JP2012163016A - エンジン始動制御装置およびエンジン始動制御方法 - Google Patents

エンジン始動制御装置およびエンジン始動制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】車両の周辺に存在している物体の中から、エンジンの始動に障害になるものを正確に検出し、エンジンの始動を保留すること。
【解決手段】車両のエンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置1において、車両の周囲に存在する物体の種類と位置を検出する検出手段(UWBレーダ20−1〜20−4)と、ユーザによるエンジンを始動する操作を検知する検知手段(通信部10f)と、検知手段によってエンジンを始動する操作が検知されると、車両の周囲に存在する物体の種類と位置を検出手段によって検出し、種類が所定の種類であり、かつ、位置が種類によって定まる所定の範囲内である場合には、エンジンの始動を保留する保留手段(CPU10a)と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジン始動制御装置およびエンジン始動制御方法に関するものである。
車両のエンジンを遠隔操作で始動できる、いわゆる「リモートエンジンスタータ」が存在する。このリモートエンジンスタータによりエンジンを始動する場合、ユーザは車両から離れた場所に居るため、車両の周辺の状況によってはエンジンを直ちに始動しない方が望ましいときもある。そのような技術としては、例えば、特許文献1,2がある。
特許文献1には、エンジンのマフラから所定の範囲内に物体が存在する場合にはエンジンを始動しない技術が開示されている。また、特許文献2には、車両の周辺に人がいる場合には、警報を発出した後にエンジンを始動する技術が開示されている。
特開2006−009650号公報 特開2004−218444号公報
ところで、特許文献1に開示された技術では、物体を検出した場合にエンジンを始動しない構成とされているので、例えば、マフラの周辺に積雪があった場合にもエンジンが始動できなくなり、暖機運転を主な目的とするリモートエンジンスタータとしては不都合である。
特許文献2に開示された技術では、人体の移動に基づく反射波の位相オフセットによって人体を検出している。このため、降雨または降雪がある場合には、水滴や雪片によっても反射波の位相オフセットが生ずるので、不必要に警報が発出される場合がある。
そこで、本発明は、車両の周辺に存在している物体の中から、エンジンの始動に障害になるものを正確に検出し、エンジンの始動を保留することが可能なエンジン始動制御装置およびエンジン始動制御方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明は、車両のエンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置において、前記車両の周囲に存在する物体の種類と位置を検出する検出手段と、ユーザによる前記エンジンを始動する操作を検知する検知手段と、前記検知手段によってエンジンを始動する操作が検知されると、前記車両の周囲に存在する物体の種類と位置を前記検出手段によって検出し、前記種類が所定の種類であり、かつ、前記位置が前記種類によって定まる所定の範囲内である場合には、前記エンジンの始動を保留する保留手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、車両の周辺に存在している物体の中から、エンジンの始動に障害になるものを正確に検出し、エンジンの始動を保留することが可能となる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記保留手段は、前記物体の種類が人体であり、かつ、前記車両から所定の範囲内に位置する場合には、前記エンジンの始動を保留する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、人体を検出した場合には、エンジンの始動を保留できるので、車両の周辺にいる人が驚いてしまうことを防止できる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記保留手段は、前記物体の種類が可燃物であり、かつ、前記車両のエンジンの排気系から所定の範囲内に位置する場合には、前記エンジンの始動を保留することを特徴とする。
