JP2012162754A - 液体原料の気化方法及び気化器 - Google Patents

液体原料の気化方法及び気化器 Download PDF

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Toshimitsu Uehigashi
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Abstract

【課題】 気化室の所定温度下での気化効率を効果的に向上させることができ、その上、後工程に送られるガス中の原料ガスの分圧を高くできる液体原料の気化方法を提供する。
【解決手段】 気化室22に通じる原料供給路32、42を介して液体原料を供給する際、原料供給路内で液体原料に所定流量でセカンドキャリアガスを予め混合して気液混合状態とし、気化室を臨む原料供給路の導入口周辺からキャリアガスを噴射することで、液体原料を気化室内に噴霧し、この噴霧された液体原料を、所定温度に加熱された気化室内での熱交換により気化し、この気化された原料ガスを当該気化室に開設した排出口24から排出する。この状態で前記導入口から気化室に噴射する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、液体原料の気化方法及びこの気化方法を実施することに最適な気化器に関する。
例えば半導体デバイスの製作工程には成膜工程があり、この成膜工程に利用される成膜方法の一つとしてCVD法がある。CVD法を実施するCVD装置は、反応室を画成する真空チャンバを備え、この真空チャンバには、真空ポンプに通じる、圧力制御弁等が介設された排気管が接続されている。また、真空チャンバの天板内側にはシャワープレートを有するプロセスガス導入部が設けられ、このシャワープレートに対向させて真空チャンバの底部には、処理すべき基板を位置決め保持するヒーターが設けられている(例えば特許文献1参照)。そして、プロセスガス導入部に対し、成膜用の原料ガスを供給する方法として、液体原料や固体原料を溶媒液に希釈したものを気化器により気化し、キャリアガスと共に直接供給することが一般に知られている。
液体原料等を気化する気化器は例えば特許文献2で知られている。このものは、気化室を有する気化部と、気化部の上面に配置された導入部と、液体原料を供給する原料供給部とを備える。導入部は、ノズル端(供給口)が気化室を臨むように配置されたノズル部を備え、ノズル部は、原料供給部に形成された原料供給路に連通している。原料供給路には流量制御弁が介設され、原料を収納したキャニスターに連通している。また、導入部には、ノズル端の周辺からキャリアガス(アトマイジングガス)を噴射するためのキャリアガス供給口が形成されている。そして、流量制御弁にて流量制御された液体原料等(L)をノズル端から気化室に向けて噴射すると共に、その周囲を包むようにキャリアガス(CG)を噴射する。これにより、液体原料が気化室内に噴霧され、この噴霧された液体原料が、所定温度に加熱された気化室内での熱交換により気化される。この気化された原料ガス(VG)が、キャリアガス(CG)と共にプロセスガス(VG+CG)となってCVD装置のプロセスガス導入部へと導入され、シャワープレートを介して、ヒーター上の基板に供給されて気相からの析出により所定の薄膜が得られる。
ところで、気化器からCVD装置のプロセスガス導入部にプロセスガスを供給する場合、一般に、真空チャンバを真空引きする真空ポンプに通じる排気管に介設した圧力制御弁により圧力制御してプロセスガスを導入している。この場合、プロセスガス中の原料ガスの分圧が低いと、原料ガスの供給量が少なくなって成膜速度の低下を招く。このため、生産性よくCVD法により成膜を行うには、気化効率を向上させるだけでなく、CVD装置に供給されるプロセスガス中の原料ガスの分圧を如何に高めるかが重要となる。
ここで、気化器における気化効率は、主として、気化室内の加熱温度と、キャリアガスの流量とで決まる。然し、CVD装置のプロセスガス導入部まで分解されない状態で原料を供給する必要があるため、液体原料の分解温度以上に気化室の温度を加熱上昇させることはできない。このため、気化室の加熱温度制御による気化効率の向上には限界がある。一方、キャリアガスの流量を増加させると、上記の如く、気化効率が向上するものの、当該キャリアガスの増加に従い、CVD装置に供給されるプロセスガス中の原料ガスの分圧が低下し、結果として、成膜速度の更なる低下を招来する。
