以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。但し、便蓋300は、必ずしも設けられていなくともよい。
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の人体局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えば図示しないリモコンなどの操作部を操作すると、ノズル410を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
ノズル410の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水孔411が設けられている。そして、ノズル410は、その先端部に設けられた吐水孔411から水を噴射して、便座200に座った使用者の人体局部を洗浄することができる。例えば、図1に表したノズル410では、ふたつの吐水孔411のうちの一方の吐水孔411は、ビデ洗浄用の吐水孔であり、他方の吐水孔411は、おしり洗浄用の吐水孔である。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表す概念模式図である。
図3および図4は、本実施形態のノズルから吐水された洗浄水の状態の概略を表す概念模式図である。
なお、図4は、図3に表した矢印A15の方向にみたときの着水位置における洗浄水の状態の概略を表す概念模式図である。
本実施形態のノズル410は、図1に関して前述したように、便座200に座った使用者の人体局部に向けて吐水孔411から洗浄水500を噴射することができる。このとき、洗浄水500は、図2に表したように、中央部に中空部分を有する液膜として中空円錐状に吐水孔411から吐水される。つまり、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、ノズル410の吐水孔411から中空円錐状に洗浄水を吐水する吐水手段401を備える。以下、説明の便宜上、このように中空円錐状に吐水された洗浄水を「中空円錐状吐水」と称する。
中空円錐状吐水510の中空部分では、液膜の流れに追随して中空円錐状吐水510の中空部分から外側へ排出される空気量が多くなる。一方で、中空円錐状吐水510の中空部分に入る空気の通り道は、中空円錐状吐水510の液膜によって遮られるため、中空円錐状吐水510の中空部分から外側へ排出される空気の中央部に限られることになる。そのため、中空円錐状吐水510の中空部分に入ってくる空気量が少なくなり、中空円錐状吐水510の中空部分では、外気と比べて圧力が低くなった負圧状態が発生している。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、中空円錐状吐水510が人体局部に着水する前に、中空円錐状吐水510の中空部分を充填するように中空円錐状吐水510の液膜を破砕する破砕手段を備える。つまり、破砕手段は、詳細については後述するが、図2に表したように、中空円錐状吐水510の液膜を破砕することにより粒化された水流(以下、説明の便宜上、「粒化水流」と称する)を生成する。そして、液膜の進行方向に進行する粒化水流520の一部は、中空円錐状吐水510の中空部分に発生した負圧によって、その中空部分に流れ込む。これにより、破砕手段は、その粒化水流520により中空円錐状吐水510の中空部分を充填することができる。
すなわち、図1においては、ノズル410から噴射された洗浄水500は、まず中空円錐状吐水510として吐水孔411から吐水され、粒化水流520により中空部分を充填された状態で便座200に座った使用者の人体局部のより広い範囲に着水できる。
図2に表したように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、吐水手段401よりも下流側であってノズル410の吐水孔411よりも上流側に設けられた液膜厚さ拡大手段402を備える。この液膜厚さ拡大手段402は、中空円錐状吐水510の液膜の厚さを拡大させる。より具体的に説明すると、液膜厚さ拡大手段402は、ノズル410の吐水孔411から吐水された中空円錐状吐水510の液膜の厚さD2を、吐水手段401から吐水された中空円錐状吐水の液膜の厚さD1よりも厚くすることができる。そのため、中空円錐状吐水510の液膜を破砕することにより生成された粒化水流520の径は、例えば約1mm(ミリメートル)程度であり、径が例えば約10〜100μm(ミクロン)程度の霧と比較すると大きい。
図3(a)および図3(b)に表したように、ノズル410から噴射された洗浄水500は、第1の吐水501と、第2の吐水502と、を有する。つまり、ノズル410は、第1の吐水501と、第2の吐水502と、を結果的に吐水する形となっている。第1の吐水501の流速は、第2の吐水502の流速よりも速い。言い換えれば、第2の吐水502の流速は、第1の吐水501の流速よりも遅い。つまり、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100では、第2の吐水502の流速よりも速い流速を有する第1の吐水501と、第1の吐水501の流速よりも遅い流速を有する第2の吐水502と、が生成される。
図3(a)に表したように、第1の吐水501は、第1の中空円錐状吐水511として吐水孔411から吐水され、着水する前に破砕されて第1の粒化水流521となる。そして、複数の第1の粒化水流521は、第1の水流群521aを形成する。
図3(b)に表したように、第2の吐水502は、第2の中空円錐状吐水512として吐水孔411から吐水され、着水する前に破砕されて第2の粒化水流522となる。そして、複数の第2の粒化水流522は、第2の水流群522aを形成する。
つまり、中空円錐状吐水510は、第1の中空円錐状吐水511と、第2の中空円錐状吐水512と、を含む。粒化水流520は、第1の粒化水流521と、第2の粒化水流522と、を含む。
