JP2012165915A - 循環機能判定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】循環機能の判定に要する時間を短くすることのできる循環機能判定装置を提供すること。
【解決手段】循環機能判定装置1では次の手順で循環機能の判定を行う。(1)圧力制御部30によりカフ10の加圧および減圧を行う。(2)圧力検出部40によりカフ10の圧迫圧力を検出する。(3)脈波検出部50により圧迫圧力と脈波振幅値とを対応付けする。(4)脈波特徴検出部61により脈波累積加算値を算出する。(5)指標値算出部62により血管弾性指標値を算出する。(6)血圧測定部70により最高血圧値および最低血圧値を算出する。(7)血圧測定部70により足首上腕血圧値比を算出する。(8)機能判定部80により左上腕および左足首の血管が正常か否かを判定する。(9)情報表示部90により測定結果を表示する。
【選択図】図1

Description

本発明は、身体の第1部分を圧迫する第1圧迫部と、身体の第2部分を圧迫する第2圧迫部とを備える循環機能判定装置に関する。
上記判定装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1の循環機能判定装置では、カフにより身体を圧迫することにより血圧値を測定し、その後に再びカフにより身体を圧迫することにより脈波伝播速度を測定する。そして、2回のカフの圧迫により得られた血圧値および脈波伝播速度に基づいて循環機能が正常か否かを判定する。
特開2004−105549号公報
しかし、特許文献1の循環機能判定装置においては、循環機能を判定するにあたりカフによる身体の圧迫を2回にわたり行う必要がある。このため、循環機能の判定結果が得られるまでに時間がかかる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、循環機能の判定に要する時間を短くすることのできる循環機能判定装置を提供することにある。
上記目的を達成するための手段を以下に示す。
・本発明の循環機能判定装置は、身体の第1部分を圧迫する第1圧迫部と、身体の第2部分を圧迫する第2圧迫部とを備えるものであり、前記第1圧迫部により前記第1部分が圧迫されているときに同部分に生じる脈波に関する第1脈波情報、および前記第2圧迫部により前記第2部分が圧迫されているときに同部分に生じる脈波に関する第2脈波情報を検出する脈波検出部と、前記第1圧迫部の圧迫圧力である第1圧迫圧力と前記第1脈波情報とに基づいて第1血圧値を算出する処理と、前記第2圧迫部の圧迫圧力である第2圧迫圧力と前記第2脈波情報とに基づいて第2血圧値を算出する処理とを行う血圧測定部と、前記第1部分の血管の弾性の指標値である第1血管弾性指標値を前記第1脈波情報に基づいて算出する処理と、前記第2部分の血管の弾性の指標値である第2血管弾性指標値を前記第2脈波情報に基づいて算出する処理とを行う弾性測定部と、前記第1血圧値および前記第2血圧値の少なくとも一方と、前記第1血管弾性指標値および前記第2血管弾性指標値とに基づいて循環機能を判定する機能判定部とを備えることを特徴とする。
・この循環機能判定装置においては、前記弾性測定部は、前記第1脈波情報に含まれる第1脈波振幅値と前記第1圧迫圧力とに基づいて前記第1血管弾性指標値を算出し、前記第2脈波情報に含まれる第2脈波振幅値と前記第2圧迫圧力とに基づいて前記第2血管弾性指標値を算出することが好ましい。
・この循環機能判定装置においては、前記血圧測定部は、前記第1血圧値と前記第2血圧値との比である血圧値比を算出するものであり、前記機能判定部は、前記血圧値比、前記第1血管弾性指標値、および前記第2血管弾性指標値に基づいて循環機能を判定するものであることが好ましい。
・この循環機能判定装置においては、前記機能判定部は、前記血圧測定部により算出された前記血圧値比が血圧判定範囲内にあるとき、かつ前記弾性測定部により算出された前記第1血管弾性指標値および前記第2血管弾性指標値が弾性判定範囲内にあるとき、循環機能が正常である旨判定することが好ましい。
・この循環機能判定装置においては、前記第1圧迫部は、心臓付近の部位である中枢部を圧迫するものであり、前記第2圧迫部は、前記中枢部よりも心臓から離れた部位である末梢部を圧迫するものであることが好ましい。
・この循環機能判定装置においては、前記第1圧迫部は、左半身の所定の部位を圧迫するものであり、前記第2圧迫部は、前記左半身の所定の部位に対して左右対称の関係にある右半身の所定の部位を圧迫するものであることが好ましい。
・この循環機能判定装置においては、前記弾性測定部は、前記第1圧迫部による圧迫の開始から圧迫の終了までに得られる前記第1脈波情報に含まれる第1脈波振幅値を累積加算して第1脈波累積加算値を算出する処理と、前記第2圧迫部による圧迫の開始から圧迫の終了までに得られる前記第2脈波情報に含まれる第2脈波振幅値を累積加算して第2脈波累積加算値を算出する処理と、前記第1脈波累積加算値と前記第1圧迫圧力との関係に基づいて前記第1血管弾性指標値を算出する処理と、前記第2脈波累積加算値と前記第2圧迫圧力との関係に基づいて前記第2血管弾性指標値を算出する処理とを行うことが好ましい。
本発明によれば、循環機能の判定に要する時間を短くすることのできる循環機能判定装置を提供することができる。
本発明の第1実施形態の循環機能測定装置について、その構成を示すブロック図。 同実施形態の循環機能判定装置について、(a)は血管が軟らかい場合の圧迫時間と圧迫圧力との関係を示すグラフ、(b)は血管が硬い場合の圧迫時間と圧迫圧力との関係を示すグラフ。 同実施形態の循環機能判定装置について、(a)は血管が軟らかい場合の圧迫圧力と脈波振幅値との関係を示すグラフ、(b)は血管が硬い場合の圧迫圧力と脈波振幅値との関係を示すグラフ。 同実施形態の循環機能判定装置について、(a)は圧迫圧力と脈波累積加算値との関係を示すグラフ、(b)は圧迫圧力と脈波累積加算値との関係から得られる特性線を示すグラフ。 同実施形態の循環機能判定装置について、(a)は血管が軟らかい場合の圧迫圧力と脈波累積加算値との関係の一例を示すグラフ、(b)は血管が硬い場合の圧迫圧力と脈波累積加算値との関係の一例を示すグラフ。 同実施形態の循環機能判定装置について、(a)は血管が軟らかい場合の圧迫圧力と脈波累積加算比率との関係の一例を示すグラフ、(b)は血管が硬い場合の圧迫圧力と脈波累積加算比率との関係の一例を示すグラフ。 同実施形態の循環機能判定装置について、(a)は血管が軟らかい場合の圧迫圧力と相対振幅値との関係を示すグラフ、(b)は血管が硬い場合の圧迫圧力と相対振幅値との関係を示すグラフ。 同実施形態の循環機能判定装置について、その測定結果の一例としての上腕および足首の最高血圧値、最低血圧値、血管弾性指標値、ならびに足首上腕血圧値比を示すテーブル。 同実施形態の循環機能判定装置について、足首上腕血圧値比および血管弾性指標値により規定される循環機能の判定領域を示すグラフ。 本発明の第2実施形態の循環機能判定装置について、その構成を示すブロック図。 同実施形態の循環機能判定装置について、その測定結果の一例としての左上腕および右上腕の最高血圧値、最低血圧値、血管弾性指標値、ならびに左右上腕血圧値比を示すテーブル。 同実施形態の循環機能判定装置について、左右上腕血圧値比および血管弾性指標値により規定される循環機能の判定領域を示すグラフ。 本発明の第3実施形態の循環機能判定装置について、その構成を示すブロック図。 同実施形態の循環機能判定装置について、血管弾性指標値および血圧値により規定される年代別の循環機能の判定領域を示すグラフ。 本発明の第4実施形態の循環機能判定装置について、その測定結果の一例としての人体の各部位の最高血圧値、最低血圧値、血管弾性指標値、ならびに血圧値比を示す模式図。 本発明の第5実施形態の循環機能判定装置について、(a)は血管が軟らかい場合の圧迫圧力と相対振幅値との関係の一例を示すグラフ、(b)は血管が硬い場合の圧迫圧力と相対振幅値との関係の一例を示すグラフ。
(第1実施形態)