特開2005−166965号公報 特開2005−113221号公報
本発明は、以上の点に鑑み、気化室の所定温度下での気化効率を効果的に向上させることができ、その上、後工程に送られるガス中の原料ガスの分圧を高くできる液体原料の気化方法及び気化器を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の液体原料の気化方法は、気化室に通じる原料供給路を介して液体原料を供給すると共に、気化室を臨む原料供給路の導入口周辺からキャリアガスを噴射することで、液体原料を気化室内に噴霧し、この噴霧された液体原料を、所定温度に加熱された気化室内での熱交換により気化し、この気化された原料ガスを当該気化室に開設した排出口から排出する液体原料の気化方法において、前記原料供給路内で液体原料に所定流量でセカンドキャリアガスを混合して気液混合状態とし、この状態で前記導入口から気化室に噴射することを特徴とする。
本発明によれば、原料供給路内で液体原料に所定流量でセカンドキャリアガスを予め混合して気液混合状態し、この状態で液体原料を導入口から気化室に向けて噴射すると共に、例えばその周囲を包むようにしてキャリアガスが噴射するため、気化室の所定温度下における液体原料の気化効率を一層向上させることができる。つまり、上記従来の如く、液相状態の液体原料を導入口から気化室に向けて噴射する際にその周囲から噴射するキャリアガスの流量を総流量とし、この総流量の範囲内の所定流量で液体原料にセカンドキャリアガスを予め混合して気液混合状態し、残余の所定流量でキャリアガスを噴射すれば、従来例のものと比較して気化効率を数倍向上させることができる。従って、従来例のものと比較して少ないキャリアガスの流量で同等の気化効率が得られ、結果として、後工程で例えばCVD装置にプロセスガスを供給する場合に、当該プロセスガス中の原料ガスの分圧を高めることができる。これは、液体原料を予め気液混合状態とすることで、上記従来例のものと比較して一層微細な霧状となって液体原料が気化室内に噴霧されることに起因しているものと考えられる。
本発明においては、キャリアガスに対するセカンドキャリアガスの流量比を15〜90%の範囲に設定すれば、効果的に気化効率を向上できることが確認された。なお、セカンドキャリアガスとしては、キャリアガスと同一のものが用いられるが、異なるガスを用いることもできる。
また、上記課題を解決するために、本発明は、加熱手段を備えた気化室と、この気化室に液体原料を導入する原料供給路と、原料供給路の導入口周辺にキャリアガスを導入するキャリアガス供給路とを備え、原料供給路を介して液体原料を気化室に噴射すると共に、原料供給路の導入口周辺からキャリアガスを噴射することで、液体原料を気化室内に噴霧し、この噴霧された液体原料を、所定温度に加熱された気化室内での熱交換により気化し、この気化された原料ガスを当該気化室に開設した排出口から排出するようにした気化器において、原料供給路に連通するセカンドキャリアガス供給路を更に備え、原料供給路内で液体原料に所定流量でセカンドキャリアガスを混合して気液混合状態として気化室に導入するように構成したことを特徴とする。
上記においては、前記気化室内または排出口の少なくとも一方に、当該気化室の加熱に伴って加熱され、液体原料または気化された原料ガスの通過を許容する気化補助手段を設ければ、気化室内で熱交換する面積が増加することで気化効率が更に向上する一方で、排出口に他の気化補助手段を設ければ、気化室で気化されずに排出口への導かれた原料を当該他の気化補助手段にて気化することができ、この場合もまた、更なる気化効率の向上を図ることが可能になる。
本発明の実施形態の気化器を備えたCVD装置を模式的に示す図。 図1の気化器を拡大して説明する断面図。 (a)〜(c)は、気化効率を確認する実験結果を示すグラフ。 (a)は、変形例に係る気化器の気化室を拡大して説明する断面図。(b)は、図4(a)中のB―B線に沿った断面図。
以下、図面を参照して、CVD装置に原料ガスとキャリアガスとからなるプロセスガスを供給する場合を例として、本発明の実施形態の液体原料の気化方法及びこの気化方法の実施に用いられる気化器を説明する。