このような構成によれば、排気系の周囲に可燃物が存在する場合には、エンジンの始動を保留することで、可燃物が排気系の熱によって焦げたり、発火したりすることを防止できる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検出手段は、前記物体に対して超広帯域無線信号を照射し、その反射信号によって前記物体の種類と位置を検出することを特徴とする。
このような構成によれば、広い視野角かつ高精度に物体を検出することができる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記検知手段は、前記ユーザがリモートコントローラによってエンジンを始動する操作を行ったことを検知することを特徴とする。
このような構成によれば、ユーザが車両から離れた場所にいる場合であっても、車両のエンジンを安全に始動することができる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記保留手段は、前記エンジンの始動を保留した場合には、前記エンジンの始動を保留した旨を前記リモートコントローラによって前記ユーザに提示することを特徴とする。
このような構成によれば、エンジンの始動が保留されたことを、ユーザが離れた場所にいる場合であっても知ることができる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記車両を停車した場合に前記検出手段によって前記車両の周囲に存在する物体の位置と種類を検出して記憶する記憶手段を有し、前記保留手段は、前記検知手段によってエンジンを始動する操作が検知されると、前記車両の周囲に存在する物体の位置と種類を前記検出手段によって検出し、前記記憶手段に記憶されている情報と比較して、周囲に存在する物体の種類または位置が変化している場合には、前記エンジンの始動を保留することを特徴とする。
このような構成によれば、周囲の状況が変化した場合には、エンジンの始動を保留することにより、ユーザが知らない間に車両の周囲に物体が置かれた場合でもエンジンの始動を保留して発火等を防ぐことができる。
また、本発明は、車両のエンジンの始動を制御するエンジン始動制御方法において、前記車両の周囲に存在する物体の種類と位置を検出する検出ステップと、ユーザによる前記エンジンを始動する操作を検知する検知ステップと、前記検知ステップにおいてエンジンを始動する操作が検知されると、前記車両の周囲に存在する物体の種類と位置を前記検出ステップにおいて検出し、前記種類が所定の種類であり、かつ、前記位置が前記種類によって定まる所定の範囲内である場合には、前記エンジンの始動を保留する保留ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、車両の周辺に存在している物体の中から、エンジンの始動に障害になるものを正確に検出し、エンジンの始動を保留することが可能となる。
本発明によれば、車両の周辺に存在している物体の中から、エンジンの始動に障害になるものを正確に検出し、エンジンの始動を保留することが可能なエンジン始動制御装置およびエンジン始動制御方法を提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係るエンジン始動制御装置の構成例を示す図である。 図1の始動制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。 図1のUWBレーダの詳細な構成例を示すブロック図である。 図1に示す各UWBレーダの検出エリアの一例を示す図である。 本実施形態において実行される処理の一例を説明するフローチャートである。 UWBレーダの送信信号および受信信号の波形を示す図である。 図5に示す処理が実行された際の各部の信号波形を示すタイミングチャートである。
次に、本発明の実施形態について説明する。
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン始動制御装置の構成例を示す図である。この図に示すように、エンジン始動制御装置1は、始動制御部10、UWB(Ultra Wide Band)レーダ20−1〜20−4、および、リモートコントローラ30を主要な構成要素としており、車両に搭載され、スタータモータ40を制御してエンジン50を始動する。
ここで、始動制御部10は、リモートコントローラ30からエンジン50の始動を指示する信号(以下、「エンジン始動指示信号」と称する)を受信すると、UWBレーダ20−1〜20−4からの出力を参照し、車両の周辺に存在する物体の種類と位置を検出し、検出した物体が始動に影響を与えると判定した場合にはエンジン50の始動を保留し、影響を与えないと判定した場合にはスタータモータ40を制御してエンジン50を始動する。
