以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の女性局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えば図示しないリモコンなどの操作部を操作すると、ノズル410を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
ノズル410の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水孔411が設けられている。そして、ノズル410は、その先端部に設けられた吐水孔411から水を噴出して、便座200に座った使用者の女性局部を洗浄することができる。例えば、図1に表したノズル410では、ふたつの吐水孔411のうちの一方の吐水孔411aは、ワイド吐水(第2の吐水)用の第2の吐水孔であり、他方の吐水孔411bは、スポット吐水(第1の吐水)用の第1の吐水孔である。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、水道や貯水タンクなどの図示しない給水源から供給された水を導く流路10を有する。流路10の上流側には、電磁弁440が設けられている。電磁弁440は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた図示しない制御部からの指令に基づいて、熱交換器450への水の供給を制御する。
電磁弁440の下流側には、熱交換器450が設けられている。熱交換器450は、供給された水を加熱し所定の温水にする。なお、熱交換器450は、例えば、シーズヒータなどを用いた瞬間加熱式熱交換器でもよいし、貯湯タンクを用いた貯湯加熱式熱交換器でもよい。
熱交換器450の下流側には、圧力変調装置470が設けられている。この圧力変調装置470は、流路10内の水の流れに脈動を与え、ノズル410の吐水孔411から噴出される水に脈動を与えることができる。
圧力変調装置470の下流側には、ノズル410が設けられている。ノズル410は、水勢(流量)の調整を行う流量調整弁(水路選択手段)480と、ワイド吐水の際に通水されるワイド吐水用流路(第1の水供給水路)427と、スポット吐水の際に通水されるスポット吐水用流路(第2の水供給水路)428と、ノズル本体420と、を有する。流量調整弁480は、水勢の調整を行うことができるとともに、ノズル410への給水の開閉や切替を行うことができる。より具体的に説明すると、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、女性局部の第1の範囲に着水するようにノズル410の第1の吐水孔411bから洗浄水を噴出するスポット吐水(第1の吐水)と、第1の範囲よりも広い第2の範囲に万遍なく着水するようにノズル410の第2の吐水孔411aから洗浄水を噴出するワイド吐水(第2の吐水)と、を実行することができる。
流量調整弁480は、リモコンのスイッチ操作によって、図示しない制御部からの指令に基づいて、ワイド吐水用流路427へ通水したり、ワイド吐水用流路427へ通水することができる。あるいは、流量調整弁480は、所定の比率でワイド吐水用流路427およびスポット吐水用流路428へ通水することができる。これにより、使用者は、ワイド吐水用流路427とスポット吐水用流路428とを切り替えることにより、あるいは、ワイド吐水用流路427を通過する洗浄水の流量と、スポット吐水用流路428を通過する洗浄水の流量と、の比率を適宜設定変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。これについては、後に詳述する。
ノズル410は、例えばモータなどからの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退することができる。そして、ノズル410は、ボウル801内に進出した状態で吐水孔411から水を噴出して、便座200に座った使用者の女性局部を洗浄することができる。
次に、本実施形態のノズル410の構造、ならびにワイド吐水およびスポット吐水の吐水形態について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、ワイド吐水を説明するための断面模式図である。
本実施形態のノズル410は、ノズル本体420と、第1のスロート430aと、を有する。ノズル本体420の内部には、図示しない水源から供給された洗浄水が通過するワイド吐水用流路427と、旋回流を生成可能な第1の旋回室423aと、第1の旋回室423aからの洗浄水を第1のスロート430aへ導く第1の連通路(第1の絞り部)425aと、が設けられている。また、第1の旋回室423aの中央部には、より安定した旋回力の旋回流を生成する第1の突設部424aが設けられている。
第1の旋回室423aは、底部においてより大きな径を有する大径部内周壁423eと、連通路425へ向かうにつれて収縮した径を有する傾斜内周壁423fと、により形成され、中空室とされている。そして、傾斜内周壁423fは、その一端において第1の連通路425aに接続されている。一方、ワイド吐水用流路427は、第1の旋回室423aに偏心して接続されている。より具体的には、ワイド吐水用流路427は、第1の旋回室423aの大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。
第1のスロート430aの内部には、ノズル本体420の第1の連通路425aから噴出された洗浄水が通過する第1のスロート流路431aが設けられている。そして、第1のスロート流路431aの一端には、第1のスロート流路431aを通過した洗浄水を第1のスロート430aの外部へ吐水する第2の吐水孔433aが形成されている。つまり、図3に表したノズル410のように、ノズル410が第1のスロート430aを有する場合には、第1のスロート430aに設けられた第2の吐水孔433aが図1に表した吐水孔411aとして機能する。第2の吐水孔433aの近傍の第1のスロート流路431aには、第2の吐水孔433aへ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されている。
なお、本実施形態のノズル410では、ノズル本体420と第1のスロート430aとの間に隙間が設けられているが、この隙間は必ずしも設けられていなくともよい。すなわち、ノズル本体420と第1のスロート430aとが一体的に形成され、第1の連通路425aと第1のスロート流路431aとが接続されていてもよい。
