(A)第1の実施形態
以下、本発明による子局通信装置及び電力制御方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。なお、第1の実施形態の子局通信装置は、ONUである。
(A−1)第1の実施形態の構成
図2は、この実施形態の全体構成を示すブロック図である。
光通信ネットワークシステム1には、OLT2及び、n個のONU3(3−1〜3−n)が配置されている。なお、配置されるONU3の数は限定されないものである。
OLT2と各ONU3との間は、光スプリッタ5(複数分岐としても良い)により分岐された光ファイバ4で接続されている。すなわち、OLT2と各ONU3によりPONが形成されている。また、OLT2と各ONU3との間の通信については、10GE−PON(IEEE 802.3av)に準拠した構成が採用されているものとして説明する。
図2では、OLT2は、図示しない上位側ネットワークと接続しており、各ONU3は図示しない下位側ネットワーク(ユーザネットワーク)と接続しているものとする。すなわち、光通信ネットワークシステム1では、OLT2及びONU3により、図示しない下位側ネットワークと、図示しない上位側ネットワークの間のデータ伝送を行っている。
OLT2については、従来の10GE−PONにおけるOLTと同様のものを適用することができるのでここでは、詳しい説明を省略する。
次に、ONU3の内部構成について、図1を用いて説明する。
図1では、ONU3−1〜ONU3−nは全て同じ構成であるものとして示している。
ONU3は、光トランシーバ31、SerDes(Serializer/Deserializer)処理部32、LSI33、電源部34、CPU35、及びUNI(User−Network Interface)36を有している。
光トランシーバ31及びSerDes処理部32は、ONU3において、光ファイバ4(PON側)と接続するためのインタフェースの機能を担っている。
光トランシーバ31は、SerDes処理部32から与えられた電気信号を、光信号に変換して、光ファイバ4(PON側)に送出する。また、光トランシーバ31は、光ファイバ4を介して、OLT2から送出された光信号を受信すると、その光信号を、電気信号に変換して、SerDes処理部32に与える。光トランシーバ31については、既存の10GE−PONにおけるONUと同様のものを適用することができる。
SerDes処理部32は、ONU3の内部で用いられるパラレル信号と、PON上(光ファイバ4上)で用いられるシリアル信号との間の変換を行うものである。SerDes処理部32は、ONU3内のLSI33から与えられたパラレル信号(OLT2へ送信するフレームの電気信号)を、シリアル信号に変換して光トランシーバ31に与える。また、SerDes処理部32は、光トランシーバ31からシリアル信号(OLT2から送出されたフレームの電気信号)が与えられると、その信号をパラレル信号に変換して、LSI33に与える。SerDes処理部32については、既存の10GE−PONにおけるONUと同様のものを適用することができる。
UNI36は、ONU3における下位側ネットワークと接続するインタフェース(物理ポート)であり、下位側ネットワークに属する通信装置(例えば、パソコン、ルータ、ハブ等)と接続している。なお、UNI36に適用するインタフェースの種類は限定されないものであるが、例えば、10GEに対応したインタフェースの物理ポート等を適用することができる。
電源部34は、ONU3内の各構成要素(機能ブロック)に電力供給するものである。電源部34としては、既存の10GE−PONにおけるONUと同様のものを適用することができる。
CPU35は、ONU3の各部の動作を制御するものである。また、CPU35は、当該ONU3を通常動作状態(以下、「アクティブ動作状態」ともいう)、又はアクティブ動作状態よりも省電力で動作させる状態(以下、「スリープ動作状態」ともいう)に移行させる制御(以下、「スリープ制御」ともいう)も行う。CPU35によるスリープ制御の処理の詳細については後述する。
なお、CPU35及びCPU35が実行するプログラムについては、後述するLSI33に係るスリープ制御を行う構成以外は、既存の10GE−PONにおけるONUと同様のものを適用することができる。
