JP5075267B1 - シラン架橋樹脂成形体の製造方法及びそれを用いた成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性エラストマーを含有するベース樹脂成分(A)と、
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B1)に有機不飽和シラン化合物(B11)及び有機パーオキサイド(B12)を含有させた混合物(BX)と、
キャリア樹脂成分(C)にシラノール縮合触媒を含有させた混合物(CX)とを、
前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含み、前記ベース樹脂成分(A)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B1)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントが同じ種類であるシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、この知見に基づきなされたものである。
<1>熱可塑性エラストマーを含有するベース樹脂成分(A)と、
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B1)に下記一般式(1)で表される有機不飽和シラン化合物(B11)及び有機パーオキサイド(B12)を含有させた混合物(BX)と、
キャリア樹脂成分(C)にシラノール縮合触媒を含有させた混合物(CX)とを、
前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含み、前記ベース樹脂成分(A)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B1)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントが同じ種類であり、かつ、該熱可塑性エラストマーが、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SEEPS(スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−スチレン共重合体)、SEPS(スチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体もしくはこれらの水素添加物、およびHSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)から選択されるスチレン系エラストマー、並びポリエステル系エラストマーから選択されるエラストマーであることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<2>熱可塑性エラストマーを含有するベース樹脂成分(A)と、
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B21)に下記一般式(2)で表される有機不飽和シラン化合物(B2a)を含有する混合物(BY1)と、
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B22)に有機パーオキサイド(B2b)を含有する混合物(BY2)と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物(CY)とを、
前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含み、前記ベース樹脂成分(A)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B21)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B22)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントが同じ種類であり、かつ、該熱可塑性エラストマーが、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SEEPS(スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−スチレン共重合体)、SEPS(スチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体もしくはこれらの水素添加物、およびHSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)から選択されるスチレン系エラストマー、並びポリエステル系エラストマーから選択されるエラストマーであることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<3>前記キャリア樹脂成分(C)が熱可塑性エラストマーを含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<4>前記ベース樹脂成分と前記キャリア樹脂成分の合計に対して、前記熱可塑性エラストマーを50〜100質量%含むことを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<5>前記シラノール縮合触媒を前記ベース樹脂及び前記キャリア樹脂成分の合計100質量部に対し、0.005質量部〜0.05質量部含有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<6>前記樹脂成分(A)が、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体またはエチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体を含有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<7>前記有機パーオキサイドが、前記ベース樹脂成分及びキャリア樹脂成分の合計100質量部に対して、0.02〜0.8質量部含有することを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<8>前記有機不飽和シラン化合物が、前記ベース樹脂成分及びキャリア樹脂成分の合計100質量部に対して、0.2〜5.0質量部含有することを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<9>前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程より後の工程において、水分と接触させて架橋させることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、及び