第1の吐水501の流速は、第2の吐水502の流速よりも速いため、第1の中空円錐状吐水511の液膜の厚さは、第2の中空円錐状吐水512の液膜の厚さよりも厚い。また、第1の中空円錐状吐水511の液膜の長さは、第2の中空円錐状吐水512の液膜の長さよりも長い。つまり、第1の中空円錐状吐水511の液膜は、第2の中空円錐状吐水512の液膜と比較して、より厚くなった状態およびより長くなった状態で破砕され第1の粒化水流521となる。そのため、第1の粒化水流521は、第2の粒化水流522と比較すると、より大きい粒径およびより速い流速を有する。
前述したように、第1の中空円錐状吐水511の液膜は、第2の中空円錐状吐水512の液膜と比較して、より長くなった状態で、すなわち吐水孔411からより遠い位置で破砕される。そのため、第1の中空円錐状吐水511の液膜は、第2の中空円錐状吐水512の液膜と比較して、より広がった状態で破砕される。そのため、図3(a)に表したように、第1の粒化水流521は、第2の粒化水流522と比較して、より大きい粒径およびより速い流速を有する状態で、更に大部分の第1の粒化水流521が中空部分に充填される前に、人体局部の外周部に着水する。
言い換えれば、第1の中空円錐状吐水511の液膜は、第2の中空円錐状吐水512の液膜と比較して、人体局部に近い位置で破砕され、より広がった状態で破砕される。そのため、第1の吐水501は、第2の吐水502ほどには第1の粒化水流521により中空部分が充填されることなく人体局部の外周部に着水する。そのため、図4に表したように、第1の吐水501(あるいは第1の水流群521a)は、リング状の吐水として人体局部の外周部に着水する。
そして、図3(a)に表した矢印A11および矢印A12のように、第1の吐水501は、第1の粒化水流521として人体局部の外周部に着水し、人体局部の中心部の方向へ向かう流れを有する。
一方、第2の吐水502は、第1の吐水501とは反対の作用を有する。すなわち、第2の中空円錐状吐水512の液膜は、第1の中空円錐状吐水511の液膜と比較して、より薄い状態およびより短い状態で破砕され第2の粒化水流522となる。そのため、第2の粒化水流522は、第1の粒化水流521と比較すると、より小さい粒径およびより遅い流速を有する。
また、第2の中空円錐状吐水512の液膜は、第1の中空円錐状吐水511の液膜と比較して、あまり広がらない状態で破砕される。そのため、図3(b)に表したように、第2の粒化水流522は、第1の粒化水流521と比較して、より小さい粒径およびより遅い流速を有する状態で、更に、中空部分に充填されて、人体局部の中心部に着水する。
言い換えれば、第2の中空円錐状吐水512の液膜は、第1の中空円錐状吐水511の液膜と比較して、人体局部から遠い位置で破砕され、あまり広がらない状態で破砕される。そのため、第2の粒化水流522は、第1の粒化水流521と比較して、より長い時間にわたって中空部分に流れ込む。そして、第2の吐水502は、第1の吐水501と比較して、第2の粒化水流522により中空部分がより充填された状態で人体局部の中心部に着水する。そのため、図4に表したように、第2の吐水502(あるいは第2の水流群522a)は、中実状の吐水として人体局部の中心部に着水する。
そして、図3(b)に表した矢印A13および矢印A14のように、第2の吐水502は、第2の粒化水流522として人体局部の中心部に着水し、人体局部の外周部の方向へ向かう流れを有する。
本実施形態によれば、より大きい粒径およびより速い流速を有する第1の粒化水流521は、人体局部の近傍のうちで量感を感じやすい人体局部の外周部にリング状の吐水として着水する。そのため、第1の吐水501は、十分な量感あるいはしっかりとした量感を与えることができる。一方、より小さい粒径およびより遅い流速を有する第2の吐水502は、人体局部の中心部に中実状の吐水として着水する。そのため、第2の吐水502は、洗浄力を確保しつつ、人体局部の中心部の汚れをさっと洗い流し、人体局部の中心部を優しく洗浄することができる。これにより、例えば直進流が人体局部の中心部に着水する場合と比較して、人体局部の中心部に強い刺激が必要以上に加わることを抑えることができる。例えば、痔や、裂傷や、過度の清拭による擦り傷などが人体局部に存在する使用者に対しても、快適なおしり洗浄を実現することができる。
また、人体局部における第1の吐水501(あるいは第1の水流群521a)の水量は、人体局部における第2の吐水502(あるいは第2の水流群522a)の水量よりも多い。そのため、第1の吐水501は、おしり洗浄に求められる十分な量感を与えることができる。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置は、ノズル410から吐水される洗浄水500の水勢を使用者が調整できる機能を備える。
ここでまず、比較例にかかる衛生洗浄装置について説明する。比較例にかかる衛生洗浄装置は、ノズルから吐水される洗浄水の水量を調整することで水勢を変化させる。そのため、より強い水勢が設定された場合には、水量が多くなる。そのため、洗浄力は高くなり、人体局部における着水力は大きくなる。一方、より弱い水勢が設定された場合には、人体局部における着水力は小さくなる。そのため、より弱い水勢が設定された場合には、使用者にとって優しい洗浄となる一方で、水量が少ないため洗浄力が低くなる場合がある。
これに対して、図2に表したように、本実施形態にかかる衛生洗浄装置は、水勢調整手段406を備える。水勢調整手段406は、洗浄水500が人体局部に着水する際の着水力を調整することができる。また、水勢調整手段406は、使用者により設定された水勢に応じて、第1の水流群521aおよび第2の水流群522aが人体局部に着水するタイミングをそれぞれ変化させることができる。これについて、図面を参照しつつさらに説明する。
図5は、着水位置の近傍を通過する粒子の空間占有率を例示するグラフ図である。