ワイド吐水を実行する場合には、図示しない水源から供給される洗浄水は、ワイド吐水用流路427を通過してノズル410へ供給され、第1の旋回室423aへ流入する。ここで、ワイド吐水用流路427は、第1の旋回室423aの大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、第1の旋回室423aへ流入した洗浄水は、図3に表した矢印A3のように、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って後述するスポット吐水よりも速い速度で旋回する。そして、第1の旋回室423aにおいて旋回した洗浄水は、旋回力を維持しつつ第1の連通路425aを通過し、第1のスロート430aの第1のスロート流路431a内へ噴出される。このとき、ノズル本体420から噴出された洗浄水は、旋回力を維持しているため、中央部に中空部分を有する液膜として中空円錐状に噴出される。以下、説明の便宜上、このように中空円錐状に噴出された洗浄水を「中空円錐状吐水」と称する。
そして、第1のスロート流路431aに流入した洗浄水は、旋回力を維持しつつ第1のスロート流路431aの内壁に沿って流れ、第2の吐水孔433aへ導かれる。すなわち、第1のスロート流路431aを通過する洗浄水は、第1のスロート流路431aの内壁に付着するように流れる。そのため、第1のスロート流路431aを流れる洗浄水は、第1のスロート流路431aの内壁から摩擦力による抵抗を受け、その洗浄水の流速は、第2の吐水孔433aへ向かうにつれて小さくなる。これにより、図3に表したように、第2の吐水孔433aの近傍の液膜の厚さは、ノズル本体420から噴出されたときの液膜の厚さ、あるいは第1のスロート流路431aに流入した直後の液膜の厚さよりも厚い。
さらに、第1のスロート流路431aを流れる洗浄水の流速は、第1のスロート流路431aの内壁の近傍すなわち境界層よりも第1のスロート流路431aの中心部の方が速い。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水の内部には、図3に表した矢印A1のように、液膜を横断する方向に渦流が発生する。また、第2の吐水孔433aの近傍における第1のスロート流路431aには、第2の吐水孔433aへ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されているため、第2の吐水孔433aから噴出される洗浄水は、テーパ部432に沿って流れる。そのため、第2の吐水孔433aから噴出される洗浄水の内部には、液膜を横断する方向に渦流がより発生しやすい。
そうすると、第2の吐水孔433aから噴出された洗浄水は、中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として噴出されるが、第2の吐水孔433aからある程度離間した位置において粒化された水流(以下、説明の便宜上、「粒化水流」と称する)520へ遷移する。より具体的には、第2の吐水孔433aから噴出された中空円錐状吐水510の内部には、液膜を横断する方向に渦流が発生しているため、第2の吐水孔433aからある程度離間した位置において、隣接する渦流同士の間に亀裂が生ずる。そうすると、第2の吐水孔433aから噴出された中空円錐状吐水510は、図3に表したように、第2の吐水孔433aからある程度離間した位置において破砕される。このようにして、第2の吐水孔433aから噴出された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。そして、中空円錐状吐水510が拡散する領域の内側には、粒化水流520が万遍なく行き渡る。
また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さい。これは、中空円錐状吐水510の中空部分には外部から空気が入りにくく、また、その中空部分の空気は中空円錐状吐水510の流れにより引き出されるためである。このようにして中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さいことにより、中空円錐状吐水510は、吐水径(円錐径)が拡大することを抑制される。
そのため、本実施形態のノズル410によれば、粒化水流520が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分(例えば、大腿部)が不必要に濡れることを抑制することができる。これにより、便座200に座った使用者が、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることで不快感を感ずることを抑制することができる。
さらに、粒化水流520の径は、例えば約1mm程度であり、径が例えば約10〜100μm程度の霧と比較すると大きい。これは、前述したように、第1のスロート流路431aを流れる洗浄水の流速は、第2の吐水孔433aへ向かうにつれて小さくなり、第2の吐水孔433aの近傍の液膜の厚さは、より厚くなるためである。つまり、液膜の厚さがより厚い状態で噴出された中空円錐状吐水510を、第1のスロート430aの内部において発生した渦流により強制的に粒化するため、粒化水流520の径は、霧などと比較すると大きい。
これによれば、粒化水流520は、空気中を漂うおそれは少なく、所望の洗浄エリアの外部にまで飛散するおそれは少ない。つまり、本実施形態のノズル410によれば、粒化水流520が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることを抑制することができる。また、粒化水流520の径は、より大きいため、着水部における着水力をより高めることができる。そのため、例えば女性の生理時における経血汚れなどを、より短時間の間に落としたり浮かせたりすることができ、また、より短時間の間に洗い流すことができる。
また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さいことに関して前述したが、この中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510が破砕されない場合の中空円錐状吐水510の中空部分の圧力よりも大きい。これは、図3に表した矢印A2のように、中空円錐状吐水510の中空部分の外部の空気が、隣接する渦流同士の間に生じた亀裂、あるいは破砕された中空円錐状吐水510の間から中空部分に入り込むためである。これによれば、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が小さくなりすぎることにより十分な広さの洗浄範囲を確保することができないおそれを抑制することができる。また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510が破砕されない場合の中空円錐状吐水510の中空部分の圧力よりも大きいため、液膜波動が生ずることを抑制することができる。