図1中、Mは、本発明の実施形態の気化器Vを備えたCVD装置である。CVD装置Mは、反応室を画成する真空チャンバM1を備える。この真空チャンバM1には、真空ポンプM2に通じる、圧力制御弁M3が介設された排気管M4が接続されている。また、真空チャンバM1の天板内側には、当該天板と、天板内側に真空チャンバ内側に向けて立設した環状壁と、環状壁の下面に装着したシャワープレートM5とからなるプロセスガス導入部M6が設けられている。このシャワープレートM5に対向させて真空チャンバM1の底部には、処理すべき基板Wを位置決め保持する、加熱手段を内蔵したヒーターM7が設けられている。そして、プロセスガス導入部M6に対し、成膜用のプロセスガスを供給するために、当該プロセスガス導入部M6には、プロセスガス用のガス導入管11を介して本実施形態の気化器Vが接続されている。
ガス導入管11には、隔膜真空計等の真空計12と第1の開閉弁13とが介設されている。また、真空計12と第1の開閉弁13との間に位置する箇所にてガス導入管11は分岐され、この分岐されたガス分岐管14は、第2の開閉弁15を介して排気管M4に接続されている。そして、CVD装置Mにプロセスガスを供給せずに成膜を行わない場合、第1の開閉弁13を閉弁すると共に第2の開閉弁15を開弁して排気管M4に通じるガス分岐管14にプロセスガスを流して廃棄する(ベント操作)。他方、成膜時には、第1の開閉弁13を開弁すると同時に、第2の開閉弁15を閉弁して、ガス供給管11からプロセスガス導入部M6にプロセスガスを流す(ラン操作)。このとき、圧力制御弁M3により圧力制御されてプロセスガスがガス導入部M6に所定の流量で供給される。なお、本実施形態では、単一のガス導入管11を介して液体原料を導入する場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。2以上のガス導入管を用いる場合には、混合器を用いて混合した後、プロセスガスがガス導入部M6に供給されるようにしてもよい。
図2に示すように、気化器Vは、気化部20と、導入部30と、原料供給部40とから構成されている。気化部20は、例えばSUS316製の第1のブロック体21からなり、その内部には、上面を開口した気化室22が穿設されている。気化室22の輪郭は、特に制限はなく、断面視略半長円形状や円錐台形状等、用途に応じて適宜選択することができる。また、第1のブロック体21には、例えば抵抗加熱式のヒーター23が内蔵され、また、その一側面には気化室22に通じるプロセスガス用の排出口24が開設されている。そして、排出口24に上記ガス導入管11が接続される。
第1のブロック体21の上面に配置された導入部30は、当該第1のブロック体21と同一材料製の第2のブロック体31からなり、その内部中央には、第1のブロック体21の上面に直交する方向(図1中、上下方向)にのびるノズル部32が穿設されている。ノズル部32は、原料供給路の一部を構成し、ノズル部32のノズル端32aが気化室22に通じる原料供給路の導入口を構成する。また、第2のブロック体31には、ノズル部32の周囲を囲むようにキャリアガス用の導入部33が穿設され、その下端が、気化室に向けて先細りのテーパ状の輪郭を有してキャリアガス用の導入口33aを構成し、ノズル端を包むようにして気化室22に向けてキャリガスが噴射される。第2のブロック体31の一側面にはキャリアガス用の導入部33に通じる透孔34が開設され、透孔34には、キャリアガス用のガス導入管4が接続される。ガス導入管4は、図外のマスフローコントローラを介してガス源に連通し、一定の流量でキャリアガスを導入できるようになっている。キャリアガスとしては、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスが用いられ、CVD装置でのプロセスに応じて適宜選択される。また、液体原料としては、基板W表面に形成しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択され、液体原料や固体原料を溶媒液に希釈したものが用いられる。
導入部30の上面に配置された原料供給部40は、第1のブロック体21と同一材料製の第3のブロック体41からなり、その内部には、ノズル部32に連通する原料供給路42が穿設されている。この場合、原料供給路42の一端は、複数回屈曲されて第3のブロック体41の上面までのび、当該第3のブロック体41の上面に開口する原料供給路42の端部には、液体原料供給用の導入管5が接続されている。液体原料供給用の導入管5は、図外の液体マスフローコントーラ等の流体制御手段を介して液体原料を収納するキャニスターに通じ、一定の流量で液体原料を原料供給路42に導入できるようになっている。
