以下、本発明の実施の形態による気体圧縮装置としてタンクに対して個別に圧縮空気を供給する4台の圧縮機を用いて構成した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1において、空気圧縮装置1は、4台の圧縮機2A〜2Dによって構成されている。ここで、圧縮機2Aは、電動モータ3Aと、該電動モータ3Aによって駆動される圧縮機本体4Aと、該圧縮機本体4Aから吐出された圧縮空気を一時的に貯留する一時貯留タンク5Aとによって構成されている。また、他の圧縮機2B〜2Dも、圧縮機2Aと同様に、電動モータ3B〜3D、圧縮機本体4B〜4D、一時貯留タンク5B〜5Dによってそれぞれ構成されている。そして、圧縮機2A〜2Dは、例えば全て同じ吐出容量Fa〜Fd(例えばFa〜Fd=605(NL/min))を有している。
また、各一時貯留タンク5A〜5Dには、内部の圧力を検出する圧力センサ6A〜6Dが取付けられている。さらに、各圧縮機2A〜2Dには、電動モータ3A〜3Dの運転、停止を制御する制御回路7A〜7Dがそれぞれ設けられている。そして、制御回路7A〜7Dは、例えば有線通信または無線通信を行なう各種の通信機能をそれぞれ有し、該通信機能を通じて相互に通信を行っている。
また、制御回路7A〜7D間には、通信によって機種情報、稼動情報、異常情報、環境設定情報の4種類の情報が相互に伝送されている。これにより、制御回路7A〜7Dは、これら4種類の情報を共有している。
このとき、機種情報は、電動モータ3A〜3Dの容量(kW)、圧縮機本体4A〜4Dの吐出流量(NL/min)、一時貯留タンク5A〜5Dの容量(L)、初期の一時貯留タンク5A〜5Dを充填するための一時貯留タンク充填時間(sec)等である。
また、稼動情報は、各圧縮機2A〜2Dの一般的な稼動時間(min)、ON/OFF回数(回)、後述するタンク容量Vall(L)およびその平均値Ave(Vall)(L)、圧力増加時間ton(sec)、圧力減少時間toff(sec)、空気消費量No(L)およびその平均値Ave(No)(L)等である。また、異常情報は、サーマルトリップエラー、ドライヤエラー等の圧縮機2A〜2Dの運転に支障を来す情報である。
さらに、環境設定情報は、後述するタンク容量Vallの初期値Vall(0)(L)、台数制御対象となる圧縮機2A〜2Dの台数(台)、マスターとスレーブとを切替えるまでのマスター切替時間(min)、タンク8内の圧力Pの下限値Pmin(MPa)と上限値Pmax(MPa)である。そして、環境設定情報は、例えば設置作業者等が圧縮機2A〜2Dを設置するときに、専用の入力端末(図示せず)を制御回路7A〜7Dに接続して入力する。このとき、環境設定情報には、通信用の各圧縮機2A〜2DのID(識別番号)、マスター/スレーブの設定等の情報も含まれる。
そして、制御回路7A〜7Dは、分散方式による制御方式が採用され、いずれか1台をマスター(主機)、残余の3台をスレーブ(従機)として圧縮機2A〜2Dの運転、停止を制御する。これにより、制御回路7A〜7Dは、制御手段を構成し、後述するように、タンク8の圧力Pおよび圧力変化値ΔPと、制御回路7A〜7Dによって算出された空気消費量No、タンク容量Vall(L)の平均値Ave(Vall)に応じて圧縮機2A〜2Dの運転台数を増減させる台数制御処理を行っている。
タンク8は、一時貯留タンク5A〜5Dから吐出された圧縮空気を収集して貯留する。該タンク8は、吐出配管9A〜9Dを通じて一時貯留タンク5A〜5Dに接続されると共に、各吐出配管9A〜9Dの途中には逆止弁10A〜10Dが設けられている。そして、タンク8には、取出し弁12を備えた出力配管11が取付けられている。これにより、タンク8は、出力配管11を介して外部の空圧機器(図示せず)に接続されると共に、取出し弁12を開弁することによって該空圧機器に向けて圧縮空気を供給するものである。
圧力センサ13は、タンク8に接続された圧力検出手段を構成している。該圧力センサ13は、タンク8内の圧縮空気の圧力Pを検出し、圧力Pに応じた圧力信号を出力する。
温度センサ14は、タンク8に接続された温度検出手段を構成している。該温度センサ14は、タンク8内の圧縮空気の温度Tを検出し、温度Tに応じた温度信号を出力する。
