JP2012166715A - 車両の走行制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の旋回走行時に、転舵機構を駆動するアクチュエータ系に失陥が生じる場合であっても、適切な走行制御を維持する。
【解決手段】走行制御装置は、前輪FL、FR及び後輪RL、RRの舵角を制御可能な転舵機構15、18を有する車両10の装置であって、転舵機構を駆動させる第1転舵手段400、500、600及び第2転舵手段300、310、320、330と、第1及び第2転舵手段が転舵機構を駆動させる際の動作の態様を制御する制御手段100と、第1転舵手段において失陥が生じたことを検出する検出手段410、510、610とを備え、制御手段は、第1転舵手段に失陥が生じた場合、車両の運動状態に対応する状態量が、第2転舵手段の動作により適用可能な範囲内で設定する目標状態量となるように、第2転舵手段を動作させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両の車輪の舵角等を制御する転舵制御を行う走行制御装置等の技術分野に関し、例えば4WS(Four Wheels Steering:4輪操舵制御)等の前輪及び後輪の舵角を制御可能な操舵機構を備えた車両に適用可能な走行制御装置の技術分野に関する。
ドライバの操舵に応じて前輪及び後輪の舵角を制御可能な車両においては、例えば車両のヨーレートや車体スリップ角等の状態量を検出、制御可能な走行制御装置が用いられることがある。このような走行制御装置に何らかの失陥が生じた場合に、ドライバの操舵等により車両のヨーレートの制御が可能である一方で、このときの車体スリップ角については十分な制御が可能でなく、ドライバの意図とは異なった状態量となる可能性がある。このため、走行制御装置の失陥時には、例えば予備の制御装置等を用いることで、車両の状態量の制御が継続されることが好ましい。
しかしながら、本来の走行制御装置による状態量の制御量と比較して、予備の制御装置が適用可能な制御量が小さい場合、本来の走行制御装置の失陥時に予備の制御装置に求められる制御量が適用上限を上回る可能性がある。このような場合にも、ドライバの意図とは異なった状態量となるため、ドライバの走行に違和感を与えることに繋がりかねない。
このような走行制御装置について、以下に示す先行技術文献に説明がある。
特開平9−109866号公報 特開2006−69497号公報
上述した走行制御装置による車両の状態量の制御の方法として、以下に示すような種々の態様が知られている。2WS(2 Wheel Steering)として知られる方式においては、例えば車両の前輪に対して、ドライバの操舵に基づく転舵量が適用される。4WS(4 Wheel Steering)として知られる方式においては、車両の前輪及び後輪に対してドライバの操舵に基づく転舵量が適用される。また、A4WS(Active 4 Wheel Steering)として知られる方式においては、車両の前輪及び後輪に対して、ドライバの操舵に加えて、車両制御用の制御装置が設定した操舵量に基づいた転舵量が適用される。車両の走行速度に対する車体スリップ角又はヨーレートの特性は、これらの車両の制御方法によって夫々異なるものとなる。
一般的に、車両の車体スリップ角及びヨーレートの関係について、2WSの制御によるもの、若しくは、A4WSの制御によるもの、又は2WSの制御によるものと4WSの制御によるものとの間のいずれかである場合、ドライバにとって違和感を生じさせないものとなる。他方で、4WSの制御などによって、車両の車体スリップ角及びヨーレートの関係が上述した範囲外のものとなる場合、従来の一般的な操舵によっては生じ難い、ドライバにとって不慣れな状態となるため、ドライバに対して違和感を生じさせる可能性がある。
このような走行制御装置に何らかの失陥が生じた状態で、該走行制御装置と比較して適用可能な制御量が小さい予備の制御装置が車両の制御を行う場合、上述した車体スリップ角とヨーレートとの関係がドライバにとって不慣れな状態となり、違和感を与える可能性がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みて為されたものであり、予備の制御装置を含む少なくとも2つ以上の走行制御装置を備える車両の走行時において、上述した走行制御装置の失陥時においてもドライバにとって違和感を生じさせることのない好適な車両制御を可能とする走行制御装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る走行制御装置は、前輪及び後輪の舵角を制御可能な転舵機構を有する車両の走行制御装置であって、前記転舵機構を駆動させる第1転舵手段及び第2転舵手段と、前記第1転舵手段及び第2転舵手段が前記転舵機構を駆動させる際の動作の態様を制御する制御手段と、前記第1転舵手段において失陥が生じたことを検出する検出手段とを備え、前記制御手段は、前記第1転舵手段に失陥が生じた場合、前記車両の運動状態に対応する状態量が、前記第2転舵手段の動作により適用可能な範囲内で設定する目標状態量となるように、前記第2転舵手段を動作させる。
本発明に係る走行制御装置は、車両のドライバの操舵や車両の運転状態に応じて、車輪の夫々を転舵させる所謂4輪操舵制御(4WS)が可能な転舵機構を有する車両の走行の制御を行う装置である。転舵機構は、例えば、左右の前輪又は左右の後輪を接続し、ドライバの操舵等の入力に応じて前輪及び後輪を転舵させる、ラックアンドピニオン機構等の公知の機構である。
第1転舵手段は、このような転舵機構を動作させて、車両の前輪及び後輪を転舵させる制御用の装置又は機能部である。第1転舵手段は、操舵輪を介したドライバの操舵の入力を受け、該操舵や車両の走行状態に応じて、所定の態様で転舵機構を動作させる。これらの第1転舵手段は、制御手段の制御の下に転舵機構を駆動させるものであって、例えば、制御手段により指示される制御量を車両の前輪又は後輪に適用させるよう、ドライバの操舵に対して所定の補正を行った上で、転舵機構を動作させる。
尚、第1転舵手段は、実際には動作毎に独立した複数の装置又は機能部を含んでいてもよい。例えば、第1転舵手段は、ドライバの操舵に対して所定の補助操舵力を付与した上で前輪を転舵させるEPS(Electric Power Steering:電動パワーステアリング)、ドライバの操舵に応じて、EPSを駆動させる度合いを変更するVGRS(Variable Gear Ratio Steering:ステアリングギヤ比可変制御)、及び車両の運転状態に応じて後輪を駆動するARS(Active Rear Steering:アクティブリアステアリング)等の制御デバイスを含んだものであってよい。
本発明に係る車両の走行制御装置は、上述した第1転舵手段の他に、車輪の舵角を制御可能な第2転舵手段を備える。
第2転舵手段は、上述した第1転舵手段に何らかの失陥が生じる等、適切に車輪の転舵を行えない場合に、車輪の舵角を制御する予備の転舵手段を示す趣旨であって、このような制御を可能とする種々の装置を総称する趣旨である。第2転舵手段は、例えば、車両に備わる車輪の各々に作用する制動力、駆動力又はその両方を、当該各々について相互いに独立して変化させることが可能な装置等である。
後述するように、第2転舵手段は、好適な一形態として、車両の前輪又は後輪の左右輪に対して制駆動力差を生じさせ、該制駆動力差に応じて車輪を転舵させる制駆動力分配装置等の形態を採り得る。しかしながら、第2転舵手段は、これらに限定されることなく、通常の走行時に車両の車輪を転舵させる第1転舵手段に含まれない装置であって、何らかの手段により車輪を転舵可能な装置であれば他の態様であってもよい。
制御手段は、上述した第1及び第2転舵手段の動作を制御し得る構成として、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
制御手段は、車両の運動状態に対応する状態量を検出し、更に好適な走行を維持するための該状態量が満たすべき目標状態量を設定する。車両の運動状態に対応する状態量とは、その好適な一形態として、例えば、車両の旋回接線方向に対する角度であり、車体の向きと車体の瞬間的な進行方向とのなす角度である車体スリップ角、及び車両の旋回方向への回転加速度であるヨーレート等の態様を採り得る。
制御手段は、車両の状態量を、目標状態量設定手段により設定された目標状態量に維持する又は近付けることによって、車両の旋回挙動を制御する、A4WS方式の一種の自動操舵を実現する。
