JP2012146616A - 燃料電池用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

燃料電池用セパレータ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性に優れ、かつ接触抵抗が低くい金属基板を用いた固体高分子型燃料電池用セパレータの提供、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属製燃料電池用セパレータ基板の少なくとも一方の表面に導電性炭素被膜と金属オキシカーバイド被膜との積層被膜を被着する。本発明に係る製造方法は、プラズマ処理容器内にセパレータ基板を設置し、非酸化性ガス雰囲気中で前記セパレータ基板を100℃乃至450℃に加熱する工程と、前記セパレータ基板表面をプラズマ処理する工程と、放電プラズマCVDによる導電性炭素被膜を形成する工程と、前記導電性炭素被膜表面にクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜を形成する工程とからなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐食性に優れ、カーボンペーパーとの接触電気抵抗が小さく、安価な個体高分子型燃料電池用セパレータ、及びその製造方法に関する。
近年、地球環境問題やエネルギー問題を解決するエネルギー源として燃料電池が注目されている。特に、固体高分子型燃料電池は低い温度で動作可能であること、小型化・軽量化が可能であることから家庭用電源や燃料電池自動車への適用が検討されている。
一般的な固体高分子型燃料電池を構成する重要部品の一つにセパレータがある。このセパレータに要求される特性としては、酸性雰囲気における耐食性に優れていること、振動等に対する機械的強度が大きいこと、アノード及びカソード電極となるカーボンペーパーとの接触抵抗が小さいこと、溝加工等の加工性に優れ、軽量かつ安価であることなどである。
最近では、上記諸特性を満たすセパレータの基材として、ステンレス鋼板などの金属板が主として検討されている。ステンレス鋼やチタン及びその合金などの金属を用いたセパレータは、表面に不動態皮膜を形成することによって良好な耐食性を得ているが、この不動態皮膜がアノード及びカソード電極との接触抵抗を高くするため、導電性を阻害し、燃料電池の発電効率を低下させることが知られている。また、安価なセパレータ基材としてアルミニウムやマグネシウム金属などが検討されているが、基材表面に絶縁性の酸化被膜が形成され易く、耐食性も十分ではなく、溶出したイオンが触媒特性を劣化させたり、固体高分子膜のイオン伝導性を低下させたりするため、結果的に燃料電池の発電特性を劣化させることが知られている。
このため、耐食性金属材料、例えばステンレス鋼表面に炭化物系または硼化物系金属介在物などを析出させて、不動態皮膜による導電性阻害要因を除去するもの(特許文献1参照)、金属基板表面にアモルファスカーボンと導電部を有する被膜層を形成するもの(特許文献2参照)、金属基板表面にクロムオキシカーバイド被膜を形成するもの(特許文献3参照)、などが検討されている。
特許文献1には、ステンレス鋼を800℃〜1200℃で長時間熱処理することによってステンレス鋼中の炭素又は/及び硼素をクロム系炭化物及びクロム系硼化物の微粒子として基材表面に析出させる技術が開示されている。これらの微粒子は低抵抗率であって、その表面に不動態皮膜を形成しないので、接触抵抗を十分低くできるとされている。しかし、ステンレス鋼基材が露出しているため、電解液中に金属イオンが溶出する、またステンレス鋼基材を800℃〜1200℃で長時間熱処理する必要があるなどの課題があった。
特許文献2では、金属基板上にアモルファスカーボン層と導電部とからなる被覆層を有する燃料電池用セパレータ技術が開示されている。当該セパレータは、アモルファスカーボン層と、アモルファスカーボン層と黒鉛微粒子で構成される導電部とからなる被覆層を備えることを特徴とする。アモルファスカーボンは絶縁性膜であるため、接触抵抗は10mΩ・cm程度で、十分低くできないという課題があった。また、アモルファスカーボン被覆層は耐食性に優れているとされているが、電位+1Vにあるアモルファスカーボン被覆層はpH2の硫酸液中で溶解するという課題があった。
