JP2012166265A - 金網 - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量でかつ剛性を兼ね備えた金網を提供することを目的とする。
【解決手段】縦線2と横線3を格子状に織った金網1であって、縦線2と横線3は、質量%でC:0.6〜1.3%、Si:0.01〜1.50%、およびMn:0.05〜2.0%を含有し、長手方向にラメラ状に並んだパーライト組織を有し、線径0.1〜2mmの鋼線材からなり、前記縦線と前記横線の少なくとも一方はクリンプ加工され、引張強度が800〜4500MPaであり、前記縦線同士および前記横線同士の線間隔が0.2mm〜30mmであり、前記縦線と前記横線の交差位置における前記鋼線材のクリンプ角度θ°が95≦θ<180、公称引張強度が800MPa以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼線材からなる縦線と横線を格子状に織った金網に関する。
鋼線材を格子状に織った金網は、例えばコンクリートや樹脂などの補強部材として広く利用されている。また、かかる金網は、工業用機械、土木、建築機械、構造物の補強部材、自動車ボディー、ドライブシャフトなどの部品の補強部材として、幅広い適用範囲が期待される。
従来、そのような金網に関し、例えば線径160μm以下のピアノ線等を複数本撚り合わせた撚り線で構成された金網が知られている(特許文献1、2参照)。これらの先行技術によれば、金網で補強することにより、コンクリートや樹脂などの引張強度を大幅に改善できるといった利点がある。
特開平3−52733号公報 特開平1−221229号公報
しかしながら、上記の技術は、一度撚り線を形成してから格子状に網を作成する技術であって、これは構造伸びが増えるといった長所があるものの、製造工程が増える、素線の径の選択の範囲が狭まる、網としての形状を出しにくいといった欠点を有する。また、金網を構成する線材の強度についての検討はされていたものの、線材を格子状に織った金網自体の強度については十分な検討がなされていなかった。このため、軽量でかつ剛性を兼ね備えた金網の出現が望まれていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、軽量でかつ剛性を兼ね備えた金網を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明によれば、縦線と横線を格子状に織った金網であって、前記縦線と前記横線は、質量%でC:0.6〜1.3%、Si:0.01〜1.50%、およびMn:0.05〜2.0%を含有し、線材の長手方向にラメラ状に並んだパーライト組織を有し、線径0.1〜2mmの鋼線材からなり、前記縦線と前記横線の少なくとも一方はクリンプ加工され、引張強度が800〜4500MPaであり、前記縦線同士および前記横線同士の線間隔が0.2mm〜30mmであり、前記縦線と前記横線の交差位置における前記鋼線材のクリンプ角度θ°が95≦θ<180、公称引張強度が1000MPa以上であることを特徴とする、金網が提供される。
前記鋼線材は、更に、質量%で、Al:0.05%以下に規制し、更に、Cr:0.01〜1.0%、Nb:0.001〜0.20%、Co:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Cu:0.001〜0.2%、Mo:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、W:0.01〜0.2%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.007%よりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有することができる。
本発明によれば、軽量でかつ剛性を兼ね備えた金網を提供することが可能となる。
