以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、操作部としてのリモコン600と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の人体局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部が内蔵されている。また、ケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者がリモコン600を操作すると、ノズル410を洋式腰掛便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
ノズル410の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水孔411が設けられている。そして、ノズル410は、吐水孔411,412から水を噴出して、便座200に座った使用者の人体局部を洗浄することができる。例えば、図1に表したノズル410では、ふたつの吐水孔411のうちの先端側の吐水孔411は、ビデ洗浄吐水用の吐水孔であり、後方側の吐水孔412は、おしり洗浄吐水用の吐水孔である。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
図2は、衛生洗浄装置の機能的な構成を示すブロック構成図であって、ノズル410から噴出される洗浄水の態様を切り替える機構を主に記載した図である。
図2に示されるように、衛生洗浄装置100は、操作部としてのリモコン600と、制御部490と、電磁弁440と、熱交換器450と、圧力変調装置470と、流路・流量制御弁480と、ノズル410とを備えている。図2において、各ブロックを破線で結んでいる場合は信号の授受があることを示し、各ブロックを実線で結んでいる場合は水の流れがあることを示している。
リモコン600は、ビデ洗浄機能やおしり洗浄機能の実行にあたって、使用者の操作を受け付けて、その操作に応じた操作信号を制御部490に送信する部分である。制御部490は、リモコン600から入力される操作信号に応じて、電磁弁440、熱交換器450、圧力変調装置470及び流路・流量制御弁480に所定の動作信号を出力する部分である。制御部490は、CPUといった演算素子と、RAMやROMといった記憶素子と、信号を送受信するためのインターフェイスとを備えている。
電磁弁440は、制御部490から入力される動作信号に応じて、弁体を弁座から離脱させ給水源から供給される洗浄水を下流側に流したり、弁体を弁座に当接させて給水源から供給される洗浄水を止めたりする役割を果たす弁である。電磁弁440の下流側には、熱交換器450と、圧力変調装置470と、流路・流量制御弁480が設けられている。
熱交換器450は、供給された水を加熱し所定温度の温水にする役割を果たす。
圧力変調装置470は、流路内の水の流れに脈動を与え、ノズル410の吐水孔411,412から噴出される水に脈動を与える役割を果たす。
流路・流量制御弁480は、電磁弁440が開かれたことで流れてくる洗浄水を、下流側に設けられている複数の流路のいずれかに所定の流量で流すために流路や流量を切り替える弁である。本実施形態の場合、流路・流量制御弁480の下流側には、四つの流路である、第一給水路と、第二給水路と、第三給水路と、第四給水路とが繋がっている。したがって、流路・流量制御弁480は、電磁弁側から流れてくる洗浄水を、第一給水路、第二給水路、第三給水路、及び第四給水路のいずれか一つ又は二つの流路に流すように弁体を切り替えるものである。流路・流量制御弁480の下流側には、ノズル410が設けられている。
ノズル410は、電磁弁440が開かれたことで下流側に流れ、流路・流量制御弁480によって振り分けられた洗浄水を、ビデ洗浄吐水又はおしり洗浄吐水に切り替えて噴出するものである。ノズル410には、ビデ洗浄吐水を行うための吐水孔411が連通されてなる第一旋回室423と、おしり洗浄吐水を行うための吐水孔412が連通されてなる第二旋回室とが形成されている。
第一旋回室423には、第一給水路427及び第二給水路428が繋がっている。また、第二旋回室には、第三給水路及び第四給水路が繋がっている。したがって、流路・流量制御弁480によって洗浄水が第一給水路427又は第二給水路428あるいは両方の給水路に流されると、その洗浄水は、第一旋回室423に供給され吐水孔411から噴出される。一方、流路・流量制御弁480によって洗浄水が第三給水路又は第四給水路あるいは両方の給水路に流されると、その洗浄水は、第二旋回室に供給され吐水孔412から噴出される。
次に、本実施形態のノズル410の構造、ならびにワイド吐水およびスポット吐水の吐水形態について、図面を参照しつつ説明する。図3は、ビデに関するワイド吐水を説明するための断面模式図である。図4は、スポット吐水を説明するための断面模式図である。
本実施形態のノズル410は、ノズル本体420と、スロート430と、を有する。ノズル410には、図示しない水源から供給された洗浄水が通過する第一給水路427と、洗浄水を旋回させて旋回流を生成可能な第一旋回室423と、吐水孔411と、第一旋回室423からの洗浄水を吐水孔411に導く連通路Rとが設けられている。この連通路Rは、第一旋回室423で生成された旋回流を噴出するオリフィス流路(絞り部)425と、オリフィス流路425から噴出された旋回流を通過させて吐水孔411に導くスロート流路431とで構成されている。また、第一旋回室423の中央部には、より安定した旋回力の旋回流を生成する旋回円柱424が設けられている。
なお、本実施形態のノズルでは、第一給水路427、第一旋回室423、オリフィス流路425がノズル本体420に設けられ、スロート流路431、吐水孔411がスロート430に設けられている。
