JP2012149754A - ボールタイプ等速ジョイント - Google Patents

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貴章 柴田
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Abstract

【課題】ボールタイプ等速ジョイントにおいて、トルク負荷によって生じ得るボール溝の側壁の変形が球面部に及ぶこと、とりわけ球面部の盛り上がりを防止ないし抑制する。
【解決手段】内輪12Aもしくは外輪または両方に、隣り合ったボール溝14とボール溝14との間の球面部16の円周方向の弾性変形を許容するためのスリット18aを設けて、内輪12Aまたは外輪の球面部16が、トルク負荷に応じて円周方向に弾性変形することを可能にする。
【選択図】図1

Description

この発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達系で使用されるボールタイプ等速ジョイントに関する。
一般に、等速ジョイントは、内側継手部材と、外側継手部材と、内側継手部材と外側継手部材との間に介在するトルク伝達部材を有し、そのトルク伝達部材としてボールを用いるタイプをボールタイプ等速ジョイントと呼ぶ。ボールタイプ等速ジョイントは、外周にボール溝を形成した内側継手部材としての内輪と、内周にボール溝を形成した外側継手部材としての外輪と、対をなす内輪のボール溝と外輪のボール溝との間に1個ずつ介在させたボールと、すべてのボールを同一平面に保持するためのケージを主要な構成要素としている。内輪および外輪の縦断面で見るとボール溝は円弧状で、内輪のボール溝の曲率中心と外輪のボール溝の曲率中心は、ジョイント中心をはさんで互いに反対側に等距離だけオフセットさせてある。その結果、ボール溝の深さは軸方向で一定ではなく、軸方向の一方から他方に向かって徐々に変化している。
ボールは内輪から外輪へ、あるいは外輪から内輪へ、トルクを伝達する働きをするため、ボール溝の側壁は大きな荷重を受ける。大トルクの負荷を受けた場合に、とりわけボール溝の深さが浅いところでは、ボール溝のエッジ部(稜線部分)がボールによって押されるため、塑性流動が生じてボール溝とボール溝の間の球面部に変形が及ぶことがある。つまり、球面部が半径方向に盛り上がり、内輪の場合は外径が部分的に拡径し、外輪の場合は内径が部分的に縮径する。これらの球面部が盛り上がると、ケージと干渉してケージの円滑な動きを妨げる。その結果、内輪とケージとの間または外輪とケージとの間の円滑な相対すべり運動が阻害され、等速ジョイントの作動性が悪化するおそれがある。
特許文献1は、ボール溝の変形対策として、ボール溝の少なくとも溝深さが浅い領域におけるボール溝の側壁の面取りの角度を大きくすることによって球面部方向への変形(塑性変形)を抑制しようとしている。より具体的には、特許文献1に記載された発明は、負荷容量を減少させることなく、しかもケージの移動に悪影響を与えない範囲に盛り上がりを抑えることができるようにした等速ジョイントを提供するという課題を解決するために、ボールの移動を案内するトラック溝の少なくとも溝深さの浅い奥側におけるトラック溝側面の面取り起点とトラック溝の中心とを結ぶ直線とトラック溝の中心線とで形成される角度を70°以上とし、かつトラック溝側面の面取り起点とケージ案内面の面取り起点とを結ぶ直線とトラック溝の中心線とで形成される面取り角度を86°以上とした構成を採用したものである。そして、このような構成を採用することにより、トラック溝側面の面取り起点を従来のものと同一とした状態において面取りのフラット長さを従来のものより長くすることができるため、面取りとケージとの間のクリヤランスが大きくなり、そのクリヤランスにおいて、ボール接触点に形成される盛り上がりを吸収することができるというものである。
