JP2012162726A - 難燃性樹脂組成物とそれを用いた成形物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂及び/又は(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂20〜85質量%、(b)ポリプロピレン15〜80質量%及び(c)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
またシート材料には耐熱性や耐外傷性、またチューブについては耐熱性、耐外傷性、耐摩耗性、耐油性、難燃性が要求されている。
現在、前記用途には、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を含有したポリオレフィンコンパウンドが主として使用されている。
このため、環境に影響をおよぼすことが懸念されている有害な可塑剤や重金属の溶出や、ハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン材料で成形を行った成形物品、配線材、ケーブル、シート、チューブの検討が行われている。
特に金属水和物を大量に加えると、耐摩耗性、耐外傷性の低下が顕著であり、これを防止するために、例えば架橋を施す方法やポリプロピレンをベース材料として使用する方法が提案されてきた。しかし、これらの方法では難燃性を向上させると、著しく耐摩耗性や強度、圧接特性が低下する等の問題があった。
さらに、この樹脂成分では金属水和物を大量に加えると耐油性が著しく低下し、油のかかる部分では使用することができなかった。
すなわち本発明は、
(1)(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂15〜85質量%、(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂0〜65質量%、(b)ポリプロピレン15〜80質量%および(c)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物、
(2)前記(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂が、前記樹脂成分(A)中20質量%を超え85質量%以下含まれることを特徴とする(1)に記載の難燃性樹脂組成物、
(3)(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂及び/又は(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂20〜85質量%、(b)ポリプロピレン15〜80質量%及び(c)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の難燃性樹脂組成物、
(4)前記樹脂成分(A)は、(d−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン(但し、不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂、不飽和カルボン酸で変性されたランダムポリプロピレン、不飽和カルボン酸で変性されたブロックポリプロピレンを除く)、(d−2)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、(d−3)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(d−4)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体および(d−5)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を0〜65質量%さらに含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(5)前記樹脂成分(A)は、(e)エチレン−α−オレフィン共重合体0〜65質量%、(f−1)エチレン−酢酸ビニル共重合体および/または(f−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体0〜40質量%、(g)スチレン系共重合体0〜40質量%並びに(h)ゴム用軟化剤0〜20質量%のいずれか1種以上をさらに含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(6)前記樹脂成分(A)中、(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂及び/又は(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂の含有量が25〜70質量%であること特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(7)前記(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂および(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂の不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸であること特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(8)前記水酸化マグネシウム(B)が、無処理の水酸化マグネシウムおよび/またはシラン処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
(9)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を導体または、光ファイバ素線および/または光ファイバ心線の最外層の被覆層として有することを特徴とする成形物品、および、
(10)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形物品、
を提供する。
また、樹脂成分中の(a−1)、(a−2)成分の不飽和カルボン酸で変性されたエチレン含有量の少ないホモ/ブロック/ランダムポリプロピレン樹脂を使用した際に特に効果があり、特にホモポリプロピレンを使用した際に特に大きな効果が発現する。また中でも変成に使う不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸の場合に大きな効果を発現する。
そして、本発明の成形物品は上記全ての特性を満足しながら、成形物品の再溶融が可能なために再利用でき、折り曲げても白化することなく、また傷つきにくく、特に難燃性や耐摩耗性、耐油性を併せ持った成形物品である。
まず、本発明の難燃性樹脂組成物のうち、樹脂成分(A)を構成する各成分について説明する。
