JP2012146730A - 太陽電池用リード線及びそれを用いた太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽電池を薄板化した場合でも太陽電池用リード線の接合時に太陽電池セル(例えば、シリコンセル)の反り若しくは破損が生じにくく、且つ、屈曲疲労特性に優れる太陽電池用リード線を提供する。
【解決手段】導体の表面の一部又は全部にめっきが被覆された太陽電池用リード線において、導体の結晶粒径を6μm以上20μm以下にすると共に導体の引張試験における0.2%耐力を90MPa以下にし、且つ、導体の表面の酸化膜の厚さを2nm以下にしたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池用リード線(太陽電池用電極線)及びそれを用いた太陽電池に係り、特に、太陽電池のシリコンセル(シリコン結晶ウェハ)とはんだ接続するのに好適な太陽電池用リード線及びそれを用いた太陽電池に関するものである。
基板上にシリコン結晶を成長させた太陽電池においては、図3に示すように、通常、シリコンセル51の所定の領域に太陽電池用リード線53を接合し、これを通じて電力を伝送する構成としている。
この太陽電池用リード線53は、平角導体の表面に、シリコンセル51との接続のためのはんだめっき膜が形成される。例えば、図4に示すように、平角導体61としてタフピッチCuや無酸素Cuなどの純Cuを用い、その外側に形成されたはんだめっき膜63として、Sn−Pb共晶はんだを用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、近年、環境への配慮から、はんだめっき膜63の構成材として、Pbを含まないはんだ(Pbフリーはんだ)への切り替えが検討されている(例えば、特許文献2参照)。
ところで、太陽電池を構成する部材のうち、シリコンセル51が材料コストの大半を占めていることから、製造コストの低減を図るべくシリコンセル51の薄板化が検討されている。しかし、シリコンセル51を薄板化すると、太陽電池用リード線53のはんだ接合時における加熱プロセスや、太陽電池使用時における温度変化により、図5に示すように、はんだ接続前(a)はフラットであったシリコンセル51及び太陽電池用リード線53が、はんだ接続後(b)にはんだめっき55を介して接続したシリコンセル51と太陽電池用リード線53が反ったり、破損したりする虞があった。このため、これに対処すべく、太陽電池用リード線53として、シリコンセル51を薄板化した場合でも太陽電池用リード線53の接合時にシリコンセル51の反り若しくは破損が生じにくい(0.2%耐力の低い)太陽電池用リード線への切り替えが検討されている(例えば、特許文献3参照)。
0.2%耐力の低い太陽電池用リード線を用いると、従来の太陽電池用リード線を用いた場合と比べて、太陽電池用リード線が塑性変形しやすく、はんだ接合時の熱応力を小さくできるので、シリコンセルと太陽電池用リード線が反ったり、破損したりする虞が低減する。
特開平11−21660号公報 特開2002−263880号公報 特開2006−54355号公報 特開2008−140787号公報
しかしながら、太陽電池用リード線の0.2%耐力を小さくするために導体の結晶粒径を大きくしすぎると変形に伴う亀裂発生が起こりやすく、発生した亀裂の拡大と応力集中により、容易に疲労破壊が生じる問題があった(例えば、特許文献4参照)。
即ち、太陽電池(太陽電池モジュール)として製造した後でも、その設置後に太陽電池に機械的なストレスが繰り返し加わることで、図6(a),(b)に示すように、隣接する複数の太陽電池セル60,61の一方の太陽電池セル60の表面側電極と他方の太陽電池セル61の裏面側電極を接合するべく、隣接する太陽電池セル60,61間において太陽電池用リード線53が引き回されている部分(略L字型に曲げられている部分)Aで破断が生じることがあった。
従って、本発明の目的は、太陽電池を薄板化した場合でも太陽電池用リード線の接合時に太陽電池セル(例えば、シリコンセル)の反り若しくは破損が生じにくく、且つ、屈曲疲労特性に優れる太陽電池用リード線及びそれを用いた太陽電池を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、導電率が良好な太陽電池用リード線及びそれを用いた太陽電池を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、導体の表面の一部又は全部にめっきが被覆された太陽電池用リード線において、前記導体の結晶粒径を6μm以上20μm以下にすると共に前記導体の引張試験における0.2%耐力を90MPa以下にし、且つ、前記導体の表面の酸化膜の厚さを2nm以下にした太陽電池用リード線である。