特許文献2は、ダブルオフセット型等速ジョイントの内輪の外球面部に凹部を設け、その凹部にゴム等の緩衝部材を設置してアイドリング振動対策を図ることを提案している。すなわち、内輪と保持器の相対的な軸方向変位(プランジング)を許容したしゅう動式等速ジョイントでは、軸方向変位に伴って内輪の外周面の両端側領域と保持器の内周面とが接近・離隔する。この場合において、内輪の外周面の少なくとも両端側領域に凹部を設け、この凹部内に、保持器内周面と接触可能のゴムを加硫接着すると共に、保持器内周面との接触によるゴムの弾性変形分を収容する逃げ部を設けている。このような構成を採用することで、自動車のアイドリング時に発生する振動を緩衝部材によって吸収または減衰させ、その緩衝部材の変形は溝部位の逃げで吸収させるというものである。
特開平3−61722号公報 特開2001−132767号公報
特許文献1のものは、ボール溝の側壁と球面部との間に設ける面取り(c面取り)の角度を規定することにより面取り部とケージとの間のクリヤランスを大きくし、そうすることで面取り部分に盛り上がりが生じても大きくなったクリヤランスによって吸収させるというもので、盛り上がりそのものを防止ないし抑制しようという発想ではない。したがって、ある一定の入力トルクまでは対応できるとしても、それを越える過大な入力トルクを受けた際に球面部方向への変形を完全に防ぐことができるかどうか不明である。
特許文献2のものは、しゅう動式等速ジョイント特有の問題に着目したもので、とくに内輪とケージの相対的な軸方向変位(プランジング)を許容したしゅう動式等速ジョイントにおいて、内輪の外周面に凹部を形成してそこにゴムを加硫接着することにより緩衝部材を構成させ、内輪とケージが相対的に軸方向移動しても両者が直接接触しないようにしたものであって、トルクによるボール溝の変形とりわけ球面部の盛り上がり現象やそれの対策については何ら教示するところがない。
また、従来のボールタイプ等速ジョイントは、回転方向ガタの低減が困難であり、ショックトルク入力時など、ガタ打ち音の発生が懸念される。さらに、自動車における動力源の低トルク領域における不安定なトルク出力特性に起因して、車両の振動が発生することがある。
この発明は、ボールタイプ等速ジョイントにおいて、トルク負荷によって生じ得るボール溝の側壁の変形が球面部に及ぶこと、とりわけ球面部の盛り上がりを防止あるいは低減することにある。
この発明は、内輪もしくは外輪または両方に、隣り合ったボール溝とボール溝との間の球面部に軸方向に延びるスリットを設けて内輪もしくは外輪自体の、円周方向の剛性を低くすることにより課題を解決したものである。
すなわち、この発明は、外周面にボール溝を形成した内輪と、内周面にボール溝を形成した外輪と、対をなす内輪のボール溝と外輪のボール溝との間に介在するボールと、すべてのボールを同一平面に保持するためのケージとを具備するボールタイプ等速ジョイントにおいて、前記内輪もしくは前記外輪または両者の、隣り合うボール溝間の球面部に、トルク負荷に応じて前記球面部の円周方向への弾性変形を許容するためのスリットを設けたことを特徴とする。
これにより、スリットを設けた内輪もしくは外輪自体の、円周方向剛性が低下し、等速ジョイントにトルクが負荷されると、トルク負荷に応じて、スリットを「逃げ」として球面部が弾性変形する。したがって、従来のように、球面部がケージとの間のすきま方向すなわち半径方向へ向けて盛り上がることを抑制できる。
トルクが負荷されたときに、スリットを設けた内輪または外輪の弾性変形を許容するようなスリットの形態としては、トルクが回転方向に作用する力であることから、通常は軸方向に延びるスリットが考えられる。したがって、ボール溝が内輪、外輪の軸線と平行に延びる通常のボールタイプ等速ジョイントでは、スリットも軸線と平行に、すなわち軸方向に延びる形態とすることができる。しかしながら、クロスグルーブ型等速ジョイントのように、ボールが内輪、外輪の軸線に対して傾斜している場合、スリットもボール溝と平行に、すなわち軸線に対して傾斜して延びる形態としてもよい。
スリットは内輪または外輪の全長にわたる切り通しの形態としてもよいが、必ずしも切り通しの形態とする必要はない。ボール溝の長さ方向で、ボール溝の溝深さが浅い側の一定領域にだけ、スリットを設けてもよい。スリットの数は、各球面部あたり少なくとも1本とする。複数のスリットを設ける場合、すべて同じ寸法、形状のものとするほか、深さや幅の異なるスリットの組合せとしてもよい。
この発明によれば、内輪もしくは外輪または両者の球面部にスリットが存在するため、等速ジョイントにトルクが負荷された際、球面部がスリットを「逃げ」として弾性変形し、球面部の盛り上がりが防止ないし抑制される。