図2は、始動制御部10の詳細な構成例を示すブロック図である。この図に示すように、始動制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、I/F(Interface)10d、バス10e、通信部10f、および、リレー群10gを主要な構成要素としている。CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラムおよびデータに基づいて装置の各部を制御する。ROM10bは、CPU10aが実行する各種プログラムおよびデータを格納している。RAM10cは、CPU10aがプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する。I/F10dは、通信部10fを介してリモートコントローラ30との間で情報の授受を行うとともに、UWBレーダ20−1〜20−4との間で情報の授受を行う。また、I/F10dは、リレー群10gを制御することにより、アクセサリやイグニッションへの電力の供給を行うとともに、スタータモータ40を回転または停止させる。バス10eは、CPU10a、ROM10b、RAM10c、および、I/F10dを相互に接続しこれらの間で情報の授受を可能とする信号線群である。
通信部10fは、例えば、電波によってリモートコントローラ30との間で情報を授受し、リモートコントローラ30からのエンジン始動指示信号を受信するとともに、エンジン50の始動の可否をリモートコントローラ30に通知(コールバック)する。リレー群10gは、電流によって制御される複数のリレースイッチによって構成される。リレー群10gを構成する各リレーは、スタータモータ40、イグニッションコイル(不図示)、および、アクセサリ(不図示)等への電力の供給をそれぞれ制御する。例えば、スタータモータ40を制御するリレーの場合には、I/F10dを介してCPU10aからオン信号が供給された場合には、オンの状態となって図示しないバッテリからスタータモータ40に電力が供給され、エンジン50が始動される。また、エンジン50の始動後はオフ信号が供給されてオフの状態となり、スタータモータ40への電力の供給が停止される。
UWBレーダ20−1〜20−4は、超広帯域無線信号を車両の周囲に送信し、反射信号の到達時間に応じて物体までの距離を検出するとともに、周波数の変化に応じて物体の移動の有無を検出する。また、受信信号の強度等に基づいて物体の種類を推定する。なお、明細書中において、超広帯域無線とは、500MHz以上もしくは1.5GHz以上の帯域幅、または、比帯域幅(中心周波数に対する帯域幅)が20%以上もしくは25%以上である無線方式をいい、より詳細には、インパルスレディオ(Impulse Radio:インパルス無線)方式で、変調をせずに、1ナノ秒(ns)以下の数百ピコ秒(ps)程度の短いインパルス状のパルス信号列を無線で送受信する通信方式をいう。本実施形態では、UWBレーダ20−1〜20−4は、車両の走行時、発進時、車庫入れ時等に障害物への衝突を回避する目的で装備されているものを利用している。すなわち、UWBレーダ20−1〜20−4は、走行時、発進時、車庫入れ時において、障害物が車両の周辺に存在する場合において衝突の可能性が高い場合には、警告を発したり、ブレーキをかけたりすることにより衝突を回避するシステムに使用されているものを流用する。
図3は、UWBレーダ20−1〜20−4の構成例を示すブロック図である。なお、UWBレーダ20−1〜20−4は同様の構成とされているので、以下ではこれらをUWBレーダ20としてまとめて説明する。図3に示すように、UWBレーダ20は、制御部20a、パルス発生部20b、増幅部20c、送信アンテナ20d、受信アンテナ20e、増幅部20f、S/H(Sample and Hold)20g、および、I/F20hを主要な構成要素としている。制御部20aは、パルス発生部20bを制御して超広帯域無線信号を送信し、S/H20gからの出力に基づいて物体までの距離および種類を検出し、検出結果をI/F20hを介して始動制御部10に通知する。パルス発生部20bは、例えば、300ps程度の幅を有するパルス信号を生成し、増幅部20cに供給する。増幅部20cは、パルス発生部20bから供給されたパルス信号の電力を増幅して送信アンテナ20dに供給する。送信アンテナ20dは、増幅部20cから供給される信号を電波として放射する。受信アンテナ20eは、送信アンテナ20dから放射され、物体によって反射された反射信号を受信し、増幅部20fに供給する。増幅部20fは、受信アンテナ20eによって受信された受信信号を増幅してS/H20gに供給する。S/H20gは、増幅部20fから供給される信号を一定の周期でサンプリングして制御部20aに供給する。I/F20hは、制御部20aが始動制御部10との間でデータを授受する際にデータの表現形式等を変換するインターフェースである。
