JP6050090B2 - 糖化性能の評価方法 - Google Patents

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本発明は、セルロース系バイオマスの糖化工程に先立って実施されるアルカリ処理について、糖化工程における糖化性能を事前に評価する糖化性能の評価方法に関する。
セルロース系バイオマスは、バイオ燃料や化学製品の原材料として検討されている。セルロース系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンから主として構成されており、なかでもセルロースは、グルコース(単糖成分)が鎖状に連なった多糖類であり、酸や分解酵素(セルラーゼ)等で加水分解することにより単糖成分であるグルコースまで分解することができる。
セルロース系バイオマスを分解して得られるグルコースは、アルコール発酵の原料として利用することができる。言い換えると、セルロース系バイオマスは、例えば、ガソリンの代替物であるバイオエタノールや、軽油の代替物であるバイオブタノールの原料としての用途が期待される。
また、現在では、バイオリファイナリー技術の発展に伴い、化石資源由来合成高分子のうち95%をグルコースから作り出すことも可能と言われている(非特許文献1)。このように、バイオリファイナリーの多くはグルコースが出発原料であるため、植物資源からグルコースを効率的に生成すること、すなわち「糖化」がバイオリファイナリーの基本となる。
セルロース系バイオマスは木質系及び草本系に分類されるが、木質系は賦存量が多い上、草本系と比較してエネルギー密度が高く利用価値の高いバイオマスである。しかしながら、木質系バイオマスのセルロースは、分子間の水素結合によって分子鎖同士が強固に結合し高結晶となっている。また、セルロース分子鎖周辺をヘミセルロースとリグニンが複雑な三次元網目構造状で取り巻いており、セルロースの分解酵素であるセルラーゼを直接作用させても高い糖化性能が得られない。
近年、セルラーゼによる糖化性能を向上させる前処理方法が開発されている。特に、苛性ソーダ等のアルカリ溶液を用いた前処理方法は稲わら等の草本系バイオマスを中心に実用的段階となっている(特許文献1)。
特開2009-125050号公報
寺本好邦ら「リグノセルロースからのバイオエタノール製造−木材糖化・バイオリファイナリーの歴史・現状・新展開−」 伝熱 2008 年1 月号
しかしながら、セルロース系バイオマスが木質系及び草本系に拘わらず、糖化工程における糖化性能を把握するには、アルカリ処理後のバイオマスをセルラーゼで反応させ、溶解した糖類を液体クロマトグラフィ等の機器分析で定量する必要があった。この方法は、確実な性能を把握できるが、結果を得るまでに長期間を要し、また酵素を使用するために高コストになるといった問題があった。
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、アルカリ溶液によりセルロース系バイオマスを処理したときのセルロース系バイオマスについて、実際に酵素を用いて糖化することなく、糖化性能を迅速に把握する評価方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成した本発明は以下を包含する。
(1)セルロース系バイオマスをアルカリ溶液に接触させる前処理工程と、上記前処理工程後のセルロース系バイオマスを加水分解酵素により糖化する糖化工程とを含み、上記前処理工程の途中又は上記前処理工程の後のセルロース系バイオマスに含まれる、上記アルカリ溶液に含まれる水酸化物由来のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の量を測定し、測定したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の量に基づいて糖化工程における糖化性能を評価する、糖化性能の評価方法。
(2)上記水酸化物は水酸化ナトリウムであり、上記前処理工程の途中又は上記前処理工程の後のセルロース系バイオマスに含まれるナトリウム量に基づいて糖化性能を評価する(1)記載の糖化性能の評価方法。
