JP2010105904A - 粉体の合成方法及び電子部品の製造方法 - Google Patents

粉体の合成方法及び電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反応容器等の腐食や、腐食による生成物中への不純物の混入を低減させたり、反応容器等の材質の選択肢を広げることができる粉体の合成方法を提供する。
【解決手段】水と、水単独の場合よりも低い温度及び低い圧力で超臨界状態になる溶媒との混合溶媒を用いて、加熱及び加圧の少なくとも一方により亜臨界または超臨界状態の反応環境を生成し、生成された亜臨界または超臨界状態の反応環境を反応場として粉体原料を該反応場に所定時間滞在させて粉体微粒子を生成することで、水単独の場合よりも、亜臨界または超臨界状態とするための臨界条件を緩和できるようにした。
【選択図】 図1−1

Description

本発明は、金属酸化物の粉体を製造するための粉体の合成及び電子部品の製造技術の分野に属し、特に、コンデンサやPTC素子などの電子部品を製造するために用いられる誘電材料、圧電材料、半導体などの電子材料となるチタン酸バリウム微粒子を製造するための粉体の合成方法及び電子部品の製造方法に関するものである。
従来より、正方晶チタン酸バリウム(BaTiO)は、非常に高い比誘電率を有することから、積層セラミックコンデンサへ適用することにより、誘電体層の厚さを数μm程度に抑えることが可能となり、コンデンサを小型・大容量化し得ることが知られている。そして、コンデンサの小型化に伴い、誘電体層の厚みも益々薄層化されていく傾向にあり、このため、誘電体層に使用される誘電体材料となるチタン酸バリウム粉末をナノ粒子としてnmオーダに微粒子化する各種提案がなされている。
このようなチタン酸バリウム微粒子の製造方法としては、固相反応法、シュウ酸法、ゾルゲル法等の各種方式が提案されている。また、温度と圧力は、化学反応の重要なパラメータであるが、反応温度を液体媒体の沸点以上に加熱し、システムの圧力を上昇させて大気圧より高くして、液相を反応させる液相反応がある。このような液相反応としては、水熱合成法、ソルボサーマル法(反応)、超臨界水熱法等がある。なお、反応温度を液体媒体の沸点以上に加熱し、システムの圧力を上昇させて大気圧より高くして、液相を反応させる液相反応において、水を使う場合は“水熱反応”と、他の有機溶剤を反応媒体としたら“ソルボサーマル反応”と呼ばれる。また、ソルボサーマル法は、数ナノ程度のナノ粒子を作製することはできるが、ナノ粒子の作製に数時間ないし数日間かかるケースが良く見られる。このため、効率よく、数十ナノ程度の微粒子を作製することが困難である。
これに対して、液体の臨界温度と臨界圧を越えた超臨界水熱法によれば、イオン反応速度が速く、ナノ粒子を作りやすく、大量生産向きの流通式製造プロセスにも適用可能であるという利点がある。超臨界水熱法は、チタン化合物水溶液とバリウム塩水溶液とを混合し、アルカリ水溶液を添加後、亜臨界または超臨界状態の水中にて水熱反応させることにより、30nm以下の立方晶または50nm以下の正方晶チタン酸バリウムのナノ粒子を製造するものである(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2003−261329号公報 特開2005−289737号公報
特許文献1、2等に示される従来の超臨界水熱法による場合、熱分解法等に比べると低温条件での処理が可能となるものの、依然として、水の臨界温度(374℃)を超える400℃以上といった高温条件を必要とするものである。加えて、亜臨界水または超臨界水状態を得るために、圧力としても、水の臨界圧力(22MPa)を超える30MPa以上といった高圧条件を必要とするものである。
この結果、反応容器や配管等の腐食や、腐食による目的とする生成物中への不純物の混入といった問題がある。すなわち、超臨界水の臨界温度及び臨界圧力以上の条件下で使用できる材質が少ない。使用可能な材質としてSUSや耐食性のハステロイ材質(商品名)等があるが、高温・高圧条件下では腐食を生じ、Fe、Cr、Niなどの不純物がチタン酸バリウムなどの目的とする生成物中に混入して品質を劣化させてしまうおそれがある。また、耐食性に優れるTiは、350℃以上の高温では強度が弱くなってしまうため、特許文献1、2等に示される従来の超臨界水熱法の反応容器、配管等の材質としては使用できない。
また、単純な水を用いた超臨界水熱法では、数nmから数10nmのサイズで、比表面積が数10M/g程度で非常に高いナノ粒子を合成することができるが、全体のギブス自由エネルギーが下がるため、粒子間の凝集が起こりやすいという問題もある。ナノ粒子が凝集してしまうと、粉体としての品質が低下してしまう。
また、完全に水を使わないソルボサーマル法では、溶剤の臨界温度と臨界圧力以上にしても、有機物に対する分解力は水ほど高くないため、微粒子を合成するために、超臨界水熱法に対して極めて長い反応時間が必要となる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応容器等の腐食や、腐食による生成物中への不純物の混入を低減させたり、反応容器等の材質の選択肢を広げたりすることができる粉体の合成方法及び電子部品の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、Fe、Cr、Niなどの不純物の含量が低く、具体的には、含有量が200ppm以下であり、高純度な原料として電子部品の製造に用いることができる粉体を生成する粉体の合成方法及びその粉体を用いた電子部品の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、高速で反応させ短時間で、高い分散性で凝集の少ない粒子(ナノ粒子)を合成することができる粉体の合成方法及びその粉体を用いた電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる粉体の合成方法は、水と、水単独の場合よりも低い温度及び低い圧力で超臨界状態になる溶媒との混合溶媒を用いて、加熱及び加圧の少なくとも一方により亜臨界または超臨界状態の反応環境を生成し、生成された亜臨界または超臨界状態の前記反応環境を反応場として粉体原料を該反応場に所定時間滞在させて粉体微粒子を生成することを特徴とする。