原料供給路42には、第1のブロック体21の上面に沿う方向で所定間隔を存して、上面を開口した第1及び第2の各弁室43a、43bが形成されている。原料供給路42のノズル部32の上流側に位置する第1の弁室43aには、この第1の弁室43aに上下方向で面する弁座44aに着座する弁体6aと、この弁体6aを上下動するアクチュエータ6bとからなる元弁6が設けられている。また、原料供給路42の上流側に位置する第2の弁室43bには、この第2の弁室43bに上下方向で面する弁座44bに着座する弁体7aと、この弁体7aを上下動するアクチュエータ7bとからなる流量制御弁7が設けられ、弁座44bの開度が調整して流量制御し得るようになっている。なお、元弁6及び流量制御弁7の形態は、閉止機能や流量制御機構を備えたものであれば、上記に限定されるものではなく、他の公知のものを利用できる。
また、第3のブロック体41には、第1及び第2の両弁室43a、43bの間に位置する原料供給路42に接続されたセカンドキャリアガス供給路45が更に穿設されている。セカンドキャリアガス供給路45の一端は、複数回屈曲されて第3のブロック体41の側面までのび、当該第3のブロック体41の一側面に開口するセカンドキャリアガス供給路45の端部には、セカンドキャリアガス供給用の導入管8が接続されている。セカンドキャリアガス供給用の導入管8は、図外のマスフローコントーラを介してガス源に通じ、一定の流量でセカンドキャリアガスを原料供給路42に供給し、当該原料供給路42内を流れる液体原料にセカンドキャリアガスを混合できるようになっている。セカンドキャリアガス供給路45には、上面を開口した第3の各弁室43cが形成されている。第3の弁室43cには、この第3の弁室43cに上下方向で面する弁座44cに着座する弁体9aと、この弁体9aを上下動する駆動源9bとからなる他の開閉弁9が設けられ、図外のマスフローコントローラで所定流量に制御したセカンドキャリアガスを原料供給路42に流す。なお、セカンドキャリアガスとしては、キャリアガスと同様、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスが用いられ、CVD装置でのプロセスに応じて適宜選択される。この場合、キャリアガスとセカンドキャリアガスとは、同一でも、異なるものであってもよい。
以下に、本発明の実施形態の気化器を用いた液体原料の気化方法を実施してCVD装置にプロセスガスを供給する場合を説明する。
先ず、真空ポンプM2を作動させて真空チャンバM1を真空引きする。真空チャンバM1が所定圧力に到達すると、気化器Vを介してベント操作を行う。即ち、第1の開閉弁13を閉弁すると共に、第2の開閉弁15を開弁する。他方、気化器Vにおいては、キャニスター内にヘリウム等の不活性ガス(プッシングガス)を所定圧力(例えば0.2MPa)で導入し、液体原料供給用の導入管5を介して気化器Vの原料供給路42に所定流量で液体原料を供給する。その際、アクチュエータ7bを制御して弁座44bの開度を調整し、ノズル部32を介して気化室22に導入される液体原料の導入量を調節する。
これと同時に、他の開閉弁9を開弁すると共に、図外のマスフローコントローラを制御してセカンドキャリアガス供給路45に一定の流量でセカンドキャリアガスを流す。これにより、液体原料にセカンドキャリアガスが混合されて気液混合状態となって原料供給路42からノズル部32へと導入される。
そして、ノズル部32の周囲を囲むキャリアガス用の導入部33を介して、ノズル端を包むようにして気化室22に向けてキャリガスを噴射する。これにより、液体原料が気化室22内に噴霧され、この噴霧された液体原料(L)が、所定温度に加熱された気化室内での熱交換により気化され、この気化された原料ガス(VG)がキャリアガス(CG)と共に、プロセスガスとなって排出口24へと流れる。最後に、ガス供給管11からガス分岐管14を通して真空ポンプM2へと導かれて排気される。
次に、成膜を行う場合、ラン操作に切換える。即ち、第1の開閉弁13を開弁すると同時に、第2の開閉弁15を閉弁してガス供給管11にプロセスガスを流す。これにより、プロセスガスがプロセスガス導入部M6に供給され、シャワープレートM5を介してヒーターM7の基板Wに供給されて所定の薄膜が成膜される。