そして、圧力センサ13と温度センサ14とは、圧縮機2A〜2Dの制御回路7A〜7Dにそれぞれ接続されている。これにより、いずれの制御回路7A〜7Dでも、タンク8内の圧力Pと温度Tを検知することができる構成となっている。
なお、圧力センサ13と温度センサ14とは、全ての制御回路7A〜7Dにそれぞれ接続する構成に限らず、例えば制御回路7Aにのみ接続する構成としてもよい。この場合、例えば制御回路7A〜7Dをループ接続することによって、残余の制御回路7B〜7Dに対しても圧力信号、温度信号が出力されるものである。
本実施の形態による空気圧縮装置1は上述の如き構成を有するもので、次に、図1および図2を参照しつつ、タンク8の圧力P等に応じて圧縮機2A〜2Dの運転台数を増加または減少させる台数制御処理について説明する。
なお、図2に示す台数制御処理は、予め決められたサンプリング周期Δt(例えばΔt=100msec)毎に行うものである。
まず、ステップ1では、圧力センサ13からの圧力信号を用いて、一定のサンプリング周期Δtで現在のタンク8の圧力P(t)を計測する。そして、ステップ2では、温度センサ14からの温度信号を用いて、一定のサンプリング周期Δtで現在のタンク8内の圧縮空気の温度Tを計測する。
次に、ステップ3では、以下の数1の式に示すように、現在の圧力P(t)と前回の圧力P(t-1)との差を演算し、圧力変化値ΔPを求める。
次に、ステップ4では、圧力変化値ΔP、温度T、サンプリング周期Δt、タンク容量Vallの平均値Ave(Vall)、圧縮空気の供給量F、気体定数R等を用いて状態方程式に基づく所定の演算処理を行なうことによって、圧縮空気の消費量Nを算出する。このとき、タンク容量Vallは、タンク8および一時貯留タンク5A〜5Dの全ての容量を加えると共に、空気消費量Noの平均値Ave(No)による容量も加えた等価的な全容量である。また、平均値Ave(Vall)は、後述するようにタンク容量Vallの演算回数での相加平均をとったものである。そして、タンク容量Vallの平均値Ave(Vall)は、図4に示すタンク容量および空気消費量の演算処理によって算出される。また、圧縮空気の供給量Fは、圧縮機2A〜2Dのうち運転中の圧縮機による吐出容量Fa〜Fdを加えた値である。
次に、ステップ5では、圧縮機2A〜2Dのうち少なくとも1台の圧縮機が運転中か否かを判定する。ステップ5で「YES」と判定したときには、タンク8内に圧縮空気を供給している途中であるから、ステップ6でタンク8の圧力Pが上限値Pmax以上(P≧Pmax)になっているか否かを判定する。なお、ステップ6においては、後述の図3に示される上限値の変更処理により定められる上限値Pmaxを読込み、圧力Pの判定を行う。
そして、ステップ6で「YES」と判定したときには、圧力Pが上限値Pmax以上になっているから、ステップ7に移って全ての圧縮機2A〜2Dの運転を停止し、ステップ10でリターンする。
一方、ステップ6で「NO」と判定したときには、圧力Pが上限値Pmaxに到達していない。このため、ステップ9に移って、圧縮空気の消費量Nに応じた圧縮機2A〜2Dの最適な運転台数を求める。具体的には、圧縮機2A〜2Dの最適な運転台数は、電力消費量を低減するために、圧縮空気の供給量Fが消費量Nを上回る範囲でできるだけ少ない台数に設定される。そして、制御回路7A〜7Dは、この運転台数に応じた圧縮機2A〜2Dを駆動する。その後、ステップ10に移ってリターンする。
また、ステップ5で「NO」と判定したときには、例えば圧力Pが上限値Pmaxに到達した後のように全ての圧縮機2A〜2Dが停止しているから、ステップ8でタンク8の圧力Pが下限値Pminよりも低下(P<Pmin)しているか否かを判定する。
そして、ステップ8で「YES」と判定したときには、ステップ9に移って圧縮空気の消費量Nに応じた圧縮機2A〜2Dの最適な運転台数を求めて、この運転台数に応じた圧縮機2A〜2Dを駆動する。その後、ステップ10に移ってリターンする。
一方、ステップ8で「NO」と判定したときには、タンク8の圧力Pは下限値Pminよりも高く、タンク8内には外部に供給可能な圧縮空気が残存している。このため、全ての圧縮機2A〜2Dを停止した状態に保持し、ステップ10に移ってリターンする。