<10>前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の製造方法により得られることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体、
を提供するものである。
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B1)に下記一般式(1)で表される有機不飽和シラン化合物(B11)及び有機パーオキサイド(B12)を含有させた混合物(BX)と、
キャリア樹脂成分(C)にシラノール縮合触媒を含有させた混合物(CX)とを、
前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含み、前記ベース樹脂成分(A)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B1)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントが同じ種類であるシラン架橋樹脂成形体の製造方法である。
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B21)に下記一般式(2)で表される有機不飽和シラン化合物(B2a)を含有する混合物(BY1)と、
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B22)に有機パーオキサイド(B2b)を含有する混合物(BY2)と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物(CY)とを、
前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含み、前記ベース樹脂成分(A)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B21)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B22)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントが同じ種類であるシラン架橋樹脂成形体の製造方法である。
その後、有機不飽和シラン化合物は、シラングラフトしにくい熱可塑性エラストマーを含むベース樹脂成分(A)にグラフトされる。グラフトされた官能基は、シラノール触媒存在下で加水分解し、シラン架橋樹脂成形体を得ることができる。前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程より後の工程において、水分と接触させて架橋させることができる。本発明の方法により、シラングラフトと架橋を円滑に進行させることができ、ゲル分率が25〜95%程度の架橋成形体を効率よく製造することができる。
上記の混合物で使用されるベース樹脂成分(A)及びキャリア樹脂成分((B1)、(B21)、(B22))は、熱可塑性エラストマーを含む。熱可塑性エラストマーとしては、特に制限されないが、スチレン系エラストマー及びポリエステル系エラストマー(TPEE)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。ポリエステル系エラストマーとしては、ハイトレル(商品名、東レ・デュポン社製)、プリマアロイ(商品名、三菱化学社製)等が挙げられる。
スチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック、ランダム構造を主体とする共重合体もしくはその水素添加物を挙げることができる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエンが好ましい。
ただし、本発明において、熱可塑性エラストマーは、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SEEPS(スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−スチレン共重合体)、SEPS(スチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体もしくはこれらの水素添加物、およびHSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)から選択されるスチレン系エラストマー、並びポリエステル系エラストマーから選択されるエラストマーである。
ベース樹脂成分とキャリア樹脂成分の合計に対して、前記熱可塑性エラストマーを50〜100質量%含むことが好ましい。さらに好ましくは、60〜80質量%である。熱可塑性エラストマーが少なすぎると、キャリア樹脂中に含まれる有機不飽和シラン、有機パーオキサイドが均一に分散しにくくなり、外観悪化・架橋不良の原因となる。
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体、構成成分としてアタクチックのプロピレンを含むポリプロピレン、プロピレンとエチレン系共重合体ゴムとのブロック共重合体等が挙げられる。本明細書においては、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体のほかに、構成成分として、プロピレン成分とエチレン成分を有する共重合体のうち、プロピレン成分が85質量%以上のものをいう。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、シングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体などのほか、EPR(エチレン−プロピレン共重合体ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン三元共重合体ゴム)、EBR(エチレン−1−ブテン共重合体ゴム)、などの構成成分としてエチレン成分を30〜95%含むエチレン系共重合体ゴムを挙げることができる。エチレン−α−オレフィン共重合体は、例えば、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸などにより、変性されていてもよい。
エチレン−α−オレフィン共重合体以外のエチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体などが挙げられる。
一般に、ゴム用軟化剤として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物である。パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