図1〜図9を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示されるように、循環機能判定装置1には、被測定者2の身体を圧迫するカフ10と、各種の情報の演算等を行う制御装置20と、カフ10と制御装置20とを互いに接続するチューブ100とが設けられている。
カフ10としては、被測定者2の中枢部である左上腕の動脈を圧迫する第1カフ11と、被測定者2の末梢部である左足首の動脈を圧迫する第2カフ12とが設けられている。第1カフ11および第2カフ12としては、それぞれの袋状かつゴム製のものが用いられている。
制御装置20には、第1カフ11および第2カフ12の加圧および減圧を個別に行う圧力制御部30と、第1カフ11および第2カフ12により身体に加えられる圧力(以下、「圧迫圧力P」)を個別に検出する圧力検出部40とが設けられている。
またこの他に、カフ10による身体の加圧または減圧にともない生じる脈波の振幅値(以下、「脈波振幅値A」)を算出し、圧迫圧力Pと脈波振幅値Aとを対応付けて記憶する脈波検出部50と、血管の硬さを表す指標値(以下、「血管弾性指標値E」)を算出する弾性測定部60とが設けられている。
またこの他に、動脈の血圧の大きさ(以下、「血圧値B」)を算出する血圧測定部70と、身体の循環機能を判定する機能判定部80と、機能判定部80による循環機能の判定結果をはじめとして各種の情報を被測定者2に提供する情報表示部90とが設けられている。
圧力制御部30には、第1カフ11および第2カフ12のそれぞれに空気を供給して圧迫圧力Pを上昇させる加圧ポンプと、第1カフ11および第2カフ12のそれぞれから空気を排出して圧迫圧力Pを下降させる減圧ポンプとが設けられている(各ポンプともに図示略)。
圧力検出部40には、第1カフ11および第2カフ12のそれぞれに圧迫圧力Pの変化に応じた信号を出力する圧力センサと、圧力センサの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器とが設けられている(いずれも図示略)。
弾性測定部60には、脈波振幅値Aの加算値(以下、「脈波累積加算値AT」)を算出する脈波特徴検出部61と、脈波累積加算値ATに基づいて血管弾性指標値Eを演算する指標値算出部62とが設けられている。
血圧測定部70には、最高血圧の大きさ(以下、「最高血圧値BH」)および最低血圧の大きさ(以下、「最低血圧値BL」)を算出する血圧値算出部71と、左上腕の最高血圧値BHに対する左足首の最高血圧値BHの比(以下、「足首上腕血圧値比BR1」)を算出する血圧値比算出部72とが設けられている。
チューブ100としては、第1カフ11と圧力制御部30とを互いに接続する第1制御チューブ101と、第1カフ11と圧力検出部40とを互いに接続する第1検出チューブ102と、第2カフ12と圧力制御部30とを互いに接続する第2制御チューブ103と、第2カフ12と圧力検出部40とを互いに接続する第2検出チューブ104とが設けられている。
循環機能判定装置1の動作の概要を以下に示す。
(1)圧力制御部30によりカフ10の加圧および減圧を行う。
(2)圧力検出部40によりカフ10の圧迫圧力Pを検出する。
(3)脈波検出部50により圧迫圧力Pと脈波振幅値Aとを対応付けする。
(4)脈波特徴検出部61により脈波累積加算値ATを算出する。
(5)弾性測定部60により血管弾性指標値Eを算出する。
(6)血圧測定部70により最高血圧値BHおよび最低血圧値BLを算出する。
(7)血圧測定部70により足首上腕血圧値比BR1を算出する。
(8)機能判定部80により左上腕および左足首の循環機能が正常か否かを判定する。
(9)情報表示部90により測定結果を表示する。
循環機能判定装置1においては、以下のように信号の送信が行われる。
圧力検出部40は、圧迫圧力Pを示す信号を脈波検出部50に送信する。脈波検出部50は、圧迫圧力Pと脈波振幅値Aとを対応付けした関係を示す信号を脈波特徴検出部61および血圧値算出部71のそれぞれに送信する。
脈波特徴検出部61は、脈波累積加算値ATを示す信号を指標値算出部62に送信する。指標値算出部62は、血管弾性指標値Eを示す信号を機能判定部80に送信する。
血圧値算出部71は、最高血圧値BHおよび最低血圧値BLを示す信号を血圧値比算出部72に送信する。血圧値比算出部72は、足首上腕血圧値比BR1を示す信号を機能判定部80に送信する。
機能判定部80は、循環機能の判定結果、最高血圧値BH、最低血圧値BL、足首上腕血圧値比BR1、および血管弾性指標値Eのそれぞれを示す信号を情報表示部90に送信する。情報表示部90は、機能判定部80から受信した信号に基づいて各種の情報を表示する。
循環機能判定装置1の各部位の動作の詳細を以下の順に説明する。
(A)圧力制御部30の動作(図1および図2参照)。
(B)圧力検出部40の動作(図1および図2参照)。
(C)脈波検出部50の動作(図1および図3参照)。
(D)弾性測定部60の動作(図1、図2、および図4〜図6参照)。
(E)血圧測定部70の動作(図1、図3、および図7参照)。
(F)機能判定部80の動作(図1、図8、および図9参照)。
(G)情報表示部90の動作(図1、図8、および図9参照)。
図1および図2を参照して、圧力制御部30の動作について説明する。
図1に示される圧力制御部30は、循環機能の測定開始にともない第1カフ11および第2カフ12に空気を供給して圧迫圧力Pを上昇させる。そして、圧迫圧力Pが所定圧力に達した後、第1カフ11および第2カフ12から空気を排出して圧迫圧力Pを下降させる。具体的には、次のように圧迫圧力Pを制御する。
図2に示されるように、圧迫圧力Pが第1所定圧力PX1未満のとき、圧迫圧力Pを急速に上昇させる。圧迫圧力Pが第1所定圧力PX1以上かつ第2所定圧力PX2未満のとき、圧迫圧力Pを緩やかに上昇させる。圧迫圧力Pが第2所定圧力PX2以上のとき、圧迫圧力Pを急速に低下させる。なお、第1所定圧力PX1は、予め想定された被測定者2の最低血圧値BLよりも低い圧力として設定されている。
図1および図2を参照して、圧力検出部40の動作について説明する。
図1に示される圧力検出部40は、圧力制御部30により第1カフ11の加圧および減圧が行われているとき、左上腕の圧迫圧力P(以下、「第1圧迫圧力PA」)を圧力センサにより検出し、圧力センサの出力をA/D変換した後に脈波検出部50に出力する。また、圧力制御部30により第2カフ12の加圧および減圧が行われているとき、左足首の圧迫圧力P(以下、「第2圧迫圧力PB」)を圧力センサにより検出し、圧力センサの出力をA/D変換した後に脈波検出部50に出力する。
圧力検出部40から出力される第1圧迫圧力PAおよび圧力検出部40から出力される第2圧迫圧力PBは、圧力制御部30によるカフ10の加圧が開始されてからの経過時間(以下、「圧迫時間T」)に対して次のように変化する。
図2に示されるように、圧迫時間Tが第1所定時間T1未満のとき、圧力検出部40から出力される圧迫圧力Pは急速に上昇する。圧迫時間Tが第1所定時間T1以上かつ第2所定時間T2未満のとき、圧力検出部40から出力される圧迫圧力Pは圧迫時間Tが第1所定時間T1未満のときよりも緩やかに上昇する。圧迫時間Tが第2圧迫時間T2以上のとき、圧力検出部40から出力される圧迫圧力Pは急速に低下する。
図2(a)には、血管が軟らかい場合の圧迫時間Tに対する圧迫圧力Pの変化が、また図2(b)には、血管が硬い場合の圧迫時間Tに対する圧迫圧力Pの変化が示されている。各図に示されるように、圧迫時間Tが第1所定時間T1以上かつ第2所定時間T2未満のとき、すなわち圧迫圧力Pが第1所定圧力PX1から第2所定圧力PX2に向けて上昇するとき、圧迫圧力Pに脈波Wの変化が反映される。また、この脈波Wの変化は血管の硬さに応じて異なる。
一例として、図2(a)に示されるように、血管が軟らかい場合には第1中間圧力PW1から第2中間圧力PW2までの範囲において、脈波Wが圧迫圧力Pに反映される。また、図2(b)に示されるように、血管が硬い場合には第1所定圧力PX1から第2所定圧力PX2までの範囲において、脈波Wが圧迫圧力Pに反映される。なお、第1中間圧力PW1および第2中間圧力PW2は、いずれも第1所定圧力PX1よりも大きくかつ第2所定圧力PX2よりも小さい値となる。