次に、図3を参照しつつ、台数制御処理で用いた上限値Pmaxを変更する上限値の変更処理について説明する。なお、図3中の上限値の変更処理は、例えば一定時間毎(数時間毎)またはタンクの増設等を行なう使用者の操作によって台数制御処理の途中で割込み処理されるものである。そして、上限値Pmaxが変更されると、その結果が台数制御処理に反映される構成となっている。
まず、ステップ11では、空気圧縮装置1の運転を開始しているか否かを判定する。そして、ステップ11で「NO」と判定したときには、そのままの状態で待機する。一方、ステップ11で「YES」と判定したときには、ステップ12に移って後述の図4に示すタンク容量および空気消費量の演算処理を行なう。
次に、ステップ13では、ステップ12で算出されたタンク容量Vallが判定用の容量として例えば初期値Vall(0)よりも大きい(Vall>Vall(0))か否かを判定する。このとき、初期値Vall(0)は、例えば一時貯留タンク5A〜5Dの容量の総和であり、例えば設置作業者等によって制御回路7A〜7Dに予め入力されるものである。なお、判定用の容量は、初期値Vall(0)に限らず、初期値Vall(0)にタンク8の容量を加えた値でもよい。
ステップ13で「NO」と判定したときには、ステップ14に移ってステップ12で算出された空気消費量Noが予め決められた閾値NTよりも大きい(No>NT)か否かを判定する。このとき、閾値NTは、初期値Vall(0)や吐出容量Fa〜Fd等を考慮して決められており、例えば1台分の吐出容量と同程度の値に設定されている。そして、ステップ14で「YES」と判定したときには、空気消費量Noが閾値NTよりも大きいから、そのままの状態を維持してステップ18に移行する。なお、閾値NTは、1台分の吐出容量に限らず、4台分の吐出容量よりも小さい範囲で適宜設定されるものである。
一方、ステップ14で「NO」と判定したときには、空気消費量Noが閾値NTよりも小さいから、上限値Pmaxを低下させても圧縮空気が不足することはないものと考えられる。このため、ステップ15に移って、上限値Pmaxを予め決められた所定値αだけ低下させる。これにより、圧縮機2A〜2Dは、上限値Pmaxの変更前に比べて低い圧力で駆動することができ、電力消費量を低減することができる。なお、所定値αは、例えば初期状態の上限値Pmax(0)と下限値Pminとの間の圧力差の5%程度の値とすることで、ステップ15を繰り返し実行することで、徐々に上限値Pmaxを低下させることができる。また、所定値αは空気圧縮装置1の使用状況等に応じて適宜設定してもよく、さらに、上限値Pmaxの下限を定めてもよい。また、他の演算で上限値Pmaxを小さくしてもよい。そして、ステップ15の処理を終了した後には、ステップ18に移行する。
また、ステップ13で「YES」と判定したときには、ステップ16に移行し、ステップ14と同様に空気消費量Noが予め決められた閾値NTよりも大きい(No>NT)か否かを判定する。ステップ16で「YES」と判定したときには、空気消費量Noが予め決められた閾値NTよりも大きいから、そのままの状態を維持してステップ18に移行する。
一方、ステップ16で「NO」と判定したときには、タンク容量Vallが判定用の容量(初期値Vall(0))よりも大きく、かつ空気消費量Noが閾値NTよりも小さい。このため、ステップ17に移行して、以下の数2の式を用いて上限値Pmaxを低下させる。即ち、数2の式に示すように、ステップ12の演算によって求めたタンク容量の平均値Ave(Vall)と初期値Vall(0)との比率に応じて、初期状態の上限値Pmax(0)と下限値Pminとの間の圧力差を減少させる。そして、ステップ17の処理を終了した後に、ステップ18に移行する。
ステップ18では、空気圧縮装置1が運転を停止しているか否かを判定する。ステップ18で「NO」と判定したときには、ステップ12以降の処理を繰り返す。一方、ステップ18で「YES」と判定したときには、ステップ19に移ってリターンする。
次に、図4を参照しつつ、図3中のステップ12のタンク容量および空気消費量の演算処理について説明する。