尚、A4WS方式の制御により車両の運動状態を所定の状態とする場合、車両が備えるステアリングホイル等の操舵入力装置には、例えば、セルフアライニングトルク等として知られる操舵反力が作用し得る。該操舵反力は、制御手段の制御による第1転舵手段又は第2転舵手段の駆動による車両の各車輪の転舵、つまり車両の旋回等に代表される車両の運動状態に応じて生じるものであり、上述した車両の運動状態に対応する状態量の一形態たり得る。しかしながら、この操舵反力は、車両の走行時のスリップ角又はヨーレートに応じて付随的に生じるものと言えるため、以下の説明における状態量として考慮しなくともよい。
検出手段は、これらの第1転舵手段において、適切に転舵機構の動作を制御出来ない等、何らかの失陥が生じたことを検出する装置又は機能部である。第1転舵手段の構成要素の一例であるVGRS、EPS、ARS等の装置は、内部に電動モータを有し、該モータの駆動に応じて各車輪の舵角を制御するものである。従って、検出手段の一例として、これらのモータに設けられる回転検出センサ等を採用することで、比較的簡単な構成で上述した作用を実現可能となる。尚、検出手段はこのような態様に限定されることなく、その他任意の構成であってもよい。
制御手段は、検出手段によって第1転舵手段に何らかの失陥が検出される場合、第2転舵手段を動作させ、車輪を転舵させる。例えば、A4WS方式の制御下で走行中に、第1転舵手段に失陥が生じた場合、第2転舵手段の動作により車両の旋回時の車輪の転舵が実施される。このとき、制御手段は、第1転舵手段の失陥時の車両の運動状態に対応する状態量(例えば、車体スリップ角)を検出し、好適な車両の走行を継続するための該状態量が満足する目標状態量を設定する。
しかしながら、上述したように第2転舵手段の動作によっては、必ずしも第1転舵手段により適用可能な制御と同等の制御が行えない可能性がある。具体的には、第1転舵手段の動作により適用可能な車両の状態量に対する制御量の一部の範囲について、第2転舵手段の動作では適用不可能である場合が考えられる。
第1転舵手段の失陥時に、A4WS方式の制御を継続するために第2転舵手段に要求される車両の状態量の制御量がこのような適用不可能な範囲である場合、A4WS方式の制御が継続出来ず、結果としてドライバに違和感を与える可能性がある。
そこで、制御手段は、第1転舵手段の失陥時に、車両の状態量が、該状態量に対して第2転舵手段の動作により適用可能な制御量を適用した際の範囲内で設定した目標状態量となるよう、第2転舵手段の動作の態様を制御する。具体的には、状態量の一例として車体スリップ角を考える場合、第1転舵手段の失陥時の車体スリップ角に対して、第2転舵手段の動作により適用可能な車体スリップ角の制御量の範囲内で目標車体スリップ角を設定する。そして、制御手段は、車体スリップ角が該目標車体スリップ角となるよう、第2転舵手段を動作させる。
このような制御手段の制御によれば、第1転舵手段の失陥時に、予備の第2転舵手段を用いて車体の運動状態を制御する場合に、第2転舵手段では実現出来ない制御量を設定して、車両がドライバの意図しない運動状態となることを好適に抑制出来る。このため、第1転舵手段の失陥時においても、車両の運動状態を安定することが出来、ドライバに対して違和感を与えることを好適に抑制出来る。
本発明に係る走行制御装置の一の態様では、前記制御装置は、(i)前輪の舵角を制御可能な2輪操舵方式による制御に基づく前記状態量、及び(ii)前輪の舵角を制御可能であり、且つ該前輪の舵角に関連して後輪の舵角を制御可能な4輪操舵方式による制御に基づく前記状態量のいずれかのうち、前記第1転舵手段に失陥が生じた時の前記車両の運動状態に対応する状態量に近い方を前記目標状態量として設定する。
この態様によれば、制御手段は、第2転舵手段を動作させる際の車両の状態量の目標値として、前輪操舵のみを行う所謂2WS方式の制御による状態量又は前輪操舵に関連して後輪の舵角を制御する所謂A4WS方式の制御による状態量を設定する。従って、この態様の制御手段の制御によれば、第1転舵手段に失陥が検出される場合、第2転舵手段の動作により、車両の運動状態が、2WS方式の制御下にある車両と同様の運動状態、又はA4WS方式の制御下にある車両と同様の運動状態に移行される。
この態様では、制御手段は、第1転舵手段の失陥時には、2WS方式の制御による状態量又はA4WS方式の制御による状態量を目標状態量として、車両の運動状態に係る状態量が目標状態量となるよう第2転舵手段を動作させて車両の旋回を行う。
一般的に、車両の運動状態に対応する状態量の一例であるヨーレートと車体スリップ角との関係が、2WS方式の制御によるもの、若しくはA4WS方式の制御によるもの、又は2WS方式の制御によるものと4WS方式の制御によるものとの間、のいずれかである場合、ドライバに違和感を与えることがないとされる。これは、2WS方式の制御はドライバが経験的に体験していると考えられること、A4WS方式の制御は、2WS方式の制御に対して更に車両応答や安定性を向上させたものであることなどによる。言い換えれば、車両のヨーレートと車体スリップ角との関係が上述した範囲外である場合、この時の車両の運動状態はドライバにとって不慣れなものとなり、違和感を与えることになる。
本実施形態の走行制御装置によれば、A4WS方式の制御下で走行中に、第1転舵手段に失陥が生じた場合、第2転舵手段の動作により車両の旋回時の車輪の転舵が実施される。しかしながら、上述したように第2転舵手段の動作により適用可能な車両の状態量の制御量には限度があり、必ずしも第1転舵手段により適用可能な制御量と同等の制御が行えない可能性がある。具体的には、第1転舵手段の動作により適用可能な車両の車体スリップ角の一部の範囲について、第2転舵手段の動作では適用不可能である場合が考えられる。
第1転舵手段の失陥時に、A4WS方式の制御を継続するために第2転舵手段に要求される車両の状態量の制御量がこのような適用不可能な範囲である場合、A4WS方式の制御が継続出来ず、結果としてドライバに違和感を与える可能性がある。
このような状況下では、代替の駆動デバイスの動作によりA4WS方式の制御を継続するよりも、2WS方式の制御と同様の制御を行う方が第2転舵手段に要求される制御量が少なく、適用可能な制御量で実現可能な場合があり得る。
この態様によれば、制御手段は、第1転舵手段の失陥時に、2WS方式とA4WS方式との内、失陥が生じた時の前記車両の運動状態に対応する状態量と車両の状態量がより近い方が目標状態量として選択される。言い換えれば、失陥が生じた時の前記車両の運動状態に対応する状態量から目標状態量に移行するために、第2転舵手段に対して要求される制御量がより少ない方を目標状態量として選択される。第2転舵手段は、選択された目標状態量を実現するための動作を実施する。このため、ドライバに対して違和感を与えることなく、車両の走行軌跡の制御を継続することが出来る。
本発明に係る走行制御装置の他の態様では、前記状態量は、前記車両の運動状態における車体スリップ角である。
この態様によれば、制御手段は、車両の運動状態に対応する状態量として、車両旋回時の車体スリップ角を考慮し、目標状態量を設定して第2転舵手段の動作を制御する。一般的に、LKA等による走行軌跡の制御中には、車両の運動状態に対応する状態量の一例であるヨーレートは、車両が走行する軌跡により定まる。従って、違和感のない走行軌跡の制御を継続するためには、車両の車体スリップ角を制御することで充分であると言える。この態様によれば、制御手段が、車体の車体スリップ角が目標車体スリップ角となるよう第2転舵手段を動作させることにより、ドライバに与える違和感を低減し、好適な走行を維持可能となる。
本発明に係る走行制御装置の他の態様では、前記状態量は、前記車両の運動状態における車体スリップ角及び前記車両のヨーレートである。
この態様によれば、制御手段は、車両旋回時の車体スリップ角及び車体のヨーレートをも考慮して目標状態量を決定し、第2転舵手段の動作を制御する。このため、車両の運動状態に対して、より高精度に目標状態量を設定可能となる。結果、ドライバに与える違和感を低減し、好適な走行を維持可能となる。
また、車体スリップ角に加えてヨーレートを状態量として採用することで、例えばLKA等の走行軌跡の制御が実施されていない状態において、ドライバによる車両の走行状態に応じてヨーレートが任意に定まるような場合であっても、好適に上述した作用を実現することが出来る。
本発明に係る走行制御装置の他の態様では、前記第1転舵手段は、前記車両のドライバによる操舵に応じて前記転舵機構を駆動させ、更に、少なくとも、前記第1転舵手段が、前記ドライバによる操舵に応じて前記転舵機構を駆動させる際の伝達比を変更する伝達比可変機構と、前記前輪の転舵に応じて前記後輪を転舵させる後輪転舵機構とを備える。
この態様によれば、第1転舵手段は、ステアリングホイル等を介したドライバの操舵に応じて、前輪を転舵させ、且つ該前輪の転舵に関連して後輪を転舵させる、所謂4WS又はA4WS方式の制御が可能である。
