、金属アルコキシドの加水分解および脱水により、金属酸化物ナノ粒子が得られる。より具体的には、金属源化合物としてチタンプロポキシドを用い、酸性化合物を用いない場合には、酸化チタンナノ粒子が得られる。また例えば、金属源化合物として水酸化リチウムとアセチルアセトンマンガンとを用い、酸性化合物としてリン酸を用いる場合には、リン酸マンガンリチウムのナノ粒子が得られる。
得られるナノ粒子の形状は特に限定されない。代表例としては、球状、楕円球状、棒状、円柱状、直方体、不定形が挙げられる。
得られるナノ粒子の粒子サイズは、代表的には粒径(平均1次粒子径)を指標とする。得られるナノ粒子の平均1次粒子径は、好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、特に好ましくは20nm以下である。平均1次粒子径の下限は、好ましくは5nmである。上記のような超臨界状態の親水性溶媒を利用した反応相の液滴中での反応により、このような平均1次粒子径を有するナノ粒子を良好に得ることができる。また、このような平均1次粒子径を有するナノ粒子は、反応系での詰まりを防止できるという点でも好ましい。ナノ粒子の粒子サイズは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、吸着法、光散乱、小角X線散乱により測定することができる。なお、球状以外の形状を有するナノ粒子の粒子サイズをTEMで決定する場合には、短軸方向の長さと長軸方向の長さとの平均を粒子サイズとする。
金属ナノ粒子31は、親水性有機溶媒を分散媒とする分散液の形態で得られる。金属ナノ粒子は、そのまま分散液の形態として保存および/または使用してもよく、親水性有機溶媒(分散媒)を除去して粉体として保存および/または使用してもよい。
本発明の金属ナノ粒子の製造方法においては、流通式反応装置としては、好ましくは微細化された装置が採用され得る。具体的には、第1原料液供給路13、第2原料液供給路14、混合部15および拡散混合部16の流路、ならびに反応部21の流路の内径がいずれも、好ましくは5mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下であり、特に好ましくは1mm以下である。混合部および拡散混合部の流路ならびに反応部の流路の内径がこのような範囲であることがとりわけ好ましい。流通式反応装置の流路の内径がこのような範囲であれば、(1)反応部において急速な昇温が可能となり;(2)反応部を流れる液が層流となるので、反応時間の制御が容易であり;および、(3)混合部および拡散混合部において第1原料液と第2原料液との迅速な混合が可能となる。加えて、このような微細化された装置を用いることにより、以下のメカニズムによって、粒径が小さく、かつ、粒径分布が小さい金属ナノ粒子が得られ得る:すなわち、親水性溶媒が超臨界状態に相変化するに伴い、親水性溶媒に溶解していた物質(代表的には、金属源化合物、酸性化合物)が反応し、核の生成、結晶化、結晶成長を通じ、最終的に金属ナノ粒子が形成される。このような金属ナノ粒子の大きさは、初期に生成する結晶核の数および大きさに依存しており、これらは、析出および結晶化の際の過飽和度に依存する。反応開始時の昇温速度が遅いと、過飽和度が低い状態から析出および結晶化が起こり、結果として、粒径も粒径分布も大きくなってしまう。一方、反応開始時の昇温速度が速いと、瞬時に過飽和度の高い状態とすることが可能であり、結果として、粒径も粒径分布も小さくすることができる。より詳細には、急速な昇温で過飽和度の高い状態を経由すると、初期の核形成時の核の数が多くなり、かつ、液中の残存原料が急速に少なくなる。その結果、生成した核表面に原料が析出して粒子が成長したとしても、析出する原料の量がそもそも少なく、かつ、核の数が多いので、最終的に得られる粒子の径は小さくなる。一方、過飽和度が低い状態で核が形成した場合、新たな核が形成されるよりも、既存の核表面へと析出する方が、熱力学的に有利であり、結果として粒子が大きく成長してしまう傾向にある。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
〔実施例1〕