後に詳述するように、本実施形態の水勢調整手段406は、中空円錐状吐水510の液膜の流速および粒化水流520の流速を変化させることができる。これにより、水勢調整手段406は、第1の水流群521aおよび第2の水流群522aが人体局部に着水するタイミングをそれぞれ変化させることができる。
例えば、「水勢4」および「水勢5」が設定された場合を例に挙げて、説明する(図5参照)。なお、「水勢3」が設定された場合には、水勢調整手段406は、中空円錐状吐水510の液膜の流速および粒化水流520の流速を変化させない。
「水勢4」が設定された場合には、水勢調整手段406は、中空円錐状吐水510の液膜の流速および粒化水流520の流速を変化させ、第1の水流群521aと第2の水流群522aとを互いに異なるタイミングで人体局部に着水させる。
一方、「水勢5」が設定された場合には、水勢調整手段406は、中空円錐状吐水510の液膜の流速および粒化水流520の流速を変化させ、第1の水流群521aと第2の水流群522aとを略同じタイミングで人体局部に着水させる。
なお、「略同じタイミング」という範囲には、連続した吐水であると使用者が感じる周波数(知覚限界周波数)の範囲内において異なるタイミングが含まれるものとする。知覚限界周波数の範囲は、例えば約15ヘルツ(Hz)〜100Hz程度である。
図5に表したように、水勢調整手段406は、中空円錐状吐水510の液膜の流速および粒化水流520の流速を変化させることで、「水勢4」および「水勢5」が設定されたそれぞれの場合において、着水位置の近傍を通過する粒子(液滴あるいは粒化水流)の空間占有率が高い状態と低い状態とを交互に生成することができる。
図5に表したように、「水勢5」が設定された場合の空間占有率のピーク値は、「水勢4」が設定された場合の空間占有率のピーク値よりも高い。ここで、本願明細書において「空間占有率」とは、単位時間当たりの単位体積当たりの液滴が占める体積の比率あるいは割合をいうものとする。
知覚限界周波数の範囲内において、互いに異なる粒径を有する第1の水流群521aと第2の水流群522aとを略同じタイミングで人体局部に着水させるため、使用者に対して、太い一つの水流が着水していると感じさせることができる。そのため、「水勢5」が設定された場合の人体局部における単位時間当たりの着水力は、「水勢4」が設定された場合の人体局部における単位時間当たりの着水力よりも大きい。
ここで、本願明細書において、「着水力」とは、洗浄水500の着水流速、着水水量、着水圧力の少なくともいずれかを意味し、また、単位時間当たりの単位面積あたりの洗浄水が有する運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。また、「着水流速」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置における洗浄水500の流速をいう。また、「着水圧力」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置における単位面積あたりの運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。また、「着水水量」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置において単位時間あたりに着水する水量であり、汚れを洗い流す力をいう。
そのため、「水勢5」が設定された場合には、「水勢4」が設定された場合と比較すると、量感を与える強い吐水であると使用者に認識させることができる。ここで、本願明細書において「量感」とは、水量がたっぷりとした太い水流が肌表面に着水する時に感じる皮膚感覚、あるいは、多い流量で汚れを洗い流す感覚をいうものとする。
一方で、「水勢4」および「水勢5」が設定されたそれぞれの場合において、水勢調整手段406に供給される水量は、略同じである。また、本発明者の検討の結果、汚れを落とすために必要な一定以上の着水力を洗浄水が有していれば、そのときの洗浄力は略同じであることが分かった。そのため、「水勢4」が設定された場合の洗浄力は、「水勢5」が設定された場合の洗浄力と略同じである。これにより、水勢調整手段406に供給される水量を変えなくとも、洗浄力を確保し量感を維持しつつ、水勢を調整することができる。
また、ノズル410の進出距離の違いにより、吐水孔411から人体局部までの距離が変わる場合がある。これに対して、本実施形態では、水勢調整手段406が第1の水流群521aおよび第2の水流群522aが人体局部に着水するタイミングをそれぞれ変化させることで、吐水孔411から人体局部までの距離が変わる場合でも第1の水流群521aと第2の水流群522aとを略同じタイミングで人体局部に着水させることができる。そのため、ノズル410の進出状態によらず、量感を与える強い吐水であると使用者に認識させることができる。
次に、本実施形態のノズル410の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態のノズルの具体例を例示する断面模式図である。
また、図7は、スロートの変形例を例示する断面模式図である。
本具体例のノズル410は、図6に表したように、ノズル本体(吐水手段)420と、スロート(液膜厚さ拡大手段および破砕手段)430と、を有する。ノズル本体420の内部には、図示しない水源から供給された洗浄水が通過するノズル本体流路421と、旋回流を生成可能な旋回室423と、旋回室423からの洗浄水をスロート430へ導く連通路425と、が設けられている。また、旋回室423の中央部には、より安定した旋回力の旋回流を生成する突設部424が設けられている。
旋回室423は、底部においてより大きな径を有する大径部内周壁423eと、連通路425へ向かうにつれて収縮した径を有する傾斜内周壁423fと、により形成され、中空室とされている。そして、傾斜内周壁423fは、その一端において連通路425に接続されている。一方、ノズル本体流路421は、旋回室423に偏心して接続されている。より具体的には、ノズル本体流路421は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。