また、本発明にかかる粉体の合成方法は、上記発明において、前記溶媒は、超臨界状態で水と連続溶解できる有機溶媒を含むことが好ましい。
また、本発明にかかる電子部品の製造方法は、上記発明の粉体の合成方法により生成された粉体微粒子をスラリー化した電子材料を構成要素として含む電子部品を製造することを特徴とする。
本発明によれば、水と、水単独の場合よりも低い温度または低い圧力で超臨界状態になる溶媒との混合溶媒を用いて、混合溶媒の亜臨界または超臨界状態の反応環境を生成するようにしたので、亜臨界または超臨界状態とするための臨界温度及び/または臨界圧力を低くすることができ、よって、臨界条件の緩和により、反応容器等の腐食や、腐食による生成物中への不純物の混入を低減させたり、反応容器等の材質の選択肢を広げたりすることができるという効果を奏する。また、反応器表面に金メッキを施すことで、生成物に混入する不純物を低減することができる。また、混合溶媒のアルコールの比率を増やすことで、純水合成の非常に高い反応速度を大幅に抑制し、合成された粒子が溶媒によりブラン運動等によって速く拡散し、よりよい分散状態を得ることが可能となる。
図1−1は、本発明の概要を説明するための水とエタノール混合溶媒の臨界温度条件を示す特性図である。 図1−2は、本発明の概要を説明するための水とエタノール混合溶媒の臨界圧力条件を示す特性図である。 図2は、本発明の実施の形態1に適用される連続流通式製造装置を模式的に示す概略構成図である。 図3は、連続流通式製造装置を用いた本発明の実施の形態1のチタン酸バリウム製造方法を示す概略工程図である。 図4は、本発明の実施の形態2に適用されるバッチ式製造装置を模式的に示す概略構成図である。 図5は、バッチ式製造装置を用いた本発明の実施の形態2のチタン酸バリウム製造方法を示す概略工程図である。 図6は、合成した粉体の原子配列を観察した透過型電子顕微鏡像を模式的に示す説明図である。 図7は、本発明の実施の形態3が適用される積層セラミックコンデンサの構成例を示す断面図である。 図8−1は、サンプルAとして生成した粒子を撮影したSEM写真を模式的に示す説明図である。 図8−2は、サンプルBとして生成した粒子を撮影したSEM写真を模式的に示す説明図である。 図9−1は、図8−1に示す粉体の粒度分布の測定結果を示すグラフである。 図9−2は、図8−2に示す粉体の粒度分布の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明の粉体の合成方法及び電子部品の製造方法を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本発明は、実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
(本発明の概要)
本発明の粉体の合成方法は、水と、水単独の場合よりも低い温度及び低い圧力で超臨界状態になる溶媒との混合溶媒を用いて、加熱及び/または加圧により亜臨界または超臨界状態の反応環境を生成し、その反応環境で粉体を合成するようにしたものである。これにより、水単独の場合よりも、亜臨界または超臨界状態とするための臨界条件が緩和される。
このような溶媒として、純水よりも低い臨界温度・臨界圧力を有する極性有機溶媒がある。本発明に用いることができる極性有機溶媒としては、例えば、エタノール(約241℃、6MPa)、メタノール(約239℃、8MPa)、イソプロパノール(約235℃、4.8MPa)、メチルエーテル(127℃、5.3MPa)、アセトン(235℃、4.6MPa)がある。ここでは、溶媒としてエタノールを用いる場合を例に挙げて説明する。図1−1及び図1−2は、水とエタノールとを混合した混合溶媒の臨界条件を示す特性図である。なお、図1−1は、臨界温度とエタノール濃度との関係を示し、図1−2は、臨界圧力とエタノール濃度との関係を示す。また、図1−1及び図1−2には、後述する実施例の測定結果も示す。また、臨界条件は、文献「A. A. Abdurashidova, A. R. Bazaev, E. A. Bazaev and I. M. Abdulagatov、“The thermal properties of water-ethanol system in the near-critical and supercritical states”、High Temperature Vol.45 No.2, 2007, p178-186」(以下、参考文献1という。)に記載されている臨界条件を用いて算出した。まず、水単独の場合の臨界温度Twは、約374℃、臨界圧力Pwは、約22MPaである。一方、エタノール単独の場合、超臨界エタノールの分解力は超臨界水よりやや落ちるが、臨界温度Teは、約241℃、臨界圧力Peは、約6.1MPaであり、水の場合よりも低い臨界条件を有する。このような水とエタノールとを混合させた混合溶媒にあっては、エタノールの重量分率に応じて、図1−1及び図1−2に示すように、臨界温度Tmと臨界圧力Pmとが変化する。具体的には、水にエタノールを混合することで、水単独の場合よりも臨界温度及び臨界圧力が低下し、エタノールの重量分率が高くなるほど、臨界温度及び臨界圧力が低下する。
よって、混合溶媒の組成(水とエタノール)の比率調整によって、混合溶媒の臨界温度・臨界圧力を調整することで、反応速度、粒子成長速度、結晶性の制御、生成物粉の分散性の制御などを実現することができる。例えば、原料蓚酸バリウムチタニルを100%のエタノールに入れて、300℃、20MPaの超臨界状態で1時間以上保持しても、分解反応がほとんど起こらず、チタン酸バリウムBaTiOの合成ができなかった。一方、400℃、30MPaの超臨界水に入れると、1秒でもチタン酸バリウムを生成した。この特性により、水の比率を増やすことで、有機物の分解速度を高めることができ、チタン酸バリウム微粒子等を高速で生成することが可能となる。また、高温高圧水のイオン積[H][OH]は、200℃〜300℃の温度帯で最大値約10−11となり、水の分解能力も最大となるとともにイオン反応を促進することもできる。また、図1−1及び図1−2に示すように、エタノールのモル分率が約30%以上であれば、水とエタノールの混合溶媒が十分な分解力を持ちながら、約300℃以下、10MPa台の純水よりかなり低い臨界条件とすることができる。