図1および図3を参照して、脈波検出部50の動作について説明する。
図1に示される脈波検出部50は、カフ10により左上腕および左足首のそれぞれが圧迫されているときの脈波振幅値Aを算出することにより、図3に示される包絡線LH1を生成する。具体的には、次の手順により左上腕および左足首のそれぞれについて包絡線LH1を生成する。
脈波検出部50は、圧力検出部40から第1圧迫圧力PAを示す信号を受信したとき、この信号から直流成分等の所定の周波数成分を除去することにより第1圧迫圧力PAに対応した脈波信号を生成する。次に、生成した脈波信号に基づいて、第1カフ11により左上腕が圧迫されているときの脈波振幅値A(以下、「第1脈波振幅値AA」)を抽出する。第1脈波振幅値AAは、離散化された第1圧迫圧力PA毎に抽出される。なお、第1脈波振幅値AAは「第1脈波情報」に相当する。
次に、第1圧迫圧力PAと第1脈波振幅値AAとを対応付けることにより、左上腕についての包絡線LH1、すなわち左上腕の圧迫開始から圧迫終了までの圧迫圧力Pの変化に対する脈波振幅値Aの変化を示す包絡線LH1を生成する。そして、この包絡線LH1を記憶するとともに、包絡線LH1を示す信号を脈波特徴検出部61および血圧値算出部71のそれぞれに出力する。
脈波検出部50は、圧力検出部40から第2圧迫圧力PBを示す信号を受信したとき、この信号から直流成分等の所定の周波数成分を除去することにより第2圧迫圧力PBに対応した脈波信号を生成する。次に、生成した脈波信号に基づいて、第2カフ12により左足首が圧迫されているときの脈波振幅値A(以下、「第2脈波振幅値AB」)を抽出する。第2脈波振幅値ABは、離散化された第2圧迫圧力PB毎に抽出される。なお、第2脈波振幅値ABは「第2脈波情報」に相当する。
次に、第2圧迫圧力PBと第2脈波振幅値ABとを対応付けることにより、左足首についての包絡線LH1、すなわち左足首の圧迫開始から圧迫終了までの圧迫圧力Pの変化に対する脈波振幅値Aの変化を示す包絡線LH1を生成する。そして、この包絡線LH1を記憶するとともに、包絡線LH1を示す信号を脈波特徴検出部61および血圧値算出部71のそれぞれに出力する。
図3に示されるように、包絡線LH1においては脈波振幅値Aが圧迫圧力Pに対して次のように変化する。すなわち、検出開始圧力PZ1から最大振幅圧力PTまでの範囲においては、圧迫圧力Pの上昇にともない脈波振幅値Aが増加する。また、最大振幅圧力PTから検出終了圧力PZ2までの範囲においては、圧迫圧力Pの上昇にともない脈波振幅値Aが減少する。なお、最大振幅圧力PTは、包絡線LH1においての最大の脈波振幅値Aに対応する圧迫圧力Pを示す。
圧迫圧力Pと脈波振幅値Aとの関係は、血管の硬さに応じて異なる。図3(a)には、血管が軟らかい場合の包絡線LH1が、また図3(b)には、血管が硬い場合の包絡線LH1がそれぞれ示されている。一方、図2(a)および図2(b)に示されるように、血管が軟らかい場合において圧迫圧力Pに脈波Wが反映されるタイミングと、血管が硬い場合において圧迫圧力Pに脈波Wが反映されるタイミングとが互いに異なる。
このため、図3(a)に示されるように、血管が軟らかい場合には第1中間圧力PW1および第2中間圧力PW2がそれぞれ検出開始圧力PZ1および検出終了圧力PZ2に相当する。これに対して図3(b)に示されるように、血管が硬い場合には第1所定圧力PX1および第2所定圧力PX2がそれぞれ検出開始圧力PZ1および検出終了圧力PZ2に相当する。
図1、図4、および図5を参照して、脈波特徴検出部61の動作について説明する。
図1に示される脈波特徴検出部61は、左上腕および左足首のそれぞれについて圧迫圧力P毎の脈波振幅値Aを累積加算して脈波累積加算値ATを算出することにより、図4(b)に示される特性線LT1を生成する。具体的には、次の手順で左上腕および左足首のそれぞれについて特性線LT1を生成する。
脈波特徴検出部61は、第1圧迫圧力PA毎の第1脈波振幅値AAを累積加算した脈波累積加算値AT(以下、「第1脈波累積加算値ATA」)を算出することにより、左上腕についての特性線LT1、すなわち左上腕の圧迫開始から圧迫終了までの第1圧迫圧力PAの変化に対する第1脈波累積加算値ATAの変化を示す特性線LT1を生成する。そして、この特性線LT1を記憶するとともに、特性線LT1を示す信号を指標値算出部62に出力する。
脈波特徴検出部61は、第2圧迫圧力PB毎の第2脈波振幅値ABを累積加算した脈波累積加算値AT(以下、「第2脈波累積加算値ATB」)を算出することにより、左足首についての特性線LT2、すなわち左上腕の圧迫開始から圧迫終了までの第2圧迫圧力PBの変化に対する第2脈波累積加算値ATBの変化を示す特性線LT2を生成する。そして、この特性線LT2を記憶するとともに、特性線LT2を示す信号を指標値算出部62に出力する。
図4(a)に示されるように、脈波累積加算値ATの算出においては、圧迫圧力P1(検出開始圧力PZ1)のときの脈波振幅値A1が脈波累積加算値AT1として算出される。次に、圧迫圧力P2のときの脈波振幅値A2が脈波累積加算値AT1に加算されることにより、圧迫圧力P2に対応した脈波累積加算値AT2が算出される。次に、圧迫圧力P3のときの脈波振幅値A3が脈波累積加算値AT2に加算されることにより、圧迫圧力P3に対応した脈波累積加算値AT3が算出される。そして、圧迫圧力Pが検出終了圧力PZ2に達するまで同様の手順で脈波累積加算値ATが算出される。
図4(b)に示されるように、特性線LT1においては脈波累積加算値ATが圧迫圧力Pに対して次のように変化する。すなわち、最小累積加算値ATmin(検出開始圧力PZ1)から最大累積加算値ATmaxまでにわたり圧迫圧力Pの上昇にともない脈波累積加算値ATが増加する。
圧迫圧力Pと脈波累積加算値ATとの関係は、血管の硬さに応じて異なる。図5(a)には、血管が軟らかい場合の特性線LT1が、また図5(b)には、血管が硬い場合の特性線LT1がそれぞれ示されている。一方、図2(a)および図2(b)に示されるように、血管が軟らかい場合において圧迫圧力Pに脈波Wが反映されるタイミングと、血管が硬い場合において圧迫圧力Pに脈波Wが反映されるタイミングとが互いに異なる。
このため、図5(a)に示されるように、血管が軟らかい場合には脈波Wが圧迫圧力Pに反映される第1中間圧力PW1から第2中間圧力PW2までの範囲において脈波累積加算値ATが増加する。これに対して図5(b)に示されるように、血管が硬い場合には脈波Wが圧迫圧力Pに反映される第1所定圧力PX1から第2所定圧力PX2までの範囲において脈波累積加算値ATが増加する。
図5(a)および図5(b)に示されるように、血管が硬い場合の脈波累積加算値ATは、血管が軟らかい場合の脈波累積加算値ATよりも大きくなる。このように脈波累積加算値ATの大きさが異なる理由としては次のものが挙げられる。
すなわち、血管が軟らかい場合には、血管を押しつぶすために必要となる圧迫圧力Pの仕事量が小さく、血管が硬い場合には、血管を押しつぶすために必要となる圧迫圧力Pの仕事量が大きくなる。このため、血管を押しつぶすために必要となる圧迫圧力Pの仕事量と相関を有する脈波累積加算値ATは、血管が軟らかい場合よりも血管が硬い場合の方が大きくなると考えられる。
図1、図5、および図6を参照して、指標値算出部62の動作について説明する。
図1に示される指標値算出部62は、図5に示される左上腕および左足首のそれぞれについての特性線LT1を規格化し、図6に示される規格化後の特性線LT2に基づいて、左上腕および左足首のそれぞれの血管弾性指標値Eを算出する。具体的には、次の手順で各血管弾性指標値Eを算出する。
指標値算出部62は、図5に示される左上腕の特性線LT1を最大の第1脈波累積加算値ATA(以下、「最大累積加算値ATAmax」)により規格化する。すなわち、特性線LT1の縦軸である第1脈波累積加算値ATAを最大累積加算値ATAmaxに基づく相対値(以下、「第1相対加算値ARA」)に変換する。
