JP2012139847A - 木質系成形体およびその製造方法 - Google Patents

木質系成形体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】木質系材料からの溶出がなく低温加熱によりガス化しない溶解助剤を用いて、防火剤の濃度が高い溶液を調製し、かかる溶液により処理された木質系材料を成形することにより、防火性の高い木質系成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本木質系成形体は、木質繊維、セルロース繊維、木質チップ、木質パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つの木質系材料が60質量部以上90質量部以下と、硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火剤が5質量部以上35質量部以下と、繊維状接着剤および液状接着剤の少なくとも1つの接着剤が5質量部以上15質量部以下と、を含み、密度が40kg/m3以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、防火性の高い木質系成形体およびその製造方法に関する。
木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わら、稲わらなど木質系材料に、防火性および防蟻性を付与するための方法として、リン化合物、窒素化合物、ホウ素化合物などの防火薬剤が用いられている。
たとえば、特開2005−112700号公報(特許文献1)は、ホウ酸とホウ酸ナトリウム(ホウ砂)とを所定の割合で溶解させることによりホウ素換算で2.5mol/kg以上の高濃度の水溶液が得られ、かかる水溶液で木材などを処理することにより、木材に防火性を付与する技術を開示する。しかし、かかる技術においては、木材などへのホウ素化合物の含浸性が低く、木材などの表層が白華して溶出しやすくなる問題点がある。
また、特開2003−226877号公報(特許文献2)は、硫酸アンモニウム、第一リン酸アンモニウム(リン酸一アンモニウム、NH42PO3)、第二リン酸アンモニウム(リン酸二アンモニウム、(NH42HPO3)、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸の少なくとも1種の化合物と、固着化合物とを含む水系溶液で木質系材料を処理することにより、木質系材料に防火性を付与する技術を開示する。しかし、かかる技術においては、実施例として挙げられた上記水系溶液における上記化合物の濃度は13〜17質量%程度と低く、上記水系溶液を木質系材料に含浸および乾燥させるための処理時間が長く、付与される防火性が低いという問題点があった。
また、特開2005−212342号公報(特許文献3)は、木質材料をリン酸化合物およびホウ酸化合物の混合水溶液で処理した後、ボード化して改質木質ボードを製造する技術を開示する。しかし、かかる技術においては、上記混合溶液におけるリン酸化合物およびホウ酸化合物の濃度が20質量%程度と低く、上記水系溶液を木質材料に含浸および乾燥させるための処理時間が長く、付与される防火性が低いという問題点があった。
また、特開平6−254817号公報(特許文献4)は、リン酸塩とホウ酸塩とが溶解された水溶液中に水酸化アルミニウムを添加混合して得られる処理液で、木質繊維を処理した後、成形することによりボード化して改質木質繊維板を製造する技術を開示する。しかし、かかる技術においては、実施例として挙げられた上記処理液における不燃性化合物の濃度は、リン酸塩(リン酸二アンモニウム)の濃度が3mol/l、ホウ酸塩(ホウ酸ナトリウム)の濃度が0.2mol/l、水酸化アルミニウムが25g/l程度と低く、上記水系溶液を木質繊維に含浸および乾燥させるための処理時間が長いという問題点があった。
また、特開2009−113258号公報(特許文献5)は、水に、加熱によりガス化することにより不燃薬剤の溶解を促進するアンモニウム系薬剤として炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムの少なくともいずれかと、ホウ素系不燃薬剤およびリン酸系不燃薬剤の少なくともいずれかと、が溶解された不燃化薬剤で、木質材料を処理することにより、木質材料に防火性を付与する技術を開示する。しかし、かかる技術においては、上記のアンモニウム系薬剤は、60℃程度の低温加熱により分解するため、加熱処理時にアンモニア臭が発生し作業環境が極めて悪化すること、加熱処理後に木質材料に残らないこと、などの問題点がある。
また、菊池伸一、駒澤克己、難燃処理木質ファイバーの表面燃焼性、林産試験場報、北海道立林産試験場、1999年、第13巻、第5号、第7−13頁(非特許文献1)は、第二リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムまたは八ホウ酸ナトリウムの各種難燃剤で処理した木質繊維の防火性を表面燃焼試験で評価したことを開示する。しかし、かかる研究報告は、各種難燃剤で処理した木質繊維の防火性が比較検討されたものであり、これらの種類の難燃剤を複数用いた場合の総合的な防火性の評価には至っていない。
特開2005−112700号公報 特開2003−226877号公報 特開2005−212342号公報 特開平6−254817号公報 特開2009−113258号公報
菊地伸一、駒澤克己、「難燃処理木質ファイバーの表面燃焼性」、林産試験場報、北海道立林産試験場、1999年、第13巻、第5号、第7−13頁