LSI33は、ONU3におけるPONに係る通信制御処理等を行うものであり、PON側のインタフェースを構成するSerDes処理部32と、下位側ネットワークのインタフェースであるUNI36との間に配置されている。具体的には、LSI33は、ONU3が転送する上り方向及び下り方向のユーザデータのフレーム、及び、制御用フレーム(MPCP制御に係るフレーム等)の通信制御処理等を行う。
LSI33は、下りPON−PCS処理部33a、下りPON−MAC処理部33b、下りBridge部33c、上りPON−PCS処理部33d、上りPON−MAC処理部33e、上りBridge部33f、MPCP終端部33g、MPCP挿入部33h、上り監視部33i、及びバッファ33jを有している。
下りPON−PCS処理部33a及び上りPON−PCS処理部33dは、ONU3におけるPONのPCS(Physical Coding副層)に係る処理を担っている。
下りPON−PCS処理部33aは、下り方向のフレームについて、データの復号処理やエラービットの訂正等PCSに係る処理を行う。上りPON−PCS処理部33dは、上り方向のフレームのデータについてPCSに係る処理を行う。
なお、下りPON−PCS処理部33a及び上りPON−PCS処理部33dが行うPCSに係る処理自体は、既存の10GE−PONにおけるONUと同様の処理を適用することができる。
下りPON−MAC処理部33b及び上りPON−MAC処理部33eは、ONU3におけるMPCP制御等の、マルチポイントMACコントロール副層に係る処理を担っている。
下りPON−MAC処理部33b及び上りPON−MAC処理部33eは、マルチポイントMACコントロール副層に係る処理として、例えば、MPCPにより、当該ONUのスリープ制御のタイミングや、当該ONU3の上り信号の送信制御等を行う。ONU3におけるMPCP制御は、OLT2との間でのMPCPに係る制御フレーム(以下、「MPCP制御フレーム」という)をやりとりすることにより行われる。
なお、下りPON−MAC処理部33b及び上りPON−MAC処理部33eが行う、マルチポイントMACコントロール副層に係る処理自体は、既存の10GE−PONにおけるONUと同様の処理を適用することができる。
下りPON−MAC処理部33b及び上りPON−MAC処理部33eにより送受信されるMPCP制御フレーム(例えば、スリープ制御のためのフレーム)の具体的なフォーマットしては、非特許文献1(IEEE802.3av、Annex31C)に記載された拡張MACコントロールフレームを使用することができる。
図3は、下りPON−MAC処理部33b及び上りPON−MAC処理部33eにより送受信されるMPCP制御フレーム(スリープ制御にも利用されるフレーム)の様式例について示した説明図である。図3では、拡張MACコントロールフレーム(extension MAC control)のフレーム構成について示している。
LSI33内で、CPU35は、MPCP終端部33gを介して下りPON−MAC処理部33bが受信するMPCP制御フレームの内容を監視し把握している。また、CPU35は、MPCP挿入部33hを介して上りPON−MAC処理部33eと接続しており、MPCP挿入部33hを経由して、OLT2へのMPCP制御フレームの送信指示を行う。
上りBridge部33f及び下りBridge部33cは、当該ONU3が送受信するフレームのEthernetに係る通信制御を行うものであり、例えば、フレーム転送の為のバッファや、VLAN識別の為のVLAN−Tag付与削除、アドレス(MACアドレス、IPアドレス等)学習、優先処理等を行うものである。
上りBridge部33fは、UNI36から与えられる上り方向のフレームについて、Ethernetに係る通信制御を行い、そのフレームを、上りPON−MAC処理部33eに引き渡す。また、下りBridge部33cは、下りPON−MAC処理部33bから与えられた下り方向のフレームについて、Ethernetに係る通信制御を行い、そのフレームをUNI36に引き渡す。
なお、上りBridge部33f及び下りBridge部33cが行うEthernetに係る処理については、既存の10GE−PONにおけるONUとほぼ同様の処理を適用することができる。ただし、上りBridge部33fは、CPU35の制御に応じて、保持した上り方向のフレームを、上りPON−MAC処理部33eに与えずに、一旦バッファjに保持させる場合がある。
