JP2012149163A - シラン架橋樹脂成形体の製造方法及びそれを用いた成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 特定構造の有機不飽和シラン化合物(B−1)を含有するキャリア樹脂成分(B)の混合物と、
(C−1)脂肪族不飽和炭化水素基を持たない有機ケイ素化合物及び(C−2)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B)の溶融温度以上で各樹脂成分を溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させるシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
<1>下記一般式(1)で表される有機不飽和シラン化合物(B−1)を含有するキャリア樹脂成分(B)の混合物と、
(C−1)脂肪族不飽和炭化水素基を持たない有機ケイ素化合物及び(C−2)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B)の溶融温度以上で各樹脂成分を溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<2>(A−1)ポリオレフィン樹脂100〜0質量%及び(A−2)スチレン系エラストマー0〜100質量%を含有する樹脂成分(A)をさらに溶融混合させることを特徴とする<1>に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<3>前記(C−1)有機ケイ素化合物の25℃における動粘度が0.01m2/s以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<4>前記(B−1)有機不飽和シラン化合物が、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.2〜4.0質量部含有されることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<5>前記有機パーオキサイドが、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.03〜0.8質量部含有されることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<6>前記キャリア樹脂(D)中の樹脂成分の溶融温度が、他の樹脂成分よりも高い溶融温度のものを含むことを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<7>前記キャリア樹脂(C)中の樹脂成分の溶融温度が、他の樹脂成分よりも高い溶融温度のものを含むことを特徴とする<6>に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<8>前記有機ケイ素化合物が、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部含有されることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、及び
<9><1>〜<8>のいずれか1項に記載の製造方法により得られることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体、
を提供するものである。
(C−1)脂肪族不飽和炭化水素基を持たない有機ケイ素化合物及び(C−2)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B)の溶融温度以上で各樹脂成分を溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させて得ることができる。
本発明においては、(B)成分に(B−1)有機不飽和シラン化合物を混合したキャリア樹脂混合物と、それとは独立に、(C)成分に(C−1)脂肪族不飽和炭化水素基を持たない有機ケイ素化合物と(C−2)有機パーオキサイドを混合したキャリア樹脂混合物とを、加えて溶融混合する。これにより、有機不飽和シラン化合物と有機パーオキサイドとを同時に樹脂成分内に含有させて溶融混合したものを使用する場合に比べて、架橋阻害を大幅に低減することができる。このため、架橋阻害による成形体の外観悪化や耐熱性低下を回避することができる。
さらに、(C)成分に(C−1)脂肪族不飽和炭化水素基を持たない有機ケイ素化合物を用いることにより、成形体の外観の向上や均一に架橋できるという効果を奏することができる。
(B)〜(D)の混合物におけるキャリア樹脂は特に制限されないが、後述のポリオレフィン樹脂、及び必要に応じてスチレン系エラストマーとを含有する樹脂成分が挙げられる。(B)〜(D)の混合物におけるキャリア樹脂のほかに、任意樹脂成分として、(B)〜(D)の混合物におけるキャリア樹脂と同様のもの、すなわち、(A−1)ポリオレフィン樹脂100〜0質量%及び(A−2)スチレン系エラストマー0〜100質量%を含有するキャリア樹脂(A)をさらに溶融混合させてもよい。
