JP2010284842A - 植物系マット材 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス加工せず低い嵩密度でも良好な断熱性及び吸音性を有する植物系マット材を提供する。
【解決手段】植物系の薄片と、芯部と該芯部よりも融点が低い鞘部とからなる芯鞘型繊維とを含む。芯鞘型繊維の鞘部をバインダーとして薄片が芯部と接着されている。マット材の嵩密度は、0.02〜0.1g/cm3である。芯鞘型繊維の配合割合はマット材全量基準で4〜10重量%とし、さらにマット材全量基準で40重量%以下植物系の繊維を混合すると好ましい。これら薄片と、芯鞘型繊維と、必要に応じて植物系の繊維とを混合し、該混合物をプレスすることなく鞘部を熱溶融することで得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、植物系の材料を主体成分とし、断熱材や吸音材等として好適な植物系のマット材に関する。
従来から、家屋の断熱材等として、グラスウール等の無機繊維からなるマット材や、ウレタンフォーム等の樹脂発泡材等が使用されている。しかし、環境問題がクローズアップされている昨今、天然物廃材の再利用が注目されている。例えば、従来廃棄されていた植物系の廃材を有効利用すれば、廃棄物処理に要するエネルギー削減や森林伐採等の環境問題に貢献できる。また、植物系の材料(草木質材料)の利用は、地球温暖化防止にも有効である。すなわち、植物は生長過程においてCOを吸収しており、これを焼却しても吸収していたCOが放散されるだけであって、地球全体のCO量が増加することはない。これに対し、合成樹脂等の石油由来の材料は、これを焼却するとCOが生じ、地球全体のCO量が増加する。
そこで、従来廃棄されていた刈草や畳の廃材から得られた草繊維を主体成分とし、断熱材や吸音材としても使用可能なマットとして、下記特許文献1が開示されている。特許文献1では、草繊維と、芯部と該芯部よりも融点が低い鞘部とからなる芯鞘型繊維とを混合し、当該混合物を加熱して鞘部のみをバインダーとして溶融させ、プレスにより比重0.1〜0.2のマットとしている。芯鞘型繊維は、草繊維の重量に対して3〜30重量%配合されている。芯鞘型繊維の鞘部のみを溶融させることで、草繊維と樹脂繊維(芯部)とが点的に接着された三次元網目構造を有し、クッション性や通気性に富むとされている。
特開2001−54905号公報
特許文献1は、草繊維と樹脂繊維とを混合した繊維マットであり、通気性に富む。すなわち、草繊維と樹脂繊維とが点接着されているので、マット内に形成される空隙が連通孔となっているからである。これでは、良好な断熱性や吸音性を発現できない。したがって、特許文献1では、断熱性や吸音性を確保するため、加熱の際にプレスして比重を高める必要がある。それでも、特許文献1では単に断熱材や吸音材として使用し得ると記載されているのみであって、良好な断熱性や吸音性が達成できているかは不明である。
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、プレス加工せず低い嵩密度でも良好な断熱性及び吸音性を有する植物系マット材を提供することを目的とする。
本発明の植物系マット材は、植物系の薄片と、芯部と該芯部よりも融点が低い鞘部とからなる芯鞘型繊維とを含み、前記芯鞘型繊維の鞘部をバインダーとして前記薄片が前記芯部と接着されている。すなわち、植物系の薄片と芯鞘型繊維とを混合すると、芯鞘型繊維が三次元網目状に交絡してマット材の骨格を成し、この状態において鞘部を溶融させることで、当該鞘部をバインダーとして三次元網目状に交絡した芯部に植物系の薄片が点接着されたようなマトリックス構造となっている。なお、粉末状のバインダー樹脂を混合したり、液状のバインダー樹脂を含浸させて得た一般的なマット材の場合、主要な構成要素(本発明の場合では薄片)の全体に接着剤が塗布されたような状態で互いに接着されることになる。そのため、良好な接触面積を得るために適度な圧締(プレス)が必要になり、低密度成形は不可能である。