本発明は、上記問題点を解決するために、木質系材料からの溶出がなく低温加熱によりガス化しない溶解助剤を用いて、防火薬剤の濃度が高い溶液を調製し、かかる溶液により処理された木質系材料を成形することにより、防火性の高い木質系成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、防火薬剤である硫酸アンモニウムが、防火薬剤であるホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムの溶解助剤として用いること、すなわち、水にまず硫酸アンモニウムを溶解させて得られた硫酸アンモニウム水溶液に、次いでホウ酸塩を溶解させ、次いで縮合リン酸アンモニウムを溶解させることにより、室温(たとえば25℃)で、縮合リン酸アンモニウムを40質量%以上溶解させ、ホウ酸塩を20質量%以上溶解させることができ、防火薬剤(縮合リン酸アンモニウム、ホウ酸塩および硫酸アンモニウム)の濃度が40質量%以上である高濃度の防火薬剤溶液が得られることを見出し、かかる高濃度の防火薬剤溶液で処理した木質系材料を成形することにより、防火性の高い木質系成形体を提供するものである。本発明は、具体的には、以下のとおりである。
本発明は、木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つの木質系材料が60質量部以上90質量部以下と、硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤が5質量部以上35質量部以下と、繊維状接着剤および液状接着剤の少なくとも1つの接着剤が5質量部以上15質量部以下と、を含み、密度が40kg/m3以上である木質系成形体である。
本発明にかかる木質系成形体において、その密度を150kg/m3以上とすることができる。また、繊維状接着剤は、その少なくとも一部が、90℃以上160℃以下の融点を有し、かつこの融点および80℃以上100℃以下の熱水雰囲気の少なくともいずれかにおいて接着性を有することができる。また、繊維状接着剤は、芯鞘構造を有する接着剤、海島構造を有する接着剤、およびノボラック樹脂接着剤の少なくともいずれかとすることができる。ここで、芯鞘構造を有する接着剤は、高融点ポリオレフィン−低融点ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート−ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート−低融点変性ポリエチレンテレフタレート繊維およびポリオレフィン−ポリビニルアルコール繊維のいずれかであり、酸化分解促進剤を0.5質量%以上5質量%以下で含むことができる。また、繊維状接着剤は、繊度が4dtex以上15dtex以下、繊維長が20mm以下とすることができる。また、液状接着剤は、イソシアネート化合物、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂および尿素樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含む熱硬化性接着剤とすることができる。
本発明は、木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つの木質系材料60質量部以上90質量部以下に、硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤溶液をその防火薬剤分で5質量部以上35質量部以下添加し、さらに防火薬剤溶液が添加された木質系材料を乾燥させる防火処理工程と、防火処理がされた木質系材料と、5質量部以上15質量部以下の繊維状接着剤および液状接着剤の少なくとも1つの接着剤と、を混合させる混合工程と、混合により得られた混合物をマット状に集積しさらにボード状に加熱加圧成形することにより密度40kg/m3以上の木質系成形体を得る成形工程と、を含み、防火薬剤の製造は、水に硫酸アンモニウムを溶解させて硫酸アンモニウム水溶液を得る第1サブ工程と、硫酸アンモニウム水溶液にホウ酸塩を水に対する溶解度より高い濃度で溶解させて硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液を得る第2サブ工程と、硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液に縮合リン酸アンモニウムを溶解させて硫酸アンモニウム−ホウ酸塩−縮合リン酸アンモニウム水溶液を得る第3サブ工程と、を含む木質系成形体の製造方法である。
本発明にかかる木質系成形体の製造方法において、上記の工程で得られた木質系成形体を、さらに加熱加圧成形することにより密度が150kg/m3以上の木質系成形体を得る二次的成形工程をさらに含むことができる。
本発明によれば、木質系材料からの溶出がなく低温加熱によりガス化しない硫酸アンモニウムを溶解助剤として用いて、防火薬剤として縮合リン酸アンモニウム、ホウ酸塩および硫酸アンモニウムの濃度が高い防火薬剤溶液を調製し、かかる防火薬剤溶液により処理された木質系材料を成形することにより、防火性の高い木質系成形体およびその製造方法を提供することができる。
[実施形態1]
本発明の一実施形態である木質系成形体は、木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つの木質系材料が60質量部以上90質量部以下と、硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤が5質量部以上35質量部以下と、繊維状接着剤および液状接着剤の少なくとも1つの接着剤が5質量部以上15質量部以下と、を含み、密度が40kg/m3以上である。かかる木質系成形体は、防火薬剤として硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを5質量部以上35質量部以下で含んでいるため、高い防火性を有する。
(木質系材料)
本実施形態の木質系成形体に含まれる木質系材料は、木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つである。かかる木質系材料は、高い成形性を有するため、木質系成形体の材料として好適である。ここで、木質繊維とは、針葉樹および広葉樹の少なくともいずれかを蒸煮解繊して得られる繊維であり、特に制限はないが、成形性が高い観点から、平均繊維径が3mm以下、平均繊維長が20mm以下であることが好ましい。セルロース繊維とは、直線状に連結されたセルロース分子を有する繊維であり、特に制限はないが、大量入手が容易な観点から、クラフトパルプ、再生パルプおよび古紙の少なくとも1つから得られる繊維であることが好ましい。木材チップとは、針葉樹および広葉樹の少なくともいずれかのチップであれば特に制限はない。木材パーチクルとは、上記木材チップを破砕して得られるものであり、特に制限はないが、平均粒径が5mm以下であることが好ましい。木片は、針葉樹および広葉樹の少なくともいずれかの小片であり、特に制限はないが、成形性が高い観点から、多角形板状であり、最大辺長が30mm以下、厚さが5mm以下であることが好ましい。麦わらおよび/または稲わらは、麦および/または稲のわらであり、特に制限はないが、成形性が高い観点から、扁平形状であり、最大長さが30mm以下、成形後の厚さが5mm以下であることが好ましい。