(3)セルロース系バイオマスに含まれる上記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の量を測定する前に、当該セルロース系バイオマスを洗浄することを特徴とする(1)記載の糖化性能の評価方法。
本発明に係る糖化性能の評価方法は、アルカリ溶液にセルロース系バイオマスを接触させることで、その後の酵素による糖化処理について糖化性能を迅速且つ低コストに評価することができる。したがって、本発明を適用することによって、セルロース系バイオマスを用いて構成単糖を製造するシステム、当該構成単糖を利用してバイオ燃料やバイオブタノールを製造するシステムにおける、アルカリ溶液を用いた前処理工程及び前処理工程の後のセルロース系バイオマスを用いた糖化工程を迅速且つ低コストに最適化することができる。
一例として示すエタノール製造方法の製造フローを示すフローチャートである。 一例として実施例で使用したセルロース系バイオマスについて、前処理後のセルロース系バイオマスに含まれるナトリウム量と、六炭糖の糖化率との関係を示す特性図である。
以下、本発明に係る糖化性能の評価方法をより詳細に説明する。
本発明に係る糖化性能の評価方法は、セルロース系バイオマスをアルカリ溶液に接触させる前処理工程と、上記前処理工程後のセルロース系バイオマスを加水分解酵素により糖化する糖化工程とを実施するに際し、糖化工程における糖化性能を事前に評価する方法である。本発明に係る糖化性能の評価方法は、特に、上記前処理工程の途中又は上記前処理工程の後のセルロース系バイオマスに含まれる、上記アルカリ溶液に含まれる水酸化物由来のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の量を測定する。本発明に係る糖化性能の評価方法は、このように測定したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の量に基づいて糖化工程における糖化性能を評価する。
ここで、セルロース系バイオマスとは、構成成分としてセルロースを含むバイオマスを含む意味である。セルロース系バイオマスとしては、草本系のバイオマス及び木質系のバイオマスの両方を含む意味である。
草本系バイオマスとは、原料として草本類を主成分とするものを意味する。草本系バイオマスとしては、特に限定されるものではなく、例えば、草本自体、草本の一部、草本の処理物、又は草本由来の生成物等を挙げることができる。より具体的に、草本系バイオマスとしては、稲わら、麦わら、バガス、竹、コーンストーバー、スイッチグラス、芝、籾殻、各種雑草、大豆皮等を挙げることができる。草本系バイオマスは、1種類の草本類からなるものであってもよいし、複数種の草本類からなるものであってもよい。なお、草本系バイオマスとしては、原料である草本類に対して所望の圧力を付加することで所定の形状に成形したペレットを使用しても良い。
また、木質系バイオマスとは、木質系バイオマスは、木質資源であれば特に限定されるものではなく、例えば建設廃木材、廃梱包材、伐採材、おが屑、間伐材、木材チップ、稲わら、樹皮、林地残材、未利用樹、背板などが挙げられる。木質系バイオマスは、1種類の木質資源からなるものであってもよいし、複数種の木質資源からなるものであってもよい。
本発明に係る糖化性能の評価方法は、例えば、図1に示す、セルロース系バイオマスからのエタノール製造フローに適用することができる。すなわち、図1に示すエタノールの製造方法では、先ず、バイオマスを苛性ソーダ水溶液に混合し、撹拌、粉砕等の物理的処理を併用して酵素糖化の前処理を行う。次に、図1に示すエタノールの製造方法では、酸を用いてセルラーゼ及びエタノール生成菌の作用に適したpHに中和した後、固液分離を行う。そして、図1に示すエタノールの製造方法では、回収した固形分に対してセルラーゼ、事前増殖させたエタノール生成菌を同一槽内に仕込み、所定温度、pH下で反応させ糖化と発酵を進める(同時糖化発酵)。図1に示すエタノールの製造方法では、得られたエタノールを含む発酵液を蒸留し、その後脱水することで、最終的に99.5%の高濃度エタノールを製造することができる。本発明に係る糖化性能の評価方法は、上述した同時糖化発酵工程におけるセルラーゼによる糖化反応の反応効率を評価するものである。