図1に示すような2ライン送液の流通式反応装置を用いた。この装置のすべての流路の内径は1mmであった。第1原料液(エタノール309.6部、1,4−ブタンジオール9.24部およびチタンイソプロポキシド1.64部の混合液、チタンイソプロポキシド(金属源化合物)濃度:0.5重量%)と、第2原料液(エタノール310.8部および水6.12部の混合液、水分濃度:1.9重量%)とを、それぞれプランジャーポンプにて送液し(いずれも0.5mL/minの流速)、混合部で混合して最終原料液を調製した。流路長さを調節して、最終原料液の混合部における流通時間が30秒となるようにした。混合部を通過した原料液を反応部に供給し、830℃/秒の昇温速度で340℃まで加熱し、かつ、背圧弁により20MPaまで加圧した。この温度および圧力で、かつ、3分間の反応時間で反応に供した。反応時間もまた、流路長さを調節して制御した。このような流通式の反応を8時間連続的に行った。装置から回収した液は青みがかった透明な液体であった。この回収液について、遠心分離、メタノールによる洗浄、およびアセトンによる洗浄をそれぞれ3回繰り返し、乾燥することにより、白色の粉末を得た。得られた粉末についてXRD分析(2θ:10〜70°)を行った結果、アナターゼ型の酸化チタンであることを確認した。さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った結果、得られた酸化チタンは、粒子サイズが5nm〜12nm程度であり、晶癖の明確な直方体状のナノ粒子であり、二次凝集することなく単一な粒子として存在していた(図2)。
〔比較例1〕
バッチ式を採用して金属ナノ粒子を作成した。ガラス容器に70mLの1,4−ブタンジオールを入れ、これにチタンイソプロポキシド12.66gを加えて攪拌し、均一な透明溶液とした。得られた溶液をオートクレーブ内にセットし、密閉し、系内をアルゴン/窒素置換した後、300℃まで2時間で昇温し、その後300℃で2時間保持したのち放冷した。オートクレーブを開けたところ、試験管内には白色の上澄み液と白色の析出物が認められた。得られた上澄み液および析出物のスラリーについて、遠心分離、メタノールによる洗浄、およびアセトンによる洗浄をそれぞれ3回繰り返し、乾燥することにより、白色の粉末を得た。得られた粉末についてXRD分析(2θ:10〜70°)を行った結果、アナターゼ型の酸化チタンであることを確認した。さらに、TEM観察を行った結果、得られた酸化チタンは、粒子サイズが5nm〜20nm程度であり、晶癖の不明確な粒子であり、二次凝集によりサイズが数100nmとなっている粒子も多数認められた(図3)。
〔比較例2〕
1ライン送液の流通式反応装置を用いた。具体的には、原料液(エタノール580.8部、1,4−ブタンジオール9.24部およびチタンイソプロポキシド1.64部の混合液、水分濃度:0重量%)をプランジャーポンプにて送液し(1mL/minの流速)、反応部に供給した。流路長さを調節して、原料液の調製から反応部にいたるまでの送液時間(流通時間)が30秒となるようにした。反応部においては830℃/秒の昇温速度で340℃まで加熱し、かつ、背圧弁により20MPaまで加圧した。この温度および圧力で、かつ、3分間の反応時間で反応に供した。反応時間もまた、流路長さを調節して制御した。このような流通式の反応を8時間連続的に行った。装置から回収した液は透明な液体であった。この回収液について遠心分離を行ったが、粒子は得られなかった。回収液に水を添加したところ、白濁した。これにより、反応が進行していないことを確認した。
〔比較例3〕
原料液の組成を以下に変更したこと以外は比較例2と同様にして原料液を流通させた:エタノール580.8部、1,4―ブタンジオール9.24部、チタンイソプロポキシド1.64部および水6.12部の混合液、水分濃度:1.03重量%。流通開始後30分より、原料液がうっすらと乳白色に変色し、原料液中での反応が進行していることが認められた。さらに、それから約10分後に流路内に詰まりが生じ、連続送液が不可能となった。
〔参考例1〕
実施例1と同様の第1原料液および第2原料液をT字型ミキサーで混合し、30秒後に実施例1と同様の装置の反応部に流入させ、10秒の反応時間で反応に供した。以下の手順は実施例1と同様に行った。装置から回収した液は透明な液体であった。この回収液について遠心分離を行ったが、粒子は得られなかった。回収液に水を添加したところ、白濁した。これにより、反応が進行していないことを確認した。
〔実施例2〕
実施例1と同様の装置および条件で以下の第1原料液および第2原料液を流通させた。最終原料液におけるアセトアセチルマンガン(II)・二水和物、水酸化リチウムおよびリン酸の合計濃度は0.098重量%であった。
第1原料液:エタノール400部、1,4−ブタンジオール6.09部、
アセトアセチルマンガン(II)・二水和物0.506部、および
水酸化リチウム0.084部
第2原料液:エタノール409部、1,4−ブタンジオール1.0部、および
リン酸0.206部
装置からの回収液について、遠心分離、メタノールによる洗浄、およびアセトンによる洗浄をそれぞれ3回繰り返し、乾燥することにより、白色の粉末を得た。得られた粉末についてXRD分析(2θ:10〜70°)を行った結果、リン酸マンガンリチウムの生成を確認した。さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った結果、得られたリン酸マンガンリチウムは、粒子サイズが12nm〜60nm程度であり、二次凝集することなく単一な粒子として存在していた(図4)。