本実施の形態にかかる金網の平面図である。 本実施の形態にかかる金網の側面図である。 鋼線材のクリンプ角度(折れ曲がり角度)とクリンプ強度(クリンプ加工された鋼線材の引張強度)との関係を示すグラフである。 クリンプ強度測定方法の説明図である。 金網の特性試験の説明図である。 本発明例27と比較例60のクリンプ角度と鋼線材径、鋼線間隔の説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態の一例について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1に示すように、金網1は、いずれも円形断面形状の鋼線材からなる複数の縦線2と複数の横線3を互いに直交させて格子状に織った構成を有している。ここで、縦線2は、金網1を構成する全ての鋼線材のうち、図1において縦方向に走る鋼線材を意味する。横線3は、金網1を構成する全ての鋼線材のうち、縦線2と直交する幅方向(図1において横方向)に走る鋼線材を意味する。金網1は、隣接するいずれの縦線2同士および隣接するいずれの横線3同士においても縦線2と横線3の上下関係が逆になるように、縦線2と横線3を格子状に織った構成を有し、縦線2同士と横線3同士の間には、両者に囲まれた正方形もしくは長方形の隙間(網目)4が形成されている。
隣接するいずれの縦線2同士および隣接するいずれの横線3同士においても縦線2と横線3の上下関係が逆になるように、縦線2と横線3が格子状に織られていることにより、図2に示すように、金網1の側面から見た状態では、縦線2と横線3が交差する位置では、縦線2と横線3の少なくとも一方はクリンプ角度(折れ曲がり角度)θ°で折れ曲がった状態となっている。このようにクリンプ角度θ°で折れ曲がった部分をコーナー部cと呼ぶ。鋼線材をクリンプ加工することにより、縦線2と横線3の少なくとも一方にはコーナー部cが予め形成されている。金網1を構成した際には、縦線2もしくは横線3のコーナー部cの内側部分に、他方の鋼線材(縦線2もしくは横線3)が接するようになる。即ち、縦線2のみがクリンプ加工されている場合は、縦線2のコーナー部cの内側部分に(クリンプ加工されていない)横線3が接している。また、横線3のみがクリンプ加工されている場合は、横線3のコーナー部cの内側部分に(クリンプ加工されていない)縦線2が接している。また、縦線2と横線3の両方がクリンプ加工されている場合は、縦線2のコーナー部cの内側部分と横線3のコーナー部cの内側部分が互いに接している。
<鋼線材の組成>
縦線2と横線3に用いられる鋼線材は、質量%でC:0.6〜1.3%、Si:0.01〜1.50%、およびMn:0.05〜2.0%を含有する。鋼線材の炭素濃度を0.6質量%以上とすることにより、鋼線材の引張強度を確保でき、金網1として必要とされる剛性を確保することができる。鋼線材の炭素濃度が0.6質量%未満では、必要な剛性を得るために鋼線材を太くしなければならず、軽量な金網1が得られなくなってしまう。
一方、鋼線材の炭素濃度が高すぎると、金網1の剛性を高めることはできるが、鋼線材が高炭素濃度となり1.3%を超えると粒界に網状セメンタイトまたは粗大なセメンタイトが析出して鋼線材(ワイヤ)の延性低下が顕著になり、かつ伸線性が劣化する。そのため、鋼線材の炭素濃度は1.3質量%以下とする。
Siは、パーライト中のフェライトを強化させるためと鋼の脱酸のために有効な元素である。しかしながら、Siが0.01%未満では上記の効果が期待できず、一方、Siが1.50%を超えると伸線加工性に対して有害な硬質のSiO系介在物が発生しやすくなる。このため、Siの含有量を質量%で0.01〜1.50%の範囲に制限した。
Mnは、脱酸、脱硫のために必要であるばかりでなく、鋼の焼入性を向上させパテンティング処理後の引張強さを高めるために有効な元素である。しかしながら、Mnが0.05%未満では上記の効果が得られず、一方、Mnが2.0%を超えると上記の効果が飽和し、更にパテンティング処理時のパーライト変態を完了させるための処理時間が長くなりすぎて生産性が低下してしまう。さらに圧延時にも過冷組織(ベイナイト)などを生じやすくなり、従来の工程では伸線できなくなることが多い。このため、Mnの含有量を質量%で0.05〜2.0%の範囲に限定した。
Alの含有量は、硬質非変形のアルミナ系非金属介在物が生成して鋼線の延性劣化と伸線性劣化を招かないように質量%で0%を含む0.05%以下と規定した。
なお、不純物であるPとSは特に規定しないが、従来の極細鋼線と同様に延性を確保する観点から、質量%で各々0.02%以下とすることが望ましい。両者とも好ましくは0.01%以下、さらに0.005%以下に制限することがより好ましい。
