JP2012152202A - ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法 - Google Patents

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【課題】より簡易かつ低コストで、収率よくペンタメチレンジイソシアネートを製造することができる、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法を提供すること。
【解決手段】生化学的手法によりペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液を得た後、その水溶液に非水溶性有機溶剤を添加するとともに脱水することによりペンタメチレンジアミンまたはその塩のスラリーを得て、その後、スラリーにホスゲンを導入することによりペンタメチレンジイソシアネートを製造する。このペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を分離および精製することなくペンタメチレンジイソシアネートを得ることができため、簡易かつ低コストでペンタメチレンジイソシアネートを製造することができ、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の損失を防止することができるので、収率よくペンタメチレンジイソシアネートが得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法に関する。
ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)は、例えば、ポリウレタンの原料などとして用いられ、工業的には、例えば、ペンタメチレンジアミン(PDA)をホスゲン化することにより、製造されている。また、ペンタメチレンジイソシアネートの原料であるペンタメチレンジアミンは、例えば、発酵法、酵素法などの生化学的手法により製造される。
このようにペンタメチレンジアミンおよびペンタメチレンジイソシアネートを製造する方法として、具体的には、例えば、リシン(別名:リジン)を脱カルボキシル化し、ジアミノペンタンの塩酸塩を調製した後、有機溶剤に沈殿させて、分離および精製し、その後、液相中または気相中でホスゲン化させることにより、ペンタメチレンジイソシアネートを製造することが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特表2009−545553号公報
しかるに、特許文献1に記載の方法では、リシンからペンタメチレンジイソシアネートを製造する工程の途中において、中間生成物であるジアミノペンタン(PDA)を分離および精製する必要があるため、手間およびコストがかかるという不具合がある。
さらには、このような方法では、分離および精製するときに、ジアミノペンタンのロスを生じる場合があり、このような場合には、得られるペンタメチレンジイソシアネートの収率が低下するという不具合がある。
本発明の目的は、より簡易かつ低コストで、収率よくペンタメチレンジイソシアネートを製造することができる、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法は、生化学的手法により、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液を得る水溶液調製工程、前記水溶液に、非水溶性有機溶剤を添加するとともに、脱水することにより、ペンタメチレンジアミンまたはその塩のスラリーを得るスラリー調製工程、および、前記スラリーにホスゲンを導入するホスゲン導入工程を備えることを特徴としている。
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、前記スラリー調製工程において、共沸脱水することが好適である。
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、前記共沸脱水における圧力条件が、1〜101.3kPa、温度条件が、30〜180℃であることが好適である。
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、前記スラリーが、2000ppm以下の割合で水を含有することが好適である。
本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液から、そのスラリーを得た後、そのスラリーにホスゲンを導入する。つまり、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法によれば、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を分離および精製することなく、ペンタメチレンジイソシアネートを得ることができる。
そのため、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法によれば、簡易かつ低コストで、ペンタメチレンジイソシアネートを製造することができ、さらに、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の損失を防止することができるので、収率よくペンタメチレンジイソシアネートを得ることができる。
本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、まず、生化学的手法により、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液を得る(水溶液調製工程)。
生化学的手法としては、例えば、酵素反応による酵素法(例えば、水中におけるリシンの脱炭酸酵素反応など)や、例えば、発酵作用による発酵法(例えば、グルコースの微生物発酵など)などが挙げられる。
生化学的手法として、好ましくは、酵素法、より具体的には、水中におけるリシンの脱炭酸酵素反応が挙げられる。
リシンの脱炭酸酵素反応では、リシン(化学式:NH(CHCH(NH)COOH、別名:1,5−ペンタメチレンジアミン−1−カルボン酸)に、リシン脱炭酸酵素を作用させる。
リシンとしては、例えば、L−リシンなどが挙げられる。
また、リシンとしては、リシンの塩を用いることもできる。
リシンの塩としては、例えば、カルボン酸塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、ステアリン酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩など)、スルホン酸塩などの有機酸塩、例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機酸塩などが挙げられる。
リシンの塩として、好ましくは、リシン塩酸塩、リシン炭酸塩が挙げられ、より好ましくは、リシン塩酸塩が挙げられる。
このようなリシン塩酸塩としては、例えば、L−リシン・一塩酸塩などが挙げられる。
リシン(またはその塩)の濃度は、特に制限はされないが、例えば、10〜700g/L、好ましくは、20〜500g/Lである。
リシン脱炭酸酵素は、リシン(またはその塩)をペンタメチレンジアミン(またはその塩)に転換させる酵素であって、特に制限されないが、例えば、公知の生物に由来するものが挙げられる。リシン脱炭酸酵素として、より具体的には、例えば、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halodurans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、セレノモナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminantium)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)またはコリネバクテリウム・グルタミカス(Corynebacterium glutamicum)などの微生物に由来するものが挙げられる。安全性の観点から、好ましくは、Escherichia coliに由来するものが挙げられる。