スロート430は、筒状に形成されている。そして、スロート430の内部には、ノズル本体420の連通路425から吐水された洗浄水が通過するスロート流路431が設けられている。そして、スロート流路431の一端には、スロート流路431を通過した洗浄水をスロート430の外部へ吐水する吐水孔433が形成されている。図6に表した吐水孔433は、図1および図2に表した吐水孔411に相当する。吐水孔433の近傍のスロート流路431には、吐水孔433へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されている。
なお、本具体例のノズル410では、ノズル本体420とスロート430との間に隙間が設けられているが、この隙間は必ずしも設けられていなくともよい。すなわち、ノズル本体420とスロート430とが一体的に形成され、連通路425とスロート流路431とが接続されていてもよい。
図示しない水源から洗浄水がノズル410へ供給されると、その洗浄水は、ノズル本体流路421を通過して旋回室423へ流入する。ここで、ノズル本体流路421は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、旋回室423へ流入した洗浄水は、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回する。そして、旋回室423において旋回した洗浄水は、旋回力を維持しつつ連通路425を通過し、連通路425の一端(吐水口)からスロート430のスロート流路431内へ吐水される。このとき、ノズル本体420から吐水された洗浄水は、旋回力を維持しているため、中央部に中空部分を有する液膜として中空円錐状に吐水される。
そして、ノズル本体420から中空円錐状に吐水された洗浄水は、スロート流路431の内壁で受け止められる。続いて、スロート流路431に流入した洗浄水は、旋回力を維持しつつスロート流路431の内壁に沿って流れ、吐水孔433へ導かれる。すなわち、スロート流路431を通過する洗浄水は、スロート流路431の内壁に付着するように流れる。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水は、スロート流路431の内壁から摩擦力による抵抗を受け、その洗浄水の流速は、吐水孔433へ向かうにつれて遅くなる。これにより、図6に表したように、吐水孔433の近傍の液膜の厚さは、ノズル本体420から吐水されたときの液膜の厚さ、あるいはスロート流路431に流入した直後の液膜の厚さよりも厚い。あるいは、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510の液膜の厚さD2は、ノズル本体420から吐水された中空円錐状吐水の液膜の厚さD1よりも厚い。つまり、本具体例では、ノズル本体420は、図2に関して前述した吐水手段401として機能する。
さらに、スロート流路431を流れる洗浄水の流速は、スロート流路431の内壁の近傍すなわち境界層よりもスロート流路431の中心部の方が速い。つまり、スロート430は、スロート流路431の内壁の近傍を流れる洗浄水の流速と、スロート流路431の内壁の近傍よりも中心部の側を流れる洗浄水の流速と、を異ならせることができる。言い換えれば、スロート430は、洗浄水の液膜の外側(スロート流路431の内壁の側)の流れと、洗浄水の液膜の内側(スロート流路431の中心部の側)の流れと、の間において速度差をつけることができる。これは、液膜の外側(スロート流路431の内壁の側)の洗浄水が、液膜の内側(スロート流路431の中心部の側)の洗浄水よりも大きな摩擦力をスロート流路431の内壁から受けることにより、内側の洗浄水よりも減速するためである。
そのため、スロート流路431を流れる洗浄水の内部には、図6に表した矢印A1のように、液膜を横断する方向に渦流が発生する。また、吐水孔433の近傍におけるスロート流路431には、吐水孔433へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されているため、吐水孔433から吐水される洗浄水は、テーパ部432に沿って流れる。そのため、吐水孔433から吐水される洗浄水の内部には、液膜を横断する方向に渦流がより発生しやすい。
そうすると、吐水孔433から吐水された洗浄水は、中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として吐水されるが、吐水孔433からある程度離間した位置において粒化水流520へ遷移する。より具体的には、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510の内部には、液膜を横断する方向に渦流が発生しているため、吐水孔433からある程度離間した位置において、隣接する渦流同士の間に亀裂が生ずる。そうすると、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、図6に表したように、吐水孔433からある程度離間した位置において破砕される。このようにして、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。つまり、本具体例のスロート430は、液膜厚さ拡大手段402として機能するとともに、破砕手段としても機能する。
なお、破砕手段は、スロート430に限定されるわけではない。例えば、破砕手段は、液流や気流などを生成可能な図示しない流体噴射装置を有していてもよい。図示しない流体噴射装置は、液流や気流を図示しない噴射孔から噴射し、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510に衝突させることができる。このようにして、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、噴射孔から噴射された液流や気流により破砕され、粒化水流520へ遷移してもよい。