本発明に用いられる鋼線材は上記元素を基本成分とするものであるが、更に強度、靭性、延性等の機械的特性の向上を目的として、以下の様な選択的許容添加元素を1種または2種以上、積極的に含有してもよい。
Cr:0.01〜1.0%、Nb:0.01〜0.20%、Co:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Cu:0.001〜0.2%、Mo:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、W:0.001〜0.2%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.007%
Crは、パーライトのラメラー間隔を微細化し、最終パテンティング処理後の引張強さを高めるとともに、特に伸線加工硬化率を向上させる有効な元素である。しかしながら、Crが0.01%未満では効果が小さく、一方、Crが1.0%を超えるとパテンティング処理時のパーライト変態終了時間が長くなり生産性が低下してしまう。このため、Crの含有量を質量%で0.01〜1.0%の範囲とすることが好ましい。
Nbは、パーライトのラメラー間隔を微細化し、パテンティング処理後の引張強さを高める効果があり、更に最終パテンティング処理時のオーステナイト粒の細粒化効果を有する。しかしながら、Nbが0.001%未満ではその効果が小さく、一方、Nbが0.20%を超えて添加されてもその効果が飽和してしまう。このため、Nbの含有量を質量%で0.001〜0.20%の範囲とすることが好ましい。
Coは、熱間圧延線材及び最終パテンティング処理後の鋼線の伸線加工性を高める作用がある。しかしながら、Coが0.01%未満ではその効果が小さく、一方、Coが1.0%を超えても添加量に見合う効果が発揮できない。このため、Coの含有量を質量%で0.01〜1.0%の範囲とすることが好ましい。
Vは、パーライトのラメラー間隔を微細化し、パテンティング処理後の引張強さを高める効果がある。しかしながら、この効果はVが0.01%未満ではその効果が小さく、一方、Vが0.5%を超えるとその効果が飽和してしまう。このため、Vの含有量を質量%で0.01〜0.5%の範囲とすることが好ましい。
Cuは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには質量%で0.001%以上の添加が好ましい。しかし過剰に添加すると、Sと反応して粒界中にCuSを偏析するため、線材製造過程で鋼塊や線材などに疵を発生させる。この様な悪影響を防止するために、含有量の上限を質量%で0.2%とした。
Moは、焼入性向上効果により、パテンティング処理時の強度を増加させる効果がある。しかしながら、Moが0.01%未満ではその効果が小さく、一方、Moが0.5%を超えても熱間圧延後の組織に伸線加工性を劣化させるベイナイトを発生しやすくなる。このため、Moの含有量を質量%で0.01〜0.5%の範囲とすることが好ましい。
Niは線材の強度上昇にはあまり寄与しないが、伸線材の靭性を高める元素である。この様な、作用を有効に発揮させるには質量%で0.01%以上の添加が好ましい。一方、Niを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、含有量の上限値を質量%で0.5%とした。
Wは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには質量%で0.01%以上の添加が好ましい。一方、Wを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、含有量の上限値を質量%で0.2%とした。
Tiは有効な脱酸元素であり、その作用を有効に発揮させるためには質量%で0.01%以上の添加が好ましい。一方、Tiを多量に添加すると炭素あるいは窒素と結合して延性を劣化させるため、含有量の上限値を質量%で0.1%とした。
Bは、焼入性の向上効果によりパテンティング処理後の強度を向上させるために添加する。しかしながら、Bが0.0001%未満ではその効果が小さく、一方、Bが0.007%を超えもその効果が飽和してしまう。このため、Bの含有量を質量%で0.0001〜0.007%の範囲とすることが好ましい。
<鋼線材の製造>