リシン脱炭酸酵素は、例えば、特開2004−114号公報(例えば、段落番号[0015]〜[0042]など)の記載に準拠するなど、公知の方法により製造することができる。
リシン脱炭酸酵素を製造する方法として、より具体的には、例えば、リシン脱炭酸酵素が細胞内で高発現した組換え細胞(以下、内部発現細胞)を公知の培地で培養し、その後、増殖した内部発現細胞を回収および破砕する方法や、例えば、リシン脱炭酸酵素が細胞表面で局在化した組換え細胞(以下、表面発現細胞)を公知の培地で培養し、その後、増殖した表面発現細胞を回収および必要により破砕する方法などが挙げられる。
このような方法において、組換え細胞としては、特に制限されず、微生物、動物、植物または昆虫由来のものが挙げられる。より具体的には、例えば、動物を用いる場合には、マウス、ラットやそれらの培養細胞などが挙げられ、また、植物を用いる場合には、例えば、シロイヌナズナ、タバコやそれらの培養細胞などが挙げられ、また、昆虫を用いる場合には、例えば、カイコやその培養細胞などが挙げられ、微生物を用いる場合には、例えば、大腸菌などが挙げられる。
これら組換え細胞は、単独使用または2種類以上併用することができる。
組換え細胞の表面にリシン脱炭酸酵素を局在化させる方法としては、特に制限されず、例えば、分泌シグナル配列の一部、細胞表面局在タンパク質の一部をコードする遺伝子配列、および、リシン脱炭酸酵素の構造遺伝子配列をこの順で有するDNAを、大腸菌に導入する方法など、公知の方法を採用することができる。
分泌シグナル配列の一部としては、宿主においてタンパク質を分泌するために必要な配列であれば、特に制限されず、例えば、大腸菌においては、例えば、リポプロテインの配列の一部、より具体的には、例えば、アミノ酸配列としてMKATKLVLGAVILGSTLLAGCSSNAKIDQ(アミノ酸の一文字表記)と翻訳される遺伝子配列などが挙げられる。
細胞表面局在タンパク質の一部をコードする遺伝子配列としては、特に制限されないが、大腸菌においては、例えば、外膜結合タンパク質の配列の一部が挙げられ、より具体的には、例えば、OmpA(外膜結合タンパク質)の46番目のアミノ酸から159番目のアミノ酸までの配列の一部などが挙げられる。
リシン脱炭酸酵素遺伝子、リポプロテイン遺伝子およびOmpA遺伝子をクローニングする方法としては、特に制限されないが、例えば、既知の遺伝子情報に基づき、PCR(polymerase chain reaction)法を用いて必要な遺伝領域を増幅取得する方法、例えば、既知の遺伝子情報に基づき、ゲノムライブラリーやcDNAライブラリーより相同性や酵素活性を指標としてクローニングする方法などが挙げられる。
なお、これらの遺伝子は、遺伝的多形性(遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているもの)などによる変異型の遺伝子も含む。
このような方法として、より具体的には、例えば、Escherichia coli K12の染色体DNAより、PCR法を用いて、リシン脱炭酸酵素をコードする遺伝子であるcadA遺伝子またはldc遺伝子を、クローニングする。なお、このとき採用する染色体DNAは、Escherichia coli由来であれば、制限されず、任意の菌株由来のものを採用することができる。
また、このようにして得られる表面発現細胞の表面にリシン脱炭酸酵素が局在化していることは、例えば、リシン脱炭酸酵素を抗原として作製した抗体により、表面発現細胞を免疫反応させた後、包埋および薄切りし、例えば、電子顕微鏡(免疫電顕法)により観察することによって、確認することができる。
なお、表面発現細胞は、リシン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化していればよく、例えば、リシン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化するとともに、細胞内部に発現していてもよい。
また、リシン脱炭酸酵素としては、例えば、リシン脱炭酸酵素の細胞内および/または細胞表面での活性が上昇した組換え細胞から調製されるものも挙げられる。
細胞内および/または細胞表面でリシン脱炭酸酵素の活性を上昇させる方法としては、特に制限されず、例えば、リシン脱炭酸酵素の酵素量を増加させる方法、例えば、リシン脱炭酸酵素の細胞内および/または細胞表面での活性を上昇させる方法などが挙げられる。
細胞内もしくは細胞表面の酵素量を増加させる手段としては、例えば、遺伝子の転写調節領域の改良、遺伝子のコピー数の増加、蛋白への翻訳の効率化などが挙げられる。
転写調節領域の改良とは、遺伝子の転写量を増加させる改変を加えることであって、例えば、プロモーターに変異を導入することによってプロモーターを強化し、下流にある遺伝子の転写量を増加させることができる。プロモーターに変異を導入する以外にも、宿主内で強力に発現するプロモーターを導入することもできる。プロモーターとして、より具体的には、例えば、大腸菌においては、lac、tac、trpなどが挙げられる。また、エンハンサーを新たに導入することによって遺伝子の転写量を増加させることができる。なお、染色体DNAのプロモーターなどの遺伝子導入については、例えば、特開平1−215280号公報の記載に準拠することができる。
遺伝子のコピー数の上昇は、具体的には、遺伝子を多コピー型のベクターに接続して組換えDNAを作製し、その組換えDNAを宿主細胞に保持させることにより達成することができる。ベクターとは、プラスミドやファージなど、広く用いられているものを含むが、これら以外にも、例えば、トランソポゾン(Berg,D.E and Berg.C.M., Bio/Technol.,vol.1,P.417(1983))やMuファージ(特開平2−109985号公報)なども挙げられる。さらには、遺伝子を相同組換え用プラスミドなどを用いた方法で染色体に組み込んで、コピー数を上昇させることもできる。
蛋白の翻訳効率を上昇させる方法としては、例えば、原核生物においては、SD配列(Shine, J. and Dalgarno, L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 71, 1342−1346 (1974))、真核生物では、Kozakのコンセンサス配列(Kozak, M., Nuc. Acids Res., Vol.15,p.8125−8148(1987))を導入、改変する方法や、使用コドンの最適化(特開昭59−125895)などが挙げられる。
リシン脱炭酸酵素の細胞内および/または細胞表面での活性を上昇させる方法としては、リシン脱炭酸酵素の構造遺伝子自体に変異を導入して、リシン脱炭酸酵素そのものの活性を上昇させることも挙げられる。
遺伝子に変異を生じさせる方法としては、例えば、部位特異的変異法(Kramer,W. and frita,H.J., Methods in Enzymology,vol.154,P.350(1987))、リコンビナントPCR法(PCR Technology,Stockton Press(1989)、特定の部分のDNAを化学合成する方法、遺伝子をヒドロキシアミン処理する方法、遺伝子を保有する菌株を紫外線照射処理、または、ニトロソグアニジンや亜硝酸などの化学薬剤で処理する方法などが挙げられる。
また、このような組換え細胞(内部発現細胞、表面発現細胞など)を培養する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。より具体的には、例えば、微生物を培養する場合には、培地として、例えば、炭素源、窒素源および無機イオンを含有する培地が用いられる。
炭素源としては、例えば、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物などの糖類、例えば、グリセロール、マンニトールやソルビトールなどのアルコール類、例えば、グルコン酸、フマル酸、クエン酸やコハク酸などの有機酸類などが挙げられる。