そのうえで、当該マット材の嵩密度は、0.02〜0.1g/cmのような低水準となっている。ここで、薄片とは、粉状、粒状、または繊維状ではなく、一定の平面積(長さ及び幅)を有するものである。一定の平面積を有する限り、必ずしも平坦であるとは限らず、湾曲(カール)等していてもよい。
前記芯鞘型繊維の配合割合はマット材全量基準で4〜10重量%とする。芯鞘型繊維の配合割合がこの程度あれば、薄片と芯鞘型繊維のみによってもマット材を形成できるが、さらに、植物系の繊維を、マット材全量基準で40重量%以下の範囲で配合することが好ましい。
このような植物系マット材は、植物系の薄片と、芯部と該芯部よりも融点が低い鞘部とからなる芯鞘型繊維とを混合したうえで、該混合物をプレスすることなく前記鞘部を熱溶融することで製造できる。なお、本発明において「プレスすることがない」とは、混合物を積極的に圧締することが無いことを意味する。したがって、マット材としての形状を形造るには成形型に蓋部材が必要であるが、当該蓋部材の重量が混合物に作用し得ることを否定するものではない。
本発明では、従来の繊維材ではなく、一定の平面積を有する薄片を主体成分としている。したがって、マット材の内部に形成される空隙の連続性は薄片によって遮蔽されるので、ある程度の通気性を有しながらも連通度は低くなる。これにより、0.02〜0.1g/cm程度の低い嵩密度でも良好な断熱性や吸音性を確保することができる。したがって、製造過程において混合物をプレスする必要もない。また、薄片を主体成分としていれば、薄片自身の弾性によってマット材のクッション性も向上する。しかも、植物系の薄片を使用しているので、例えば従来廃棄されていた鉋屑等の廃材を有効利用でき、環境問題にも貢献できる。
芯鞘型繊維の配合割合をマット全量基準で4〜10重量%としていれば、マット材の保形性や自立性に最低限必要な量としながら、樹脂成分の使用量を抑えられる。したがって、良好な取扱性や機能性を確保しながら、環境への負荷を低減できる。なお、自立性とは、マット材の平面を上下方向にして起立状態を維持できることをいう。
薄片と芯鞘型繊維に加えて、さらに植物系の繊維を混合していれば、マット材の保形性が向上する。この場合、植物系の繊維をマット全量基準で40重量%以下としていれば、当該植物系の繊維によってマット材の嵩が必要以上に増すことが避けられるので、プレスすることなく嵩密度が低水準のマット材を製造できる。しかも、植物系の繊維なので樹脂成分量が増大することはなく、環境負荷が増大することもない。
このようなマット材をプレスすることなく製造できれば、製造の簡略化、プレスに要するエネルギーコストや装置コストの削減、及びエネルギー削減に伴う間接的なCOの削減も可能となる。
吸音性試験(低周波側)の結果を示すグラフである。 吸音性試験(高周波側)の結果を示すグラフである。
本発明のマット材は、基本的には植物系の薄片と芯鞘型繊維とを含み、必要に応じて植物系の繊維も混合される。
(薄片)
薄片は、マット材の主体(マット材全量基準(乾燥状態)で50重量%以上)となる構成要素である。薄片としては、一定の長さと幅、すなわち、一定の平面積を有する植物由来(草木質材料)のものであれば特に限定されない。廃材であることが好ましい。代表的には、鉋屑やプレカット屑(ほぞ加工等をしたときにでる屑)などのプレーナー屑、及びバーク(樹皮)などが挙げられる。また、ウッドチップやウッドフレークなどの粒状のものや建築廃材などを、薄片状に二次加工したものでもよい。このような薄片は、一種のみ使用してもよいし、二種以上を混合使用してもよい。植物としては、スギ、ヒノキなどの針葉樹や、シイ、柿、サクラなどの広葉樹などの木本類はもちろん、竹などの草本類でも構わない。薄片は、一定の平面積を有することでそれ自体が弾性を有し、マット材のクッション性が向上する。したがって、平坦な薄片よりも、ある程度湾曲(カール)した薄片が好ましい。上に例示した材料の中では、廃材であること、薄片化の二次加工が不要であること、及びカールしていることなどから、鉋屑やプレカット屑などのプレーナー屑が好ましい。