本発明の樹脂成分(A)における不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂は、不飽和カルボン酸がホモポリプロピレンにグラフトした樹脂のことである。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを挙げることができる。
ホモポリプロピレンの変性は、例えば、ホモポリプロピレンと不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸による変性量は、通常その0.5〜15質量%である。
本発明における不飽和カルボン酸で変性されたブロックポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂は不飽和カルボン酸がブロックポリプロピレンまたはランダムポリプロピレンにグラフトした樹脂のことである。
この不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを挙げることができる。
ここで言うブロックポリプロピレン樹脂はエチレン成分含量が15質量%以下、ランダムポリプロピレン樹脂はエチレン成分含量が5質量%以下でなければならない。エチレン量が規定量より多いと耐摩耗性、耐油性、圧接性が低下するためである。
ブロックポリプロピレンやランダムポリプロピレンの変性は、例えば、ブロックポリプロピレンやランダムポリプロピレンと不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸による変性量は、通常その0.5〜15質量%である。
これらの特性は不飽和カルボン酸で変性された他のポリオレフィン樹脂を使用した場合よりも非常に顕著である。
本発明に用いることのできるポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体や、ポリプロピレンブロックとエチレン−プロピレンブロックの共重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体を挙げることができる。
ここでエチレン−プロピレンランダム共重合体はエチレン成分含量が1〜5質量%程度のものが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜15質量%程度のものが好ましいが、エチレン含有量をこれより多くすることにより、弾性を高めてもよい。
具体的には例えば、日本ポリプロピレン(株)、住友化学(株)、サンアロマー(株)、プライムポリマー(株)等から上市されている。ポリプロピレンブロックとエチレン−プロピレンブロックの共重合体は、キャタロイ(商品名、サンアロマー(株)製)、ニューコン(商品名、日本ポリプロピレン(株)製)、などが挙げられ、他にプライムポリマー(株)等から上市されている。
本発明の樹脂成分(A)おいて、ポリプロピレンの含有量は15〜80質量%であり、好ましくは15〜70質量%、さらに好ましくは15〜60質量%である。含有量が少なすぎると、成形性、耐熱性が著しく低下し、多すぎると著しく摩耗性や圧接性が低下する恐れがある。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーとは、スチレン系共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がスチレン系共重合体にグラフトした樹脂のことである。
不飽和カルボン酸としては、(a)及び後述する(d−1)〜(d−3)で使用されるものと同様のものを使用することが可能である。
スチレン系エラストマーとは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及びランダム構造を主体とする共重合体およびその水素添加物である。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどを挙げることができる。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどを挙げることができる。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーとしては、例えば、クレイトン1901FG(商品名、JSR クレイトン(株)製)、タフテック(商品名、旭化成(株)製)等を挙げることができる。
本発明の樹脂成分(A)には、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーを含有しても含有しなくてもよいが、その含有量は0〜40質量%であり、好ましくは5〜35質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。含有量が多すぎると押出負荷が著しく高くなったり、耐油性が著しく低下する。
本発明における不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンとは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸が、ポリオレフィンにグラフトした樹脂のことである。本発明においては、不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂((a−1)成分)及びエチレン含有量が5質量%以下のランダムポリプロピレン樹脂、エチレン含有量が15質量%以下のブロックポリプロピレン樹脂((a−2)成分)は不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンから除外するものである。
ポリオレフィンの変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸による変性量は、通常0.5〜15質量%である。
不飽和カルボン酸等により変性されたポリオレフィンとしては、具体的には例えば、ポリボンドP−1009等(商品名、クロンプトン(株)製)、アドテックスL−6100M等(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、アドマーXE070、NE070等(商品名、三井化学(株)製)などが挙げられる。
本発明における不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がエチレン−酢酸ビニル共重合体にグラフトした樹脂のことである。
エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンに、酢酸ビニルを共重合させたものである。
不飽和カルボン酸としては、(d−1)で使用されたものと同様のものを使用することができる。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、アドマーVF600、VF500(いずれも商品名、三井化学(株)製)を挙げることができる。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体にグラフトした樹脂のことである。