また、この発明によれば、ボール溝とボール溝の間の球面部にスリットを設けたことにより、ボール溝とボール溝の間の部分が弾性変形可能となるため、ボールとボール溝が常に接触する構造とすることができ、ガタ打ち音の発生を抑制することが可能となる。これはボールタイプ等速ジョイント内部にダンパー機構を内蔵させたようなもので、内輪および外輪トラックとボールが接触する場合の、ガタ打ち音の発生を抑制することが可能となる。さらに、動力源の低トルク領域で発生する角速度変動やトルク変動をボールタイプ等速ジョイント内で吸収して、車輪側への伝達(車体の振動)を低減することができる。
ボールタイプ等速ジョイントの内輪の横断面図である。 ボールタイプ等速ジョイントの内輪の横断面図である。 ボールタイプ等速ジョイントの内輪の横断面図である。 ボールタイプ等速ジョイントの内輪の横断面図である。 ボールタイプ等速ジョイントの内輪の横断面図である。 ボールタイプ等速ジョイントの内輪の端面図である。 (A)、(B)は図6のVII−O−VII線断面図である。 ボールタイプ等速ジョイントの外輪の横断面図である。 ボールタイプ等速ジョイントの外輪の端面図である。 (A)、(B)は図9のX−O−X線断面図である。 (A)、(B)は内輪の端面図である。 (A)、(B)は外輪の端面図である。 バーフィールド型等速ジョイント(BJ)の縦断面図である。 アンダーカットフリー型等速ジョイント(UJ)の部分縦断面図である。 ダブルオフセット型等速ジョイント(DOJ)の縦断面図である。 クロスグルーブ型等速ジョイント(LJ)の縦断面図である。 前輪駆動車の動力伝達系の模式図である。 ドライブシャフトの代表例を示す縦断面図である。 プロペラシャフトの代表例を示す縦断面図である。
以下、図面に従ってこの発明の実施の形態を説明する。ここで、実施例1はボールタイプ等速ジョイントの内輪に適用した実施例、実施例2はボールタイプ等速ジョイントの外輪に適用した実施例、実施例3は実施例1と実施例2の組合せすなわちボールタイプ等速ジョイントの内輪と外輪に適用した実施例、実施例4はスリットのさらに別の態様を採用した実施例である。
ボールタイプ等速ジョイントの内輪に適用した実施例について、バーフィールド型等速ジョイントの内輪を例にとって説明する。
図1は、内輪12Aの、隣り合ったボール溝14とボール溝14の間の球面部16に、横断面が矩形で、幅が狭く、溝深さが深いスリット18aを設けた例である。すなわち、スリット18aの幅をA、深さをBとするならば、A<Bの関係にある。スリット18aの幅はたとえば球面部16の幅の5分の1以下とする。スリット18aの深さは全長にわたり同一で、縦断面で見るとスリット18aの底は球面部16と平行である。スリット18aは内輪12Aの軸線と平行に、したがってまたボール溝14と平行に延在し、内輪12Aの両端面に開口している。
図1に示す内輪12Aでは各球面部16あたりのスリット18aの数が1であるのに対して、図2に示す内輪12Bは、各球面部16あたりのスリット18bの数を2とした例である。この場合、スリット18b同士は同じ深さで、互いに平行に延在している。各球面部16に3以上の複数のスリットを設けることも可能であるが、かかる実施例については図11、図12を参照して後に述べる。
図3は、内輪12Cの球面部16に、横断面が矩形で、幅が広く、溝深さが浅いスリット18cを設けた例である。すなわち、スリット18cの幅をA、深さをBとするならば、A<Bの関係にある。スリット18cの幅はたとえば球面部16の幅の5分の1以下とする。
スリットの態様は、ボール溝が受ける荷重の大きさに応じて使い分けることができる。図1に示すスリット18aのように幅が狭く溝深さが深い態様は、荷重が小さくボール溝の弾性変形が小さい場合に適している。図3に示すスリット18cのように幅が広く溝深さが浅い態様は、荷重が大きくボール溝の弾性変形が大きい場合に適している。
図4は、内輪12Dの球面部16に横断面矩形のスリット18dを設け、そのスリット18dに弾性部材30を装着した例である。この場合、弾性部材30を装着するためのスペースを確保するために、幅が広く溝深さが浅い態様のスリット18dを選択する。弾性部材30としては、ばねや、ゴムのような弾性材料を採用することができる。図4に例示してあるのは横断面M字形の板ばねである。スリット18d内にゴムや樹脂を埋め込むことによって弾性部材を構成させるようにしてもよい。