特許文献3では、燃料電池セパレータ基板上にクロムオキシカーバイド又はクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜を備えた固体高分子型又はリン酸型燃料電池セパレータ、及びその製造方法として燃料電池セパレータ基板を300℃〜500℃に保持して、ヘキサカルボニルクロムを原料として化学蒸着法により、前記基板上にクロムオキシカーバイド又はクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜を形成する技術が開示されている。しかし、アルミニウムやマグネシウムなどの安価な金属基板表面に酸素を含む雰囲気中で前記クロムオキシカーバイド被膜を形成すると、金属基板とクロムオキシカーバイド被膜との界面に絶縁性の酸化膜が形成され、接合抵抗が大きくなるという課題があった。
特開2003−193206号公報 特開2008−204876号公報 特開2006−278040号公報 特願2008−184765号公報
本発明が解決しようとする課題は、耐食性に優れ、かつ接触抵抗が低くい固体高分子型燃料電池用セパレータを安価に提供すること、及びその製造方法を提供することにある。また、これによって表面処理された燃料電池用セパレータ、及び当該燃料電池用セパレータを用いた固体高分子型燃料電池を安価に提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために成されたもので下記の燃料電池用セパレータ及び燃料電池用セパレータの製造方法を提供する。
請求項1に係る発明は、燃料電池セパレータ基板の少なくとも一方の主面が、導電性炭素被膜と金属オキシカーバイド被膜との積層被膜で被覆されていることを特徴とする燃料電池用セパレータである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の前記導電性炭素被膜が導電性ダイヤモンドライクカーボン被膜であって、その厚さが0.03μm乃至1μmであることを特徴とする燃料電池用セパレータである。
請求項3に係る発明は、請求項1及び2に記載の前記金属オキシカーバイド被膜がクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜層であって、その厚さが0.03μm乃至1μmであることを特徴とする燃料電池用セパレータである。
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載の前記燃料電池セパレータ基板が、鉄、チタニウム、マグネシウム、アルミニウム及びこれらの群から選ばれる金属の合金材料であることを特徴とする燃料電池用セパレータである。
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載の前記燃料電池セパレータ基板の表面に化学量論組成以下の窒素元素を含有する導電性窒化金属層を有することを特徴とする燃料電池用セパレータである。
請求項6に係る発明は、燃料電池用セパレータ基板をプラズマ処理容器内に設置し、高真空中又は非酸化性ガス雰囲気中で前記燃料電池セパレータ基板を100℃乃至450℃に加熱する第1工程と、不活性ガス又は非酸化性ガス雰囲気中で前記燃料電池セパレータ基板に高周波電力と負のバイアス電圧を給電して放電プラズマを発生させ、前記燃料電池セパレータ基板表面をイオン照射する第2工程と、炭素被膜形成用原料ガス雰囲気中で放電プラズマを発生させ、前記導電性炭素被膜を形成する第3工程と、引き続いて金属オキシカーバイド被膜形成用原料ガス雰囲気中で放電プラズマを発生させ、前記導電性炭素被膜表面にクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜を形成する第4工程とからなることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