さらにまた、キャリア樹脂成分(D)中の樹脂成分の溶融温度が、他の樹脂成分のいずれの溶融温度よりも高いものを用いることができる。これにより、(D)成分の樹脂成分が溶融することにより、シラノール縮合触媒が働き始める。したがって、不完全な架橋反応や、グラフト化されないシラン縮合物の生成を抑えることができる。その結果、耐熱性と外観に優れたシラン架橋難燃性樹脂成形体を得ることができる。
さらにまた、(C)中の樹脂成分の溶融温度が、いずれの樹脂成分の溶融温度よりも高いものを用いることにより、シラングラフトが十分進行した後に、架橋が開始される。このため、副反応が生じにくい。その結果、優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法において、(B)〜(D)成分に用いられるキャリア樹脂としては、以下のポリオレフィン樹脂、及び必要に応じてスチレン系エラストマーが挙げられる。キャリア樹脂(A)も、(B)〜(D)成分に用いられるキャリア樹脂と同様のものを使用することができる。
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体、構成成分としてアタクチックのプロピレンを含むポリプロピレン、プロピレンとエチレン系共重合体ゴムとのブロック共重合体等が挙げられる。本明細書においては、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体のほかに、構成成分として、プロピレン成分とエチレン成分を有する共重合体のうち、プロピレン成分が85質量%以上のものをいう。
本発明におけるポリオレフィン樹脂としては、シングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。シングルサイト触媒の存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えばDow Chemical社から、「AFFINITY」「ENGAGE」(商品名)が、日本ポリエチレン社から「カーネル」、三井化学社から「タフマー」が、またプライムポリマー社からは「エボリュー」が上市されている。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエンが好ましい。
前記スチレン系エラストマーとしては、SEBS(スチレン・ブタジエンブロックコポリマー)、SIS(スチレン・イソプレンブロックコポリマー)、SEBS(水素化SBS)、SEEPS、SEPS(水素化SIS)、HSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)等を挙げることができる。この中でも、SEBS(スチレン・ブタジエンブロックコポリマー)、HSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)等が好ましい。具体的には、セプトン4077、セプトン4055、セプトン8105(商品名、(株)クラレ製)、ダイナロン1320P(商品名、JSR(株)製)等が挙げられる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン含有量が30質量%以上のものが好ましい。スチレン系エラストマーの量は0〜100質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは、20〜50質量%である。
一般に、ゴム用軟化剤として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物である。パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
本発明のゴム用軟化剤としては、液状もしくは低分子量の合成軟化剤またはパラフィン系およびナフテン系の鉱物油を用いることができる。
本発明において、上記の樹脂成分のほかに、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン樹脂やそのエラストマーのほか、シリコーン樹脂や種々のゴム系樹脂などを適宜使用することができる。この中でも、上記のポリオレフィン樹脂、及び必要に応じてスチレン系エラストマーを含有する樹脂成分が好ましい。なお、上記の樹脂成分は1種類の樹脂でも良いし、2種類以上の樹脂を混ぜ合わせても良い。
本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法において、(B)成分には、(B−1)有機不飽和シラン化合物を含有させて、キャリア樹脂成分(B)の混合物とする。
(B−1)有機不飽和シラン化合物は、有機パーオキサイドの働きにより全樹脂成分にグラフトする。
Rbは飽和の脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY3である。本発明におけるRbとしては、後述のY3であることが好ましい。
Y1、Y2及びY3は加水分解する有機基である。Y1、Y2及びY3は互いに同じでも異なっていてもよい。これらの基としてはアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アセチル等を挙げることができる。この中でも反応性の点からメトキシが好ましい。
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