隣接する複数の太陽電池セルの一方の太陽電池セルの表面側電極と他方の太陽電池セルの裏面側電極とを接合するために使用されると良い。
前記導体の露出箇所が、めっきを被覆した箇所400cm2あたり30箇所以下であると良い。
また、本発明は、隣接する複数の太陽電池セルの一方の太陽電池セルの表面側電極と他方の太陽電池セルの裏面側電極とを接合するために、導体の表面の一部又は全部にめっきが被覆された太陽電池用リード線を備えた太陽電池であって、前記太陽電池用リード線は、前記導体の結晶粒径が6μm以上20μm以下にされると共に前記導体の引張試験における0.2%耐力を90MPa以下にされ、且つ、前記導体の表面の酸化膜の厚さが2nm以下にされた太陽電池である。
前記導体の露出箇所が、めっきを被覆した箇所400cm2あたり30箇所以下であると良い。
本発明によれば、太陽電池を薄板化した場合でも太陽電池用リード線の接合時に太陽電池セルの反り若しくは破損が生じにくく、且つ、屈曲疲労特性に優れる太陽電池用リード線及びそれを用いた太陽電池を提供することができる。
また、本発明によれば、導電率が良好な太陽電池用リード線及びそれを用いた太陽電池を提供することができる。
本発明の一実施の形態における熱処理条件及び結晶粒径と、0.2%耐力、耐クラック、及びセルの反りの関係を示す図である。 本発明の一実施の形態における各種導体材料の線膨張係数、ヤング率、体積抵抗率を示す図である。 一般的な太陽電池セルへの太陽電池用リード線の接続状態を示す斜視図である。 従来の太陽電池用リード線を示す断面図である。 従来の太陽電池セルと太陽電池用リード線とをはんだ接続する際に発生する反りを説明する図である。 太陽電池用リード線を用いた隣接する太陽電池セル間のはんだ接続を説明する図である。
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面にしたがって説明する。ここでは、太陽電池用リード線は、太陽電池用導体の表面の一部又は全部にめっきが被覆されたものを言う。
(太陽電池用導体)
一実施の形態の太陽電池用導体(以下、導体と言う)は、太陽電池セル(シリコン結晶ウェハ)のシリコンセル面へのはんだ接続が容易となるように、軟質材の導体の外形形状が断面平角状とされている。
(導体の体積抵抗率)
導体は、太陽電池の発電ロスを軽減する観点から、体積抵抗率が比較的小さい導体材料、例えば、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の材料を用いることが好ましい。
体積抵抗率が比較的小さい導体材料としては、図2に示すように、Cuの他にAu,Ag,Alなどがある。この中で体積抵抗率が最も低いのはAgであり、発電効率を最大限にすることが可能である。一方、低コスト化を優先するときにはCuが良く、軽量化を図りたいときにはAlを選択するのが望ましい。
特に、Cuの種類としては、タフピッチCu、無酸素Cu、リン脱酸Cu、高純度Cu(純度99.9999%以上)のいずれを用いることも可能である。導体の引張試験における0.2%耐力を最も小さくするためには純度が高いCuが有利であり、即ち高純度Cu(純度99.9999%以上)を選択する。一方、不純物が入り0.2%耐力は大きくなるが低コスト化を図りたいときには、タフピッチCu若しくはリン脱酸Cuを選択する。
(導体の0.2%耐力)
一般に熱膨張率の異なる異種金属を高温で接続した場合には、温度変化に熱膨張率、ヤング率を積算した値が反りを発生させる力となる。しかし、太陽電池のように接続する両部材の剛性が著しく異なり、また、はんだ接続温度も200℃以上と高温のものでは、断面積が小さい導体の方が降伏してしまい、前述の熱膨張率、ヤング率による力がそのまま反り発生力とはならない。
導体の場合、降伏応力が小さいと少ない力で塑性変形してしまい、それ以上の変形抵抗とならない。即ち、低強度及び低耐力であるほど、接合時のシリコン結晶ウェハへの負荷が軽減する。このため、塑性変形の指標として引張試験における0.2%耐力を用い、導体の0.2%耐力を90MPa以下とする。このような0.2%耐力の低い軟質の導体を選択することにより、シリコン結晶ウェハヘ導体接合の際の熱応力(シリコンセルを反らせる力)を低減することができる。但し、0.2%耐力の低すぎる導体は疲労特性に劣るため、導体の0.2%耐力は30MPa以上であることが望ましい。