伝達比可変機構は、その好適な一形態として、ステアリングホイルに作用する操舵量又は操舵トルクに対する前輪を転舵させる機構の動作の態様を適宜変更可能なVGRS(Variable Gear Ratio Steering:ステアリングギア比可変装置)等であってよい。
後輪転舵機構は、前輪の転舵角等に応じてアクチュエータを駆動し、後輪を転舵させるARS(Active Rear Steering:後輪操舵装置)等であってよい。
尚、本態様は、第1転舵手段の構成について、伝達比可変機構及び後輪転舵機構についての具体的な態様を限定するものではなく、また、更なる構成の追加を制限するものではない。例えば、車両のヨーレート及びスリップ角を好適に制御可能な機構であれば適宜追加されてもよく、そのような効果を有する伝達比可変機構及び後輪転舵機構についても適宜採用されてよい。
例えば、車両のドライバの操舵量に応じて、車両前輪の転舵を行う際のアシストトルクを生じさせるEPS(Electronic controlled Power Steering:電子制御式パワーステアリング装置)等の前輪転舵補助機構を更に備える構成であってもよい。
本発明に係る走行制御装置の他の態様では、前記第2転舵手段は、前記前輪及び前記後輪の少なくとも一方について、左右の車輪に作用する制駆動力を個別に変化させる。
この態様によれば、第2転舵手段は、車両の前輪又は後輪の左右輪に制駆動力差を生じさせ、該制駆動力差に起因して車両が旋回するよう各車輪を転舵させる制駆動力分配装置等である。この態様の第2転舵手段は、好適な一形態として、例えば、ABS(Anti-lock Braking System)等を含む概念としての各種ECB(Electronic Controlled Braking system)、駆動力可変デファレンシャル機構、又はインホイールモータシステム等の実践的態様を採り得る。このような第2転舵手段によれば、前輪及び後輪の各々について、左右輪相互間に制駆動力差を生じさせることができる。左右輪に制駆動力差が生じると、車両は、当該制駆動力差に応じて、駆動力差であれば駆動力が相対的に小さい車輪の側へ、制動力差であれば制動力が相対的に大きい車輪の側へ、夫々旋回する。このように生じた左右輪の制駆動力差により、車両の操舵トルク及びヨーレートを制御可能となる。
制御手段は、車両の運動状態が目標状態量を実現するように、各車輪に作用する制駆動力を制御し、第2転舵手段を動作させる。
従って、この態様の第2転舵手段によれば、比較的簡単な構成で、車両の状態量を制御可能となり、上述した制御を好適に実現可能となる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
本発明の一実施形態に係る車両の構成例を表す図である。 本発明の走行制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。 車両の転舵の態様を示す模式図である。 制駆動力の分配による車両の転舵の態様を示す模式図である。 左カーブを左方向に転舵中にアクチュエータ系に失陥が生じた車両の運動状態を示す図である。 低速走行時の車両の状態量と目標状態量とを示すグラフである。 高速走行時の車両の状態量と目標状態量とを示すグラフである。 右カーブを左方向に転舵中にアクチュエータ系に失陥が生じた車両の運動状態を示す図である。 低速走行時の車両の状態量と目標状態量とを示すグラフである。 高速走行時の車両の状態量と目標状態量とを示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
(1)基本構成
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10の基本的な構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、車両10は、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRの各車輪を備え、このうち操舵輪である左前輪FL及び右前輪FRの舵角変化によって所望の方向に進行出来る。尚、以下の説明において、左右の区別なく前輪を示す場合には前輪FL、FRと記載し、左右の区別なく後輪を示す場合には後輪RL、RRと記載して夫々説明する。
車両10は、ECU100、エンジン200、駆動力分配装置300、VGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500、ARSアクチュエータ600、ECB700、及びカーナビゲーション装置21を備える。
ECU100は、夫々不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、車両10の動作全体を制御可能な電子制御ユニットであり、本発明に係る「走行制御装置」の具体例の一部を構成する。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従うことで、後述する各種動作を実行する。
尚、ECU100は、本発明に係る「制御手段」及び「検出手段」の一例として機能する一体の電子制御ユニットである。尚、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の動作により実現されるものであってもよい。
エンジン200は、車両10の駆動力源として機能するガソリンエンジン等であって、車両10の動力源の一例である。エンジン200の駆動力出力軸であるクランク軸は、後述する駆動力分配装置300の一構成要素であるセンターデファレンシャル装置310に接続されている。尚、本発明に係る車両は、燃料の燃焼を機械的動力に変換して取り出し得る所謂内燃機関一般を動力源とするものに限定されず、モータ等の回転電機を動力源とするものであってもよく、また、これらの組合せを動力源とする所謂ハイブリッド車両であってもよい。尚、エンジン200は、公知のものであってよい。
駆動力分配装置300は、エンジン200から前述のクランク軸を介して伝達されるエンジントルクTeを、前輪FL、FR及び後輪RL、RRに所定の比率で分配可能であると共に、更に前輪及び後輪の各々において左右輪の駆動力配分を変化させることが可能な装置である。駆動力分配装置300は、センターデファレンシャル装置310(以下、適宜「センターデフ310」と略称する)、フロントデファレンシャル装置320(以下、適宜「フロントデフ320」と略称する)及びリアデファレンシャル装置330(以下、適宜「リアデフ330」と略称する)を備える。
センターデフ310は、エンジン200から供給されるエンジントルクTeを、フロントデフ320及びリアデフ330に分配するLSD(Limited Slip Differential:差動制限機能付き差動機構)である。センターデフ310は、前後輪に作用する負荷が略一定な条件下では、前後輪に対し分配比50:50(一例であり限定されない)でエンジントルクTeを分配する。また、前後輪のうち一方の回転速度が他方に対し所定以上高くなると、当該一方に対し差動制限トルクが作用し、当該他方へトルクが移譲される差動制限が行われる構成となっている。即ち、センターデフ310は、所謂回転速度感応式(ビスカスカップリング式)の差動機構である。
尚、センターデフ310は、このような回転速度感応式に限らず、入力トルクに比例して差動制限作用が大きくなるトルク感応式の差動機構であってもよい。また、遊星歯車機構により差動作用をなし、電磁クラッチの断続制御により差動制限トルクを連続的に変化させ、所定の調整範囲内で所望の分配比率を実現可能な分配比率可変型の差動機構であってもよい。いずれにせよ、センターデフ310は、前輪及び後輪に対しエンジントルクTeを分配可能な限り、公知非公知を問わず各種の実践的態様を採ってよい。
フロントデフ320は、センターデフ310によりフロントアクスル(前輪車軸)側に分配されたエンジントルクTeを、更に、左右輪に所定の調整範囲内で設定される所望の分配比率で分配可能な分配比率可変型のLSDである。フロントデフ320は、リングギア、サンギア及びピニオンキャリアからなる遊星歯車機構と、差動制限トルクを与える電磁クラッチを備え、この遊星歯車機構のリングギアにデフケースが、サンギア及びキャリアに夫々左右の車軸が連結された構成を採る。また、差動制限トルクは、電磁クラッチに対する通電制御により連続的に制御され、フロントデフ320の物理的電気的構成上定まる所定の調整範囲内で、トルクの分配比率が連続的に可変に制御される構成となっている。