バッファjは、上りBridge部33fから、上り方向のフレームのデータが与えられた場合には、そのデータを保持するバッファ手段である。バッファjは、CPU35の制御に従って、保持したフレームのデータを、上りBridge部33fに引き渡す。
上り監視部33iは、CPU35の制御に応じて、当該ONU3における上り方向のフレーム受信(図示しない下位側ネットワークからのフレーム受信)を監視するものである。ここでは、上り監視部33iは、LSI33内部のUNI36を監視して、上り方向のフレーム受信を検出し、その検出結果をCPU35に供給するものとするが、上り方向のフレーム受信を検知する方式は、これに限定されないものである。
次に、ONU3におけるスリープ制御(省電力制御)の構成について説明する。
CPU35は、OLT2からのMPCPによる指示等に応じて、当該ONU3をアクティブ動作状態(通常動作状態)又は、スリープ動作状態(省電力状態)に制御する。
CPU35は、当該ONU3をアクティブ動作状態からスリープ動作状態に移行させる制御を行う際に、少なくとも、LSI33内で、スリープ制御対象(省電力制御対象)となっている構成要素について、より省電力で動作するスリープ動作状態に移行させる制御を行う。図1では、破線で囲われた範囲の構成要素がスリープ制御対象の構成要素であるものとして図示している。すなわち、ここでは、スリープ制御対象の構成要素としては、下りPON−PCS処理部33a、下りPON−MAC処理部33b、下りBridge部33c、上りPON−PCS処理部33d、上りPON−MAC処理部33e、MPCP終端部33g、及びMPCP挿入部33hが対象となっているものとする。言い換えると、LSI33では、上り方向のフレームをバッファリングするための構成要素(上りBridge部33f、上り監視部33i、バッファ33j)を除いた構成要素が、スリープ制御対象の構成要素となっている。
具体的には、CPU35は、LSI33内のスリープ制御対象の各構成要素について、リセット状態を継続させることにより、スリープ制御対象の各構成要素を、通常動作よりも省電力で動作するスリープ動作状態とする。
次に、CPU35が、LSI33内のスリープ制御対象の各構成要素をリセットする具体的構成の例について説明する。
LSI33では、スリープ制御対象の各構成要素についてリセットするためのリセット端子(信号線)が設けられており、それらのリセット端子が、CPU35に接続されている。すなわち、CPU35が上述のリセット端子を介して、スリープ制御対象の構成要素をリセット状態にさせる制御ができるようになされている。
スリープ制御対象の各構成要素は、CPU35からリセット状態に制御するための信号(以下、「リセット信号」という)が供給されると、リセット状態(動作が停止した状態)となり、通常動作中の場合よりも省電力な状態となる。
そして、スリープ制御対象の各構成要素のそれぞれでは、リセット状態となっている間に、CPU35からそのリセット状態を解除させる信号(以下、「リセット解除信号」という)が供給されると、リセット状態から通常動作状態に復帰する。なお、LSI33内で、スリープ制御対象の各構成要素についてリセット状態を継続させる構成については、上述の例に限定されず、既存の半導体装置を構成する回路の一部をリセットする構成を適用することができる。
なお、ここでは、スリープ制御対象の各構成要素について、個別にリセットする構成について説明しているが、スリープ制御対象の各構成要素についてリセットするための回路を別途設け(LSI33の内部でも良いし外部でも良い)、一括して制御するようにしても良い。
CPU35は、スリープ制御対象の各構成要素について、スリープ動作状態(リセット状態)に移行させる場合には、スリープ制御対象の各構成要素が保持しているデータの一部(少なくとも、各構成要素の動作に不可欠なデータを含む)又は全部のデータ(以下、「動作状態データ」という)について読み込みを行う。そして、CPU35は、各構成要素から読み込んだ動作状態データを、所定の記憶手段(例えば、CPU35がプログラムを実行する際に用いるメモリ等)に記憶させる。なお、スリープ制御対象の構成要素でも、リセット前に保持しておくべきデータがないものについては、CPU35で動作状態データを保持する必要がないのは当然である。
そして、CPU35は、スリープ制御対象の各構成要素について、スリープ動作状態(リセット状態)からアクティブ動作状態(リセットが解除された状態)に移行させる場合には、少なくとも、リセット状態とする前に保持した動作状態データを、各構成要素に与えて読み込ませる。以上のように、CPU35は、スリープ制御対象の各構成要素がスリープ動作状態からアクティブ動作状態に復帰させる。