まず、ステップ21では、演算回数を記憶するカウンタnを1に初期化する。ステップ22では、圧力Pが上限値Pmax(0)まで上昇して圧縮機2A〜2Dを全て停止させる圧縮機の停止処理を行なう。即ち、ステップ22では、圧力センサ13からの圧力信号を用いてタンク8の圧力Pを計測し、圧力Pが上限値Pmax(0)に到達していなければ、例えば全ての圧縮機2A〜2Dを駆動して圧力Pを上限値Pmax(0)に到達させる。本実施の形態では、上限値Pmax(0)を所定の第2圧力値として用いている。そして、圧力Pが上限値Pmax(0)に到達すると、全ての圧縮機2A〜2Dを停止させて、ステップ23に移行する。
ステップ23では、温度センサ14からの温度信号を用いて圧縮機2A〜2Dが上限値Pmax(0)で停止した直後のタンク8内の圧縮空気の温度T(Pmax)を計測する。
次に、ステップ24では圧縮機2A〜2Dが停止してからタンク8の圧力Pが下限値Pminまで低下して再起動するまでの停止時間を圧力減少時間toff(n)として計測する。本実施の形態では、下限値Pminを所定の第1圧力値として用いている。このとき、圧力Pが低下するに従ってタンク8内の圧縮空気の温度も低下する。このため、ステップ25では、圧縮機2A〜2Dが再起動する直前に、タンク8内に残った圧縮空気の温度T(Pmin)を計測する。
次に、ステップ26では、ステップ24で計測された圧力減少時間toff(n)を用いて、以下の数3の式に示すようにカウンタnの回数分に応じた相加平均を演算し、平均値Ave(toff)を求める。
次に、ステップ27では、以下の数4の式に示すように、設定された上限値Pmax(0)および下限値Pminと、計測した温度T(Pmax)および温度T(Pmin)とを用いて、現在の空気消費量No(n)を求める。なお、数4中のタンク容量Vall(n−1)は、1回前に演算したタンク容量Vallを示し、Rは気体定数を示している。また、カウンタnが初期値(n=1)の場合には、タンク容量Vall(n−1)は、初期値Vall(0)として一時貯留タンク5A〜5Dの容量の総和になる。
次に、ステップ28では、数3の式と同様に、ステップ27で計算された空気使用量No(n)を以下の数5の式に示すようにカウンタnの回数分に応じた相加平均を演算し、平均値Ave(No)を求める。
次に、ステップ29では、圧力Pが下限値Pminまで低下して圧縮機2A〜2Dを全て運転させる圧縮機の運転処理を行なう。即ち、ステップ29では、圧力センサ13からの圧力信号を用いてタンク8の圧力Pを計測し、圧力Pが下限値Pminに到達していなければ、例えば全ての圧縮機2A〜2Dを停止状態に保持して圧力Pが下限値Pminに到達するまで待機する。そして、圧力Pが下限値Pminに到達すると、全ての圧縮機2A〜2Dを起動させて、ステップ30に移行する。
ステップ30では、全ての圧縮機2A〜2Dが起動してから再度停止するまでの運転時間を圧力増加時間ton(n)として計測する。ここで、タンク8内の圧力Pは、圧縮機2A〜2Dの運転によって再び設定された上限値Pmaxになるまで加圧される。
そして、ステップ31では、数3の式と同様に、ステップ30で計測された圧力増加時間ton(n)を用いて、以下の数6の式に示すようにカウンタnの回数分に応じた相加平均を演算し、平均値Ave(ton)を求める。
次に、ステップ32では、以下の数7の式に示すように、設定された上限値Pmax(0)および下限値Pminと、計測した温度T(Pmin)とを用いて演算し、タンク容量Vall(n)を求める。なお、数7中の初期値ton(0)は、空気消費量Noが0(No=0)の状態、即ち外部にタンク8をつながず、圧縮機2A〜2D単体を運転した場合に、一時貯留タンク5A〜5Dを下限値Pminから上限値Pmaxまで上昇するのに必要な一定の時間である。このため、数7の式の右辺第1項は、圧力増加時間ton(n)と初期値ton(0)との比率に応じてタンク容量Vallの初期値Vall(0)から現在のタンク容量Vall(n)を推定するものである。ここで、平均値Ave(ton)は空気消費量Noに応じて長くなるため、タンク容量Vall(n)は、この空気消費量Noも容量の一部として加算して推定されるものである。
