JP2004063715A - 半導体装置の製造方法および基板処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安定した気化特性を得るとともに、気化器のつまりを防止し、メンテナンスサイクルを長くできるようにする。
【解決手段】気化器3の本体の温度を、第1の加熱手段6を用いて液体原料の気化温度よりも低い温度に設定する。液体原料と希釈ガスとを気化器3に供給する。液体原料は、搬送気体を原料タンク8に導入して圧送することにより供給する。希釈ガスは、気化器3の本体において液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度に、第2の加熱手段7で加熱して供給する。気化器3に供給される液体原料を、加熱された希釈ガスと混合加熱させることにより気化する。気化した液体原料ガスを成膜室5に供給しつつ排気してウェーハ上の成膜に寄与させる。
【選択図】 図1
【解決手段】気化器3の本体の温度を、第1の加熱手段6を用いて液体原料の気化温度よりも低い温度に設定する。液体原料と希釈ガスとを気化器3に供給する。液体原料は、搬送気体を原料タンク8に導入して圧送することにより供給する。希釈ガスは、気化器3の本体において液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度に、第2の加熱手段7で加熱して供給する。気化器3に供給される液体原料を、加熱された希釈ガスと混合加熱させることにより気化する。気化した液体原料ガスを成膜室5に供給しつつ排気してウェーハ上の成膜に寄与させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造方法および基板処理装置に係り、特に液体原料を気化したガスを用いて基板を処理する半導体装置の製造方法および基板処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板処理装置、例えば基板上に薄膜を形成する薄膜製造装置では、成膜原料として液体原料を用いることがある。液体原料はそのままでは使えないため、気化器で気化してから用いる。従来の気化器は、液体原料を加熱して気化させる気化器本体と、気化器本体への液体原料の供給を制御するバルブとを備える。液体原料の加熱は、気化器本体を液体原料の気化温度に常時加熱することで行なっている。気化ガスを用いて基板上の成膜に寄与させるには、バルブを開いて液体原料を気化器に供給して気化器本体の熱により気化させ、気化したガスを成膜室に供給する。気化ガスの基板上への成膜の寄与を止めるには、バルブを閉じて気化すべき液体原料の気化器本体への供給を停止する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の気化器を備えた基板処理装置では、液体原料を気化する気化器の本体が、常に液体原料の気化温度に加熱されているため、気化器本体で液体原料が自己分解して成膜されてしまい、バルブを閉じても液体原料を完全に封止できなくなったり、更には気化器が詰まってしまう場合がある。また、連続して気化させていると、気化器本体から気化熱が奪われ、液体原料が気化できなくなってしまうこともある。
【0004】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、安定した気化特性が得られるとともに、気化器が詰まりにくく、メンテナンスサイクルの長い半導体装置の製造方法および基板処理装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、液体原料を気化させたガスを用いて基板を処理する半導体装置の製造方法であって、基板を処理室に搬入する工程と、前記液体原料を希釈ガスと混合させて気化させる気化器の温度を前記液体原料の気化温度よりも低い温度に設定する工程と、前記液体原料を前記気化器に供給する工程と、前記希釈ガスを、前記気化器において前記液体原料と混合させたときに前記液体原料が気化する程度の温度に加熱して前記気化器に供給する工程と、前記気化器において前記液体原料を加熱された希釈ガスと混合させて加熱することにより気化させる工程と、液体原料を気化させたガスを処理室内の基板に供給する工程と、処理後の基板を処理室から搬出する工程と、を有することを特徴とする。ここで、気化器において液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度とは、気化器自体や液体原料自体によって希釈ガスが熱を奪われても、液体原料を気化させることが可能な温度である。
【0006】
液体原料を希釈するための希釈ガスを利用し、この希釈ガスを加熱して液体原料と混合させるだけで、液体原料を気化させることができる。この際、気化器の温度を液体原料の気化温度よりも低い温度に設定しているので、従来のように気化器を気化温度に加熱し、加熱した気化器で液体原料を気化させているものと比べて、液体原料が自己分解して気化器内で成膜されて、バルブの閉まりが悪くなったり、気化器が詰まったりすることがない。また、希釈ガスによって液体原料を気化させているので、液体原料の連続供給により気化器から気化熱が奪われても、液体原料を気化させることができる。
【0007】
第2の発明は、液体原料と希釈ガスとが供給され供給される液体原料を前記希釈ガスと混合させて気化させる気化器と、前記気化器で液体原料を気化したガスを用いて基板を処理する処理室と、前記液体原料を希釈ガスと混合させる気化器の温度が前記液体原料の気化温度よりも低い温度となるよう加熱する第1の加熱手段と、前記気化器において前記液体原料を希釈ガスと混合させたときに前記液体原料が気化する程度の温度に、前記気化器に供給される希釈ガスを加熱する第2の加熱手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
気化器は、第1の加熱手段によって、液体原料の気化温度よりも低い温度に加熱される。このような温度に加熱された気化器に、液体原料が供給される。また、希釈ガスが、第2の加熱手段によって液体原料が気化する程度の温度に加熱されて気化器に供給される。気化器に液体原料と希釈ガスが供給されると、気化器で液体原料と希釈ガスとが混合される。この混合により液体原料は希釈ガスで加熱されて気化する。気化した液体原料ガスは処理室内に供給されて基板が処理される。
【0009】
気化器を加熱する第1の加熱手段については、気化器の温度を液体原料の気化温度よりも低い温度に下げるだけであり、従来と比べて基本的な構成上の変更点はない。変更点は、液体原料を希釈するための希釈ガスを、液体原料が気化する程度の温度に加熱する第2の加熱手段を設けた点である。したがって、第2の加熱手段を追加するという簡単な構成で液体原料を安定して気化できる。
【0010】
第3の発明は、第1及び第2の発明において、前記気化器は、気化器に供給される液体原料と希釈ガスとを混合させて液体原料を希釈する混合容器と、希釈された液体原料を霧化し希釈ガスと混合させて気化させる気化容器とを有し、前記混合容器に前記加熱した希釈ガスを導入するようにしたものである。
【0011】
加熱した希釈ガスを混合容器に導入すると、液体原料は加熱された希釈ガスとともに混合されて混合容器から気化容器に送り出される。液体原料は混合容器内では液体状態にあるため、希釈ガスが液体原料を気化する程度の温度に加熱されていても、容易には気化しない。希釈ガスによって混合されて希釈された液体原料は気化容器に送り出される際、霧化される。霧化された液体原料は、液体原料とともに送り出された希釈ガスと混合され、希釈ガスに加熱されて容易に気化する。
【0012】
第4の発明は、第1及び第2の発明において、前記気化器本体は、気化器に供給される液体原料と希釈ガスとを混合させる混合容器と、希釈された液体原料を霧化し希釈ガスと混合させて気化させる気化容器とを有し、前記混合容器に加熱しない希釈ガスを導入し、前記気化容器に前記加熱した希釈ガスを導入するようにしたものである。
【0013】
混合容器で液体原料と混合させる希釈ガスは加熱しないで混合容器に導入する。加熱したガスは気化容器に導入する。液体原料は、加熱していない希釈ガスで希釈されて気化容器に霧状に導入される。ここで、液体原料が霧状に導入された気化容器に加熱した希釈ガスを導入すると、霧化した液体原料が加熱したガスと混合されて気化温度に加熱されて気化する。加熱した希釈ガスを気化容器に導入すると、加熱した希釈ガスを混合容器に導入する場合と比べて、混合容器内で成膜が生じたり、混合容器から気化容器への流路が塞がれたりすることが大幅に低減する。
【0014】