フロントデフ320は、ECU100と電気的に接続されており、電磁クラッチへの通電制御もECU100により制御される構成となっている。従って、ECU100は、フロントデフ320の駆動制御を介して、所望の前輪制駆動力差(ここでは、駆動力差である)F_FL−F_FRを生じさせることが可能である。尚、フロントデフ320の構成は、左右輪に所望の分配比率で駆動力(尚、トルクと駆動力とは一義的な関係にある)を分配可能な限りにおいて、ここに例示されるものに限定されず、公知非公知を問わず各種の態様を有し得る。
リアデフ330は、センターデフ310によりプロペラシャフト11を介してリアアクスル(後輪車軸)側に分配されたエンジントルクTeを、更に、左右輪に所定の調整範囲内で設定される所望の分配比率で分配可能な分配比率可変型のLSDである。リアデフ330は、リングギア、サンギア及びピニオンキャリアからなる遊星歯車機構と、差動制限トルクを与える電磁クラッチを備え、この遊星歯車機構のリングギアにデフケースが、サンギア及びキャリアに夫々左右の車軸が連結された構成を採る。また、差動制限トルクは、電磁クラッチに対する通電制御により連続的に制御され、リアデフ330の物理的電気的構成上定まる所定の調整範囲内で、トルクの分配比率が連続的に可変に制御される構成となっている。
リアデフ330は、ECU100と電気的に接続されており、電磁クラッチへの通電制御もECU100により制御される構成となっている。従って、ECU100は、リアデフ330の駆動制御を介して、所望の後輪制駆動力差(ここでは、駆動力差である)F_RL−F_RRを生じさせることが可能である。尚、リアデフ330の構成は、左右輪に所望の分配比率で駆動力(尚、トルクと駆動力とは一義的な関係にある)を分配可能な限りにおいて、ここに例示されるものに限定されず、公知非公知を問わず各種の態様を有し得る。
駆動力分配装置300は、上述のように前輪FL、FR又は後輪RL、RRの左右輪に制駆動力差を生じさせることで、各車輪に所望の舵角を付与する作用を有する、本発明に係る「第2転舵手段」の一具体例である。
VGRSアクチュエータ400は、本発明の「第1転舵手段」の一例であって、ハウジング、VGRSモータ、減速機構及びロック機構(いずれも不図示)等を備えた操舵伝達比可変装置である。
VGRSアクチュエータ400において、VGRSモータ、減速機構及びロック機構は、ハウジングに収容されている。このハウジングは、ドライバの操舵を入力するステアリングホイル12に連結されたアッパーステアリングシャフト13の下流側の端部と固定されており、アッパーステアリングシャフト13と略一体化して回転可能に連結されている。
VGRSモータは、ハウジング内部に固定されるステータと、回転軸に接続され、ステータ内部で回転可能なロータとを有するモータである。ステータには、例えば車両10のバッテリ等を含む不図示の電力供給回路から駆動電圧が供給され、それにより生じた回転磁界によってロータが回転する。該ロータと同軸回転可能に連結されるVGRSモータの回転軸の端部は、減速機構に連結される。
減速機構は、例えば、差動回転可能な複数の回転要素を有する遊星歯車機構等であって、一の歯車がVGRSモータの回転軸と、他の歯車がハウジングと連結し、更に残余の歯車がロアステアリングシャフト14と、夫々連結されている。
このような減速機構によれば、ステアリングホイル12の操作量に応じたアッパーステアリングシャフト13の(つまり、ハウジングの)の回転と、VGRSモータの回転軸の回転とが、残余の歯車を介してロアステアリングシャフト14に伝達される。このとき、ロアステアリングシャフト14の回転速度は、アッパーステアリングシャフト13の回転速度と、VGRSモータの回転軸の回転速度とにより一義的に決定される。
この際、回転要素相互間の差動作用により、VGRSモータの回転速度を増減制御することによって、ロアステアリングシャフト14の回転速度を増減制御することが可能となる。即ち、VGRSモータ及び減速機構の作用により、アッパーステアリングシャフト13とロアステアリングシャフト14とは相対回転可能である。尚、減速機構における各回転要素の構成上、VGRSモータの回転速度は、各回転要素相互間のギア比に応じて定まる所定の減速比に従って減速された状態でロアステアリングシャフト14に伝達される。 このように、車両10では、アッパーステアリングシャフト13とロアステアリングシャフト14とが相対回転可能であることによって、アッパーステアリングシャフト13の回転量である操舵角MAと、ロアステアリングシャフト14の回転量に応じて一義的に定まる(後述するラックアンドピニオン機構のギア比も関係する)操舵輪である前輪の舵角δfとの比である操舵伝達比が、予め定められた範囲で連続的に可変となる。
尚、ロック機構は、VGRSモータ側のクラッチ要素とハウジング側のクラッチ要素とを備えたクラッチ機構である。両クラッチ要素が相互に係合した状態においては、アッパーステアリングシャフト13とVGRSモータの回転軸との回転速度が一致するため、必然的にロアステアリングシャフト14との回転速度もこれらと一致する。即ち、アッパーステアリングシャフト13とロアステアリングシャフト14とが直結状態となる。尚、ロック機構については公知のものであってよく、詳細な説明を省略する。
VGRSアクチュエータ400は、ECU100と電気的に接続されており、その動作はECU100により制御される。特に、ECU100の制御によりVGRSモータの回転速度が可変となっており、従って、アッパーステアリングシャフト13の回転速度に対するロアステアリングシャフト14の回転速度の速度比、ひいては操舵伝達比もまた、ECU100の制御の下可変となっている。
VGRSアクチュエータ400には、その駆動の態様を検出するVGRSセンサ410が設けられている。VGRSセンサ410は、例えば、VGRSアクチュエータ400の回転等を検出することで、VGRSアクチュエータ400がECU100の制御の下適切に動作しているか否かを検出する。言い換えれば、VGRSセンサ410は、VGRSアクチュエータ400に何らかの失陥が生じて、ECU100の制御に従った駆動が行えない状態であるか否かを検出する。VGRSセンサ410は、ECU100と電気的に接続されており、検出結果は、ECU100により一定又は不定の周期で参照される。
車両10において、ロアステアリングシャフト14の回転は、ラックアンドピニオン機構に伝達される。ラックアンドピニオン機構は、ロアステアリングシャフト14の下流側端部に接続された不図示のピニオンギア及び当該ピニオンギアのギア歯と噛合するギア歯が形成されたラックバー15を含む操舵伝達機構であり、ピニオンギアの回転がラックバー15の図中左右方向の運動に変換されることにより、ラックバー15の両端部に連結されたタイロッド及びナックル(符号省略)を介して操舵力が各操舵輪に伝達される。即ち、ラックアンドピニオン機構は、本発明に係る「第1転舵手段」の一構成要素であるステアリングホイル12から各前輪に至る操舵力の伝達機構からの入力を受けて、前輪FL、FRを転舵させる、本発明に係る車両が有する転舵機構の一例である。
EPSアクチュエータ500は、本発明の「第1転舵手段」の一構成要素となるモータであって、不図示の電力供給回路により駆動することで、ドライバのステアリングホイル12の操舵量に対して所定のアシストトルクTAを付加する操舵トルク補助装置である。EPSアクチュエータ500のロータに接続される回転軸は、不図示の減速ギア機構を介してロアステアリングシャフト14に設けられた減速ギアと噛合している。このような構造のため、EPSアクチュエータ500から発せられる操舵トルク補助用のアシストトルクTAが、ロアステアリングシャフト14に伝達され、ロアステアリングシャフト14の回転を補助するトルクとして機能する。
尚、EPSアクチュエータ500は、ECU100と電気的に接続されており、その動作はECU100により制御される。従って、ドライバのステアリングホイル12の操舵により、アッパーステアリングシャフト13にドライバ操舵トルクMTが付加される際に、同一方向にアシストトルクTAが付加される場合、該トルクに伴う前輪FL、FRの転舵量はECU100の制御の下決定されるアシストトルク量TA分増大する。言い換えれば、このときに所定の転舵量を前輪FL、FRに伝達するためのドライバの操舵負担は、アシストトルクTAの分だけ軽減される。
EPSアクチュエータ500には、その駆動の態様を検出するEPSセンサ510が設けられている。EPSセンサ510は、例えば、EPSアクチュエータ500の回転等を検出することで、EPSアクチュエータ500がECU100の制御の下適切に動作しているか否かを検出する。言い換えれば、EPSセンサ510は、EPSアクチュエータ500に何らかの失陥が生じて、ECU100の制御に従った駆動が行えない状態であるか否かを検出する。EPSセンサ510は、ECU100と電気的に接続されており、検出結果は、ECU100により一定又は不定の周期で参照される。