第一旋回室423は、底部においてより大きな径を有する大径部内周壁423eと、オリフィス流路425へ向かうにつれて収縮した径を有する傾斜内周壁423fと、により形成され、中空室とされている。そして、傾斜内周壁423fは、その一端においてオリフィス流路425に接続されている。一方、第一給水路427は、第一旋回室423に偏心して接続されている。より具体的には、第一給水路427は、第一旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。
スロート430の内部には、ノズル本体420のオリフィス流路425から噴出された洗浄水が通過するスロート流路(環状流路)431が設けられている。そして、スロート流路431の一端には、スロート流路431を通過した洗浄水をスロート430の外部へ噴出する吐水孔411が形成されている。吐水孔411の近傍のスロート流路431には、吐水孔411へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されている。
スロート流路431は、オリフィス流路425から噴出された旋回流が衝突する受水面431aと、受水面431aに衝突した旋回流を内壁面に沿って流して吐水孔411に導く流水面431bと、を有する。受水面431aと流水面431bは、それぞれの内径が同一径とされた円筒形状であり、段差がないように連続して形成されている。また、スロート流路431は、オリフィス流路425よりも全長を長くしている。具体的には、スロート流路431は、オリフィス流路425の2倍〜8倍程度の全長を有している。また、スロート流路431は、オリフィス流路425の内径の1.4倍〜2.2倍程度の内径を有している。
このスロート流路431の内径が狭すぎると液膜流が形成されないし、広すぎると吐水孔411からの噴出角度が広くなりすぎて中抜けする上に洗浄水が飛び散ってしまう。また、スロート流路431が長すぎると液膜流が形成されないし、短すぎると吐水孔411からの噴出角度が広くなりすぎて中抜けする上に洗浄水が飛び散ってしまう。しかし、本実施形態のノズル410では、スロート流路431は、オリフィス流路425よりも適度に広い内径と長さを有する。そのため、適度な広がりを有する中空円錐形状の液膜流510を吐水孔411から噴出することができる。
なお、本実施形態のノズル410では、ノズル本体420とスロート430とが物理的に離されて、両者の間に隙間が設けられているが、この隙間は必ずしも設けられていなくともよい。すなわち、ノズル本体420とスロート430とが一体的に形成され、オリフィス流路425とスロート流路431とが接続されていてもよい。
ワイド吐水を実行する場合には、図示しない水源から供給される洗浄水は、第一給水路427を通過してノズル410へ供給され、第一旋回室423へ流入する。ここで、第一給水路427は、第一旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、第一旋回室423へ流入した洗浄水は、図3に表した矢印A3のように、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って後述するスポット吐水よりも速い速度で旋回する。そして、第一旋回室423において旋回した洗浄水は、旋回力を維持しつつオリフィス流路425を通過し、スロート430のスロート流路431内へ噴出される。このとき、オリフィス流路425から噴出された洗浄水は、旋回力を維持しているため、中央部に中空部分を有する中空円錐形状の液膜流として噴出される。
そして、中空円錐形状の液膜流としてスロート流路431に流入した洗浄水は、スロート流路431の受水面431aに衝突する。受水面431aは、内径が同一径とされているので、衝突によって液膜流の流速が大きく低減することはない。そのため、オリフィス流路425を通過した液膜流の流速はほとんど弱まることなくスロート流路431に導入される。受水面431aに衝突した洗浄水は、旋回力を維持しつつスロート流路431の流水面431bの内壁面に沿って流れ、吐水孔411へ導かれる。すなわち、スロート流路431を通過する洗浄水は、スロート流路431の内壁面に付着するように流れる。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水は、スロート流路431の内壁面から摩擦力による抵抗を受け、その洗浄水の流速は、吐水孔411へ向かうにつれて小さくなる。これにより、図3に表したように、吐水孔411の近傍の液膜の厚さは、ノズル本体420から噴出されたときの液膜の厚さ、あるいはスロート流路431に流入した直後の液膜の厚さよりも厚い。
また、ワイド吐水においては、後述するスポット吐水よりも大きな縮流が発生するように、吐水孔411から洗浄水を噴出している。ワイド吐水において大きな縮流を発生させているので、ワイド吐水において吐水孔411から洗浄水が噴出される際の見かけ上の流路面積を狭めることができる。したがって、ワイド吐水においては、縮流を発生させることで確実に流路を狭め、スポット吐水と比較して相対的に洗浄水の吐水流速を高めることができる。
さらに、スロート流路431を流れる洗浄水の流速は、スロート流路431の内壁面の近傍すなわち境界層よりもスロート流路431の中心部の方が速い。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水の内部には、図3に表した矢印A1のように、液膜を横断する方向に渦流が発生する。また、吐水孔411の近傍におけるスロート流路431には、吐水孔411へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されているため、吐水孔411から噴出される洗浄水は、テーパ部432に沿って流れる。このテーパ部432は、0.5〜2.0mm程度の長さで40度以内の開き角度(スロート流路431の軸心に対して20度以下の傾斜)を有している。洗浄水の広がり角度は、テーパ部432の角度に依存する。テーパ部432を通過する洗浄水が旋回流であるため、吐水孔411から噴出される洗浄水は、テーパ部432の広がり角度よりも広がるようにして噴出される。ワイド吐水が人体局部に着水した際の着水範囲を適度にするために、テーパ部432の角度を調整することが必要となる。また、洗浄水の内部には、テーパ部432によって液膜を横断する方向に渦流がより発生しやすい。