第5の発明は、第1及び第2の発明において、前記気化器は、気化器に供給される液体原料と希釈ガスとを混合させる混合容器と、希釈された液体原料を霧化し希釈ガスと混合させて気化させる気化容器とを有し、加熱した希釈ガスを前記混合容器、及び前記気化容器のそれぞれに導入し、その際、気化容器に導入する希釈ガスの温度を液体原料が気化する程度の温度にし、混合容器に導入する希釈ガスの温度を気化容器に導入する希釈ガスの温度より低くしたものである。
【0015】
気化容器における霧化後の希釈ガスによる液体原料の加熱の前に、混合容器における霧化前の液体原料が加熱されているので、気化容器内の霧化後の気化効率が向上する。また、混合容器に導入する希釈ガスの温度を液体原料が気化する程度の温度よりも低くしたので、混合容器内で成膜されたり、混合容器から気化容器への流路が塞がれたりすることが大幅に低減する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、基板処理装置としてのウェーハ上に薄膜を形成する薄膜製造装置の構成図を示す。薄膜製造装置は、液体原料供給配管1と、希釈ガス供給配管2と、気化器3と、原料ガス供給配管4と、処理室としての成膜室5と、第1の加熱手段6と、第2の加熱手段7とを主に備えて構成される。
【0018】
液体原料供給配管1は、液体原料を収容した原料タンク8に連結され、搬送気体の導入により原料タンク8から圧送される液体原料を気化器3に供給する。液体原料としては、例えば、Hf[OC(CH3)2CH2OCH3]4(以下、Hf−(MMP)4と略す)、Ta(OC2H5)5(ペンタエトキシタンタル、以下PETと略す)、TEOS、Hf[OC(CH3)3]4(以下、Hf−(OtBu)4と略す)、Zr(OtBu)、TDEAHf(テトラキスジエチルアミドハフニウム)等がある。搬送気体としては不活性ガス、例えばN2ガスなどがあるが、後述する希釈ガスと同種のガスを使用できる。液体原料供給配管1にはヒータ9が設けられ、必要に応じてヒータ9で配管1を保温し、内部を搬送される液体原料の温度が低下して固まらないように加熱する。融点が低い原料は加熱する必要はないが、融点が室温よりも高いものは、加熱する必要がある。また、固まらなくても粘度の高い液体原料、例えばHf−(MMP)4などは加熱する必要がある。
【0019】
希釈ガス供給配管2は、液体原料を希釈するための希釈ガスを気化器3に供給する。希釈ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rn、N2等がある。希釈ガス供給配管2にはヒータ10が設けられ、ヒータ10で配管2を保温し、内部を搬送される希釈ガスの温度が低下しないように加熱する。
【0020】
気化器3は、液体原料供給配管1及び希釈ガス供給配管2からそれぞれ供給される液体原料と希釈ガスとを混合させ、加熱して液体原料を気化させる。気化器3としては、例えば液体原料を希釈ガスでオリフィスへ押し出して霧状に噴出させ、加熱して気化させるオリフィス型が用いられる。また、オリフィス型ではなく、ノズルから噴出する液体原料を、ノズル外周から高速で流す希釈ガスによって微粒化させ、気化器の内壁に衝突させて瞬時に気化させるノズル型を用いてもよい。オリフィスから噴出される液体原料の微粒化度の高いオリフィス型と比べて、ノズル型はノズルから噴出される液体原料の微粒化度が低いため、「液体原料と希釈ガスとを混合させて加熱することにより気化させる」ためには、気化器3としてはノズル型よりもオリフィス型が好ましい。
【0021】
原料ガス供給配管4は、気化器3で気化した液体原料ガスを成膜室5に供給する。原料ガス供給配管4にはヒータ11が設けられ、ヒータ11で配管4を保温し、供給される気化ガスの温度が低下しないように内部を加熱する。
【0022】
処理室としての成膜室5は、成膜室5内に搬送したウェーハ上に気化ガスを用いて薄膜を形成するために使用される。成膜室5には液体原料を気化した原料ガスを供給する原料ガス供給配管4が接続される。また成膜室5には排気ポンプ13に通じて成膜室5内の雰囲気を排気する排気配管12が接続される。
【0023】
第1の加熱手段6は、液体原料と希釈ガスとが混合される気化器3を液体原料の気化温度よりも低い温度に設定して加熱する。ここで、「気化温度」は原料によって異なるが、例えばPET、Hf(MMP)4では180℃、TDEAHfでは120℃である。また、「気化温度よりも低い温度」としては、例えば気化温度よりも50℃くらい低い温度である。
【0024】
第2の加熱手段7は、気化器3に供給される希釈ガスを加熱する熱交換器で構成される。熱交換器は、気化器3において希釈ガスを液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度となるように希釈ガスを加熱する。「液体原料が気化する程度の温度」は、液体原料を気化させるのに最適な温度であり、その温度としては、液体原料種、気化器3の形状や熱容量でも異なるが、途中で奪われる熱を補うために、例えば気化温度よりも10〜20℃程度高い温度である。加熱された希釈ガスは希釈ガス供給配管2に送られる。第2の加熱手段7は冷媒を使った本格的な熱交換器を用いても良いが、ヒータ線で網を構成し、網目に希釈ガスを通すようにした簡単なものでもよい。
【0025】
上記のような構成において、搬送気体を原料タンク8に供給することにより、原料タンク8内の液体原料が加圧され、必要に応じて保温された液体原料供給配管1を通して気化器3に供給される。また液体原料を希釈する希釈ガスは第2の加熱手段7で加熱され、保温された希釈ガス供給配管2を通して気化器3に供給される。気化器3に供給された液体原料と希釈ガスとは気化器3で混合されて、加熱されて気化する。気化した原料ガスは気化器3から保温された原料ガス供給配管4を通って成膜室5に供給されつつ排気される。このとき、気化ガスは基板上の成膜に寄与する。
【0026】
図2は、上述した薄膜製造装置で用いられる第1の実施の形態による気化器3の縦断面図を示す。気化器3は気化器本体30と、液体原料の供給を制御するバルブ20とを有する。
【0027】
気化器本体30は、液体原料を混合希釈して霧化させたうえ、混合加熱して気化させる。気化器本体30は金属製の円柱状ブロックで構成される。その材料には、例えば、ステンレスや、これにテフロン(登録商標)コートを施したものなどが用いられる。気化器本体30の上面に液体充てん容器31と混合容器32とが設けられる。
【0028】
液体充てん容器31は、バルブ20の閉時に液体原料が溜められ、バルブ20の開時に溜められた液体原料を混合容器32へ、その混合容器32の外周から均一に送り込むために設けられる。そのために液体充てん容器31は、気化器本体30の上面をリング状に凹ませて形成してある。液体充てん容器31の底部は、気化器本体30内に設けた液体原料導入路33を介して気化器本体30側面に設けた液体導入口34に通じている。バルブ20が閉じているとき、液体充てん容器31に液体原料が溜められ、バルブ20が開になると、液体充てん容器31と混合容器32とが連通されて、液体充てん容器31に溜められた液体原料が混合容器32に送り込まれる。
【0029】
混合容器32は、液体充てん容器31から送り込まれた液体原料を希釈ガスと混合させて希釈し、混合容器32の底部に設けたオリフィス36から押し出す量を調節して、液体原料を気化させやすくするために設けられる。また、混合容器32を設けることで、バルブ20が閉の状態でも、この混合容器を中継させることで、気化器本体30内に常時希釈ガスが流れるようにしている。ここで、バルブ20が閉のときでも気化器本体30内に希釈ガスを流すのは、バルブ20が閉のとき、混合容器32および気化容器35から残留液体原料を排除するとともに、希釈ガスを常時流すことにより気化ガスの供給→停止、および気化ガスの停止→供給の切替え速度を高めるためである。
【0030】
混合容器32は、リング状の液体充てん容器31の内側に、液体充てん容器31と同様に気化器本体30上面42を凹ませて形成してある。混合容器32の底部は、気化器本体30内に設けた希釈ガス導入路37を介して気化器本体30の側面に設けた希釈ガス導入口38に通じている。希釈ガス導入路37は途中から導入路を絞って混合容器32に通じている。希釈ガス導入路37を途中で絞っているのは、希釈ガスの流速を上げて液体原料をオリフィス36から押し出すためである。
【0031】