<前処理工程>
ここで前処理工程に使用されるアルカリ溶液とは、アルカリ金属やアルカリ土類金属(本発明においては第2族元素と同義)の水酸化物の水溶液を意味する。すなわち、アルカリ溶液に含まれる水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウムを挙げることができる。これらのうち、後段の発酵工程における阻害の影響の観点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムを使用することが好ましい。特に、薬剤コストや水に対する溶解性の観点から水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。
セルロース系バイオマスとして草本系バイオマスを使用する場合、アルカリ水溶液のpHは、9.5〜13.5とすることができ、10〜13とすることが好ましく、11〜12.5とすることがより好ましい。また、アルカリ溶液量に対する草本系バイオマス量(仕込量)は、特に限定されないが、例えば、草本系バイオマスの乾燥重量ベースで5〜20%、望ましくは10〜15%である。
草本系バイオマスをペレット化した場合には、ペレットをアルカリ溶液に投入した後、約1分程度で膨潤し、その後、軽度の撹拌により均一に分散する。これに対して、ペレット化していない草本系バイオマス、例えば、ロール状の草本系バイオマスでは、アルカリ溶液に浸漬し、十分に撹拌することで膨潤させることができる。したがって、草本系バイオマスをペレット化した場合には、アルカリ溶液に対する草本系バイオマスの仕込量を大幅に増加することができ、また、撹拌に要するエネルギーを低減できる。
また、アルカリ処理の温度条件としては、例えば常温以上160℃以下、望ましくは常温以上121℃以下、一例として80℃とすることができる。保持時間は、アルカリ処理の温度や草本系バイオマスの形状により設定することができるが、草本系バイオマスをペレット化した場合にはアルカリ溶液が十分浸透すれば良く、概ね15分から24時間の範囲であり、例えば80℃のアルカリ溶液であれば6時間程度とする。
また、前処理工程では、草本系バイオマスをアルカリ溶液に浸透させた後、硫酸等の酸を添加することで中和する。アルカリ溶液に酸を添加した後のpHは、後述する酵素処理に適したpHとすることが好ましい。なお、酸による中和の前に固液分離処理によって、固体成分を回収し、その後、固体成分を酸性溶液に浸漬して、草本系バイオマスに含浸したアルカリを中和しても良い。
一方、セルロース系バイオマスとして木質系バイオマスを使用する場合、木質系バイオマスに対してアルカリ溶液中でせん断力を付加する方法を採用することが好ましい。木質系バイオマスに対してアルカリ溶液中でせん断力を付加するための手段としては、特に限定されないが、例えば多軸押出機を挙げることができる。多軸押出機とは、複数のスクリューがシリンダー内を回転することで、シリンダー内部(投入口から吐出口(押出口)までの間)にせん断力を発生する装置である。なお、多軸押出機としては、2本のスクリューを有する二軸押出機が代表的に知られているが、3本以上のスクリューを備える装置であっても良い。また、多軸押出機としては、複数のスクリューの軸が平行となるタイプでも良いし、コニカルタイプの複数のスクリュー軸を斜交させたタイプであっても良い。さらに、多軸押出機としては、複数のスクリューにおけるフライトがかみ合い型或いは非かみ合い型のいずれでもよいし、スクリュー回転方向が同方向或いは異方向のいずれでも良い。このとき、原料となる木質系バイオマスとしては、特に限定されないが、例えば2〜15mm程度に粗粉砕された木材チップを使用することができる。なお、ここで粒径とは、平均粒径を意味する。木質系バイオマスの粗粉砕は、特に限定されず、例えばリファイナー、木材粉砕機を用いて行うことができる。粗粉砕の後、例えば磁選機による釘等の金属除去や、比重差による砂分等の除去を実施することが好ましい。