請求項7に係る発明は、複数枚の前記燃料電池セパレータ基板をほぼ平行、等間隔に配置し、奇数番目の前記セパレータ基板を電気的に結線して第1の基板電極とし、偶数番目のセパレータ基板を電気的に結線して第2の基板電極とし、前記第1の基板電極と前記第2の基板電極を対向電極として高周波電力を給電し、且つ両基板電極に交互に負のバイアス電圧を給電して請求項6に記載の第2工程から第4工程を実施することを特長とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
請求項8に係る発明は、請求項6及び7に記載の前記バイアス電圧が、負のパルス電圧又は負の脈流電圧であって、その波高値が300V乃至5000Vであることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
請求項9に係る発明は、請求項6から8のいずれかに記載の前記第2工程において、前記不活性ガス又は非酸化性ガスが窒素ガス、アンモニアガスのいずれかを含む不活性ガスであることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法である。
本発明によって、耐食性に優れ、かつ接触抵抗が低くい固体高分子型燃料電池用のセパレータを安価に提供し、生産性に優れた製造方法を提供することができる。また、これによって製造された燃料電池用セパレータ、及び当該燃料電池用セパレータを用いた固体高分子型燃料電池を安価に提供することができる。
本発明に係るプラズマ処理装置の要部構成を示す概略図面である。
本発明に係る燃料電池用セパレータは、安価な金属製セパレータ基板表面に導電性炭素被膜と金属オキシカーバイド被膜を積層してなることを特徴とする。前記炭素被膜は抵抗率10Ω・cm以下の導電性ダイヤモンドライクカーボン(以下、導電性DLCとも記す)とすることができる。通常のダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCとも記す)は絶縁性であって使用できないが、抵抗率10Ω・cm以下の導電性DLC被膜であれば、厚さ1μmの被膜を形成すると、1平方センチメートル当たりの抵抗値は1mΩ以下となり、実用上は問題なく使用することができる。しかし、接触抵抗を10mΩ・cm以下にするためには導電性DLC被膜の抵抗率を0.1Ω・cm以下とすることが望ましい。本発明の製造方法によれば、抵抗率10mΩ・cmの導電性DLC被膜を得ることができる(特許文献4参照)。
一方、通常のDLC被膜は耐薬品性に優れた被膜であって、酸性溶液やアルカリ性溶液に侵されることはないとされているが、電位+1Vにある導電性DLC被膜はpH2の硫酸液中で溶解する。本発明は、前記導電性DLC被膜上に硫酸溶液にも耐食性を有する金属オキシカーバイド被膜を積層することによって前記課題を解決したものである。
前記燃料電池セパレータ基板表面に導電性DLC被膜とクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜を積層する本発明は、ステンレス基板以外の酸化され易い金属基板、例えば、鉄、チタニウム、マグネシウム、アルミニウム及びこれらの合金材料など安価な基板材料にも適用することができる。しかし、前記セパレータ基板表面に導電性DLC被膜及びクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜を形成する工程ではセパレータ基板表面に高抵抗の酸化被膜が生成され易い。これら酸化され易い金属セパレータ基板表面に対しては、その最表面に予め化学量論組成以下の窒素元素を含有する導電性窒化金属層を形成する。該導電性窒化物層はセパレータ基板表面に窒素イオンを照射することによって形成することができる。
特に、アルミニウムセパレータ基板の場合、窒化アルミニウムは窒化物の中で最も酸化に対して安定な材料で、前記導電性DLC被膜の形成工程及びクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜の形成工程においてアルミニウムセパレータ基板表面の酸化を抑制し、セパレータ基板と前記導電性DLC被膜との接合抵抗を著しく低減することができる。
本発明によれば、導電性窒化アルミニウム層の厚さは0.01μm〜0.1μmでその効果を発揮する。また、前記導電性DLC被膜の厚さは1μm以下、好ましくは0.03μm〜1μmである。前記クロムオキシカーバイドの抵抗率は約0.2mΩ・cmであって、前記クロムオキシカーバイドを主成分とする被膜の厚さは特定されるものではないが、生産性を考慮すれば2μm以下、好ましくは0.03μm〜1μmである。