本発明のゴム用軟化剤としては、液状もしくは低分子量の合成軟化剤またはパラフィン系およびナフテン系の鉱物油を用いることができる。上記の樹脂成分は1種類の樹脂でもよいし、2種類以上の樹脂を混ぜ合わせてもよい。
(B11)有機不飽和シラン化合物は、下記一般式(1)で表される。
前記一般式(1)におけるRa11は、一般式(2)におけるRa21と同義であり、一般式(1)におけるRb11は、一般式(2)におけるRb21と同義である。また一般式(1)におけるY11、Y12、Y13は、それぞれ、一般式(2)におけるY21、Y22、Y23と同義である。下記に説明するものであれば、特に制限なく使用することができる。
以下の有機不飽和シラン化合物の説明は、一般式(1)をもって説明し、一般式(2)の有機不飽和シラン化合物の説明は省略する。
Rb11は脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13である。脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。本発明におけるRb11としては、後述のY13であることが好ましい。
Y11、Y12及びY13は加水分解する有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。これらの基としてはアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アセチル等を挙げることができる。この中でも反応性の点からメトキシ又はエトキシが好ましい。
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
この有機不飽和シラン化合物は全樹脂成分の合計100質量部に対して0.2質量部〜5.0質量部含有することが好ましい。この量が少なすぎると、有機不飽和シラン化合物のグラフトが十分に進まず、得られる樹脂成形体の耐熱性、架橋度が低下する。さらに、シラングラフト部分での架橋が進まず、通常のポリマー主鎖での架橋が生じ、得られた樹脂成形体の外観が著しく損なわれる。また、有機不飽和シラン化合物の量が多すぎると、有機不飽和シラン化合物同士の重合が進み、ゲル化物が多く生成する。その結果、得られた樹脂成形体の外観が損なわれる。
(B12)有機パーオキサイドと、(B2b)有機パーオキサイドは同義である。下記に説明するものであれば、特に制限なく使用することができる。
本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法は、上述のとおり、以下の2つの態様を含むものである。
(a)熱可塑性エラストマーを含有するベース樹脂成分(A)と、熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B1)に有機不飽和シラン化合物(B11)及び有機パーオキサイド(B12)を含有させた混合物(BX)と、キャリア樹脂成分(C)にシラノール縮合触媒を含有させた混合物(CX)とを、前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含む。
(b)熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B21)に有機不飽和シラン化合物(B2a)を含有する混合物(BY1)と、熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B22)に有機パーオキサイド(B2b)を含有する混合物(BY2)と、シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物(CY)とを、前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含む。
上記の混合物を溶融混合する温度は、有機パーオキサイドの1分間の半減期温度より20℃以上高い温度が好ましい。有機パーオキサイドの1分間の半減期温度より70℃以上高いと架橋反応が進みすぎることがある。
有機パーオキサイドの配合量はベース樹脂成分、キャリア樹脂成分及びキャリア樹脂成分の合計100質量部中、0.02質量部〜0.8質量部であることが好ましい。この含有量が少なすぎると、有機不飽和シラン化合物のグラフト反応が進まないことから、得られる樹脂成形体の外観や耐熱性が著しく低下する。また、含有量が多すぎると、ポリマー同士の架橋が進み、得られる樹脂成形体の外観が著しく損なわれる。
なお、キャリア樹脂が1種類の場合、予め有機不飽和シラン化合物と有機パーオキサイドとを同時に加えても、別々に加えた後に混合してもよい。また、キャリア樹脂が2種類以上の場合、1種類の樹脂に有機不飽和シラン化合物(B2a)を加えてキャリア樹脂成分の混合物とし、ほかの樹脂に有機パーオキサイド(B2b)を加えてキャリア樹脂成分の混合物とし、これらを別々に用いてもよい。また、2種類以上の樹脂を予め混合した後に有機不飽和シラン化合物と有機パーオキサイドとを同時に又は別々に加えて、得られた混合物を用いてもよい。
本発明におけるシラノール縮合触媒としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が用いられる。一般的なシラノール縮合触媒としては、具体的に、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物などが用いられる。
本発明におけるシラノール縮合触媒は、グラフト化された有機不飽和シラン化合物を縮合反応により水分の存在下で結合させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、有機不飽和シラン化合物を介してポリマー同士が架橋される。その結果、耐熱性に優れた樹脂組成物、成形体を得ることができる。
シラノール縮合触媒を含む混合物に使用されるキャリア樹脂成分には、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーを用いることにより、触媒を均一に分散させることができ、局所的な架橋を抑制し、成形品の外観の悪化を防ぐことができる。熱可塑性エラストマーとしては、(B1)成分、(B21)成分、(B22)成分に使用されるものと同様のものを使用することができる。
シラノール縮合触媒の量は、ベース樹脂成分及びキャリア樹脂成分の合計100質量部に対し、0.005質量部〜0.2質量部が好ましい。含有量が少なすぎると、十分な架橋反応が進まず得られる樹脂組成物及び成形体の耐熱性が得られない。また、含有量が多すぎると、架橋反応が速く進んだり、部分的に反応が進むため、得られる樹脂組成物及び成形体の外観が著しく低下する。
