JP2012161275A - リグノセルロース系バイオマスの糖化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】糖化処理工程の前工程として、原料を圧縮し、ペレット状に成形する圧縮成形工程を実施することで、リグノセルロース系バイオマスの繊維自体が押しつぶされ、組織中の空気が取り除かれ、高密度のものとなる。これにより原料が扱いやすくなり、且つ糖化処理工程における糖化率が向上する。
【選択図】 図2
Description
特に、バイオエタノール等の燃料製造においては、食糧との競合問題が懸念されるトウモロコシやサトウキビ等の糖質系のバイオマスに替わり、存在量が莫大な非可食のリグノセルロース系バイオマスの利用が検討されている。
このリグノセルロースの構成成分であるセルロースはグルコースが縮合したもので、加水分解することによりグルコース等の糖類を得ることができる。
更に、得られた糖類を出発原料にすることでバイオエタノールの他、石油化学工業で製造している各種の化成品基礎原料を製造することも可能であることから、早急な利用技術の確立が求められている。
例えば、草本系バイオマスの糖化方法としては、濃度0.01wt%以上10wt%未満の希アルカリまたは希酸、有機溶媒で処理した後、その希アルカリ処理後の草本類バイオマスをクロストリジウム属細菌またはその培養液で処理する方法が開示されている(特許文献1)。また、草本系バイオマスを粉砕する工程と、得られた粉砕物を、加水分解酵素を用いて加水分解する工程とを含む、糖化液の製造方法が開示されている(特許文献2)。
また、仮にハンマーミルを使用して3mm以下に細かく破砕しても、破砕物が繊維状の空気をはらんだ状態となり、嵩比重や流動性については処理前の原料と同様に、扱いやすいものではない。
このように性状的な問題から取り扱いが難しいにも関わらず、前記先行技術では、いずれも原料から糖化に至るまでの処理工程(糖化前処理)についての課題に対する言及がなされておらず、単なる粉砕を糖化前処理の手段として行っているに過ぎない。
(1)リグノセルロース系バイオマスを糖化処理する糖化方法において、前記リグノセルロース系バイオマスを圧縮しペレット状に成形する圧縮成形工程と、該圧縮成形工程にて圧縮成形された圧縮成形物を糖化処理する糖化処理工程を行うことを特徴とするリグノセルロース系バイオマスの糖化方法。
(2)前記圧縮成形工程が、嵩比重0.4以上の圧縮成形物を成形することを特徴とするリグノセルロース系バイオマスの糖化方法。
(3)前記圧縮成形工程が、フレームを有する本体と、前記フレーム内へ固定されて配置してあるダイスと、このダイス上面を摺動回転することでリグノセルロース系バイオマスを擂り潰すローラーを有する圧縮成形装置を用いて実施されることを特徴とするリグノセルロース系バイオマスの糖化方法。
本発明で用いるリグノセルロース系バイオマスとしては、木材・ユーカリ・竹等の木本系バイオマス、及び稲わら・牧草・麦わら等の草本系バイオマス、あるいは、建築廃材・古紙・パームヤシ空果房・バガスなどの廃棄物系バイオマスが挙げられる。
図1に示すように、中空筒状の成形部内で回転する一軸スクリューで原料を円柱状に圧縮成形する圧縮成形装置(A)(特開平10−75759号参照)、原料を一対の回転ロールの間で挟み込みアーモンド状に圧縮成形する圧縮成形装置(B)(特開2010−285691号参照)、回転するリング状のダイスに設けられた複数の穴に、リング内で回転するローラーで押し込み円柱状に圧縮成形する圧縮成形装置(C)(特開2000−355006号参照)など、投入される原料を、接着材等を使用することなく圧縮作用のみで成形できる装置であれば良い。
特に、草本系バイオマス等の繊維の長い原料に対しては、本体フレーム内に固定的に配置してあるダイスと、このダイス上面を摺動回転するローラーで構成され、投入された原料がダイスとローラーの間で、せん断、及び磨砕作用を加えながら円柱状に圧縮成形する圧縮成形装置(D)(特開2006−272044号参照)が好適に利用できる。