(導体の結晶粒径)
また、前述の0.2%耐力は導体の結晶粒径との相関が大きいことが知られており、一方で粒界が少ないほど、即ち結晶粒径が大きいほど変形抵抗は小さい。他方で粒径が大きくなりすぎると材料の疲労特性は低下し、脆い材料となる。従って、結晶粒径及び導体の0.2%耐力は一定条件範囲に入っている必要がある。ここでの結晶粒径とは、実施例の欄において後述するが、導体の結晶粒径を平均化したものである。
導体の結晶粒径が20μm超であると、導体が脆くなるため耐クラック性が落ちる。そのため導体の結晶粒径が20μm超だと太陽電池へ組み込み設置した後、太陽電池用リード線、特に太陽電池セル間の平角線をL字に折り曲げる部分で亀裂が発生したり、長期信頼性が不十分になるといった不具合の原因になる。また、結晶粒径が6μm未満だと、耐クラック性は問題はないが、導体の軟質性が失われるため、シリコンセルの反りが大きくなる。従って、導体の結晶粒径としては6以上20μm以下の範囲が好ましい。
(導体の表面酸化膜厚)
更に、導体の表面の酸化膜が厚くなると、導体に対するはんだの濡れ性が低下して導体露出箇所が生じ、導体露出箇所が多く発生することでこれを起点とする疲労破壊が発生するため、導体の表面の酸化膜厚を薄くする必要がある。ここで導体露出箇所とは、はんだめっき被膜が全くなされずに導体材料であるCuなどが露出している部分のみならず、他の部材に比べて10μm以上窪んでいる部分を含む。
導体の表面の酸化膜厚を2nm以下とすることで、導体露出箇所をはんだめっき被覆箇所の400cm2あたり30箇所以下とすることができ、導体露出箇所を起点とする疲労破壊を抑制することができる。従って、導体の表面の酸化膜厚は2nm以下とすることが望ましい。
また、導体の表面の酸化膜厚の下限値は、これに限定する趣旨ではないが、現状の製造技術を考慮すると、0.1nmまでは制御できることから、導体の表面の酸化膜厚は0.1nm以上であり、従って、導体の表面の酸化膜厚としては、0.1nm以上2nm以下の範囲が好ましい。
(好適な導体の0.2%耐力、結晶粒径、及び表面の酸化膜厚)
前述したことから、導体の0.2%耐力は30MPa以上90MPa以下で、また、導体の結晶粒径としては6μm以上20μm以下の条件が好ましい。更に、導体の表面の酸化膜厚は2nm以下であることが望ましい。この範囲であれば、従来方式よりも大幅にシリコンセルの反りを低減でき、尚かつ結晶粒径粗大化による脆性及び導体露出箇所を起点とする疲労破壊を防止できるため、クラックや長期信頼性の低下を防止することができる。
(導体(平角導体)の製造方法)
導体の加工法としては圧延加工、スリット加工のいずれも適用可能である。丸線から圧延して平角化する方式は長尺で均一なものが製造できる。スリット方式では種々の幅の材料に対応できるメリットがある。
例えば、好適な平角導体は、導体をダイス伸線若しくはロール圧延、或いはそれらの複合工程により平角状に成形した後、通電方式若しくはバッチ式の設備若しくは連続式の設備で熱処理して0.2%耐力を低減することで得られる。ここで、0.2%耐力を低減するための熱処理方式としては、通電加熱方式よりも熱エネルギーを十分に与えられるヒータによるバッチ式加熱方式若しくは連続式加熱方式が望ましい。或いは酸化を防止する観点から窒素などの不活性ガス雰囲気や水素還元雰囲気の炉を用いることもできる。
熱処理する場合、所望の結晶粒径を得るためには、時間と温度を規定する必要がある。
高温では比較的短時間で熱処理が完了する。低温では長時間を必要とするが、設備的には安価なものを用いることができる。
導体がCuの場合、温度が450〜1000℃のときには加熱時間は5〜60秒程度のときが最も適正であり、結晶粒径6μm以上20μm以下を得ることができる。
熱処理条件は前記の場合に限定されず温度と時間の組み合わせで、結晶粒径を制御できる。例えば、温度が200〜450℃のときには加熱時間は1〜30分程度のときが適正であり、結晶粒径6μm以上20μm以下を得ることができる。
なお、導体としてCu以外のAg,Au,Alについても、Cuの場合と同様に熱処理条件で結晶粒径を制御できる。
はんだめっき前の導体の表面の酸化膜厚を2nm以下とする具体的な方法としては、圧延前においては、圧延前の導体を25℃且つ湿度50RH%以下で保管することで、導体の表面の酸化膜厚を2nm以下に保つ方法がある。その上で、圧延後の工程においては、圧延やバッチ焼鈍後の導体を湿度50RH%以下で保管する方法や、前述の通り不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、アルゴンガス雰囲気)や水素還元雰囲気の炉で焼鈍する方法、めっき前処理液のpHを2.5以下とする方法などを適用することが考えられる。