次に、図6に示される規格化後の特性線LT2に基づいて、第1圧迫圧力PAの変化に対する第1相対加算値ARAの変化の割合(以下、「第1振幅変化率DR1」)を算出する。そして、第1振幅変化率DR1を指標値算出テーブルに適用し、左上腕の血管弾性指標値E(以下、「第1血管弾性指標値EA」)を算出する。また、算出した第1血管弾性指標値EAを示す信号を機能判定部80に出力する。
指標値算出部62は、具体的には次のように第1振幅変化率DR1を算出する。
ここでは、第1相対加算値ARAの増加量が最も大きいときの第1圧迫圧力PAを基準の圧迫圧力P(以下、「最大増加圧力PS」)とし、最大増加圧力PSよりも所定量だけ大きい圧迫圧力Pを「圧迫圧力PSS」とし、最大増加圧力PSに対応する第1相対加算値ARAを「相対加算値ARA1」とし、圧迫圧力PSSに対応する第1相対加算値ARAを「相対加算値ARA2」とする。
そして、相対加算値ARA2と相対加算値ARA1との差△A、および圧迫圧力PSSと最大増加圧力PSとの差△Pをそれぞれ算出し、差△Aを差△Pで除算した値(△A/△P)を第1振幅変化率DR1として算出する。
指標値算出テーブルには、第1振幅変化率DR1と第1血管弾性指標値EAとの関係として、第1振幅変化率DR1が大きくなるにつれて第1血管弾性指標値EAが小さくなるものが規定されている。
指標値算出部62は、図5に示される左足首の特性線LT1を最大の第2脈波累積加算値ATB(以下、「最大累積加算値ATBmax」)により規格化する。すなわち、特性線LT1の縦軸である第2脈波累積加算値ATBを最大累積加算値ATBmaxに基づく相対値(以下、「第2相対加算値ARB」)に変換する。
次に、図6に示される規格化後の特性線LT2に基づいて、第2圧迫圧力PBの変化に対する第2相対加算値ARBの変化の割合(以下、「第2振幅変化率DR2」)を算出する。そして、第2振幅変化率DR2を指標値算出テーブルに適用し、左足首の血管弾性指標値E(以下、「第2血管弾性指標値EB」)を算出する。また、算出した第2血管弾性指標値EBを示す信号を機能判定部80に出力する。
指標値算出部62は、具体的には次のように第2振幅変化率DR2を算出する。
ここでは、第2相対加算値ARBの増加量が最も大きいときの第2圧迫圧力PBを最大増加圧力PSとし、最大増加圧力PSに対応する第2相対加算値ARBを「相対加算値ARB1」とし、最大増加圧力PSよりも所定量だけ大きい圧迫圧力PSSに対応する第2相対加算値ARBを「相対加算値ARB2」とする。
そして、相対加算値ARB2と相対加算値ARB1との差△A、および圧迫圧力PSSと最大増加圧力PSとの差△Pをそれぞれ算出し、差△Aを差△Pで除算した値(△A/△P)を第2振幅変化率DR2として算出する。
指標値算出テーブルには、第2振幅変化率DR2と第2血管弾性指標値EBとの関係として、第2振幅変化率DR2が大きくなるにつれて第2血管弾性指標値EBが小さくなるものが規定されている。
圧迫圧力Pと相対加算値ARA,ARBとの関係は、血管の硬さに応じて異なる。図6(a)には、血管が軟らかい場合の規格化後の特性線LT2が、また図6(b)には、血管が硬い場合の規格化後の特性線LT2がそれぞれ示されている。
図1、図3、および図7を参照して、血圧測定部70の動作について説明する。
図1に示される血圧値算出部71は、図3に示される左上腕および左足首のそれぞれについての包絡線LH1を規格化し、図7に示される規格化後の包絡線LH2に基づいて、左上腕および左足首のそれぞれの血圧値Bを算出する。具体的には、次の手順で各血圧値Bを算出する。
血圧値算出部71は、図3に示される左上腕の包絡線LH1を最大の第1脈波振幅値AA(以下、「最大振幅値AAmax」)により規格化する。すなわち、包絡線LH1の縦軸である第1脈波振幅値AAを最大振幅値AAmaxに基づく相対値(以下、「第1相対振幅値AAA」)に変換する。
次に、図7に示される規格化後の包絡線LH2に基づいて、オシロメトリック法により左上腕の最高血圧値BH(以下、「第1最高血圧値BHA」)および左上腕の最低血圧値BL(以下、「第1最低血圧値BLA」)を算出する。すなわち、予め規定された所定の相対振幅値AALに対応する第1圧迫圧力PAを第1最低血圧値BLAとして算出し、予め規定された所定の相対振幅値AAHに対応する第1圧迫圧力PAを第1最高血圧値BHAとして算出する。また、算出した第1最高血圧値BHAおよび第1最低血圧値BLAのそれぞれを示す信号を機能判定部80に出力する。
所定の相対振幅値AALとしては、最大増加圧力PSよりも小さい圧迫圧力Pの範囲において最低血圧値BLの算出に適したものが設定されている。所定の相対振幅値AAHとしては最大増加圧力PSよりも大きい圧迫圧力Pの範囲において最高血圧値BHの算出に適したものが設定されている。
血圧値算出部71は、図3に示される左足首の包絡線LH1を最大の第2脈波振幅値AB(以下、「最大振幅値ABmax」)により規格化する。すなわち、包絡線LH1の縦軸である第2脈波振幅値ABを最大振幅値ABmaxに基づく相対値(以下、「第2相対振幅値ABA」)に変換する。
次に、図7に示される規格化後の包絡線LH2に基づいて、オシロメトリック法により左足首の最高血圧値BH(以下、「第2最高血圧値BHB」)および左足首の最低血圧値BL(以下、「第2最低血圧値BLB」)を算出する。すなわち、予め規定された所定の相対振幅値ABLに対応する第2圧迫圧力PBを第2最低血圧値BLBとして算出し、予め規定された所定の相対振幅値ABHに対応する第2圧迫圧力PBを第2最高血圧値BHBとして算出する。また、算出した第2最高血圧値BHBおよび第2最低血圧値BLBのそれぞれを示す信号を機能判定部80に出力する。
所定の相対振幅値ABLとしては、最大増加圧力PSよりも小さい圧迫圧力Pの範囲において最低血圧値BLの算出に適したものが設定されている。所定の相対振幅値ABHとしては最大増加圧力PSよりも大きい圧迫圧力Pの範囲において最高血圧値BHの算出に適したものが設定されている。
図1に示される血圧値比算出部72は、第1最高血圧値BHAおよび第2最高血圧値BHBに基づいて、第1最高血圧値BHAに対する第2最高血圧値BHBの比としての足首上腕血圧値比BR1を算出する。また、算出した足首上腕血圧値比BR1を示す信号を機能判定部80に出力する。
圧迫圧力Pと相対振幅値AAA,AABとの関係は、血管の硬さに応じて異なる。図7(a)には、血管が軟らかい場合の規格化後の包絡線LH2が、また図7(b)には、血管が硬い場合の規格化後の包絡線LH2がそれぞれ示されている。
図1、図8、および図9を参照して、機能判定部80の動作について説明する。
図1に示される機能判定部80は、第1最高血圧値BHA、第1最低血圧値BLA、第1血管弾性指標値EA、第2最高血圧値BHB、第2最低血圧値BLB、第2血管弾性指標値EB、および足首上腕血圧値比BR1を1つの測定結果テーブルに記憶する。そして、測定結果テーブルの内容と循環機能を判定するための判定マップとに基づいて、被測定者2の左上腕および左足首の循環機能を判定する。
図8に示されるように、測定結果テーブルにおいては、左上腕および左足首のそれぞれについて最高血圧値BH、最低血圧値BL、血管弾性指標値E、および足首上腕血圧値比BR1が記憶される。
図9に示されるように、判定マップにおいては、血管弾性指標値Eおよび足首上腕血圧値比BR1のそれぞれに対して、循環機能の正常および異常を判定するための判定値が予め設定されている。
血管弾性指標値Eには、血管弾性が正常範囲内か否かを判定するための値として基準弾性指標値EXが予め設定されている。血管弾性指標値Eが基準弾性指標値EX以上の状態は、血管が硬いため動脈硬化の可能性が高いことを示している。一方、血管弾性指標値Eが基準弾性指標値EX未満の状態は、血管が軟らかいため動脈硬化の可能性が低いことを示している。