これら炭素源は、単独使用または2種類以上併用することができる。
窒素源としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機アンモニウム塩、例えば、大豆加水分解物などの有機窒素、例えば、アンモニアガス、アンモニア水などが挙げられる。
これら窒素源は、単独使用または2種類以上併用することができる。
無機イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオン、マンガンイオン、鉄イオン、リン酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
これら無機イオンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、培地には、必要に応じて、その他の有機成分(有機微量栄養素)を添加することもでき、そのような有機成分としては、例えば、各種アミノ酸、例えば、ビタミンBなどのビタミン類、例えば、RNAなどの核酸類などの要求物質、さらには、例えば、酵母エキスなどが挙げられる。
このような培地として、より具体的には、LB培地が挙げられる。
培養条件としては、特に制限されないが、例えば、大腸菌を培養する場合には、好気条件下において、培養温度が、例えば、30〜45℃、好ましくは、30〜40℃であり、培養pHが、例えば、5〜8、好ましくは、6.5〜7.5であり、培養時間が、例えば、16〜72時間、好ましくは、24〜48時間である。なお、pHの調整には、例えば、無機または有機の酸性またはアルカリ性物質や、アンモニアガスなどを用いることができる。
そして、このような培地において増殖した組換え細胞(内部発現細胞、表面発現細胞)は、例えば、遠心分離などにより回収することができる。
また、この方法では、回収された細胞を、例えば、休止細胞として用いることもできるが、必要により、破砕し、その細胞破砕液(菌体破砕液)として用いることができる。
細胞破砕液(菌体破砕液)の調製においては、公知の方法を採用することができる。より具体的には、例えば、まず、得られた内部発現細胞および/または表面発現細胞を、例えば、超音波処理、ダイノミル、フレンチプレスなどの方法により破砕し、その後、遠心分離により細胞残渣を除去する。
また、この方法では、必要により、得られた細胞破砕液からリシン脱炭酸酵素を精製することができる。
リシン脱炭酸酵素の精製方法としては、特に制限されず、酵素の精製に通常用いられる公知の方法(例えば、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、熱処理、pH処理など)を、必要により適宜組み合わせて採用することができる。
そして、リシン(またはその塩)の脱炭酸酵素反応では、このようにして得られた休止細胞および/またはその細胞破砕液と、リシン(またはその塩)の水溶液とを配合し、水中でリシン脱炭酸酵素をリシン(またはその塩)に作用させる。
反応に使用するリシン(またはその塩)の総質量に対する、反応に使用する菌体(細胞)の乾燥菌体換算質量の比率は、リシン(またはその塩)をペンタメチレンジアミン(またはその塩)に転換させるのに十分な量であれば、特に制限されないが、例えば、0.01以下、好ましくは、0.007以下である。
なお、反応に使用するリシン(またはその塩)の総質量とは、反応開始時に反応系内に存在するリシン(またはその塩)の質量(反応中に反応系にリシン(またはその塩)を加える場合には、それらリシン(またはその塩)の総量)である。
また、菌体の乾燥菌体換算質量とは、乾燥して水分を含まない菌体の質量である。菌体の乾燥菌体換算質量は、例えば、菌体を含む液(菌体液)から、遠心分離や濾過などの方法で菌体を分離し、質量が一定になるまで乾燥し、その質量を測定することにより求めることができる。
リシン(またはその塩)の脱炭酸酵素反応における反応温度は、例えば、28〜55℃、好ましくは、35〜45℃であり、反応時間は、採用されるリシン脱炭酸酵素の種類などにより異なるが、例えば、1〜72時間、好ましくは、12〜36時間である。また、反応pHは、例えば、5.0〜8.0、好ましくは、5.5〜6.5である。
これにより、リシン(またはその塩)が脱炭酸酵素反応して、ペンタメチレンジアミンに転換され、その結果、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液(ペンタメチレンジアミン水溶液)が得られる。
なお、生化学的手法により得られるペンタメチレンジアミンとしては、例えば、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,4−ペンタメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、または、これらの混合物などが挙げられる。具体的には、上記したリシンの脱炭酸酵素反応が採用される場合には、通常、1,5−ペンタメチレンジアミンが得られる。
また、ペンタメチレンジアミンの塩としては、上記リシンの塩に対応し、具体的には、ペンタメチレンジアミンの、例えば、カルボン酸塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、シュウ酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、ステアリン酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩など)、スルホン酸塩などの有機酸塩、例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機酸塩などが挙げられる。
具体的には、例えば、リシン・一塩酸塩を用いた場合には、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩、例えば、二塩酸塩などが得られる。
ペンタメチレンジアミンまたはその塩の反応収率は、リシン(またはその塩)を基準として、例えば、10〜100モル%、好ましくは、70〜100モル%、より好ましくは、80〜100モル%である。
また、ペンタメチレンジアミン水溶液におけるペンタメチレンジアミンまたはその塩の濃度(ペンタメチレンジアミン塩の場合はペンタメチレンジアミン換算濃度)は、例えば、1〜70質量%、好ましくは、2〜50質量%、より好ましくは、5〜40質量%である。
なお、この反応では,得られるペンタメチレンジアミンがアルカリ性であるため、リシン(またはその塩)がペンタメチレンジアミン(またはその塩)に転換されるに伴って反応液のpHが増加する場合がある。このような場合には、必要により、酸性物質(例えば、有機酸、例えば、塩酸などの無機酸など)などを添加し、pHを調整することができる。
ペンタメチレンジアミン水溶液のpHは、例えば、8以下、好ましくは、7以下であり、通常、1以上である。
また、この反応では、必要により、例えば、ビタミンBおよび/またはその誘導体を反応液中に添加することもできる。
ビタミンBおよび/またはその誘導体としては、例えば、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキサールリン酸などが挙げられる。
これらビタミンBおよび/またはその誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ビタミンBおよび/またはその誘導体として、好ましくは、ピリドキサールリン酸が挙げられる。
ビタミンBおよび/またはその誘導体を添加することにより、ペンタメチレンジアミンの生産速度および反応収率を向上することができる。
また、この方法では、必要により、除菌、吸着および濾過などの公知の後処理や、さらには、pH調整(例えば、上記したように酸性物質を添加した場合には、アルカリ性物質を添加するなど)することもできる。
次いで、この方法では、得られたペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液(ペンタメチレンジアミン水溶液)に、非水溶性有機溶剤を添加するとともに、脱水することにより、ペンタメチレンジアミンまたはその塩のスラリーを得る(スラリー調製工程)。