また、本実施形態の木質系成形体に含まれる木質系材料の部数は、形成性が高い観点から、60質量部以上90質量部以下であり、60質量部以上85質量部以下が好ましい。
(防火薬剤)
本実施形態の木質系成形体に含まれる防火薬剤は、硫酸アンモンム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムである。ここで、硫酸アンモニウムは、木質系材料に防火性を付与する防火薬剤であるとともに、防火薬剤溶液を調製する際にホウ酸塩の溶解度を高めるとともに縮合リン酸アンモニウムの溶解安定性を高める溶解助剤である。また、硫酸アンモニウムは、吸湿性を有するため、木質系材料の吸放湿性を高める調湿剤でもある。ホウ酸塩は、木質系材料に防火性を付与する防火薬剤であり、木質系材料の燃焼後の形状保持を高めることができる。ホウ酸塩は、特に制限はないが、入手が容易な観点から、四ホウ酸ナトリウム(Na247・10H2O(なお、Na2[B45(OH)4]・8H2Oとも表記される))、八ホウ酸ナトリウム(Na2813・4H2O)などが好ましい。また、縮合リン酸アンモニウムは、リン酸が縮合しているためリン含有量が高く、極めて優れた防火薬剤である。
したがって、硫酸アンモンム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤は、硫酸アンモンム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウム(特に縮合リン酸アンモニウム)により木質系材料の防火性を高め、ホウ酸塩により木質系材料の燃焼後の形状保持を高めるとともに木質系材料に防蟻性を付与し、硫酸アンモニウムによりホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムの濃度を高めて防火性を高めるとともに木質系材料の調湿性を高める。このため、硫酸アンモンム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤は、木質系材料に高い防火性を付与するとともに、防蟻性および調湿性を付与するため、建築物や工業用の断熱材などとして優れた木質系成形体を得ることができる。
なお、防火薬剤溶液を調製する際に、ホウ酸塩は、ホウ酸と炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウムともいう)とを反応させることによって、得てもよい。
また、本実施形態の木質系成形体に含まれる防火薬剤の部数は、防火性が高くかつ成形性が高い観点から、5質量部以上35質量部以下であり、8質量部以上35質量部以下が好ましく、16質量部以上35質量部がより好ましい。
また、本実施形態の木質系成形体の防火性、防蟻性および調湿性をバランスよく高くする観点から、木質系成形体に含まれる防火薬剤において、硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムの質量部の部数の比率は、1〜2:2〜4:2〜4が好ましい。
(接着剤)
本実施形態の木質系成形体に含まれる繊維状または液状接着剤の少なくとも1つの接着剤の部数は、成形性が高く強度の高い成形体を得る観点から、5質量部以上15質量部以下である。
(繊維状接着剤)
本実施形態の木質系成形体に含まれる繊維状接着剤は、特に制限はないが、成形性を高め強度の高い成形体を得る観点から、その少なくとも一部が、90℃以上160℃以下の融点を有し、この融点および80℃以上100℃以下の熱水雰囲気の少なくともいずれかにおいて接着性を有する。
繊維状接着剤は、その少なくとも一部が90℃以上160℃以下の融点を有していることから、かかる融点およびそれより高温における熱処理により、木質系材料の接着剤として有用である。
繊維状接着剤は、その少なくとも一部が、90℃以上160℃以下の融点および80℃以上100℃以下の熱水雰囲気の少なくともいずれかにおいて接着性を有することから、90℃以上160℃以下の融点のみならず、80℃以上100℃以下の熱水雰囲気の熱処理によっても木質系材料の接着剤として有用である。ここで、80℃以上100℃以下の熱水雰囲気とは、80℃以上100℃以下において水分が存在する雰囲気であれば足り、80℃以上100℃以下の水分により繊維状接着剤の少なくとも一部が膨潤して接着性を有することができる。このような少なくとも一部が膨潤して接着性を有する繊維状接着剤として、特に、後述の芯鞘構造を有するポリオレフィン−ポリビニルアルコール繊維、海島構造を有するポリビニルアルコール−ポリオレフィン繊維などが好適に例示される。
繊維状接着剤は、特に制限はないが、成形性を高め強度の高い成形体を得る観点から、芯鞘構造を有する接着剤、海島構造を有する接着剤およびノボラック樹脂接着剤の少なくともいずれかであることが好ましい。
芯鞘構造を有する繊維状接着剤とは、その断面が芯部とその芯部を覆う鞘部とを有する繊維状接着剤をいい、芯部がPP(ポリプリピレン)で鞘部がPE(ポリエチレン)であるPP−PE繊維などの高融点ポリオレフィン−低融点ポリオレフィン繊維(ここで、高融点ポリオレフィンおよび低融点ポリオレフィンとは、それらの間で相対的に融点が高いポリオレフィンおよび相対的に融点が低いポリオレフィンをいう。)、芯部がPET(ポリエチレンテレフタレート)で鞘部がPE(ポリエチレン)であるPET−PE繊維などのポリエチレンテレフタレート−ポリオレフィン繊維、芯部がPETで鞘部がマレイン酸変性PET繊維などのポリエチレンテレフタレート−低融点変性ポリエチレンテレフタレート繊維(ここで、低融点変性ポリエチレンテレフタレートとは、ポリエチレンテレフタレートに比べてより低融点になるように化学的に変性(たとえばジカルボン酸変性)されたポリエチレンテレフタレートをいう。)、芯部がポリオレフィンで鞘部がPVA(ポリビニルアルコール)であるポリオレフィン−ポリビニルアルコール繊維などが好適に例示される。