図5は、内輪12Eの球面部16に設けたスリット18eの横断面をV字形とした例である。スリットの横断面を矩形にするよりもV字形とした方が、スリット底とボール溝との間の距離を大きくとることができるため肉厚を確保することができ、強度向上が期待できる。
上述のようにスリット18a〜18eの形態、態様については種々のものが考えられるが、ボールタイプ等速ジョイントがトルクを受けた際に内輪が受ける荷重の大きさや弾性変形量を考慮して、スリットの形状や数、弾性部材の必要性の有無等を検討することが好ましい。とくに、内輪または外輪が弾性変形可能で、かつ、トルク伝達可能であるようなスリットとするために、内輪または外輪が荷重を受けて変形した場合に、変形がスリットの幅の範囲内で収まるように設定する必要がある。
ボールタイプ等速ジョイントに負荷されるトルクが小さい場合は、ボールは接触角付近で接触し、ボール溝の撓み量も少ないため、スリットは小さくてよい。ボールタイプ等速ジョイントに負荷されるトルクが大きく、しかもボール溝が長手方向の端部近傍でボールと接触する場合には、撓み量が増えるため、スリットを大きくする必要がある。
また、スリットは、機械加工で加工する場合と、鍛造等の塑性加工で加工する場合が考えられるため、スリットの形状については、加工性を考慮して最適な形状を設定すればよい。たとえば、幅が狭く溝深さが深い態様のスリットの場合は切削等の機械加工により加工し、幅が広く溝深さが浅い態様のスリットの場合は鍛造等の塑性加工により加工することができる。前者の態様の場合に鍛造加工のような塑性加工を適用すると、成型が困難であるばかりでなく金型寿命が低下するといった問題が考えられる。
図6は内輪12の端面図であって、図7(A)、図7(B)は図6の線VII−O−VIIに沿う縦断面図である。なお、図6ではスリットの図示は省略してある。図7(A)および図7(B)を用いて、軸方向におけるスリット18を設ける範囲について説明すると、図7(A)では内輪12の幅の全域にわたって、言い換えればボール溝14の全長に沿ってスリット18が設けてあるのに対し、図7(B)ではボール溝14の浅い左側の端面寄りの一部にのみスリット18が設けてある。
内輪12の縦断面(図7)で見ると、ボール溝14は、軸方向の一方から他方に向かって徐々に深さが変化している。これは、ボール溝14の曲率中心O1を、内輪12の外周面の曲率中心Oから軸方向にオフセットさせてあることによる。具体的には、図7の場合、左側(外輪のマウス部奥側)よりも右側(外輪のマウス部入口側)が深い。等速ジョイントはジョイント角度が高角となる際にボールが外輪マウス部の奥側まで移動するが、奥側の溝深さは入口側と比較して浅いため、ボール溝14のエッジ部(稜線部)の変形に対しては、奥側が不利となる。そこで、スリット18を設ける範囲としては、図7(A)のようにボール溝14の全長にわたって設けてもよいが、図7(B)のように奥側のみに設けても変形抑制の効果を得ることができる。
次に、ボールタイプ等速ジョイントの外輪に適用した実施例について、バーフィールド型等速ジョイントの外輪を例にとって説明する。
図8は、外輪22Aの隣り合うボール溝24とボール溝24の間の球面部26にスリット28を設けた例であり、スリット28の形状や数については内輪12について上に述べたところと同様のことが言える。
また、図9、図10はスリット28を設ける範囲を説明した図であるが、これについても図6、図7を参照して内輪12についてすでに述べたところと同様のことが言える。すなわち、図9は外輪22の端面図であって、図10(A)、図10(B)は図9の線X−O−X線に沿う縦断面図である。なお、図9ではスリットの図示は省略してある。図10(A)および図10(B)を用いて、軸方向におけるスリット28を設ける範囲について説明すると、図10(A)では外輪22の幅の全域にわたって、言い換えればボール溝24の全長に沿ってスリット28が設けてあるのに対し、図10(B)ではボール溝24の浅い左側の端部寄りの一部にのみスリット28が設けてある。