そして、ステップ33では、数3の式と同様に、タンク容量Vall(n)を用いて、以下の数8の式に示すようにカウンタnの回数分に応じた相加平均を演算し、平均値Ave(Vall)を求める。
そして、ステップ34でカウンタnの値を1だけ加算した後、ステップ35に移行する。ステップ35では、現在のカウンタnの値が特定の回数、例えば30回より大きいか否かを判定し、「NO」と判定したときには、ステップ22以降の演算処理を繰り返す。このとき、今回計算されたタンク容量Vall(n)を用いて、次回の空気消費量No(n+1)を演算する。なお、ステップ35で用いる特定の回数は、30回に限らず、空気消費量Noの平均値Ave(No)およびタンク容量Vallの平均値Ave(Vall)の推定精度等を考慮して適宜設定されるものである。
一方、ステップ35で「YES」と判断したときには、ステップ36に移行してリターンする。
なお、以上の演算処理では、タンク容量Vallと空気消費量Noを交互に計算する演算処理の手法について説明したが、圧縮機2A〜2Dに接続されたタンク8の容量は頻繁には変わらない。このことを考慮すると、ステップ32でのタンク容量Vall(n)の計算頻度は、ステップ27での空気消費量No(n)の計算に比して十分少なく(例えば1日に1回程度)してもよい。
また、前記実施の形態では、ステップ29の圧縮機の運転処理において、圧力Pが下限値Pminに到達したときに、全ての圧縮機2A〜2Dを運転する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばステップ27で算出した空気消費量No(n)を上回る範囲で、圧縮機2A〜2Dの運転台数を減少させる構成としてもよい。この場合、圧縮機2A〜2Dの運転台数に応じて初期値ton(n)は変化し、運転台数が少なくなるに従って初期値ton(n)は大きくなるので、数7において、Ave(ton)/ton(0)に運転台数に応じた係数を掛けてタンク容量Vall(n)を補正する。
また、前記実施の形態では、圧力減少時間toff(n)とタンク容量Vall(n−1)から空気消費量No(n)を演算し、算出した空気消費量No(n)と圧力増加時間ton(n)から新たなタンク容量Vall(n)を演算する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば圧力減少時間toff(n)と空気消費量No(n)からタンク容量Vall(n)を演算し、算出したタンク容量Vall(n)と圧力増加時間ton(n)から新たな空気消費量No(n+1)を演算するように順番を入れ替えても良い。
以上のようなタンク容量および空気消費量の演算処理を行なったときに、計測および演算された圧力減少時間toff(n)、圧力増加時間ton(n)、空気消費量No(n)、タンク容量Vall(n)を集計し、統計分布をグラフにすると図5のようになる。
ここで、タンク容量Vallの平均値Ave(Vall)は、配管の容量と圧縮空気の平均的な消費量、即ち平均値Ave(No)に基づく容量もタンク容量Vallの一部として演算されている。このため、圧縮機2A〜2Dを動作させる場合には、単に手動でタンク容量Vallを制御回路7A〜7Dに記憶させた場合に比べて、圧縮機2A〜2Dの運転時間が長く、結果として圧縮空気の供給量Fと空気消費量Noが近い値に制御されるため、空気圧縮装置1の消費電力を低減することができる。また、起動回数が少なくなることにより、圧縮機2A〜2Dへの機械的な負荷を低減することができる。
また、タンク容量Vallの情報を手動で制御回路7A〜7Dに記憶させる必要がない。このため、例えば図1中に二点差線で示すように、増設用のタンク15をバルブ16によってタンク8に接続または分離する構成とした場合でも、タンク容量Vallを演算して更新することができる。この結果、空気消費量Noに応じてタンク容量Vallを変更したり、タンク15の接続や分離(バルブ16の開,閉)を行なうときでも、設置作業者によって情報の更新を行なうことなく、自動的にタンク容量Vallの値を変更することができる。