耐候剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤など、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やカーボンブラックなどの紫外線吸収剤、その他一般的に使用される耐候剤を使用することができる。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系などがあげられ、なかでも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
(A)、(B1)及び(C)成分、又は(A)、(B2a)、(B2b)及び(C)成分の混合物を例えばブレンダーでブレンドし、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置で溶融混練することにより、樹脂組成物を得ることができる。こうして得られた樹脂組成物を、常温で放置、もしくは、温水、水中或いは湿熱下で放置することにより、水分と接触させて架橋反応を進行させて、シラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
ベース樹脂成分(A)は、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置を用いてそれぞれの成分を溶融混練することにより製造することができる。混練温度は150℃〜240℃が好ましい。(A)成分は、1種類の材料をそのまま使用しても良いし、2種以上の材料をブレンダー等で混合して使用しても良い。
キャリア樹脂成分(B1)に有機不飽和シラン化合物(B11)及び有機パーオキサイド(B12)を含有させた混合物(BX)は、キャリア樹脂に有機不飽和シラン化合物及び有機パーオキサイドを含浸させて得ることができる。含浸の方法は特に限定されるものではないが、加温ができるミキサーであることが好ましく、例えばスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。含浸温度は特には限定されないが、キャリア樹脂の融点より10〜40℃程度低い温度で含浸させることが好ましい。なお、有機不飽和シラン化合物に有機パーオキサイドを溶かし込んだ混合液をキャリア樹脂に含浸させてもよい。
キャリア樹脂成分(B21)と有機不飽和シラン化合物(B2a)との混合物(BY1)は、キャリア樹脂に有機不飽和シラン化合物を含浸させて得ることができる。その方法は、(B1)成分に(B11)成分及び(B12)成分を含浸させる場合と同様にして行うことができる。また、キャリア樹脂成分(B22)と有機パーオキサイド(B2b)との混合物(BY2)は、キャリア樹脂に有機パーオキサイドを含浸させて得ることができる。含浸の方法は特に限定されるものではないが、その方法は、(B1)成分に(B11)成分及び(B12)成分を含浸させる場合と同様にして行うことができる。
(C)成分の混合物の製造方法としては、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置を用いてそれぞれの成分を溶融混練すればよい。混練温度は150℃〜240℃が好ましい。
なお、上記成分の保管の際には、少なくとも(C)成分は他の成分と別に保管することが好ましい。また、有機不飽和シラン化合物を含む混合物は有機不飽和シラン化合物の揮発を抑えるため、密封して保管することがよい。
絶縁電線やケーブルは、通常の押出成形機を用いて導体、光ファイバ、集合絶縁電線やその他成形体の周囲に上記の方法で押出被覆し、シラン架橋することにより製造することができる。
絶縁電線の肉厚には、特に制限はないが、好ましくは、0.15〜3mmのものを得ることができる。被覆層は多層構造であってもよい。
また、本発明の製造方法により、導体に押出被覆して被覆層を形成して、その後常温で放置するか、温水や水、湿熱下に放置することにより、耐熱性のシラン架橋被覆層を有する配線材を得ることができる。さらに耐熱性を向上させるために押出後の被覆層をさらに他の方法で架橋させることもできる。
電子線架橋法の場合は、樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。表1〜3の各成分の含有量は、「樹脂成分の比率」を除き、表中の数値は質量部である。
ベース樹脂成分(A)については、実施例3〜5、参考例1はバンバリーミキサーで混合し、その他の実施例及び比較例は樹脂ペレットをそのまま用いた。表1の混合物(BX)については、有機不飽和シラン化合物に有機パーオキサイドを溶かし込んだ後、この混合液をキャリア樹脂(B1)に含浸させることにより得た。混合物(CX)については、表1に記載の各材料からなる混合物をバンバリーミキサーで混合することにより得た。ベース樹脂成分(A)、混合物(BX)及び混合物(CX)を表1に記載の比率の質量比でドライブレンドし、樹脂組成物を得た。例えば、実施例1は、成分(A)の樹脂成分が75%、成分(B1)の樹脂成分が20%、成分(C)の樹脂成分が5%となるように配合して、表1の「混合後組成」のとおりの組成を得た。
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径0.8mmφの錫メッキ軟銅単線)上に、上記の樹脂組成物樹脂組成物を押し出し法により被覆して、各々絶縁電線を製造した。外径は2.4mm(被覆層の肉厚0.8mm)とし成形を行った。
押出温度はシリンダー温度が220℃、ヘッド温度を210℃に設定し、押出温度220℃で溶融混練した。得られた電線は、60℃で90%の湿熱恒温槽に24時間放置してから用いた。
実施例6および7については、有機不飽和シラン化合物(B2a)をキャリア樹脂(B21)に含浸させて、混合物(BY1)混合物を得た。また、有機パーオキサイド(B2b)をキャリア樹脂(B22)に含浸させて、混合物(BY2)を得た。混合物(CY)については、表1に記載の各材料からなる混合物をバンバリーミキサーで混合することにより得た。それ以外については実施例1と同様に製造し絶縁電線を得た。
シリンダー温度を170℃、ヘッド温度を160℃として、有機パーオキサイドの1分間半減期温度より低い温度である170℃で溶融混練した以外は実施例1と同様に製造し絶縁電線を得た。
(A−1)成分
・セプトン2007 SEPSの水素添加物 クラレ(株)
・セプトン4077 SEEPSの水素添加物 クラレ(株)
・セプトン4055 SEEPSの水素添加物 クラレ(株)
・セプトン8150 SEBSの水素添加物 クラレ(株)
・ハイトレル4767 TPEE 東レ・デュポン(株)
・BC8A ブロックPP 日本ポリプロ(株)
(B−11)、(B−2a)
・有機不飽和シラン化合物(ビニルトリメトキシシラン)
商品名:Dynasylan、製造元:エボニックデグサ
(B−12)、(B−2b)
・有機パーオキサイド