また、エタノールの比率を増やせば、混合溶媒の臨界温度・臨界圧力を一層低下させることができ、分解速度や微粒子の生成速度を緩めることができ、取扱いが容易になることで操作性を向上させることが可能となる。また、臨界温度・臨界圧力を一層低下させ、温度、圧力条件の緩和することで、反応器での腐食の発生も低減できる。例えば、エタノールの比率の増加により、混合溶媒の臨界温度を374℃から260℃程度まで低下させ、臨界圧力を22MPaから6MPa〜7MPa程度まで低下させることができる。この結果、例えばSUSや耐食性のハステロイ材質などによるFe、Ni系材質の反応容器や配管を使った場合でも、その腐食性が弱まり、生成物に対する不純物含有量が低減する。あるいは、混合溶媒の臨界温度・臨界圧力が大幅に低下し、例えば臨界温度を300℃以下に下げることができるので、反応容器等の材質の選択肢が広がり、耐食性に優れたTiを用いることも可能となる。なお、エタノールの比率を増やしても、水は必ず含まれるように調整することが必要である。水を含まないと、分解力が低下する又はイオン反応速度が不足する恐れがあるからである。
すなわち、水とエタノールとの混合溶媒は、同じ温度・圧力であっても、単純な亜臨界水環境と同様の分解力を保持しながら、単一相の超臨界反応環境状態を提供することができるものである。よって、例えばチタン酸バリウムの製造に利用することで、均一性の高いチタン酸バリウムの形成に有利となり、事後に高温焼結しなくても高結晶性のチタン酸バリウムナノ粒子を製造することができる。
加えて、エタノールなどのアルコールは、水より微粒子に対する優れた分散力を有するので、原料及び生成物の分散に役立つ。例えば、超臨界水だけで合成したチタン酸バリウム微粒子の場合、一次粒子が数十nmであるが、凝集によってサブミクロン程度の塊状となった場合もある。これに対して、エタノールを添加した混合溶媒による超臨界状態の反応環境とすることで、塊状のチタン酸バリウム微粒子が消えて、ほとんど分散した数十nmのチタン酸バリウム微粒子に合成することができる。つまり、チタン酸バリウム微粒子の凝集の発生を抑制することができる。
水と混合する溶媒としては、エタノールに限らず、純水の場合よりも臨界温度・臨界圧力を下げることができ、水に可溶な有機溶剤であればよい。例えば、値段が安く毒性の低いアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、IPA(イソプロパノール)、ブタノールなど)や、アセトンなどのケトン類などを用いることができる。
このようにして生成される亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態による反応環境は、粉体、例えばチタン酸バリウム微粒子の合成方法に適用することができる。その一例として、例えば、特許文献1、2等に適用し、チタン化合物水溶液とバリウム塩水溶液とを混合し、アルカリ水溶液を添加後、亜臨界または超臨界状態の混合溶媒中にて混合溶媒によって熱合成させることにより、チタン酸バリウム微粒子を製造することができる。
さらには、特許文献1、2等への適用に限らず、新規なチタン酸バリウム微粒子の製造方法にも適用可能である。出発原料としては、複合金属錯体、塩化物、硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、水酸化物なども適用可能である。新規なチタン酸バリウム微粒子の製造方法は、概略的には、バリウムとチタンを含む複合金属錯体を出発原料として用い、混合溶媒による亜臨界または超臨界状態の反応環境中に複合金属錯体を供給し所定時間滞在させることでチタン酸バリウム微粒子を生成するものである。より詳細には、亜臨界または超臨界混合溶媒の分解力を利用することで複合金属錯体を完全に分解させるとともに、この混合溶媒による亜臨界または超臨界状態の反応環境を反応場とする超臨界混合溶媒の熱合成により、分解された複合金属錯体のイオンをnmオーダの小さい粒径で高い結晶性のチタン酸バリウム微粒子に結晶化させるものである。
このように、バリウムとチタンを含む複合金属錯体を出発原料として用いることで、溶媒に溶かす必要がなく、スラリーの状態で使用できるとともに特許文献1、2等のように溶解度による制約を受けることなく高い過飽和度を実現し、生成されるチタン酸バリウムのナノ化を実現できる。また、バリウムとチタンを含む粉末の複合金属錯体は、元々同じ分子中の近距離に1:1の比率でバリウムとチタンが存在するので、複合金属錯体の分解直後に等モル比で反応して結晶化することにより転化率の高いチタン酸バリウムの生成が可能となる。さらに、原料となる複合金属錯体は、亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態の反応環境で、分解処理と結晶化による合成処理との2段階の処理を連続的に受けるため、イオン状態で直接投入される場合のように、処理速度が速すぎることがなく、結晶性を高めるための反応時間を確保することができる。
ここで、出発原料となるバリウムとチタンを含む複合金属錯体としては、バリウムとチタンと含むカルボン酸塩(特に、カルボン酸バリウムチタニル)や、グリコール酸バリウムチタニルなどが挙げられる。カルボン酸バリウムチタニルの中でも、Ba:Ti=1:1のシュウ酸バリウムチタニル、クエン酸バリウムチタニルが好適である。入手のし易さ、原料コスト、CO含有量の少なさ等を考慮すると、シュウ酸バリウムチタニルBaTiO(C・4HOが最適であり、本実施の形態では、シュウ酸バリウムチタニルを用いている。なお、生成物チタン酸バリウム(BaTiO)中のBa:Tiを調整するために、出発原料中のBa:Tiを1:1前後に適当に調整するようにしてもよい。
例えば、シュウ酸バリウムチタニルの場合、亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態の反応環境に供給し滞在させることで、数秒から数分以内にシュウ酸バリウムチタニル原料の有機成分を含めて完全に分解し、その後の合成により、チタン酸バリウム微粒子を作製することができたものである。この結果、オートクレーブを用いたバッチ式製造プロセスだけでなく、量産性に優れる連続流通式による製造プロセスの適用も可能となり、チタン酸バリウム微粒子の製造プロセスの効率を大幅に向上させることができる。
(実施の形態1)