(芯鞘型繊維)
芯鞘型繊維は、芯部が鞘部で被覆された樹脂繊維である。鞘部には、芯部よりも融点の低い材料を使用する。このような融点の関係を有する限り、芯鞘型繊維は特に限定されない。例えば、融点220℃以上のポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂を芯部とし、これより融点の低い(例えば200℃以下)のポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂を鞘部とすることができる。または、芯部をポリプロピレン(PP)とし、鞘部をポリエチレン(PE)とすることもできる。芯部をPPとすれば、良好な剛性、耐衝撃性及び耐熱性等を有する三次元網目構造を形成できる。鞘部材料には、熱可塑性樹脂が好ましい。鞘部材料を熱硬化性樹脂とすると、熱硬化に時間を要するからである。また、硬化剤も必要となり、樹脂成分量の増大に繋がるからである。
芯鞘型繊維の配合割合は、マット材全量基準(乾燥状態)で4〜10重量%とする。芯鞘型繊維が4重量%よりも少ないと、結果としてバインダーとしての鞘部量も少なくなり、マット材を良好に保形できなくなる。また、植物系繊維を混合しない場合は、芯鞘型繊維のみによって骨格を成すので、良好な自立性も担保できなくなる。一方、芯鞘型繊維の配合割合が多いほどマット材の保形性等が向上する傾向にあるが、反面、CO発生源となる石油由来成分量が増すことになる。したがって、適度な自立性や保形性を確保するには芯鞘型繊維が10重量%程度あれば充分であり、これよりも増量すると、マット材において樹脂繊維が目立ち、廃材リサイクルマット材としての品質が低下すると共に、環境への負荷も増大する。芯鞘型繊維の配合割合は、好ましくはマット材全量基準で5〜8重量%である。また、植物系の繊維も混合する場合は、芯鞘型繊維の配合割合をマット材全量基準で4〜6重量%とすることがより好ましい。
(植物系繊維)
植物系の繊維とは、解繊された繊維状のものである。当該植物系の繊維は、芯鞘型繊維による骨格構造を補助する機能を有するものであり、必須の構成要素ではない。しかし、植物系の繊維も混合すると、マット材のマトリックス構造の骨格を成す三次元網目構造がさらに複雑に交絡して補強され、樹脂成分量を抑えながらマット材の保形性や自立性をより向上できる点で好ましい。そのため、植物系の繊維としては、良質の繊維が得られやすい靭皮植物の解繊繊維が好ましく、例えばケナフ、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ワラ、バガスなどを使用することができる。このような植物系の繊維は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を混合使用してもよい。
植物系繊維の配合割合は、マット材全量基準(乾燥状態)で40重量%以下とする。これより多いと、繊維材(芯鞘型繊維+植物系繊維)の配合量が植物系薄片の配合量よりも多くなってマット材の嵩が増したり連続した空隙が生じたりし易くなるので、製造時にある程度プレスする必要が生じる。植物系繊維の配合割合は、好ましくはマット材全量基準で30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下である。当然、植物系繊維の下限は0重量%である。