非水溶性有機溶剤は、水に実質的に不溶(具体的には、20℃において水1Lに対する溶解質量が、2g以下)の溶剤であって、本反応における各種成分(ペンタメチレンジアミンおよびその塩、ペンタメチレンジイソシアネート、ホスゲン、塩酸など)と反応しないものであれば、特に制限なく用いられる。
非水溶性有機溶剤として、具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、混合キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、2,2,5−トリメチルヘキサン、デカン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素類、例えば、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなどの含窒素化合物類、例えば、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、フェネトール、メトキシトルエン、ベンジルエーテル、ジフェニエーテルなどのエーテル類、例えば、ヘプタノン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、ギ酸アミル、酢酸−n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−2−エチルブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸エトキシエチル、酢酸メトキシエチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸エチル、酢酸第2ヘキシル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸フェニル、酢酸メチルカルビトール、エチレングリコールジアテート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、ステアリン酸ブチル、乳酸ブチル、乳酸アミル、フタル酸ジメチル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。
これら非水溶性有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
非水溶性有機溶剤として、好ましくは、ハロゲン化炭化水素類、より好ましくは、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼンが挙げられる。
非水溶性有機溶剤の添加量は、ペンタメチレンジアミン水溶液におけるペンタメチレンジアミン(ペンタメチレンジアミン塩の場合はペンタメチレンジアミン換算質量部)100質量部に対して、非水溶性有機溶剤が、例えば、150〜5000質量部、好ましくは、400〜5000質量部である。
そして、脱水では、上記の混合溶液から、水を除去する。
脱水方法としては、特に制限されず、吸着剤を用いた吸着法、蒸留装置を用いた蒸留法(フラッシュ蒸留など)などの方法が挙げられ、好ましくは、蒸留法、より好ましくは、水と非水溶性有機溶剤との共沸脱水が挙げられる。
共沸脱水を採用すれば、例えば、脱水時間の短縮が図れ、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有するスラリー(以下、ペンタメチレンジアミンスラリーとする)の含水率が低くなり、さらにホスゲン化の反応率が向上する。
共沸脱水における条件としては、圧力条件が、例えば、1〜101.3kPa、好ましくは、1〜85kPa、より好ましくは、1〜65kPaであり、温度条件(混合溶液の温度)が、例えば、30〜180℃、好ましくは、30〜170℃、より好ましくは30〜160℃である。
圧力条件、および/または温度条件が上記範囲であれば、ペンタメチレンジアミンスラリーの粒子径が低下しやすくなり、ホスゲン化の反応時間の短縮が図られ、さらにペンタメチレンジイソシアネートの生産性が向上する。
また、このような蒸留法において、蒸留装置を用いて混合溶液を攪拌する場合には、撹拌羽の周速度は、例えば、0.3〜5.2m/s(50〜1000rpm)、好ましくは、0.5〜3.1m/s(100〜900rpm)、より好ましくは、1〜4.2m/s(200〜800rpm)である。
なお、脱水は、1回でもよく、必要により、複数回に分割して実施することもできる。
これにより、ペンタメチレンジアミンスラリーを得ることができる。
ペンタメチレンジアミンスラリーにおけるペンタメチレンジアミンまたはその塩の濃度(ペンタメチレンジアミン塩の場合はペンタメチレンジアミン換算濃度)は、例えば、2〜40質量%、好ましくは、2〜20質量%である。
また、ペンタメチレンジアミンスラリーの含水率は、例えば、2000ppm以下、好ましくは、1500ppm以下、より好ましくは、1000ppm以下、通常、5ppm以上である。
ペンタメチレンジアミンスラリーの含水率が上記上限以下であれば、ホスゲン化の反応率が高くなる場合がある。
また、ペンタメチレンジアミンスラリーの平均粒子径(測定法:レーザ光回折・散乱式装置:MICROTRAC HRA MODEL:9320−X100(日機装製))は、例えば、10〜1000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは50〜300μm、さらに好ましくは50〜200μmである。
ペンタメチレンジアミンスラリーの平均粒子径が上記範囲であれば、ホスゲン化の反応速度および反応率が高くなる場合がある。
次いで、この方法では、ペンタメチレンジアミンスラリーに、ホスゲンを導入する(ホスゲン導入工程)。
ホスゲン導入工程では、まず、撹拌可能とされ、かつ、ホスゲン導入管を備えた反応器に、ペンタメチレンジアミンスラリーを装入する。次いで、反応系内の反応温度を、例えば、80〜200℃、好ましくは、90〜180℃、反応圧力を、例えば、常圧〜1.0MPa、好ましくは、0.05〜0.5MPaに維持し、ホスゲンを1〜10時間かけて、ホスゲン総量が化学量論の1〜10倍になるように導入する。
これにより、ペンタメチレンジイソシアネートを合成することができる。
なお、反応の進行は、発生する塩化水素ガスの量と、上記のスラリーが消失し、反応液が澄明均一になることより推測できる。また、発生する塩化水素は、例えば、還流冷却器を通じて反応系外に放出する。また、反応の終了時には、上記の方法で溶解している過剰のホスゲンおよび塩化水素をパージする。その後、冷却し、減圧下において、非水溶性有機溶剤を留去する。
ペンタメチレンジイソシアネートは、加水分解性塩素の濃度(HC)が上昇しやすい傾向にあるため、ホスゲン導入工程において、HCを低減する必要がある場合には、例えば、ホスゲン化反応させ、脱溶剤させた後、留去させたペンタメチレンジイソシアネートを、例えば、窒素などの不活性ガスを通気しながら、例えば、150℃〜200℃、好ましくは、160〜190℃で、例えば、1〜8時間、好ましくは、3〜6時間加熱処理する。その後、精留処理することによって、ペンタメチレンジイソシアネートのHCを著しく低減することができる。
本発明において、ペンタメチレンジイソシアネートの加水分解性塩素の濃度は、例えば、100ppm以下、好ましくは、80ppm以下、より好ましくは、60ppm以下、さらに好ましくは、50ppm以下である。
なお、加水分解性塩素の濃度は、例えば、JIS K−1556(2000)の附属書3に記載されている加水分解性塩素の試験方法に準拠して測定することができる。