本実施例に用いる圧縮成形装置(D)は、図2に示すように、本体フレーム1に固定されて設けられた円盤状のダイス2と、該ダイス2の中央に配置したローラー駆動部3と、該ローラー駆動部3の周方向外方へ取り付けられたローラー4が備えられている。
前記ダイス2には、多数の小孔5が垂直方向に貫通して穿設されており、前記小孔5は直径4〜20mm、好ましくは6〜13mmに形成されている。
ローラー駆動部3は図示しない駆動源によってダイス2の鉛直軸芯を中心に回転駆動が可能になされており、このローラー駆動部3に取り付けられたローラー4は図示しない駆動源により自転することで、ダイス2の上面を摺動回転可能になされている。
圧縮成形工程において、前述の圧縮成形装置へリグノセルロース系バイオマスWを投入すると、ローラー駆動部3の回転に伴うローラー4の摺動回転により、リグノセルロース系バイオマスWは、ローラー4とダイス2との間に挟み込まれて圧縮される。このときローラー4がダイス2の上面を摺動回転することによって、リグノセルロース系バイオマスWはローラー4とダイス2との間で擂り潰され、せん断・磨砕作用をうけることで、内部の繊維が押しつぶされて細かく粉砕される。
この粉砕物は、ローラー4の摺動回転によりダイス2に設けられた小孔5へ次から次へと押しこまれ加圧されて、ダイス2の下方へ小孔5から押し出されることで円筒形状に圧縮成形される。
このとき、リグノセルロース系バイオマスWは、圧縮成形されていることにより、反応液中に速やかに沈降し、吸水、膨潤しながら崩壊し、反応液中にバイオマス原料を高濃度で素早く分散させることができる。これにより糖化率が著しく向上するという効果が得られる。
また、前記ローラー4の回転する際の周速は、草本系バイオマスが原料の場合、0.5〜2m/秒が好ましい。ローラー4の周速が2m/秒以上になると、ローラー4の回転によって発生する風によって繊維状の原料が巻き上げられ、圧縮成形物Pの生成能力が低下してしまう。
リグノセルロース系バイオマスWは圧縮されることで、従来の方法のように短く分断化されるのではなく、擂り潰されて、せん断及び磨砕作用を受けながら圧縮成形され、繊維自体が押しつぶされる。その際リグノセルロース系バイオマスWの繊維内にある空洞部分も押しつぶされて空域が無くなり、空気が押し出される。そのため、リグノセルロース系バイオマスを構成する粒子の微細組織中の空気が取り除かれ、リグノセルロース系バイオマス自体の嵩密度が大きくなり、高密度のものとなる。
例えば、あらかじめハンマーミルやカッターミル等の破砕処理装置を用いて、適宜次工程である圧縮成形工程に用いる圧縮成形装置に適した大きさにリグノセルロース系バイオマス原料を破砕しておく。前記圧縮成形工程に用いる圧縮成形装置が、圧縮成形装置(A)、圧縮成形装置(B)、圧縮成形装置(C)の場合には、リグノセルロース系バイオマス原料Wの最適な長さは木質系バイオマス、草本系バイオマスの何れも1mm〜5mm程度が良い。
圧縮成形装置が圧縮成形装置(D)の場合には、リグノセルロース系バイオマスWの最適な長さは、木質系バイオマスで1mm〜10mm、草本系バイオマスで1mm〜200mm程度となる。草本系バイオマスの長さが200mm程度であっても前述のようなローラー4とダイス2を用いて原料を擂り潰して、せん断、磨砕作用を受けさせることにより、圧縮成形物Pを構成する粒子径を概ね3mm以下とすることができ、糖化処理が行いやすくなる。
作製した嵩比重の異なる圧縮成形物について、それぞれ200g程度を水で湿らせて解し、105°Cで乾燥させた状態で、圧縮成形物を構成する粒子の粒度分布を調べた結果、図3に示すように殆どが3mm以下の粒子に磨砕されていた。