以上説明したように、本実施形態の気化方法及びこの気化方法を実施する気化器Vによれば、原料供給路42、32内で液体原料に所定流量でセカンドキャリアガスを予め混合して気液混合状態とし、この状態で液体原料を供給口たるノズル端32aから気化室22に向けて噴射すると共に、その周囲を包むようにしてキャリアガスを噴射することで、気化室22の所定温度下における液体原料の気化効率を一層向上させることができる。つまり、上記従来の如く、液相状態の液体原料を供給口から気化室に向けて噴射する際にその周囲から噴射するキャリアガスの流量を総流量とし、この総流量の範囲内の所定流量で液体原料にセカンドキャリアガスを予め混合して気液混合状態とし、残余の所定流量でキャリアガスを噴射すれば、従来例のものと比較して気化効率が数倍向上させることができる。従って、従来例のものと比較して少ないキャリアガスの流量で同等の気化効率が得られる。
結果として、CVD装置Mのプロセスガス導入部M6にプロセスガスを供給するとき、プロセスガス中の原料ガスの分圧を高めることができる。これは、液体原料を予め気液混合状態とすることで、上記従来例のものと比較して一層微細な霧状となって液体原料が気化室内に噴霧されることに起因しているものと考えられる。なお、効果的に気化効率を向上するためには、キャリアガスに対するセカンドキャリアガスの流量比を15〜90%の範囲に設定することが望ましい。
次に、以上の効果を確認するために以下の実験を行った。本実験では、上記気化器Vを備えた上記CVD装置M1を用い、原料をNi-amd+Tetralinとし、キャリアガス及びセカンドキャリアガスをアルゴンとした。また、気化室Vの加熱温度を200℃、キャリアガス及びセカンドキャリアガスの総流量を700sccmに設定した。そして、原料を1.0g/minの流量で気化室22に導入する条件下で、キャリアガス流量を600sccm、セカンドキャリアガス流量を100sccm(発明実験1)、キャリアガス流量を500sccm、セカンドキャリアガス流量を200sccm(発明実験2)、及び、キャリアガス流量を700sccm、セカンドキャリアガス流量を0sccm(比較実験1)に夫々設定し、液体原料が気化したときに体積膨張が生じることに鑑み、真空計12で測定した圧力から気化効率の変化を考察した。
図3(a)乃至(c)は、単位時間当たりの圧力変化を示すものである。図3中、縦軸は、真空計12で測定した圧力を、当該縦軸のフルスケール(1330Pa)を100として百分率で表したものである。また、図3中、実線は、真空計12で測定した圧力の変化を示し、点線は、液体原料の流量の変化を示し、また、一点鎖線は、液体原料供給用の導入管5を介して気化室に向けて液体原料を供給したときの真空チャンバの圧力の変化を示す。
これによれば、比較実験1では、液体原料を供給したときの圧力の増加は僅かであることが判る(図3(a)参照)。それに対して、発明実験1及び発明実験2では、非常に大きな圧力変化が確認された(発明実験1:図3(b)及び発明実験2:図3(c)参照)、参照)。これにより、気化効率が、従来例に相当する比較実験と比較して数倍向上していることが判る。
次に、上記同様、上記気化器を備えた上記CVD装置を用い、原料をNi-amd+Tetralinとし、キャリアガス及びセカンドキャリアガスをアルゴンとし、気化室の加熱温度を200℃に設定した。そして、発明実験3として、原料の流量を0.5g/min、キャリアガス流量を300sccm、セカンドキャリアガス流量を200sccmに設定し、基板上に成膜したときの成膜レートを測定した。この場合の成膜レートは5.6nm/minであった。
他方、比較実験2として、原料の流量を1.0g/min、キャリアガス流量を700sccm、セカンドキャリアガス流量を0sccmに設定し、基板上に成膜したときの成膜レートを測定した。この場合の成膜レートは4.37nm/minであった。これらの実験からも気化器での気化効率が向上していることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、気化器として3個のブロック体に原料供給路や気化室を形成したものを例に説明したが、気液混合状態で気化室に原料が供給できるものであれば、その形態は問わず、本発明の液体原料の気化方法は広く適用可能である。