このようにスロート流路431を通過した後に吐水孔411から噴出された洗浄水は、中央部に中空部分を有する中空円錐形状の液膜流510として噴出されるが、吐水孔411からある程度離間した位置において粒化された水流(以下、説明の便宜上、「粒化水流」と称する)520へ遷移する。より具体的には、吐水孔411から噴出された中空円錐形状の液膜流510の内部には、液膜を横断する方向に渦流が発生しているため、吐水孔411からある程度離間した位置において、隣接する渦流同士の間に亀裂が生ずる。そうすると、吐水孔411から噴出された中空円錐形状の液膜流510は、図3に表したように、吐水孔411からある程度離間した位置において破砕される。このようにして、吐水孔411から噴出された中空円錐形状の液膜流510は、粒化水流520へ遷移する。そして、中空円錐形状の液膜流510が拡散する領域の内側には、粒化水流520が万遍なく行き渡る。
また、中空円錐形状の液膜流510の中空部分の圧力は、液膜流510の外側の圧力よりも小さい。これは、中空円錐形状の液膜流510の中空部分には外部から空気が入りにくく、また、その中空部分の空気は液膜流510の流れにより引き出されるためである。このようにして中空円錐形状の液膜流510の中空部分の圧力が液膜流510の外側の圧力よりも小さいことにより、中空円錐形状の液膜流510は、吐水径(円錐径)が拡大することを抑制される。
そのため、本実施形態のノズル410によれば、粒化水流520が洗浄エリア外に着水するのを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分(例えば、大腿部)が不必要に濡れることを抑制することができる。これにより、便座200に座った使用者が、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることで不快感を感ずることを抑制することができる。
さらに、粒化水流520の径は、例えば約1mmであり、径が例えば約10〜100μm程度の霧と比較すると大きい。これは、前述したように、スロート流路431を流れる洗浄水の流速は、吐水孔411へ向かうにつれて小さくなり、吐水孔411の近傍の液膜の厚さは、より厚くなるためである。つまり、液膜の厚さがより厚い状態で噴出された中空円錐形状の液膜流510を、スロート430の内部において発生した渦流により強制的に粒化するため、粒化水流520の径は、霧などと比較すると大きい。
これによれば、粒化水流520は、空気中を漂うおそれは少なく、所望の洗浄エリアの外部にまで飛散するおそれは少ない。つまり、本実施形態のノズル410によれば、粒化水流520が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることを抑制することができる。また、粒化水流520の径は、より大きいため、着水部における着水力をより高めることができる。そのため、例えば女性の生理時における経血汚れなどを、より短時間の間に落としたり浮かせたりすることができ、また、より短時間の間に洗い流すことができる。
また、中空円錐形状の液膜流510の中空部分の圧力が液膜流510の外側の圧力よりも小さいことに関して前述したが、この中空円錐形状の液膜流510の中空部分の圧力は、液膜流510が破砕されない場合の液膜流510の中空部分の圧力よりも大きい。これは、図3に表した矢印A2のように、液膜流510の中空部分の外部の空気が、隣接する渦流同士の間に生じた亀裂、あるいは破砕された液膜流510の間から中空部分に入り込むためである。これによれば、液膜流510の中空部分の圧力が小さくなりすぎることにより十分な広さの洗浄範囲を確保することができないおそれを抑制することができる。また、液膜流510の中空部分の圧力は、液膜流510が破砕されない場合の液膜流510の中空部分の圧力よりも大きいため、液膜波動が生ずることを抑制することができる。
このように、本実施形態のワイド吐水によれば、第一旋回室423で旋回流とされて、オリフィス流路425から中空円錐形状の液膜流として周囲に拡散するように噴出される。拡散するように噴出された洗浄水はスロート流路431の受水面431aに衝突した後、流水面431bに沿って流れて吐水孔411から噴出される。この際、受水面431aと流水面431bは、同一の内径となるように連続して形成されているので、受水面431aに衝突した洗浄水の流速はほとんど弱まることがない。流水面431bでは、洗浄水が内壁面に沿って流れて摩擦力を受けることによって流速が次第に弱められ、流水面431bに沿って流れる洗浄水の液膜の厚みが次第に増大する。このようにスロート流路431の流水面431bで液膜の厚みが増大された洗浄水が、中空円錐形状の液膜流510として吐水孔411から周囲に広がるように噴出される。液膜の厚みが増大された液膜流510は、吐水孔411からの噴出後の洗浄水の周囲への散らばりが抑制される。また、液膜流510は、液膜が厚くなっているので、洗浄水の着水範囲の周辺部における着水力が着水範囲の中心部よりも高くすることが可能である。
また、液膜流510は中空円錐形状であって内部が負圧であるから、吐水孔411から噴出された洗浄水は、人体局部に着水する前に粒化された水流(粒化水流520)となって中空円錐形状の吐水の内部を充填する。これにより、中抜けの無い吐水形態となるので、人体局部の広い範囲に万遍なく着水させることができる。
さらに、従来の衛生洗浄装置で実施されていたミスト吐水と異なり、人体局部周辺部に当たる洗浄水の着水力が高くなるので、人体局部の周辺部の洗浄力を高まり、局部周辺の汚れを一気にさっと洗い落とすことが可能となる。特に、生理時に経血が固着した女性局部の周辺部を一気に洗い落とすことが可能となり、ビデ洗浄機能に好適である。