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、(d−1)で使用されたものと同様のものを使用する。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、モディパーA−5200、A−8200(いずれも商品名、日本油脂(株)製)を挙げることができる。
本発明においては、前記(d−1)〜(d−3)の樹脂と共にまたはこれらの代わりにエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体を使用しても良い。
具体的には例えば、ニュクレル、ベイマック(いずれも商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)などが挙げられる。
(d)成分として、(d−1)〜(d−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を使用することができ、(d−1)〜(d−5)からなる群から選ばれる樹脂は、樹脂成分(A)100質量%中0〜65質量%含有されるのが好ましい。
前記(a)成分及び(d)成分は後述する水酸化マグネシウムとナノ−ミクロレベルでイオン結合していることにより、高い機械特性を発揮する。水酸化マグネシウムと樹脂成分とが強力に結合し、水酸化マグネシウムが本来有している硬質性、強度、補強性が樹脂成分と一体化することにより、得られる難燃性樹脂組成物が高い機械特性を有することが可能になったものと考えられる。その結果、難燃性樹脂組成物に含有する水酸化マグネシウムの量を多くするほど、耐摩耗性を格段に向上させることができたものと考えられる。
さらに樹脂成分中の樹脂と水酸化マグネシウムが強い結合を有することにより、燃焼時において吸熱反応が助長され、また殻形成により延焼を防ぎ、高い難燃性を示すことが確認された。
また(a)成分が水酸化マグネシウムとイオン性結合を有し、しかも界面近傍に存在するポリマーの結晶性が高いことから、少量の不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂を使用すれば加熱変形特性を満足することができ、これにより難燃性、皮剥ぎ性、絶縁特性を良好にすることもできる。
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、例えばエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体として具体的には、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、EPR(エチレンプロピレンゴム)、EBR(エチレン−1−ブテンゴム)、及びメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。このなかでも、メタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、メルトフローレート(以下、MFRと記す)(ASTM D−1238)が0.5〜50g/10分のものが好ましい。
本発明において、樹脂成分としてエチレン−α−オレフィン共重合体は含有しても含有しなくてもよいが、その含有量は、0〜65質量%、好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは0〜40質量%である。含有量が多すぎると著しく摩耗性や圧接性、強度が低下する場合がある。
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンと酢酸ビニルが共重合した樹脂であり、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体が挙げられる。具体的には例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、エバフレックス(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)等が、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、エバルロイ(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
本発明における(f−1)および/または(f−2)成分は含有しても含有しなくてもよいが、その樹脂成分中への含有量は0〜40質量%であり、好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜15質量%である。含有量が多すぎると、摩耗性、強度が低下する恐れがある。
本発明のスチレン系共重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及びランダム構造を主体とする共重合体もしくはその水素添加物である。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
前記スチレン系共重合体として具体的には例えば、セプトン4077、セプトン4055、セプトン8105(いずれも商品名、(株)クラレ製)、ダイナロン1320P(商品名、JSR(株)製)等が挙げられる。
本発明においてスチレン系共重合体は含有しても含有しなくてもよいが、その含有量は、樹脂成分中0〜40質量%であり、好ましくは5〜35質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。含有量が多すぎると耐摩耗性、強度、耐油性が低下する恐れがある。
一般に、ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
本発明のゴム用軟化剤としては、液状もしくは低分子量の合成軟化剤またはパラフィン系およびナフテン系の鉱物油系のものを用いることができる。
前記ゴム用軟化剤として具体的には、ダイアナプロセスオイルPW90、PW380(商品名、シェル社製)等がある。
本発明におけるゴム用軟化剤は含有してもしなくてもよいが、その含有量は樹脂成分中0〜20質量%であり、好ましくは0〜10質量%である。含有量が多すぎると、耐磨耗性、強度、耐油性が低下する場合がある。
不飽和カルボン酸成分とは、例えば、(a)、(d−1)〜(d−3)成分の不飽和カルボン酸による変性に用いられた不飽和カルボン酸成分であり、(d−4)、(d−5)成分の酸共重合成分である、アクリル酸やメタクリル酸のことである。不飽和カルボン酸成分の含有量が特定の範囲内であることにより、特に優れた強度、耐摩耗性、耐油性、電線の圧接性を保持しつつ、優れた伸び、難燃性を有することが可能となる。