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、プラズマ処理容器内にセパレータ基板を設置し、非酸化性ガス雰囲気中で前記セパレータ基板を100℃乃至450℃に加熱する工程と、前記セパレータ基板表面をプラズマ処理する工程と、放電プラズマCVDによる導電性炭素被膜を形成する工程と、前記導電性炭素被膜表面にクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜を形成する工程とからなる。本発明は同一プラズマ処理装置内で前記第1工程から前記第4工程まで原料ガスを切り替えることによって実施することができる特長を有する。
図1に本発明に係るプラズマ処理装置の要部構成の概略図を示す。複数枚のセパレータ基板3をほぼ平行、等間隔に配置し、奇数番目のセパレータ基板を電気的に結線して第1の基板電極2aとし、偶数番目のセパレータ基板を電気的に結線して第2の基板電極2bとし、前記第1の基板電極2aと前記第2の基板電極2bを一対の基板電極4としてコンデンサー7を介して高周波電源5から高周波電力を給電して放電プラズマを発生させ、且つバイアス電源8からローパスフィルタ12を介して両基板電極に交互に負のバイアス電圧を給電して前記第2工程から第4工程を実施する。
前記第1工程では、前記プラズマ処理容器1内を真空排気した高真空中、又はアルゴンガス、窒素ガス等の非酸化性ガス雰囲気中で、プラズマ処理装置内に設置した加熱手段(図示せず)によって前記セパレータ基板を所定温度に加熱する。この工程では、前記セパレータ基板表面の酸化反応を抑制しながら100℃以上に加熱して十分にガス出しすると同時に、第3工程で導電性DLC被膜を形成する基板温度250℃〜450℃まで加熱することが好ましい。
前記第2工程では、前記プラズマ処理容器1内に不活性ガス、例えばアルゴンガス又はアルゴンガスと水素の混合ガス等の非酸化性ガスを導入し、前記一対の基板電極2a、2bに高周波電力を給電して放電プラズマを発生させ、同時に負のバイアス電圧を印加して前記セパレータ基板の両面をイオン照射して基板表面の酸化被膜や付着物を除去する。前記高周波電源5には、例えば周波数13.56MHz、出力300W〜3kWを有するものを使用することができる。
また、バイアス電圧として前記一対の基板電極に交互に波高値300V〜5kVの負の脈流電圧又は/及び負のパルス電圧を印加する必要がある。その為に図1に示すように、交流電圧発生器9の出力電圧を変圧器10の一次側に給電し、二次側の出力電圧をダイオード11によって両波整流して負の脈流電圧を発生させ、ローパスフィルタ12を介して前記一対の基板電極4に前記脈流電圧を交互に給電することができる。前記交流電圧の周波数は、特定されるものではないが、50Hz乃至200kHzが好適である。更に、好ましくは1kHz乃至100kHzである。
この工程では、必要に応じて前記アルゴンガスに窒素ガス等を混合して前記セパレータ基板表面に窒素イオン注入して窒化物層を形成する。アルゴンガスと窒素ガスの混合割合によって、窒化物層の窒素含有割合を制御することができる。例えば、アルミニウムセパレータ基板の場合、窒化アルミニウムは絶縁性であるが、窒素の含有量を50原子%未満、好ましくは25〜45原子%の窒素元素を含むアルミニウム層を形成することによって導電性の窒化アルミニウム層を形成することができる。
前記第3工程では、前記プラズマ処理容器1内に設置した前記セパレータ基板3を250℃〜450℃に加熱し、原料ガスとしてメタン、アセチレン、トルエンガスなど炭化水素ガスと必要に応じて水素ガスを導入して前記一対の基板電極2a、2bに高周波電力を給電して放電プラズマを発生させる。高周波電力に重畳して負のバイアス電圧を印加して前記セパレータ基板の両面に導電性DLC被膜を形成することができる。
前記導電性DLC被膜の形成には、前記セパレータ基板の温度が250℃以上であることと所定量のイオン照射が不可欠である。対向するセパレータ基板である前記第1の基板電極2aと前記第2の基板電極2bに交互に負のバイアス電圧を印加することによって前記セパレータ基板表面に導電性DLC被膜を被着することができる。前記負のバイアス電圧として波高値300V〜5000Vの脈流電圧、或いはパルス電圧を印加することができる。