なお、得られるペンタメチレンジイソシアネートは、通常、原料成分として用いられる上記のペンタメチレンジアミンに対応し、より具体的には、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,4−ペンタメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、または、これらの混合物が挙げられる。具体的には、例えば、1,5−ペンタメチレンジアミン(リシンの脱炭酸酵素反応により得られる1,5−ペンタメチレンジアミン)が用いられる場合には、通常、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが得られる。
このようにして得られるペンタメチレンジイソシアネートの純度は、例えば、95〜100質量%、好ましくは、97〜100質量%、より好ましくは98〜100質量%、とりわけ好ましくは、99〜100質量%、最も好ましくは、99.5〜100質量%である。
また、ペンタメチレンジイソシアネートには、例えば、安定剤などを添加することができる。
安定剤としては、例えば、酸化防止剤、酸、スルホンアミド基を含有する化合物、有機亜リン酸エステルなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、具体的には、例えば、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−メチリデン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−[4−メチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)−フェノール]、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸アミド、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−ブタン、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メシチレン、エチレングリコール−ビス−[3,3−ビス−(3’−t−ブチルー4’−ヒドロキシフェニル)−ブチレート、2,2’−チオジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジ−(3−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ジシクロペンタジエン、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ジエチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベジルホスホネート、トリエチレングリコール−ビス−3−(t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオネート、さらには、例えば、IRGANOX1010、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1726、IRGANOX245、IRGANOX3114、IRGANOX3790(以上、BASFジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
これら酸化防止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
酸としては、例えば、有機酸性化合物が挙げられ、具体的には、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル、次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、スルホン酸、スルホン酸エステル、フェノール、エノール、イミド、オキシムなどが挙げられる。
これら酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
スルホンアミド基を含有する化合物としては、例えば、芳香族スルホンアミド類、脂肪族スルホンアミド類などが挙げられる。
芳香族スルホンアミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o−およびp−トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホンアミド、ナフタレン−2−スルホンアミド、m−ニトロベンゼンスルホンアミド、p−クロロベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
脂肪族スルホンアミド類としては、例えば、メタンスルホンアミド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジメチルエタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、N−メトキシメタンスルホンアミド、N−ドデシルメタンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−1−ブタンスルホンアミド、2−アミノエタンスルホンアミドなどが挙げられる。
これらスルホンアミド基を含有する化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
有機亜リン酸エステルとしては、例えば、有機亜リン酸ジエステル、有機亜リン酸トリエステルなどが挙げられ、より具体的には、例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイトなどのモノフォスファイト類、例えば、ジステアリル・ペンタエリスリチル・ジホスファイト、ジ・ドデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジ・トリデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジノニルフェニル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、テトラフェニル・テトラ・トリデシル・ペンタエリスリチル・テトラホスファイト、テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト、トリペンタエリスリトール・トリホスファイトなどの多価アルコールから誘導されたジ、トリあるいはテトラホスファイト類、さらに、例えば、炭素数が1〜20のジ・アルキル・ビスフェノールA・ジホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ・トリデシル)ホスファイトなどのビスフェノール系化合物から誘導されたジホスファイト類、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー(分子量2400〜3000)などのポリホスファイト類、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイトなどが挙げられる。
これら有機亜リン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、安定剤の配合割合は、特に制限されず、必要および用途に応じて、適宜設定される。
そして、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液から、そのスラリーを得た後、そのスラリーにホスゲンを導入するので、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を分離および精製することなく、ペンタメチレンジイソシアネートを得ることができる。
そのため、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法によれば、簡易かつ低コストで、ペンタメチレンジイソシアネートを製造することができ、さらに、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の損失を防止することができるので、収率よくペンタメチレンジイソシアネートを得ることができる。