通常樹脂成分に対して水酸化マグネシウムなどの金属水和物を添加してゆくと、耐摩耗性が著しく低下する。しかし、本発明においては、金属水和物である水酸化マグネシウムを本発明の樹脂成分に対して多く添加しても耐摩耗性が低下することはなく、むしろ耐摩耗性が向上する。従って難燃性と耐摩耗性を両立させることができる。
またさらに通常水酸化マグネシウムを大量に含有すると耐油性は大幅に低下するが、本発明の材料は水酸化マグネシウムを大量に含有しても耐油性の低下がなく、バランスの良い優れた物性を維持することができる。
さらに、その樹脂組成物を電線に使用した場合は、非常に圧接性に優れた物性を有しており、ストレインリリーフの盛り上がり等の現象も生じない。
本発明においては、通常市販されている水酸化マグネシウムを使用することが可能である。本発明において、水酸化マグネシウムは、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理としては例えば、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理、シランカップリング剤による処理などが挙げられる。樹脂成分(A)との結合特性の点から、本発明においては、無処理のものか、シランカップリング剤を用いたものを使用するのが好ましい。
さらに、本発明においては、表面処理を行っていない水酸化マグネシウムや、表面処理を行った水酸化マグネシウムをそれぞれ単独で使用しても、併用してもよい。異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムを併用することも可能である。
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、例えばキスマ5(商品名、協和化学(株))、マグニフィンH5(商品名、アルベマール(株))などが挙げられる。
本発明で用いるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛は平均粒子径が5μm以下のものが好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B2O3・3.5H2O)、アルカネックスFRC−600(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。またスズ酸亜鉛(ZnSnO3)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH)6)として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系などが挙げられ、なかでも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
本発明の成形物品としては例えば、導体や光ファイバやその他成形体の周りに上記の本発明の難燃性樹脂組成物が被覆された絶縁電線やケーブルなどがある。この絶縁電線やケーブルは、本発明の難燃性樹脂組成物を通常の押出成形機を用いて導体、光ファイバ、集合絶縁電線やその他成形体の周囲に押出被覆することにより製造することができる。
例えば絶縁電線に使用される場合、導体の周りに形成される絶縁樹脂組成物の被覆層の肉厚も特に制限はないが、0.15〜3mmが好ましい。また、絶縁層が多層構造であってもよく、本発明の難燃性の絶縁樹脂組成物で形成した被覆層のほかに中間層などを有するものでもよい。
また、本発明の配線材においては、本発明の樹脂組成物を押出被覆してそのまま被覆層を形成することが好ましいが、さらに耐熱性を向上させることを目的として、押出後の被覆層を架橋させることも可能である。但し、この架橋処理を施すと、被覆層の押出材料としての再利用は困難になる。
電子線架橋法の場合は、樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有してもよい。
化学架橋法の場合は、樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として含有し、押出成形して被覆層とした後に常法により加熱処理により架橋をおこなう。
実施例1〜9、比較例1〜5
表1に実施例1〜9および表2に比較例1〜5の樹脂組成物の各成分の含有量(表中の数値は質量部である)を示す。表に示された各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて190〜200℃で溶融混練して、各難燃性樹脂組成物を製造した。
(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン
アクリル酸変性ホモポリプロピレン
商品名:ポリボンドP1002 製造元:クロンプトン(株)
アクリル酸変性量:6質量%
(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロックポリプロピレン
ブロックポリプロピレン(商品名:150GK、プライムポリマー(株)製)に、無水マレイン酸とジクミルパーオキサイドを配合し、2軸混練り機で230℃にてグラフト処理を行った。得られたマレイン酸グラフトブロックポリプロピレンのMFRは20、マレイン酸グラフト量は0.9質量%であった。
(a−3)不飽和カルボン酸で変性されたランダムポリプロピレン
ランダムポリプロピレン(商品名:BC6RD、日本ポリプロピレン(株)製)に、無水マレイン酸とジクミルパーオキサイドを配合し、2軸混練り機で230℃にてグラフト処理を行った。得られたマレイン酸グラフトランダムポリプロピレンのMFRは32、マレイン酸グラフト量は0.9質量%であった。
(b)ポリプロピレン
ポリプロピレンブロックとエチレン−プロピレンブロックの共重合体(TPO)
商品名:キャタロイQ300F 製造元:サンアロマー(株)
ブロックポリプロピレン
商品名:150GK 製造元:プライムポリマー(株)
ランダムポリプロピレン
商品名:BC6DR 製造元:日本ポリプロピレン(株)
(c)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー
アクリル酸で変性されたスチレン系エラストマー
商品名:クレイトン 製造元:JSR クレイトン(株)
(d−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン
マレイン酸変性ポリエチレン
商品名:アドマーXE070 製造元:三井化学(株)
マレイン酸変性量:1質量%
(d−4)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体
エチレンメタクリル酸共重合体
商品名:ニュクレルN1207C 製造元:三井デュポンポリケミカル(株)
メタクリル酸含有量:12質量%
メタロセン触媒ポリエチレン(密度:898kg/m3)
商品名:カーネルKF−360 製造元:日本ポリケム(株)
(f−1)エチレン−酢酸ビニル共重合体