有機不飽和シラン化合物は全樹脂成分の合計100質量部に対して0.2質量部〜4.0質量部含有されることが好ましい。この量が少なすぎると、有機不飽和シラン化合物のグラフトが十分に進まず、架橋度が低下し、成形体の耐熱性が低下する。さらに、シラングラフト部分での架橋が進まないだけでなく、樹脂成分同士が直接架橋して、成形体の外観が著しく損なわれることがある。また、有機不飽和シラン化合物の量が多すぎると、有機不飽和シラン化合物同士が反応し、ゲル化物が多く生成する。その結果、成形体の外観が損なわれる。
(B)成分は、有機不飽和シラン化合物を通常用いる混練装置を用いてキャリア樹脂成分(B)に混合することにより、製造することができる。有機不飽和シラン化合物(B−1)を含有するキャリア樹脂成分(B)の混合物は、(B)成分に(B−1)成分を従来の方法で混合することにより製造することができる。(B−1)成分を含浸させて(B)成分の混合物とすることが好ましい。
(C−1)の有機ケイ素化合物は、脂肪族不飽和炭化水素基を有しないものであれば特に制限されない。(C−1)には、脂肪族不飽和炭化水素基を有しないため、後述の(C−2)有機パーオキサイドを加えてキャリア樹脂成分(C)の混合物とした場合に、有機パーオキサイドが分解しても、(C−1)有機ケイ素化合物が樹脂成分にグラフトされることはない。これにより、シラン架橋樹脂成形体の外観を向上させるとともに、均一に架橋することができる。
この範囲内の動粘度の有機ケイ素化合物を用いることにより、有機パーオキサイドを有機ケイ素化合物に溶解させ、有機パーオキサイドを溶解させた有機ケイ素化合物を樹脂成分(C)に配合して、キャリア樹脂に有機パーオキサイドを混合させることができる。
本発明で用いられる有機パーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert‐ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。これらのうち、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が最も好ましい。
この量は全樹脂成分の合計100質量部中、0.03質量部〜0.8質量部であることが好ましい。この含有量が少なすぎると、有機不飽和シラン化合物のグラフト反応が進まないことから、得られる樹脂組成物や成形体の耐熱性が著しく低下する。また、含有量が多すぎると、ポリマー同士の架橋が進み、得られる樹脂組成物や成形体の外観が著しく損なわれる。
(C)成分は、(C−1)有機ケイ素化合物と、(C−2)有機パーオキサイドとを、キャリア樹脂に含浸させてキャリア樹脂に混合させることにより製造することができる。
本発明におけるシラノール縮合触媒としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が用いられる。一般的なシラノール縮合触媒としては、具体的に、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物などが用いられる。
本発明におけるシラノール縮合触媒は、グラフト化された有機不飽和シラン化合物を縮合反応により水分の存在下で結合させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、有機不飽和シラン化合物を介してポリマー同士が架橋される。その結果、耐熱性に優れた樹脂組成物、成形体を得ることができる。
シラノール縮合触媒の量は全樹脂成分の合計100質量部に対し0.005質量部〜0.2質量部が好ましい。含有量が少なすぎると、十分な架橋反応が進まず得られる樹脂組成物及び成形体の耐熱性が得られない。また、含有量が多すぎると、架橋反応が速く進んだり、部分的に反応が進むため、得られる樹脂組成物及び成形体の外観が著しく低下する。
(D)シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂は、シラノール縮合触媒を通常用いる混練装置を用いてキャリア樹脂成分(D)に混合することにより、製造することができる。
耐候剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤など、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やカーボンブラックなどの紫外線吸収剤、その他一般的に使用される耐候剤を使用することができる。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系などがあげられ、なかでも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
(B)〜(D)成分の混合物と、必要に応じて加えられる(A)成分を、例えばブレンダーでブレンドし、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置で各樹脂成分を溶融混練することにより、樹脂組成物を得ることができる。溶融混練は、上記の(B)成分の樹脂の溶融温度以上で行う。さらに、(D)成分の溶融温度が、他の樹脂成分の溶融温度よりも高いことが好ましい。ここで、樹脂成分が融点を有する場合は、溶融温度はDSC(示差走査熱量計)によって測定された融点をいい、スチレン系エラストマーは融点を有しないため、ハードセグメントであるポリスチレンが溶融する温度を溶融温度とする。