車両10は、前輪FL、FRの転舵に関連して、後輪RL、RRを転舵させるための後輪転舵機構18及びARSアクチュエータ600を備えている。
後輪転舵機構18は、本発明に係る車両の「転舵機構」の一構成要素であって、例えば、後輪RL、RRに接続するトーションバーと、該トーションバーとARSアクチュエータ600の回転軸とを連結するラックアンドピニオン機構等を有する。
ARSアクチュエータ600は、本発明の「第1転舵手段」の一構成要素となるモータであって、不図示の電力供給回路により駆動することで、前輪FL、FRの転舵に関連して、後輪RL、RRを転舵させるよう、後輪転舵機構18を動作させる。ARSアクチュエータ600のロータに接続される回転軸は、不図示のギア機構等を介して後輪転舵機構のラックアンドピニオン機構に連結される。ARSアクチュエータ600は、典型的には、ECU100からの指示に応じたトルク或いは回転速度で回転する。該回転運動がラックアンドピニオン機構を介して軸線運動に変換されてトーションバーに伝達されることで、後輪RL、RRが左右に転舵される。
この構成により、車両10のドライバのステアリングホイル12を介した操舵、即ち、前輪FL、FRの転舵に応じてARSアクチュエータ600が回転駆動することで、後輪RL、RRを転舵させることが出来る。尚、前輪FL、FRの転舵に応じてARSアクチュエータ600を駆動する場合のトルク比等は、ECU100によって変動可能に制御されていてよい。このため、ECU100による制御の下、ドライバの操舵に応じて後輪RL、RRを転舵させる際の回転角やトルクは、適宜変更され得る。
ARSアクチュエータ600には、その駆動の態様を検出するARSセンサ610が設けられている。ARSセンサ610は、例えば、ARSアクチュエータ600の回転等を検出することで、ARSアクチュエータ600がECU100の制御の下適切に動作しているか否かを検出する。言い換えれば、ARSセンサ610は、ARSアクチュエータ600に何らかの失陥が生じて、ECU100の制御に従った駆動が行えない状態であるか否かを検出する。ARSセンサ610は、ECU100と電気的に接続されており、検出結果は、ECU100により一定又は不定の周期で参照される。
ECB700は、車両10の前後左右各輪に個別に制動力を付与可能な電子制御式制動装置である。ECB700は、ブレーキアクチュエータ610並びに左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRに夫々対応する制動装置620FL、620FR、620RL及び620RRを備える。
ブレーキアクチュエータ710は、制動装置720FL、720FR、720RL及び720RRに対し、夫々個別に作動油を供給可能な油圧制御用のアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ710は、マスタシリンダ、電動オイルポンプ、複数の油圧伝達通路及び当該油圧伝達通路の各々に設置された電磁弁等であり、電磁弁の開閉状態を制御することにより、各制動装置に備わるホイルシリンダに供給される作動油の油圧を制動装置各々について個別に制御可能である。作動油の油圧は、各制動装置に備わるブレーキパッドの押圧力と一対一の関係にあり、作動油の油圧の高低が、各制動装置における制動力の大小に夫々対応する構成となっている。
ブレーキアクチュエータ710は、ECU100と電気的に接続されており、各制動装置から各車輪に付与される制動力は、ECU100により制御される構成となっている。
本発明の実施の態様においては、ECB700は、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRの夫々に個別に制動力を付与することで、左右輪間での制駆動力差を生じさせ、各車輪に所望の舵角を付与する作用を有する、本発明に係る「第2転舵手段」の他の一具体例である。
車両10は、車載カメラ19及び車速センサ20を備える。
車載カメラ19は、車両10のフロントノーズに設置され、車両10の前方における所定領域を撮像可能な撮像装置である。車載カメラ19は、ECU100と電気的に接続されており、撮像された前方領域は、画像データとしてECU100に一定又は不定の周期で送出される構成となっている。ECU100は、この画像データを解析し、
後述するLKA制御に必要な各種データを取得可能である。
車速センサ20は、車両10の速度である車速Vを検出可能なセンサである。車速センサ20は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
カーナビゲーション装置21は、車両10に設置されたGPSアンテナ及びVICSアンテナを介して取得される信号に基づいて、車両10の位置情報、車両10の周辺の道路情報(道路種別、道路幅、車線数、制限速度及び道路形状等)、信号機情報、車両10の周囲に設置された各種施設の情報、渋滞情報及び環境情報等を含む各種ナビゲーション情報を提供可能な装置である。カーナビゲーション装置21は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によりその動作状態が制御される構成となっている。
ステアリングホイル12は、車両10のドライバからの操舵入力を受け付ける装置だって、アッパーステアリングシャフト13と略一体化して回転可能に連結されている。アッパーステアリングシャフト13には、操舵角センサ16及び操舵トルクセンサ17が接続され、また、アッパーステアリングシャフト13のステアリングホイル12に連結される側とは反対の端部は、VGRSアクチュエータ400に連結される。
操舵角センサ16は、アッパーステアリングシャフト13の回転量を表す操舵角MAを検出可能な角度センサである。操舵角センサ16は、ECU100と電気的に接続されており、検出された操舵角MAは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される。
操舵トルクセンサ17は、ドライバからステアリングホイル12を介して与えられるドライバ操舵トルクMTを検出可能なセンサである。操舵トルクセンサ17は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたドライバ操舵トルクMTは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される。
車両10の走行に関連して、VGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500及びARSアクチュエータ600が正常に作動している状態の転舵制御について説明する。
車両10が走行を開始すると、ECU100は、VGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500及びARSアクチュエータ600の制御を開始する。このとき、ECU100は、車速センサ20において検出される現在の車速Vを参照し、該車速Vに応じてアッパーステアリングシャフト13の回転に応じたロアステアリングシャフト14への回転の伝達比を設定する。VGRSアクチュエータ400は、設定された伝達比を実現するよう、アッパーステアリングシャフト13の回転に対して、VGRSモータの回転による同位相又は逆位相の補助回転を加える。
一般的に、車速Vが高速になるにつれてECU100が設定する伝達比が小さくなるため、アッパーステアリングシャフト13の回転方向に対して逆位相にロアステアリングシャフト14が回転する。他方、車速Vが低速になるにつれてECU100が設定する伝達比が小さくなるため、アッパーステアリングシャフト13の回転方向と同位相にロアステアリングシャフト14がより大きく回転する。このように、左右前輪FL、FRが転舵されることによって、ドライバは車速Vに応じて良好な操舵フィーリングを得ることができる。
一方、ECU100は、ステアリングホイル12を介して入力されたドライバの操舵トルクTの大きさに応じて、EPSアクチュエータ500を駆動させて、ラックバー15に操舵トルクTを軽減するためにアシストトルクTAを付加する。具体的には、ECU100は、操舵トルクセンサ17において検出されるドライバの操舵トルクTに応じて、EPSアクチュエータ500を駆動させるための駆動電流を設定する。
また、ECU100は、左右前輪FL、FRの転舵に合わせて左右後輪RL、RRの目標舵角を算出し、該目標舵角を実現するようARSアクチュエータ600を駆動させて、左右後輪RL、RRを転舵させる、所謂A4WS方式の制御を行う。これにより、車両10の走行において、低車速での車両旋回時の車両応答の向上と、中速・高車速での車両旋回時の安定性の向上とを実現出来る。
(2)動作例