本発明の他の実施形態によれば、原料ガスの放電プラズマ発生に前記高周波電力を補助的に使用し、前記バイアス電源8からの脈流電圧によって放電プラズマを維持して所望の導電性DLC被膜を形成することもできる。更に、前記バイアス電圧の給電のみによって所望の導電性DLC被膜を形成することも可能である。
前記第4工程では、第3工程に引き続いて原料ガスとして金属ヘキサカルボニルガスを追加導入して、セパレータ基板である前記一対の基板電極2a、2bに高周波電力を給電して放電プラズマを発生させ、導電性DLC被膜を被着したセパレータ基板表面に金属オキシカーバイド被膜を形成する。セパレータ基板は前記第3工程と同じく250℃〜450℃の温度に保持し、−200V〜−500Vの前記バイアス電圧を印加する。
図1に示す如く、前記プラズマ処理容器内にA6サイズのステンレス(SUS304)セパレータ基板6枚を絶縁体支持具にほぼ4cm間隔で平行に係止し、奇数番目の3枚を電気的に結線して第1の電極基板2aとし、偶数番目の3枚を電気的に結線して第2の電極基板2bとし、一対の対向電極板4とした。前記第1の電極基板2aの給電端子を整合器6とコンデンサー7を介して高周波電源5の出力端子に接続し、前記第2の電極基板2bの接地端子はコンデンサー7を介して接地した。また、前記一対の対向電極板4の給電端子及び接地端子はローパスフィルタ12を介してバイアス電源8に接続した。
前記第1工程では、前記プラズマ処理容器1内を予め高真空に排気して十分にガス出した後、非酸化性ガスとして窒素ガス80%と水素ガス20%の混合ガスを導入して圧力約100Paに保持し、前記プラズマ処理容器の内壁面に沿って熱遮蔽材を介して設置した加熱手段によって前記一対の対向電極板を300℃まで加熱した。
前記第2工程では、前記プラズマ処理装置内に基板表面クリーニングガスとしてアルゴンガス80%と水素ガス20%の混合ガスを導入して圧力約1Paに保持し、前記一対の対向電極板4に周波数13.56MHz、出力500Wの高周波電力を給電して放電プラズマを発生させ、ローパスフィルタ12を介して前記一対の対向電極板4に周波数33kHz、−800Vの脈流電圧を交互に印加してセパレータ基材表面をクリーニングした。20分間のクリーニング処理によって基板表面の自然酸化膜や汚染物を除去した。
前記第3工程では、前記セパレータ基板温度を300℃に保持し、導電性DLC被膜形成ガスとしてアセチレンガス80%と水素ガス20%の混合ガスを導入して圧力約5Paに保持し、前記一対の対向電極板4に周波数13.56MHz、出力700Wの高周波電力を給電して放電プラズマを発生させ、ローパスフィルタ12を介して前記一対の対向電極板に周波数33kHz、−800Vの脈流電圧を交互に印加して導電性DLC被膜を形成した。15分間の製膜で厚さ150nmの導電性DLC被膜を得た。
前記第4工程では、前記セパレータ基板温度を350℃に保持し、前記真空容器内にアセチレンガス及び水素をキャリヤガスとしてヘキサカルボニルクロムと水蒸気を導入して圧力約5Paに調整した。ヘキサカルボニルクロムの水素に対する分圧比は約0.01とした。セパレータ基板である前記一対の対向電極板に周波数13.56MHz、出力700Wの高周波電力を給電して放電プラズマを発生させ、ローパスフィルタ12を介して前記一対の対向電極板に周波数33kHz、−300Vの脈流電圧を交互に印加してクロムオキシカーバイド被膜を形成した。10分間の製膜で厚さ260nmのクロムオキシカーバイド被膜を積層した。
得られた導電性DLC膜とクロムオキシカーバイド被膜の積層被膜の評価結果を表2に示す。評価試料として有効表面積5.76cmについて腐食加速試験を行った。腐食加速試験は温度90℃、pH2の硫酸溶液中に浸漬してアノード分極試験を行った。硫酸溶液800ml、自然浸漬電位+0.8Vと+1V(SHE)で24時間の加速試験を行った。接触抵抗は、試料を面積4cmに切断し、カーボンペーパーを挟んで銅の電極間に挟み、40kgの荷重をかけて測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2012146616