このように、本実施形態のワイド吐水によれば、中空円錐状吐水510の中空部分(洗浄水500が拡散する領域の内側)に粒化水流520を万遍なく行き渡らせた状態で、便座200に座った使用者の女性局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
図4は、スポット吐水を説明するための断面模式図である。
ノズル本体420の内部には、ワイド吐水用流路427と同様に、図示しない水源から供給された洗浄水が通過するスポット吐水用流路428が設けられている。スポット吐水用流路428は、第2の旋回室423bの軸心へ向かうように第2の旋回室423bの大径部内周壁423eに接続されている。
スポット吐水を実行する際には、図示しない水源から供給される洗浄水は、スポット吐水用流路428を通過してノズル410へ供給され、第2の旋回室423bへ流入する。ここで、スポット吐水用流路428は、第2の旋回室423bの軸心へ向かうように第2の旋回室423bの大径部内周壁423eに接続されているため、第2の旋回室423bへ流入した洗浄水は、図4に表した矢印A4のように、旋回することなく、あるいは旋回力を低減された状態で第2の連通路425bへ流れる。そして、旋回することなく、あるいは旋回力を低減された状態で第2の連通路425bへ流れた洗浄水は、第2の連通路425bを通過し、第2のスロート430bの第2のスロート流路431b内へ噴出される。このとき、ノズル本体420から噴出された洗浄水は、旋回力を有してしない、あるいは旋回力を低減されているため、直進流530として噴出される。
ノズル本体420から噴出された直進流530の一部は、直進流530から分離して液滴540となる。直進流530から分離した液滴540は、図4に表した矢印A5のように、第2のスロート流路431bの内壁において反射される。そして、第2のスロート流路431bの内壁において反射された液滴540の一部は、再び直進流530と合流する。これにより、直進流530と周囲の空気との間において気液界面が生成される。そして、ノズル本体420から噴出された洗浄水は、直進流530と液滴540とが混在した状態で第1の吐水孔433bから噴出される。つまり、ノズル本体420から噴出された洗浄水は、水粒状に噴出される。
スポット吐水の際に第1の吐水孔433bから噴出された洗浄水は、ワイド吐水の際に第2の吐水孔433aから噴出された洗浄水のようには拡散せず、中空円錐状吐水510として噴出されることはない。つまり、スポット吐水の際に第1の吐水孔433bから噴出された洗浄水は、中空の状態ではなく、中実の状態あるいは充填された状態となっている。
このように、本実施形態のスポット吐水によれば、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができる。つまり、スポット吐水の着水範囲(第1の範囲)は、ワイド吐水の着水範囲(第2の範囲)よりも狭い。言い換えれば、ワイド吐水は、第1の連通路425aから噴出された洗浄水の拡がり角度が、スポット吐水の第2の連通路425bから噴出された洗浄水の拡がり角度より大きくなっており、結果、着水面において、ノズルを動かすことなく、一度に広い範囲に着水されることができ、結果、ワイド吐水の着水範囲(第2の範囲)は、スポット吐水の着水範囲(第1の範囲)よりも広い。使用者は、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
したがって、本実施形態によれば、使用者は、洗浄水をワイド吐水用流路427と、スポット吐水用流路428で切り替えることにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。
また、スポット吐水の際には、直進流530および液滴540により第2のスロート流路431bがほぼ満水の状態となる。そのため、前述したように、スポット吐水の際に第1の吐水孔433bから噴出された洗浄水は、中実の状態あるいは充填された状態となっている。一方、ワイド吐水の際に第2の吐水孔433aから噴出された洗浄水は、図3に関して前述したように、中央部に中空部分を有する液膜、すなわち中空円錐状吐水510となっている。これにより、スポット吐水の際に女性局部に着水する洗浄水の流速は、ワイド吐水の際に女性局部に着水する洗浄水の流速よりも遅い。
そのため、本実施形態のスポット吐水によれば、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができるとともに、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを抑制することができる。そのため、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
また、図3および図4に表したノズル410のように、ノズル本体420と第1のスロート430a、第2のスロート430bとの間に隙間が設けられた場合には、その隙間を介して第1のスロート流路431a、第2のスロート流路431bに空気を取り込むことができる。これによれば、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水の吐水形態をより容易に形成することができる。さらに、スポット吐水の際に第1の吐水孔433bから噴出される洗浄水により多くの空気を混入させることができる。そのため、スポット吐水は、ワイド吐水よりもやわらかい洗浄感を与えることができる。また、洗浄水に空気を混入させることにより、洗浄水の見かけ上の体積が増すので、スポット吐水において洗浄水の流量が低減しても、量感の低下を抑えることができる。
本実施形態では、第1の吐水孔433a、第2の吐水孔433bから噴出される洗浄水に混入させる空気の混入量をワイド吐水よりもスポット吐水において多くしている。これによっても、スポット吐水は、ワイド吐水よりもやわらかい洗浄感を与えることができる。そのため、スポット吐水において、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることをより抑制することができ、より心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
ノズル410は、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bと第2の吐水孔411a、第1の吐水孔411bとの間に、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔から噴射される洗浄水を減速するための減速手段を設けており、ワイド吐水での洗浄水の減速量よりもスポット吐水での洗浄水の減速量がより大きくなるように減速する。