ここでは、CPU35が、LSI33の各構成要素から動作状態データを読み込む処理や、動作状態データを読み込ませる処理については、上述のリセット制御するための信号線を用いて行うものとするが、CPU35とLSI33との間の動作状態データをやりとりする方式はこれに限定されず種々の方式を用いることができる。例えば、別途データ伝送用の端子(バス)をLSI33及びCPU35に設けるようにしても良い。
動作状態データの詳細については、スリープ制御対象の各構成要素がアクティブ動作状態に復帰した後の動作に、最低限必要なデータを含めればよく、例えば、既存のPONに搭載されたLSIにおいて動作に必要なデータを適用すれば良い。上述の通り、ここでは、ONU3は、IEEE802.3avに対応しているため、例えば、以下に示す項目のデータを、動作状態データに含める必要がある。
例えば、上りPON−MAC処理部33eにより保持されるデータとしては、非特許文献1に記載されているMPCP制御に係る情報(MPCP制御フレームに係るパラメータ)が挙げられる。上りPON−MAC処理部33eにより保持されるMPCP制御に係る情報としては、例えば、非特許文献1の「77.4.2 ONU speed-specific registration」の項で定義されているDiscovery information(以下、「Discovery情報」という)、非特許文献1の「77.3.6.3 REGISTER_REQ description」の項で定義される情報(以下、「Register request情報」という)、非特許文献1の「77.3.6.4 REGISTER description」の項で定義される情報(以下、「Register情報」という)等が挙げられる。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態の光通信ネットワークシステム1におけるOLT2及びONU3の動作(実施形態の電力制御方法)を説明する。
ここでは、まず、ONU3及びOLT2の処理の概要について説明する。
ONU3では、OLT2から、スリープ動作状態としても良い旨のMPCP制御フレーム(Request信号のMPCP制御フレーム;以下「Requestフレーム」ともいう)が与えられると、当該ONU3をスリープ動作状態に移行させる処理を開始する。なお、上述のRequestフレームに限らず、ONU3と、OLT2との間で行われるMPCP制御フレームの内容自体は、既存の10GE−PON(非特許文献1)と同様の形式のものを適用することができる。
ONU3では、OLT2から、Requestフレームが与えられると、下りPON−MAC処理部33bで認識され、さらに、CPU35で、このMPCP制御フレームに挿入された制御パラメータ(Discovery情報、Register request情報、Register情報等)が抽出される。
ONU3はOLT2からの、Requestフレームで通知されたスリープ時間(Sleep_Time;以下、「割当スリープ時間」という)に従い、スリープ動作状態に移行する。
そして、CPU35は、スリープ制御対象の各構成要素から動作状態データを取得した後、リセット信号をLSI33のスリープ制御対象の各象構成要素に送出してリセット状態にさせる。
CPU35では、割当スリープ時間の経過(リセット状態を開始してからの経過時間)を、スリープ用タイマ35aによりカウントしている。そして、CPU35は、スリープ用タイマ35aがタイムアウト(割当スリープ時間が経過)すると、リセット状態となっているスリープ制御対象の各構成要素へ、リセット解除信号を送出する。そして、リセット解除信号を受信したスリープ制御対象の各構成要素は、リセット状態を解除する。
ここでは、スリープ制御対象の各構成要素へ、リセット解除信号と共に、リセット前に保持した動作状態データを与えるものとするが、リセット解除信号によりスリープ制御対象の各構成要素を再起動した後に動作状態データを与えるようにしても良い。