また、気化効率を更に向上させるために、気化室22や排出口24の内部に、気化室22においては液体原料の通過を許容し、また、排出口24においては原料ガスの通過を許容する気化補助手段を設けることができる。気化補助手段としては、金属製のメッシュ部材10a、10bを用いることができる。即ち、図4(a)及び図4(b)を参照して説明すれば、金属製のメッシュ部材10a、10bは、例えば、チタン、ニッケル、タングステン、白金、カーボンアロイ製のパンチングメタルやエキスパンドメタルから構成することができ、また、上記材料製で所定径を有する線材を格子状に組み付け構成することもできる。そして、一のメッシュ部材10aは、気化室22の上部に、ノズル部32のノズル端32aに対向させて水平に配置される。即ち、メッシュ部材10aは、その外周面を、気化室22を画成する第1のブロック体31の内壁面にその全面に亘って接触させた状態で当該内壁面に取り付けられる。これにより、ヒーター23により気化室22を画成する第1のブロック体31の内壁面たる気化面を加熱すると、メッシュ部材10a自体も伝熱または輻射熱にて所定温度に加熱される。このため、ノズル端32aから気液混合状態の原料を気化室22に向けて噴射したとき、その一部がメッシュ部材10aに衝突したときの熱交換でも気化されるようになり、気化効率を更に向上する。
また、他のメッシュ部材10bは、排出口24に、気化室を臨むように当該排出口24の長手方向に直交する方向(上下方向)に設けられる。即ち、メッシュ部材10bは、その外周面を、排出口24を画成する第1のブロック体31の内壁面にその全面に亘って接触させた状態で当該内壁面に取り付けられる。これにより、上記同様、ヒーター23により、気化室22を加熱すると、メッシュ部材10b自体も伝熱または輻射熱にて所定温度に加熱される。このため、気化室22で気化されずに排出口24への導かれた原料をメッシュ部材10bにて気化することができ、気化室22内にメッシュ部材10aを設けたことと相まって、更に一層の気化効率の向上を図ることが可能になる。結果として、更に少ないキャリアガスの流量で同等の気化効率が得られ、後工程で例えばCVD装置にプロセスガスを供給する場合に、当該プロセスガス中の原料ガスの分圧を更に高めることができる。なお、メッシュ部材10bの平面視の形状は、図4(b)に示すメッシュ部材10aのものと同一に表わされることから、省略する。また、メッシュ部材10a、10bの開口の輪郭や開口面積は、得ようとする気化効率に応じて適宜設定することができる。
V…気化器、22…気化室、24…排出口、32…ノズル部(原料供給路)、32a…ノズル端(導入口)、42…原料供給路、45…セカンドキャリアガス供給路、M…CVD装置、10a、10b…金属製のメッシュ部材。

Claims (4)

  1. 気化室に通じる原料供給路を介して液体原料を供給すると共に、気化室を臨む原料供給路の導入口周辺からキャリアガスを噴射することで、液体原料を気化室内に噴霧し、
    この噴霧された液体原料を、所定温度に加熱された気化室内での熱交換により気化し、この気化された原料ガスを当該気化室に開設した排出口から排出する液体原料の気化方法において、
    前記原料供給路内で液体原料に所定流量でセカンドキャリアガスを混合して気液混合状態とし、この状態で前記導入口から気化室に噴射することを特徴とする液体原料の気化方法。
  2. キャリアガスに対するセカンドキャリアガスの流量比を15〜90%の範囲に設定することを特徴とする請求項1記載の液体原料の気化方法。
  3. 加熱手段を備えた気化室と、この気化室に液体原料を導入する原料供給路と、原料供給路の導入口周辺にキャリアガスを導入するキャリアガス供給路とを備え、原料供給路を介して液体原料を気化室に噴射すると共に、原料供給路の導入口周辺からキャリアガスを噴射することで、液体原料を気化室内に噴霧し、この噴霧された液体原料を、所定温度に加熱された気化室内での熱交換により気化し、この気化された原料ガスを当該気化室に開設した排出口から排出するようにした気化器において、
    原料供給路に連通するセカンドキャリアガス供給路を更に備え、原料供給路内で液体原料に所定流量でセカンドキャリアガスを混合して気液混合状態として気化室に導入するように構成したことを特徴とする気化器。
  4. 前記気化室内または排出口の少なくとも一方に、当該気化室の加熱に伴って加熱され、液体原料または気化された原料ガスの通過を許容する気化補助手段を設けることを特徴とする請求項3記載の気化器。

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