金網を構成する縦線2と横線3に用いられる鋼線材は、上記の成分元素含有量を有し、例えば次のようにして製造される。
先ず、所定の線径、成分を含有する炭素鋼熱間圧延線材を、酸洗などによりスケ−ル除去し、引き続きリン酸亜鉛被膜処理などの潤滑被膜処理後、乾式潤滑剤を用いて所定の線径まで冷間ダイス伸線などを行う。その鋼線材を約1000℃に加熱してオーステナイト組織とし、その後、450〜650℃の鉛浴中で急冷するパテンティング処理行う。パテンティング処理を施した炭素鋼線材の組織は、板状結晶のセメンタイトと板状結晶のフェライトが、それぞれ交互に層状に配置されたラメラ構造を有する微細パーライト組織となる。そのパテンティング処理を施した鋼線材を、更にダイス等を用いて冷間で、0.1〜2mmの所定の線径まで冷間で伸線加工を行う。
こうして製造された鋼線材(縦線2と横線3)は、長手方向にラメラ状に並んだパーライト組織を有し、引張強度TS=1000〜5000MPaを有している。鋼線材が長手方向にラメラ状に並んだパーライト組織であることは、鋼線材を長手方向に平行に切断し、透過電子顕微鏡用薄膜試料を作成し、200keV以上の透過電子顕微鏡で、10万倍以上の倍率で、10視野観察することで、確認することができる。
<鋼線材の線径d>
縦線2と横線3に用いられる鋼線材の線径dは0.1〜2mmである。但し、縦線2の線径dと横線3の線径dは等しい必要は無い。鋼線材の線径dが0.1mm未満では、金網1として必要とされる剛性を確保することが困難となる。一方、鋼線材の線径dが2mmを越えると、金網1の剛性を高めることはできるが、軽量な金網1が得られなくなってしまう。好ましくは、鋼線材の線径dは0.17mm以上2mm以下である。
そして、このようにして得られた鋼線材をクリンプ加工し、所定の間隔(金網の線間隔L、M)でコーナー部cを形成することにより縦線2、横線3が製造される。なお、クリンプ加工は、縦線2、横線3の両方に施しても良いし、どちらか一方のみに施しても良い。ここで、クリンプ加工とは鋼線材を歯車形状の工具に挟み込むことで凹凸の波形状を鋼線材の所定の位置に成型する加工である。金網1を織りあげてゆく工程で縦線2と横線3が上下に重なり合うこととなる位置に、予めクリンプ加工により鋼線材に対してコーナー部cを精度よく配列して形成しておく。
<鋼線材のクリンプ角度>
図2に示すように、金網1の側面から見た状態では、縦線2と横線3が交差する位置では、縦線2と横線3の少なくとも一方はクリンプ角度θ°で折れ曲がった状態となっている。かかるクリンプ角度θ°は、上記クリンプ加工によって形成される。ここで、縦線2と横線3の交差位置における鋼線材のクリンプ角度θ°は、95≦θ<180であることが必要である。金網1の縦線2と横線3の交差位置において、縦線2のコーナー部cの内側部分に横線3を位置ずれさせること無く接しさせておくために、あるいは、横線3のコーナー部cの内側部分に縦線2を位置ずれさせること無く接しさせておくために、クリンプ角度θ°が180°未満でなければならないのは当然である。一方、クリンプ角度θ°が小さくなりすぎると、クリンプ加工された鋼線材の引張強度が急激に下がることが判明した。
ここで、C:0.80質量%、Si:0.25質量%、Mn:0.57質量%の鋼を圧延、伸線を行い、1.0mmφの鋼線材線を作成し、クリンプ加工した。クリンプ角度とクリンプ加工後の鋼線材の引張強度との関係を調べ、図3を得た。この図3に示されるように、クリンプ角度θ°が95°未満になると、クリンプ加工された鋼線材の引張強度が急激に下がってしまう。クリンプ加工後の鋼線材(縦線2、横線3)について十分な引張強度を維持するためには、縦線2もしくは横線3の交差位置(コーナー部c)における鋼線材の折れ曲がり角度(クリンプ角度)θ°は、95≦θ<180であることが必要である。
<クリンプ加工された鋼線材の引張強度(クリンプ強度)>
金網1を構成する縦線2と横線3の少なくとも一方は、鋼線材をクリンプ加工して波型に加工されているため、縦線2もしくは横線3(クリンプ線)の引張強度は、鋼線材の引張強度TS(1000〜5000MPa)よりも低下する。しかし、上述したようにクリンプ角度θ°が95≦θ<180の範囲であれば、その低下は元の鋼線材の引張強度TSの約80〜90%程度以上であり、クリンプ加工された鋼線材の引張強度は800〜4500MPaに維持される。