図4は、図1に示すUWBレーダ20−1〜20−4のそれぞれの検出エリアの一例を模式的に示す図である。本実施形態では、UWBレーダ20−1は車両の前方の検出エリアA1を担当し、UWBレーダ20−2は車両の後方の検出エリアA2を担当し、UWBレーダ20−3は車両の右方の検出エリアA3を担当し、UWBレーダ20−4は車両の左方の検出エリアA4を担当する。なお、図4の例では、車両の前後左右の各辺の中央付近にUWBレーダ20−1〜20−4をそれぞれ配置するようにしたが、例えば、車両の四隅(右前、左前、右後、左後)にそれぞれ配置するようにしてもよい。また、図4の例では、車両の周囲を4つの検出エリアに分割するようにしたが、3つ以下であったり、5つ以上であったりしてもよいことは言うまでもない。もちろん、図4に示す前後左右の辺の中央付近にUWBレーダ20−1〜20−4をそれぞれ配置するとともに、四隅のそれぞれにも併せて配置するようにしてもよい。また、図4では、エリアA1〜A4は相互に重複しておらず、また、これらのエリアのいずれにも該当しないエリアが存在するが、エリアを重複するようにしたり、車両の周囲の全てがいずれかのエリアに属するようにしたりしてもよい。
(B)実施形態の動作の説明
つぎに、本実施形態の動作について説明する。図5は、本実施形態において実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、図5に示す処理は、図2に示すROM10bに格納されているプログラムがCPU10aによって読み出されて実行された場合に実現される。図5の処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS10では、CPU10aは、リモートコントローラ30からエンジン始動指示信号を受信したか否かを判定し、受信したと判定した場合(ステップS10:Yes)にはステップS11に進み、それ以外の場合にはエンジン始動指示信号を受信するまで同様の処理を繰り返す。具体的には、ユーザが図1に示すリモートコントローラ30の図示しないエンジン始動ボタンを操作すると、リモートコントローラ30は、エンジン50の始動を指示するエンジン始動指示信号を生成して送信する。この結果、始動制御部10の通信部10fはこの信号を受信し、I/F10dを介してCPU10aに供給する。これにより、CPU10aは、エンジン始動指示信号を受信したとしてステップS11に進む。
ステップS11では、CPU10aは、ACC(Accessory)電源をオンの状態にする。具体的には、CPU10aは、リレー群10gのうち、アクセサリの電源を制御するリレースイッチを制御してこれをオンの状態とする。
ステップS12では、CPU10aは、IG(Ignition)電源をオンの状態にする。具体的には、CPU10aは、リレー群10gのうち、イグニッションの電源を制御するリレースイッチを制御してこれをオンの状態とする。
ステップS13では、CPU10aは、UWBレーダ20−1〜20−4を制御し、周辺検出処理を実行する。より具体的には、例えば、CPU10aは、UWBレーダ20−1〜20−4の順に制御信号を供給し、図4に示す検出エリアA1〜A4を順番に検知させる。UWBレーダ20−1〜20−4のそれぞれでは、CPU10aから制御信号を受信すると、制御部20aが、パルス発生部20bにパルス信号を発生させる。パルス発生部20bが発生したパルス信号は、増幅部20cで増幅され送信アンテナ20dから超広帯域無線信号として送信される。送信アンテナ20dから送信された超広帯域無線信号は、各検出エリアA1〜A4に存在する物体によって反射され、受信アンテナ20eによって受信される。受信アンテナ20eによって受信された反射信号は、増幅部20fで増幅され、S/H20gでサンプリングされるとともに一定期間ホールドされる。制御部20aはS/H20gによってサンプリングおよびホールドされた信号を読み込み、パルス発生部20bから出力される信号と比較することにより、物体の種類、位置、および、移動の有無を検出する。
より具体的に説明する。図6は、UWBレーダ20からの送信信号および受信信号を示す図である。図6(A)はUWBレーダ20の送信信号を模式的に示し、図6(B)はUWBレーダ20の受信信号を模式的に示している。なお、この図において横軸は時刻を示し、縦軸は強度を示す。図6(A)に示すように時刻t1において送信された信号は、振幅E0を有する複数のパルスを有する信号である。このような送信信号は、検出エリア内に存在する物体によって反射され、反射波となってUWBレーダ20まで伝播される。図6(B)に示すように、UWBレーダ20は、時刻t2において反射波を受信する。このとき、反射波の強度はE1(<E0)となる。制御部20aは、送信信号と受信信号を比較することにより、以下のように、物体までの位置、種類、および、移動量を検出する。