外輪22の縦断面(図10)で見ると、ボール溝24は、軸方向の一方から他方に向かって徐々に深さが変化している。これは、ボール溝24の曲率中心O2を、外輪22の内周面の曲率中心Oから軸方向にオフセットさせてあることによる。具体的には、図10の場合、左側(外輪のマウス部奥側)よりも右側(外輪のマウス部入口側)が深い。等速ジョイントはジョイント角度が高角となる際にボールが奥側まで移動するが、奥側の溝深さは入口側と比較して浅いため、ボール溝24のエッジ部(稜線部)の変形に対しては、奥側が不利となる。そこで、スリット28を設ける範囲としては、図10(A)のようにボール溝24の全長にわたって設けてもよいが、図10(B)のように奥側のみに設けても変形抑制の効果を得ることができる。
上述のとおり、実施例1は内輪の球面部にスリットを設けた例であり、実施例2は外輪の球面部にスリットを設けた例であるが、内輪と外輪の両方にスリットを設けて実施をすることもできる。要するに、実施例1と実施例2の種々組合せが可能である。
次に、図11、図12を参照して実施例4について述べる。
図11、図12に示すように、内輪12F、12Gもしくは外輪22B、22Cまたは両者に、ボール溝14、24とボール溝14、24の間の球面部16、26にスリット18f、18g、28b、28cを設ける。上述の実施例1〜3との相違点は次に述べるとおりスリットの具体的形態にある。
図11(A)は内輪12Fの端面図であって、各球面部16に3本のスリット18fが形成してある。3本のスリット18fは深さが異なり、中央のものに比べてその両側のものは浅くなっている。また、スリット18fの幅も中央のものに比べてその両側のものは狭くなっている。3本のスリット18fは互いに平行で、中央のものは内輪12F全体としては放射状に配列してある。
図11(B)も内輪12Gの端面図であって、各球面部16に5本のスリット18gが形成してある。5本のスリット18gは深さが異なり、中央のものが最も深く、その両側のものは外側にいくほど浅くなっている。また、スリット18gの幅も中央のものが最も広く、その両側のものは外側にいくほど狭くなっている。内輪12G全体としては、5本のスリット18gはすべて放射状に配列してある。
図12(A)は外輪22Bの端面図であって、各球面部26に4本のスリット28bが形成してある。4本のスリット28bのうちの内側の2本は互いに同じ深さで、外側の2本は互いに同じ深さであり、内側の2本は外側の2本よりも深さが深く、かつ幅も広い。外輪22B全体としては、4本のスリット28bはすべて放射状に配列してある。
図12(B)も外輪22Cの端面図であって、各球面部26に4本のスリット28cが形成してある。4本のスリット28cのうちの内側の2本は互いに同じ深さで、外側の2本は互いに同じ深さであり、内側の2本は外側の2本よりも深さが深く、かつ幅も広い。スリットの向きに関しては、上記4本のスリットを2組のスリットと捉えると、各組のスリットは互いに平行であるが、1組のスリットともう1組のスリットは互いに角度をなしている。言い換えれば、4本のスリットのうちの1組のスリットともう1組のスリットは互いに交差する平面内にある。
上述の構造とすることで、等速ジョイントにトルクが負荷された場合に、隣り合ったボール溝14、24間の球面部16、26にスリット18f、18g、28b、28cが形成してあることで、ボールから受ける荷重でボール溝14、24(の側壁)が撓み、自動車の動力伝達系で使用する等速ジョイントの場合、動力源で発生する角速度変動やトルク変動を等速ジョイント内部で吸収してタイヤ側への伝達(車体の振動)を防止ないし抑制することができる。
通常、ボール溝は熱処理後に仕上げ加工にて成形するが、ボール溝を鍛造成形し、熱処理後に仕上げ加工をせず、そのままの面にて完成としてもよい。その場合、旋削加工や研削加工を省略することで製造コストの低減が実現する。
ボール溝の側壁と球面部との稜線部分に丸みをつける、言い換えればR面取りとする。これにより、高トルク負荷時のボールとの接触楕円のはみ出しによる応力集中を緩和することができ、より高い耐久性を確保することが可能となる。R面取りは、削り加工で成形しても、鍛造時にトラックと同時に成形してもよい。