〔比較例4〕
バッチ式を採用して金属ナノ粒子を作成した。ガラス容器に70mLの1,4−ブタンジオールを入れ、これにアセトアセチルマンガン(II)・二水和物5.04g、水酸化リチウム0.84g、およびリン酸2.01gを加えて攪拌し、均一な透明溶液とした。得られた溶液をオートクレーブ内にセットし、密閉し、系内をアルゴン/窒素置換した後、300℃まで2時間で昇温し、その後300℃で3時間保持したのち放冷した。オートクレーブを開けたところ、試験管内には白色の上澄み液と白色の析出物が認められた。得られた上澄み液および析出物のスラリーについて、遠心分離、メタノールによる洗浄、およびアセトンによる洗浄をそれぞれ3回繰り返し、乾燥することにより、白色の粉末を得た。得られた粉末についてXRD分析(2θ:10〜70°)を行った結果、リン酸マンガンリチウムの生成を確認した。さらに、TEM観察を行った結果、得られたリン酸マンガンリチウムは、粒子サイズが85nm〜1260nm程度と非常に大きなものであった(図5)。
〔比較例5〕
1ライン送液の流通式反応装置を用い、実施例2の最終原料液の組成と同じ組成を有する原料液を調製したところ、徐々に沈殿が生じてしまい、送液が不可能であった。
〔参考例2〕
実施例2と同様の第1原料液および第2原料液をT字型ミキサーで混合し、30秒後に実施例1と同様の装置の反応部に流入させ、10秒の反応時間で反応に供した。以下の手順は実施例2と同様に行った。装置からの回収液から得られた粉末についてXRD分析(2θ:10〜70°)を行った結果、完全にアモルファスであり、リン酸マンガンリチウムのピークは確認されなかった。
〔評価〕
上記のとおり、2ラインの流通方式を採用した実施例1によれば、粒径が小さく、粒径分布が均一で、凝集がなく、かつ、晶癖が明確な金属ナノ粒子を、高価な装置や複雑な操作を用いることなく得ることができた。実施例2においても、粒径が小さく、かつ、粒径分布が均一な金属ナノ粒子を、高価な装置や複雑な操作を用いることなく得ることができた。一方、バッチ方式を採用した比較例1によれば、粒子サイズが大きく、晶癖が不明確な粒子しか得られず、しかも、その多くが凝集した。比較例4においては、粗大な粒子しか得られなかった。さらに、1ラインの流通方式を採用した比較例2、3および5では、金属源化合物の濃度が実施例と同等であるにもかかわらず、流路中の詰まり、原料液における沈殿生成などの問題が生じた。
本発明の製造方法で得られる金属ナノ粒子は、絶縁体材料、半導体材料、イオン伝導体材料、熱伝導体材料、導電体(電子伝導体)材料、光吸収体材料、発光体材料、蛍光体材料、(光)磁気記録材料、非線形光学材料、強誘電体材料、光電変換材料、熱電変換材料等の各種機能性材料として、または、当該機能性材料の原料として好適に使用することができる。

Claims (9)

  1. 流通方式による金属ナノ粒子の製造方法であって、
    金属源化合物と親水性有機溶媒と該金属源化合物に対して配位可能な有機化合物とを含む第1原料液と、親水性有機溶媒を含む第2原料液とを混合し、最終原料液を調製すること;および、
    該最終原料液を加熱および加圧して該親水性有機溶媒を超臨界状態として、ソルボサーマル法に供すること;
    を含む、金属ナノ粒子の製造方法。
  2. 前記最終原料液の調製から5分以内に該最終原料液の加熱および加圧が開始される、請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
  3. 前記第1原料液中の前記金属源化合物濃度が2重量%以下である、請求項1または2に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
  4. 前記第2原料液が、前記金属源化合物に対して配位可能な有機化合物をさらに含有する、請求項1から3のいずれかに記載の金属ナノ粒子の製造方法。
  5. 前記最終原料液が、前記金属源化合物に対してモル比で10倍以上の前記有機化合物を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の金属ナノ粒子の製造方法。
  6. 前記加熱時の昇温速度が800℃/秒以上である、請求項1から5のいずれかに記載の金属ナノ粒子の製造方法。
  7. 前記ソルボサーマル法における反応温度が200℃〜400℃であり、反応時間が30秒〜30分である、請求項1から6のいずれかに記載の金属ナノ粒子の製造方法。
  8. 前記親水性有機溶媒がアルコールである、請求項1から7のいずれかに記載の金属ナノ粒子の製造方法。
  9. 前記第2原料液が酸性化合物をさらに含有する、請求項1から8のいずれかに記載の金属ナノ粒子の製造方法。
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