基準弾性指標値EXは、被測定者2に関する生体情報、例えば健常者か否か、心疾患者か否か、年齢、および性別等に応じて設定することができる。機能判定部80は、予め入力された被測定者2に関する生体情報をもとに基準弾性指標値EXを設定し、この基準弾性指標値EXを用いて循環機能の判定を行う。
足首上腕血圧値比BR1には、血管の動脈が石灰化または狭窄しているか否かを判定するための値として、上限判定値BX1および下限判定値BX2が予め設定されている。足首上腕血圧値比BR1が上限判定値BX1以上の状態は、血管の動脈が石灰化している可能性が高いことを示している。足首上腕血圧値比BR1が下限判定値BX2未満の状態は、血管の動脈が狭窄している可能性が高いことを示している。
判定マップは各判定値により次の各領域に区分されている。
(a)領域R11は、「血管弾性が正常」かつ「足首の動脈が正常」の領域を示す。
(b)領域R12は、「血管弾性が正常」かつ「足首の動脈が石灰化」の領域を示す。
(c)領域R13は、「血管弾性が正常」かつ「足首の動脈が狭窄」の領域を示す。
(d)領域R14は、「血管弾性が異常」かつ「足首の動脈が正常」の領域を示す。
(e)領域R15は、「血管弾性が異常」かつ「足首の動脈が石灰化」の領域を示す。
(f)領域R16は、「血管弾性が異常」かつ「足首の動脈が狭窄」の領域を示す。
機能判定部80は、測定結果テーブルに記憶した内容をもとに左上腕の血管弾性指標値EAおよび足首上腕血圧値比BR1が判定マップ上のいずれの領域に属するかを判定する。また、左足首の血管弾性指標値EBおよび足首上腕血圧値比BR1が判定マップ上のいずれの領域に属するかを判定する。
例えば、左上腕の測定結果が領域R11に属するとき、左上腕の動脈の循環機能に異常が生じていない旨判定する。また、左足首の測定結果が領域R14に属するとき、左足首の動脈の循環機能に異常が生じている旨判定する。
図1、図8、および図9を参照して、情報表示部90の機能について説明する。
図1に示される情報表示部90には、図8に示される測定結果テーブルの内容、すなわち左上腕および左足首のそれぞれについて最高血圧値BH、最低血圧値BL、血管弾性指標値E、および足首上腕血圧値比BR1が入力される。また、図9に示される判定マップの内容も入力される。そして、入力された内容が情報表示部90により表示される。
(実施形態の効果)
本実施形態の循環機能判定装置1によれば以下の効果が得られる。
(1)循環機能判定装置1では、圧迫圧力Pと脈波振幅値Aとの関係を示す包絡線LHを生成し、この包絡線LHをもとに血管弾性指標値Eおよび足首上腕血圧値比BR1を算出している。
この構成によれば、カフ10による1回の加圧および減圧により得られる情報をもとに血管弾性指標値Eおよび足首上腕血圧値比BR1を算出しているため、血管弾性指標値Eを算出するためのカフの制御と足首上腕血圧値比BR1を算出するためのカフの制御とを各別に行う構成と比較して、循環機能の判定に要する時間を短縮することができる。
(2)循環機能を判定する方法としては、血管弾性指標値Eおよび足首上腕血圧値比BR1のうちの後者のみに基づいて行うものもある(以下、「比較判定方法」)。この比較判定方法においては、足首および上腕のそれぞれが石灰化している場合、または足首および上腕のそれぞれが狭窄している場合、足首についての循環機能の異常を適切に判定することができない。
これに対して本実施形態の循環機能判定装置1においては、血管弾性指標値Eおよび足首上腕血圧値比BR1に基づいて循環機能の正常および異常を判定しているため、足首および上腕のそれぞれが石灰化している場合、または足首および上腕のそれぞれが狭窄している場合、足首についての循環機能の異常を適切に判定することができる。
(3)循環機能判定装置1においては、足首上腕血圧値比BR1および第2血管弾性指標値EBに基づいて足首の循環機能を判定している。この構成によれば、足首上腕血圧値比BR1のみに基づいて足首の循環機能を判定する構成と比較して、末梢部の循環機能の異常をより正確に判定することができる。
(4)循環機能判定装置1においては、脈波累積加算値ATに基づいて、すなわち圧迫圧力Pに対応した脈波振幅値Aの全部に基づいて、血管弾性指標値Eを算出している。この構成によれば、脈波振幅値Aの変化の一部のみを利用して血管弾性指標値Eを算出する構成と比較して、血管弾性指標値Eをより正確に算出することができる。
(第2実施形態)
図10〜図12を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態の循環機能判定装置1は、第1実施形態の循環機能判定装置1の一部を変更したものとして構成されている。このため、以下では第1実施形態の循環機能判定装置1と異なる点の詳細を説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明の一部または全部を省略する。
図10を参照して、第1実施形態の装置1からの変更点について説明する。
第1実施形態の循環機能判定装置1には、カフ10として左上腕に装着される第1カフ11および左足首に装着される第2カフ12が設けられている。これに対して本実施形態の循環機能判定装置1では、カフ10として左上腕に装着される第1カフ11、および右上腕に装着される第3カフ13が設けられている。
圧力検出部40は、第1圧迫圧力PAの算出手順と同様の手順により、右上腕の圧迫圧力P(以下、「第3圧迫圧力PC」)を算出する。すなわち、第3カフ13により加圧および減圧が行われているときの右上腕の圧迫圧力Pを圧力センサにより検出し、圧力センサの出力をA/D変換した後に脈波検出部50に出力する。
脈波検出部50は、第1脈波振幅値AAの算出手順と同様の手順により、右上腕の脈波振幅値A(以下、「第3脈波振幅値AC」)を算出する。また、左上腕についての包絡線LH1の生成手順と同様の手順により、図3に示される右上腕についての包絡線LH1を生成する。
脈波特徴検出部61は、第1脈波累積加算値ATAの算出手順と同様の手順により、右上腕の脈波累積加算値AT(以下、「第3脈波累積加算値ATC」)を算出する。また、左上腕についての特性線LT1と同様の手順により、図5に示される右上腕についての特性線LT1を生成する。
指標値算出部62は、第1相対加算値ARAの算出手順と同様の手順により、右上腕についての第3脈波累積加算値ATCを最大累積加算値ATCmaxに基づく相対値(以下、「第3相対加算値ARC」)に変換する。また、第1血管弾性指標値EAの算出手順と同様の手順により、右上腕についての血管弾性指標値E(以下、「第3血管弾性指標値EC」)を算出する。
血圧値算出部71は、第1最高血圧値BHAおよび第1最低血圧値BLAの算出手順と同様の手順により、右上腕についての最高血圧値BH(以下、「第3最高血圧値BHC」)および最低血圧値BL(以下、「第3最低血圧値BLC」)を算出する。また、算出した第3最高血圧値BHCおよび第3最低血圧値BLCのそれぞれを示す信号を機能判定部80に出力する。
血圧値比算出部72は、第1最高血圧値BHAおよび第3最高血圧値BHCに基づいて、第3最高血圧値BHCに対する第1最高血圧値BHAの比(以下、「左右上腕血圧値比BR2」)を算出する。また、算出した左右上腕血圧値比BR2を示す信号を機能判定部80に出力する。
図10〜図12を参照して、機能判定部80の動作について説明する。
図10に示される機能判定部80は、第1最高血圧値BHA、第1最低血圧値BLA、第1血管弾性指標値EA、第3最高血圧値BHC、第3最低血圧値BLC、第3血管弾性指標値EC、および左右上腕血圧値比BR2を1つの測定結果テーブルに記憶する。そして、測定結果テーブルの内容と循環機能を判定するための判定マップとに基づいて、被測定者2の左上腕および右上腕の循環機能を判定する。
図11に示されるように、測定結果テーブルにおいては、左上腕および右上腕のそれぞれについて最高血圧値BH、最低血圧値BL、血管弾性指標値E、および左右上腕血圧値比BR2が記憶される。
図12に示されるように、判定マップにおいては、血管弾性指標値Eおよび左右上腕血圧値比BR2のそれぞれに対して、循環機能の正常および異常を判定するための判定値が予め設定されている。