オリフィス流路425はスロート流路431よりも短いので、スロート流路431に突入する前の旋回流に与える圧損を小さく抑えることができ、スロート流路431に突入する旋回流の流速が低下するのを抑制される。また、スロート流路431はオリフィス流路425よりも長いので、速い流速でスロート流路431に突入した旋回流を十分に減速させることができる。これにより、液膜流の液膜厚みを十分に厚くすることができ、着水範囲の周辺部における着水力を十分に高めることができる。
また、洗浄水(液膜流)は、オリフィス流路425よりも長い距離をスロート流路431の流水面431bに沿って流れて吐水孔411から噴出されるので、適度な広がりを有する中空円錐形状の液膜流として吐水孔411から噴出させることができる。
次に、スポット吐水の吐水形態について、図4を参照して説明する。
ノズル本体420の内部には、第一給水路427と同様に、図示しない水源から供給された洗浄水が通過する第二給水路428が設けられている。第二給水路428は、第一給水路427よりも第一旋回室423の軸心へ向かうように第一旋回室423の大径部内周壁423eに接続されている。
スポット吐水を実行する際には、図示しない水源から供給される洗浄水は、第二給水路428を通過してノズル410へ供給され、第一旋回室423へ流入する。ここで、第二給水路428は、第一給水路427よりも第一旋回室423の軸心へ向かうように第一旋回室423の大径部内周壁423eに接続されているため、第一旋回室423へ流入した洗浄水は、図4に表した矢印A4のように、旋回することなく、あるいは旋回力を低減された状態でオリフィス流路425へ流れる。そして、旋回することなく、あるいは旋回力を低減された状態でオリフィス流路425へ流れた洗浄水は、オリフィス流路425を通過し、スロート430のスロート流路431内へ噴出される。このとき、オリフィス流路425から噴出された洗浄水は、旋回力を有してしない、あるいは旋回力を低減されているため、直進流530として噴出される。
オリフィス流路425から噴出された直進流530の一部は、直進流530から分離して液滴540となる。直進流530から分離した多数の液滴540は、図4に表した矢印A5のように、スロート流路431の内壁面に衝突して減速される。そして、スロート流路431の内壁面に衝突した液滴540は、スロート流路431の内壁面に反射して再び直進流530と合流する。これにより、直進流530と周囲の空気との間において気液界面が生成される。そして、ノズル本体420から噴出された洗浄水は、直進流530と液滴540とが混在した状態で吐水孔411から噴出される。つまり、ノズル本体420から噴出された洗浄水は、水粒状に噴出される。
スポット吐水の際に吐水孔411から噴出された洗浄水は、ワイド吐水の際に吐水孔411から噴出された洗浄水のようには拡散せず、中空円錐形状の液膜流510として噴出されることはない。つまり、スポット吐水の際に吐水孔411から噴出された洗浄水は、中空の状態ではなく、中実の状態あるいは充填された状態となっている。
このように、本実施形態のスポット吐水によれば、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができる。つまり、スポット吐水の着水範囲は、ワイド吐水の着水範囲よりも狭い。使用者は、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
したがって、本実施形態によれば、使用者は、第一給水路427を通過する洗浄水の流量と、第二給水路428を通過する洗浄水の流量と、の比率を適宜設定変更することにより、より広い範囲を一気にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。
また、スポット吐水の際には、直進流530および液滴540によりスロート流路431がほぼ満水の状態となる。そのため、前述したように、スポット吐水の際に吐水孔411から噴出された洗浄水は、中実の状態あるいは充填された状態となっている。この充填された部分にオリフィス流路431から噴射される直進流が突入する。一方、ワイド吐水の際に吐水孔411から噴出された洗浄水は、図3に関して前述したように、中央部に中空部分を有する液膜、すなわち中空円錐形状の液膜流510となっている。これにより、スポット吐水の際に女性局部に着水する洗浄水の流速は、ワイド吐水の際に女性局部に着水する洗浄水の流速よりも遅い。
そのため、本実施形態のスポット吐水によれば、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができるとともに、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを抑制することができる。そのため、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
また、図3および図4に表したノズル410のように、ノズル本体420とスロート430との間に隙間が設けられた場合には、その隙間をノズル外に連通させることによってスロート流路431に空気を取り込むことができる。すなわち、この隙間が洗浄水の噴射中にオリフィス流路425やスロート流路431をノズル外の大気に連通させる通気路433となり、スロート流路431への空気導入口として機能する。これによれば、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水の吐水形態をより容易に形成することができる。さらに、スポット吐水の際に吐水孔411から噴出される洗浄水により多くの空気を混入させることができる。そのため、スポット吐水は、ワイド吐水よりもやわらかい洗浄感を与えることができる。また、洗浄水に空気を混入させることにより、洗浄水の見かけ上の体積が増すので、スポット吐水において洗浄水の流量が低減しても、量感の低下を抑えることができる。
なお、ノズル本体420とスロート430との間の隙間は、例えば、ノズル410に形成された他の吐水孔412によってノズル外の大気と連通状態にすることができる。