図2を参照して、ECU100の制御の下、車両10に搭載される各装置による走行制御の詳細について説明する。図2は、走行制御の全体の流れを示すフローチャートである。尚、以下に説明する走行制御とは、車両10を例えば車道内の車線である目標走行路に追従させる、所謂LKA等の走行軌跡の制御中において実施される走行支援制御の一である。
ECU100は、車両10の走行中であって、走行軌跡の制御が実施されている場合に、走行制御を開始する(ステップS101)。
走行制御中、ECU100は、車載カメラ、カーナビ装置等を介して、車両10が走行する道路の車線等の走行状態を取得する(ステップS102)。該入力処理は、走行中適宜実施されてもよく、また一定の周期若しくは不定期に実施されてもよい。
ECU100は、取得した走行状態から車両10が走行する上での種々の目標値を演算する(ステップS103)。例えば、ECU100は、車両10が走行中にカーブに差し掛かった場合、道路の車線位置に基づいて、車両10が好適に走行するための目標ヨー角を演算する。
このとき、ECU100は、演算された目標ヨー角に基づいて、車両10をカーブに追従して走行させるための、目標ヨーレート(ステップS104)、目標車体スリップ角(ステップS105)及び、ステアリングホイル12に付加するハンドル反力(言い換えれば、負のアシストトルク)(ステップS106)を夫々演算する。
また、ECU100は、エンジン200におけるアクセル開度及びブレーキストローク等を検出することで、検出結果より走行に係るドライバの意思を確認する(ステップS107)。
ECU100は、VGRSセンサ410、EPSセンサ510及びARSセンサ610において検出される各アクチュエータの失陥状態を参照して、いずれかの装置に失陥が生じているか否かを確認する(ステップS108)
失陥が生じている場合(ステップS108:YES)、ECU100は、先ず、センサにおいて検出される車両10の車体スリップ角を参照する。ECU100は、参照した車体スリップ角に基づいて、目標車体スリップ角を演算する(ステップS110)。このとき、目標車体スリップ角は、典型的には、本来の前輪FL、FR又は後輪RL、RRを転舵させるVGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500、ARSアクチュエータ600の夫々の制御によるものと比較して、より小さい制御量により為し得るものに設定される。具体的な目標車体スリップ角の演算の態様については、後に詳述する。
ECU100は、前輪FL、FR又は後輪RL、RRを転舵させて、演算された目標車体スリップ角を実現するための駆動デバイスを決定する。上述した車両10の例では、駆動力分配装置300が備えるセンターデフ310、フロントデフ320、リアデフ330又はそれらの組合せを代替の駆動デバイスとして決定する。
ECU100は、決定した代替の駆動デバイスの動作により、演算された目標車体スリップ角を実現するために必要な前輪FL、FR又は後輪RL、RRの制御量を演算する(ステップS113)。そして、ECU100は、決定した代替の駆動デバイスに対して、目標車体スリップ角を実現するための制御量を指示し、動作させる(ステップS114)。
他方で、VGRSセンサ410、EPSセンサ510及びARSセンサ610において検出された結果を参照して、いずれの装置にも失陥が検出されていない場合(ステップS108:No)、ECU100は、本来前輪FL、FR又は後輪RL、RRを転舵させる駆動デバイスであるVGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500、ARSアクチュエータ600の夫々の動作により、実現する目標車体スリップ角を演算する(ステップS112)。また、ECU100は、これらの駆動デバイスの動作により、演算された目標車体スリップ角を実現するために必要な前輪FL、FR又は後輪RL、RRの制御量を演算する(ステップS113)。そして、ECU100は、これらの駆動デバイスに対して、目標車体スリップ角を実現するための制御量を指示し、動作させる(ステップS114)。
駆動力分配装置300を用いた車両10の前輪FL、FR又は後輪RL、RRを転舵させる際の動作について図3及び図4を参照して説明する。
図3は、簡略化した車両10を図示し、該車両10の前輪FL、FR又は後輪RL、RRを転舵させる際の制御について図示したものである。
通常、車両10では、ドライバによるステアリングホイル12の操作と、ECU100の制御とに応じてVGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500、ARSアクチュエータ600の各アクチュエータが駆動し、前輪操舵用のラックアンドピニオン機構や、後輪操舵機構を動作させることで、各車輪FL、FR、RL、及びRRの夫々に対してキングピン軸周りのトルクを生じさせ、転舵を実施している。この時の動作によれば、車両の前輪FL、FR及び後輪RL、RRの夫々に、所望の舵角を実現するよう転舵させることが出来る(図3参照)。
図4(a)は、VGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500又はARSアクチュエータ600の夫々の代わりに、駆動力分配装置300を用いて前輪FL、FR又は後輪RL、RRを転舵させる際の駆動力の作用の様子などを示す図である。
尚、ここに記載する駆動力とは、各車輪に作用する駆動力と制動力との差分であって、一例として、車両10の進行方向を正とした成分を示す。各車両には実線矢印で示す駆動力(言い換えれば、正の駆動力)と、点線矢印で示す制動力(言い換えれば、負の駆動力)が夫々作用している。この駆動力と制動力との差分を各車輪の駆動力として図4(b)に夫々矢印として示す。
図4(b)に示されるように、車両10の左前輪FLに作用する駆動力をF_FL、左前輪FRに作用する駆動力をF_FR、左後輪RLに作用する駆動力をF_RL、左後輪RRに作用する駆動力をF_RRのように夫々定義する。
また、前輪FL及びFR間の距離であるフロントトラッド幅をTf、後輪RL及びRR間の距離であるリアトラッド幅をTrと夫々定義する。
図4(b)に示される車両10の各車輪FL、FR、RL、及びRRの夫々に駆動力が作用し、結果、左右輪の間で駆動力差が生じる場合、該駆動力差によって以下の数式に示すようなヨーレートγ及び操舵反力Tが発生する。
Figure 2012166715
ここに、kはキングピンオフセット、Mは車両の運動マトリクスを夫々示す。また、前輪左右駆動力差Ffは、前輪FL、FRに作用する駆動力の差分であり、例えばF_FL−F_Frにより表される。また、後輪左右駆動力差Frは、後輪RL、RRに作用する駆動力の差分であり、例えばF_RL−F_Rrにより表される。
このように前輪FL、FR又は後輪RL、RRに作用する駆動力差に起因するヨーレートγ及び操舵反力Tによって、前輪FL、FR又は後輪RL、RRの舵角が変更され、車両10の転舵が実現される。尚、上述した数式より、作用するヨーレートγ及び操舵反力Tの夫々は、前輪FL、FR又は後輪RL、RRに作用する駆動力差により適宜設定可能となる。このため、ECU100は、駆動力分配装置300を用いることで、所望のヨーレートγ及び操舵反力Tを発生させ、車両10の転舵を実施することが出来る(図4(c)参照)。
このように、車両10では、VGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500又はARSアクチュエータ600等の転舵制御用のデバイスのいずれかが正常に駆動しない等の失陥が発生した場合であっても、代替の駆動デバイスの一例である駆動力分配装置300の動作により、各車輪FL、FR、RL、及びRRの夫々の転舵を実施出来る。 車両10のようなA4WS方式の車両においては、前輪FL、FRの転舵に関連して後輪RL、RRもまた転舵することで、ドライバに対して操舵時の安定性や車両応答の快適性を提供するものである。しかしながら、転舵時に、ARSアクチュエータ600に失陥が生じている等、設定された目標舵角を適切に後輪RL、RRに適用出来ない場合、意図しない舵角を備えた後輪RL、RRによってドライバに違和感を与えることや、車両応答の悪化を生じることがある。
このような状況において、駆動力分配装置300による各車輪FL、FR、RL、及びRRの舵角の制御が有効に作用し、例えばARSアクチュエータ600の失陥による後輪RL、RRが意図しない舵角をとることを防止することが出来る。