また、混合容器32の底部は、オリフィス36を介して気化容器35と通じている。気化容器35はオリフィス36から霧状に噴出される液体原料を希釈ガスと混合して気化させるために設けられる。混合容器32と同様に気化容器35における混合も必須要件である。霧状に噴出された液体原料を、加熱された希釈ガスと混合しなければ、液体原料は十分に気化しないからである。気化容器35は、気化器本体30の厚さ方向に形成され、気化器本体30下面に設けた原料ガス導出口39と通じている。気化容器35は、オリフィス36を頂部とすると、頂部から下方に向けて漸次拡径する肩部と、この肩部と連続する同一径の胴部とを有する。
【0032】
気化器本体30内に第1の加熱手段6としてのヒータ40が埋め込まれ、気化器本体30を液体原料の気化温度よりも低い温度に加熱するようになっている。ここで、気化温度よりも低い温度とは、気化温度よりも低いが、気化器本体の壁面に液体原料が吸着せず、壁面から脱離するような温度である。気化器本体30を加熱するのは、気化器本体30内に導入される液体原料や希釈ガスを保温するためである。また、気化器本体30を気化温度よりも低い温度に加熱するのは、気化器本体30内に導入される液体原料が、気化器本体30の熱によって自己分解し、気化器本体に成膜しないようにするためである。ヒータ40は、気化器本体30を均一に加熱できるように設けられることが好ましい。図示例では、ヒータ40は、絞り込んだ希釈ガス流路37の下流側と気化容器35のオリフィス36近傍側とをリング状に囲むように設けられる。また、気化器本体30の温度を液体原料の気化温度よりも低い温度に設定できるようにするために、気化器本体30に、気化器本体温度を測定する温度センサ41、例えば熱電対が設けられる。なお、ヒータ40は気化器本体30内に設ける代りに、気化器本体30の外周に設けても良い。
【0033】
バルブ20は、気化器本体30の表面を封止、又はその封止を解除することにより気化器本体30への液体原料の供給を制御する。バルブ20は、シリンダ型をしており、液体充てん容器31および混合容器32の上部開口を覆うように、気化器本体30の上面42に気密に取り付けられる。バルブ20は、シリンダ21と、弁体としてのピストン22と、ピストンロッド23と、アクチュエータ24とを備える。シリンダ21は、気化器本体30上面42であって、リング状の液体充てん容器31の外周に、液体充てん容器31を取り囲むように気密に載置される。シリンダ21内に昇降自在にピストン22が嵌合される。シリンダ21内をピストン22が上昇して気化器本体30の上面42から離れて、空間25が形成されると、その空間25を介して液体充てん容器31と混合容器32とが連通して、液体充てん容器31の封止が解除される。ピストン22が下降して気化器本体30の上面42に圧接されると、液体充てん容器31と混合容器32との連通は断たれて、液体充てん容器31は封止される。白抜き矢印で示すピストン22の昇降動作は、アクチュエータ24によってなされる。なお、バルブ20は、一般的に使用されるシリンダ型を採用しているが、シリンダ型以外のバルブを採用してもよい。
【0034】
図3に、バルブを取り除いた気化器本体30の平面図を示す。混合容器32の平面形状は、希釈ガス導入路37の混合容器底部開口とオリフィス36間を結ぶ直線に長軸が沿う長円形になっている。これは、希釈ガス導入路37の混合容器底部開口からオリフィス36への流路が最短距離をとれるようにしているためであるが、混合容器32の平面形状は円形としてもよい。
【0035】
気化器本体30及び希釈ガスの温度を制御する制御系は図4に示すようになっている。気化器本体30の温度制御は、温度センサ41で検出した気化器本体30の検出温度と、予め設定した設定温度とを温度コントローラ50で比較し、電力制御器51を介してヒータ40の通電を調節することにより行なっている。また、希釈ガスの温度制御は、温度センサ53で検出した希釈ガスの検出温度と、予め設定した設定温度とを温度コントローラ50で比較し、電力制御器52を介して熱交換器を調節することにより行なっている。
【0036】
上述した気化器3を製造するには、例えば金属製インゴットから円柱状のブロックを切り出し、研削加工して液体充てん容器31、混合容器32、オリフィス36及び気化容器35を形成する。また、液体原料導入路33、希釈ガス導入路37およびヒータ埋込み穴を設けて、そこにヒータ40を埋め込む。本体側面に液体導入口34、希釈ガス導入口38を、本体下面に原料ガス導出口39をそれぞれ設ける。温度センサ取付穴を設けて、そこに温度センサ41を挿入固定して、気化器本体30を構成する。気化器本体30の上面42にバルブ20を密着固定する。なお、気化器本体30は分割型としてもよい。
【0037】
次に上述した構成の作用について説明する。バルブ20は閉じてピストン22が下降して点線位置にあり、液体充てん容器31は封止されている。液体原料は、液体導入口34から気化器本体30内に圧入され、液体原料導入路33を通って封止された液体充てん容器31に溜められている。液体原料をオリフィス36から噴出するには、ピストン22を実線位置まで上昇させて液体充てん容器31の封止を解除し、シリンダ21内の気化器本体30上面42に空間25を形成して、この空間25を介して液体充てん容器31と混合容器32とを連通させる。この連通により液体充てん容器31に溜められた液体原料は、混合容器32に流れ込む。
【0038】
一方、熱交換器などの第2の加熱手段7によって加熱された希釈ガスは、バルブ20の開閉にかかわらず、常時、気化器本体30に供給されている。すなわち、希釈ガスは、希釈ガス導入口38から希釈ガス導入路37を通り、途中で流速を高められて、混合容器32に流入し、流入後、オリフィス36を経て気化容器35から原料ガス導出口39を介して排出されている。
【0039】
したがって、バルブ20が開き、液体充てん容器31と混合容器32とが連通して、混合容器32に液体原料が流れ込むと、液体原料は流速の高められた希釈ガスと混合容器32で直ちに混合される。混合された液体原料は気化しやすい量となるように希釈され、希釈ガスによりオリフィス36から気化容器35へ押し出される。このとき液体原料はオリフィス36から気化容器35へ霧状に噴出されて、気化容器35で液体原料と一緒に押し出された希釈ガスと混合される。液体原料は細かい霧状となっているので、液体原料は加熱された希釈ガスによって気化温度にまで高められて一瞬のうちに気化する。気化した原料ガスは、原料ガス導出口39から矢印に示すように排出される。
【0040】
上述したように気化器3により気化された液体原料ガスは、保温された原料ガス供給配管4を通して成膜室5に供給されて、ウェーハ上の成膜に寄与する。成膜の寄与を止めるためには、液体原料の気化器本体30への供給をバルブ20によって停止させる。液体原料の供給をバルブ20によって停止させるには、アクチュエータ24によってピストン22を本体上面42位置まで下げる。これにより液体充てん容器31と混合容器32との連通が断たれて、液体充てん容器31が封止され、気化器3への液体原料の供給が停止する。
【0041】
上述したように本実施の形態によれば、気化容器35内に霧状に噴出された液体原料を、加熱した希釈ガスによって混合加熱しているので、液体原料を瞬時に気化させることができる。この際、希釈ガスの温度は、気化容器35において液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度、例えば気化温度よりも10〜20℃高い温度となるように余裕をもって加熱してある。したがって、気化温度よりも低い温度、例えば50℃低い温度に設定した気化器本体30等で熱を奪われても、熱不足により液体原料の気化が阻まれるようなことはない。
【0042】
また、本実施の形態では気化器本体30の温度を、気化温度よりも低い温度に設定しているが、従来では気化器本体30は、常に液体原料の気化温度に加熱されていた。気化器本体30が、常に液体原料の気化温度に加熱されていると、液体充てん容器31に溜まっている液体原料は封止されている状態でも、常に気化温度にさらされる。このため図6に示すように、液体充てん容器31の液溜りで液体原料が自己分解して43に示すように成膜されてしまい、その膜厚が厚くなると、バルブ20によって液体原料を完全に封止できなくなる。液体原料を完全に封止できなくなると、バルブ20を閉じても、気化器3から気化ガスが成膜室5に漏れて、膜厚を制御できなくなる。この点で、実施の形態では、気化器本体30の加熱温度は、図4に示す制御系によるフィードバック制御によって、液体原料の気化温度よりも低い温度に設定されている。このために気化器本体30からの加熱によって、液体充てん容器31の液溜りで液体原料が自己分解して成膜されるようなことが大幅に低減する。したがって、液体充てん容器31の液溜りでの膜厚が厚くなるのを大幅に引き延ばすことができ、気化器本体30内での液体原料の成膜に起因して生じる液体封止の不具合がなくなり、膜厚の制御を維持できる。