縦線2と横線3の引張強度を測定方法の一例としては、図3に示すように、縦線2、横線3の両端部をチャック9で固定する。そして、チャック9を介して縦線2、横線3に引っ張り力Fを加えて引っ張り試験を行い、破断加重から引張強度を求めることができる。
<金網の形成方法>
金網1の形成する織り方や編み方などは特に制限されない。金網の形成方法として平織り、綾織、たたみ織り、たたみ綾織り等が挙げられる。織りや編みではなくても、溶接によっても構わない。クリンプ加工によって形成された縦線2のコーナー部cの内側部分に横線3が接するように、あるいは、クリンプ加工によって形成された横線3のコーナー部cの内側部分に縦線2が接するように、縦線2と複数の横線3を互いに直交させて格子状に織ることにより、金網1を形成することができる。
<金網の線間隔L、M>
金網1を形成した際、隣接する縦線2同士の線間隔L(隣接する縦線2の中心線同士の線間隔L)は0.2mm〜30mmである。また、隣接する横線3同士の線間隔M(隣接する横線3の中心線同士の線間隔M)は0.2mm〜30mmである。線間隔L、Mが0.2mm未満では、軽量化の効果が低下する。また、網の作成も容易でなくなる。線間隔L、Mは補強材としての性能を考慮すると30mm以下であることが必要である。特に、線間隔L、Mは補強材としての性能を考慮すると10mm以下であることが好ましい。但し、縦線2同士の線間隔Lと横線3同士の線間隔Mは等しい必要は無い。縦線2と横線3に囲まれた隙間(網目)4が正方形であれば、線間隔L=線間隔Mとなり、隙間(網目)4が長方形であれば、線間隔L≠線間隔Mとなる。線間隔L、Mが30mmを超えると線の本数が少なくなりすぎ、支えることのできる荷重が小さくなり、補強材などの強度部材としての役割を果たしにくくなる。
<金網の特性>
図4に示すように、以上のように構成された金網1の両端部に例えば樹脂などを固めた固定具10を取り付ける。そして、固定具10を介して金網1全体に引っ張り力Fを加えて引っ張り試験を行い、公称引張強度σと、公称引張のびεによって金網1の特性を評価する。上述した鋼線材の炭素濃度、線径d、線間隔L、M、折れ曲がり角度θ°の条件を満足する本発明の金網1は、公称引張強度σ=1000MPa以上を有し、公称引張のびは例えばε=3%以上となる。
ここで言う公称引張強度σとは金網1を引張試験機により引張った場合の破断荷重P(N)に対して、線の本数nと線径d(mm)から計算される縦線2または横線3の断面積で除したものであり、式1により計算される強度を指す。
(式1) 公称引張強度
Figure 2012166265
一方、縦線2または横線3の本数は線間隔と関係は単位長さあたりの本数n、線間隔L(またはM)は、試験片幅W(mm)に対して、
(式2) L(mm)=W(mm)/N(本)
であり、
(式3) n(本/mm)=N(本)/W(mm)
である。
実施例(本発明例および比較例)に用いた鋼線材の化学成分、圧延−伸線−クリンプ加工−金網製造した場合の金網構造因子(クリンプ加工を行った鋼線材の引張強さTS、線径d、線間隔L、M)および金網の特性(公称引張強度)の関係を表1、2に示す。鋼の化学成分、圧延材の線径、伸線での減面率を各々種々変えることで、種々の線径、種々の引張強度をもった鋼線材を作製した。伸線性は、伸線加工において、10m以下に鋼線材が断線した場合を×と評価し、10m以下に断線することがなかった場合を○と評価した。伸線後クリンプ加工した鋼線材を長手方向に平行に切断し、透過電子顕微鏡用薄膜試料を作成し、200keV以上の透過電子顕微鏡で、10万倍以上の倍率で、10視野観察したところ、本発明例の鋼線材の組織は、すべて長手方向にラメラ状に並んだパーライト組織であることを確認した。
Figure 2012166265
Figure 2012166265
クリンプ加工された鋼線材の強度と金網の公称引張強度はほぼ比例関係にあり、公称引張強度は鋼線材(縦線)1本あたりに換算しているため、クリンプ加工された鋼線材の強度が高いと金網の公称引張強度が高い。従来に見られた網に用いられた材料(比較例36)ではクリンプ加工された鋼線材の強度が低く、さらに金網の公称引張強度も低い。このことはほぼ同様の形状の金網を作成された発明例、たとえば本発明例25などと比較しても低いレベルであり、破断までに支えることのできる破断荷重が本発明例に比べて低いことがわかる。