また、かかる芯鞘構造を有する繊維状接着剤は、木質系成形体の使用後の分解を促進させる観点から、酸化分解促進剤を0.5質量%以上5質量%以下含むことが好ましい。酸化分解促進剤は、使用後の木質系成形体中の繊維状接着剤の酸化分解を促進させるものであれば特に制限はなく、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの光触媒、希土類化合物、脂肪族カルボン酸などが好適に例示される。
海島構造を有する繊維状接着剤とは、その断面が少なくとも1つの島部とその島部を覆う海部とを有する繊維状接着剤をいい、海部がPVA(ポリビニルアルコール)で島部が島部がポリオレフィンであるポリビニルアルコール−ポリオレフィン繊維、海部がPVAで島部がPET(ポリエチレンテレフタレート)であるポリビニルアルコール−ポリエチレンテレフタレート繊維などが好適に挙げられる。また、上記のポリビニルアルコール−ポリオレフィン繊維において、ポリオレフィンは生分解性のポリオレフィンであることが、木質系成形体の使用後の分解を促進させる観点から、好ましい。ここで、生分解性ポリオレフィンとしては、P−Life(R)(ピーライフ・ジャパン社製)などの酸化分解促進剤を添加したポリオレフィンなどが例示される。
また、上記のPVA(ポリビニルアルコール)−ポリオレフィン繊維は、熱水雰囲気でPVAが膨潤し融点以下の温度で接着性が発現しやすい観点から、PVA部分Vに対するポリオレフィン部分Oの質量比O/Vが、1以上2.34以下が好ましく、1以上1.87以下がより好ましい。
ノボラック樹脂の繊維状接着剤は、特に制限はないが、成形性を高め強度の高い成形体を得る観点から、未架橋部分を有する硬化前のノボラック樹脂繊維であることが好ましい。かかるノボラック樹脂繊維は、たとえば特開昭48−11284号公報の実施例1に記載の未硬化ノボラック繊維などが好適に例示される。
上記に挙げた繊維状接着剤は、成形性および作業性が高い観点から、繊度が4dtex以上15dtex以下で繊維長が20mm以下であることが好ましい。
(液状接着剤)
本実施形態の木質系成形体に含まれる液状接着剤は、特に制限はないが、成形性を高め強度の高い成形体を得る観点から、イソシアネート化合物、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂および尿素樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含む熱硬化性樹脂が好ましい。また、上記化合物および樹脂は、防火性が高いため、木質系成形体の防火性を高めることができる。ここで、イソシアネート化合物としては、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、ポリメリックMDI、TDI(トルエンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)などが好適に例示される。また、ウレタン樹脂としては、上記イソシアネート化合物とポリオールとを反応させたウレタンプレポリマーなどが好適に例示される。
(その他の含有物)
本実施形態の木質系成形体は、木質系材料への防火薬剤の浸透を促進させるため、浸透助剤をさらに含むことができる。ここで、浸透助剤としては、コハク酸系界面活性剤などが例示される。また、本実施形態の木質系成形体に含まれる浸透助剤の部数は、防火薬剤の浸透を高めかつ防火薬剤の経時変化を低減し安定性を高める観点から、0.1質量部以上2.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下がより好ましい。
本実施形態の木質系成形体は、防水性を高めるために、撥水剤をさらに含むことができる。ここで、撥水剤としては、ワックスエマルジョン、ジメチルシリコーン系撥水剤などが例示できる。また、本実施形態の木質系成形体に含まれる撥水剤の部数は、防水性および防火性を高くする観点から、0.1質量部以上2.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下がより好ましい。
(木質系成形体の密度)
本実施形態の木質系成形体の密度は、成形体の強度を高める観点から、40kg/m3以上であり、150kg/m3以上が好ましい。また、汎用性を高める観点から、50kg/m3以上が好ましい。
[実施形態2]
本発明の別の実施形態である木質系成形体の製造方法は、木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つの木質系材料60質量部以上90質量部以下に、硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤溶液をその防火薬剤分で5質量部以上35質量部以下添加し、さらに防火薬剤溶液が添加された木質系材料を乾燥させる防火処理工程と、防火処理がされた木質系材料と、5質量部以上15質量部以下の繊維状接着剤および液状接着剤の少なくとも1つの接着剤と、を混合させる混合工程と、混合により得られた混合物をマット状に集積しさらにボード状に加熱加圧成形することにより密度40kg/m3以上の木質系成形体を得る成形工程と、含む。ここで、防火薬剤溶液の製造は、水に硫酸アンモニウムを溶解させて硫酸アンモニウム水溶液を得る第1サブ工程と、硫酸アンモニウム水溶液にホウ酸塩を水に対する溶解度より高い濃度で溶解させて硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液を得る第2サブ工程と、硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液に縮合リン酸アンモニウムを溶解させて硫酸アンモニウム−ホウ酸塩−縮合リン酸アンモニウム水溶液を得る第3サブ工程と、を含む。