左右上腕血圧値比BR2には、血管の動脈の状態が石灰化または狭窄の状態にあるか否かを判定するための値として、上限判定値BY1および下限判定値BY2が予め設定されている。左右上腕血圧値比BR2が上限判定値BY1以上の状態は、血管の動脈が石灰化している可能性が高いことを示している。左右上腕血圧値比BR2が下限判定値BY2未満の状態は、血管の動脈が狭窄している可能性が高いことを示している。
上限判定値BY1は、第1実施形態の上限判定値BX1よりも「1」に近い値として設定されている。下限判定値BY2は、第1実施形態の下限判定値BX2よりも「1」に近い値として設定されている。
判定マップは各判定値により次の各領域に区分されている。
(a)領域R21は、「血管弾性が正常」かつ「左上腕の動脈が正常」の領域を示す。
(b)領域R22は、「血管弾性が正常」かつ「左上腕の動脈が石灰化」の領域を示す。
(c)領域R23は、「血管弾性が正常」かつ「左上腕の動脈が狭窄」の領域を示す。
(d)領域R24は、「血管弾性が異常」かつ「左上腕の動脈が正常」の領域を示す。
(e)領域R25は、「血管弾性が異常」かつ「左上腕の動脈が石灰化」の領域を示す。
(f)領域R26は、「血管弾性が異常」かつ「左上腕の動脈が狭窄」の領域を示す。
機能判定部80は、測定結果テーブルに記憶した内容をもとに左上腕の血管弾性指標値EAおよび左右上腕血圧値比BR2が判定マップ上のいずれの領域に属するかを判定する。また、右上腕の血管弾性指標値ECおよび左右上腕血圧値比BR2が判定マップ上のいずれの領域に属するかを判定する。
例えば、左上腕の測定結果が領域R26に属するとき、左上腕の血管弾性が異常かつ左上腕の動脈が狭窄しているおそれがある旨判定する。また、右上腕の測定結果が領域R23に属するとき、右上腕の血管弾性が正常かつ左上腕の動脈が狭窄しているおそれがある旨判定する。
図10〜図12を参照して、情報表示部90の機能について説明する。
図10に示される情報表示部90には、図11に示される測定結果テーブルの内容、すなわち左上腕および右上腕のそれぞれについて最高血圧値BH、最低血圧値BL、血管弾性指標値E、および左右上腕血圧値比BR2が入力される。また、図12に示される判定マップの内容も入力される。そして、情報表示部90は入力された内容を表示する。
(実施形態の効果)
本実施形態の循環機能判定装置1によれば、第1実施形態の(1)〜(4)の効果と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
(5)循環機能判定装置1においては、身体の左右の対称部位である左上腕および右上腕の左右上腕血圧値比BR2、第1血管弾性指標値EA、および第3血管弾性指標値ECに基づいて循環機能を判定している。この構成によれば、左右上腕血圧値比BR2のみに基づいて循環機能を判定する構成と比較して、循環機能をより正確に判定することができる。
(第3実施形態)
図13および図14を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態の循環機能判定装置1は、第1実施形態の循環機能判定装置1の一部を変更したものとして構成されている。このため、以下では第1実施形態の循環機能判定装置1と異なる点の詳細を説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明の一部または全部を省略する。
図13を参照して、第1実施形態の装置1からの変更点について説明する。
第1実施形態の循環機能判定装置1には、カフ10として左上腕に装着される第1カフ11および左足首に装着される第2カフ12が設けられている。これに対して本実施形態の循環機能判定装置1では、カフ10として右上腕に装着される第3カフ13、および右大腿に装着される第4カフ14がさらに設けられている。
また、第1実施形態の循環機能判定装置1では、血圧値比BRおよび血管弾性指標値Eに基づいて循環機能を判定している。これに対して本実施形態の循環機能判定装置1では、最高血圧値BHおよび血管弾性指標値Eに基づく循環機能の判定をさらに行う。
圧力検出部40は、第1圧迫圧力PAの算出手順と同様の手順により、右大腿の圧迫圧力P(以下、「第4圧迫圧力PD」)を算出する。すなわち、第4カフ14により加圧および減圧が行われているときの右大腿の圧迫圧力Pを圧力センサにより検出し、圧力センサの出力をA/D変換した後に脈波検出部50に出力する。
脈波検出部50は、第1脈波振幅値AAの算出手順と同様の手順により、右大腿の脈波振幅値A(以下、「第4脈波振幅値AD」)を算出する。また、左上腕についての包絡線LH1の生成手順と同様の手順により、図3に示される右大腿についての包絡線LH1を生成する。
脈波特徴検出部61は、第1脈波累積加算値ATAの算出手順と同様の手順により、右大腿の脈波累積加算値AT(以下、「第4脈波累積加算値ATD」)を算出する。また、左上腕についての特性線LT1と同様の手順により、図5に示される右大腿についての特性線LT1を生成する。
指標値算出部62は、第1相対加算値ARAの算出手順と同様の手順により、右大腿についての第4脈波累積加算値ATDを最大累積加算値ATDmaxに基づく相対値(以下、「第4相対加算値ARD」)に変換する。また、第1血管弾性指標値EAの算出手順と同様の手順により、右大腿についての血管弾性指標値E(以下、「第4血管弾性指標値ED」)を算出する。
血圧値算出部71は、第1最高血圧値BHAおよび第1最低血圧値BLAの算出手順と同様の手順により、右大腿についての最高血圧値BH(以下、「第4最高血圧値BHD」)および最低血圧値BL(以下、「第4最低血圧値BLD」)を算出する。また、算出した第4最高血圧値BHDおよび第4最低血圧値BLDのそれぞれを示す信号を機能判定部80に出力する。
機能判定部80は、図9に示される判定マップに加え、図14に示される判定マップを用いて循環機能の判定を行う。図14の判定マップには、以下の各判定領域が設定されている。
(a)領域R41は、「循環機能が正常」旨の領域を示す。
(b)領域R42は、「循環機能の異常度合いが要注意の水準にある」旨の領域を示す。
(c)領域R43は、「循環機能の異常度合いが危険の水準にある」旨の領域を示す。
上記各領域R41〜R43の面積は、性別および年代等に応じて異なるため、性別および年代等に応じて各領域R41〜R43の大きさが設定された複数の判定マップが機能判定部80に記憶されている。一般的に、年齢の増加とともに血管は硬くなるため、高齢となるにつれて領域R41の面積は大きくなる傾向を示す。
機能判定部80は、測定結果テーブルに記憶されている内容に基づいて、左上腕、左足首、右上腕、および右大腿のそれぞれについての血管弾性指標値Eおよび足首上腕血圧値比BR1が判定マップ上のいずれの領域に属するかを判定する。
例えば、左上腕の測定結果が領域R41に属するとき、左上腕の動脈の循環機能に異常が生じていない旨判定する。また、左足首の測定結果が領域R42に属するとき、左足首の循環機能が要注意の水準にある旨判定する。また、右大腿の測定結果が領域R43に属するとき、右大腿の循環機能が危険の水準にある旨判定する。
情報表示部90には、図8および図11に示される測定結果テーブルの内容、図9および図12に示される判定マップの内容、ならびに図14に示される判定マップの内容が入力される。そして、入力された内容が情報表示部90により表示される。
(実施形態の効果)
本実施形態の循環機能判定装置1によれば、第1実施形態の(1)〜(4)の効果と同様の効果、および第2実施形態の(5)の効果と同様の効果が得られる。
(第4実施形態)
図1および図15を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態の循環機能判定装置1は、第1実施形態の循環機能判定装置1の一部を変更したものとして構成されている。このため、以下では第1実施形態の循環機能判定装置1と異なる点の詳細を説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明の一部または全部を省略する。