【0043】
なお、本実施の形態では、加熱された希釈ガスは混合容器32内でも液体原料と混合するが、混合容器32の段階では、原料はまだ液体状態であるため、希釈ガスの熱によっては自己分解して成膜されることはない。
【0044】
また、混合容器32およびオリフィス36の部分では、封止後も希釈ガスが流れつづけるが、従来のように気化器本体30が液体原料の気化温度に加熱されていると、それらの壁面45、44は気化温度になっているため、噴出後に付着した液体原料が壁面45、44から脱離する前に分解、成膜されて、最終的にはオリフィス36を塞いでしまう場合がある。この点で実施の形態では、気化器本体30の温度は気化温度よりも低く、液体が吸着せず壁面から脱離するような温度に設定してあるため、混合容器32およびオリフィス36の壁面部分での成膜反応を抑えることができる。また、壁面に付着した脱離する前の液体原料は、希釈ガスから気化温度に近い熱を受けるが、液体状態であるため、脱離前に成膜されにくい。したがって、壁面に付着した液体原料によってオリフィス36が塞がれるようなことがない。
【0045】
また、従来のように気化器本体30が、液体原料の気化温度に加熱されていた場合に、オリフィス36から液体原料を連続して噴出しつづけていると、オリフィス36および気化容器35の壁面44から気化熱が奪われ、それらの壁面44の温度が低下して、液体原料が気化できなくなってしまうことがある。この点でも、実施の形態では、液体原料を気化する気化熱は希釈ガスから与えているので、たとえオリフィス36および気化容器35の壁面44の温度が低下するようなことがあっても、液体原料の気化を維持できる。
【0046】
このように希釈ガスによって液体原料を加熱して気化させる実施形態のものは、気化器本体によって液体原料を加熱して気化させる従来のものと比べて、気化器の故障時間間隔を大幅に延長させることができ、薄膜製造装置のメンテナンスサイクルを長くできる。
【0047】
つぎに、第1の実施形態の気化器を備えた薄膜製造装置を用いてALD(Atomic Layer Deposition)法による成膜例を具体的に説明する。ALD法では、液体原料供給サイクルとオゾンサイクルとを繰り返して、ウェーハ表面に一原子層ずつ吸着反応させながら成膜が進む。ここでは容量絶縁膜となるHfO2膜を例にとって説明する。
【0048】
ウェーハを成膜室5に搬入し、ウェーハ温度を350℃に昇温するとともに、成膜室内圧力を所定の圧力とする。その後下記工程に入る。
【0049】
▲1▼実施形態の気化器3のバルブ20を開けて気化器3から成膜室5に、液体原料Hf−MMP4を気化したガスを流量0.1g/minで1秒間供給して、ウェーハ上にHf−MMP4を気化させたガスを吸着させ、バルブ20を閉じて供給を止める。
【0050】
▲2▼N2ガスを図示しないN2供給配管から成膜室5に1秒間供給し、成膜室5内に残存している液体原料気化ガスを排気する。
【0051】
▲3▼引続き成膜室5に図示しないオゾン供給配管からオゾンを1秒間供給して、ウェーハ上に吸着したHf−MMP4原料と酸化反応させてウェーハ上にHfO2膜を1原子層だけ成膜させる。
【0052】
▲4▼成膜後、反応室にN2ガスを1秒間供給して、成膜室5内に残存しているオゾンを排気する。
【0053】
上記▲1▼〜▲4▼の工程を所望の膜厚になるまで繰り返す。成膜終了後、成膜室5内をN2ガスを用いてパージし、残留ガスを除去した後、成膜終了後のウェーハを成膜室5から搬出する。この具体例では、液体原料を気化する気化器に第1の実施の形態の気化器を用いたので、▲1▼の工程の気化ガス供給、停止を繰り返しても、長期間気化器の機能を維持でき、その間、オリフィスが塞がれることもなく、気化できなくなることもない。したがって、ALD法のように、気化ガスの供給、停止を何回も繰り返して、HfO2膜のような薄膜を成膜する場合に、気化器の故障に至る期間が延びるので、特にメリットが大きい。
【0054】
ところで、上述した第1の実施の形態では、加熱した希釈ガスを混合容器32に導入しているが、気化効率に改善の余地がある。また、混合容器32では原料が液体状態なので、加熱した希釈ガスを導入しても、原料は分解して成膜されることはないが、液体充てん容器31が封止されているときに、混合容器32内で残存した液体原料と加熱ガスとが混合されるので、液体原料といえども分解して成膜するおそれもある。このような気化効率の改善、及び成膜のおそれを排除したのが、次に説明する第2の実施の形態である。
【0055】
図5に、第2の実施の形態による気化器3の縦断面図を示す。図2に示す第1の実施の形態と異なる点は、気化容器35に加熱した第2の希釈ガスを導入し、その希釈ガスの熱で液体原料を気化させるようにした点である。具体的には、混合容器32に通じる希釈ガス導入路37を第1の希釈ガス導入路とすると、オリフィス36と気化容器35との間に、気化容器35に通じる第2の希釈ガス導入路46を追加する。この第2の希釈ガス導入路46は、気化器本体30の側面に設けた第2のガス導入口47に連結されている。第2の希釈ガス導入路46は、第1の希釈ガス導入路37と同様に途中から導入路を絞られ、流速を上げたガスを気化容器35内に導入できるようになっている。気化容器35内に導入する第2の希釈ガスは、気化容器35において霧化した液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度に加熱される。この加熱は、気化器本体30に供給する前に、第2の加熱手段7と同様に、熱交換器(図示せず)で行なう。第2の希釈ガスを液体原料が気化する程度の温度に加熱する代りに、第1の希釈ガス導入路37から混合容器32に導入する第1の希釈ガスの温度は、第2の希釈ガス導入路46から気化容器35に導入する第2の希釈ガスの温度より低くする。例えば、気化温度に対して50℃くらい低い温度にするとよい。
【0056】
第2の実施の形態の気化器を備えた薄膜製造装置によれば、混合容器32で霧化前の液体原料を第1の希釈ガスで気化温度の手前の温度に予備加熱したうえで、気化容器35で霧化後の液体原料を第2の希釈ガスで気化温度に本加熱するようにしたので、混合容器で霧化前の液体原料を希釈ガスで気化温度程度に加熱しただけのものと比べて、気化容器内の霧化後の気化効率を促進させることができる。また、混合容器32に導入する第1の希釈ガスの温度を液体原料が気化する程度の温度よりも低くしたので、液体充てん容器31が封止状態のときに混合容器32内で成膜されたり、混合容器32から気化容器35へ通じるオリフィス36が塞がれたりすることがなくなる。
【0057】
なお、第2の実施の形態の変形例として、混合容器31に導入する第1の希釈ガスを加熱しないで室温のまま導入することも可能である。
【0058】
また、実施の形態では基板処理装置として、薄膜製造装置の場合について説明したが、本発明は液体原料を用いる半導体製造装置やLCD製造装置と言った基板処理装置や、DRAMなどの半導体装置の製造方法に広く適用できる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、安定した気化特性を得るとともに、気化器のつまりを防止し、その装置のメンテナンスサイクルを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態による半導体製造装置の構成図である。
【図2】第1の実施の形態による気化器の縦断面図である。
【図3】第1の実施の形態による気化器の要部平面図である。
【図4】第1の実施の形態によるヒータ等の加熱手段を制御する制御系のブロック図である。
【図5】第2の実施の形態による気化器の縦断面図である。
【図6】液体充てん容器に好ましくない成膜が形成された状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 液体原料供給配管
2 希釈ガス供給配管
3 気化器
4 原料ガス供給配管
5 成膜室(処理室)
6 第1の加熱手段