かかる木質系成形体の製造方法によれば、防火薬剤を高濃度に含有する防火薬剤溶液を調製し、かかる高濃度の防火薬剤溶液で処理された木質系材料を成形することにより、防火性の高い木質系成形体が得られる。
(防火処理工程)
本実施形態の木質系成形体の製造方法は、まず、木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つの木質系材料60質量部以上90質量部以下に、硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤溶液をその防火薬剤の固形分で5質量部以上35質量部以下添加し、さらに防火薬剤溶液が添加された木質系材料を乾燥させる防火処理工程を含む。
(防火薬剤溶液の製造)
かかる防火処理工程において、木質系材料を防火処理するために用いられる防火薬剤溶液の製造は、まず、第1サブ工程において、水に硫酸アンモニウムを溶解させて硫酸アンモニウム水溶液を得る。本発明者らは、硫酸アンモニウムが、防火薬剤であるとともに、水溶液へのホウ酸塩の溶解を促進させるとともに、水溶液への縮合リン酸アンモニウムの溶解安定性を高める溶解助剤であることを見出したものである。水に溶解させる硫酸アンモニウムの濃度は、特に制限はないが、水溶液へのホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムの溶解を促進させる観点から、20質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上30質量%以下がより好ましい。
次に、第2サブ工程において、硫酸アンモニウム水溶液にホウ酸塩を水に対する溶解度より高い濃度で溶解させて硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液を得る。硫酸アンモニウムによりホウ酸塩の溶解が促進され、ホウ酸塩が水に対する溶解度より高い濃度で溶解した硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液が得られる。ここで、ホウ酸塩がホウ酸ナトリウムの場合、20℃における100gの水に対する四ホウ酸ナトリウムの溶解度は約5gであり、20℃における100gの水に対する八ホウ酸ナトリウムの溶解度は約10gである。
次に、第3サブ工程において、硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液に縮合リン酸アンモニウムを溶解させて硫酸アンモニウム−ホウ酸塩−縮合リン酸アンモニウム水溶液を得る。硫酸アンモニウムにより縮合リン酸アンモニウムの溶解安定性が高くなり、縮合リン酸アンモニウムが析出しにくくなる。
また、上記の防火薬剤溶液には、必要に応じて、コハク酸系界面活性剤などの浸透助剤および/またはワックスエマルジョン、ジメチルシリコーン撥水剤などの撥水剤を溶解させてもよい。
上記のサブ工程により、室温(たとえば25℃)で、縮合リン酸アンモニウムを40質量%以上溶解させ、ホウ酸塩を20質量%以上溶解させることができ、防火薬剤(縮合リン酸アンモニウム、ホウ酸塩および硫酸アンモニウム)の濃度が40質量%以上である高濃度の防火薬剤溶液が得られる。
木質系材料に上記のようにして得られた防火薬剤溶液をその防火薬剤分で5質量部以上35質量部以下添加する方法は、特に制限はないが、木質系材料全体に均一に添加する観点から、木質系材料に防火薬剤溶液を噴霧または塗布させてあるいは噴霧または塗布させながら、木質系材料を混合する方法などが好ましい。
上記のようにして防火薬剤溶液が添加された木質系材料を乾燥する方法は、特に制限はないが、木質系材料を均一に乾燥させる観点から、防火薬剤溶液が添加された木質系材料に熱風などを送りながら、木質系材料を撹拌混合する方法などが好ましい。
(混合工程)
本実施形態の木質系成形体の製造方法は、次に、上記の防火処理がされた木質系材料と、5質量部以上15質量部以下の繊維状接着剤および液状接着剤と、を混合させる混合工程を含む。防火処理がされた木質系材料と繊維状接着剤および液状接着剤の少なくとも1つの接着剤とを混合させる方法は、特に制限はないが、均一に混合させる観点から、カーディングマシーンで混合させる方法、エアレーション(aeration)により混合させる方法などが好ましい。
(成形工程)
本実施形態の木質系成形体の製造方法は、次に、上記の混合により得られた混合物をマット状に集積し、さらにボード状に加熱加圧成形することにより、密度が40kg/m3以上の木質系成形体を得る成形工程を含む。
混合物をマット状に集積する方法は、特に制限はないが、材料の厚さおよびかさ密度の均一性を高める観点から、エアレイドフォーミング(Air Laid Forming)方法などが好ましい。また、ボード状に加熱加圧成形する方法は、特に制限はないが、均一な成形体を効率よく得る観点から、ダブルコンベアベルト、エンドレスロールプレスなどで連続加熱加圧する方法などが好ましい。加熱温度は、混合物中の防火処理された木質系材料が接着剤により接着される温度であればよい。具体的には、少なくとも一部が90℃以上160℃以下の融点を有し、かつその融点および80℃以上100℃以下の熱水雰囲気の少なくともいずれかにおいて接着性を有する繊維状接着剤を用いる場合は、90℃以上160℃以下の融点以上の温度または加湿させて80℃以上100℃以下の温度とすれば足りる。また、熱硬化性の化合物または樹脂である液状接着剤を用いる場合は、その熱硬化温度以上の温度とすれば足りる。また、加圧の圧力は、木質系成形体の密度が40kg/m3以上となる圧力とする。
(二次的成形工程)
本実施形態の木質系成形体の製造方法は、さらに、上記成形工程で得られた木質系成形体をさらに加熱加圧成形することにより密度が150kg/m3以上の木質系成形体を得る二次的成形工程をさらに含むことができる。
二次的成形工程における加熱加圧成形は、成形を容易にする観点から、加湿された状態で行なうことが好ましい。また、木質系成形体の密度を150kg/m3以上に高めるのに十分な圧力が必要である。
(積層構造を有する木質系成形体の製造)
種類または大きさの異なる複数の木質系材料を用いて、以下の工程により、積層構造を有する木質系成形体を製造することも可能である。