セルロース系バイオマスとして木質系バイオマスを使用する場合、アルカリ水溶液のpHは、9.5〜13.5とすることができ、10〜13とすることが好ましく、pH11〜12.5とすることがより好ましい。なお、二軸押出機を使用する場合、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用することが望ましい。アルカリ溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用する場合には、二軸押出機内部でのスケール発生を抑制することができる。アルカリ溶液の添加量は、例えば乾燥木材重量当たり重量比で2〜30%であり、望ましくは5〜20%である。所定量のアルカリ剤を含む水溶液と乾燥木材との配合比は、溶液容積100に対して木材重量5〜50とすることが好ましい。
なお、木質系バイオマスとアルカリ溶液とは、各々独立して二軸押出機に投入しても良いし、事前に混合した後に二軸押出機に投入しても良い。すなわち、木質系バイオマスに対してアルカリ溶液中でせん断力を付加するとは、木質系バイオマスにせん断力を負荷しながらアルカリ溶液を投入する形態、アルカリ溶液に木質系バイオマスと投入した状態でせん断力を負荷する形態の両方を意味する。
また、前処理工程では、木質系バイオマスに対してアルカリ溶液中でせん断力を付加した後に、液分と固形分に分離することが好ましい。具体的には、二軸押出機等から押し出されたペースト状の木質系バイオマスを水平ベルト等により固液分離と同時に水洗浄する。水洗浄した木質系バイオマスは、その後、含有したアルカリを中和するための中和工程に移行し、硫酸等の酸により所定のpHに調整される。なお、固液分離処理は、本技術分野で公知の任意の方法により行うことができる。なお、固液分離工程によって回収された液分は、排水処理してもよいし、あるいは再利用してもよい。
<糖化工程>
本工程では、上述した前処理工程の後のセルロース系バイオマスに対してセルラーゼ酵素処理を行うことにより、セルロース系バイオマスのセルロースをセルラーゼによりグルコースまで分解する。また、本工程では、セルロース系バイオマスに含まれるヘミセルロースをマンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース等の単糖まで糖化してもよい。使用するセルラーゼは、セルロースを六炭糖まで糖化できるものであれば特に限定されない。また、使用するセルラーゼとしては、好ましくは更にヘミセルロースを六炭糖及び五炭糖まで糖化できるものが好ましい。例えば、セルラーゼは、植物及び動物由来のいずれでもよく、化学修飾されたものであっても、遺伝子組換えにより生成されたものであってもよい。なお、セルラーゼを反応させる温度、時間及び量は、セルラーゼの種類によって異なるが、当業者であれば、使用するセルラーゼの種類に応じて適宜選択することができる。
あるいは、アルカリ処理後に中和したセルロース系バイオマスを原料としてセルラーゼ生成菌を発酵させることにより、バイオマス中のセルロースをセルラーゼにより単糖まで分解し、二次糖液を得ることも可能である。そのようなセルラーゼ生成菌は、当技術分野で公知であり、例えばAspergillus niger、A. foetidus、Alternaria alternata、Chaetomium thermophile、C. globosus、Fusarium solani、Irpex lacteus、Neurospora crassa、Cellulomonas fimi、C. uda、Erwinia chrysanthemi、Pseudomonas fluorescence、Streptmyces flavogriseusなどが挙げられ、例えば「セルロース資源−高度利用のための技術開発とその基礎」、越島哲夫編、(株)学会出版センター、1991年に記載されている。
なお、上述のようにアルカリ処理後のセルロース系バイオマスをセルラーゼ酵素処理する以外に、アルカリ処理後のセルロース系バイオマスを原料としてセルラーゼ生成菌とエタノール発酵菌の同時発酵を行い、エタノールを生成することも可能である。
本工程で生成した単糖は、エタノール生成可能な微生物の発酵原料、ブタノールやその他の化学原料としてのバイオリファイナリーとして利用できる。また、セルロース系バイオマスを糖化して得られたグルコースを更に酵素処理することにより、清涼剤であるD-ソルビトール、甘味料であるD-フルクトース、浸透圧調整剤であるマンニトール、飼料添加剤であるマンノース等、食品や医薬品等の有用物質を製造することもできる。