7 第2の加熱手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造方法および基板処理装置に係り、特に液体原料を気化したガスを用いて基板を処理する半導体装置の製造方法および基板処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板処理装置、例えば基板上に薄膜を形成する薄膜製造装置では、成膜原料として液体原料を用いることがある。液体原料はそのままでは使えないため、気化器で気化してから用いる。従来の気化器は、液体原料を加熱して気化させる気化器本体と、気化器本体への液体原料の供給を制御するバルブとを備える。液体原料の加熱は、気化器本体を液体原料の気化温度に常時加熱することで行なっている。気化ガスを用いて基板上の成膜に寄与させるには、バルブを開いて液体原料を気化器に供給して気化器本体の熱により気化させ、気化したガスを成膜室に供給する。気化ガスの基板上への成膜の寄与を止めるには、バルブを閉じて気化すべき液体原料の気化器本体への供給を停止する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の気化器を備えた基板処理装置では、液体原料を気化する気化器の本体が、常に液体原料の気化温度に加熱されているため、気化器本体で液体原料が自己分解して成膜されてしまい、バルブを閉じても液体原料を完全に封止できなくなったり、更には気化器が詰まってしまう場合がある。また、連続して気化させていると、気化器本体から気化熱が奪われ、液体原料が気化できなくなってしまうこともある。
【0004】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、安定した気化特性が得られるとともに、気化器が詰まりにくく、メンテナンスサイクルの長い半導体装置の製造方法および基板処理装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、液体原料を気化させたガスを用いて基板を処理する半導体装置の製造方法であって、基板を処理室に搬入する工程と、前記液体原料を希釈ガスと混合させて気化させる気化器の温度を前記液体原料の気化温度よりも低い温度に設定する工程と、前記液体原料を前記気化器に供給する工程と、前記希釈ガスを、前記気化器において前記液体原料と混合させたときに前記液体原料が気化する程度の温度に加熱して前記気化器に供給する工程と、前記気化器において前記液体原料を加熱された希釈ガスと混合させて加熱することにより気化させる工程と、液体原料を気化させたガスを処理室内の基板に供給する工程と、処理後の基板を処理室から搬出する工程と、を有することを特徴とする。ここで、気化器において液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度とは、気化器自体や液体原料自体によって希釈ガスが熱を奪われても、液体原料を気化させることが可能な温度である。
【0006】
液体原料を希釈するための希釈ガスを利用し、この希釈ガスを加熱して液体原料と混合させるだけで、液体原料を気化させることができる。この際、気化器の温度を液体原料の気化温度よりも低い温度に設定しているので、従来のように気化器を気化温度に加熱し、加熱した気化器で液体原料を気化させているものと比べて、液体原料が自己分解して気化器内で成膜されて、バルブの閉まりが悪くなったり、気化器が詰まったりすることがない。また、希釈ガスによって液体原料を気化させているので、液体原料の連続供給により気化器から気化熱が奪われても、液体原料を気化させることができる。
【0007】
第2の発明は、液体原料と希釈ガスとが供給され供給される液体原料を前記希釈ガスと混合させて気化させる気化器と、前記気化器で液体原料を気化したガスを用いて基板を処理する処理室と、前記液体原料を希釈ガスと混合させる気化器の温度が前記液体原料の気化温度よりも低い温度となるよう加熱する第1の加熱手段と、前記気化器において前記液体原料を希釈ガスと混合させたときに前記液体原料が気化する程度の温度に、前記気化器に供給される希釈ガスを加熱する第2の加熱手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
気化器は、第1の加熱手段によって、液体原料の気化温度よりも低い温度に加熱される。このような温度に加熱された気化器に、液体原料が供給される。また、希釈ガスが、第2の加熱手段によって液体原料が気化する程度の温度に加熱されて気化器に供給される。気化器に液体原料と希釈ガスが供給されると、気化器で液体原料と希釈ガスとが混合される。この混合により液体原料は希釈ガスで加熱されて気化する。気化した液体原料ガスは処理室内に供給されて基板が処理される。
【0009】
気化器を加熱する第1の加熱手段については、気化器の温度を液体原料の気化温度よりも低い温度に下げるだけであり、従来と比べて基本的な構成上の変更点はない。変更点は、液体原料を希釈するための希釈ガスを、液体原料が気化する程度の温度に加熱する第2の加熱手段を設けた点である。したがって、第2の加熱手段を追加するという簡単な構成で液体原料を安定して気化できる。
【0010】
第3の発明は、第1及び第2の発明において、前記気化器は、気化器に供給される液体原料と希釈ガスとを混合させて液体原料を希釈する混合容器と、希釈された液体原料を霧化し希釈ガスと混合させて気化させる気化容器とを有し、前記混合容器に前記加熱した希釈ガスを導入するようにしたものである。
【0011】
加熱した希釈ガスを混合容器に導入すると、液体原料は加熱された希釈ガスとともに混合されて混合容器から気化容器に送り出される。液体原料は混合容器内では液体状態にあるため、希釈ガスが液体原料を気化する程度の温度に加熱されていても、容易には気化しない。希釈ガスによって混合されて希釈された液体原料は気化容器に送り出される際、霧化される。霧化された液体原料は、液体原料とともに送り出された希釈ガスと混合され、希釈ガスに加熱されて容易に気化する。
【0012】
第4の発明は、第1及び第2の発明において、前記気化器本体は、気化器に供給される液体原料と希釈ガスとを混合させる混合容器と、希釈された液体原料を霧化し希釈ガスと混合させて気化させる気化容器とを有し、前記混合容器に加熱しない希釈ガスを導入し、前記気化容器に前記加熱した希釈ガスを導入するようにしたものである。
【0013】
混合容器で液体原料と混合させる希釈ガスは加熱しないで混合容器に導入する。加熱したガスは気化容器に導入する。液体原料は、加熱していない希釈ガスで希釈されて気化容器に霧状に導入される。ここで、液体原料が霧状に導入された気化容器に加熱した希釈ガスを導入すると、霧化した液体原料が加熱したガスと混合されて気化温度に加熱されて気化する。加熱した希釈ガスを気化容器に導入すると、加熱した希釈ガスを混合容器に導入する場合と比べて、混合容器内で成膜が生じたり、混合容器から気化容器への流路が塞がれたりすることが大幅に低減する。
【0014】
第5の発明は、第1及び第2の発明において、前記気化器は、気化器に供給される液体原料と希釈ガスとを混合させる混合容器と、希釈された液体原料を霧化し希釈ガスと混合させて気化させる気化容器とを有し、加熱した希釈ガスを前記混合容器、及び前記気化容器のそれぞれに導入し、その際、気化容器に導入する希釈ガスの温度を液体原料が気化する程度の温度にし、混合容器に導入する希釈ガスの温度を気化容器に導入する希釈ガスの温度より低くしたものである。
【0015】
気化容器における霧化後の希釈ガスによる液体原料の加熱の前に、混合容器における霧化前の液体原料が加熱されているので、気化容器内の霧化後の気化効率が向上する。また、混合容器に導入する希釈ガスの温度を液体原料が気化する程度の温度よりも低くしたので、混合容器内で成膜されたり、混合容器から気化容器への流路が塞がれたりすることが大幅に低減する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、基板処理装置としてのウェーハ上に薄膜を形成する薄膜製造装置の構成図を示す。薄膜製造装置は、液体原料供給配管1と、希釈ガス供給配管2と、気化器3と、原料ガス供給配管4と、処理室としての成膜室5と、第1の加熱手段6と、第2の加熱手段7とを主に備えて構成される。
【0018】
液体原料供給配管1は、液体原料を収容した原料タンク8に連結され、搬送気体の導入により原料タンク8から圧送される液体原料を気化器3に供給する。液体原料としては、例えば、Hf[OC(CH3)2CH2OCH3]4(以下、Hf−(MMP)4と略す)、Ta(OC2H5)5(ペンタエトキシタンタル、以下PETと略す)、TEOS、Hf[OC(CH3)3]4(以下、Hf−(OtBu)4と略す)、Zr(OtBu)、TDEAHf(テトラキスジエチルアミドハフニウム)等がある。搬送気体としては不活性ガス、例えばN2ガスなどがあるが、後述する希釈ガスと同種のガスを使用できる。液体原料供給配管1にはヒータ9が設けられ、必要に応じてヒータ9で配管1を保温し、内部を搬送される液体原料の温度が低下して固まらないように加熱する。融点が低い原料は加熱する必要はないが、融点が室温よりも高いものは、加熱する必要がある。また、固まらなくても粘度の高い液体原料、例えばHf−(MMP)4などは加熱する必要がある。