そして、このようなペンタメチレンジイソシアネートは、例えば、イソシアネート変性体の製造や、ポリウレタン樹脂の製造において、好適に用いられる。
イソシアネート変性体としては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートの多量体(2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート基、および/または、イミノオキサジアジンジオン基を有するポリイソシアネート)など)、ビウレット変性体(例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと水との反応により生成するビウレット変性体など)、アロファネート変性体(例えば、ペンタメチレンジイソシアネートとモノオールまたは低分子量ポリオール(後述)との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと低分子量ポリオール(後述)またはマクロポリオール(後述)との反応より生成するポリオール変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(ペンタメチレンジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
そして、詳述しないが、上記のペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはイソシアネート変性体と、公知の活性水素化合物とを反応させることにより、ポリウレタン樹脂を製造することができる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
<ペンタメチレンジアミンの反応収率(単位:mol%)>
L−リシン一塩酸塩(和光純薬工業社製)、および、後述する(ペンタメチレンジアミンの蒸留)で得られた精製ペンタメチレンジアミンを用い、以下のHPLC(高速液体クロマトグラフ)分析条件下で得られたクロマトグラフの面積値から作成した検量線により、ペンタメチレンジアミンの濃度を算出し、L−リシン一塩酸塩およびペンタメチレンジアミンの合計濃度に対するペンタメチレンジアミンの濃度の割合を、ペンタメチレンジアミンの反応収率とした。
カラム;Asahipak ODP−50 4E(昭和電工社製)
カラム温度;40℃
溶離液;0.2mol/L リン酸ナトリウム(pH7.7)+2.3mmol/L 1−オクタンスルホン酸ナトリウム
流量;0.5mL/min
L−リシン一塩酸塩およびペンタメチレンジアミンの検出には、オルトフタルアルデヒドを用いたポストカラム誘導体化法〔J.Chromatogr.,83,353−355(1973)〕を採用した。
<ペンタメチレンジアミン二塩酸塩の濃度(単位:質量%)>
上記したペンタメチレンジアミンの反応収率と同様の方法にて、ペンタメチレンジアミンの濃度を測定し、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩の濃度に換算した。
<ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリーの含水率(単位:質量%)>
水分計(AQV−7、平沼産業製)を用い、カールフィッシャー試薬として、ハイドラナール・コンポジット5(シグマアルドリッジジャパン製)を用いて、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリーの含水率を測定した。
<ペンタメチレンジイソシアネートの純度(単位:質量%)>
ペンタメチレンジイソシアネートの純度は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1603−1に準拠し、n−ジブチルアミン法により測定したイソシアネート基濃度から、算出した。
<ペンタメチレンジイソシアネート反応液の濃度(単位:質量%)>
実施例1で得られた精製ペンタメチレンジシソシアネートを用い、以下のガスクロマトグラフ分析条件で得られたガスクロマトグラムの面積値から作成した検量線から、ペンタメチレンジシソシアネート反応液の濃度を求めた。
装置;GC−14B(島津製作所製)
カラム;UA−20EX−2.0F、1.2mmφ×20m(フロンティア・ラボ社製)
オーブン温度;100℃で2分間保持、100℃から240℃まで、10℃/minで昇温、240℃で14分間保持
注入口温度;250℃
検出器温度;250℃
キャリアガス;ヘリウム
検出方法;FID
<ペンタメチレンジイソシアネート反応液の反応率(単位:%)>
(1)実施例のペンタメチレンジイソシアネート反応液の反応率
実施例のペンタメチレンジイソシアネート反応液の反応率は以下の式を用いて算出した。
/{(W×C×M/M)/(W×(100−C)+W×C×M/M)}
:ペンタメチレンジアミン二塩酸塩の分子量
:ペンタメチレンジイソシアネートの分子量
:ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリーの固形分濃度
:ペンタメチレンジイソシアネート反応液の濃度
:仕込んだペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリーの質量部
(2)比較例のペンタメチレンジイソシアネート反応液の反応率
比較例のペンタメチレンジイソシアネートの収率は以下の式を用いて算出した。
/{(W×M/M)/(W+W×M/M)}
:ペンタメチレンジイソシアネート反応液の濃度
:ペンタメチレンジイソシアネートの分子量
:ペンタメチレンジアミンの分子量
:仕込んだペンタメチレンジアミンの質量部
:仕込んだo−ジクロロベンゼンの質量部
<ペンタメチレンジイソシアネート反応液の収率(単位:質量%)>
(1) 実施例のペンタメチレンジイソシアネートの収率
実施例のペンタメチレンジイソシアネートの収率は、上記(ペンタメチレンジイソシアネート反応液の反応率)とした。
(2) 比較例のペンタメチレンジイソシアネートの収率
比較例のペンタメチレンジイソシアネートの収率は以下の式を用いて算出した。
(a)×(b)×(c)/10000
(a):抽出率(後述)
(b):ペンタメチレンジアミンの収率(後述)
(c):ペンタメチレンジイソシアネート反応液の反応率
<抽出率(単位:質量%)>
抽出率は以下の式を用いて算出した。
(W×C)/(W×C)×100
:仕込んだペンタメチレンジアミン水溶液のペンタメチレンジアミンの純度
:有機層のペンタメチレンジアミンの純度(後述)
:仕込んだペンタメチレンジアミン水溶液の質量部
:抽出後の有機層の質量部
<ペンタメチレンジアミンの純度(単位:質量%)>
後述する(ペンタメチレンジアミンの蒸留)で得られた精製ペンタメチレンジアミンを用い、以下のガスクロマトグラフ分析条件で得られたガスクロマトグラムの面積値から作成した検量線により、ペンタメチレンジアミンの純度を算出した。
装置;GC−6890(アジレント・テクノロジー社製)
カラム;WCOT FUSED SILICA CP−SIL 8CB FOR AMINES(VARIAN社製)
オーブン温度;40℃で3分間保持、40℃から300℃まで、10℃/minで昇温、300℃で11分間保持
注入口温度;250℃
検出器温度;280℃
キャリアガス;ヘリウム
検出法;FID
<ペンタメチレンジアミンの収率(単位:質量%)>
ペンタメチレンジアミンの収率は以下の式を用いて算出した。
(W×C)/(W×C)×100
:有機層のペンタメチレンジアミンの純度
:蒸留後のペンタメチレンジアミンの純度
:仕込んだ有機層の質量部
:蒸留後のペンタメチレンジアミンの質量部
(ペンタメチレンジアミンの蒸留)
温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジアミン(東京化成社製)を仕込み、塔頂温度が111〜115℃、10KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、精製ペンタメチレンジアミンを得た。蒸留精製したペンタメチレンジアミンは、ガスクロマトグラフィーの面積比が100%であった。