このよう材料を構成要素として得られるマット材は、その嵩密度を0.02〜0.1g/cmとする。薄片を主体としていることで、従来からある一般的なマット材より低い嵩密度でも、良好な断熱性や吸音性を担保できるからである。但し、マット材の嵩密度が0.02g/cmより低いと、良好な断熱性及び吸音性が得られなくなる。逆に、マット材の嵩密度を0.1g/cmより高くするには、製造工程において積極的なプレスが必要となる。断熱性を重視する場合は、マット材の嵩密度は0.03〜0.1g/cm程度が好ましく、0.04〜0.08g/cm程度がより好ましい。この範囲であれば、従来から断熱材として使用されているグラスウール(熱伝導率0.036〜0.052W/m・K程度)やポリスチレンフォーム(熱伝導率0.028〜0.043W/m・K程度)と同等の断熱性を担保できる。一方、マット材の嵩密度が高くなると、吸音性も向上する傾向がある。したがって、吸音性を重視する場合は、マット材の嵩密度を0.04g/cm以上とすることが好ましく、0.05g/cm以上とすることがより好ましい。マット材の嵩密度が0.04g/cm程度あれば、ポリスチレンフォームよりも吸音性に優れるグラスウールと同等の吸音性を担保できる。さらに、マット材の嵩密度が0.05g/cm程度あれば、グラスウールよりも優れた吸音性を担保できる。したがって、断熱性と吸音性の双方を担保する場合、マット材の嵩密度は0.04〜0.09g/cm程度が好ましい。
このように、本発明のマット材は従来のマット材よりも低い嵩密度でも良好な断熱性及び吸音性を有し、且つ、自立性、クッション性、通気性も備えるので、断熱材や吸音材として好適である。特に、ビルや家屋等の建築物の壁内に充填する建築用断熱・吸音材として好適に使用できる。
(製造方法)
次に、本発明の植物系マット材の製造方法について説明する。まず、植物系の薄片と、芯鞘型繊維と、必要に応じて植物系の繊維とを、所定の割合にて公知の方法で混合する。具体的には、空気流を利用する方法、撹拌翼によって撹拌する方法、及び双方を利用した方法等が挙げられる。好適には、特開2001−54905号公報に開示されたような装置を使用できる。なお、植物系の繊維は、混合する前に解繊しておく。
次いで、得られた混合物を成形型に充填し、芯鞘型繊維の芯部の融点より低く鞘部の融点より高い温度で、プレスすることなく加熱して、鞘部のみを溶融させる。加熱は、ヒータ等によって外面から熱を与えたり、水蒸気加熱や熱風加熱によって行える。中でも、混合物は通気性を有しているので、外面からのみならず内部にも直接熱を与えられる水蒸気加熱や熱風加熱が好ましい。水蒸気加熱や熱風加熱であれば、加熱時間の短縮、均一加熱が可能である。しかし、水蒸気加熱では、水分がマット材に悪影響を及ぼすことが懸念されるので、熱風加熱が最も好ましい。
混合物を加熱して鞘部のみを溶融させることで、芯部繊維が複雑に交絡した三次元網目構造に、鞘部をバインダーとして薄片が点接触により接着されたマット材を得ることができる。植物系の繊維も混合している場合は、当該植物系の繊維も三次元網目構造を構成し、鞘部をバインダーとして芯部繊維及び薄片と点接着されている。このようなマトリックス構造のマット材は、芯鞘型繊維の鞘部をバインダーとしているので、積極的にプレスすることなく繊維と薄片とを良好に接着できる。プレスしていないので、マット材の嵩密度は低水準となる。しかし、マット材中には適度の空隙が確保されており、且つ薄片によって空隙の連続性が阻害されているので、嵩密度が低くても良好な断熱性及び吸音性を有する。また、このようなマトリックス構造と薄片自体の弾性も相俟ってクッション性が高く、適量の繊維材及びバインダーが混合されていることで自立性も有する。植物系の繊維も混合してあれば、保形性等が向上する。したがって、このようなマット材を建築物の壁内に起立した状態で充填することも可能であり、取扱性や施工性に優れる。また、プレスすることなく成型しているので薄片が押し潰されることがなく、マット材の密度分布を保ちながら材料状態の耐久性にも優れている。