<エタノールの製造工程>
上述の糖化工程において得られる糖を原料として用いてエタノール発酵を行い、エタノールを製造することができる。上述の糖化工程にて得られた糖成分はセルロース由来の糖及びヘミセルロース由来の糖の両者を含んでいても良い。ヘミセルロース由来の糖としては、キシロース、アラビノースなどの五炭糖と、グルコース、ガラクトース、マンノースなどの六炭糖を挙げることができる。セルロース由来の糖はグルコースの六炭糖である。特に、六炭糖は酵母などによって容易にエタノールに変換することができ、五炭糖は、当技術分野で公知のエタノール生成方法に従ってエタノールに変換することができる。
六炭糖のエタノール発酵は、当技術分野で公知のエタノール製造方法に従って、酵母、又は遺伝子組換えによりエタノール生成に必要な遺伝子を有する細菌を用いて行うことができる。五炭糖のエタノール発酵は、例えば五炭糖及び六炭糖の両方を資化するが、エタノールを生成しない大腸菌に、エタノールを生成する微生物由来の遺伝子を導入した遺伝子組換え大腸菌や、エタノール発酵性のザイモモナス属(Zymomonas)細菌に五炭糖の代謝遺伝子を導入した遺伝子組換え細菌などを用いて行うことができる(例えば、特表平5−502366号公報及び特表平6−504436号公報)。あるいは、五炭糖及び六炭糖をエタノール発酵させてエタノール及び二酸化炭素を回収する方法を利用してもよい(特開2006−111593号公報)。
エタノール発酵の条件は、当業者であれば、原料となる糖の種類、使用するエタノール発酵菌の種類などに応じて、適宜設定することができる。エタノール発酵は、一次糖液及び二次糖液の各々に対して別々に行ってもよいし、あるいは両者を混合して行ってもよい。
<評価工程>
上述した糖化工程における糖化性能は、糖化率の高低によって評価することができる。すなわち、投入したセルロース系バイオマス量に対して糖化工程により得られた単糖量が高ければ(すなわち、効果率が高ければ)、糖化性能に優れた糖化工程であると評価することができる。逆に、投入したセルロース系バイオマス量に対して糖化工程により得られた単糖量が低ければ(すなわち、効果率が低ければ)、糖化性能に劣る糖化工程であると評価することができる。ここで、糖化率は、特に限定されないが、バイオマス中のセルロースやヘミセルロースがセルラーゼの作用によって単糖まで変換される割合として示すことができ、100×(糖化後における溶液中の単糖の総量)/(糖化前におけるバイオマス中の構成される単糖の総量)計算することができる。
上述した前処理工程は、糖化工程における糖化性能を高めるための工程ということができる。すなわち、前処理工程における各種条件、例えばアルカリ溶液のpH、処理時間、処理温度、撹拌条件、せん断力の条件等については、糖化性能を向上するために設定することとなる。
本評価工程では、前処理工程による糖化性能の向上効果を、糖化工程を経ることなく予測的に評価することができる。具体的に、本評価工程では、前処理工程の後のセルロース系バイオマスに含まれる、アルカリ溶液に含まれる水酸化物に由来するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を定量し、アルカリ金属量及び/又はアルカリ土類金属量に基づいて糖化性能を評価する。より具体的に、前処理工程後のセルロース系バイオマスにおける上記アルカリ金属量及び/又はアルカリ土類金属量と糖化率との間に正の相関があるため、上記アルカリ金属量及び/又はアルカリ土類金属量が高ければ糖化性能を向上できると評価し、逆に上記アルカリ金属量及び/又はアルカリ土類金属量が低ければ糖化性能が悪いと評価できる。
ここで、セルロース系バイオマスに含まれる上記アルカリ金属量及び/又はアルカリ土類金属量を測定するには、特に限定されないが、例えば、蛍光X線装置、原子吸光分析装置、誘導結合型プラズマ発光分析装置、イオンクロマトグラフ、X線マイクロアナライザー、微小部蛍光X線分析装置等を使用することができる。