もっとも、これらの方法に限定されるものではなく、圧延前において、導体の表面の段剥き工程を設けることで導体の新生面の上にめっきする方法でもよい。
(太陽電池用リード線)
本発明の一実施の形態における太陽電池用リード線は、導体の表面全体に、はんだめっき膜を施したものである。はんだめっきは、環境面から、好ましくは鉛フリー品とし、導体の表面の外周の一部又は全部について実施する。
また、はんだ組成については、これまで導体にCuを用いたものではシリコンセルとの熱膨張整合を考慮して低温接続が可能なものが求められていたが、本実施形態の導体を用いることで、シリコンセルの反りを小さくできることから、接続温度が高いSn−Ag−Cu系の組成のはんだを用いることが可能となる。
導体の被覆に用いるはんだは、Sn系はんだ、或いは第2成分としてPb,In,Bi,Sb,Ag,Zn,Ni,Cuから選択される少なくとも1種の元素を0.1mass%以上含むSn系合金はんだであるが、第3成分として1000ppm以下の微量元素を含んでいるものを用いてもよい。
この太陽電池用リード線を、太陽電池セル(シリコン結晶ウェハ)におけるシリコンセル面の所定の接点領域(例えば、Ag電極領域)に接続することで、太陽電池(太陽電池アセンブリ)が得られる。
(太陽電池用リード線の効果)
以上説明したように、本実施の形態の太陽電池用リード線は、太陽電池セルとはんだ接続しても、従来方式よりも太陽電池セルの反りが少なく、結晶粒粗大化による脆化を防止でき、且つ電気的特性にも優れる。
即ち、導体の0.2%耐力として30MPa以上90MPa以下のものを用いているので、はんだ接続後の導体の熱収縮によって、太陽電池セルに発生する熱応力を低減できる。このため、太陽電池セルとはんだ接続後の熱収縮の際に、太陽電池セルの反りを減少させることができる。
また、導体の結晶粒径が6μm以上20μm以下の範囲に入るものを用いて、結晶粒径の最大値を規制しているので、導体の脆化を防止することができ、結晶粒径の最小値を規制しているので、結晶粒径の面からも太陽電池セルの反りを防止することができる。
また、Cuの結晶粒径20μm超の場合や導体の表面の酸化膜厚が2nmを超える場合は、導体そのものの亀裂やめっき表面の導体露出箇所を起点とした疲労破壊が生じやすいため、太陽電池パネルなどへ組み込む成型加工の際、平角線に亀裂が発生したり、長期信頼性が不十分になるといった不具合の原因になるが、本実施形態のCuの結晶粒径は6μm以上20μm以下で、導体の表面の酸化膜厚が2nm以下であるため、太陽電池用リード線の好適な疲労特性を十分に得ることができ、成型加工、長期に亘る信頼性に優れる。
また、本実施形態の太陽電池用リード線は、体積抵抗率が50μΩ・mm以下の高導電性を有する導体を用いているので、太陽電池としての発電効率を良好に維持することができる。
更に、本実施形態の製造方法によれば、熱処理条件により、導体の0.2%耐力を所定値以下となるようにし、且つ導体の結晶粒径が所定の範囲に入るようにしているので、コストがかからず簡易な方法で太陽電池用リード線を提供することができる。
(実施例及び比較例)
幅2.0mm、厚さ0.15mmであり、表面の酸化膜厚が2nm以下のCu材料(OFC:無酸素Cu、TPC:タフピッチCu)を平角線状に圧延成形して導体とし、これを25℃、湿度50RH%以下の低温保管した後(2日)、熱処理条件を1010℃/30秒、1000℃/62秒、1000℃/60秒、・・・450℃/5秒、及び450℃/4秒、500℃/30秒と変えて不活性雰囲気(窒素ガス)にて熱処理した。熱処理後の導体をめっき前処理槽(pH2.5)に浸漬した後に、その導体の周囲をSn−3%Ag−0.5%Cu系の鉛フリーはんだで溶融はんだめっき槽に浸漬することで被覆してはんだめっき膜を設け、はんだ被覆Cu平角線を形成し、そのときのCuの結晶粒径、Cu及びはんだ被覆Cuの0.2%耐力を調べた。その結果を図1に示す。
ここでの結晶粒径とは、はんだめっき平角線の縦断面120μm四方における結晶粒の径を平均化したものである。具体的には、JIS H 0501に示される切断方法に基づき、顕微鏡写真上で120μmの長さの線分6本(縦線×3、横線×3)によって完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を求めている。また、はんだ被覆品Cuの0.2%耐力σは、はんだを除く導体の断面積Sで、導体に0.2%の歪みを与える引張試験における荷重(外力)Fを除算して求めている。式で示せば次の通りである。