導電性DLC被膜のみの試料では、自然電位0.8Vでの腐食加速試験結果ではDLC被膜は24時間後も殆ど溶解せず、SUS基板からの金属イオン溶出は微量で被膜は殆ど変化しなかった。接触抵抗は浸漬前2.7mΩ・cmであったものが6.3mΩ・cmまで増加したが殆ど変化しなかった。しかし、自然電位+1VのときDLC被膜は1時間以内に完全に溶解してSUS基板の金属イオンが溶出した。接触抵抗は浸漬前5.7mΩ・cmであったものが1700mΩ・cmまで増加した。これは導電性DLC膜が溶解し、SUS基板表面に酸化クロム被膜ができたことによるものと考えられる。
一方、本発明による導電性DLC被膜とクロムオキシカーバイド被膜の積層被膜を被着した試料については、イオンの溶出量は測定限界である0.01mg以下であった。また、自然電位+1Vにおける加速試験後の試料表面の目視評価では変化が認められなかった。接触抵抗は加速試験前3.5mΩ・cmであったものが、4.1mΩ・cmまで増加したが殆ど変化しなかった。pH2の硫酸溶液中で自然電位+1Vにおける加速試験で金属イオンの溶出は認められず腐食しないことが明らかになった。
本実施例では、セパレータ基板としてアルミニウム−マグネシウム系合金(5000系)板を採用し、実施例1と同様な製造条件で実施し、導電性DLC被膜とクロムオキシカーバイド被膜の積層被膜を被着した。
評価試料として有効表面積5.76cmについて腐食加速試験を行った。腐食加速試験は温度90℃、pH2の硫酸溶液中に浸漬してアノード分極試験を行った。硫酸溶液800ml、自然浸漬電位+1.0Vと+1.2V(SHE)で24時間の加速試験を行った。接触抵抗は、試料を面積4cmに切断し、カーボンペーパーを挟んで銅の電極間に挟んで40kgの荷重をかけて測定した。導電性DLC膜とクロムオキシカーバイド被膜の積層被膜の評価結果を表2に示す。
Figure 2012146616
自然電位+1Vにおける加速試験では、クロムオキシカーバイド被膜からのクロムイオンの溶出及び前記アルミニウム合金基板からのアルミニウムイオン及びマグネシウムイオンの溶出は測定限界の0.01mg以下であった。また、自然電位+1.2Vにおける加速試験では、0.03mgのクロムイオンが認められたが、目視検査では被膜表面の変化は認められなかった。接触抵抗は5mΩ・cm以下で、加速試験の前後で有意差は認められなかった。
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、アルミニウム合金基板の場合、前記積層被膜に微小なピンホール等が存在してもピンホール部分のアルミニウム合金基板表面は陽極酸化され、ピンホールに起因する前記積層被膜の剥離や金属イオンの溶出は発生しないという効果がある。
更に、この実施形態によれば、前記第2工程において基板表面クリーニングガスとしてアルゴンと水素の混合ガスに10%乃至30%の窒素ガスを添加することによって、基板表面をクリーニングすると同時に窒素イオン照射によって酸化され難い金属窒化層を形成することができる。チタニウム基板やアルミニウム基板など自然酸化よって金属酸化被膜が生成され易い金属基板の場合、表面に厚さ5nm乃至50nmの導電性の金属窒化層を形成することによって、前記第3工程において被着する導電性DLC被膜との接合抵抗を著しく低減する効果を有する。絶縁性の金属窒化層を生成する場合は、化学量論以下の窒素を注入することによって前記接合抵抗を低減することができる。
「他の実施形態」
上記実施形態では、セパレータ基板材料としてステンレス、アルミニウム合金基板に適用したが、これに限定されるものではなく、チタニウム、マグネシウム、銅、ニッケル及びこれらの合金材料などにも適用できることは云うまでもない。また、必要に応じて前記金属オキシカーバイド被膜として前記クロムオキシカーバイド被膜にモリブデンオキシカーバイド又はタングステンオキシカーバイドを添加することができる。