しかしながら、駆動力分配装置300は、各車輪FL、FR、RL、及びRRの舵角を変更することが第一の作用ではなく、あくまで駆動力差による舵角を変更するものであって、実現可能な舵角には上限がある場合がある。言い換えれば、VGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500及びARSアクチュエータ600を用いた転舵によって実現可能な各車輪FL、FR、RL、及びRRの舵角であっても、駆動力分配装置300では実現出来ない場合がある。このような場合、VGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500又はARSアクチュエータ600のいずれかにおける失陥に起因して、車輪FL、FR、RL、又はRRがドライバの意図しない舵角をとることを防止出来ず、ドライバの違和感や、車両応答の悪化に繋がる可能性がある。
尚、上述したような車輪FL、FR、RL、又はRRがドライバの意図しない舵角をとる場合と比較すれば、前輪FL、FRの転舵時に、車両10の走行に伴って、後輪RL、RRの舵角が自然に追従する、従来の2WS方式による各車輪FL、FR、RL、又はRRの舵角の方が経験的にドライバに生じる違和感が少なく、また車両応答も好適である場合があると考えられる。
そこで、ECU100は、VGRSアクチュエータ400、EPSアクチュエータ500及びARSアクチュエータ600等の転舵用の機構に何らかの失陥が検出される場合(図2のフローチャート、ステップS108:Yes)、現在の車体スリップ角を演算し、演算結果がもとのA4WS方式の制御によるものと、2WS方式の制御によるものとのどちらの状態量に近いかに応じて、演算する目標車体スリップ角を変更する。具体的には、目標車体スリップ角の演算時に、車両10の状態量が2WS方式の制御によるものに近い場合には、2WS方式の制御によるものと同等となるよう目標車体スリップ角を演算する。他方、目標車体スリップ角の演算時に、車両10の状態量がA4WS方式の制御によるものに近い場合には、A4WS方式の制御によるものと同等となるよう目標車体スリップ角を演算する。
また、このときECU100は、演算された目標車体スリップ角を実現するための目標ヨーレートYRと、該目標ヨーレートを実現するためのドライバの操舵角MAに対する伝達関数YR/MAを、適用する制御方式に応じて設定する。
尚、これら2WS方式の制御によるヨーレート及び車体スリップ角並びにA4WS方式の制御によるヨーレート及び車体スリップ角については、予めROM等の然るべき記憶手段に、車速との関係を含めて格納されている。ECU100は、ステップS109において算出された車体スリップ角、更に車体のヨーレートに応じて、該格納される情報を参照することで目標車体スリップ角及び目標ヨーレートを設定してもよい。
具体的な例について、図5乃至図12を参照して説明する。
図5は、車両10が左カーブを走行している際に、左転舵を行おうとしたARSアクチュエータ600に失陥が生じ、後輪RL、RRの適切な転舵が実現出来ていない場合の車両10の様子を示す図である。図5に示されるように、このときの車両10の前輪FL、FRは左方向に転舵し、後輪RL、RRも同位相である左方向に転舵した状態となる。このように前輪FL、FRと後輪RL、RRとが同位相の舵角を有するため、車両10の車体スリップ角は、2WS方式の制御時と比較して大きいものとなる。
図6は、2WS方式及びA4WS方式の夫々の制御と同様の制御を実現するためにECU100がドライバの操舵による操舵角MAに対して付加する伝達関数について、車両10の車速との関係を示すグラフである。図6(a)は、車両10の車速と、操舵角MAの入力に対して目標ヨーレートYRを実現するために付加する伝達関数YR/MAとの関係を示すグラフである。図6(b)は、車両10の車速と、操舵角MAの入力に対して車体スリップ角SAを実現するために付加する伝達関数SA/MAとの関係を示すグラフである。尚、いずれのグラフにおいても、2WS方式の制御における伝達関数は点線部、A4WS方式の制御における伝達関数は実線部により夫々示される。
一般的に、左方向(又は右方向)への転舵時の操舵角MAに基づくヨーレートYRへの伝達関数YR/MAは、2WS方式の制御下では中速時にピークがあり、A4WS方式の制御下では2WSの制御下より低速時により低いピークがある。また、この場合の操舵角MAに基づく車体スリップ角SAへの伝達関数SA/MAは、2WS方式の制御下では比較的大きいものの、速度上昇に伴って次第に減少して中速時にはほぼ0となり、高速時には逆位相の角度となる。また、A4WS方式の制御下では、低速時においても比較的小さく、中速に近付くにつれて0となるよう制御され、更に車速が上昇しても略0、或いはそれに近い逆位相の角度を取り得る。
左カーブを比較的低車速で走行中の車両10が左方向に転舵している間にARSアクチュエータ600が失陥した場合、車両10の操舵角MAに基づく車体スリップ角SAへの伝達関数SA/MAは、図6(b)に示されるように2WS方式の制御時よりも大きくなる。このとき、ECU100は、伝達関数SA/MAの状態量がより近い2WS方式による制御下と同様の舵角を有するよう、駆動力分配装置300を動作させる。結果、各車輪FL、FR、RL及びRRの舵角が2WS方式の制御によるものと同様となるためドライバに違和感を与えることなく、走行を継続できる。
左カーブを比較的高車速で走行中の車両10が左方向に転舵している間にARSアクチュエータ600が失陥した場合においても、車両10の後輪RL、RRの舵角は、前輪FL、FRの舵角と同位相となるため、操舵角MAに基づく車体スリップ角SAへの伝達関数SA/MAは2WS方式の制御時よりも大きくなる。図7(b)に示されるように、このとき、ECU100は、伝達関数SA/MAの状態量がより近い制御方式を選択して、選択された制御方式によるものと同様の車体スリップ角を目標車体スリップ角として演算する。
結果として、2WS方式の制御によるものと同様の目標車体スリップ角が演算される場合、各車輪FL、FR、RL及びRRの舵角が2WS方式の制御によるものと同様となるためドライバに違和感を与えることなく走行を継続できる。また、A4WS方式の制御によるものと同様の目標車体スリップ角が演算される場合、各車輪FL、FR、RL及びRRの舵角がARSアクチュエータ600の失陥前と同様であるため、この場合でもドライバに違和感を与えることなく走行を継続できる。
図8は、車両10が右カーブを走行している際に、左転舵を行おうとしたARSアクチュエータ600に失陥が生じ、後輪RL、RRの適切な転舵が実現出来ていない場合の車両10の様子を示す図である。図8に示されるように、このときの車両10の前輪FL、FRは右方向に転舵しているものの、後輪RL、RRは逆位相である左方向に転舵した状態となる。このように前輪FL、FRと後輪RL、RRとが逆位相の舵角を有するため、車両10の車体スリップ角は、2WS方式の制御時と比較して小さいものとなる。
右カーブを比較的低車速で走行中の車両10が左方向に転舵している間にARSアクチュエータ600が失陥した場合、車両10の後輪RL、RRの舵角は、前輪FL、FRの舵角と逆位相となっているため、操舵角MAに基づく車体スリップ角SAへの伝達関数SA/MAは2WS方式の制御時よりも小さくなる。図9(b)に示されるように、このとき、ECU100は、伝達関数SA/MAの状態量がより近い制御方式を選択して、選択された制御方式によるものと同様の車体スリップ角を目標車体スリップ角として演算する。
結果として、2WS方式の制御によるものと同様の目標車体スリップ角が演算される場合、各車輪FL、FR、RL及びRRの舵角が2WS方式の制御によるものと同様となるためドライバに違和感を与えることなく走行を継続できる。また、A4WS方式の制御によるものと同様の目標車体スリップ角が演算される場合、各車輪FL、FR、RL及びRRの舵角がARSアクチュエータ600の失陥前と同様であるため、この場合でもドライバに違和感を与えることなく走行を継続できる。
右カーブを比較的高車速で走行中の車両10が左方向に転舵している間にARSアクチュエータ600が失陥した場合、車両10の操舵角MAに基づく車体スリップ角SAへの伝達関数SA/MAは、図10(b)に示されるように2WS方式の制御時よりも小さくなる。このとき、ECU100は、伝達関数SA/MAの状態量がより近い2WS方式による制御下と同様の舵角を有するよう、駆動力分配装置300を動作させる。結果、各車輪FL、FR、RL及びRRの舵角が2WS方式の制御によるものと同様となるためドライバに違和感を与えることなく、走行を継続できる。
(3)効果
以上、説明した構成によれば、LKA等、車輪を転舵させて車両の走行軌跡を制御する機能を有する所謂A4WS方式の転舵制御を実現する車両において、車輪を転舵させる転舵機構を駆動するアクチュエータ系に失陥が生じる場合であっても、ドライバに違和感を生じない範囲で車両の転舵を制御出来る。