(成形性試験)
マット材を好適に作製できる配合割合について、保形性(接着性)、自立性の観点から評価した。薄片として、スギ気乾材板を鉋加工したカール状の鉋屑(最大厚み0.2mm程度、伸ばした状態での繊維方向長さ平均12mm程度、幅5〜20mm程度)を使用した。芯鞘型繊維には、ポリプロピレン(PP)を芯部とし、ポリエチレン(PE)を鞘部とする、ESファイバービジョン社製ESC(繊度2.2dtex/f、長さ5mm)を使用した。また、植物系の繊維としては、太さ0.1mm以下まで開繊された長さ70mmのケナフ繊維を使用した。これらの材料を、表1に示す種々の割合にて木材集塵用エアブロアで循環させて混合した。次いで、得られた混合物を内寸300mm角の枡中に充填してフォーミングし、蓋の位置を調整して厚みは一定とした。なお、目標とするマット材の厚み及び嵩密度に応じて、枡内に充填する混合物量が定まる。例えば、嵩密度0.04g/cmで厚み25mmのマット材を得るためには、(30cm×30cm×2.5cm)×0.04g/cm=90gの混合物を充填することになる。続いて、所定量の混合物を充填した枡ごと加熱炉に入れ、140℃で120分間加熱した。加熱後、充分に冷却できたところで枡を取り外して、マット状の成形体(マット材)を得た。
このようにして得られるマット材の保形性(接着性)と自立性について評価した。その結果も、表1に示す。保形性試験では、マット材の厚みを70mmとし、枡を取り外した後でもその形状を維持しているかどうかで評価した。その判定基準は次のとおりである。
×:直ちに崩壊する
△:持ち上げると崩壊する
○:持ち上げても崩壊しない(形状を維持している)
自立性試験では、マット材の厚みを25mmとし、得られた300mm角の試験体の一辺から約50mmの部分を保持した状態で持ち上げることによって評価した。その判定基準は次のとおりである。
×:マットの自重によって折れる
△:上端部が100mm以上撓む
○:あまり撓まず自立状態にある
Figure 2010284842
表1の結果から、薄片100%のマット材1では、バインダーが無いことから保形性及び自立性が無かった。これに対し芯鞘型繊維を僅かに混合したマット材2では、骨格及びバインダーの存在により若干保形性及び自立性が向上しているが、充分ではなかった。しかし、マット材3の結果から、芯鞘型繊維をマット全量基準で4重量%混合すれば、自立性の面では課題を残すが、マット材としての呈を成し使用可能であることがわかった。一方、マット材4〜6では、保形性・自立性共に問題なかった。この結果から、マット材として成形するには、芯鞘型繊維をマット全量基準で少なくとも4重量%以上必要であり、5重量%以上が好ましいことを見出せた。但し、芯鞘型繊維を10重量%含むマット材6では、樹脂繊維が目立っていた。以上の結果から、樹脂使用量を抑え、且つ廃材リサイクルマット材としての品質等を考慮すると、芯鞘型繊維の配合量はマット全量基準で10重量%以下とすることが好ましいことを見出せた。
次に、植物系の繊維も混合したマット材7,8について評価する。マット材7はマット材2に植物繊維を加えたものであり、マット材8はマット材3に植物繊維を加えたものである。マット材7では、植物繊維を加えたことで、マット材2に比べて保形性が向上していた。これは、植物繊維によって三次元網目構造が補強され、芯鞘型繊維との接触点が増加したことに起因すると考えられる。しかし、バインダー樹脂量自体が増加している訳ではないので、自立性は充分ではなかった。これに対しマット材8では、元々マット材として使用可能なマット材3に植物繊維を加えたものなので、保形性に関しては問題なく、さらに自立性も向上していた。これも、植物繊維による三次元網目構造の補強作用が要因と考えられる。以上の結果から、薄片と芯鞘型繊維に加えて、さらに植物系の繊維も混合する場合は、芯鞘型繊維の配合量はマット材全量基準で4重量%あれば足りることが見出せた。