図7に表した変形例のように、スロート流路の内壁に螺旋状溝部435が形成されている場合には、スロート流路を流れる洗浄水は、その螺旋状溝部435からより大きな抵抗を受ける。より具体的には、スロート流路を流れる洗浄水は、スロート流路の流入側(ノズル本体420の連通路425の側)よりもスロート流路の流出側(吐水孔433の側)においてより大きな抵抗を受ける。そして、スロート流路を流れる洗浄水の旋回成分の速度は維持され、その直進成分の速度は減速される。
これによれば、スロート流路に流入した洗浄水は、スロート流路の流入側において徐々に減速し、スロート流路の流出側において一気に減速する。そのため、ノズル本体420から吐水されスロート流路に流入した洗浄水が、速度がより速いときにより大きな抵抗を受けることで、あるいは衝撃を受けることで粒化することを抑制することができる。そのため、本変形例では、スロート流路を流れる洗浄水を液膜の状態で維持しつつ、より安定して減速させることができる。これにより、より確実に液膜の厚さを拡大することができる。
また、スロート流路を流れる洗浄水と、螺旋状溝部435と、の接触時間は、螺旋状溝部435が設けられていない場合よりも長い。そのため、本変形例では、スロート流路を流れる洗浄水は、螺旋状溝部435が設けられていない場合よりも長い時間に亘って螺旋状溝部435から摩擦力を受ける。これにより、洗浄水の液膜の外側(スロート流路の内壁の側)の流れと、洗浄水の液膜の内側(スロート流路の中心部の側)の流れと、の間における速度差は、螺旋状溝部435が設けられていない場合よりも大きい。
そのため、本変形例のスロート流路を流れる洗浄水の液膜の厚さは、図6に表した具体例のスロート流路431を流れる洗浄水の液膜の厚さよりも厚い。つまり、スロート流路の内壁に螺旋状溝部435を形成することにより、吐水孔433の近傍の液膜の厚さ、あるいは吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510の液膜の厚さD2をより厚くすることができる。
次に、水勢調整手段について、図面を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態の水勢調整手段が有する脈動発生手段の内部構造を例示する断面模式図である。
また、図9は、本実施形態の脈動発生手段の動作を説明するためのタイミングチャートである。
なお、図9(a)は、本実施形態の脈動発生手段に印加する電圧パルスを例示するグラフ図である。また、図9(b)は、プランジャの変位を例示するグラフ図である。また、図9(c)は、脈動発生手段の下流側の水の流速を例示するグラフ図である。
図9(a)〜図9(c)に表した横軸は、時間を表している。但し、それぞれの時間軸が互いに揃っているわけではない。
本実施形態の水勢調整手段406は、脈動発生手段470を有する。脈動発生手段470は、ノズル本体流路421内の水の流れに脈動を与え、吐水孔433から吐水される洗浄水に脈動を与えることができる。ここで、本願明細書において「脈動」とは、脈動発生手段470により生ずる圧力の変動のことである。そのため、脈動発生手段470は、ノズル本体流路421内の水の圧力を変動させる装置である。
脈動発生手段470は、図8に表したように、ノズル本体流路421に接続されるシリンダ471と、シリンダ471の内部に進退自在に設けられたプランジャ472と、プランジャ472の内部に設けられた逆止弁473と、励磁電圧を制御することでプランジャ472を進退させる脈動発生コイル474と、を有する。
そして、プランジャ472の位置が、ノズル410の側(下流側)に変化した場合には、脈動発生手段470よりも下流側の水の圧力が増加し、ノズル410とは反対の側(上流側)に変化した場合には、脈動発生手段470よりも下流側の水の圧力が減少するように逆止弁が配設されている。言い換えれば、プランジャ472の位置が、ノズル410の側(下流側)に変化した場合には、脈動発生手段470よりも上流側の水の圧力は減少し、ノズル410とは反対の側(上流側)に変化した場合には、脈動発生手段470よりも上流側の水の圧力は増加する。
そして、脈動発生コイル474の励磁を制御することにより、プランジャ472を上流側・下流側に進退させる。すなわち、ノズル本体流路421内の水に脈動を付加する場合(ノズル本体流路421内の水の圧力を変動させる場合)には、脈動発生コイル474に供給する励磁電圧を制御することにより、プランジャ472をシリンダ471の軸方向(上流方向・下流方向)に進退させる。
つまり、水勢調整手段406は、図示しない制御部と、図示しない例えば電源などの電圧供給手段と、を有する。そして、図示しない制御部は、脈動発生コイル474に供給する励磁電圧を制御し、図示しない電圧供給手段を制御することで脈動発生コイル474に電圧を供給する。これにより、水勢調整手段406は、脈動発生手段470に電圧を印加し、すなわち脈動発生コイル474に電圧を供給し、プランジャ472をシリンダ471の軸方向に進退させることができる。
例えば、水勢調整手段406は、図9(a)に表した電圧パルスを脈動発生手段470に印加する。なお、本願明細書において「パルス」という範囲には、矩形波だけではなく、信号が周期的に変動する波形が含まれるものとする。図9(b)に表したように、印加電圧がオン状態の間(電圧パルスのON(オン)時間の間)、プランジャ472は、脈動発生コイル474の励磁により図示する原位置(プランジャ原位置)から下流側(Y方向)475に移動する。そうすると、図9(c)に表したように、シリンダ471内の水は、プランジャ472により加圧および加速され、下流側のノズル本体流路421に押し流される。言い換えれば、プランジャ472は、プランジャ原位置から下流側へ移動する際には、上流側のノズル本体流路421内の水を減圧してシリンダ471内に吸引することができる。この際、プランジャ原位置と下流側に移動した位置とが一定である場合には、すなわち電圧パルスのオン時間(電圧パルスの幅)が一定である場合には、プランジャ472が動作する際に下流側のノズル本体流路421に送られる洗浄水の量は一定となる。