本実施の形態1は、超臨界状態を生成しやすい連続流通式による製造プロセスを用いたチタン酸バリウム微粒子の製造方法への適用例を示す。図2は、本実施の形態1に適用される連続流通式製造装置を模式的に示す概略構成図である。この連続流通式製造装置は、原料を含むスラリーを攪拌するスラリー攪拌機1からバルブ2を介して供給されるスラリーを室温高圧スラリーとして反応場を構成する反応管3に供給するスラリーポンプ4と、タンク5からバルブ6を介して供給される純水をヒータ7による加熱を経て高温水として反応管3に室温高圧スラリーと混合させて供給する送液ポンプ8と、反応管3の排出側に配置された冷却槽9と、冷却槽9の排出側にバルブ10を介して連結された回収タンク11とを備える。反応管3の周囲にも、反応管3内部を超臨界状態(または、亜臨界状態)にするための加熱用のヒータ12を備える。
なお、図2に示す連続流通式製造装置の例では、流体を下側から上側に流すようにしているが、上流側となる高温水と室温高圧スラリーの2つのラインを反応管3の上部に設置し、流体を上側から下側に流すようにしてもよい。また、反応管3の太さとしては、例えば後述する実施例2では内径8mmの配管としているが、実際に市販されている直径1/32インチないし数cmまでの配管を用いるようにしてもよい。さらには、図2に示す例では、高温水のラインと室温高圧スラリーのラインとが混合する流路の配置としているが、反応時間が数分間程度と長い場合には、高温水側のラインを省略して、水や溶剤と反応物を調製済みのスラリーだけを反応管3に流す流路構成であってもよい。また、製造装置は、原料スラリーのラインを高温高圧にしてから、高温高圧水と混合することが好ましい。このように、スラリーも高温高圧とすることで、水または水と溶媒の混用溶媒によりスラリーを加熱する必要が少なくまたはなくなり、原料スラリー:水の混合比を1:1以上にすることが可能となる。これにより、反応部の原料濃度を高くすることができ、生産性を高くすることができる。
ついで、本実施の形態1のチタン酸バリウム微粒子の製造方法について説明する。図3は、図2に示したような連続流通式製造装置を用いたチタン酸バリウム製造方法を示す概略工程図である。
A.原料調製工程
まず、原料調製工程を行う。原料調製工程では、原料を用意し、原料の粉砕と、スラリーの調製と、スラリーの分散との各処理を順次行う。
原料の粉砕処理では、スラリーポンプ4から送り出しやすくするため、ボールミル、ビーズミル、遊星粉砕のいずれかによって、原料粒子を数μm程度の大きさに粉砕する。生成物のバラツキを低減するため、さらにサブミクロン程度の大きさに粉砕するのが望ましい。ここで、本実施の形態1では、原料として、サブミクロンになっている市販のTiO粉を使用するため、粉砕処理の必要がない。また、蓚酸バリウムチタニルを原料とした場合は、下記処理で原料粒子を粉砕する。粉砕方法としては、ボールにジルコニア、溶媒にイオン交換水及び極性溶媒であるエタノールを用いた湿式のボールミル方式を用いることができる。粉砕時間は24時間、体積比は原料:ボール:溶媒=1:4:8、ボールミルのポット容積は700mL、ポットに対する内容物体積率は70%以上、粉砕前原料粉サイズは平均で約70μm、粉砕後原料粉サイズは平均で約0.5μmとした。
蓚酸バリウムチタニルスラリーの調製処理では、スラリー中の粉の濃度を例えば25g/Lとする。チタン酸バリウムの安定条件としてpH>12のアルカリ雰囲気とすることが必要なため、アルカリ性水溶液(電解質添加、あるいはアルカリ水またはアンモニア水)を添加してpHを調整する。本実施の形態1では、NaOHを添加する。NaOHの具体的な添加量は、原料に含まれるCOの量に依存されるが、目安として、NaOH:COの比が2:1より大きくなるように設定される。BaCOの形成を防止するためである。なお、TiOとBa(OH)を原料とする場合、アルカリ剤を入れないか、NaOHやTMAHなどのpH調整剤を添加しても良い。
スラリーの分散処理では、反応前に超音波により5分〜10分程度分散させる。そして、反応処理に際して、スラリー攪拌機1で攪拌しながらスラリーポンプ4側に送る。
B.反応環境生成工程
反応環境生成工程は、亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態の反応環境を生成する工程であり、混合溶媒臨界条件の調整、加熱と加圧と混合との各処理を行う。
混合溶媒臨界条件の調整処理としては、水と溶媒(エタノール)との比率を調整する。ここでは、重量%で、水の量を5wt%〜95wt%とする。これにより、混合溶媒の臨界温度は、260℃〜370℃、臨界圧力は、8MPa〜22MPaの間で調整される。
加熱処理では、純水をヒータ7により加熱して高温水の状態にする。また、高温水と有機溶媒(エタノールなど)を含むスラリーが混合される反応管3をヒータ12により、調整された混合溶媒の臨界温度以上に加熱する。
加圧処理では、スラリー攪拌機1から供給される原料、有機溶媒(エタノールなど)を含むスラリーをスラリーポンプ4により、調整された混合溶媒の臨界圧力付近以上に加圧することで、原料スラリーを室温高圧スラリーとして反応管3側に供給させる。
混合処理では、高温高圧水と室温高圧スラリーとを混合させて反応管3に供給させる。混合状態において、反応管3内の反応環境は、混合溶媒の臨界条件に近い条件とし、臨界温度及び臨界圧力を超える超臨界状態とすることが望ましい。
特に、正方晶のチタン酸バリウムに合成できる最低温度は215℃より大きく、最低圧力は5MPaよりも大きく、シュウ酸バリウムチタニルを原料とした場合にアルカリ雰囲気を示すpHは12〜14より大きい。このため、正方性を向上させるには、反応管3内における反応環境としては、混合溶媒の臨界条件より高い温度及び圧力であることが望ましい。
C.粉体生成工程
粉体生成工程は、超臨界混合溶媒状態(または、亜臨界混合溶媒状態)の反応環境として生成された反応管3中に、シュウ酸バリウムチタニルを含むスラリーを所定時間滞在させることでチタン酸バリウム微粒子を生成する工程であり、分解又は溶解工程と結晶化工程とが連続して行われる。
C−1.分解又は溶解工程