本実施形態では、吐水孔411から噴出される洗浄水に混入させる空気の混入量をワイド吐水よりもスポット吐水において多くすることができる。これによっても、スポット吐水は、ワイド吐水よりもやわらかい洗浄感を与えることができる。そのため、スポット吐水において、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることをより抑制することができ、より心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
さて、ノズル410は、第一旋回室423と吐水孔411との間に、第一旋回室423のオリフィス流路425から噴射される洗浄水を減速するための減速手段を設けており、ワイド吐水での洗浄水の減速量よりもスポット吐水での洗浄水の減速量がより大きくなるように減速する。
第一旋回室423における旋回流の速度をワイド吐水とスポット吐水とで異ならせることで、旋回流に速度差をつけて吐水形態を異ならせている。さらに、ワイド吐水での洗浄水の減速量よりもスポット吐水での洗浄水の減速量がより大きくなるように減速する減速手段をオリフィス流路425と吐水孔411との間に設けることで、スポット吐水による吐水流速を積極的に減速している。
具体的には、オリフィス流路425よりも吐水孔411側に、洗浄水を一時的に滞留させる水滞留部Mを設けることで第一旋回室423から噴射される洗浄水を減速するように構成している。本実施形態では、前述したノズル本体420とスロート430との間の隙間が水滞留部Mとして機能する。そのためノズル本体420とスロート430との間の隙間は0.1〜1.0mm程度の寸法を有している。この水滞留部Mに滞留する水は、例えば、オリフィス流路425からの洗浄水の噴出の初期段階に小さな水勢でオリフィス流路425から噴出された洗浄水の一部、又は、スロート流路431から落ちてくる洗浄水が滞留するものである。ワイド吐水での洗浄水の滞留量よりもスポット吐水での洗浄水の滞留量がより大きくなるように洗浄水を一時的に貯留することで、その貯留された洗浄水に第一旋回室423から噴射される洗浄水が突入することによるスポット吐水での圧力損失量がワイド吐水での圧力損失量よりも大きくなり、ワイド吐水での洗浄水の減速量よりもスポット吐水での洗浄水の減速量がより大きくなるように減速するものである。
したがって、第一旋回室423から噴出された洗浄水を利用し、貯留した洗浄水の圧力損失を利用して減速するという簡単な方法で、スポット吐水における流速を下げることができる。
この減速手段は、オリフィス流路425よりも吐水孔411側に、オリフィス流路425よりも大きな内径のスロート流路431を有している。スポット吐水ではオリフィス流路425から外周が粒化された直進流を噴出し、ワイド吐水ではオリフィス流路425から外周が液膜化された液膜流を噴出する。
ワイド吐水では、第一旋回室423のオリフィス流路425から外周が液膜化された水流を噴出して、スロート流路431に沿って液膜化されたまま吐水孔411から噴出する。一方、スポット吐水では、オリフィス流路425から外周が粒化された水流を噴出して、スロート流路431にその粒化された水流が衝突して減速される。したがって、第一旋回室423の下流にオリフィス流路425よりも大きな径のスロート流路431を設け、オリフィス流路425から噴出される水流の形態を異ならせることにより、ワイド吐水よりもスポット吐水において洗浄水を確実に減速させて噴出することが可能となる。
ノズル410では、オリフィス流路425よりも吐水孔411側で、前述した空気導入口から空気を巻き込みエジェクタ効果により洗浄水に空気を自然混入するものであって、スポット吐水における空気の混入量が、ワイド吐水より多くなるように洗浄水に空気を混入し、この空気を混入させることによる圧力損失量が、ワイド吐水での圧力損失量よりもスポット吐水での圧力損失量が大きくなって減速される。
このように、ワイド吐水での空気の混入量よりもスポット吐水での空気の混入量がより多くなるようにすることで、スロート流路431内におけるスポット吐水における圧力損失量をワイド吐水における圧力損失量よりも大きくし、結果としてスポット吐水での洗浄水の減速量がより大きくなるように減速している。したがって、オリフィス流路425から噴出された洗浄水を利用し、エジェクタ効果を利用した空気混入による洗浄水の圧力損失を利用して減速するという簡単な方法で、スポット吐水における吐水流速を下げることができる。
このように、第一旋回室423のオリフィス流路425よりも吐水孔411側に、オリフィス流路425よりも大きな内径のスロート流路431と空気導入口を設けているので、オリフィス流路425から噴出される洗浄水の態様によってその噴出される洗浄水に混入される気泡量に影響を及ぼすことができる。ワイド吐水では、オリフィス流路425から外周が液膜化された液膜流を噴出するので、空気導入口からは空気をほとんど吸い込むことなくスロート流路431に沿って液膜化されたまま進行し、そのまま吐水孔411から噴出することができる。一方、スポット吐水では、オリフィス流路425から外周が粒化された直進流を噴出するので、スロート流路431にその粒化された水流が衝突して減速される。更に、空気導入口からは空気が吸い込まれ、エジェクタ効果によって空気が混入される。したがって、第一旋回室423の下流にオリフィス流路425よりも大きな径のスロート流路431と空気導入口を設け、オリフィス流路425から噴出される水流の形態を異ならせるだけで、同一の構造でワイド吐水よりもスポット吐水において洗浄水を確実に減速させて噴出することが可能となる。
なお、洗浄水に空気を混入するにあたり、上述したように空気導入口を設けて空気を自然混入させるのに代えて、エアポンプを利用して、空気の混入量を制御してもよい。
次に、ワイド吐水およびスポット吐水における洗浄水の着水力について、図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図5は、着水部あるいは吐水孔から所定の距離だけ離れた位置における洗浄水の着水力を表すグラフ図である。