第1の旋回室423a、第2の旋回室423bにおける旋回流の速度をワイド吐水とスポット吐水とで異ならせることで、旋回流に速度差をつけて吐水形態を異ならせている。さらに、ワイド吐水での洗浄水の減速量よりもスポット吐水での洗浄水の減速量がより大きくなるように減速する減速手段を第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔と第2の吐水孔411a、第1の吐水孔411bとの間に設けることで、スポット吐水による吐水流速を積極的に減速している。
具体的には、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔よりも第2の吐水孔411a、第1の吐水孔411b側に、洗浄水を一時的に貯留することで第1の旋回室423a、第2の旋回室423bから噴射される洗浄水を減速するように構成している。ワイド吐水での洗浄水の貯留量よりもスポット吐水での洗浄水の貯留量がより大きくなるように洗浄水を一時的に貯留することで、その貯留された洗浄水に第1の旋回室423a、第2の旋回室423bから噴射される洗浄水が突入することによるスポット吐水での圧力損失量がワイド吐水での圧力損失量よりも大きくなり、ワイド吐水での洗浄水の減速量よりもスポット吐水での洗浄水の減速量がより大きくなるように減速するものである。
従って、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bから噴射された洗浄水を利用し、貯留した洗浄水の圧力損失を利用して減速するという簡単な方法で、スポット吐水における流速を下げることができる。
この減速手段は、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔よりも第2の吐水孔411a、第1の吐水孔411b側に、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔よりも大きな内径の第1のスロート流路431a、第2のスロート流路431bを有している。スポット吐水では第2の旋回室423bの噴射孔から外周が粒化された水流を吐出し、ワイド吐水では第1の旋回室423aの噴射孔から外周が液膜化された水流を吐出する。
ワイド吐水では、第1の旋回室423aの噴射孔から外周が液膜化された水流を吐出して、第1のスロート流路431aに沿って液膜化されたまま第2の吐水孔411aから噴出する。一方、スポット吐水では、第2の旋回室423bの噴射孔から外周が粒化された水流を吐出して、第2のスロート流路431bにその粒化された水流が衝突して減速される。したがって、第2の旋回室423bの下流に第2の旋回室423bの噴射孔よりも大きな径の第2のスロート流路431bを設け、噴射孔から噴射される水流の形態を異ならせるだけで、ワイド吐水よりもスポット吐水において洗浄水を確実に減速させて吐水することが可能となる。
ノズル410では、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔よりも第2の吐水孔411a、第1の吐水孔411b側で、空気を巻き込みエジェクタ効果により洗浄水に空気を自然混入するものであって、スポット吐水における空気の混入量が、ワイド吐水より多くなるように洗浄水に空気を混入し、この空気を混入させることによる圧力損失量が、ワイド吐水での圧力損失量よりもスポット吐水での圧力損失量が大きくなって減速される。
このように、ワイド吐水での空気の混入量よりもスポット吐水での空気の混入量がより多くなるようにすることで、スポット吐水における圧力損失量をワイド吐水における圧力損失量よりも大きくし、結果としてスポット吐水での洗浄水の減速量がより大きくなるように減速している。従って、旋回室423の噴射孔から噴射された洗浄水を利用し、エジェクタ効果を利用した空気混入による洗浄水の圧力損失を利用して減速するという簡単な方法で、スポット吐水における吐水流速を下げることができる。
またノズル410では、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔と第1のスロート流路431a、第2のスロート流路431bとの間に空気混入部を有している。具体的には、ノズル本体420と第1のスロート430a、第2のスロート430bとの間に隙間を設け、空気混入部としての役割を担わせている。そして、スポット吐水ではエジェクタ効果を発揮させるように第2の旋回室423bの噴射孔から外周が粒化された水流を吐出し、ワイド吐水ではエジェクタ効果を発揮させないように第1の旋回室423aの噴射孔から外周が液膜化された水流を吐出する。
このように、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔よりも第2の吐水孔411a、第1の吐水孔411b側に、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔よりも大きな内径の第1のスロート流路431a、第2のスロート流路431bと空気混入部を設けているので、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔から噴射される洗浄水の態様によってその噴射される洗浄水に混入される気泡量に影響を及ぼすことができる。ワイド吐水では、第1の旋回室423aの噴射孔から外周が液膜化された水流を吐出するので、空気混入部からは空気をほとんど吸い込むことなく第1のスロート流路431aに沿って液膜化されたまま進行し、そのまま第2の吐水孔411aから吐出することができる。一方、スポット吐水では、第2の旋回室423bの噴射孔から外周が粒化された水流を吐出するので、第2のスロート流路431bにその粒化された水流が衝突して減速される。更に、空気混入部からは空気が吸い込まれ、エジェクタ効果によって空気が混入される。従って、第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの下流に第1の旋回室423a、第2の旋回室423bの噴射孔よりも大きな径の第1のスロート流路431a、第2のスロート流路431bと空気混入部を設け、第2の吐水孔411a、第1の吐水孔411bから噴射される水流の形態を異ならせるだけで、同一の構造でワイド吐水よりもスポット吐水において洗浄水を確実に減速させて噴出することが可能となる。
なお、洗浄水に空気を混入するにあたり、上述したように空気を自然混入させるのに代えて、エアポンプを利用して、空気の混入量を制御してもよい。