また、従来技術のように上限値Pmaxを一定にした場合と、本実施の形態のように上限値Pmaxの変更した場合とを比較した。その結果を図6に示す。なお、図6中の実線は、本実施の形態のように上限値Pmaxを変更して台数制御処理を行った場合のタンク8内の圧力P等を示している。一方、図6中の破線は、従来技術のように上限値Pmaxを一定にして台数制御処理を行った場合のタンク8内の圧力P等を示している。
図6に示すように、従来技術の場合には、タンク15の増設後でも、上限値Pmaxは変更されず、増設前と同じ値になる。また、タンク容量Vallも、設置作業者によって手動入力されない限り、変更前の値に固定される。このため、従来技術では、タンク15の増設によって圧力変化が緩やかになったときでも、変更前のタンク容量Vallに基づいて圧縮空気の消費量Nを演算するから、圧力Pが下限値Pminに到達すると、圧力変化に応じて少ない運転台数(例えば1台)の圧縮機を駆動する。しかし、圧縮機の運転を開始してもタンク15の増設によって圧縮機の運転台数に見合った圧力増加が検出されない。このため、圧力上昇の途中で圧縮機の運転台数が増加する。そして、圧力Pが上限値Pmaxに到達すると、圧縮機は停止する。
一方、本実施の形態では、例えば図1中のタンク15を増設した後には、タンク15の容量を加えたタンク容量Vallを演算し、タンク容量Vallの演算結果に基づいて上限値Pmaxを変更する。具体的に説明すると、タンク15を増設したときには、タンク容量Vallが増設前よりも大きくなるから、タンク8およびタンク15に貯留される圧縮空気の容量も増加する。このため、制御回路7A〜7Dは、上限値の変更処理を実行して、上限値Pmaxを低下させる。この結果、圧縮機2A〜2Dは、変更前の上限値Pmaxに比べて下限値Pminに近い低圧で駆動するから、増設前に比べて消費電力が低下する。図6中で電力同士を比較すると、本実施の形態による電力が従来技術の電力よりも下回り、省電力効果が得られる(図6中で斜線模様部分)。
かくして、本実施の形態によれば、制御回路7A〜7Dは、圧力センサ13によって検出されたタンク8内の圧力Pが下限値Pminから上限値Pmaxに達するまでの増加率に応じた圧力増加時間tonと、上限値Pmaxから下限値Pminに達するまでの減少率に応じた圧力減少時間toffとに基づいて、空気消費量Noとタンク容量Vallを演算することができる。このため、タンク容量Vallが増えた場合には、それまでに比して停止する上限値Pmaxを低くしたり、圧縮機2A〜2Dの運転台数を減少させたりすることができる。これにより、空気消費量Noおよびタンク容量Vallに応じて圧縮空気の供給量Fを調整することができる。この結果、空気圧縮装置1は空気消費量Noを超えた不要な圧縮空気の吐出を抑制することができることから、空気圧縮装置1の消費電力を低減することができる。
また、圧縮空気の外部への供給を停止して測定することがなく、簡易的に空気消費量Noとタンク容量Vallを演算することが可能となるため、空気圧縮装置1の使用を中断することなく、タンクの増設や変更を行うことができる。
また、タンク容量Vallを設置作業者が外部より設定する必要がなくなるため、使用者は、タンクの増設や容量変更等を容易に行うことができる。さらに、タンク容量Vallが変更された場合でも、空気消費量Noに応じて上限値Pmaxを低く設定することが可能になる。この結果、圧縮機2A〜2Dを圧力Pが低圧な状態で駆動することができ、より消費電力を低減することができる。従って、空気消費量Noに応じたタンク容量Vallを使用することによって、繁閑期に応じた消費電力の抑制ができる。
さらに、空気消費量No、タンクの容量Vall、圧縮機2A〜2Dの稼働頻度(ton/toff)等の算出された情報を記憶手段(例えば、EEPROMなど)に登録しておく構成としてもよい。この場合、空気消費量No、稼動頻度(ton/toff)、演算したタンク容量Vallを確認することによって、設置作業者が空気圧縮装置1の供給能力や稼働状況を把握でき、例えば使用者に対して圧縮機2A〜2Dやタンク8の変更や増設の要否のように、使用者に最適な設備への変更の提案なども可能になる。