一方で、電圧パルスのオン時間が一定ではない場合には、プランジャ472が動作する際に下流側のノズル本体流路421に送られる洗浄水の量は一定とはならない。例えば、電圧パルスのオン時間が長いほど、プランジャ472のY方向への変位は、より大きい。そのため、電圧パルスのオン時間が長いほど、シリンダ471内の水は、プランジャ472により、より加圧および加速される。その結果、下流側のノズル本体流路421に押し流される水の水量は、瞬間的に増える。このときに吐水孔433から吐水される洗浄水500が、第1の吐水501である。
続いて、水勢調整手段406が脈動発生手段470への電圧の印加を停止すると、図9(b)に表したように、脈動発生コイル474の励磁が消え、プランジャ472は、復帰スプリング476の付勢力によって上流側(−Y方向)に移動し原位置に復帰する。この際、緩衝スプリング477によってプランジャ472の復帰の動作が緩衝される。プランジャ472は、その内部にダックビル式の逆止弁473を有し、上流側への逆流を防止している。
また、プランジャ472が原位置に復帰する際には、逆止弁473を経てシリンダ471内に洗浄水が流れ込む。この際、図9(c)に表したように、脈動発生手段470よりも下流側の水は、プランジャ472により減圧および減速される。そして、洗浄水500は、吐水孔533から吐水され続ける。このときに吐水孔533から吐水される洗浄水500が、第2の吐水502である。
続いて、次回のプランジャ472の下流側移動の際には、改めて、一定量の洗浄水が下流側のノズル本体流路421に送られることになる。このようにして、図8に表した脈動発生手段470は、ノズル本体流路421内の水の流れに脈動を与えることができる。
前述したように、脈動発生手段470よりも下流側の水がプランジャ472により加圧および加速されるときに、吐水孔433から吐水される洗浄水500が第1の吐水501である。一方、脈動発生手段470よりも下流側の水がプランジャ472により減圧および減速されるときに、吐水孔433から吐水される洗浄水500が第2の吐水502である。これによれば、人体局部における第1の吐水501(あるいは第1の水流群521a)の水量は、人体局部における第2の吐水502(あるいは第2の水流群522a)の水量よりも多い。そのため、第1の吐水501は、おしり洗浄に求められる十分な量感を与えることができる。
次に、水勢調整手段406の動作の具体例、すなわち第1の水流群521aおよび第2の水流群522aが人体局部に着水するタイミングを水勢調整手段406がそれぞれ変化させる具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図10は、水勢調整手段の動作の具体例を説明するためのタイミングチャートである。 また、図11は、第1の水流群および第2の水流群が着水位置に着水するタイミングを説明するための平面模式図である。
なお、図10(a)は、本具体例の脈動発生手段に印加する電圧パルスを例示するグラフ図である。また、図10(b)は、脈動発生手段の下流側を通過する水の水量を例示するグラフ図である。また、図10(c)は、第3のオン時間における第1の水流群および第2の水流群の水量を例示するグラフ図である。
本具体例の水勢調整手段406は、脈動発生手段470を有する。本具体例では、水勢調整手段406は、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周期を一定とし、電圧パルスの周期に対するオン時間の割合(デューティ比)を変化させる。図10(a)に表したように、第1のオン時間t1は、第2のオン時間t2よりも短い(t1<t2)。また、第2のオン時間t2は、第3のオン時間t3よりも短い(t2<t3)。
図8および図9に関して前述したように、電圧パルスのオン時間が長いほど、プランジャ472のY方向(下流側)への変位は、より大きい。そのため、電圧パルスのオン時間が長いほど、シリンダ471内の水は、プランジャ472により、より加圧および加速される。その結果、図10(a)および図10(b)に表したように、電圧パルスのオン時間が長いほど、加圧および加速されて脈動発生手段470の下流側を通過する水の水量は、増える。
第1の水流群521a(あるいは第1の吐水501)の生成は、電圧が脈動発生手段470に印加されるタイミングと同時に開始される。また、第2の水流群522a(あるいは第2の吐水502)の生成は、脈動発生手段470への電圧の印加が停止されるタイミングと同時に開始される。そのため、図10(c)に表したように、第1の水流群521aは、電圧が脈動発生手段470に印加されるタイミングから脈動発生手段470への電圧の印加が停止されるタイミングまでの間において生成される。一方、第2の水流群522aは、脈動発生手段470への電圧の印加が停止されるタイミングから電圧が脈動発生手段470に次に印加されるタイミングまでの間において生成される。
これにより、電圧パルスのオン時間が長いほど、プランジャ472により加速される水の水量が増加し、第1の水流群521aの水量が増加する。電圧パルスの周期は一定であるため、電圧パルスのオン時間が長いほど、電圧パルスのオフ時間は短くなる。そのため、第1の水流群521a以外の水流群(第2の水流群522a)の水量は、減少する。
図10(b)に表した水量は、所定時間における瞬間的な流量を表している。また、図10(b)では、電圧パルスのオン時間が長いほど、最大瞬間流量が多いことを表している。最大瞬間流量が多くなると、旋回室423へ流入したときの洗浄水の流速は、速くなる。そのため、第1の水流群521aの流速V1は、速くなる。また、前述したように、電圧パルスのオン時間が長いほど、第2の水流群522aの水量は、減少する。そのため、第2の水流群522aの流速V2は、遅くなる。つまり、電圧パルスのオン時間が長いほど、第1の水流群521aの流速V1は速くなり、第2の水流群522aの流速V2は遅くなる。