分解工程では、反応管3中の超臨界混合溶媒状態(または、亜臨界混合溶媒状態)の反応環境に反応物(金属の酸化物、水酸化物又は複合金属錯体など)を含むスラリーを供給することにより、反応物成分は超臨界加溶媒分解により分解又は溶解される。より詳細には、例えば、TiO+Ba(OH)を原料としたら、Ba+2、TiO水和物、Ti(OH)水和物、Ti(OH) +1、Ti(OH) −1などのイオンとして溶解される。また、蓚酸塩を例としたら、分子と亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒との激しい衝突による分解力によって、複雑な分子構造が完全に破壊される。例えば、酸化チタンは、Ti(OH)(aq)又はTi(OH) +1やTi(OH) −1などのイオンになり、シュウ酸塩の有機成分はCO、CO、HOのような簡単な分子レベルまで完全に分解される。そして、分解されたTi、Baなどの成分は、亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒に溶解する。この結果、分解された無機成分は高い飽和度(過飽和度)を達成する。すなわち、粉末のTiO、Ba(OH)、シュウ酸バリウムチタニルを原料として用いているので、亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒に分解したときには、局部により高い過飽和度を簡単に実現できるものであり、生成されるチタン酸バリウム微粒子のナノ化に好適となる。この分解工程の所要時間は、温度、圧力、反応物の種類によって異なる。
C−2.結晶化工程
結晶化工程では、シュウ酸バリウムチタニルが分解された後、反応管3中において亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態の反応環境を反応場としてさらに所定の反応時間滞在させて、分解されたBaやTiを含むイオンを合成する超臨界混合溶媒の熱合成処理により、チタン酸バリウムの核を形成し結晶化することで、結晶性の高いnmオーダの粒径のチタン酸バリウムを生成する。
この際、反応場を構成する反応管3内に滞在する時間(反応時間)を調整制御する。結晶化工程の処理においては、上述したような亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態となる温度と圧力の条件を同時に満たす条件下で、最低、数秒以上滞在することが必要である。そして、より高い結晶性を得るためには、亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態下で数秒以上滞在させて安定して結晶化させることが望ましい。反応管長さの制限を受けないように(つまり、長さが長くなりすぎないようにし)、また、所望サイズの粒径以上に成長しないようにするため、反応時間を数十秒以内とすることが望ましい。これにより、50nm〜150nm程度の最適サイズで結晶性の高いチタン酸バリウムが生成される。チタン酸バリウムに関しては、50nm〜150nm程度が、最高比誘電率を持つ最適サイズとされており、このようなサイズより小さ過ぎても大き過ぎてもチタン酸バリウム粉の比誘電率は下がる傾向にあることが知られている。
ここで、チタン酸バリウムの結晶性と粒径を制御するために滞在させる反応時間は、反応管3の管径や長さの調整、或いはポンプ4、8やバルブ2、6調整による流速の調整、さらには、反応を停止させる急激な冷却タイミングの調整により制御される。
チタン酸バリウム(BaTiO)粒子の成長の停止は、冷却槽9を用いた急激な冷却により行われる。冷却速度は、例えば、約30℃/秒以上の急激なものであり、室温まで冷却させる。さらに、超臨界混合溶媒の中にある有機溶媒の優れた分散特性によって、生成されたチタン酸バリウム粒子を素早く超臨界混合溶媒に流して拡散し、チタン酸バリウム粒子を分散させる。このように、生成直後の粒子同士の接触を低減することで、粒子凝集を抑制することができる。なお、結晶化工程後の粒子凝集防止を重視する場合は、混合溶媒の有機溶媒の比率が高くなるように混合比を調整すればよい。
D.回収工程
回収工程では、バルブ10により大気圧まで減圧し、気体を放出させることで、気液分離を行い、スラリーを回収タンク11に回収する。回収されたスラリーにつき、添加物Naを除去するために、イオン交換水で洗浄する。また、チタン酸バリウム粉と液体とを最低数千rpm以上の高速回転による遠心分離によって分離する。さらに、pH調整は、中性になるまで繰り返し行い、その後、乾燥機によって約100℃で乾燥することで、最終的にチタン酸バリウム微粒子が得られる。
なお、本実施の形態では、混合溶媒を構成するエタノールを、イオン交換水とともにスラリーに混入させるようにしたが、これに限らず、例えば、高温水の供給経路中でエタノールを水と混合させるようにしてもよく、あるいは、水に代えてエタノールを単独で反応管3に向けて供給する一方、水はスラリー中に混入させて反応管3に向けて供給することで、反応管3内で混合溶媒となるようにしてもよい。いずれの場合であっても、水とエタノールとの混合比率が分かる状態であればよい。また、少なくとも反応管3内で混合溶媒が亜臨界または超臨界状態となればよい。上記の参考文献1によると、約350℃以下であれば、エタノール自身は超臨界水によって分解されない。実際の実験で、400℃〜500℃の温度でもエタノールの加水分解速度が遅いので、本発明の混合溶媒を生成できる。
(実施の形態2)
本実施の形態2は、量産性に優れるオートクレーブを用いたバッチ式製造プロセスによるチタン酸バリウム微粒子の製造方法への適用例を示す。流通式にあっては、大型になるとスラリーポンプ4、送液ポンプ8、ヒータ7などの能力の制限を受けるため、多量(大量)生産の場合には、本実施の形態2のバッチ式が好適である。図4は、本実施の形態2に適用されるバッチ式製造装置を模式的に示す概略構成図である。このバッチ式製造装置は、原料を含むスラリーが供給されて反応環境が生成される反応容器としてのオートクレーブ21を主体に構成されている。このオートクレーブ21は、供給されたスラリーを攪拌するための攪拌機22と、オートクレーブ21内部を超臨界状態(または、亜臨界状態)の反応環境とするように加熱・加圧するためのヒータ23とを備える。また、オートクレーブ21の上部側には大気に連通させるバルブ24を有し、底部側にはバルブ25を介して回収タンク26が連結されている。回収タンク26は、排気口27を有する。
ついで、本実施の形態2のチタン酸バリウム微粒子の製造方法について説明する。図5は、図4に示したようなバッチ式製造装置を用いたチタン酸バリウム製造方法を示す概略工程図である。なお、図3で説明した製造方法の場合と同一の工程については、詳細な説明を省略する。
A.原料調製工程
原料調製工程は、図3の場合と同様に行う。ただし、スラリーの分散は、超音波による分散を反応前に5分〜10分程度行うとともに、原料を含むスラリーをオートクレーブ21内に供給した後は、攪拌機22の攪拌により分散処理を行う。