調製例1(菌体破砕液の調製)
(リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)のクローニング)
Escherichia coli W3110株(ATCC27325)から常法に従い調製したゲノムDNAをPCRの鋳型に用いた。
PCR用のプライマーには、リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)(GenBank Accession No.AP009048)の塩基配列に基づいて設計した配列番号1および2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(インビトロジェン社に委託して合成した)を用いた。これらのプライマーは、5’末端付近にそれぞれKpnIおよびXbaIの制限酵素認識配列を有する。
上記のゲノムDNA1ng/μLおよび各プライマー0.5pmol/μLを含む25μLのPCR反応液を用いて、変性:94℃、30秒間、アニーリング:55℃、30秒間、伸長反応:68℃、2分間からなる反応サイクルを30サイクルの条件で、PCRを行った。
PCR反応産物およびプラスミドpUC18(宝酒造社製)をKpnIおよびXbaIで消化し、ライゲーション・ハイ(東洋紡社製)を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、Eschrichia coli DH5α(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換体を、アンピシリン(Am)100μg/mLおよびX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含むLB寒天培地で培養し、Am耐性でかつ白色コロニーとなった形質転換体を得た。このようにして得られた形質転換体よりプラスミドを抽出した。
通常の塩基配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片の塩基配列が配列番号3に示す塩基配列であることを確認した。
得られたリシン脱炭酸酵素をコードするDNAを持つプラスミドをpCADAと命名した。pCADAを用いて形質転換した大腸菌を培養することで、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するリシン脱炭酸酵素を生産することができた。
(形質転換体の作製)
pCADAを用いてEscherichia coli W3110株を通常の方法で形質転換し、得られた形質転換体をW/pCADAと命名した。
この形質転換体をバッフル付き三角フラスコ中のAm100μg/mLを含むLB培地500mlに接種し、30℃にてOD(660nm)が0.5になるまで振盪培養した後、IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)が0.1mmol/Lとなるように添加し、さらに14時間振盪培養した。培養液を8000rpmで20分間遠心分離し、菌体を得た。この菌体を20mmol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に懸濁した後、超音波破砕を行い、菌体破砕液を調製した。
実施例1
・水溶液調製工程
フラスコに、L−リシン一塩酸塩(和光純薬製)を、終濃度が45質量%となるように、および、ピリドキサールリン酸(和光純薬製)を、終濃度が0.15mmol/Lとなるように調製した基質溶液120質量部を加えた。次に、上記のW/pCADA菌体破砕液(仕込み乾燥菌体換算重量0.3g)を添加し反応を開始した。反応条件は37℃、200rpmとした。反応液のpHは6mol/Lの塩酸にてpH6に調整した。24時間後のペンタメチレンジアミンの反応収率は99%に達していた。上記の反応24時間後の反応液を、6mol/Lの塩酸にてpH2に調整し、0.6質量部の活性炭(三倉化成社製 粉末活性炭PM−SX)を添加し、25℃で1時間攪拌を行った後、濾紙(ADVANTEC社製 5C)にて濾過を行い、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩水溶液(31.9質量%水溶液)を得た。
・スラリー調製工程
フラスコに、撹拌羽、温度計、および二つの均圧管付の滴下ロートを備え、一方はo−ジクロロベンゼン(以下、ODCBと略する場合がある)滴下用とし、もう一方は、上部に冷却管を設置した留出液の受器とし、冷却管を真空ポンプのラインにつなげた。フラスコに上記で得られたペンタメチレンジアミン二塩酸塩水溶液1000質量部を仕込み、滴下ロートにo−ジクロロベンゼン2141質量部を仕込んだ。冷却管には5℃の冷媒を通液し、受器とした滴下ロートのコックは閉とし、20kPaの減圧下、内温を80℃、回転数を200rpmとし、共沸させることにより、一次脱水を行った。水が200質量部留出した時点で、o−ジクロロベンゼンを200質量部滴下し、20kPaの減圧下、内温を110℃、回転数を500rpmとし、共沸させることにより、二次脱水を行った。さらに、485g/Hの速度でオルトジクロロベンゼンを滴下し、さらに、受器とした滴下ロートに留出したオルトジクロロベンゼンは、随時、フラスコに添加した。滴下終了後、0.5時間、20kPaの減圧下での加熱撹拌を継続し、脱水を終了した。得られたペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリー(a)の含水率は0.08質量%(800ppm)、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリーの固形分濃度は13質量%であった。
・ホスゲン導入工程
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、上記ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリー(a)を1350質量部仕込んだ。次いで、ホスゲン594質量部をホスゲン導入ラインから加え、撹拌を開始した。内液を徐々に150℃まで昇温し、0.25MPaに加圧し、反応温度165℃で300分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン594質量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/Hで通気、脱ガスし、ペンタメチレンジイソシアネート反応液(a)を1330質量部得た。ペンタメチレンジイソシアネート反応液(a)の濃度は11.0質量%、反応率、および収率は94.9質量%であった。
次いで、減圧下でo−ジクロルベンゼンを留去した後、同じく減圧下でペンタメチレンジイソシアネートを留去させた。
次いで、留去させたペンタメチレンジイソシアネートを、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに装入し、窒素を導入しながら、常圧下で、190℃、3時間加熱処理を行った。
次いで、加熱処理後のペンタメチレンジイソシアネートを、ガラス製フラスコに装入し、蒸留塔、冷却管、および、窒素導入管を装備する精留装置を用いて、127〜132℃、2.7KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、純度99.9質量%の精製ペンタメチレンジイソシアネート(A)を得た。
実施例2
・水溶液調製工程
実施例1の水溶液調製工程と同様にして、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩水溶液(31.9質量%水溶液)を得た。
・スラリー調製工程