図15を参照して、第1実施形態の装置1からの変更点について説明する。
第1実施形態の循環機能判定装置1には、カフ10として左上腕に装着される第1カフ11および左足首に装着される第2カフ12が設けられている。これに対して本実施形態の循環機能判定装置1では、カフ10として第1カフ11および第2カフ12を含めて以下のものが設けられている。
(A)左上腕に装着される第1カフ11。
(B)左足首に装着される第2カフ12。
(C)右上腕に装着される第3カフ13。
(D)右大腿に装着される第4カフ14。
(E)左大腿に装着される第5カフ15。
(F)右足首に装着される第6カフ16。
(G)左手首に装着される第7カフ17。
(H)右手首に装着される第8カフ18。
図1に示される制御装置20の各部位の動作について説明する。
圧力検出部40は、第1圧迫圧力PAの算出手順と同様の手順により、左足首、右上腕、右大腿、左大腿、右足首、左手首、および右手首の圧迫圧力Pを算出する。すなわち、各カフにより加圧および減圧が行われているときの対応する部位の圧迫圧力Pを圧力センサにより検出し、圧力センサの出力をA/D変換した後に脈波検出部50に出力する。
脈波検出部50は、第1脈波振幅値AAの算出手順と同様の手順により、左足首、右上腕、右大腿、左大腿、右足首、左手首、および右手首の脈波振幅値Aを算出する。また、左上腕についての包絡線LH1の生成手順と同様の手順により、左足首、右上腕、右大腿、左大腿、右足首、左手首、および右手首についての包絡線LH1を生成する。
脈波特徴検出部61は、第1脈波累積加算値ATAの算出手順と同様の手順により、左足首、右上腕、右大腿、左大腿、右足首、左手首、および右手首の脈波累積加算値ATを算出する。また、左上腕についての特性線LT1と同様の手順により、左足首、右上腕、右大腿、左大腿、右足首、左手首、および右手首についての特性線LT1を生成する。
指標値算出部62は、第1相対加算値ARAの算出手順と同様の手順により、左足首、右上腕、右大腿、左大腿、右足首、左手首、および右手首についての脈波累積加算値ATを最大累積加算値ATmaxに基づく相対値に変換する。また、第1血管弾性指標値EAの算出手順と同様の手順により、左足首、右上腕、右大腿、左大腿、右足首、左手首、および右手首についての血管弾性指標値Eを算出する。
血圧値算出部71は、第1最高血圧値BHAおよび第1最低血圧値BLAの算出手順と同様の手順により、左足首、右上腕、右大腿、左大腿、右足首、左手首、および右手首についての最高血圧値BHおよび最低血圧値BLを算出する。また、算出した最高血圧値BHおよび最低血圧値BLのそれぞれを示す信号を機能判定部80に出力する。
血圧値比算出部72は、2つの測定部位の最高血圧値BHの比である血圧値比BRとして、以下のものを算出する。また、算出した各血圧値比を示す信号を機能判定部80に出力する。
(A)左上腕および左手首の最高血圧値BHに基づく血圧値比BR。
(B)左手首および左大腿の最高血圧値BHに基づく血圧値比BR。
(C)左大腿および左足首の最高血圧値BHに基づく血圧値比BR。
(D)左足首および左上腕の最高血圧値BHに基づく血圧値比BR。
(E)右上腕および右手首の最高血圧値BHに基づく血圧値比BR。
(F)右手首および右大腿の最高血圧値BHに基づく血圧値比BR。
(G)右大腿および右足首の最高血圧値BHに基づく血圧値比BR。
(H)右足首および右上腕の最高血圧値BHに基づく血圧値比BR。
図15を参照して、測定手順の一例について説明する。
循環機能判定装置1においては、次の(手順1)および(手順2)の順により循環機能に異常がある部位を判定する。
(手順1)左上腕および左足首の血圧値比BRに基づいて、左半身全体としての循環機能を判定する。また、右上腕および右足首の血圧値比BRに基づいて、右半身全体としての循環機能を判定する。
図15に示される一例においては、左上腕および左足首の血圧値比BRが正常範囲外の値を示しているため、左上腕と左足首との間の循環機能に異常がある旨判定される。一方、右上腕および右足首の血圧値比BRは正常範囲内の値を示しているため、右上腕と右足首との間の循環機能が正常である旨判定される。
(手順2)左半身および右半身の少なくとも一方に異常がある旨判定した場合、異常がある半身についての循環機能の判定をより詳細に行う。ここでは、左上腕および左手首の血圧値比BRと、左手首および左大腿の血圧値比BRと、左大腿および左足首の血圧値比BRとをそれぞれ算出し、これら血圧値比BRに基づいて左半身の循環機能を判定する。
図15に示される一例においては、左大腿および左足首の血圧値比BRが正常範囲外の値を示しているため、左大腿と左足首との間の循環機能に異常がある旨判定される。一方、左上腕と左手首との間の循環機能、および左手首と左大腿との間の循環機能については正常である旨判定される。
(実施形態の効果)
本実施形態の循環機能判定装置1によれば、第1実施形態の(1)〜(4)の効果と同様の効果、および第2実施形態の(5)の効果と同様の効果に加えて、以下の(6)の効果が得られる。
(6)循環機能判定装置1においては、左半身全体としての循環機能および右半身全体としての循環機能をそれぞれ判定し、異常がある半身については同半身の各部位間の血圧値比BRに基づいてさらに循環機能を判定している。
この構成によれば、左半身全体および右半身全体としての循環機能の判定、および各半身のそれぞれの部位間についての循環機能の判定により、循環機能に異常のある部分が特定されるため、すなわち全体および細部の2回にわたる判定が行われるため、循環機能の異常をより正確に判定することが可能となる。
(第5実施形態)
図1、図3および図16を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態の循環機能判定装置1は、第1実施形態の循環機能判定装置1の一部を変更したものとして構成されている。このため、以下では第1実施形態の循環機能判定装置1と異なる点の詳細を説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明の一部または全部を省略する。
図3を参照して、第1実施形態の装置1からの変更点について説明する。
第1実施形態の循環機能判定装置1では、特性線LT2の傾きに相当する第1振幅変化率DR1および第2振幅変化率DR2をそれぞれ算出し、これを指標値算出テーブルに適用して第1血管弾性指標値EAおよび第2血管弾性指標値EBを算出している。
ここで、包絡線LH1の形状と血管の容積変化との関係について説明する。
図3(a)には、血管が軟らかい場合の包絡線LH1が示されている。この包絡線LH1においては、圧迫圧力Pが変化したときの脈波振幅値Aの変化量が大きい、すなわち血管の容積変化が大きい。
図3(b)には、血管が硬い場合の包絡線LH1が示されている。この包絡線LH1においては、圧迫圧力Pが変化したときの脈波振幅値Aの変化量が小さい、すなわち血管の容積変化が小さい。
このように包絡線LH1の形状には、圧迫圧力Pの変化に伴う血管の容積変化、すなわち血管の実際の力学的な特性が反映されている。そこで、本実施形態の循環機能判定装置1では、図6に示される特性線LT2を用いて血管弾性指標値Eを算出する第1実施形態の算出方法に代えて、包絡線LH1を用いて血管弾性指標値Eを算出する方法を採用している。
図1に示される血圧値算出部71は、図3に示される左上腕および左足首のそれぞれについての包絡線LH1を規格化し、図16に示される規格化後の包絡線LH3に基づいて、左上腕および左足首のそれぞれの血管弾性指標値Eを算出する。具体的には、次の手順で各血管弾性指標値Eを算出する。
血圧値算出部71は、図3(a)および図3(b)に示される左上腕の包絡線LH1を最大振幅値AAmaxにより規格化する。すなわち、包絡線LH1の縦軸である第1脈波振幅値AAを最大振幅値AAmaxに基づく相対値としての第1相対振幅値AAAに変換する。