たとえば、上記防火処理工程前に、木材パーチクルを、最大径130μm以下の表層用木材パーチクルと、最大径が130μmより大きい内層用木材パーチクルと、に分ける分級工程と、表層用木材パーチクルおよび内層用木材パーチクルのそれぞれに上記防火薬剤溶液を添加して、さらに防火薬剤溶液が添加された表層木材パーチクルおよび内層用木材パーチクルのそれぞれ乾燥させる防火処理工程と、防火処理された表層用木材パーチクル、防火処理された内層用木材パーチクルおよび防火処理された表層用木材パーチクルをこの順に積層させて3層のマット状に集積し、さらにボード状に加熱加圧成形する成形工程と、により3層構造を有する木質系成形体が得られる。
(縮合リン酸アンモニウムの合成)
以下の実施例において、防火薬剤の1つとして用いる縮合リン酸アンモニウムを以下のように合成した。85質量%のリン酸52gと尿素90gとの混合液(モル比でリン酸:尿素=1:4)を10分間で室温(25℃)から130℃まで昇温し、130℃で30分間縮合させ、その後冷却して、室温(25℃)で固体状の縮合リン酸アンモニウム130gを得た。得られた縮合リン酸アンモニウムは、全リンが12質量%、未反応リンが0.5質量%、その水溶液のpHが7.0以上8.0以下であった。
(防火薬剤溶液Aの調製)
以下の実施例において、木質系材料の防火処理に用いる防火薬剤溶液の1つである防火薬剤溶液Aを以下のようにして調製した。水1リットルに白色粉末の硫酸アンモニウム200gを室温(25℃)で溶解させた水溶液に、室温で八ホウ酸ナトリウム200g、縮合リン酸ナトリウム400g、およびコハク酸系界面活性剤(浸透助剤)1gを順次溶解させて、防火薬剤が44.4質量%(このうち、硫酸アンモニウムが11.1質量%、八ホウ酸ナトリウムが11.1質量%および縮合リン酸アンモニウムが22.2質量%)の防火薬剤溶液Aを得た。
(防火薬剤溶液Bの調製)
以下の実施例において、木質系材料の防火処理に用いる防火薬剤溶液の1つである防火薬剤溶液Bを以下のようにして調製した。水1リットルに白色粉末の硫酸アンモニウム200gを室温(25℃)で溶解させた水溶液に、室温でホウ酸100gおよび炭酸水素ナトリウム50g混合溶解させて、次いで八ホウ酸ナトリウム100gを溶解させ、次いで縮合リン酸アンモニウム400g、次いでコハク酸系界面活性剤(浸透助剤)1gを溶解させて、防火薬剤が44.4質量%(このうち、硫酸アンモニウムが11.1質量%、ホウ酸塩が11.1質量%および縮合リン酸アンモニウムが22.2質量%)の防火薬剤溶液Bを得た。
(防火薬剤溶液Cの調製)
以下の実施例において、木質系材料の防火処理に用いる防火薬剤溶液の1つである防火薬剤溶液Cを以下のようにして調製した。水1リットルに白色粉末の硫酸アンモニウム200gを室温(25℃)で溶解させた水溶液に、室温で八ホウ酸ナトリウム200g、縮合リン酸アンモニウム800g、およびコハク酸系界面活性剤(浸透助剤)1gを順次溶解させて、防火薬剤が54.5質量%の防火薬剤溶液Cを得た。
(実施例1)
ダイジェスターを用いて乾燥した針葉樹の木材チップを蒸煮圧力6kgf/cm2で7分間蒸煮した後、ディファイブレータを用いてプレート間隔1mmで解繊したウェット状態の木質繊維に、防火薬剤溶液Aを噴霧し、チューブドライヤーを用いて150℃〜170℃の熱風で連続的に2分間乾燥させて、100質量部の木質繊維を15質量部の防火薬剤で処理した木質繊維を得た。次に、防火処理された木質繊維92質量部と、カーディング処理された繊度5dtexで繊維長が15mmの芯部がPETで鞘部がPEの芯鞘構造のPET−PE繊維8質量部とを、エアレイドフォーミングマシーンを用いて混合させた。次に、上記混合物を、下部吸引型フォーミングマシーンを用いてマット状に集積した後、ダブルコンベアベルトを用いて130℃〜150℃で5分間連続加熱プレス成形することにより、木質系成形体として厚さ50mmで密度が40kg/m3の断熱ボードを得た。得られた断熱ボード(木質系成形体)の物性は以下のとおりであった。熱伝導率は、JIS A1412−2の熱流計法(HFM法)により測定したところ、0.038W/mKであった。ISO−5660のコーンカロリーメータ法(CCM法)による総発熱量は6.5MJ/m2(5分値)であり、最大発熱速度は42kW/m2(難燃3級合格)であり、燃焼形状保持率は約84%であった。すなわち、約16%収縮した。
(実施例2)
ダイジェスターを用いて乾燥した針葉樹の木材チップを蒸煮圧力6kgf/cm2で7分間蒸煮した後、ディファイブレータを用いてプレート間隔1mmで解繊したウェット状態の木質繊維に、防火薬剤溶液Cを噴霧し、チューブドライヤーを用いて150℃〜170℃の熱風で連続的に2分間乾燥させて、100質量部の木質繊維を34質量部の防火薬剤で処理した木質繊維を得た。次に、防火処理された木質繊維92質量部と、カーディング処理された繊度5dtexで繊維長が15mmの芯部がPETで鞘部がPEの芯鞘構造のPET−PE繊維8質量部とを、エアレイドフォーミングマシーンを用いて混合させた。次に、上記混合物を、下部吸引型フォーミングマシーンを用いてマット状に集積した後、ダブルコンベアベルトを用いて130℃〜150℃で5分間連続加熱プレス成形することにより、木質系成形体として厚さ50mmで密度が40kg/m3の断熱ボードを得た。得られた断熱ボード(木質系成形体)の物性は、熱伝導率が0.039W/mKであり、CCM法による総発熱量が5.5MJ/m2(10分値)であり、最大発熱速度は22kW/m2(難燃2級合格)であり、燃焼形状保持率は約92%であった。すなわち、約8%収縮した。
(実施例3)