一方、電圧パルスのオン時間が短いほど、第1の水流群521aの水量は減少し、第1の水流群521a以外の水流群(第2の水流群522a)の水量は増加する。そのため、電圧パルスのオン時間が短いほど、第1の水流群521aの流速V1は遅くなり、第2の水流群522aの流速V2は速くなる。
図11に表したように、本具体例では、破砕された後に第1の水流群521aを形成する第1の吐水501と、破砕された後に第2の水流群522aを形成する第2の吐水502と、は、ノズル410から交互に吐水される。
そのため、第1の水流群521aの流速V1および第2の水流群522aの流速V2によっては、第1の水流群521aは、着水位置においてあるいは着水位置からみてノズル410の側において第2の水流群522aに追いつくことができる。例えば、第1の水流群521aの流速V1がより速く、第2の水流群522aの流速V2がより遅い場合には、第1の水流群521aは、着水位置においてあるいは着水位置からみてノズル410の側において第2の水流群522aに追いつくことができる。一方、第1の水流群521aの流速V1がより遅く、第2の水流群522aの流速V2がより速い場合には、第1の水流群521aは、着水位置までに第2の水流群522aに追いつくことはできない。
但し、第1の水流群521aが第2の水流群522aに追い付くことができるか否かは、第1の水流群521aの流速V1および第2の水流群522aによってのみ決まるわけではない。前述したように、第1の水流群521aの生成は、電圧が脈動発生手段470に印加されるタイミングと同時に開始される。また、第2の水流群522aの生成は、脈動発生手段470への電圧の印加が停止されるタイミングと同時に開始される。そのため、第1の吐水501および第2の吐水502がノズル410から吐水されるタイミングは、電圧パルスのオン時間に依存する。これにより、第1の水流群521aが第2の水流群522aに追い付くことができるか否かは、第1の水流群521aの流速V1と第2の水流群522aとの流速差や、第1の吐水501および第2の吐水502がノズル410から吐水されるタイミングや、ノズル410の吐水孔411から着水位置までの距離などによって決まる。
このように、本具体例では、水勢調整手段406は、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周期を一定とし、電圧パルスのオン時間(デューティ比)を変化させることで、第1の水流群521aおよび第2の水流群522aが人体局部に着水するタイミングをそれぞれ変化させることができる。例えば、水勢調整手段406は、電圧パルスのオン時間(デューティ比)を適宜制御することにより、図11に表したように、第1の水流群521aと第2の水流群522aとを略同じタイミングで人体局部に着水させることができる。
前述したように、本具体例では、結果的に、第1の吐水501と第2の吐水502とは、ノズル410から交互に吐水される。これにより、中空部分が中抜けしていない連続した吐水として使用者に感じさせることができる。そのため、少ない流量で量感を与えることができ、洗浄力を確保することができる。また、広い範囲を優しく一度にさっと洗浄することができる。
なお、本具体例において、脈動発生手段470に印加される電圧パルスの周波数は、例えば約70Hz程度である。第1の水流群521aが着水位置において第2の水流群522aに追いつく場合の電圧パルスのオン時間は、例えば約3.25ミリ秒(ms)程度である。そのため、この場合のデューティ比は、例えば約23.2%程度である。また、第1の水流群521aが着水位置までに第2の水流群522aに追いつくことができない場合の電圧パルスのオン時間は、例えば約1.87ms程度である。そのため、この場合のデューティ比は、例えば約13.3%程度である。また、水勢調整手段406に供給される水の水量は、例えば約430ミリリットル(ml)/分程度で一定である。
図12は、本具体例の着水位置の近傍を通過する液滴を説明するための平面模式図である。
また、図13は、第1の水流群が着水位置までに第2の水流群に追いつくことができない場合の液滴の数を例示するグラフ図である。
また、図14は、第1の水流群が着水位置において第2の水流群に追いつく場合の液滴の数を例示するグラフ図である。
本具体例では、着水位置の前後の所定範囲(以下、説明の便宜上「着水前後範囲」と称する)610、すなわち着水位置からみてノズル410の側からノズル410とは反対の側までの所定範囲における液滴の数について考える。着水前後範囲610は、着水位置からみて例えば約±10ミリメートル(mm)程度の範囲である。
図13は、第1の水流群521aが、着水位置までに第2の水流群522aに追いつくことができない場合の着水前後範囲610内の液滴の数を例示している。「液滴の数」とは、第1の水流群521aが有する第1の粒化水流521の数、あるいは第2の水流群522aが有する第2の粒化水流522の数をいうものとする。図14は、第1の水流群521aが、着水位置において第2の水流群522aに追いつく場合の着水前後範囲610内の液滴の数を例示している。
図13および図14に表したように、第1の水流群521aが着水位置において第2の水流群522aに追いつく場合の着水前後範囲610内の液滴の合計数(図14参照)は、第1の水流群521aが着水位置までに第2の水流群522aに追いつくことができない場合の着水前後範囲610内の液滴の合計数(図13参照)よりも多い。「液滴の合計数」とは、第1の水流群521aが有する第1の粒化水流521の数と、第2の水流群522aが有する第2の粒化水流522の数と、を合計した数をいうものとする。