B.反応環境生成工程
反応環境生成工程は、亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態の反応環境を生成する工程であり、加熱、加圧処理及び混合溶媒臨界条件の調整処理を行う。
この加熱、加圧処理は、原料、有機溶媒(エタノールなど)を含むスラリーをオートクレーブ21内に供給した状態で、ヒータ23により混合溶媒の臨界温度以上に加熱することにより、オートクレーブ21内に亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態の反応環境を生成する。この場合の加圧は、加熱による加圧であり、混合溶媒の臨界圧力以上に加圧する。この圧力は、加熱温度とスラリーの充填率とにより調整する。スラリーの充填率は、オートクレーブ21の容積の約10%以上とする。また、混合溶媒臨界条件の調整は、流通式の反応環境生成工程で説明した場合と同様である。
C.粉体生成工程
粉体生成工程は、超臨界混合溶媒状態(または、亜臨界混合溶媒状態)の反応環境として生成された反応容器であるオートクレーブ21中に、シュウ酸バリウムチタニルを含むスラリーを所定時間滞在させることでチタン酸バリウム微粒子を生成する工程であり、分解工程と結晶化工程とからなる。この場合の分解又は溶解工程は、図3で説明した流通式の場合と同様である。
結晶化工程では、シュウ酸バリウムチタニルが分解された後、オートクレーブ21中において亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒状態の反応環境を反応場としてさらに所定の反応時間滞在させて、分解されたシュウ酸バリウムチタニルのイオンを合成する超臨界混合溶媒の熱合成処理により、チタン酸バリウムの核を形成し結晶化することで、結晶性の高いnmオーダの粒径のチタン酸バリウムを生成する。この場合の昇温速度は、10℃/分以上とし、昇温時間が数十分以内で最高温度・圧力の超臨界混合溶媒状態に達するようにした。また、生成し粒子を素早く超臨界混合溶媒で流して拡散させ、生成直後の粒子同士の接触を低減させることで、粒子凝集を抑制する。
チタン酸バリウム粒子成長の停止は、反応場が最高温度・圧力に到達後は、チタン酸バリウム等をオートクレーブ21内の反応場に保持せず、バルブ24、25を開放してオートクレーブ21からの噴射による急激な減圧により行われる。この場合の減圧速度は、数秒ないし数分以内(例えば、1MPa/秒)で、大気まで減圧する。また、冷却温度は、約100℃以下とした。
D.回収工程
回収工程では、オートクレーブ21から大気圧まで減圧し、気体を放出させることで、気液分離を行い、スラリーを回収タンク26に回収する。回収されたスラリーに関する洗浄、乾燥、固液分離は、流通式の場合と同様に行う。これにより、最終的にチタン酸バリウム微粒子が得られる。
これら実施の形態1、2によれば、出発原料のサイズ制限を緩和し得る。従来の多くの製造方法では、ボトムアップ法によるため、数nmサイズのチタン酸バリウムを作製するためには、原料段階で10nm〜30nmのTiOやBaCOやシュウ酸バリウムチタニルなどのナノ粒子を原料として用いる必要があり、ナノ粒子の原料の製造や前処理のため、工程の複雑化やコスト面で問題がある。この点、これら実施の形態1、2のチタン酸バリウム微粒子の製造方法によれば、出発原料のシュウ酸バリウムチタニルは、亜臨界または超臨界混合溶媒による分解作用を受けるため、より小さい粉を作製することができる。したがって、数μm程度の原料を用いても、一次粒子として100nm以下のチタン酸バリウムを作製することができ、原料段階で数十nm以下に細かく粉砕する必要がなくなる。
また、前述したように、ナノオーダの微粒子を作製するためには、高い過飽和度が必要となる。ここで、これら実施の形態1、2では、粉末のシュウ酸バリウムチタニルを原料としているので、亜臨界混合溶媒または超臨界混合溶媒に分解したときに、局部により高い過飽和度を簡単に実現でき、溶解度のような制約を受けることがない。また、得られる固形分生成物は、単相チタン酸バリウムであり、廃液におけるBa及びTiの含有量は数ppm以下で、ICPの検出限界下となったものである。すなわち、シュウ酸塩原料をほぼ100%の転化率でチタン酸バリウムに転化させることができたものである。
また、これら実施の形態1、2によれば、元々1分子内に1:1の比率でバリウムとチタンを含む粉末のシュウ酸バリウムチタニルを原料としているため、従来における反応成分を混合する重要性を大幅に緩和することができる。この結果、流通式において、微細ミキサや細い配管を用いなくても、チタン酸バリウムの作製に影響を及ぼさないものとなる。例えば、内径8mmの太い反応管3及び1/4インチのY形混合器で連続流通式製造装置によって、レイノルズ数(Re=UL/ν、U:流体速度、L:特性長さ、ν:動粘性係数)を4000〜7000の範囲で、流体の流れを混相乱流状態とし、平均粒径50nm、最大粒径90nmのチタン酸バリウム微粒子を合成することができたものである。300ccのオートクレーブ21の場合でも、300rpmの低い攪拌速度で、粒径100nm〜150nmのチタン酸微粒子を合成することができたものである。よって、プロセスの実用化が向上し、詰まることがなく、量産性に優れたものとなる。
また、従来の水熱合成によるチタン酸バリウム微粒子粉の結晶体にはOH基があることが知られているが、これら実施の形態1、2によれば、図6に示すように、生成されたチタン酸バリウムの場合、TEM観察で殆ど見つからないほどに、ポア(空孔)の量は少ないものとなる。なお、図6は、合成した粉体の原子配列を観察した透過型電子顕微鏡像(HAADF−STEM像、high-angle annular dark-field scanning transmission electron microscopy像)を模式的に示す説明図である。
(実施の形態3)
本実施の形態3は、実施の形態1または2の製造方法により製造された粉体であるチタン酸バリウム微粒子を用いて製造した電子材料を構成要素として含む電子部品を製造する電子部品の製造方法への適用例を示す。本実施の形態3では、電子部品として積層セラミックコンデンサの例を示す。