【0019】
希釈ガス供給配管2は、液体原料を希釈するための希釈ガスを気化器3に供給する。希釈ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rn、N2等がある。希釈ガス供給配管2にはヒータ10が設けられ、ヒータ10で配管2を保温し、内部を搬送される希釈ガスの温度が低下しないように加熱する。
【0020】
気化器3は、液体原料供給配管1及び希釈ガス供給配管2からそれぞれ供給される液体原料と希釈ガスとを混合させ、加熱して液体原料を気化させる。気化器3としては、例えば液体原料を希釈ガスでオリフィスへ押し出して霧状に噴出させ、加熱して気化させるオリフィス型が用いられる。また、オリフィス型ではなく、ノズルから噴出する液体原料を、ノズル外周から高速で流す希釈ガスによって微粒化させ、気化器の内壁に衝突させて瞬時に気化させるノズル型を用いてもよい。オリフィスから噴出される液体原料の微粒化度の高いオリフィス型と比べて、ノズル型はノズルから噴出される液体原料の微粒化度が低いため、「液体原料と希釈ガスとを混合させて加熱することにより気化させる」ためには、気化器3としてはノズル型よりもオリフィス型が好ましい。
【0021】
原料ガス供給配管4は、気化器3で気化した液体原料ガスを成膜室5に供給する。原料ガス供給配管4にはヒータ11が設けられ、ヒータ11で配管4を保温し、供給される気化ガスの温度が低下しないように内部を加熱する。
【0022】
処理室としての成膜室5は、成膜室5内に搬送したウェーハ上に気化ガスを用いて薄膜を形成するために使用される。成膜室5には液体原料を気化した原料ガスを供給する原料ガス供給配管4が接続される。また成膜室5には排気ポンプ13に通じて成膜室5内の雰囲気を排気する排気配管12が接続される。
【0023】
第1の加熱手段6は、液体原料と希釈ガスとが混合される気化器3を液体原料の気化温度よりも低い温度に設定して加熱する。ここで、「気化温度」は原料によって異なるが、例えばPET、Hf(MMP)4では180℃、TDEAHfでは120℃である。また、「気化温度よりも低い温度」としては、例えば気化温度よりも50℃くらい低い温度である。
【0024】
第2の加熱手段7は、気化器3に供給される希釈ガスを加熱する熱交換器で構成される。熱交換器は、気化器3において希釈ガスを液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度となるように希釈ガスを加熱する。「液体原料が気化する程度の温度」は、液体原料を気化させるのに最適な温度であり、その温度としては、液体原料種、気化器3の形状や熱容量でも異なるが、途中で奪われる熱を補うために、例えば気化温度よりも10〜20℃程度高い温度である。加熱された希釈ガスは希釈ガス供給配管2に送られる。第2の加熱手段7は冷媒を使った本格的な熱交換器を用いても良いが、ヒータ線で網を構成し、網目に希釈ガスを通すようにした簡単なものでもよい。
【0025】
上記のような構成において、搬送気体を原料タンク8に供給することにより、原料タンク8内の液体原料が加圧され、必要に応じて保温された液体原料供給配管1を通して気化器3に供給される。また液体原料を希釈する希釈ガスは第2の加熱手段7で加熱され、保温された希釈ガス供給配管2を通して気化器3に供給される。気化器3に供給された液体原料と希釈ガスとは気化器3で混合されて、加熱されて気化する。気化した原料ガスは気化器3から保温された原料ガス供給配管4を通って成膜室5に供給されつつ排気される。このとき、気化ガスは基板上の成膜に寄与する。
【0026】
図2は、上述した薄膜製造装置で用いられる第1の実施の形態による気化器3の縦断面図を示す。気化器3は気化器本体30と、液体原料の供給を制御するバルブ20とを有する。
【0027】
気化器本体30は、液体原料を混合希釈して霧化させたうえ、混合加熱して気化させる。気化器本体30は金属製の円柱状ブロックで構成される。その材料には、例えば、ステンレスや、これにテフロン(登録商標)コートを施したものなどが用いられる。気化器本体30の上面に液体充てん容器31と混合容器32とが設けられる。
【0028】
液体充てん容器31は、バルブ20の閉時に液体原料が溜められ、バルブ20の開時に溜められた液体原料を混合容器32へ、その混合容器32の外周から均一に送り込むために設けられる。そのために液体充てん容器31は、気化器本体30の上面をリング状に凹ませて形成してある。液体充てん容器31の底部は、気化器本体30内に設けた液体原料導入路33を介して気化器本体30側面に設けた液体導入口34に通じている。バルブ20が閉じているとき、液体充てん容器31に液体原料が溜められ、バルブ20が開になると、液体充てん容器31と混合容器32とが連通されて、液体充てん容器31に溜められた液体原料が混合容器32に送り込まれる。
【0029】
混合容器32は、液体充てん容器31から送り込まれた液体原料を希釈ガスと混合させて希釈し、混合容器32の底部に設けたオリフィス36から押し出す量を調節して、液体原料を気化させやすくするために設けられる。また、混合容器32を設けることで、バルブ20が閉の状態でも、この混合容器を中継させることで、気化器本体30内に常時希釈ガスが流れるようにしている。ここで、バルブ20が閉のときでも気化器本体30内に希釈ガスを流すのは、バルブ20が閉のとき、混合容器32および気化容器35から残留液体原料を排除するとともに、希釈ガスを常時流すことにより気化ガスの供給→停止、および気化ガスの停止→供給の切替え速度を高めるためである。
【0030】
混合容器32は、リング状の液体充てん容器31の内側に、液体充てん容器31と同様に気化器本体30上面42を凹ませて形成してある。混合容器32の底部は、気化器本体30内に設けた希釈ガス導入路37を介して気化器本体30の側面に設けた希釈ガス導入口38に通じている。希釈ガス導入路37は途中から導入路を絞って混合容器32に通じている。希釈ガス導入路37を途中で絞っているのは、希釈ガスの流速を上げて液体原料をオリフィス36から押し出すためである。
【0031】
また、混合容器32の底部は、オリフィス36を介して気化容器35と通じている。気化容器35はオリフィス36から霧状に噴出される液体原料を希釈ガスと混合して気化させるために設けられる。混合容器32と同様に気化容器35における混合も必須要件である。霧状に噴出された液体原料を、加熱された希釈ガスと混合しなければ、液体原料は十分に気化しないからである。気化容器35は、気化器本体30の厚さ方向に形成され、気化器本体30下面に設けた原料ガス導出口39と通じている。気化容器35は、オリフィス36を頂部とすると、頂部から下方に向けて漸次拡径する肩部と、この肩部と連続する同一径の胴部とを有する。
【0032】
気化器本体30内に第1の加熱手段6としてのヒータ40が埋め込まれ、気化器本体30を液体原料の気化温度よりも低い温度に加熱するようになっている。ここで、気化温度よりも低い温度とは、気化温度よりも低いが、気化器本体の壁面に液体原料が吸着せず、壁面から脱離するような温度である。気化器本体30を加熱するのは、気化器本体30内に導入される液体原料や希釈ガスを保温するためである。また、気化器本体30を気化温度よりも低い温度に加熱するのは、気化器本体30内に導入される液体原料が、気化器本体30の熱によって自己分解し、気化器本体に成膜しないようにするためである。ヒータ40は、気化器本体30を均一に加熱できるように設けられることが好ましい。図示例では、ヒータ40は、絞り込んだ希釈ガス流路37の下流側と気化容器35のオリフィス36近傍側とをリング状に囲むように設けられる。また、気化器本体30の温度を液体原料の気化温度よりも低い温度に設定できるようにするために、気化器本体30に、気化器本体温度を測定する温度センサ41、例えば熱電対が設けられる。なお、ヒータ40は気化器本体30内に設ける代りに、気化器本体30の外周に設けても良い。
【0033】
バルブ20は、気化器本体30の表面を封止、又はその封止を解除することにより気化器本体30への液体原料の供給を制御する。バルブ20は、シリンダ型をしており、液体充てん容器31および混合容器32の上部開口を覆うように、気化器本体30の上面42に気密に取り付けられる。バルブ20は、シリンダ21と、弁体としてのピストン22と、ピストンロッド23と、アクチュエータ24とを備える。シリンダ21は、気化器本体30上面42であって、リング状の液体充てん容器31の外周に、液体充てん容器31を取り囲むように気密に載置される。シリンダ21内に昇降自在にピストン22が嵌合される。シリンダ21内をピストン22が上昇して気化器本体30の上面42から離れて、空間25が形成されると、その空間25を介して液体充てん容器31と混合容器32とが連通して、液体充てん容器31の封止が解除される。ピストン22が下降して気化器本体30の上面42に圧接されると、液体充てん容器31と混合容器32との連通は断たれて、液体充てん容器31は封止される。白抜き矢印で示すピストン22の昇降動作は、アクチュエータ24によってなされる。なお、バルブ20は、一般的に使用されるシリンダ型を採用しているが、シリンダ型以外のバルブを採用してもよい。