上記実施形態では、セパレータ基板からなる前記一対の対向電極板に高周波電力を給電して放電プラズマを励起し、負の脈流電圧を交互に印加してセパレータ基板表面をクリーニングし、導電性DLC被膜及びクロムオキシカーバイド被膜を被着する製造方法について説明したが、上記製造方法に限定されるものではなく、原料ガスのICPプラズマ、ECRプラズマ雰囲気中にセパレータ基板を保持してバイアス電圧を印加することによって前記第2工程から第4工程を実施することができ、前記導電性DLC被膜及びクロムオキシカーバイド被膜を被着することができる。更に、クロムターゲットと酸化炭素ガスを原料とした反応性スパッタリング法、反応性イオンプレーティング法等によって前記導電性DLC被膜及びクロムオキシカーバイド被膜を被着することができる。
更に、他の実施形態としては、前記第3工程において導電性DLC被膜を被着後にヘキサカルボニルクロムガスを導入し、前記セパレータ基板を300℃乃至500℃に保持して熱CVD法によってクロムオキシカーバイド被膜を被着することができる。
1:真空容器
2a、2b:基板電極
3:被加工基板
4:一対の基板電極
5:高周波電源
6:整合器
7:コンデンサー
8:バイアス電源
9:交流電圧発生器
10:変圧器
11:ダイオード
12:ローパスフィルタ
13:フィードスルー

Claims (9)

  1. 燃料電池セパレータ基板の少なくとも一方の主面が、導電性炭素被膜と金属オキシカーバイド被膜との積層被膜で被覆されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  2. 前記導電性炭素被膜が導電性ダイヤモンドライクカーボン被膜であって、その厚さが0.03μm乃至1μmであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
  3. 前記金属オキシカーバイド被膜がクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜層であって、その厚さが0.03μm乃至1μmであることを特徴とする請求項1及び2に記載の燃料電池用セパレータ。
  4. 前記燃料電池セパレータ基板が、鉄、チタニウム、マグネシウム、アルミニウム及びこれらの群から選ばれる金属の合金材料であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ。
  5. 前記燃料電池セパレータ基板表面に化学量論組成以下の窒素元素を含有する導電性窒化金属層を有することを特徴とする請求項1から4に記載の燃料電池用セパレータ。
  6. 燃料電池セパレータ基板をプラズマ処理容器内に設置し、高真空中又は非酸化性ガス雰囲気中で前記燃料電池セパレータ基板を100℃乃至450℃に加熱する第1工程と、不活性ガス又は非酸化性ガス雰囲気中で前記燃料電池セパレータ基板に高周波電力と負のバイアス電圧を給電して放電プラズマを発生させ、前記燃料電池セパレータ基板表面をイオン照射する第2工程と、炭素被膜形成用原料ガス雰囲気中で放電プラズマを発生させ、前記導電性炭素被膜を形成する第3工程と、引き続いて金属オキシカーバイド被膜形成用原料ガス雰囲気中で放電プラズマを発生させ、前記導電性炭素被膜表面にクロムオキシカーバイドを主成分とする被膜を形成する第4工程とからなることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
  7. 複数枚の前記燃料電池セパレータ基板をほぼ平行、等間隔に配置し、奇数番目の前記セパレータ基板を電気的に結線して第1の基板電極とし、偶数番目のセパレータ基板を電気的に結線して第2の基板電極とし、前記第1の基板電極と前記第2の基板電極を対向電極として高周波電力を給電し、且つ両基板電極に交互に負のバイアス電圧を給電して請求項6に記載の第2工程から第4工程を実施することを特長とする燃料電池用セパレータの製造方法。
  8. 前記バイアス電圧が、負のパルス電圧又は負の脈流電圧であって、その波高値が300V乃至5000Vであることを特徴とする請求項6及び7に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  9. 前記第2工程において、前記不活性ガス又は非酸化性ガスが窒素ガス、アンモニアガスのいずれかを含む不活性ガスであることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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