そして、CPU35は、スリープ制御対象の各構成要素の再起動後に、OLT2に自装置宛のデータ(下り方向のフレームのデータ)がないかを問い合わせるためのMPCP制御フレーム(Confirmation信号のMPCP制御フレーム;以下「Confirmationフレーム」ともいう)を、上りPON−MAC処理部33eに送出させる。そして、OLT2は、Confirmationフレームを受け取ると、自装置内で当該ONU3宛のデータ(下り方向のフレームのデータ)がバッファされているか否かを確認する。そして、OLT2は、当該ONU3宛のデータがバッファされている場合には、そのデータのフレームを、当該ONU3に送信する。一方、OLT2は、当該ONU3宛のデータがバッファされていない場合には、再度Requestフレームを、当該ONU3に対し送出する。そして、Requestフレームを受信したONU3は、上述と同様に、通知された割当スリープ時間に従って、再度スリープ動作状態に移行する。
そして、ONU3では、スリープ動作状態の間に、下位側ネットワークから、上り方向のフレームを受信した場合(上りBridge部33fが上り方向のフレームを受信した場合)には、そのフレームをバッファ33jに与えて蓄積させる。
そして、ONU3では、次にスリープ動作状態からアクティブ動作状態に復帰した後(割当スリープ時間が経過した後)に、OLT2へ、送信待ちの上り方向のフレームが存在する旨の情報(Discovery情報、Register request情報、Register情報等)を通知するMPCP制御フレーム(Report信号のMPCP制御フレーム;以下「Reportフレーム」ともいう)を送信する。
そして、OLT2は、ONU3からの通知(Reportフレーム)に対する応答として、上り方向のフレーム送信を許可するMPCP制御フレーム(Grant信号(GATE_UP)のMPCP制御フレーム;以下「Grantフレーム」ともいう)を返答する。そして、ONU3は、OLT2の制御に従ったタイミングで、バッファ33jに蓄積されたフレームを、OLT2に向けて送出する。なお、ここでは詳細についての説明を省略しているが、ONU3がOLT2へフレーム送信するタイミングは、OLT2からのMPCPにより制御されたタイミングであるものとする。
次に、ONU3がスリープ動作状態の間に、上り方向のフレーム(トラフィックデータ)が発生しない場合と発生した場合の詳細な動作について説明する。以下では、ONU3−1とOLT2との間の処理について説明するが、他のONU3においても同様の動作が行われるため、説明を省略する。
まず、ONU3−1がスリープ動作状態の間に、上り方向のフレームが発生しなかった場合の動作について、図4のシーケンス図を用いて説明する。
まず、ONU3−1がアクティブ動作状態であり、ONU3−1からOLT2へ、下り方向のフレーム(ユーザデータが挿入されたフレーム)が送信されているものとする(S101)。
そして、OLT2では、ONU3−1へ送信するデータが無くなると、割当スリープ時間Tsの間、スリープ動作状態としても良い旨のRequestフレームを、ONU3−1に通知する(S102)。
次に、ONU3−1は、スリープ動作状態となることを確認応答するMPCP制御フレーム(ACK信号)を、OLT2に送信し(S103)、その後、ONU3−1は、割当スリープ時間Tsの間スリープ動作状態となる。
そして、ONU3−1は、割当スリープ時間Tsの経過後にスリープ動作状態が解除されると、OLT2に、Confirmationフレームを送信し、OLT2に自装置宛のデータ(下り方向のフレームのデータ)がないかを問い合わせる(S104)。
そして、OLT2は、ONU3−1からConfirmationフレームを受信すると、自装置内でONU3−1宛のデータがバッファされているか否かを確認する。ここでは、OLT2においてONU3−1宛のデータはバッファされていない(データ無し)と判断し、再び、割当スリープ時間Tsの間、スリープ動作状態としても良い旨のRequestフレームをONU3−1に通知する(S105)。
次に、ONU3−1は、スリープ動作状態となることを確認応答するMPCP制御フレーム(ACK信号)を、OLTに送信し(S106)、その後、ONU3−1は、割当スリープ時間Tsの間スリープ動作状態となる。
そして、ONU3−1は、割当スリープ時間Tsの時間経過後に、スリープ動作状態から復帰すると、OLT2に、Confirmationフレームを送信し、OLT2に自装置宛のデータがないかを問い合わせる(S107)。