こうして得られた樹脂組成物を、常温で放置、もしくは、温水、水中或いは湿熱下で放置することにより、水分と接触させて架橋反応を進行させて、シラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
(A)成分は、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置を用いてそれぞれの成分を溶融混練することにより製造することができる。混練温度は150℃〜240℃が好ましい。(A)成分は、1種類の材料をそのまま使用しても良いし、2種以上の材料をブレンダー等で混合したものを使用しても良い。
(B)成分の混合物は、キャリア樹脂に有機不飽和シラン化合物を含浸させて得ることができる。含浸の方法は特に限定されるものではないが、加温ができるミキサーであることが好ましく、例えばスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。含浸温度は特には限定されないが、キャリア樹脂の融点より10〜40℃程度低い温度で含浸させることが好ましい。
(C)成分の混合物は、キャリア樹脂に有機ケイ素化合物及び有機パーオキサイドを含浸させて得ることができる。含浸の方法は特に限定されるものではないが、加温ができるミキサーであることが好ましく、例えばスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等が上げられる。含浸温度は特には限定されないが、キャリア樹脂の融点より10〜40℃低く、かつ有機パーオキサイドが分解しない温度で含浸させることが好ましい。
(D)成分の混合物の製造方法としては、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置を用いてそれぞれの成分を溶融混練すればよい。混練温度は150℃〜240℃が好ましい。
なお、(A)〜(D)成分の保管の際には、少なくとも(D)成分、さらに好ましくは(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を別々に保管することが好ましい。また、(B)成分は有機不飽和シラン化合物の揮発を抑えるため、密封して保管することがよい。
絶縁電線やケーブルは、通常の押出成形機を用いて導体、光ファイバ、集合絶縁電線やその他成形体の周囲に上記の方法で押出被覆し、シラン架橋することにより製造することができる。
絶縁電線の肉厚には、特に制限はないが、好ましくは、0.15〜3mmのものを得ることができる。被覆層は多層構造であってもよい。
また、本発明の製造方法により、導体に押出被覆して被覆層を形成して、その後常温で放置するか、温水や水、湿熱下に放置することにより、耐熱性のシラン架橋被覆層を有する配線材を得ることができる。さらに耐熱性を向上させるために押出後の被覆層をさらに他の方法で架橋させることもできる。
電子線架橋法の場合は、樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1に実施例1〜16の各成分の含有量は、「樹脂成分の比率」を除き、表中の数値は質量部である。
(A)成分については、実施例3はブレンダーでドライブレンド、実施例5、15、16はバンバリーミキサー(BM)で混合し、その他の実施例は樹脂ペレットをそのまま用いることにより材料を得た。
また、(B)成分については、キャリア樹脂に有機不飽和シラン化合物を含浸させることにより、キャリア樹脂混合物(B)を得た。
(C)成分については、(C−1)有機ケイ素化合物に(C−2)有機パーオキサイドを溶かし込んだ混合液をキャリア樹脂に含浸させることにより、(C)成分を得た。
(D)成分については、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して得た。
樹脂成分(A)〜(D)を表1の「樹脂成分の比率(%)」に示す割合で配合して、ブレンダーでブレンドして樹脂混合物を得た。例えば、実施例1は、成分(A)の樹脂成分が65%、成分(B)の樹脂成分が20%、成分(C)の樹脂成分が10%及び成分(D)の樹脂成分が5%となるように配合して、表1の「混合後組成」のとおりの組成を得た。
上記の方法により得られた(A)〜(D)成分を8か月間アルミ袋にて倉庫で保管したものを用いた。
押出温度はシリンダー温度が180℃、ヘッド温度を190℃に設定し、押出を行った。得られた電線は、60℃90%の湿熱恒温槽に24時間放置してから用いた。
表2に比較例1〜7の各成分の含有量は、「樹脂成分の比率」を除き、表中の数値は質量部である。
表2に示す(A)、(B)、(C)、(D)、(E)成分を以下の方法で作製した。
(A)成分については、樹脂ペレットをそのまま用いて得た。キャリア樹脂に有機不飽和シラン化合物を含浸させて、(B)成分を得た。(C)成分については、有機パーオキサイドをキャリア樹脂に含浸もしく溶融混練させて、(C)成分を得た。(D)成分については、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、(D)成分を得た。(E)成分については、有機不飽和シラン化合物に有機パーオキサイドを溶かし込んだ混合液を作製し、キャリア樹脂にこの混合液を含浸させることにより、(E)成分を得た。
樹脂成分を表2の「樹脂成分の比率(%)」に示す割合で配合して、ブレンダーでブレンドして表2の「混合後組成」のとおりの組成を得た。