本発明を適用することによって、前処理工程による酵素糖化促進効果を迅速に予測することができ、糖化工程や同時糖化発酵工程を実施する判断に資する情報を提供することができる。これにより、セルロース系バイオマスを原料とした糖製造プラントやエタノール製造プラント等の年間稼働率を向上させ、ひいては排水・廃棄物発生量を抑制することとなり、安定した製造量の確保とコスト削減に効果が期待できる。
従来、前処理工程による糖化性能の向上効果を確認するには、前処理工程後のサンプルの一部を回収し、回収したサンプル(固形分)にセルラーゼを実際に作用させ酵素糖化を進め、所定時間経過後に糖化液を回収しろ過した後、液体クロマトグラフィで糖化液中の単糖類を定量分析する必要があった。この一連の評価手順を進めるには、少なくとも4日程度を要するため、製造プラント規模では特に糖化工程や同時糖化発酵工程に着手する前に性能予測することは困難な状況であった。
ここで、前処理工程による酵素糖化促進効果が低い場合、同時糖化発酵がうまく行かず、高価な薬剤であるセルラーゼ、事前培養したエタノール生成菌が無駄になる。また、プラント立ち上げのためにスラリーの引き抜き、タンク内・配管内清掃及び滅菌等をやり直すことにより、プラント全体の稼働率が低下し、年間のエタノール製造量が低下すると言った問題を引き起こすこととなる。特に、廃棄物系である建設廃木材や剪定材を原料とする場合、バージン木材と比較して品質が一定でないため、上記のような問題が生じる可能性が高い。
本発明に係る評価方法によれば、糖化工程を実施する前に糖化工程における糖化性能を評価できるため、セルラーゼやエタノール生成菌を無駄にすることを回避できる。さらに、本発明に係る評価方法によれば、糖化工程を実施する前に糖化工程における糖化性能を評価できるため、製造プラント全体の稼働率を低下させることなく、優れた生産性を達成することができる。さらに、本発明に係る評価方法によれば、原料として使用するセルロース系バイオマスの種類(例えば、建設廃木材や剪定材といった廃棄物系であるか、バージン木材であるか)に拘わらず予測的に糖化性能を評価できるため、上述のような問題を確実に回避することができる。
一例として、上記前処理工程において水酸化ナトリウム溶液を使用した場合、セルロース系バイオマスに含まれるナトリウム量を測定する。測定したナトリウム量が閾値以上の場合、その後の糖化工程における糖化性能が優れると判断できる。ここで、閾値としては、特に限定されるものではないが、セルロース系バイオマスに含まれるセルロース量と生成したグルコース量とから算出される糖化率と、前処理後のセルロース系バイオマスに含まれるナトリウム量とから相関図を作製し、当該相関図に基づいて目的の糖化率となるナトリウム量を決定して閾値とすることができる。一例としては、前処理後のセルロース系バイオマスに含まれるナトリウム量が2重量%以上であるときには六炭糖の糖化率が50%以上となる。また、前処理後のセルロース系バイオマスに含まれるナトリウム量が11.6重量%以上であるときには六炭糖の糖化率が70%以上となる。したがって、糖化率の目標値を50%とした時にはナトリウム量の閾値を2%とすることができ、糖化率の目標値を70%とした時にはナトリウム量の閾値を11.6%と設定することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例では、先ず、二軸押出機として東芝機械株式会社製TEM-58SS-10(スクリュー径57.2mm、L/D41.4、スクリューとシリンダー間のクリアランス0.4mm)を用い、建設廃木材のアルカリ処理を行った。二軸押出機は、二軸押出機のシリンダー内部には二本のスクリューが内臓されており、スクリューの軸方向に混練や剪断、戻し等の機構を持たせるため、ニーデイングやリバースといったユニットでスクリューを自由に構成することができる。また、軸方向に設置したスクリュー外部のバレルによって反応温度をユニット毎に200℃まで設定可能である。シリンダー内部では2本のスクリューが同一方向に回転することにより,投入原料に剪断力を連続的に与えることができる。
本実施例では、NaOH水溶液に2mmアンダーに事前粉砕した建設廃木材を混合してスラリーとした。これを最大設定温度110℃とした二軸押出機に連続的に導入した。表1に二軸押出機による建設廃木材のアルカリ処理条件を示す。
Figure 0006050090