商品名:パークミルD、1分間の半減期温度:175℃、製造元:日本油脂(株)
商品名:パーヘキサ25B、1分間の半減期温度:180℃、製造元:日本油脂(株)
・ジブチルスズジラウリレート
商品名:TN−12、製造元:堺化学工業
・フェノール系酸化防止剤
商品名:イルガノックス1010、製造元:BASFジャパン
商品名:イルガノックスMD1024、製造元:BASFジャパン
(1)ホットセット試験
JIS C 3660−2−1のホットセット試験による。試験温度は200℃、荷重時間は15分、荷重は20N/mm2とした。荷重時の伸びが100%以下、且つ、冷却後の永久伸びが25%以下で合格である。
電線の外観を目視で確認を行った。外観が問題ないサンプルを○、ブツがややあるが製品上問題がないサンプルを△、ブツが多くて外観が悪いものを×とした。△以上が合格である。
電線の被覆層から約0.1gを採取して、120℃キシレンに20時間浸漬し、浸漬前後の質量変化率(浸漬後の質量/浸漬前の質量)から、実施例1について、ゲル分率を求めた。
これに対して、本発明の実施例1〜7は、ホットセット試験に合格し、外観の優れた絶縁電線を得ることができた。
Claims (10)
- 熱可塑性エラストマーを含有するベース樹脂成分(A)と、
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B1)に下記一般式(1)で表される有機不飽和シラン化合物(B11)及び有機パーオキサイド(B12)を含有させた混合物(BX)と、
キャリア樹脂成分(C)にシラノール縮合触媒を含有させた混合物(CX)とを、
前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含み、前記ベース樹脂成分(A)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B1)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントが同じ種類であり、かつ、該熱可塑性エラストマーが、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SEEPS(スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−スチレン共重合体)、SEPS(スチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体もしくはこれらの水素添加物、およびHSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)から選択されるスチレン系エラストマー、並びポリエステル系エラストマーから選択されるエラストマーであることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 熱可塑性エラストマーを含有するベース樹脂成分(A)と、
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B21)に下記一般式(2)で表される有機不飽和シラン化合物(B2a)を含有する混合物(BY1)と、
熱可塑性エラストマーを含有するキャリア樹脂成分(B22)に有機パーオキサイド(B2b)を含有する混合物(BY2)と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物(CY)とを、
前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程を含み、前記ベース樹脂成分(A)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B21)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントと、前記キャリア樹脂成分(B22)に含まれる熱可塑性エラストマーのハードセグメントが同じ種類であり、かつ、該熱可塑性エラストマーが、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SEEPS(スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−スチレン共重合体)、SEPS(スチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体もしくはこれらの水素添加物、およびHSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)から選択されるスチレン系エラストマー、並びポリエステル系エラストマーから選択されるエラストマーであることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記キャリア樹脂成分(C)が熱可塑性エラストマーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記ベース樹脂成分と前記キャリア樹脂成分の合計に対して、前記熱可塑性エラストマーを50〜100質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記シラノール縮合触媒を前記ベース樹脂及び前記キャリア樹脂成分の合計100質量部に対し、0.005質量部〜0.05質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記樹脂成分(A)が、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体またはエチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記有機パーオキサイドが、前記ベース樹脂成分及びキャリア樹脂成分の合計100質量部に対して、0.02〜0.8質量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記有機不飽和シラン化合物が、前記ベース樹脂成分及びキャリア樹脂成分の合計100質量部に対して、0.2〜5.0質量部含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記有機パーオキサイドの1分間の半減期温度以上で各成分を溶融混合して反応させる工程より後の工程において、水分と接触させて架橋させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により得られることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体。
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