まず、物体の位置(物体までの距離L)については、送信信号と受信信号の時間差(図6のD)と電波の伝播速度Cに基づいて以下の式(1)によって求めることができる。
L=C・D/2 ・・・(1)
つぎに、物体の種類を検出する方法については、主に、(a)受信信号の強度、(b)受信信号の広がり、(c)受信信号の周波数変位に基づいて判定する。ここで、(a)受信信号の強度については、物体はその種類によって電波の反射係数が異なり、反射係数の大小によって受信信号の強度が異なるので、受信信号の強度に基づいて物体の種類を推定することができる。
より詳細には、例えば、物体の反射係数に基づいて比誘電率を計算することにより物体の種類を推定することができる。具体的には、物体の反射率をRとし、送信波の電界強度をE0とし、E1を反射波の電界強度とし、Z0を空気のインピーダンスとし、Z1を物体のインピーダンスとすると、反射率は以下の式(2)で表される。
R=E1/E0=(Z1−Z0)/(Z0+Z1) ・・・(2)
ここで、インピーダンスZ0,Z1は、送信信号の角周波数をωとし、空気と物体の伝搬定数をそれぞれγ0、γ1とすると、以下の式(3),(4)で表される。ここで、ε0,σ0,σ0は空気の誘電率、導電率、および、透磁率をそれぞれ示し、ε1,σ1,σ1は物体の誘電率、導電率、および、透磁率をそれぞれ示す。
Z0=jωμ0/γ0=γ0/(σ0+jωε0) ・・・(3)
Z1=jωμ1/γ1=γ1/(σ1+jωε1) ・・・(4)
また、伝搬定数γ0、γ1は、以下の式(5),(6)で表される。
γ0=(jωμ0(σ0+jωε0))1/2 ・・・(5)
γ1=(jωμ1(σ1+jωε1))1/2 ・・・(6)
空気の伝搬定数γ0は既知であるので、複数回の検出によってγ1を求めることで、物体の比誘電率を求めることができる。なお、超広帯域無線信号は、複数の周波数の信号を含んでいるので、各周波数についてγ1を求めて統計処理によって比誘電率を求めることもできる。
また、(b)受信信号の広がりについては、受信信号の広がりから物体の大きさを求めることにより物体の種類を推定することができる。
物体の大きさを求める具体的な方法としては、例えば、送信信号の電力をPt、受信信号の電力をPr、物体までの距離をL、受信信号の波長をλ、物体の有効反射面積をa、kを定数とした場合、これらの間には以下の式(7)が成り立つ。この有効反射面積aを求めることにより、物体の種類を推定することができる。
Pr=k・Pt・a・λ・L ・・・(7)
また、(c)受信信号の周波数変位については、物体が移動体である場合、ドップラ効果による周波数の変位が生じるので、当該周波数変位を測定することで、物体が移動体か否かを知ることができる。
ステップS14では、CPU10aは、ステップS13の処理の結果に基づいて、所定の範囲内に人体を検出したか否かを判定し、人体を検出した場合(ステップS14:Yes)にはステップS19に進み、それ以外の場合(ステップS14:No)にはステップS15に進む。なお、ステップS14の処理では、全ての検出エリアA1〜A4を対象として判定を行うため、検出エリアA1〜A4の少なくとも1つのエリアに人体が検出された場合にはステップS19に進む。所定の範囲としては、例えば、各レーダからの距離が2m以内とすることができる。もちろん、これ以外の範囲としてもよいことは言うまでもない。
なお、人体か否かを判定する具体的な方法としては、例えば、ステップS13で求めた比誘電率が所定の範囲内に収まっていることを基準として判断することができる。すなわち、人体には固有の比誘電率の範囲が存在するので、当該範囲を予め実測して、ROM10bにテーブルとして格納しておき、ステップS14の検出結果と、テーブルとを対比することにより、人体か否かを検出することができる。具体的な値としては、人体の比誘電率は5.0前後であることが知られているので、5.0±0.5の範囲に収まれば人体であると判定するようにしてもよい。なお、人体か否かの判定をより確実に行うため、例えば、前述した(c)受信信号の周波数変位により、物体とUWBレーダ20の間の距離Lが変動していることを判定条件として追加し、比誘電率が所定の前述した範囲内であって、かつ、物体が移動している場合には人体と判定するようにしてもよい。このような判定にするのは、人体であれば一定時間以上不動のままでいることは難しいことから、移動も考慮することで、より正確な判定を行うことができるからである。さらに、前述した(b)受信信号の広がりに基づいて、物体の有効反射面積を求め、当該有効反射面積が所的の範囲に収まることを判定条件として追加するようにしてもよい。そのような判定条件を追加することで、より正確に人体か否かの判断をすることができる。