また、図3、図4で示すように、本実施例では、ノズル本体の作成の簡便化を図るために、共通できる部分は、ワイド吐水とスポット吐水で共通した構成になっている。つまり、ワイド吐水とスポット吐水において、旋回室、連通路、スロート、スロート流路、吐水孔を共通の構成にして、旋回室への吐水用流路構成のみが異なった構成となっているが、本発明は、この実施形態に限るものではなく、スポット吐水と、ワイド吐水とで、大きく異なる構成としても何ら問題はない。例えば、スポット吐水では、洗浄水を旋回させずに、スポット吐水流路から、直接、連通路、スロート流路に流れるような構成としてもよい。
次に、ワイド吐水およびスポット吐水における洗浄水の着水力について、図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図5は、着水部あるいは吐水孔から所定の距離だけ離れた位置における洗浄水の着水力を表すグラフ図である。
図5に表したように、本実施形態では、ワイド吐水の着水範囲は、スポット吐水の着水範囲よりも広い。言い換えれば、スポット吐水の着水範囲は、ワイド吐水の着水範囲よりも狭い。また、図5に表した例では、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力は、ワイド吐水の着水範囲の着水力が、スポット吐水の着水力をワイド吐水の着水力と同等にしてもよいし、スポット吐水の着水力をワイド吐水の着水力よりも大きくしてもよいよりも小さい。
ここで、本願明細書において、「着水力」とは、洗浄水500の着水流速、着水水量、着水圧力の少なくともいずれかを意味し、また、単位面積あたりの洗浄水が有する運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。また、「着水流速」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置における洗浄水500の流速をいう。また、「着水圧力」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置における単位面積あたりの運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。また、「着水水量」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置において単位時間あたりに着水する水量であり、汚れを洗い流す力をいう。
ワイド吐水と同じ流量、流速でスポット吐水を実行した場合、スポット吐水は、ワイド吐水と同じ量の洗浄水をワイド吐水よりも狭い範囲に着水させるので、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力501s−1は、図5に表すように、ワイド吐水の着水力よりも大きい。これでは、スポット吐水の際に女性局部のデリケートエリアに与える刺激が強すぎて不快感を感じさせてしまう。そこで、本実施形態では、スポット吐水を開始する際、あるいは、ワイド吐水からスポット吐水に切り替えた際に、ワイド吐水よりも洗浄水の流速を低減させ、あるいは流量を低減させ、もしくは空気の混入量を増大させて、スポット吐水の際の着水力を抑制させる。つまり、着水力抑制手段は、スポット吐水とワイド吐水の流速、流量、空気の混入量などを調整する手段である。そして、このように、スポット吐水の際の着水力が抑制されるように洗浄水を噴出させて、図5に表すようにスポット吐水の着水力501sを小さくして、好ましくは、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力を、ワイド吐水の着水範囲の着水力と同等またはそれよりも小さくする。これによって、スポット吐水の際に女性局部の中心付近に位置するデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを防止して、快適なビデ洗浄を実現することが可能となる。
スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力は、ワイド吐水と同じ流量や流速でスポット吐水の着水範囲に洗浄水を噴射させた場合よりも小さくされている。さらに、ワイド吐水の着水範囲の着水力と同等またはそれよりも小さくすれば、スポット吐水は、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることをより確実に抑制しつつ、快適に洗浄することができる。つまり、スポット吐水は、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに不快感を与えることなく、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
一方、ワイド吐水は、中空円錐状吐水510の中空部分に粒化水流520を万遍なく行き渡らせた状態で、便座200に座った使用者の女性局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、ワイド吐水は、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
これによれば、ビデ洗浄の用途に応じて洗浄水の着水範囲の広狭を切り替えてノズル410から噴出された洗浄水は、女性局部への着水範囲の広狭に適した着水力となって着水する。そのため、ビデ洗浄における洗浄水の着水範囲の広狭に適した着水力でビデ洗浄を実行することができる。
なお、ワイド吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した実線の着水力501wのように、着水範囲の全体に亘って略同一であることに限定されるわけではない。ワイド吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した破線の着水力503wのように、着水範囲の中心部よりも外周部で大きくてもよい。あるいは、ワイド吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した一点鎖線の着水力505wのように、着水範囲の中心部よりも外周部で小さくてもよい。
また、スポット吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した実線の着水力501sのように、着水範囲の全体に亘って略同一であることに限定されるわけではない。スポット吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した破線の着水力503sのように、着水範囲の中心部よりも外周部で大きくてもよい。あるいは、スポット吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した一点鎖線の着水力505sのように、着水範囲の中心部よりも外周部で小さくてもよい。