フラスコに、撹拌羽、温度計、および二つの均圧管付の滴下ロートを備え、一方はペンタメチレンジアミン二塩酸塩水溶液滴下用とし、もう一方は、上部に冷却管を設置した留出液の受器とし、冷却管を真空ポンプのラインにつなげた。フラスコにo−ジクロロベンゼン2141質量部を仕込み、滴下ロートに上記ペンタメチレンジアミン二塩酸塩1000質量部を仕込んだ。冷却管には5℃の冷媒を通液し、受器とした滴下ロートのコックは閉とし、20kPaの減圧下、内温を110℃、回転数を500rpmとし、ペンタメチレンジアミン水溶液を167g/Hで滴下しながら共沸させることにより、脱水を行った。さらに、受器とした滴下ロートに留出したo−ジクロロベンゼンは、随時、フラスコに添加した。滴下終了後、0.5時間、20kPaの減圧下での加熱撹拌を継続し、脱水を終了した。得られたペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリー(b)の含水率は0.06質量%(600ppm)、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリーの固形分濃度は13質量%であった。
・ホスゲン導入工程
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリー(b)を1350質量部仕込んだ。次いで、ホスゲン594質量部をホスゲン導入ラインから加え、撹拌を開始した。内液を徐々に150℃まで昇温し、0.25MPaに加圧し、反応温度165℃で300分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン594質量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/Hで通気、脱ガスし、ペンタメチレンジイソシアネート反応液(b)を1330質量部得た。ペンタメチレンジイソシアネート反応液(b)の濃度は11.1質量%、反応率、および収率は95.3質量%であった。
以下、実施例1と同様の条件および操作にて、純度99.9質量%の精製ペンタメチレンジイソシアネート(B)を得た。
比較例1
実施例1の水溶液調製工程と同様にして、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩水溶液(31.9質量%水溶液)を得た。
得られたペンタメチレンジアミン二塩酸塩水溶液を水酸化ナトリウムにてpH12に調整し、ペンタメチレンジアミン水溶液(17.0質量%水溶液)を得た。
次いで、底部に抜き出しのコックが付いたフラスコに、撹拌羽を備え、ペンタメチレンジアミン水溶液1000質量部とn−ブタノール3000質量部とを仕込み、回転数500rpmで30分間撹拌し、その後30分間静置した。水層である下層を抜き出し、次いで有機層である上層を3499質量部抜き出した。有機層のペンタメチレンジアミンの純度は、4.8質量%であった。
次いで、充填物(住友重機械工業社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留塔、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学社製、商品名:蒸留頭K型)、を備えた4つ口フラスコに、有機層の抽出液3000質量部を仕込み、10kPaの減圧下で加熱撹拌し、n−ブタノールを留去させた。塔頂温度が113℃に達し、留出液が純度99.9質量%のペンタメチレンジアミンになった時点でペンタメチレンジアミンを分留し、塔頂温度が119℃に達した時点で蒸留を終了した。純度99.9質量%のペンタメチレンジアミンが127質量部得られた。蒸留でのペンタメチレンジアミンの収率は88質量%であった。
次いで、電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、原料ガス導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、o−ジクロロベンゼン509.1質量部を仕込んだ。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、撹拌しながら、塩酸ガスを原料ガス導入ラインから36.5g/Hの速度で装入し、ペンタメチレンジアミン102.2質量部をo−ジクロロベンゼン666.2質量部に溶解した溶液を384.2g/Hの速度で、塩酸ガス装入と同時にフィードを開始して2時間かけて終了した。さらに塩酸ガスをそのまま装入しながら0.5時間熟成を行い、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリー(c)を得た。ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリー(c)の含水率は0.06質量%(600ppm)、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリーの固形分濃度は13質量%であった。
次いで、電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩スラリー(c)を1350質量部仕込んだ。ホスゲン594質量部をホスゲン導入ラインから加えた。内液を徐々に150℃まで昇温し、0.25MPaに加圧し、反応温度165℃で300分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン594質量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/Hで通気し、脱ガスし、ペンタメチレンジイソシアネート反応液(c)を1330質量部得た。ペンタメチレンジイソシアネート反応液(c)の濃度は11.1質量%、反応率は96.0質量%、収率は83.6%であった。
以下、実施例1と同様の条件および操作にて、純度99.9質量%の精製ペンタメチレンジイソシアネート(C)を得た。
比較例2
実施例1の水溶液調製工程と同様にして、ペンタメチレンジアミン二塩酸塩水溶液(31.9質量%水溶液)を得た。
得られたペンタメチレンジアミン二塩酸塩水溶液500質量部をビーカーに仕込み、20kPa、110℃の真空オーブンにて脱水した。得られたペンタメチレンジアミン二塩酸塩は塊となったため、o−クロロベンゼンに分散することができず、ペンタメチレンジイソシアネートを得ることが出来なかった。
(考察)
ペンタメチレンジアミン水溶液から、そのスラリーを得た後、そのスラリーにホスゲンを導入することによりペンタメチレンジイソシアネートを製造した実施例1(収率:94.9質量%)および実施例2(収率:95.3質量%)では、ペンタメチレンジアミン水溶液からペンタメチレンジアミンを一度単離し、その後、スラリー化およびホスゲンを導入した比較例1(収率:83.6質量%)に比べ、高い収率でペンタメチレンジイソシアネートを得ることができた。
また、非水溶性有機溶剤を添加しなかった比較例2では、スラリーを調製できず、ペンタメチレンジイソシアネートを得ることができなかった。

Claims (4)

  1. 生化学的手法により、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液を得る水溶液調製工程、
    前記水溶液に、非水溶性有機溶剤を添加するとともに、脱水することにより、ペンタメチレンジアミンまたはその塩のスラリーを得るスラリー調製工程、および、
    前記スラリーにホスゲンを導入するホスゲン導入工程
    を備えることを特徴とする、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
  2. 前記スラリー調製工程において、共沸脱水することを特徴とする、請求項1に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
  3. 前記共沸脱水における圧力条件が、1〜101.3kPa、温度条件が、30〜180℃であることを特徴とする、請求項2に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
  4. 前記スラリーが、2000ppm以下の割合で水を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
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