以上の説明では8個のボールを使用するバーフィールド型の固定式等速ジョイントの場合と6個のボールを使用するバーフィールド型の固定式等速ジョイントを例にとったが、この発明はアンダーカットフリージョイントやしゅう動式ボールタイプ等速ジョイントにも適用することが可能で、同様の効果を得ることができる。ここで、ボールタイプ等速ジョイントの例を挙げて簡単に説明するならば次のとおりである。なお、ボールタイプ等速ジョイントにおけるボールの数は任意であるが、例を挙げるならば3から10の間で、たとえば6個ボールタイプや8個ボールタイプが実用化されている。
バーフィールド型等速ジョイント(BJ)は固定式等速ジョイントの一種で、図13に示すように、内側継手部材としての内輪112と、外側継手部材としての外輪122と、内輪112と外輪122との間でトルクを伝達するための複数のボール118と、ボールを保持するためのポケットをもったケージ120を主要な構成要素としている。連結すべき2軸のうちの一方(駆動軸または従動軸)を内輪112と接続し、他方(従動軸または駆動軸)を外輪122と接続する。内輪112は球面状の外周面116を有し、その外周面に軸方向に延びるボール溝114が円周方向に等間隔に形成してある。外輪122は球面状の内周面126を有し、その内周面126に軸方向に延びるボール溝124が円周方向に等間隔に形成してある。対をなす内輪112のボール溝114と外輪122のボール溝124との間に1個ずつボール118を介在させてある。すべてのボール118はケージ120によって同一平面に保持され、これにより、ジョイントが角度(作動角)をとった状態でも内輪112、外輪122は等角速度で回転する。通常、潤滑グリースの洩れを防止し、外部からの異物の侵入を防止するため、ブーツ128を装着して使用する。
アンダーカットフリー型等速ジョイント(UJ)も固定式等速ジョイントの一種であって、図14に示すように、基本的構成は上述のBJと同じで、外輪122のボール溝124の外輪開口端側および内輪112のボール溝114の反外輪開口端側に溝底がストレートな部分124a、114aを設けてアンダーカットをなくしたものである。
ダブルオフセット型等速ジョイント(DOJ)はしゅう動式等速ジョイントの一種で、図15に示すように、内側継手部材としての内輪212と、外側継手部材としての外輪222と、内輪212と外輪222との間でトルクを伝達するための複数のボール218と、ボール218を保持するためのポケットをもったケージ220を主要な構成要素としている。連結すべき2軸のうちの一方(駆動軸または従動軸)を内輪212と接続し、他方(従動軸または駆動軸)を外輪222と接続する。内輪212は球面状の外周面216を有し、その外周面216に軸方向に延びるボール溝214が円周方向に等間隔に形成してある。外輪222は円筒状の内周面226を有し、その内周面226に軸方向に延びるボール溝224が円周方向に等間隔に形成してある。対をなす内輪212のボール溝214と外輪222のボール溝224との間に1個ずつボール218を介在させてある。ケージ220は内輪212と外輪222との間に介在し、内輪212の球面状外周面216と球面接触する球面状内周面部分と、外輪222の円筒状内周面226と球面接触する球面状外周面部分を有している。球面状外周面と球面状外周面の曲率中心は軸方向にオフセットしている。このケージ220によってすべてのボール218は同一平面に保持され、これにより、ジョイントが角度(作動角)をとった状態でも内輪212、外輪222は等角速度で回転する。BJと同様、通常、ブーツ228を装着して使用する。
クロスグルーブ型等速ジョイント(LJ)もしゅう動式等速ジョイントの一種で、図16に示すように、内側継手部材としての内輪312と、外側継手部材としての外輪322と、内輪312と外輪322との間でトルクを伝達するための複数のボール318と、ボール318を保持するためのポケットをもったケージ320を主要な構成要素としている。連結すべき2軸のうちの一方(駆動軸または従動軸)を内輪312と接続し、他方(従動軸または駆動軸)を外輪322と接続する。内輪312は略球面状の外周面316を有し、その外周面316に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝314が円周方向に交互に形成してある。