ワイド吐水およびスポット吐水の際の着水部における着水力の分布が、図5に表した着水力501w、503w、505wおよび着水力501s、503s、505sのいずれの場合でも、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力は、ワイド吐水の着水範囲の着水力と同等またはそれよりも小さくするのが好ましい。
ワイド吐水の際の着水部における着水力の分布が、図5に表した破線の着水力503wのように、着水範囲の中心部よりも外周部で大きい場合には、例えば女性の生理時には、経血汚れが女性局部の周囲の広い範囲に亘って付着する場合があるが、その広い範囲を一度にさっと洗浄したいという要望に応えることができる。
より具体的に説明すると、所望の洗浄エリアのうちの外周部は、女性の生理時の経血汚れが付着している場合には積極的に洗浄したいエリアである。そのため、外周部の着水力が中心部の着水力よりも大きい場合には、洗浄力の高い洗浄水500が経血汚れを除去したいエリアに着水する。一方、女性のデリケートエリアには、着水力の小さい洗浄水が着水するため、必要以上に強い刺激感が加わることはない。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、より短時間の間に経血汚れを落としたり浮かせたりすることができ、なおかつ、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、より短時間の間に経血汚れを洗い流すことができ、なおかつ、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、女性が生理時に使用する装置として好適である。特に、女性局部の周辺部では、経血汚れが乾燥して固着する傾向にあるが、外周部の着水力が中心部の着水力よりも大きい場合には、固着した経血汚れを洗い落とすのに好適である。
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、着水部における着水力の分布にかかわらず、従来のビデ洗浄よりも広い範囲に一度に着水させることができる。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、ノズル410を前後方向および左右方向(図1に表した矢印を参照)に移動させることにより着水位置を移動させたり、便座200に座った使用者自身が着座位置を移動することにより着水位置を移動させたりする必要はない。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、女性局部を広い範囲で洗浄する際になぞられたような感覚を与えるおそれは少ない。これによっても、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
なお、ワイド吐水とスポット吐水の着水力は、図5に表した以外の形態とすることも可能である。例えば、スポット吐水の着水力がワイド吐水の着水力よりも多少大きくても、スポット吐水の際の洗浄水の流速や流量を小さくすることにより、着水力を抑制して、刺激感を弱めることが可能である。特に、ワイド吐水の実行途中に、リモコン操作によってスポット吐水に切り替えた際には、ほとんど止水時間がなく洗浄範囲が切り替わる。そのため、広い範囲に拡散して噴出されていた洗浄水はより狭い範囲に集中して着水するので着水力が増加して強い刺激を感じやすくなるが、スポット吐水を実行する際に着水力を抑制するように流速や流量を低減すれば女性局部のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わるのを抑えることができる。これによっても、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
次に、ワイド吐水の際の着水部における着水力が着水範囲の中心部よりも外周部で大きい場合、およびスポット吐水の際の着水部における着水力が着水範囲の全体に亘って略同一である場合を例に挙げて、着水部あるいは吐水孔から所定の距離だけ離れた位置における洗浄水の流速、および単位面積当たりの洗浄水の流量について説明する。
図6は、着水部あるいは吐水孔から所定の距離だけ離れた位置における洗浄水の流速を表すグラフ図である。
本実施形態では、図6に表したように、スポット吐水の着水範囲の中心部における流速は、ワイド吐水の着水範囲の流速と同等またはそれよりも小さい。これは、図4に関して前述したように、スポット吐水の際に第1の吐水孔433bから噴出された洗浄水は、中実の状態あるいは充填された状態となっている一方で、ワイド吐水の際に第2の吐水孔433aから噴出された洗浄水は、中空円錐状吐水510となっているためである。
より具体的に説明すると、ワイド吐水では、第1のスロート流路431aに流入した洗浄水が旋回力を維持しつつ第1のスロート流路431aの内壁に沿って流れるため、第1のスロート流路431aの軸方向(吐水方向)にみたときの洗浄水が第2の吐水孔433bまたは第1のスロート流路431aを占める面積は、スポット吐水の場合よりも小さい。一方、スポット吐水では、直進流530および液滴540により第2のスロート流路431bがほぼ満水の状態となるため、第2のスロート流路431bの軸方向(吐水方向)にみたときの洗浄水が第1の吐水孔433bまたは第2のスロート流路431bを占める面積は、ワイド吐水の場合よりも大きい。そのため、スポット吐水の着水範囲の中心部における流速は、ワイド吐水の着水範囲の流速と同等またはそれよりも小さい。
これによれば、スポット吐水は、ワイド吐水と同じ流速でスポット吐水の着水範囲に向けて洗浄水を噴出した場合よりも、また、ワイド吐水よりも、小さな流速で女性局部に着水する。そのため、本実施形態のスポット吐水は、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを抑制しつつ、快適に洗浄することができる。一方、ワイド吐水は、スポット吐水よりも速い流速で女性局部に着水する。そのため、本実施形態のワイド吐水は、女性局部の周辺部をより大きな洗浄力で洗浄することができる。そのため、女性局部の周囲の広い範囲に付着した経血汚れを効率よく洗い流すことができる。
図7は、着水部あるいは吐水孔から所定の距離だけ離れた位置における単位面積当たりの洗浄水の流量を表すグラフ図である。
スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力を小さくする手段は、図6に関して前述した流速を異ならせることだけに限定されるわけではない。スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力を小さくするために、単位面積当たりの洗浄水の流量を異ならせてもよい。