次に、図16(a)および図16(b)に示される規格化後の包絡線LH3に基づいて、予め規定された所定の相対振幅値AAZに対応する圧迫圧力Pの幅、すなわち相対振幅値AAZのときの圧迫圧力PZAと圧迫圧力PZBとの差を血管弾性指標値Eとして算出する。また、算出した血管弾性指標値Eを示す信号を機能判定部80に出力する。
(実施形態の効果)
本実施形態の循環機能判定装置1によれば、第1実施形態の(1)〜(4)の効果と同様の効果が得られる。
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記各実施形態に例示した内容に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
・第1実施形態では、上腕の最高血圧値BHに対する足首の最高血圧値BHの比としての足首上腕血圧値比BR1を算出し、この血圧値比BR1を用いて循環機能を判定しているが、これを次のように変更することもできる。すなわち、足首の最高血圧値BHに対する上腕の最高血圧値BHの比としての上腕足首血圧値比BR3を算出し、この血圧値比BR3を用いて循環機能を判定することもできる。
・第1実施形態では、左上腕および左足首の血圧値比BRおよび血管弾性指標値Eに基づいて循環機能を判定しているが、血圧値比BRおよび血管弾性指標値Eの測定対象とする部位を変更することもできる。例えば、左上腕、右上腕、左手首、右手首、左大腿、右大腿、左足首、および右足首のなかから任意の2箇所を選択し、選択した部位の血圧値比BRおよび血管弾性指標値Eに基づいて循環機能を判定することもできる。
・第2実施形態では、身体の左右対称の部位として左上腕および右上腕を選択し、これらの部位の血圧値比BRおよび血管弾性指標値Eに基づいて循環機能を判定しているが、左右対称の2箇所の組み合わせを次のように変更することもできる。すなわち、「左手首および右手首」、「左大腿および右大腿」、ならびに「左足首および右足首」のいずれかの組み合わせを左右対称の2箇所の部位として選択し、選択した部位の血圧値比BRおよび血管弾性指標値Eに基づいて循環機能を判定することもできる。
・第3実施形態では、図9に示される判定マップを用いた循環機能の判定、および図14に示される判定マップを用いた循環機能の判定を行う構成を採用しているが、前者の判定を省略することもできる。
・第1〜第4実施形態では、最高血圧値BHを用いて血圧値比BRを算出しているが、最低血圧値BLを用いて血圧値比BRを算出することもできる。
・第1〜第4実施形態では、図6に示される規格化後の特性線LT2を用いて血管弾性指標値Eを算出しているが、図5に示される規格化前の特性線LT1を用いて血管弾性指標値Eを算出することもできる。
・第1〜第4実施形態では、図7に示される規格化後の包絡線LH2を用いて最高血圧値BHを算出しているが、図3に示される規格化前の包絡線LH1を用いて最高血圧値BHを算出することもできる。
・第1〜第4実施形態では、図7に示される規格化後の包絡線LH2を用いて最低血圧値BLを算出しているが、図3に示される規格化前の包絡線LH1を用いて最低血圧値BLを算出することもできる。
・第1〜第4実施形態では、第1振幅変化率DR1および第2振幅変化率DR2をそれぞれ算出し、これを指標値算出テーブルに適用して第1血管弾性指標値EAおよび第2血管弾性指標値EBを算出しているが、血管弾性指標値Eの算出方法を次のように変更することもできる。すなわち、第1振幅変化率DR1および第2振幅変化率DR2のそれぞれから第1血管弾性指標値EAおよび第2血管弾性指標値EBを算出することもできる。この場合には、血管弾性指標値Eと血管の硬さとの関係が各実施形態とは反対のものとなる。すなわち、血管弾性指標値Eが小さくなるにつれて血管が硬いことを示すものとして血管弾性指標値Eが取り扱われる。
1…循環機能判定装置、11…第1カフ(第1圧迫部)、12…第2カフ(第2圧迫部)、50…脈波検出部、60…弾性測定部、70…血圧測定部、80…機能判定部。

Claims (7)

  1. 身体の第1部分を圧迫する第1圧迫部と、身体の第2部分を圧迫する第2圧迫部とを備える循環機能判定装置において、
    前記第1圧迫部により前記第1部分が圧迫されているときに同部分に生じる脈波に関する第1脈波情報、および前記第2圧迫部により前記第2部分が圧迫されているときに同部分に生じる脈波に関する第2脈波情報を検出する脈波検出部と、
    前記第1圧迫部の圧迫圧力である第1圧迫圧力と前記第1脈波情報とに基づいて第1血圧値を算出する処理と、前記第2圧迫部の圧迫圧力である第2圧迫圧力と前記第2脈波情報とに基づいて第2血圧値を算出する処理とを行う血圧測定部と、
    前記第1部分の血管の弾性の指標値である第1血管弾性指標値を前記第1脈波情報に基づいて算出する処理と、前記第2部分の血管の弾性の指標値である第2血管弾性指標値を前記第2脈波情報に基づいて算出する処理とを行う弾性測定部と、
    前記第1血圧値および前記第2血圧値の少なくとも一方と、前記第1血管弾性指標値および前記第2血管弾性指標値とに基づいて循環機能を判定する機能判定部と
    を備えることを特徴とする循環機能判定装置。
  2. 請求項1に記載の循環機能判定装置において、
    前記弾性測定部は、前記第1脈波情報に含まれる第1脈波振幅値と前記第1圧迫圧力とに基づいて前記第1血管弾性指標値を算出し、前記第2脈波情報に含まれる第2脈波振幅値と前記第2圧迫圧力とに基づいて前記第2血管弾性指標値を算出する
    ことを特徴とする循環機能判定装置。
  3. 請求項1または2に記載の循環機能判定装置において、
    前記血圧測定部は、前記第1血圧値と前記第2血圧値との比である血圧値比を算出するものであり、
    前記機能判定部は、前記血圧値比、前記第1血管弾性指標値、および前記第2血管弾性指標値に基づいて循環機能を判定するものである
    ことを特徴とする循環機能判定装置。
  4. 請求項3に記載の循環機能判定装置において、
    前記機能判定部は、前記血圧測定部により算出された前記血圧値比が血圧判定範囲内にあるとき、かつ前記弾性測定部により算出された前記第1血管弾性指標値および前記第2血管弾性指標値が弾性判定範囲内にあるとき、循環機能が正常である旨判定する
    ことを特徴とする循環機能判定装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の循環機能判定装置において、
    前記第1圧迫部は、心臓付近の部位である中枢部を圧迫するものであり、
    前記第2圧迫部は、前記中枢部よりも心臓から離れた部位である末梢部を圧迫するものである
    ことを特徴とする循環機能判定装置。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の循環機能判定装置において、
    前記第1圧迫部は、左半身の所定の部位を圧迫するものであり、
    前記第2圧迫部は、前記左半身の所定の部位に対して左右対称の関係にある右半身の所定の部位を圧迫するものである
    ことを特徴とする循環機能判定装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の循環機能判定装置において、
    前記弾性測定部は、前記第1圧迫部による圧迫の開始から圧迫の終了までに得られる前記第1脈波情報に含まれる第1脈波振幅値を累積加算して第1脈波累積加算値を算出する処理と、前記第2圧迫部による圧迫の開始から圧迫の終了までに得られる前記第2脈波情報に含まれる第2脈波振幅値を累積加算して第2脈波累積加算値を算出する処理と、前記第1脈波累積加算値と前記第1圧迫圧力との関係に基づいて前記第1血管弾性指標値を算出する処理と、前記第2脈波累積加算値と前記第2圧迫圧力との関係に基づいて前記第2血管弾性指標値を算出する処理とを行う
    ことを特徴とする循環機能判定装置。
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