コンバインで長さ50mm〜200mmに切断された含水率14%の稲わら(広島県庄原市産)を、裁断処理によって3mm以下に破砕し、稲わら破砕物を作製した。得られた稲わら破砕物について、吸水による分散性を確認するため、直系50mm、深さ60mmのガラス製容器に20gの水を入れたものに、1g投入し、以下、実施例1と同様に操作し、稲わら破砕物が吸水し、分散するまでの時間を測定した。尚、稲わら破砕物は、水の上に浮いた状態から、吸水し、水への分散が進行した。
実施例1、比較例1について、分散に要した時間を表1に示す。結果は、おのおの3反復して得られた値の平均である。表1に示すように本発明の圧縮成形物は、稲わら破砕物に比べ水への分散性が良いことが分かる。
各サンプルについて、75mg宛てサンプル瓶に秤量し、酢酸緩衝液(pH5.0)を22.5mLを添加した。次いで、酢酸緩衝液75mLにメイセラーゼ(登録商標)、明治製菓製)75.4mgを溶解した酵素液3mLを添加し、振とう恒温水槽(45°C、230rpm)で糖化処理した。
尚、糖化率は、試験に用いた稲わらのセルロース量から理論グルコース量を算出し、次式によって求めた。
糖化率(%)=糖化後のグルコース生成量(mg)/試料中の理論グルコース量(mg)×100
その結果のグラフを図4に示す。図4に示すように、稲わら破砕品に比べ、本発明の稲わらの圧縮成形物は、糖化率が高い傾向にあり、特に、圧縮成形物を粉砕して作製した微粉砕物の糖化率が最も高くなった。
200mLの容器に各サンプル15g(乾燥重量)に純水135mLおよび水酸化カルシウム3gを加え、薬液をよくなじませた後、120°C、1時間、オートクレーブ内で加温・加圧処理を行った。処理後、薬液のpHが中性付近になるまで塩酸で中和し、遠心分離(8000×g、20分、4°C)により固液分離を行った。沈殿部(アルカリ処理稲わら)を数回純水で洗浄し、65°Cで3日間乾燥させた物を50 mL容器に秤量し、次いで10mL の50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、及び20mLの市販酵素製剤(商品名:セルクラスト1.5L(登録商標)、ノボザイム188(登録商標)、ウルトラフロL(登録商標)、ノボザイム社製)を添加して、50°C、24時間(6回転/min)の条件で酵素糖化を行った。酵素糖化反応時に防腐剤として0.02%のアジ化ナトリウムを添加した。反応後、熱処理(100°C、20分)で酵素を失活させ、遠心分離(6000×g、10分、4°C)にて上澄み液を回収し、回収液中のグルコース量およびキシロース量を、それぞれグルコーステスト(和光純薬工業(株)製)およびキシロース定量キット(Megazyme社製)を用いて測定した。
グルカン糖化率(%)=糖化後のグルコース生成量(mg)/試料中の総グルコース量(mg)×100
キシラン糖化率(%)=糖化後のキシロース生成量(mg)/試料中の総キシロース量(mg)×100
なお、測定は3連で行った。結果を図5に示す。図5に示すように、実施例の圧縮成形物は、アルカリ処理後のグルカン糖化率、及びキシラン糖化率ともに比較例の稲わら破砕物に比べて、高い値となった。
2 ダイス
3 ローラー駆動部
4 ローラー
5 小孔
Claims (3)
- リグノセルロース系バイオマスを糖化処理する糖化方法において、前記リグノセルロース系バイオマスを圧縮しペレット状に成形する圧縮成形工程と、該圧縮成形工程にて圧縮成形された圧縮成形物を糖化処理する糖化処理工程を行うことを特徴とするリグノセルロース系バイオマスの糖化方法。
- 前記圧縮成形工程が、嵩比重0.4以上の圧縮成形物を成形することを特徴とする請求項1に記載のリグノセルロース系バイオマスの糖化方法。
- 前記圧縮成形工程が、フレームを有する本体と、前記フレーム内へ固定されて配置してあるダイスと、このダイス上面を摺動回転することでリグノセルロース系バイオマスを擂り潰すローラーを有する圧縮成形装置を用いて実施されることを特徴とする請求項1または2に記載のリグノセルロース系バイオマスの糖化方法。
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