商品名:エバフレックス V−527−4 製造元:三井デュポンポリケミカル(株)
酢酸ビニル含有量:17質量%
(g)スチレン系共重合体
SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体)
商品名:セプトン4077 製造元:(株)クラレ
(h)ゴム用軟化剤
パラフィンオイル
商品名:ダイアナプロセスオイルPW−90 製造元:シェル社
(B)水酸化マグネシウム
シラン処理水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5L 製造元:協和化学(株)
滑剤
ポリエチレンワックス
商品名:ACポリエチレンNO.6 製造元:ヘキスト社
得られた各々の絶縁電線に対して、以下の評価を行い、得られた結果をそれぞれ表1および表2に示した。
電線より管状片を作成し引張試験を行った。標線間25mm、引張速度50mm/分で試験を行い、引張り強さおよび伸びを測定した。伸び100%以上、引張り強さ18MPa以上が必要である。
○耐摩耗性試験
R=0.225のブレードを用い、JASO 608に基づきブレード往復法により試験を行った。加重は7Nとした。回数900回以上で合格であるが、1200回以上がより好ましい。また1600回以上がさらに好ましい
○難燃性
JASO D 608に基づき、水平燃焼試験を行った。60秒以上延焼したものを不合格とした。
JASO D 608に基づく耐摩耗試験のブレード往復法の試験方法で、R=0.25mmのブレードを使用し、荷重5Nで4往復摩耗を行った。その後のサンプルを観察した。
○:外傷がない又は白化が無い
×:外傷がある又は白化が著しい
○外観
外観は、絶縁電線の外径の変動の有無や表面の状態を目視で調査し、これらが良好であったものを「○」、外径が変動しており不安定なもの、表面に肌荒れが発生したもの、ブリードが発生したものを「×」で示した。
○耐油試験
試験方法はJIS C 3005に基づきJIS2号試験油を用い85℃24h浸せきを行った後に引張試験を行った
引張り強さ残率80%以上、伸び残率80%以上が合格である。前記の引張試験で伸びが100%未満のものについては、耐油試験は行わず、「−」で示した。
○電線の圧接性
ハンドプレス機を用い、モレックスMi−IIコネクタを用い圧接を行った後に、観察を行った。圧接刃の部分で1カ所でも割れがあるサンプル及びストレインリリーフ部分で電線被覆部の盛り上がりが矢尻部分を超えたものが発生したものを不合格とし、「×」で示した。
これに対し、比較例のものは引張り強さについては本発明のものとほぼ同等であるが、特に圧接性、耐油性については満足できるものではなかった。伸び試験では比較例3のみが満足できるものであるが、比較例3は耐摩耗性、耐外傷性に問題がある。
Claims (9)
- (a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂15〜85質量%、(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂0〜65質量%、(b)ポリプロピレン15〜80質量%及び(c)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- 前記(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂が、前記樹脂成分(A)中20質量%を超え85質量%以下含まれることを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- (a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂及び/又は(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂20〜85質量%、(b)ポリプロピレン15〜80質量%及び(c)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記樹脂成分(A)は、(d−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン(但し、不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂、不飽和カルボン酸で変性されたランダムポリプロピレン、不飽和カルボン酸で変性されたブロックポリプロピレンを除く)、(d−2)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、(d−3)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(d−4)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体および(d−5)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を0〜65質量%さらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記樹脂成分(A)は、(e)エチレン−α−オレフィン共重合体0〜65質量%、(f−1)エチレン−酢酸ビニル共重合体および/または(f−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体0〜40質量%、(g)スチレン系共重合体0〜40質量%並びに(h)ゴム用軟化剤0〜20質量%のいずれか1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記樹脂成分(A)中、(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂及び/又は(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂の含有量が25〜70質量%であること特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(a−1)不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂および(a−2)不飽和カルボン酸で変性されたブロック及び/又はランダムポリプロピレン樹脂の不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸であること特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を導体または、光ファイバ素線および/または光ファイバ心線の最外層の被覆層として有することを特徴とする成形物品。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形物品。
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