図5に表したように、本実施形態では、ワイド吐水の着水範囲は、スポット吐水の着水範囲よりも広い。言い換えれば、スポット吐水の着水範囲は、ワイド吐水の着水範囲よりも狭い。また、図5に表した例では、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力は、ワイド吐水の着水範囲の着水力が、スポット吐水の着水力をワイド吐水の着水力と同等にしてもよいし、スポット吐水の着水力をワイド吐水の着水力よりも大きくしてもよいよりも小さい。
ここで、本願明細書において、「着水力」とは、洗浄水の着水流速、着水水量、着水圧力の少なくともいずれかを意味し、また、単位面積あたりの洗浄水が有する運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。また、「着水流速」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置における洗浄水の流速をいう。また、「着水圧力」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置における単位面積あたりの運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。また、「着水水量」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置において単位時間あたりに着水する水量であり、汚れを洗い流す力をいう。
ワイド吐水と同じ流量、流速でスポット吐水を実行した場合、スポット吐水は、ワイド吐水と同じ量の洗浄水をワイド吐水よりも狭い範囲に着水させるので、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力501s−1は、図5に表すように、ワイド吐水の着水力よりも大きい。これでは、スポット吐水の際に女性局部のデリケートエリアに与える刺激が強すぎて不快感を感じさせてしまう。そこで、本実施形態では、スポット吐水を開始する際、あるいは、ワイド吐水からスポット吐水に切り替えた際に、ワイド吐水よりも洗浄水の流速を低減させ、あるいは空気の混入量を増大させて、スポット吐水の際の着水力を抑制させる。そして、このように、スポット吐水の際の着水力が抑制されるように洗浄水を噴出させて、図5に表すようにスポット吐水の着水力501sを小さくして、好ましくは、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力を、ワイド吐水の着水範囲の着水力と同等またはそれよりも小さくする。これによって、スポット吐水の際に女性局部の中心付近に位置するデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを防止して、快適なビデ洗浄を実現することが可能となる。
スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力は、ワイド吐水と同じ流量や流速でスポット吐水の着水範囲に洗浄水を噴出させた場合よりも小さくされている。さらに、ワイド吐水の着水範囲の着水力と同等またはそれよりも小さくすれば、スポット吐水は、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることをより確実に抑制しつつ、快適に洗浄することができる。つまり、スポット吐水は、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに不快感を与えることなく、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
一方、ワイド吐水は、中空円錐形状の液膜流510の中空部分に粒化水流520を万遍なく行き渡らせた状態で、便座200に座った使用者の女性局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、ワイド吐水は、所望の広い範囲を一気にさっと洗浄することができる。
これによれば、ビデ洗浄の用途に応じて洗浄水の着水範囲の広狭を切り替えてノズル410から噴出された洗浄水は、女性局部への着水範囲の広狭に適した着水力となって着水する。そのため、ビデ洗浄における洗浄水の着水範囲の広狭に適した着水力でビデ洗浄を実行することができる。
なお、ワイド吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した実線の着水力501wのように、着水範囲の全体に亘って略同一であることに限定されるわけではない。ワイド吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した破線の着水力503wのように、着水範囲の中心部よりも外周部で大きくてもよい。あるいは、ワイド吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した一点鎖線の着水力505wのように、着水範囲の中心部よりも外周部で小さくてもよい。
また、スポット吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した実線の着水力501sのように、着水範囲の全体に亘って略同一であることに限定されるわけではない。スポット吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した破線の着水力503sのように、着水範囲の中心部よりも外周部で大きくてもよい。あるいは、スポット吐水の際の着水部における着水力の分布は、図5に表した一点鎖線の着水力505sのように、着水範囲の中心部よりも外周部で小さくてもよい。
ワイド吐水およびスポット吐水の際の着水部における着水力の分布が、図5に表した着水力501w、503w、505wおよび着水力501s、503s、505sのいずれの場合でも、スポット吐水の着水範囲の中心部における着水力は、ワイド吐水の着水範囲の着水力と同等またはそれよりも小さくするのが好ましい。