ダイジェスターを用いて乾燥した針葉樹の木材チップを蒸煮圧力6kgf/cm2で7分間蒸煮した後、ディファイブレータを用いてプレート間隔1mmで解繊したウェット状態の木質繊維に、防火薬剤溶液Bを噴霧し、チューブドライヤーを用いて150℃〜170℃の熱風で連続的に2分間乾燥させて、100質量部の木質繊維を14質量部の防火薬剤で処理した木質繊維を得た。次に、防火処理された木質繊維90質量部と、カーディング処理された繊度10dtexで繊維長が20mmの海部がPVA(日本酢ビ・ポバール社製JF−10)で島部が生分解性PP(ピーライフ・ジャパン社製P−Life(R)を10質量%配合されたPP)でその質量比率が2:3の海島構造のPVA−生分解性PP繊維10質量部とを、エアレイドフォーミングマシーンを用いて混合させた。次に、上記混合物を、下部吸引型フォーミングマシーンを用いてマット状に集積した後、ダブルコンベアベルトを用いて160℃で5分間連続加熱プレス成形することにより、厚さ100mmで密度が40kg/m3の断熱ボードを得た。次に、得られた断熱ボードの表面に水を500g/m2噴霧することにより加湿し、さらに120℃で5分間加熱プレスで2次成形して、木質系成形体として厚さ25mmで密度が158kg/m3の2次成形断熱板ボードを得た。得られた2次成形断熱ボード(木質系成形体)の物性は、熱伝導率が0.043W/mKであり、CCM法による総発熱量が6.1MJ/m2(5分値)であり、最大発熱速度は35kW/m2(難燃3級合格)であり、燃焼形状保持率は約75%であった。すなわち、約25%収縮した。
(実施例4)
ダイジェスターを用いて乾燥した針葉樹の木材チップを蒸煮圧力6kgf/cm2で7分間蒸煮した後、ディファイブレータを用いてプレート間隔1mmで解繊したウェット状態の木質繊維に、防火薬剤溶液Aを噴霧し、チューブドライヤーを用いて150℃〜170℃の熱風で連続的に2分間乾燥させて、100質量部の木質繊維を18質量部の防火薬剤で処理した木質繊維を得た。次に、防火処理された木質繊維100質量部に、ポリイソシアネートバインダー(NCO含有量が30質量%のMDI90質量部と、40質量%のワックスエマルジョン10質量部とを配合したもの)10質量部を、エアレイドフォーミングマシーンを用いて混合した。次に、防火処理がされポリイソシアネートバインダーが混合された木材チップを、下部吸引型フォーミングマシーンを用いてマット状に集積した後、ダブルコンベアベルトを用いて180℃、30kgf/cm2で5分間連続加熱プレス成形することにより、木質系成形体として厚さ8mmで密度が390kg/m3の断熱ボードを得た。得られた断熱ボード(木質系成形体)の物性は、熱伝導率が0.043W/mKであり、CCM法による総発熱量が6.3MJ/m2(5分値)であり、最大発熱速度は35kW/m2(難燃3級合格)であり、燃焼形状保持率は約82%であった。すなわち、約18%収縮したのみであった。また、曲げ強度は、JIS A5908に基づいて測定したところ、15N/mm2であった。
(実施例5)
リファイナー処理した再生古紙に、防火薬剤溶液Aを噴霧し、チューブドライヤーを用いて150℃〜170℃の熱風で連続的に2分間乾燥させて、100質量部の木質繊維を17質量部の防火薬剤で処理した再生古紙維を得た。次に、防火処理された木質繊維92質量部と、カーディング処理された繊度5dtexで繊維長が15mmの芯部がPETで鞘部がPEの芯鞘構造のPET−PE繊維8質量部とを、エアレイドフォーミングマシーンを用いて混合させた。次に、上記混合物を、下部吸引型フォーミングマシーンを用いてマット状に集積した後、ダブルコンベアベルトを用いて130℃〜150℃で5分間連続加熱プレス成形することにより、木質系成形体として厚さ100mmで密度が55kg/m3の断熱ボードを得た。得られた断熱ボード(木質系成形体)の物性は、熱伝導率が0.043W/mKであり、CCM法による総発熱量が7.5MJ/m2(5分値)であり、最大発熱速度は41kW/m2(難燃3級合格)であり、燃焼形状保持率は約81%であった。すなわち、約19%収縮した。
(実施例6)
乾燥した針葉樹の木材チップを破砕して、最大径が130μm以下の表層用木材パーチクルと最大径が130μmより大きい内層用木材パーチクルとに分級した。次に、表層用木材パーチクル100質量部に防火薬剤溶液Cを防火薬剤分で14質量部を噴霧し、ドライヤーで乾燥させた。また、内層用木材パーチクル100質量部に防火薬剤溶液Cを防火薬剤分で14質量部を噴霧し、ドライヤーで乾燥させた。次に、防火処理した表層用木材パーチクル100質量部および防火処理した内層用木材パーチクル100質量部のそれぞれに、PC(パーチクルボード)用メラミン樹脂液をメラミン樹脂分で9質量部、40質量%のワックスエマルジョン2質量部を、ブレンダーを用いて添加混合した後、ドライヤーで乾燥させた。次に、上記の表層用木材パーチクル混合物、内層用木材パーチクル混合物および表層用木材パーチクル混合物の3層を、設定最終密度が800kg/m3、上下の各々の表層層の設定最終厚さが3mmおよび内層の設定最終厚さが9mmとなるように、それぞれブレンダーを用いてマット状に集積した後、エンドレスロールプレスを用いて、150℃、プレス圧30kgf/cm2で10分間加熱プレス成形することにより、木質系成形体として全層厚さ15mmで密度が760kg/m3のパーチクルボードを得た。得られたパーチクルボード(木質系成形体)の物性は、熱伝導率が0.13W/mKであり、CCM法による総発熱量が6.6MJ/m2(5分値)であり、最大発熱速度は46kW/m2(難燃3級合格)であり、燃焼形状保持率は約75%であった。すなわち、約25%収縮した。また、曲げ強度は17N/mm2であった。
(実施例7)
乾燥した針葉樹の木材チップを破砕して、最大径が130μm以下の表層用木材パーチクルと最大径が130μmより大きい内層用木材パーチクルとに分級した。次に、表層用木材パーチクル100質量部に防火薬剤溶液Cを防火薬剤分で43質量部を噴霧し、ドライヤーで乾燥させた。また、内層用木材パーチクル100質量部に防火薬剤溶液Cを防火薬剤分で25質量部を噴霧し、ドライヤーで乾燥させた。次に、防火処理した表層用木材パーチクル100質量部および防火処理した内層用木材パーチクル100質量部のそれぞれに、ポリイソシアネートバインダー(NCO含有量が30質量%のMDI90質量部と、40質量%のワックスエマルジョン10質量部とを配合したもの)12質量部を、ブレンダーを用いて添加混合し、ドライヤーで乾燥させた。次に、上記の表層用木材パーチクル混合物、内層用木材パーチクル混合物および表層用木材パーチクル混合物の3層を、設定最終密度が800kg/m3、上下各々の表層の設定最終厚さが3mmおよび内層の設定最終厚さが9mmとなるように、ブレンダーを用いてマット状に集積した後、エンドレスロールプレスを用いて、130℃、プレス圧30kgf/cm2で10分間加熱プレス成形することにより、木質系成形体として全層厚さ15mmで密度が790kg/m3のパーチクルボードを得た。得られたパーチクルボード(木質系成形体)の物性は、熱伝導率が0.13W/mKであり、CCM法による総発熱量が4.3MJ/m2(10分値)であり、最大発熱速度は18kW/m2(難燃2級合格)であり、燃焼形状保持率は約93%であった。すなわち、約7%収縮した。また、曲げ強度は18N/mm2であった。