外輪322は円筒状の内周面326を有し、その内周面326に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝324が円周方向に交互に形成してある。対をなす内輪312のボール溝314と外輪322のボール溝324との交差部に1個ずつボール318を介在させてある。ケージ320は内輪312とは接触せず、外輪322の円筒状内周面326と接する。すべてのボール318はケージ320で同一平面に保持され、これにより、ジョイントが角度(作動角)をとった状態でも内輪312、外輪322は等角速度で回転する。上述のBJやUJ、DOJと同様、通常、ブーツ328を装着して使用する。
ボールタイプ等速ジョイントの一つの用途として自動車の動力伝達系を挙げることができる。図17は前輪駆動車の動力伝達系を模式的に示したもので、エンジン1の動力はトランスミッション2からドライブシャフト4を介して前輪に伝達され、また、プロペラシャフト6とデファレンシャル8を介して後輪に伝達される。
ドライブシャフト4は、図18に示すように、中間軸42とその両端に取り付けた固定式等速ジョイント44およびしゅう動式等速ジョイント46とで構成される。たとえば、アウトボード側に固定式等速ジョイント(図13、図14参照)を配置し、インボード側にしゅう動作式等速ジョイント(図15、図16参照)を配置する。
自動車のプロペラシャフト6は、図19に示すように、パイプ62の両端に等速ジョイント64、66を取り付けて構成され、たとえば、一方の等速ジョイント64をトランスミッション2の出力軸と接続し、他方の等速ジョイント66をデファレンシャル8のピニオン軸と接続する。
12、12A〜12G内輪
14 ボール溝
16 球面部
18、18a〜18g スリット
20 ケージ
22、22A〜22C 外輪
24 ボール溝
26 球面部
28、28a〜28c スリット
30 弾性部材

Claims (10)

  1. 外周面にボール溝を形成した内輪と、内周面にボール溝を形成した外輪と、内輪のボール溝と外輪のボール溝との間に介在するボールと、ボールを同一平面に保持するケージを具備するボールタイプ等速ジョイントにおいて、
    前記内輪の、隣り合うボール溝間の球面部に、前記内輪の球面部の円周方向への弾性変形を許容するためのスリットを設けたことを特徴とするボールタイプ等速ジョイント。
  2. 前記スリットが前記内輪のボール溝と平行である請求項1のボールタイプ等速ジョイント。
  3. 前記外輪の、隣り合うボール溝間の球面部に、前記外輪の球面部の円周方向の弾性変形を許容するためのスリットを設けたことを特徴とする請求項1のボールタイプ等速ジョイント。
  4. 前記スリットが前記外輪のボール溝と平行である請求項3のボールタイプ等速ジョイント。
  5. 外周面にボール溝を形成した内輪と、内周面にボール溝を形成した外輪と、内輪のボール溝と外輪のボール溝との間に介在するボールと、ボールを同一平面に保持するケージを具備するボールタイプ等速ジョイントにおいて、
    前記外輪の、隣り合うボール溝間の球面部に、前記外輪の球面部の円周方向の弾性変形を許容するためのスリットを設けたことを特徴とするボールタイプ等速ジョイント。
  6. 前記スリットが前記外輪のボール溝と平行である請求項1のボールタイプ等速ジョイント。
  7. 前記スリットが前記ボール溝の全長に沿って形成してある請求項1から6のいずれか1項のボールタイプ等速ジョイント。
  8. 前記スリットが前記ボールの溝深さの浅い側にのみ部分的に形成してある請求項1から6のいずれか1項のボールタイプ等速ジョイント。
  9. 前記スリットの数が各球面部あたり複数である請求項1から8のいずれか1項のボールタイプ等速ジョイント。
  10. 前記スリットに弾性部材を装着した請求項1から9のいずれか1項のボールタイプ等速ジョイント。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016114082A (ja) * 2014-12-11 2016-06-23 本田技研工業株式会社 固定型等速ジョイント

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