【0034】
図3に、バルブを取り除いた気化器本体30の平面図を示す。混合容器32の平面形状は、希釈ガス導入路37の混合容器底部開口とオリフィス36間を結ぶ直線に長軸が沿う長円形になっている。これは、希釈ガス導入路37の混合容器底部開口からオリフィス36への流路が最短距離をとれるようにしているためであるが、混合容器32の平面形状は円形としてもよい。
【0035】
気化器本体30及び希釈ガスの温度を制御する制御系は図4に示すようになっている。気化器本体30の温度制御は、温度センサ41で検出した気化器本体30の検出温度と、予め設定した設定温度とを温度コントローラ50で比較し、電力制御器51を介してヒータ40の通電を調節することにより行なっている。また、希釈ガスの温度制御は、温度センサ53で検出した希釈ガスの検出温度と、予め設定した設定温度とを温度コントローラ50で比較し、電力制御器52を介して熱交換器を調節することにより行なっている。
【0036】
上述した気化器3を製造するには、例えば金属製インゴットから円柱状のブロックを切り出し、研削加工して液体充てん容器31、混合容器32、オリフィス36及び気化容器35を形成する。また、液体原料導入路33、希釈ガス導入路37およびヒータ埋込み穴を設けて、そこにヒータ40を埋め込む。本体側面に液体導入口34、希釈ガス導入口38を、本体下面に原料ガス導出口39をそれぞれ設ける。温度センサ取付穴を設けて、そこに温度センサ41を挿入固定して、気化器本体30を構成する。気化器本体30の上面42にバルブ20を密着固定する。なお、気化器本体30は分割型としてもよい。
【0037】
次に上述した構成の作用について説明する。バルブ20は閉じてピストン22が下降して点線位置にあり、液体充てん容器31は封止されている。液体原料は、液体導入口34から気化器本体30内に圧入され、液体原料導入路33を通って封止された液体充てん容器31に溜められている。液体原料をオリフィス36から噴出するには、ピストン22を実線位置まで上昇させて液体充てん容器31の封止を解除し、シリンダ21内の気化器本体30上面42に空間25を形成して、この空間25を介して液体充てん容器31と混合容器32とを連通させる。この連通により液体充てん容器31に溜められた液体原料は、混合容器32に流れ込む。
【0038】
一方、熱交換器などの第2の加熱手段7によって加熱された希釈ガスは、バルブ20の開閉にかかわらず、常時、気化器本体30に供給されている。すなわち、希釈ガスは、希釈ガス導入口38から希釈ガス導入路37を通り、途中で流速を高められて、混合容器32に流入し、流入後、オリフィス36を経て気化容器35から原料ガス導出口39を介して排出されている。
【0039】
したがって、バルブ20が開き、液体充てん容器31と混合容器32とが連通して、混合容器32に液体原料が流れ込むと、液体原料は流速の高められた希釈ガスと混合容器32で直ちに混合される。混合された液体原料は気化しやすい量となるように希釈され、希釈ガスによりオリフィス36から気化容器35へ押し出される。このとき液体原料はオリフィス36から気化容器35へ霧状に噴出されて、気化容器35で液体原料と一緒に押し出された希釈ガスと混合される。液体原料は細かい霧状となっているので、液体原料は加熱された希釈ガスによって気化温度にまで高められて一瞬のうちに気化する。気化した原料ガスは、原料ガス導出口39から矢印に示すように排出される。
【0040】
上述したように気化器3により気化された液体原料ガスは、保温された原料ガス供給配管4を通して成膜室5に供給されて、ウェーハ上の成膜に寄与する。成膜の寄与を止めるためには、液体原料の気化器本体30への供給をバルブ20によって停止させる。液体原料の供給をバルブ20によって停止させるには、アクチュエータ24によってピストン22を本体上面42位置まで下げる。これにより液体充てん容器31と混合容器32との連通が断たれて、液体充てん容器31が封止され、気化器3への液体原料の供給が停止する。
【0041】
上述したように本実施の形態によれば、気化容器35内に霧状に噴出された液体原料を、加熱した希釈ガスによって混合加熱しているので、液体原料を瞬時に気化させることができる。この際、希釈ガスの温度は、気化容器35において液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度、例えば気化温度よりも10〜20℃高い温度となるように余裕をもって加熱してある。したがって、気化温度よりも低い温度、例えば50℃低い温度に設定した気化器本体30等で熱を奪われても、熱不足により液体原料の気化が阻まれるようなことはない。
【0042】
また、本実施の形態では気化器本体30の温度を、気化温度よりも低い温度に設定しているが、従来では気化器本体30は、常に液体原料の気化温度に加熱されていた。気化器本体30が、常に液体原料の気化温度に加熱されていると、液体充てん容器31に溜まっている液体原料は封止されている状態でも、常に気化温度にさらされる。このため図6に示すように、液体充てん容器31の液溜りで液体原料が自己分解して43に示すように成膜されてしまい、その膜厚が厚くなると、バルブ20によって液体原料を完全に封止できなくなる。液体原料を完全に封止できなくなると、バルブ20を閉じても、気化器3から気化ガスが成膜室5に漏れて、膜厚を制御できなくなる。この点で、実施の形態では、気化器本体30の加熱温度は、図4に示す制御系によるフィードバック制御によって、液体原料の気化温度よりも低い温度に設定されている。このために気化器本体30からの加熱によって、液体充てん容器31の液溜りで液体原料が自己分解して成膜されるようなことが大幅に低減する。したがって、液体充てん容器31の液溜りでの膜厚が厚くなるのを大幅に引き延ばすことができ、気化器本体30内での液体原料の成膜に起因して生じる液体封止の不具合がなくなり、膜厚の制御を維持できる。
【0043】
なお、本実施の形態では、加熱された希釈ガスは混合容器32内でも液体原料と混合するが、混合容器32の段階では、原料はまだ液体状態であるため、希釈ガスの熱によっては自己分解して成膜されることはない。
【0044】
また、混合容器32およびオリフィス36の部分では、封止後も希釈ガスが流れつづけるが、従来のように気化器本体30が液体原料の気化温度に加熱されていると、それらの壁面45、44は気化温度になっているため、噴出後に付着した液体原料が壁面45、44から脱離する前に分解、成膜されて、最終的にはオリフィス36を塞いでしまう場合がある。この点で実施の形態では、気化器本体30の温度は気化温度よりも低く、液体が吸着せず壁面から脱離するような温度に設定してあるため、混合容器32およびオリフィス36の壁面部分での成膜反応を抑えることができる。また、壁面に付着した脱離する前の液体原料は、希釈ガスから気化温度に近い熱を受けるが、液体状態であるため、脱離前に成膜されにくい。したがって、壁面に付着した液体原料によってオリフィス36が塞がれるようなことがない。
【0045】
また、従来のように気化器本体30が、液体原料の気化温度に加熱されていた場合に、オリフィス36から液体原料を連続して噴出しつづけていると、オリフィス36および気化容器35の壁面44から気化熱が奪われ、それらの壁面44の温度が低下して、液体原料が気化できなくなってしまうことがある。この点でも、実施の形態では、液体原料を気化する気化熱は希釈ガスから与えているので、たとえオリフィス36および気化容器35の壁面44の温度が低下するようなことがあっても、液体原料の気化を維持できる。
【0046】
このように希釈ガスによって液体原料を加熱して気化させる実施形態のものは、気化器本体によって液体原料を加熱して気化させる従来のものと比べて、気化器の故障時間間隔を大幅に延長させることができ、薄膜製造装置のメンテナンスサイクルを長くできる。
【0047】
つぎに、第1の実施形態の気化器を備えた薄膜製造装置を用いてALD(Atomic Layer Deposition)法による成膜例を具体的に説明する。ALD法では、液体原料供給サイクルとオゾンサイクルとを繰り返して、ウェーハ表面に一原子層ずつ吸着反応させながら成膜が進む。ここでは容量絶縁膜となるHfO2膜を例にとって説明する。