そして、OLT2は、ONU3−1からConfirmationフレームを受信すると、自装置内で当該ONU3−1宛のデータがバッファされているか否かを確認する。今度は、OLT2においてONU3−1宛のデータはバッファされている(データ有り)と判断され、スリープ動作状態を中止する旨(行わない旨)を通知するためのRequestフレーム(割当スリープ時間を「0」とするRequest信号)をONU3−1に送信する(S108)。
次に、ONU3−1は、確認応答のMPCP制御フレーム(ACK信号)を、OLTに送信し(S109)、その後、ONU3−1は、OLT2からのフレーム受信のためにアクティブ動作状態で待機する。
そして、OLT2からONU3−1へ、バッファされているデータのフレームを送信する(S110)。その後の、OLT2とONU3−1との間の動作は、上述のステップS101からの動作と同様である。
次に、ONU3−1がスリープ動作状態の間に、上り方向のトラフィックデータが発生した場合の動作について、図5のシーケンス図を用いて説明する。
まず、OLT2及びONU3−1では、上述のステップS101〜ステップS106と同様の動作(S201〜S206)が行われ、その後、ONU3−1が、スリープ動作状態となったものとする。
そして、ONU3−1は、割当スリープ時間Tsの間、スリープ動作状態を継続する。そして、ここでは、このスリープ動作状態の間に、ONU3−1で、図示しない下位側ネットワークから上り方向のフレームを受信したものとする。上述の通り、ONU3−1では、スリープ動作状態の間に上りBridge部33fがこの上り方向のフレームを受信した場合、このフレームのデータは、一旦バッファ33jに蓄積される。
そして、ONU3−1は、割当スリープ時間Tsの経過後に、スリープ動作状態が解除され、アクティブ動作状態に復帰すると、OLT2に、上り方向のフレームが発生した旨を通知するReportフレームを送信する(S207)。
そして、OLT2からONU3−1へ、上り方向のフレーム送出を許可する旨のGrantフレーム(GATE_UP)が送信される(S208)。
次に、ONU3−1により、OLT2からの制御に応じたタイミングで、バッファ33jに蓄積された上り方向のフレームの送信が行われる(S209)。
次に、ONU3内部の処理のさらに詳細について説明する。
図6は、上述の図4、図5で示したシーケンス図で示した処理について、ONU3内の処理をさらに詳細化したものである。
まず、OLT2からONU3−1へ割当スリープ時間Tsの間、スリープ動作状態としても良い旨のRequestフレームが送信され(S301)、ONU3−1の下りPON−MAC処理部33bにおいて検出(S302)されたものとする。
そして、CPU35は、スリープ制御対象の各構成要素から動作状態データを収集して保持する(S303)。
次に、CPU35は、保持した動作状態データを、その動作状態データを所定の記憶手段(メモリ等)により記憶し(S304)、スリープ制御対象の各構成要素へ、リセット信号を供給して、スリープ制御対象の各構成要素をリセット状態に制御し(S305)、割当スリープ時間Tsの間そのリセット状態を継続させる。
CPU35は、割当スリープ時間Tsの間、上り監視部33iを制御して、上り方向のフレーム受信の監視(UNI36に対する監視)をさせる(S306)。そして、上り監視部33iにより、上り方向のフレーム受信が検出されると(S307)、その上り方向のフレームが、上りBridge部33fからバッファ33j与えられて蓄積される(S308)。
そして、CPU35は、割当スリープ時間Tsが経過すると(S309)、スリープ制御対象の各構成要素へ、リセット解除信号と、上述のステップS303で取得した動作状態データを供給して、スリープ制御対象の各構成要素のリセット状態を解除させる制御を行う(S310)。
そして、CPU35は、バッファ33jに上り方向のフレームが1つ以上蓄積されているか否かを判定し(S311)、蓄積されていると判定された場合には、後述するステップS316から動作し、そうでない場合には、後述するステップS312の処理から動作する。
上述のステップS311において、バッファ33jに上り方向のフレームが蓄積されていないと判定された場合には、CPU35は、上りPON−PCS処理部33dに指示して、OLT2に自装置宛のデータがないかを問い合わせるためのConfirmationフレームを送信させる(S312)。