ステップS15では、CPU10aは、エンジン50の排気系から所定の範囲内に可燃物が存在するか否かを判定し、可燃物が存在する場合(ステップS15:Yes)にはステップS19に進み、それ以外の場合(ステップS15:No)にはステップS16に進む。なお、本実施形態では、検出の対象となる排気系としてはマフラが選択され、マフラから排出される排気ガスによって発火する可能性がある可燃物が検出の対象とされる。このため、本実施形態では、検出エリアA2内に存在する可燃物が判定の対象となる。
ここで、可燃物としては、例えば、枯れ草および紙片等が存在する。具体的には、枯れ草の比誘電率は1.5前後であり、紙片の比誘電率は2.0前後であるので、例えば、1.5〜2.0の範囲に収まっている場合には、可燃物と判定することができる。また、位置については、マフラから数十センチ以内に存在している場合には発火の危険性がある。従って、ステップS15の処理の一例としては、例えば、マフラから数十センチ以内に、比誘電率が1.5〜2.0の範囲内に属する物体が存在している場合にはステップS19に進むようにしてもよい。もちろん、以上は一例であって、これ以外の判断に基づくようにしてもよい。ちなみに、水の比誘電率は80程度であり、雪の比誘電率は3.3程度であるので、人体および可燃物と、降雨および降雪とを明確に区別することができる。
ステップS16では、CPU10aは、人体または可燃物のいずれも検出されなかったとして、クランキングを実行する。より詳細には、CPU10aは、リレー群10gのうち、スタータモータ40を制御するリレーをオンの状態にすることで、スタータモータ40を回転させ、エンジン50をクランキングする。
ステップS17では、CPU10aは、クランキングを終了し、エンジン50をオンの状態(アイドリング状態)とする。この結果、エンジン50がアイドリング状態となるので、暖機運転がされるとともに、空調装置によって車内が所望の温度に調節される。
ステップS18では、CPU10aは、I/F10dおよび通信部10fを介してリモートコントローラ30にエンジン50の始動が完了したことを示す情報を送信する。この結果、リモートコントローラ30の図示しない表示部には、例えば、「エンジンを始動しました。」のようなメッセージが提示されるので、ユーザはエンジンが始動されたことを知ることができる。
ステップS19では、CPU10aは、人体または可燃物のいずれかが検出されたとして、IG電源をオフの状態とする。より詳細には、CPU10aは、リレー群10gのうち、イグニッションへの電力の供給を制御するリレーをオフの状態にすることで、IG電源をオフの状態とする。
ステップS20では、CPU10aは、ACC電源をオフの状態にする。具体的には、CPU10aは、リレー群10gのうち、アクセサリの電源を制御するリレースイッチを制御してこれをオフの状態とする。
ステップS21では、CPU10aは、I/F10dおよび通信部10fを介してリモートコントローラ30にエンジン50を始動できなかった理由を示す情報を送信する。この結果、リモートコントローラ30の図示しない表示部には、例えば、「周囲に人がいるのでエンジンを始動できませんでした。」または「マフラの周囲に可燃物が検出されたのでエンジンを始動できませんでした。」のようなメッセージが提示されるので、ユーザはエンジンが始動されなかったこと、および、その理由を知ることができる。
図7は、図5の処理が実行された場合であって、エンジン50を正常に始動できたときの各部の信号の状態を示すタイミングチャートである。まず、リモートコントローラ30が操作されてエンジン50を始動する指示がなされると、時刻T1において、エンジン始動指示信号がリモートコントローラ30から送信される(図7(A)参照)。このようなエンジン始動指示信号をエンジン始動制御装置1が受信すると、CPU10aはリレー群10gを制御し、時刻T2においてACC電源をオンの状態にする(図7(B)参照)。この結果、アクセサリに対して電源の供給が開始される。つづいて、時刻T3では、CPU10aはリレー群10gを制御し、IG電源をオンの状態にする(図7(C)参照)。この結果、イグニッションに対して電源の供給が開始される。