σ=F/S
熱処理の条件を1000℃/60秒、・・・450℃/5秒と変えて処理した場合、平角Cuの結晶粒径は6μm以上20μm以下であった。また、平角Cuの0.2%耐力は30MPa以上90MPa以下であり、全て90MPa以下であった。熱処理条件を1010℃/30秒、1000℃/62秒、450℃/4秒、500℃/30秒(導体はTPC)と変えて処理した場合は、平角Cuの結晶粒径はそれぞれ21.8μm、21.3μm、5.8μm、5.6μmであった。また、Cuの0.2%耐力はそれぞれ28MPa、29MPa、91MPa、92MPaであった。
前述したはんだ被覆Cu平角線を縦155mm×横155mm、厚さ180μmのシリコンセルにはんだ接続したものの耐クラックとシリコンセルの反りを調べた。耐クラックは10枚のシリコンセルを平角線で接続したストリングスで小型モジュールを作製し、その小型モジュールの両端を固定し、中央部を水平の位置より上下に2cmずつ機械的に撓ませ、平角線が破断するまでのサイクル数(屈曲回数)で評価した。その結果を同じく図1に示す。同図において、屈曲回数はn=5の平均値を示す。また、シリコンセルの反りの欄における評価印の○、△、×はそれぞれ良(<3mm)、やや良(3mm)、不良(>3mm)を意味する。更に、めっき外観の欄では、はんだめっきの導体に対する濡れが不十分で、導体露出箇所がはんだめっき被覆箇所の400cm2あたり30箇所超の試料を×、30箇所以下の試料を○とした。導体露出箇所は平角めっき線の両面(側面は除く)を顕微鏡で観察して個数をカウントした。導体の表面の酸化膜厚の欄では、導体(Cu)の酸化膜厚をSERA(連続電気化学還元法)で測定し、分析条件は電流密度30mA/cm2、分析径1.6mmφとし、Cu2Oの還元電位−0.30〜−0.59V、CuOの還元電位−0.59〜−0.80Vとして両者の膜厚の和を導体の酸化膜厚として求めた。接合力の欄における評価印の○、×はそれぞれ良(>10N)、不良(<10N)を意味する。
結晶粒径の大径化に伴ってCuの0.2%耐力は減少する。Cuの0.2%耐力が90MPaを示す結晶粒径が6.1μmのとき、シリコンセルの反りは減少傾向にあるため、やや良であった。Cuの0.2%耐力が89MPaを示す結晶粒径は6.2μmのとき、シリコンセルの反りを減少させることができ、良であった。Cuの結晶粒径が20μmになると、19.8μmまでは良であった耐クラック性がやや落ちた。
Cuの結晶粒径が21.3μmのときは耐クラック性は劣っていた。また、Cuの0.2%耐力が91MPaを示す結晶粒径が5.8μmのとき、シリコンセルの反りが大きく、不良であった。更に、Cuの結晶粒径は20μmであっても、導体の表面の酸化膜厚が2.0nmよりも大きく導体露出箇所が30を超える場合は、めっき外観が不良で耐クラック性は劣っていた。

Claims (5)

  1. 導体の表面の一部又は全部にめっきが被覆された太陽電池用リード線において、前記導体の結晶粒径を6μm以上20μm以下にすると共に前記導体の引張試験における0.2%耐力を90MPa以下にし、且つ、前記導体の表面の酸化膜の厚さを2nm以下にしたことを特徴とする太陽電池用リード線。
  2. 隣接する複数の太陽電池セルの一方の太陽電池セルの表面側電極と他方の太陽電池セルの裏面側電極とを接合するために使用される請求項1に記載の太陽電池用リード線。
  3. 前記導体の露出箇所が、めっきを被覆した箇所400cm2あたり30箇所以下である請求項1又は2に記載の太陽電池用リード線。
  4. 隣接する複数の太陽電池セルの一方の太陽電池セルの表面側電極と他方の太陽電池セルの裏面側電極とを接合するために、導体の表面の一部又は全部にめっきが被覆された太陽電池用リード線を備えた太陽電池であって、
    前記太陽電池用リード線は、前記導体の結晶粒径が6μm以上20μm以下にされると共に前記導体の引張試験における0.2%耐力を90MPa以下にされ、且つ、前記導体の表面の酸化膜の厚さが2nm以下にされたことを特徴とする太陽電池。
  5. 前記導体の露出箇所が、めっきを被覆した箇所400cm2あたり30箇所以下である請求項4に記載の太陽電池。
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