(実施例8)
ブレンダーを用いて、針葉樹を加工した長さ30mm以下の麦わらに防火薬剤溶液Aを添加混合し、ドライヤーで乾燥して、100質量部の麦わらを11質量部の防火薬剤で処理した麦わらを得た。次に、防火処理された麦わら100質量部に、ポリイソシアネートバインダー(NCO含有量が30質量%のMDI90質量部と、40質量%のワックスエマルジョン10質量部とを配合したもの)を10質量部、ブレンダーを用いて混合した。次に、この麦わら混合物を、3層構造にして、1つの層における麦わらとその層に隣接する層における麦わらが互いに直交するように積層させて、ブレンダーを用いてマット状に集積し、エンドレスロールプレスを用いて、190℃、プレス圧力30kgf/cm2で10分間加熱プレス成形することにより、木質系成形体として全層厚さ8mmで密度が400kg/m3のオリエンテッドストランドボードを得た。得られたオリエンテッドストランドボード(木質系成形体)の物性は、熱伝導率が0.12W/mKであり、CCM法による総発熱量が6.3MJ/m2(5分値)であり、最大発熱速度は48kW/m2(難燃3級合格)であり、燃焼形状保持率は約84%であった。すなわち、約16%収縮した。また、曲げ強度は25N/mm2であった。
上述のように、本発明によれば、木質系材料を防火薬剤の含有量が40質量%以上と高い防火薬剤溶液を用いて木質系材料を処理することにより、防火薬剤溶液の添加および乾燥を効率よくすることができ、防火性の高い木質系成形体を効率よく製造することができる。
また、本発明によれば、防火薬剤として硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含むため、優れた防火性に加え、防蟻性および調湿性を有する木質系成形体が効率よく得られる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (9)

  1. 木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つの木質系材料が60質量部以上90質量部以下と、
    硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤が5質量部以上35質量部以下と、
    繊維状接着剤および液状接着剤の少なくとも1つの接着剤が5質量部以上15質量部以下と、を含み
    密度が40kg/m3以上である木質系成形体。
  2. 密度が150kg/m3以上である請求項1に記載の木質系成形体。
  3. 前記繊維状接着剤は、その少なくとも一部が、90℃以上160℃以下の融点を有し、かつ前記融点および80℃以上100℃以下の熱水雰囲気の少なくともいずれかにおいて接着性を有する請求項1または請求項2に記載の木質系成形体。
  4. 前記繊維状接着剤は、芯鞘構造を有する接着剤、海島構造を有する接着剤、およびノボラック樹脂接着剤の少なくともいずれかである請求項1から請求項3までのいずれかに記載の木質系成形体。
  5. 前記芯鞘構造を有する接着剤は、高融点ポリオレフィン−低融点ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート−ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート−低融点変性ポリエチレンテレフタレート繊維およびポリオレフィン−ポリビニルアルコール繊維のいずれかであり、酸化分解促進剤を0.5質量%以上5質量%以下で含む請求項4に記載の木質系成形体。
  6. 前記繊維状接着剤は、繊度が4dtex以上15dtex以下、繊維長が20mm以下である請求項1から請求項5までのいずれかに記載の木質系成形体。
  7. 前記液状接着剤は、イソシアネート化合物、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂および尿素樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含む熱硬化性接着剤である請求項1から請求項6までのいずれかに記載の木質系成形体。
  8. 木質繊維、セルロース繊維、木材チップ、木材パーチクル、木片、麦わらおよび稲わらからなる群から選ばれる少なくとも1つの木質系材料60質量部以上90質量部以下に、硫酸アンモニウム、ホウ酸塩および縮合リン酸アンモニウムを含む防火薬剤溶液をその防火薬剤分で5質量部以上35質量部以下添加し、さらに前記防火薬剤溶液が添加された前記木質系材料を乾燥させる防火処理工程と、
    前記防火処理がされた前記木質系材料と、5質量部以上15質量部以下の繊維状接着剤および液状接着剤の少なくとも1つの接着剤と、を混合させる混合工程と、
    前記混合により得られた混合物をマット状に集積しさらにボード状に加熱加圧成形することにより密度40kg/m3以上の木質系成形体を得る成形工程と、を含み、
    前記防火薬剤の製造は、水に硫酸アンモニウムを溶解させて硫酸アンモニウム水溶液を得る第1サブ工程と、前記硫酸アンモニウム水溶液にホウ酸塩を水に対する溶解度より高い濃度で溶解させて硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液を得る第2サブ工程と、前記硫酸アンモニウム−ホウ酸塩水溶液に縮合リン酸アンモニウムを溶解させて硫酸アンモニウム−ホウ酸塩−縮合リン酸アンモニウム水溶液を得る第3サブ工程と、を含む木質系成形体の製造方法。
  9. 請求項8において得られた木質系成形体を、さらに加熱加圧成形することにより密度が150kg/m3以上の木質系成形体を得る二次的成形工程をさらに含む木質系成形体の製造方法。
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