より具体的には、流量調整弁480は、図示しない制御部からの指令に基づいて、スポット吐水の着水範囲の中心部における単位面積当たりの洗浄水の流量をワイド吐水の着水範囲の単位面積当たりの洗浄水の流量よりも少なくすることができる。これにより、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力をワイド吐水の着水範囲の着水力と同等またはそれよりも小さくすることができる。
これによれば、スポット吐水は、ワイド吐水と同じ流量でスポット吐水の着水範囲に向けて洗浄水を噴出した場合よりも、また、ワイド吐水よりも少ない流量で女性局部に着水する。そのため、本実施形態のスポット吐水は、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを抑制しつつ、快適に洗浄することができる。一方、ワイド吐水は、スポット吐水よりも多い流量で女性局部に着水する。そのため、本実施形態のワイド吐水の洗浄力は、スポット吐水の洗浄力よりも大きい。そのため、女性局部の周囲の広い範囲に付着した経血汚れを効率よく洗い流すことができる。
次に、本実施形態のノズル410の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図8は、本具体例のノズルを上方から眺めた上面模式図である。
また、図9は、図8に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
本具体例にかかるノズル410は、ノズル本体420を有する。ノズル本体420の内部には、ワイド吐水用流路427と、スポット吐水用流路428と、が設けられている。ワイド吐水用流路427は、第1の旋回室423aの大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。一方、スポット吐水用流路428は、第2の旋回室423bの軸心へ向かうように大径部内周壁423eに接続されている。その他の構造は、図3および図4に関して前述したノズル410の構造と同様である。
ワイド吐水用流路427は、第1の旋回室423aの大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、ワイド吐水用流路427を通過して第1の旋回室423aへ流入した洗浄水は、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回する。これは、図3に関して前述した如くである。一方、スポット吐水用流路428は、第2の旋回室423bの軸心へ向かうように大径部内周壁423eに接続されているため、スポット吐水用流路428を通過して第2の旋回室423bへ流入した洗浄水は、旋回することなく、あるいは旋回力を低減された状態で第2の連通路425bの一端、すなわち第1の吐水孔426bから噴出される。これは、図4に関して前述した如くである。
そのため、本具体例のノズル410によれば、ワイド吐水用流路427を介して第1の旋回室423へ洗浄水を流入させると、より大きな旋回力を有する中空円錐状吐水510を第2の吐水孔426aから吐水することができる。また、本具体例にかかるノズル410が、図3に表した第1のスロート430aを有する場合には、第2の吐水孔426aから噴出された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。そのため、この場合には、使用者は、より広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
また、スポット吐水用流路428を介して第2の旋回室423bへ洗浄水を流入させると、直進流530と液滴540とを第1の吐水孔426bから吐水することができる。そのため、この場合には、使用者は、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
ワイド吐水用流路427は、大きな旋回力を有するように第1の旋回室423aへ流入させており、大きな旋回力を付与されることにより、吐水孔付近で縮流が起こり、圧力損失が生じるが、ワイド吐水用流路427への入水圧力をスポット吐水用流路428よりも大きな入水圧力により洗浄水を流入させることにより、ワイド吐水の流速をスポット吐水の流速よりも高めることができる。一方、スポット吐水の旋回力は大きくならないように第2の旋回室423bに流入させており、圧力損失は小さく、高い圧力を必要としないため、入水圧力を小さくすることで、流速を抑えている。
入水圧を変える手段として、スポット吐水用流路428に通ずる流量調整弁もしくは途中の流路において、ワイド吐水用流路427に通ずる流路よりも圧力損失が大きくなるように絞り部を設けて、入水圧力を変えている。なお、ポンプ等を搭載し、ポンプの出力を調整することにより、入水圧力を変更してもよい。
また、吐水孔から洗浄水が噴出する際の吐水方向にみたときの第2の吐水孔426aの断面積は、第1の吐水孔426bより大きく形成されている。そのため、ワイド吐水とスポット吐水とが切り替わることにより、流速差が自動的に生ずる。これにより、大がかりな装置や機器などを設けることなく、第1の吐水と第2の吐水との間で流速を異ならせることができる。
したがって、本具体例によれば、使用者は、洗浄水の流路を、ワイド吐水用流路427と、スポット吐水用流路428とで変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。
次に、本実施形態のノズル410の別の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図10は、図9に表わした切断面A−Aにおける別の具体例の断面模式図である。
別の具体例にかかるノズル410は、図8、図9に関して前述したノズル410の構造と同様であるため、以下にて、前述した具体例と異なる点について、以下にて説明する。
図9に表わした具体例では、ワイド吐水の第1の連通路425aと、スポット吐水の第2の連通路425bが、洗浄水が噴出する際の吐水方向からみたときの断面積が、略同一にであったが、図10に表わした別の具体例では、第1の連通路425aの洗浄水が噴出する際の吐水方向からみたときの断面積が、第2の連通路425bより小さく形成されている。
したがって、別の具体例では、例えば、ワイド吐水とスポット吐水で、同等の流量を流したとしても、言いかえれば、図8でのワイド吐水用流路427を流れる洗浄水の流量と、スポット吐水用流路428を流れる洗浄水の流量とを同等とにしたとしても、ワイド吐水の第1の連通路425aの径を絞っているので、スポット吐水の第1の範囲における流速よりも、ワイド吐水の第2の範囲における流速よりも遅くなるように前記洗浄水を噴出させる事ができる。そのため、ワイド吐水とスポット吐水とが切り替わることにより、流速差が自動的に生ずる。これにより、大がかりな装置や機器などを設けることなく、第1の吐水と第2の吐水との間で流速を異ならせることができる。