上記の方法により得られた(A)〜(E)成分は、8か月間アルミ袋にて倉庫に保管したものを用いた。
押出温度はシリンダー温度が180℃、ヘッド温度を190℃に設定し、押出を行った。得られた電線は、60℃90%の湿熱恒温槽に24時間放置してから用いた。
(A)成分
(A−1)成分
以下の材料のうち、融点を有する場合は、溶融温度はDSC(示差走査熱量計)によって測定された融点をいう。スチレン系エラストマーは融点を有しないため、ハードセグメントであるポリスチレンが溶融する温度を溶融温度とする。
・ポリエチレン
商品名:エンゲージ7256、製造元:ダウ・ケミカル、溶融温度:75℃
商品名:エンゲージ8842、製造元:ダウ・ケミカル、溶融温度:38℃
商品名:カーネルKF360、製造元:日本ポリケム(株)、溶融温度:91℃
・直鎖型低密度ポリエチレン
商品名:UE320、製造元:日本ポリエチレン(株)、溶融温度:121℃
・エチレン−アクリル酸エチル共重合体
商品名:NUC6510、製造元:日本ユニカー(株)、溶融温度:94℃
・ブロックポリプロピレン
商品名:BC8A、製造元:日本ポリプロピレン(株)、溶融温度:162℃
・スチレン系エラストマー
商品名:セプトン4077、製造元:(株)クラレ、溶融温度:80〜100℃
(B)有機不飽和シラン化合物
・ビニルトリメトキシシラン
商品名:Dynasylan、製造元:エボニックデグサ
(C−1)有機ケイ素化合物
・ジメチルシリコーンオイル
商品名:KF−96−0.65cs、製造元:信越シリコーン(株)、25℃における動粘度:6.5×10−7m2/s
(C−2)有機パーオキサイド
商品名:Perkadox BC−FF、製造元:化薬アクゾ(株)
(D)シラノール縮合触媒
・ジブチルスズラウリレート
商品名:TN−12、製造元:堺化学工業(その他の成分)
・フェノール系酸化防止剤
商品名:イルガノックス1010、製造元:BASFジャパン
商品名:イルガノックスMD1024、製造元:BASFジャパン
(1)加熱変形
UL1581の方法に従い、加熱変形を測定した。測定温度は160℃で測定し、荷重は3Nとした。50%以下が合格である。
(2)外観
電線の外観を目視で確認を行った。外観が問題ないサンプルを○、ブツがややあるが製品上問題がないサンプルを△、ブツが多くて外観が悪いものを×とした。△以上が合格である。
(3)ゲル分率
電線の被覆層から約0.1gを採取して、120℃キシレンに20時間浸漬し、浸漬前後の質量変化率(浸漬後の質量/浸漬前の質量)からゲル分率を求めた。表1、表2にその値を示す。
これに対して、表1からわかるように、本発明の実施例1〜16は、加熱変形のない外観に優れた成形体を得ることができた。
Claims (9)
- 下記一般式(1)で表される有機不飽和シラン化合物(B−1)を含有するキャリア樹脂成分(B)の混合物と、
(C−1)脂肪族不飽和炭化水素基を持たない有機ケイ素化合物及び(C−2)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B)の溶融温度以上で各樹脂成分を溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- (A−1)ポリオレフィン樹脂100〜0質量%及び(A−2)スチレン系エラストマー0〜100質量%を含有する樹脂成分(A)をさらに溶融混合させることを特徴とする請求項1に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記(C−1)有機ケイ素化合物の25℃における動粘度が0.01m2/s以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記(B−1)有機不飽和シラン化合物が、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.2〜4.0質量部含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記有機パーオキサイドが、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.03〜0.8質量部含有されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記キャリア樹脂(D)中の樹脂成分の溶融温度が、他の樹脂成分よりも高い溶融温度のものを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記キャリア樹脂(C)中の樹脂成分の溶融温度が、他の樹脂成分よりも高い溶融温度のものを含むことを特徴とする請求項6に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
- 前記有機ケイ素化合物が、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部含有されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により得られることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体。
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