ワイド吐水の際の着水部における着水力の分布が、図5に表した破線の着水力503wのように、着水範囲の中心部よりも外周部で大きい場合には、人体局部の周辺部の汚れを一気にさっと洗浄することができる。例えば女性の生理時には、経血汚れが女性局部の周囲の広い範囲に亘って固着する場合があるが、その広い範囲を一気にさっと洗浄したいという要望に応えることができる。
より具体的に説明すると、所望の洗浄エリアのうちの外周部は、女性の生理時の経血汚れが付着している場合には積極的に洗浄したいエリアである。そのため、外周部の着水力が中心部の着水力よりも大きい場合には、洗浄力の高い洗浄水が経血汚れを除去したいエリアに着水する。一方、女性のデリケートエリアには、着水力の小さい洗浄水が着水するため、必要以上に強い刺激感が加わることはない。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、より短時間の間に経血汚れを落としたり浮かせたりすることができ、なおかつ、非常に心地よい洗浄感の洗浄を実現することができる。また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、より短時間の間に経血汚れを洗い流すことができ、なおかつ、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、女性が生理時に使用する装置として好適である。特に、女性局部の周辺部では、経血汚れが乾燥して固着する傾向にあるが、外周部の着水力が中心部の着水力よりも大きい場合には、固着した経血汚れを洗い落とすのに好適である。
また、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、着水部における着水力の分布にかかわらず、従来のビデ洗浄よりも広い範囲に一気に着水させることができる。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、ノズル410を前後方向および左右方向(図1に表した矢印を参照)に移動させることにより着水位置を移動させたり、便座200に座った使用者自身が着座位置を移動することにより着水位置を移動させたりする必要はない。そのため、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、女性局部を広い範囲で洗浄する際になぞられたような感覚を与えるおそれは少ない。これによっても、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
なお、ワイド吐水とスポット吐水の着水力は、図5に表した以外の形態とすることも可能である。例えば、スポット吐水の着水力がワイド吐水の着水力よりも多少大きくても、スポット吐水の際の洗浄水の流速や流量を小さくすることにより、着水力を抑制して、刺激感を弱めることが可能である。特に、ワイド吐水の実行途中に、リモコン操作によってスポット吐水に切り替えた際には、ほとんど止水時間がなく洗浄範囲が切り替わる。そのため、広い範囲に拡散して噴出されていた洗浄水はより狭い範囲に集中して着水するので着水力が増加して強い刺激を感じやすくなるが、スポット吐水を実行する際に着水力を抑制するように流速や流量を低減すれば女性局部のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わるのを抑えることができる。これによっても、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
次に、本実施形態のノズル本体410の具体例について、図面を参照しつつ説明する。図7は、本実施形態のノズルからスロートを除いたノズル本体の具体例を例示する斜視模式図である。また、図8は、本具体例のノズル本体を上方から眺めた上面模式図である。
図7〜8に示されるように、第一給水路427及び第二給水路428は、第一旋回室423の下端側(オリフィス流路425が形成されている上端とは反対側の端部)に繋がるように配置されている。したがって、第一給水路427及び第二給水路428から供給された洗浄水は、旋回円柱424周りに旋回しながらオリフィス流路425へと向かうように構成されている。第一給水路427から供給される洗浄水によって第一旋回室423内に大きな旋回流が形成されるように構成されている一方で、第二給水路428から供給される洗浄水によっては第一旋回室423内にはほとんど旋回しない水流あるいは旋回力の小さな旋回流が発生するように構成されている。
次に、本実施形態の圧力変調装置470の具体例について、図面を参照しつつ説明する。図9は、本実施形態の圧力変調装置の具体例を例示する断面模式図である。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、図2に関して前述したように、流路内の水の流れに脈動を与え、ノズル410の吐水孔411から噴出される水に脈動を与える圧力変調装置470を備える。圧力変調装置470は、制御部490からの指令に基づいてスポット吐水の際に稼動し、流路10内の水の流れに脈動を与える。この脈動が付与された水の流れは、吐水孔から速度差を持った状態で噴出される。速度差を持った洗浄水は、噴出後に速度の遅い部位に速度の速い部位が追いつく現象を発生させ、洗浄水が合体されることにより、洗浄水の断面積が断続的に大きくなる。そのため、スポット吐水において洗浄水の流量が低減しても、量感の低下を抑えることができ、洗浄感をより高めることができる。
なお、ワイド吐水の際には圧力変調装置470を稼働せずに洗浄水には脈動を付与させずに噴出させる。
図9に表した圧力変調装置470は、前述したように、流路10内の水の流れに脈動を与えることができる。ここで、本願明細書において「脈動」とは、圧力変調装置470により生ずる圧力の変動のことである。そのため、圧力変調装置470は、流路10内の水の圧力を変動させる装置である。