したがって、別の具体例においても、使用者は、洗浄水の流路を、ワイド吐水用流路427と、スポット吐水用流路428とで変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。
次に、本実施形態の圧力変調装置470の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図11は、本実施形態の圧力変調装置の具体例を例示する断面模式図である。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、図2に関して前述したように、流路10内の水の流れに脈動を与え、ノズル410の吐水孔411から噴出される水に脈動を与える圧力変調装置470を備える。圧力変調装置470は、図示しない制御部からの指令に基づいてスポット吐水の際に稼動し、流路10内の水の流れに脈動を与える。この脈動が付与された水の流れは、吐水孔から速度差を持った状態で噴出される。速度差を持った洗浄水は、噴出後に速度の遅い部位に速度の速い部位が追いつく現象を発生させ、洗浄水が合体されることにより、洗浄水の断面積が断続的に大きくなる。そのため、スポット吐水において洗浄水の流量が低減しても、量感の低下を抑えることができ、洗浄感をより高めることができる。
なお、ワイド吐水の際には圧力変調装置470を稼働せずに洗浄水には脈動を付与させずに噴出させる。
図11に表した圧力変調装置470は、前述したように、流路10内の水の流れに脈動を与えることができる。ここで、本願明細書において「脈動」とは、圧力変調装置470により生ずる圧力の変動のことである。そのため、圧力変調装置470は、流路10内の水の圧力を変動させる装置である。
圧力変調装置470は、図11に表したように、流路10に接続されるシリンダ471と、シリンダ471の内部に進退自在に設けられたプランジャ472と、プランジャ472の内部に設けられた逆止弁473と、励磁電圧を制御することでプランジャ472を進退させる脈動発生コイル474と、を有する。
そして、プランジャ472の位置が、ノズル410の側(下流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも下流側の水の圧力が増加し、ノズル410とは反対の側(上流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも下流側の水の圧力が減少するように逆止弁が配設されている。言い換えれば、プランジャ472の位置が、ノズル410の側(下流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも上流側の水の圧力は減少し、ノズル410とは反対の側(上流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも上流側の水の圧力は増加する。
そして、脈動発生コイル474の励磁を制御することにより、プランジャ472を上流側・下流側に進退させる。すなわち、流路10内の水に脈動を付加する場合(流路10内の水の圧力を変動させる場合)には、脈動発生コイル474に流す励磁電圧を制御することにより、プランジャ472をシリンダ471の軸方向(上流方向・下流方向)に進退させる。
この場合、プランジャ472は、脈動発生コイル474の励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側475に移動する。そして、脈動発生コイル474の励磁が消えると、復帰スプリング476の付勢力によって、原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング477によってプランジャ472の復帰の動作が緩衝される。プランジャ472は、その内部にダックピル式の逆止弁473を有し、上流側への逆流を防止している。
したがって、プランジャ472は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、シリンダ471内の水を加圧して下流側の流路10に押し流せるようになっている。言い換えれば、プランジャ472は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、上流側の流路10内の水を減圧してシリンダ471内に吸引することができる。この際、プランジャ原位置と、下流側に移動した位置とは常に一定であることから、プランジャ472が動作する際に下流側の流路10に送られる洗浄水の量は一定となる。
その後、原位置に復帰する際には、逆止弁473を経てシリンダ471内に洗浄水が流れ込む。そのため、次回のプランジャ472の下流側移動の際には、改めて、一定量の洗浄水が下流側の流路10に送られることになる。このようにして、図11に表した圧力変調装置470は、流路10内の水の流れに脈動を与えることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、女性局部の第1の範囲に着水するようにノズル410の第1の吐水孔411bから洗浄水を噴出するスポット吐水と、第1の範囲よりも広い第2の範囲に万遍なく着水するようにノズル410の第2の吐水孔411aから洗浄水を噴出するワイド吐水と、を実行することができる。つまり、使用者は、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。スポット吐水の着水範囲の中心部における流速は、ワイド吐水の着水範囲の流速と同等またはそれよりも遅い。
ワイド吐水によれば、中空円錐状吐水510の中空部分に粒化水流520を万遍なく行き渡らせた状態で、便座200に座った使用者の女性局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
スポット吐水によれば、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができるとともに、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを抑制することができる。そのため、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
これによれば、ビデ洗浄の用途に応じて洗浄水の着水範囲の広狭を切り替えてノズル410から噴出された洗浄水は、女性局部への着水範囲の広狭に適した着水力となって着水する。そのため、ビデ洗浄における洗浄水の着水範囲の広狭に適した着水力でビデ洗浄を実行することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ノズル410などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。