そして、Confirmationフレームを受信したOLT2では、ONU3−1宛のデータが蓄積されているか否かが確認され、蓄積されていないと判定された場合には、上述のステップS301の処理から動作し、蓄積されている場合には、後述するステップS314の処理から動作する。
上述のステップS313において、OLT2でONU3−1宛のデータが蓄積されていると確認された場合には、OLT2からONU3−1へ、そのデータのフレームが送信され(S314)、ONU3−1により受信される(S315)。そして、OLT2は、上述のステップS301の処理から動作し、ONU3−1は上述のステップS302の処理から動作する。
一方、上述のステップS313において、OLT2でONU3−1宛のデータが蓄積されていないと判断された場合には、OLT2は上述のステップS301の処理から動作する。また、フローチャートにおいて図示は省略しているが、この場合、ONU3−1も上述のステップS302の処理から動作する。
そして、上述のステップS311において、バッファ33jに上り方向のデータが蓄積されていると判定された場合には、CPU35は、上りPON−MAC処理部33eに指示して、OLT2へ、送信待ちの上り方向のデータが存在する旨の情報を通知するReportフレームを送信させる(S316)。
そして、Reportフレームを受信したOLT2は、ONU3−1へ、上り方向のフレーム送信を許可するGrantフレームを送信する(S317)。
そして、ONU3−1では、下りPON−MAC処理部33bでGrantフレームが受信され、そのGrantフレームがCPU35により取得される。そしてCPU35は、上りPON−MAC処理部33eに指示して、バッファ33jに蓄積された上り方向のフレームを送信させ(S318、S319)、OLT2により受信(上位ネットワークへ転送)される(S320)。
その後、ONU3−1はステップS319のデータ送信が終了すると、上述のステップS302の処理から動作するものとする。なお、ここで、ONU3−1を、上述のステップS312から動作させて、OLT2からの下り方向のデータがあればそのデータのフレームを受信させるようにしても良い。また、OLT2は、上述のステップS320のデータ受信処理が終了すると、上述のステップS301の処理から動作するものとする。
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
ONU3では、LSI33で、上り方向のフレームを保持する構成(上りBridge部33f、上り監視部33i、バッファ33j)以外のスリープ制御対象の構成要素についてリセット状態にすることにより、LSI33をスリープ動作状態(省電力動作状態)で動作するようにしている。これにより、ONU3では、LSI33の消費電力を低減させている。
従来技術では、LSIへの電源供給自体を制御することによりスリープ動作状態としていたため、スリープ動作状態からアクティブ動作状態に復帰させる際の構成(電源立ち上げのシーケンス等)が複雑であった。一方、第1の実施形態のONU3では、上述のように、スリープ制御対象の構成要素についてリセット状態にすることにより、LSI33をスリープ動作状態としているため、LSI33をスリープ動作状態から復帰させる際には、スリープ制御対象の構成要素のリセット状態を解除させ、動作状態データを供給するだけで良く、容易にスリープ動作状態からアクティブ動作状態への復帰を高速化することができる。
また、第1の実施形態では、スリープ動作状態でも上り方向のフレームを保持する構成(上りBridge部33f、上り監視部33i、バッファ33j)については、スリープ制御対象から除外している。これにより、ONU3では、スリープ動作状態で上り方向のフレームが発生しても、アクティブ動作状態への復帰後に送信することができるため、通信品質を保つことができる。
(B)第2の実施形態
以下、本発明による子局通信装置及び電力制御方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。なお、第2の実施形態の子局通信装置は、ONUである。
第2の実施形態の光通信ネットワークシステム1Aも、上述の図2により説明することができる。なお、図2において、括弧内の符号は、第2の実施形態においてのみ用いられる符号である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との差異を説明する。