圧力変調装置470は、図11に表したように、流路10に接続されるシリンダ471と、シリンダ471の内部に進退自在に設けられたプランジャ472と、プランジャ472の内部に設けられた逆止弁473と、励磁電圧を制御することでプランジャ472を進退させる脈動発生コイル474と、を有する。
そして、プランジャ472の位置が、ノズル410の側(下流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも下流側の水の圧力が増加し、ノズル410とは反対の側(上流側)に変化した場合には、圧力変調装置470よりも下流側の水の圧力が減少するように逆止弁が配設されている。
そして、脈動発生コイル474の励磁を制御することにより、プランジャ472を上流側・下流側に進退させる。すなわち、流路10内の水に脈動を付加する場合(流路10内の水の圧力を変動させる場合)には、脈動発生コイル474に流す励磁電圧を制御することにより、プランジャ472をシリンダ471の軸方向(上流方向・下流方向)に進退させる。
この場合、プランジャ472は、脈動発生コイル474の励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側475に移動する。そして、脈動発生コイル474の励磁が消えると、復帰スプリング476の付勢力によって、原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング477によってプランジャ472の復帰の動作が緩衝される。プランジャ472は、その内部にダックピル式の逆止弁473を有し、上流側への逆流を防止している。
したがって、プランジャ472は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、シリンダ471内の水を加圧して下流側の流路10に押し流せるようになっている。言い換えれば、プランジャ472は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、上流側の流路10内の水を減圧してシリンダ471内に吸引することができる。この際、プランジャ原位置と、下流側に移動した位置とは常に一定であることから、プランジャ472が動作する際に下流側の流路10に送られる洗浄水の量は一定となる。
その後、原位置に復帰する際には、逆止弁473を経てシリンダ471内に洗浄水が流れ込む。そのため、次回のプランジャ472の下流側移動の際には、改めて、一定量の洗浄水が下流側の流路10に送られることになる。このようにして、図9に表した圧力変調装置470は、流路10内の水の流れに脈動を与えることができる。
次に、本実施形態のノズルの変形例について、図面を参照しつつ説明する。図10は、本実施形態のノズルの変形例を示す斜視図である。また、図11は、本変形例のノズルの先端部の断面図である。
この変形例のノズル410は、前述した実施形態のノズル410のノズル本体420とスロート430とが一体化され、連通路Rを構成するオリフィス流路425とスロート流路431が一体となっている。
そして、スロート流路431はオリフィス流路425よりも、内径が大きく、全長が長く形成されている。具体的には、オリフィス流路425が内径1.35mm、全長1.0mmであるのに対して、スロート流路431は内径2.4mm、全長6.6mmとされている。オリフィス流路425とスロート流路431の内径差によって、スロート流路431のオリフィス流路側の端部には段部431dが形成されている。この段部431dが、洗浄水の噴出中に水が一時滞留する水滞留部Mとなる。また、この水滞留部Mには、ノズル本体420を水平方向に貫通するように通気路433が形成され、水が滞留していない状態では水滞留部Mが空気導入口として機能するようになっている。なお、この通気路433は、高さが約0.4mmと狭い。このため、水滞留部Mに滞留した水は通気路433から排出されにくく、水滞留部Mには十分に水が滞留する。
このスロート流路431の内径が狭すぎると液膜流が形成されないし、広すぎると吐水孔411からの噴出角度が広くなりすぎて中抜けする上に洗浄水が飛び散ってしまう。また、スロート流路431が長すぎると液膜流が形成されないし、短すぎると吐水孔411からの噴出角度が広くなりすぎて中抜けする上に洗浄水が飛び散ってしまう。しかし、本変形例では、スロート流路431は、オリフィス流路425よりも適度に広い内径と長さを有する。そのため、適度な広がりを有する中空円錐形状の液膜流を吐水孔411から噴出することができる。また、スロート流路431は、オリフィス流路425よりも適度に長い全長を有する。そのため、スロート流路431に突入した中空円錐形状の液膜流は、液膜の厚みが十分に厚くなる。
スロート流路431の下流側の端部には、下流側に向けて流路径が拡大するテーパ部432を形成している。このテーパ部の開き角度は約22度(スロート流路431の軸心に対して11度傾斜)とされている。このため、第一旋回室423から旋回流が供給された場合、吐水孔411から中空円錐形状に噴出される液膜厚みが増大された液膜流は、このテーパ部432に沿って約30度の噴出角度で吐水孔411から噴出され、人体局部の直径約35mmの範囲に洗浄水が着水するワイド吐水となる。他方、第一旋回室423から旋回力の小さな直進流が供給された場合には、ワイド吐水より狭い範囲に洗浄水が着水するスポット吐水となる。
このように、この変形例においても、前述した実施形態のノズルと同様に、ワイド吐水とスポット吐水を適宜切り替えて実行することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、ビデ洗浄を例示してノズル構造を説明したが、おしり洗浄についてもビデ洗浄と同様のノズル構造を採用して、スポット吐水とワイド吐水を実行することも可能である。
また、本実施形態では、スロート流路431の先端部にテーパ部432を形成したが、ワイド吐水においては旋回成分をもった洗浄水が吐水孔から噴出するので、テーパ部がなくても広がりをもった吐水を行うことができる。