鋼線材の線径dの大きさに関わらず、クリンプ強度および金網の公称引張強度の間の比率は大きく変動しない。
むしろクリンプ角度の影響が大きく、図4に示すように95°を下回るクリンプ角度ではクリンプ加工された鋼線材の強度が急激に低下する。比較例34に見られるようにクリンプ角度が小さいと、金網の公称引張強度が1000MPaを下回った。クリンプ角度が小さいと補強材としての役割に劣ることが示された。また、クリンプ角度が大きくても、伸線材(素線)の強度が低いと、クリンプ強度が低く、金網の公称引張強度が低くなる(たとえば比較例35)。
線間隔L、Mの影響をみると、L、Mとも規定範囲内であれば、金網の公称引張強度は十分確保され、引張強度が低強度の材料を用いた金網よりも金網強度も高く、補強材などの強度部品に用いることができる。
比較例No.60、61は、鋼成分と線径dは本発明の範囲内であるが(鋼成分と線径dは実施例No.27と同じ)、伸線前の素材外周を切削加工するなどしてあらかじめ小径化して伸線し、最終線径までの伸線減面率を小さくした例である。そのため加工硬化による強化量が小さく、引張強度が不足している。この不足を補うため、図6に示すように、発明例No.27の線間隔L、Mが2.0mmであるのに対して、比較例No.60では、線間隔L、Mを1.0mmと小さくした。また、比較例No.61では、線間隔L、Mを0.6mmと更に小さくした。
比較例No.60では、線間隔L、Mを発明例No.27のほぼ1/2の線間隔として、線数Nを増加させているが、この程度の線数の増加では引張強度の不足を補うことができず、発明例No.27に比べて網強度(破断荷重)は低い。また、線間隔L、Mの減少のため、クリンプ角度θも減少すると、公称強度はむしろ低下する傾向にあった。線間隔L、Mが小さくなることで、単位面積あたりに使用する鋼線使用量が増加し、金網の重量が増加することになる。たとえば、1m当たりの網重量は実施例27で1.5kg程度であるにもかかわらず、引張強度の低い比較例60では線間隔を発明例27の1/2にすると、使用線量が2倍に増加するとともに、クリンプ角度が小さくなる傾向にあるため、3.2kg以上と発明例の2倍以上の重量になる。そのため、他の素材と組み合わせた複合材料の補強材としては不適切である。本発明はこのように重量という観点からみても従来にないものである。
比較例No.61では、さらに線間隔L、Mを小さくすることを狙ったが、クリンプ線材までは作成できるものの、線間隔L、Mが小さすぎるために実質的に製網することができなかった。このことは低強度素材の使用線数の増加による金網強度の増加には限界があることを示している。
本発明は、土木、建築、各種生産業などの分野において有用である。
1 金網
2 縦線
3 横線
4 隙間(網目)
10 固定具

Claims (2)

  1. 縦線と横線を格子状に織った金網であって、
    前記縦線と前記横線は、質量%でC:0.6〜1.3%、Si:0.01〜1.50%、およびMn:0.05〜2.0%を含有し、線材の長手方向にラメラ状に並んだパーライト組織を有し、線径0.1〜2mmの鋼線材からなり、前記縦線と前記横線の少なくとも一方はクリンプ加工され、引張強度が800〜4500MPaであり、前記縦線同士および前記横線同士の線間隔が0.2mm〜30mmであり、前記縦線と前記横線の交差位置における前記鋼線材のクリンプ角度θ°が95≦θ<180、公称引張強度が1000MPa以上であることを特徴とする、金網。
  2. 前記鋼線材は、更に、質量%で、Al:0.05%以下に規制し、更に、Cr:0.01〜1.0%、Nb:0.001〜0.20%、Co:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Cu:0.001〜0.2%、Mo:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、W:0.01〜0.2%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.007%よりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする、請求項1の金網。
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