時刻T4では、CPU10aはUWBレーダ20−1〜20−4に対して制御信号を供給し、検出エリアA1〜A4に対して周辺検出処理を実行する(図7(D)参照)。この結果、所定の範囲内に人物が存在せず、かつ、マフラの排気系から所定の範囲内に可燃物が存在しない場合には、時刻T5において、CPU10aがリレー群10gを制御し、スタータモータ40の電源をオンの状態にする。これにより、スタータモータ40によるエンジン50のクランキングが開始され、エンジン50が始動する(図7(E)参照)。クランキングの際には大きな電力が必要となるので、ACC電源が一時的にオフの状態とされる(図7(B)参照)。エンジン50が始動すると、ACC電源が再度オンにされるとともに(図7(B)参照)、エンジン50がオンの状態とされてアイドリングの状態が維持される(図7(F)参照)。なお、周辺検出処理により、車両の周辺に人体または可燃物のいずれかが検出された場合には、時刻T5においてクランキングが実行されず、エンジン50がオンの状態とならない。
以上に説明したように、本実施形態では、車両の周辺に存在する物体の種類および位置に基づいて、エンジン50の始動可否を判定するようにしたので、例えば、可燃物と積雪との区別ができることから、可燃物の場合にはエンジン50の始動を保留し、積雪の場合にはエンジン50を始動することができる。
また、本実施形態では、物体の種類を検出するようにしたので、例えば、水滴や雪片を誤検出してエンジン50の始動が保留されることを防止できる。
また、本実施形態では、物体の検出に超広帯域無線信号を使用するようにしたので、広い視野角を高い精度で検出することが可能になる。このため、少ない個数のレーダで、高い位置精度で物体を検出することができる。具体的には、±40度程度の視野角および±5cm程度の位置精度で物体を検出することができる。
また、本実施形態では、衝突回避のために装備されているUWBレーダ20−1〜20−4を流用するようにしたので、新たなレーダを設けることなく、安価かつ高精度に物体を検出し、エンジン50の始動制御を実行することができる。
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、UWBレーダを4つ具備するようにしたが、3つ以下あるいは5つ以上具備するようにしてもよい。個数については、車両の大きさ、各UWBレーダの視野角等に応じて適宜決めることができる。
また、以上の実施形態では、受信アンテナ20eを1つだけ設けるようにしたが、受信パターンの異なる受信アンテナを2つ設け、これらの和と差の信号を生成し、和信号と差信号の比を求めて角度変換テーブルを参照することで、物体との間の角度を測定するようにしてもよい。このようにして得た角度情報を、位置情報として用いることで物体の位置をより正確に把握することができる。
また、以上の実施形態では、可燃物については、検出エリアA2を担当するUWBレーダ20−2によって検出するようにしたが、排気系専用のUWBレーダを設けるようにしてもよい。なお、ここで、排気系とは、エンジン50から排出される排気ガスが通過する系をいい、具体的には、エキゾーストパイプ、触媒、プリマフラ、サブマフラ、メインマフラ、および、これらを接続する排気管をいう。排気系を検出する専用のUWBレーダの設置場所としては、例えば、車両の下部であって、最も温度が高い部分(例えば、触媒)の周辺にUWBレーダを設け、当該部分を中心にして可燃物を検出するようにしてもよい。もちろん、高温部の周辺に設けられたUWBレーダについては、人体を検出する必要はない。
また、以上の実施形態では、物体の検出に超広帯域無線信号を用いるようにしたが、これ以外の信号を用いることも可能である。例えば、超音波信号または光信号を用いることも可能である。例えば、光信号を用いる場合、赤外線を物体に照射し、その反射波のスペクトルを、予め測定して登録されている各種物体のスペクトルと比較することにより、物体の種類を判定することができる。また、超音波信号の場合には、例えば、周波数を変えて音響インピーダンスを検出することで、物体の種類を検出るようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、人体と可燃物の双方を検出するようにしたが、いずれか一方のみを検出するようにしてもよい。例えば、リモートコントローラ30によってこれらそれぞれの検出の要否を個別に設定可能とすることも可能である。
また、以上の実施形態では、リモートコントローラ30によってエンジン50を始動する場合を例に挙げて説明したが、キーによってエンジン50を始動する場合に本発明を適用することも可能である。