光通信ネットワークシステム1Aでは、各ONU3が、ONU3Aに置き換えられている点で、第1の実施形態と異なっている。
次に、ONU3Aの構成について説明する。
図7は、ONU3Aの機能的構成について示したブロック図である。
ONU3Aでは、LSI33がLSI33Aに置き換えられている点で、第1の実施形態と異なっている。また、LSI33Aは、設定保持用レジスタ33kが追加されている点で、第1の実施形態と異なっている。
第1の実施形態では、CPU35が、スリープ制御対象の各構成要素をリセットする前に、各構成要素から動作状態データを収集して保持し、リセット解除時(アクティブ動作状態に復帰時)に、保持した動作状態データを、各構成要素に供給して読み込ませる処理を行っていた。
これに対して、第2の実施形態では、スリープ制御対象の各構成要素は、CPU35からリセット信号が供給されると、それぞれ設定保持用レジスタ33kに動作状態データを格納してから、リセット状態となる。そして、スリープ制御対象の各構成要素は、リセット解除信号がCPU35から供給されると、それぞれ設定保持用レジスタ33kに格納された動作状態データを読み込んで自身に登録し、リセット状態から復帰する。
設定保持用レジスタ33kは、LSI33A上で動作状態データを記憶する記憶手段(メモリ)であり、その構成は限定されないものである。また、設定保持用レジスタ33kは、ここでは、スリープ制御対象の構成要素となっているので、リセット状態となっても記憶している内容が揮発しないメモリ(不揮発メモリ)を適用することが望ましい。なお、図7では、設定保持用レジスタ33kは、スリープ制御対象の構成要素として図示しているが、除外するようにしても良い。
これにより、第2の実施形態のONU3Aでは、スリープ制御対象の各構成要素をリセット状態にする処理又はリセット状態を解除する処理を行う際に、CPU35がスリープ制御対象の各構成要素から動作状態データを読み込む処理や供給する処理を行わず、LSI33A内の処理だけで良いため、高速処理を行うことが容易となる。
(C)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
(C−1)上記の各実施形態では、ONU及び光通信ネットワークシステムは、10GE−PON(802.3av)に準拠した構成であるものとして説明したが、その他のPONの規格や形式を採用したものに置き換えるようにしても良い。
(C−2)上記の各実施形態では、ONU上で、PONに係る通信制御手段は、一つのLSI(半導体装置)を用いた回路(通信制御回路)で構成されているが、複数のLSI(半導体装置)やその他の素子(例えば、抵抗やコンデンサ等)等を組み合わせた回路(通信制御回路)で構成するようにしても良い。なお、その場合でも、上述のLSIの機能的構成は、図1又は図7のように示すことができる。
(C−3)上記の各実施形態では、ONUに搭載されたPONに係る通信制御を行うLSIのスリープ制御(省電力制御)について説明したが、同時にLSI以外の構成要素(例えば、光トランシーバ、SerDes処理部等)もスリープ動作状態(省電力動作状態)としても良い。
(C−4)上記の各実施形態では、LSIにおいて、上り方向のフレームを保持する構成(上りBridge部、上り監視部、バッファ)以外の構成要素をスリープ制御対象としているが、上記の各実施形態でスリープ制御対象となっている構成要素の一部を除外するようにしても良い。すなわち、LSIにおいて、上り方向のフレームを保持する構成(上りBridge部、上り監視部、バッファ)以外について、スリープ制御対象とする構成要素の組み合わせは限定されないものである。
例えば、上記の各実施形態でスリープ制御対象となっている構成要素のうち、動作状態データを取得する必要のあるものをスリープ制御対象から除外するようにしても良い。これにより、スリープ制御対象をリセット状態にする際、又はリセットを解除する際に、動作状態データに関する処理をする必要がなくなるので、ONUにおいてより高速にスリープ制御を行うことができる。
(C−5)上記の各実施形態において、上りBridge部とバッファは、別の構成要素として記載しているが、上りBridge部の内部に搭載するようにしても良い。
(C−6)上記の各実施形態では、ONUはOLTからの指示(Requestフレーム)に従ってスリープ動作状態なる例について説明しているが、ONUが自発的にOLTへスリープ動作状態となることを要求するようにしても良い。