なお、前記実施の形態では、圧力減少時間toffと圧力増加時間tonとによって空気消費量Noとタンク容量Vallとを演算する構成としている。しかし、タンク圧の時間当たりの減少率が大きいときには、圧力減少時間toffは短くなり、減少率が小さいときには、圧力減少時間toffは長くなる。同様に、タンク圧の時間当たりの増加率が大きいときには、圧力増加時間tonは短くなり、増加率が小さいときには、圧力増加時間tonは長くなる。このように、圧力Pの減少率と圧力減少時間toffとには一定の対応関係があると共に、圧力Pの増加率と圧力増加時間tonとにも一定の対応関係がある。このため、実質的に、圧力Pの変化率(増加率および減少率)の大きさに応じて、空気消費量Noとタンク容量Vallとを演算する構成となっている。
また、前記実施の形態では圧縮機2A〜2Dの運転時間(圧力増加時間ton)と停止時間(圧力減少時間toff)を用いてタンク容量Vallと空気消費量Noを演算する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、図7の第1の変形例に示すように、ある特定のサンプリング周期Δt0でのタンク8内の圧力Pの増加率ΔPuと減少率ΔPdを用いて演算する手法としてもよく、図8の第2の変形例に示すように、所定の圧力差ΔP0での圧力増加時間Δtonと圧力減少時間Δtoffを用いて演算する手法としても良い。この場合、圧力を上限値Pmaxと下限値Pminとの間で加圧および減圧をすることなく、圧力差ΔP0を得るのに必要なタンク容量Vallと空気消費量Noを演算するための第1圧力値と第2圧力値を設定しても良い。
また、前記実施の形態では、一時貯留タンク5A〜5Dを設けた場合を例に挙げて示したが、一時貯留タンク5A〜5Dは必ずしも設ける必要はなく、タンク8のみとしてもよい。また、この場合、すべての機器を1つのパッケージに納め、一台の制御基板で制御してもよい。
また、前記実施の形態では、空気圧縮装置1は4台の圧縮機2A〜2Dによって構成するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば空気圧縮装置は1台、2台または3台の圧縮機によって構成してもよく、5台以上の圧縮機によって構成してもよい。空気圧縮装置を1台の圧縮機によって構成した場合には、台数制御ではなく、タンクの圧力が上限値に達したときに圧縮機を停止し、タンクの圧力が下限値に達したときに圧縮機を再起動する圧力開閉制御を行なうものである。
また、前記実施の形態では、空気圧縮装置1は4台の圧縮機2A〜2Dによって構成するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば空気圧縮装置を可変容量型の1台の圧縮機を用いて構成してもよい。また、空気圧縮装置として可変容量ポンプを用いる構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、制御回路7A〜7Dを用いて分散方式の台数制御処理を行う構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば各圧縮機2A〜2Dの制御回路7A〜7Dとは別に全体を集中的に管理する制御装置を設け、該制御装置を用いて集中方式の台数制御処理を行う構成としてもよい。
また、前記実施の形態による空気圧縮装置1は、4台の圧縮機の吐出容量Fa〜Fdを同一としたが、これに限らず、圧縮機毎に吐出容量の異なる圧縮を用いてもよい。この場合、圧縮機の組み合わせにより、より細かい制御が可能となる。
また、本発明の圧縮機として、レシプロ、スクリュウ、スクロール等の圧縮機を用いることができ、また、これらの圧縮機を組み合わせて用いてもよい。さらには、圧縮空気を増圧して吐出するブースタ式の圧縮機としても良い。
さらに、前記実施の形態では、圧縮機を運転と停止のいずれかとした例を示したが、レシプロ等アンロード運転が可能な圧縮機においては、運転台数を減少させる際に、所定時間はアンロード運転を行い、その後、停止するように構成してもよい。
さらに、前記実施の形態では、空気を圧縮する空気圧縮機の例を示したが、これに限らず、窒素や酸素等、気体を圧縮する気体圧縮装置に用いる構成としても良い。