また、以上の実施形態では、人体を検出した場合には、エンジン50の始動を保留するようにしたが、例えば、人体を検出した場合には、警告を行い(例えば、「エンジンを始動しますので車両から離れてください。」のようなメッセージを音声にて発出し)、人体が検出されなくなった場合にエンジンを始動するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、リモートコントローラ30によってエンジン50の始動が指示された時点において車両の周辺の物体を検出するようにしたが、例えば、車両が停車されてエンジン50が停止された時点において周囲の物体を検出してその位置および種類をRAM10cに記憶しておき、リモートコントローラ30によってエンジン50の始動が指示された時点における車両の周辺の物体を検出し、これらを比較することにより、周囲に存在する物体の種類または位置が変化した場合には、エンジン50の始動を保留するようにしてもよい。
1 エンジン始動制御装置
10 始動制御部
10a CPU(保留手段)
10b ROM
10c RAM(記憶手段)
10d I/F
10e バス
10f 通信部(検知手段)
10g リレー群
20−1〜20−4 UWBレーダ(検出手段)
20a 制御部
20b パルス発生部
20c 増幅部
20d 送信アンテナ
20e 受信アンテナ
20f 増幅部
20g S/H
30 リモートコントローラ
40 スタータモータ
50 エンジン

Claims (8)

  1. 車両のエンジンの始動を制御するエンジン始動制御装置において、
    前記車両の周囲に存在する物体の種類と位置を検出する検出手段と、
    ユーザによる前記エンジンを始動する操作を検知する検知手段と、
    前記検知手段によってエンジンを始動する操作が検知されると、前記車両の周囲に存在する物体の種類と位置を前記検出手段によって検出し、前記種類が所定の種類であり、かつ、前記位置が前記種類によって定まる所定の範囲内である場合には、前記エンジンの始動を保留する保留手段と、
    を有することを特徴とするエンジン始動制御装置。
  2. 前記保留手段は、前記物体の種類が人体であり、かつ、前記車両から所定の範囲内に位置する場合には、前記エンジンの始動を保留する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動制御装置。
  3. 前記保留手段は、前記物体の種類が可燃物であり、かつ、前記車両のエンジンの排気系から所定の範囲内に位置する場合には、前記エンジンの始動を保留する、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン始動制御装置。
  4. 前記検出手段は、前記物体に対して超広帯域無線信号を照射し、その反射信号によって前記物体の種類と位置を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置。
  5. 前記検知手段は、前記ユーザがリモートコントローラによってエンジンを始動する操作を行ったことを検知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置。
  6. 前記保留手段は、前記エンジンの始動を保留した場合には、前記エンジンの始動を保留した旨を前記リモートコントローラによって前記ユーザに提示することを特徴とする請求項5に記載のエンジン始動制御装置。
  7. 前記車両を停車した場合に前記検出手段によって前記車両の周囲に存在する物体の位置と種類を検出して記憶する記憶手段を有し、
    前記保留手段は、前記検知手段によってエンジンを始動する操作が検知されると、前記車両の周囲に存在する物体の位置と種類を前記検出手段によって検出し、前記記憶手段に記憶されている情報と比較して、周囲に存在する物体の種類または位置が変化している場合には、前記エンジンの始動を保留する、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエンジン始動制御装置。
  8. 車両のエンジンの始動を制御するエンジン始動制御方法において、
    前記車両の周囲に存在する物体の種類と位置を検出する検出ステップと、
    ユーザによる前記エンジンを始動する操作を検知する検知ステップと、
    前記検知ステップにおいてエンジンを始動する操作が検知されると、前記車両の周囲に存在する物体の種類と位置を前記検出ステップにおいて検出し、前記種類が所定の種類であり、かつ、前記位置が前記種類によって定まる所定の範囲内である場合には、前記エンジンの始動を保留する保留ステップと、
    を有することを特徴とするエンジン始動制御方法。
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