尚、LKA等の走行軌跡の制御が実施されている間に、転舵機構を駆動するアクチュエータ系に失陥が生じる場合に、代替の駆動デバイスによって車両のヨーレートを制御することで転舵を実施する方法も考えられる。しかしながら、車両のヨーレートのみを制御する場合、車体の車体スリップ角については何らの措置もされない為、走行に応じた成り行きの状態となってしまい、結果としてドライバに違和感を与えることや、車両応答の悪化に繋がる可能性がある。具体的には、ヨーレートと車体スリップ角との関係が(1)転舵時に車両の前輪のみを転舵させる所謂2WS方式の制御によるもの、(2)前輪の転舵に関連して後輪を転舵させる所謂A4WS方式の制御によるもの、及び(3)2WS方式の制御によるものと4WS方式の制御によるものとの間、のいずれかである場合、ドライバに違和感を与えることがない。言い換えれば、車両のヨーレートと車体スリップ角との関係が上述した範囲外である場合、ドライバにとって経験したことがないものとなり、違和感を与えることになる。
上述のように、A4WS方式の制御下で走行中に、転舵機構を駆動させるアクチュエータ系に失陥が生じる場合、左右輪の駆動力差等を制御する代替の駆動デバイスによって車輪を転舵させ、A4WS方式の制御を継続しようとする場合、代替の駆動デバイスに対して要求される制御量が、適用可能な制御量を超過する場合が考えられる。このような場合には、結局、A4WS方式の制御が継続出来ず、ヨーレートと車体スリップ角との関係が上述の範囲外のまま維持されることとなり、結果としてドライバに違和感を与える可能性がある。
このような状況下では、代替の駆動デバイスの動作によりA4WS方式の制御を継続するよりも、2WS方式の制御と同様の制御を行う方が代替の駆動デバイスに要求される制御量が少なく、適用可能な制御量で実現可能な場合があり得る。本発明に係るECU100の制御によれば、転舵機構を駆動させるアクチュエータ系の失陥時に、2WS方式とA4WS方式のいずれかであって、代替の駆動デバイスに要求される制御量がより少ない方を選択し、車両のヨーレートと車体スリップ角との関係が選択された方式での制御によるものと同様の態様を取るよう、代替の駆動デバイスを動作させる。従って、ドライバに対して違和感を与えることなく、車両の走行軌跡の制御を継続することが出来る。
例えば、ECU100は、転舵機構を駆動させるアクチュエータ系の失陥時に、代替の駆動デバイスが動作していない状態の車体スリップ角SAを、2WS方式の制御下での同条件での車体スリップ角SA2wsと比較した差分を評価関数J2wsとする。他方で、A4WS方式の制御下での同条件での車体スリップ角SAA4wsと比較した差分を評価関数JA4wsとする。そして、評価関数J2wsと評価関数JA4wsとを比較し、評価関数がより小さい制御方式を選択する。これらの評価関数については、例えば、以下の式(2)より算出する。
Figure 2012166715

ECU100は、選択した制御方式での車体スリップ角を目標車体スリップ角として、代替の駆動デバイスに指示し、動作させる。
尚、上述した動作例では、代替の駆動デバイスの動作の態様について、車両の車体スリップ角に注目して採用する制御方式の選択や、駆動の態様を決定することについて説明している。一般的に、走行軌跡の制御中には、車両が取るヨーレート、又は取るべき目標ヨーレートは、車線の形状、言い換えれば走行軌跡により定まる。従って、違和感のない走行軌跡の制御を継続するためには、上述した動作例のように、車両の車体スリップ角を制御することで充分であると言える。
しかしながら、ECU100は、ヨーレートについても考慮した上で採用する制御方式を決定し、該制御方式によるものと同等のヨーレート及び車体スリップ角を目標ヨーレート及び目標車体スリップ角として、代替の駆動デバイスに指示し、動作させてもよい。
例えば、ECU100は、転舵機構を駆動させるアクチュエータ系の失陥時に、代替の駆動デバイスが動作していない状態のヨーレートγ及び車体スリップ角SAを、2WS方式の制御下での同条件でのヨーレートγ2ws及び車体スリップ角SA2wsと比較した差分を評価関数J2wsとし、A4WS方式の制御下での同条件でのヨーレートγA4ws車体スリップ角SAA4wsと比較した差分を評価関数JA4wsとして、評価関数がより小さい方の制御方式を選択する。これらの評価関数については、例えば、以下の式(3)より算出する。
Figure 2012166715

このように車両の運動状態に対応する状態量として、車体スリップ角に加えて車体のヨーレートをも考慮して目標状態量を決定することにより、より適切に目標状態量を設定可能となる。結果、ドライバに与える違和感をより低減し、好適な走行を維持可能となる。
尚、上述した例では、目標状態量として2WS方式の制御によるものと、A4WS方式の制御によるものとの内のいずれかを選択する場合について説明している。しかしながら、これらはヨーレートと車体スリップ角との関係がドライバに違和感を与えない範囲である一例であって、その他公知非公知を問わず、ドライバに与える違和感を多少なりと軽減可能な状態量であれば該状態量を目標状態量として、車両の運動状態を切り替える制御を実施してもよい。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の走行制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
FL、FR、RL、RR…車輪、
10…車両、
11…プロペラシャフト、
12…ステアリングホイル、
13…アッパーステアリングシャフト、
14…ロアステアリングシャフト、
15…ラックバー、
16…操舵角センサ、
17…操舵トルクセンサ、
100…ECU、
200…エンジン、
300…制駆動力分配装置、
310…センターデファレンシャル機構、
320…フロントデファレンシャル機構、
330…リアデファレンシャル機構、
400…VGRSアクチュエータ、
410…VGRSセンサ、
500…EPSアクチュエータ、
510…EPSセンサ、
600…ARSアクチュエータ
610…ARSセンサ、
700…ECB、
710…ブレーキアクチュエータ、
820FL、720FR、720RL、720RR…制動装置。

Claims (6)

  1. 前輪及び後輪の舵角を制御可能な転舵機構を有する車両の走行制御装置であって、
    前記転舵機構を駆動させる第1転舵手段及び第2転舵手段と、
    前記第1転舵手段及び第2転舵手段が前記転舵機構を駆動させる際の動作の態様を制御する制御手段と、
    前記第1転舵手段において失陥が生じたことを検出する検出手段と
    を備え、
    前記制御手段は、前記第1転舵手段に失陥が生じた場合、前記車両の運動状態に対応する状態量が、前記第2転舵手段の動作により適用可能な範囲内で設定する目標状態量となるように、前記第2転舵手段を動作させることを特徴とする走行制御装置。
  2. 前記制御装置は、(i)前輪の舵角を制御可能な2輪操舵方式による制御に基づく前記状態量、及び(ii)前輪の舵角を制御可能であり、且つ該前輪の舵角に関連して後輪の舵角を制御可能な4輪操舵方式による制御に基づく前記状態量のいずれかのうち、前記第1転舵手段に失陥が生じた時の前記車両の運動状態に対応する状態量に近い方を前記目標状態量として設定することを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
  3. 前記状態量は、前記車両の運動状態における車体スリップ角であることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行制御装置。
  4. 前記状態量は、前記車両の運動状態における車体スリップ角及び前記車両のヨーレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行制御装置。
  5. 前記第1転舵手段は、前記車両のドライバによる操舵に応じて前記転舵機構を駆動させ、
    更に、少なくとも、
    前記第1転舵手段が、前記ドライバによる操舵に応じて前記転舵機構を駆動させる際の伝達比を変更する伝達比可変機構と、
    前記前輪の転舵に応じて前記後輪を転舵させる後輪転舵機構と
    を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の走行制御装置。
  6. 前記第2転舵手段は、前記前輪及び前記後輪の少なくとも一方について、左右の車輪に作用する制駆動力を個別に変化させることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の走行制御装置。
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