これによれば、第1の水流群521aが着水位置において第2の水流群522aに追いつく場合の着水前後範囲610内の水量は、第1の水流群521aが着水位置までに第2の水流群522aに追いつくことができない場合の着水前後範囲610内の水量よりも多い。そのため、水勢調整手段406は、電圧パルスのオン時間(デューティ比)を適宜制御することにより、人体局部における着水力を大きくすることができる。そのため、図5に関して前述したように、水勢調整手段406に供給される水量を変えなくとも、水勢調整手段406は、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周期を一定とし、電圧パルスのオン時間(デューティ比)を変化させることで、洗浄力を確保し量感を維持しつつ、水勢を調整することができる。
次に、水勢調整手段406の動作の他の具体例について、図面を参照しつつ説明する。 図15は、水勢調整手段406の動作の他の具体例を説明するためのタイミングチャートである。
なお、図15(a)は、本具体例の脈動発生手段に印加する電圧パルスを例示するグラフ図である。また、図15(b)は、脈動発生手段の下流側を通過する水の水量を例示するグラフ図である。また、図15(c)は、第3の周期における第1の水流群および第2の水流群の水量を例示するグラフ図である。
本具体例の水勢調整手段406は、脈動発生手段470を有する。本具体例では、水勢調整手段406は、脈動発生手段470に印加する電圧パルスのオン時間を一定とし、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周期を変化させる。図15(a)に表したように、第1の周期T1は、第2の周期T2よりも短い(T1<T2)。また、第2の周期T2は、第3の周期T3よりも短い(T2<T3)。
電圧パルスのオン時間が一定であるため、電圧パルスの周期を変化させても、プランジャ472のY方向(下流側)への変位は一定である。そのため、図15(a)および図15(b)に表したように、プランジャ472により加圧および加速される水の水量は、一定である。そのため、第1の水流群521aの水量は、電圧パルスの周期を変化させても一定である。また、第1の水流群521aの流速は、電圧パルスの周期を変化させても一定である。
電圧パルスの周期が長いほど、1周期当たりに脈動発生手段470の下流側を通過する水の水量は、増える。そのため、図15(c)に表したように、電圧パルスの周期が長いほど、第1の水流群521aの水量は一定となる一方で、第2の水流群522aの水量は、増える。
第1の水流群521a(あるいは第1の吐水501)の生成は、電圧が脈動発生手段470に印加されるタイミングと同時に開始される。また、第2の水流群522a(あるいは第2の吐水502)の生成は、脈動発生手段470への電圧の印加が停止されるタイミングと同時に開始される。そのため、第1の吐水501および第2の吐水502がノズル410から吐水されるタイミングは、電圧パルスのオフ時間に依存する。これにより、第1の水流群521aが第2の水流群522aに追い付くことができるか否かは、第1の吐水501および第2の吐水502がノズル410から吐水されるタイミングや、ノズル410の吐水孔411から着水位置までの距離などによって決まる。
このように、本具体例では、水勢調整手段406は、脈動発生手段470に印加する電圧パルスのオン時間を一定とし、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周期を変化させることで、第1の吐水501および第2の吐水502がノズル410から吐水されるタイミングをそれぞれ変化させることができる。これにより、第1の水流群521aおよび第2の水流群522aが人体局部に着水するタイミングをそれぞれ変化させることができる。例えば、水勢調整手段406は、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周期を適宜制御することにより、第1の水流群521aと第2の水流群522aとを略同じタイミングで人体局部に着水させることができる。
また、電圧パルスのオフ時間が長いほど、第2の水流群522aの水量が増えるため、着水前後範囲610(図12参照)内の液滴の数は、増加する。そのため、電圧パルスのオフ時間が長いほど、人体局部における着水力は、大きくなる。これにより、水勢調整手段406に供給される水量を変えなくとも、水勢調整手段406は、脈動発生手段470に印加する電圧パルスのオン時間を一定とし、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周期を変化させることで、洗浄力を確保し量感を維持しつつ、水勢を調整することができる。
なお、本具体例において、水勢調整手段406に供給される水の水量が例えば約430ml/分(約7.12ml/秒)程度で一定である場合において、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周波数が例えば約70Hz程度であるとすると、1周期当たりに脈動発生手段470の下流側を通過する水の水量は、0.102ml/周期程度である。また、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周波数が例えば約90Hz程度であるとすると、1周期当たりに脈動発生手段470の下流側を通過する水の水量は、0.079ml/周期程度である。そのため、脈動発生手段470に印加する電圧パルスの周波数を約20Hz程度だけ増加させると、1周期当たりに脈動発生手段470の下流側を通過する水の水量を0.023mlだけ増加する。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、吐水手段401や液膜厚さ拡大手段402や破砕手段や水勢調整手段406などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやノズル410やノズル本体420やスロート430の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。