図7は、積層セラミックコンデンサ30の構成例を示す断面図である。この積層セラミックコンデンサ30は、誘電体層31と内部電極層32とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体40を有する。コンデンサ素子本体40の両端部には、コンデンサ素子本体40の内部で交互に配置された内部電極層32とそれぞれ導通する一対の外部電極33が形成されている。
内部電極層32は、各端面がコンデンサ素子本体40の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層されている。この内部電極層32に含有される導電材は特に限定されず、貴金属や卑金属(例えば、NiやNi合金)を用いることができる。また、一対の外部電極33は、交互に配置された内部電極層32の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成している。この外部電極33に含有される導電材は特に限定されないが、安価なNi、Cuやこれらの合金を用いることができる。
誘電体層31は、実施の形態1または2の製造方法により製造されたチタン酸バリウム微粒子を原料とする誘電体材料の薄膜層である。
このような構成からなる積層セラミックコンデンサ30は、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極33を印刷または転写して焼成することにより製造される。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペースト及び内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。また、焼成前には、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定すればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いている場合には、還元焼成雰囲気が好ましい。また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000℃〜1400℃である。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体40に、端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極33を形成する。そして、必要に応じて、外部電極33の表面にめっき等による被覆層を形成する。
チタン酸バリウム微粒子を原料とする誘電体材料の薄膜層を誘電体層31として含み、このようにして製造された積層セラミックコンデンサ30は、半田付け等によりプリント基板などに実装され、各種電子機器等に使用される。
なお、本実施の形態3では、実施の形態1または2の製造方法により製造されたチタン酸バリウム微粒子を誘電材料として用いるコンデンサなる電子部品の製造方法への適用例として説明したが、これに限らず、チタン酸バリウム微粒子を圧電材料、半導体などの電子材料として用いる電子部品、例えばPTC素子等についても同様に適用可能である。
また、製造装置は、原材料を反応させ粒子を合成する領域、つまり、原材料と接触する面に金メッキを施すことが好ましい。例えば、連続流通式製造装置の場合は、少なくとも反応管に金メッキを施すことが好ましく、バッチ式製造装置の場合は、少なくともオートクレーブの内部(内面)に金メッキを施すことが好ましい。このように、粒子、原材料の流路に金メッキを施すことで、粒子に混入する不純物を低減することができる。また、原材料や粒子が通過する領域、配管等にも金メッキを施すことがさらに好ましい。なお、原材料を反応させ粒子を合成する領域、さらには、原材料や粒子が通過する領域に施す処理は、金メッキに限定されず、反応性をより低減することができればよく、原材料と接触する面を白金や金で構成するようにしてもよい。また、本実施形態のようにチタン酸バリウムを合成する場合は、原材料と接触する面をチタンで構成するようにしてもよい。原材料と接触する面を、チタン酸バリウムと同一元素となるチタンで構成することで、生成される粒子に不純物が混入することを防止することができる。
なお、上記実施形態では、チタン酸バリウムを合成して生成する場合として説明したが、本発明の方法は、チタン酸バリウム以外にも、さまざまな金属酸化物ナノ粒子の合成方法、例えば、フェライト、圧電材料、リチウム二次電池の正極材、蛍光体等の合成方法として用いることができる。
(実施例1)
実施例1では、図4に示したようなバッチ式製造装置を用いて、超臨界混合溶媒によるシュウ酸バリウムチタニルの加溶媒分解及びチタン酸バリウムの合成を行った場合について説明する。例えば、スラリー200cc(シュウ酸バリウムチタニル粉20g/L、エタノール90%+水10%、pH調整用のNaOH40g/L)を300ccのオートクレーブ21に入れ、ヒータ23による加熱で容器内温度と圧力を上昇させ、超臨界水の場合よりも低い臨界温度・臨界圧力で超臨界混合溶媒の反応環境を生成することで、シュウ酸塩を完全に分解することができた。そして、単一の超臨界相で、正方晶チタン酸バリウムを合成により生成した。このような実験を、エタノールの比率や加熱温度、加圧圧力等を変えて行った場合の分析結果を表1に示す。なお、表1中の「BTO」は、シュウ酸バリウムチタニルBaTiO(C・4HOを示している。また、各実験の実験条件と臨界条件との関係は、図1−1及び図1−2に示す。なお、図1−1及び図1−2には、実験番号で各実験条件を示している。
表1に示す結果によれば、XRD(111)ピークの半値幅を示すFWHM(111)から見ると、混合溶媒の臨界条件以上及び臨界条件付近で得た全てのサンプルが高い結晶性を示すことがわかる。特に、反応温度だけでなく、混合溶媒の臨界条件(臨界圧力と臨界温度との両方)を超えた条件下で合成したチタン酸バリウム微粒子の結晶性が、より高くなっていることがわかる。いずれにしても、FWHM(111)は、0.23程度以下であり、特許文献2等に示される従来例に比べて、より高い結晶性を示したものである。
これに対して、シュウ酸バリウムチタニル、水、NaOHの原料スラリー220ccを500ccのオートクレーブ21にいれ、約200℃に昇温後、約4MPa〜5MPaになった。その後、約30秒保持し、冷却して回収されたサンプルは、シュウ酸バリウムチタニルが有る程度分解したが、単一晶のチタン酸バリウムができていなかった。このように、反応環境が、臨界条件及び臨界条件付近とはなっていない状態では、単一晶のチタン酸バリウムを作製できないことがわかる。