各実験条件でアルカリ処理した建設廃木材スラリーの一部を蒸留水及び200mMクエン酸緩衝液(pH4.4)にて十分洗浄し,固液分離で固体分を回収した後、以下に示す酵素糖化試験を実施した。
すなわち、アルカリ処理後の固形分を用いてセルラーゼによる酵素糖化を表2に示す条件に基づいて行った。
Figure 0006050090
本実施例で使用したセルラーゼは、ダニスコ社製アクセレラーゼDuetであり、添加量は乾燥固形重量当たり15FPU/g(1FPUとはセルロースから1μmol/minの還元糖を生成に要する酵素量)に統一した。酵素糖化後のスラリーをフィルターろ過し、得られたろ過液中に含まれる各単糖をHPLCで定量することにより、C6糖(グルコース、マンノース及びガラクトース)及びC5糖(キシロース及びアラビノース)量を求めた。
以上のアルカリ処理、酵素糖化で得られた酵素糖化率を表3に示す。その結果、各アルカリ処理条件で得られた酵素糖化率は、C5糖糖化率がいずれも89%以上と高い値を示したが、C6糖糖化率は54〜70%まで変動する結果となった。
Figure 0006050090
本実施例では、表1に示した条件でアルカリ処理したスラリーに含まれるナトリウム量を測定した。具体的には、表1に示した条件でアルカリ処理したスラリーを蒸留水及び200mMクエン酸緩衝液(pH4.4)にて十分洗浄し、固液分離により固体分を回収した。回収した各固体分を電気マッフル炉にて強熱処理(510℃)した。冷却後、固形残物を回収し、サンプルが均一になるようにボールミルで破砕し、Na含量を蛍光X線装置にて算定した。蛍光X線装置には、Rigaku ZSX primusIIを用い表4の条件にて測定を行い、固形残物中のNa含量を算出した。
Figure 0006050090
Na含量を測定した結果と、表3に示したに示したC6糖糖化率との関係を図2に示す。図2に示すように、アルカリ処理後のセルロース系バイオマスに含まれるナトリウム量と六炭糖の糖化率との間には高い正の相関があることがわかった(R2=0.8686)。本実施例の結果から、セルロース系バイオマスをアルカリ処理した後、当該セルロース系バイオマスに含まれる、アルカリ溶液に含まれる水酸化物由来のアルカリ金属量及び/又はアルカリ度類金属量に基づいて、アルカリ処理後の糖化工程における糖化性能を高精度に評価できることが明らかとなった。
本実施例では、アルカリ処理後の固形分は蒸留水及びクエン酸緩衝液で十分洗浄したにも拘わらず、固形分内部までナトリウムが含浸していることがわかった。これは、アルカリ処理によってセルロース系バイオマスの内部に水が浸入しやすい状況が形成されたと考えられる。そして、アルカリ処理後に添加されたセルラーゼも、ナトリウムや水分と同様に固形分内部まで侵入することができ、高い酵素糖化率が得られたと考えられる。

Claims (3)

  1. セルロース系バイオマスを、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物を含むアルカリ溶液に接触させる前処理工程と、上記前処理工程後のセルロース系バイオマスを加水分解酵素により糖化する糖化工程とを含み、
    上記前処理工程の途中又は上記前処理工程の後のセルロース系バイオマスを固液分離した後の固形分に含まれる、上記アルカリ金属及び/又は上記アルカリ土類金属の量を測定し、測定したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の量に基づいて糖化工程における糖化性能を評価する、糖化性能の評価方法。
  2. 上記水酸化物は水酸化ナトリウムであり、上記前処理工程の途中又は上記前処理工程の後のセルロース系バイオマスの上記固形分に含まれるナトリウム量に基づいて糖化性能を評価する請求項1記載の糖化性能の評価方法。
  3. セルロース系バイオマスの上記固形分に含まれる上記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の量を測定する前に、当該セルロース系バイオマスを洗浄することを特徴とする請求項1記載の糖化性能の評価方法。
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