【0048】
ウェーハを成膜室5に搬入し、ウェーハ温度を350℃に昇温するとともに、成膜室内圧力を所定の圧力とする。その後下記工程に入る。
【0049】
▲1▼実施形態の気化器3のバルブ20を開けて気化器3から成膜室5に、液体原料Hf−MMP4を気化したガスを流量0.1g/minで1秒間供給して、ウェーハ上にHf−MMP4を気化させたガスを吸着させ、バルブ20を閉じて供給を止める。
【0050】
▲2▼N2ガスを図示しないN2供給配管から成膜室5に1秒間供給し、成膜室5内に残存している液体原料気化ガスを排気する。
【0051】
▲3▼引続き成膜室5に図示しないオゾン供給配管からオゾンを1秒間供給して、ウェーハ上に吸着したHf−MMP4原料と酸化反応させてウェーハ上にHfO2膜を1原子層だけ成膜させる。
【0052】
▲4▼成膜後、反応室にN2ガスを1秒間供給して、成膜室5内に残存しているオゾンを排気する。
【0053】
上記▲1▼〜▲4▼の工程を所望の膜厚になるまで繰り返す。成膜終了後、成膜室5内をN2ガスを用いてパージし、残留ガスを除去した後、成膜終了後のウェーハを成膜室5から搬出する。この具体例では、液体原料を気化する気化器に第1の実施の形態の気化器を用いたので、▲1▼の工程の気化ガス供給、停止を繰り返しても、長期間気化器の機能を維持でき、その間、オリフィスが塞がれることもなく、気化できなくなることもない。したがって、ALD法のように、気化ガスの供給、停止を何回も繰り返して、HfO2膜のような薄膜を成膜する場合に、気化器の故障に至る期間が延びるので、特にメリットが大きい。
【0054】
ところで、上述した第1の実施の形態では、加熱した希釈ガスを混合容器32に導入しているが、気化効率に改善の余地がある。また、混合容器32では原料が液体状態なので、加熱した希釈ガスを導入しても、原料は分解して成膜されることはないが、液体充てん容器31が封止されているときに、混合容器32内で残存した液体原料と加熱ガスとが混合されるので、液体原料といえども分解して成膜するおそれもある。このような気化効率の改善、及び成膜のおそれを排除したのが、次に説明する第2の実施の形態である。
【0055】
図5に、第2の実施の形態による気化器3の縦断面図を示す。図2に示す第1の実施の形態と異なる点は、気化容器35に加熱した第2の希釈ガスを導入し、その希釈ガスの熱で液体原料を気化させるようにした点である。具体的には、混合容器32に通じる希釈ガス導入路37を第1の希釈ガス導入路とすると、オリフィス36と気化容器35との間に、気化容器35に通じる第2の希釈ガス導入路46を追加する。この第2の希釈ガス導入路46は、気化器本体30の側面に設けた第2のガス導入口47に連結されている。第2の希釈ガス導入路46は、第1の希釈ガス導入路37と同様に途中から導入路を絞られ、流速を上げたガスを気化容器35内に導入できるようになっている。気化容器35内に導入する第2の希釈ガスは、気化容器35において霧化した液体原料と混合させたときに液体原料が気化する程度の温度に加熱される。この加熱は、気化器本体30に供給する前に、第2の加熱手段7と同様に、熱交換器(図示せず)で行なう。第2の希釈ガスを液体原料が気化する程度の温度に加熱する代りに、第1の希釈ガス導入路37から混合容器32に導入する第1の希釈ガスの温度は、第2の希釈ガス導入路46から気化容器35に導入する第2の希釈ガスの温度より低くする。例えば、気化温度に対して50℃くらい低い温度にするとよい。
【0056】
第2の実施の形態の気化器を備えた薄膜製造装置によれば、混合容器32で霧化前の液体原料を第1の希釈ガスで気化温度の手前の温度に予備加熱したうえで、気化容器35で霧化後の液体原料を第2の希釈ガスで気化温度に本加熱するようにしたので、混合容器で霧化前の液体原料を希釈ガスで気化温度程度に加熱しただけのものと比べて、気化容器内の霧化後の気化効率を促進させることができる。また、混合容器32に導入する第1の希釈ガスの温度を液体原料が気化する程度の温度よりも低くしたので、液体充てん容器31が封止状態のときに混合容器32内で成膜されたり、混合容器32から気化容器35へ通じるオリフィス36が塞がれたりすることがなくなる。
【0057】
なお、第2の実施の形態の変形例として、混合容器31に導入する第1の希釈ガスを加熱しないで室温のまま導入することも可能である。
【0058】
また、実施の形態では基板処理装置として、薄膜製造装置の場合について説明したが、本発明は液体原料を用いる半導体製造装置やLCD製造装置と言った基板処理装置や、DRAMなどの半導体装置の製造方法に広く適用できる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、安定した気化特性を得るとともに、気化器のつまりを防止し、その装置のメンテナンスサイクルを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態による半導体製造装置の構成図である。
【図2】第1の実施の形態による気化器の縦断面図である。
【図3】第1の実施の形態による気化器の要部平面図である。
【図4】第1の実施の形態によるヒータ等の加熱手段を制御する制御系のブロック図である。
【図5】第2の実施の形態による気化器の縦断面図である。
【図6】液体充てん容器に好ましくない成膜が形成された状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 液体原料供給配管
2 希釈ガス供給配管
3 気化器
4 原料ガス供給配管
5 成膜室(処理室)
6 第1の加熱手段
7 第2の加熱手段
Claims (2)
- 液体原料を気化させたガスを用いて基板を処理する半導体装置の製造方法であって、
基板を処理室に搬入する工程と、
前記液体原料を希釈ガスと混合させて気化させる気化器の温度を前記液体原料の気化温度よりも低い温度に設定する工程と、
前記液体原料を前記気化器に供給する工程と、
前記希釈ガスを、前記気化器において前記液体原料と混合させたときに前記液体原料が気化する程度の温度に加熱して前記気化器に供給する工程と、
前記気化器において前記液体原料を加熱された希釈ガスと混合させて加熱することにより気化させる工程と、
液体原料を気化させたガスを処理室内の基板に供給する工程と、
処理後の基板を処理室から搬出する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 液体原料と希釈ガスとが供給され、供給される液体原料を前記希釈ガスと混合させて気化させる気化器と、
前記気化器で液体原料を気化したガスを用いて基板を処理する処理室と、
前記液体原料を希釈ガスと混合させる気化器の温度が前記液体原料の気化温度よりも低い温度となるよう加熱する第1の加熱手段と、
前記気化器において前記液体原料を希釈ガスと混合させたときに前記液体原料が気化する程度の温度に、前記気化器に供給される希釈ガスを加熱する第2の加熱手段と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002219154A JP2004063715A (ja) | 2002-07-29 | 2002-07-29 | 半導体装置の製造方法および基板処理装置 |
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ID=31940123
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JP2002219154A Pending JP2004063715A (ja) | 2002-07-29 | 2002-07-29 | 半導体装置の製造方法および基板処理装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017147447A (ja) * | 2016-02-18 | 2017-08-24 | 三星電子株式会社Samsung Electronics Co.,Ltd. | 気化器及びこれを備える薄膜蒸着装置 |
WO2022190711A1 (ja) * | 2021-03-11 | 2022-09-15 | 株式会社フジキン | 気化器および気化供給装置 |
-
2002
- 2002-07-29 JP JP2002219154A patent/JP2004063715A/ja active Pending
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