(実施例2)
実施例2では、図2に示したような連続流通式製造装置を用いて、超臨界混合溶媒によるシュウ酸バリウムチタニルの加溶媒分解及びチタン酸バリウムの合成を行った場合について説明する。調整された室温の原料スラリー(シュウ酸バリウムチタニル仕込み量25g/L、NaOH添加量40g/L、エタノール)を10cc/minの流量で約480℃の高温水と、原料スラリー:高温水=約1:5〜8の比率で混合し、長さ50cm、内径8mmの反応管3に導入した。そして、温度と圧力を、推算した混合溶媒の臨界条件より高い値に設定し、反応管3内に超臨界混合溶媒による反応環境を生成した。スラリーを含む混合溶媒が反応管3を通過する通過時間は5秒〜8秒程度とした。そして、冷却槽9によって生成物を数秒で室温まで冷却させた。このような実験を、エタノールの比率や加熱温度、加圧圧力等を変えて100nm以下のチタン酸バリウム微粒子の製造を行った場合の分析結果を表2に示す。また、各実験の実験条件と臨界条件との関係は、図1−1及び図1−2に示す。なお、図1−1及び図1−2には、実験番号で各実験条件を示している。
また、SEM写真から約200個の粒子から得た平均粒径と標準偏差をd50とsdとして算出し、表2に示す。平均粒径と標準偏差は、図8−1及び図8−2に示すような、SEM写真を用いて、約250個〜300個の粒子のサイズを測定することで算出した。ここで、図8−1は、サンプルAとして生成した粒子を撮影したSEM写真を模式的に示す説明図であり、図8−2は、サンプルBとして生成した粒子を撮影したSEM写真を模式的に示す説明図である。
また、図8−1及び図8−2に示すSEM写真から、それぞれサンプルAとサンプルBの約250個〜300個の粒子のサイズを計測し、分析したサイズ分布を図9−1及び図9−2に示す。ここで、図9−1は、図8−1に示す粉体の粒度分布の測定結果を示すグラフであり、図9−2は、図8−2に示す粉体の粒度分布の測定結果を示すグラフである。図9−1及び図9−2に示すように、サンプルAとサンプルBとは、両方ともシャープなサイズ分布を持つことがわかる。サンプルAと、サンプルBに加え、数種類のサンプルについての測定結果を表2に示す。
表2に示す結果によれば、XRD(111)ピークの半値幅を示すFWHM(111)が、0.33程度以下であり、特許文献2等に示される従来例に比べて、より高い結晶性を示したものである。また、BETにより測定した比表面積Sは例えば20m/g程度であり、密度5.9g/ccで換算した粒径は約50nmとなったものである。また、すべて実験で、Sd/d50<0.3、シャープなサイズ分布を得られたことがわかる。また、図8−1及び図8−2に示すように、サンプルAとサンプルBは、いずれも規則的な四角い粒子が生成されていることがわかる。さらに、リットベルト法解析により、どちらもc/a=1.003である正方相であった。エタノールの代わりにメタノールを使っても高結晶性ナノチタン酸バリウム粒子が得られた。以上より、実施例2では、高結晶性とナノ化を両立できたことがわかる。
(実施例3)
次に、実施例3として、SUS材質オートクレーブMMJ−500の内面に約5μmの金メッキを実施された装置(OM LAB社製)を用いて、実施の形態2と同じチタン酸バリウム合成実験を行った。合成されたチタン酸バリウム粉体をICP−AESで全定性、検出された元素はさらに検量線法にて定量分析を行った。また、比較のために、金メッキを施していない装置でもチタン酸バリウム合成実験を行い、合成されたチタン酸バリウム粉体をICP−AESで全定性、検出された元素はさらに検量線法にて定量分析を行った測定結果を表3に示す。
表3に示すように、金メッキバッチ式で合成されたチタン酸バリウムとSUS材質反応器で合成されたチタン酸バリウムの不純物含量を比較すると、反応器に金メッキを施すことで、SUS組成元素Fe、Cr、Niの含量が200ppm以下になることがわかる。このように、金メッキを施すことで、不純物の少ない粒子を合成することができることがわかる。
さらに、pH調整剤として、NaOHに代えて、有機pH調整剤であるTMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)を使用した以外は、実施例3と同様の条件、つまり、反応器に金メッキをして、同じチタン酸バリウム合成実験を行った。この場合の計測結果を表4に示す。
さらに、pH調整剤を使わずに、TiOとBa(OH)を原料とし、メタノールを溶液として使用した場合、実施例3と同様の条件、つまり、反応器に金メッキをして、同じチタン酸バリウム合成実験を行った。この場合の計測結果を表5に示す。
表3〜表5に示すように、pH調整剤と原料と溶媒との調整で、腐食機構が変化し、不純物の含有量をさらに低減できることがわかる。
以上のように、本発明にかかる粉体の合成方法及び電子部品の製造方法は、金属酸化物の粉体の合成に有用であり、特に、チタン酸バリウムの粉体の合成に適している。
1 スラリー攪拌機
2 バルブ
3 反応管
4 スラリーポンプ
5 タンク
6 バルブ
7 ヒータ
8 送液ポンプ
9 冷却槽
10 バルブ
11 回収タンク
12 ヒータ
21 オートクレーブ
22 攪拌機
23 ヒータ
24、25 バルブ
26 回収タンク
27 排気口
30 積層セラミックコンデンサ
31 誘電体層
32 内部電極層
33 外部電極
40 コンデンサ素子本体

Claims (3)

  1. 水と、水単独の場合よりも低い温度及び低い圧力で超臨界状態になる溶媒との混合溶媒を用いて、加熱及び加圧の少なくとも一方により亜臨界または超臨界状態の反応環境を生成し、
    生成された亜臨界または超臨界状態の前記反応環境を反応場として粉体原料を該反応場に所定時間滞在させて粉体微粒子を生成することを特徴とする粉体の合成方法。
  2. 前記溶媒は、超臨界状態で水と連続溶解できる有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の粉体の合成方法。
  3. 請求項1または2に記載の粉体の合成方法により生成された粉体微粒子を用いて製造された電子材料を構成要素として含む電子部品を製造することを特徴とする電子部品の製造方法。
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