次に、薄片、芯鞘型繊維、及び植物系の繊維の配合量を一定としながら、嵩密度を種々変更した場合の成形性について評価した。マット材9〜16がこれに相当する。マット材9〜16のいずれにおいても、芯鞘型繊維を5重量%配合してあるので、嵩密度を種々変更しても成形性に影響がないことが確認できた。
(断熱性試験)
次に、マット材の断熱性について試験評価した。上記成形性試験と同様の材料を使用し、同様の方法で種々の嵩密度のマット材17〜21を作製した。各材料の配合比は、マット材重9〜16と同じ薄片:芯鞘型繊維:植物系繊維=70:5:25(重量基準)とし、それぞれの厚みは25mmとした。各マット材の熱伝導率は、JIS A 1412「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法」に準じて測定した。マット材17〜21の嵩密度、及びその熱伝導率を表2に示す。
Figure 2010284842
表2の結果から、嵩密度が低くても良好な断熱性を有しており、嵩密度が0.020g/cm程度であっても断熱性を担保できる傾向を確認できた。詳しく見ると、嵩密度が0.050g/cmのマット材19が最も断熱性に優れており、これをピークとして嵩密度を増減させると断熱性が徐々に低下する傾向が確認された。しかし、マット材17やマット材21でもグラスウール(熱伝導率0.036〜0.052W/m・K程度)と同等の断熱性を担保でき、マット材18やマット材20ではポリスチレンフォーム(熱伝導率0.028〜0.043W/m・K程度)と同等の断熱性を担保できることがわかった。以上の結果から、断熱性を重視する場合は、マット材の嵩密度は0.03〜0.1g/cm程度が好ましく、0.04〜0.08g/cm程度がより好ましいことを見出せた。
(吸音性試験)
次に、マット材の吸音性について試験評価した。当該吸音性試験においても、上記成形性試験と同様の材料を使用し、同様の方法で種々の嵩密度のマット材22〜25を作製した。各材料の配合比も、マット材重9〜16と同じ薄片:芯鞘型繊維:植物系繊維=70:5:25(重量基準)とし、それぞれの厚みは25mmとした。また、比較例として、グラスウール材(比較例1)と、ポリスチレンフォーム体(比較例2)についても、吸音率を測定した。各マット材及び比較例の嵩密度を表3に示す。
Figure 2010284842
吸音率は、JIS A 1405−2:2007「音響管による吸音率及びインピーダンスの測定 第2部:伝達関数法」に準拠し、垂直入射吸音管を用いて測定した。測定は、低周波側100〜1600Hzと高周波側500〜6400Hzの測定帯域の違う2本の音響管を用いて測定を行った。その結果を図1及び図2に示す。
測定装置:Bruel & Kjar社 Type4206
測定周波数範囲:低周波側(100〜1600Hz)、高周波側(500〜6400Hz)
測定試料:低周波側用;直径100mm、高周波側用;直径29mm
図1及び図2の結果から、マット材の嵩密度が高くなると、吸音性も向上する傾向があることが確認された。詳しく見ると、マット材22はポリスチレンフォーム体(比較例2)よりも吸音性が高く、マット材23の吸音性はグラスウール材(比較例1)と同等であった。また、マット材24やマット材25にいたってはグラスウール材(比較例1)よりも吸音性が高かった。以上の結果から、吸音性を重視する場合は、マット材の嵩密度を0.04g/cm以上とすることが好ましく、0.05g/cm以上とすることがより好ましいことを見出せた。
以上の各試験を総合的に纏めると、マット材の嵩密度は少なくとも0.02g/cm以上とし、良好な断熱性及び吸音性を担保するには、マット材の嵩密度を0.04〜0.09g/cm程度が好ましいことが導き出せた。


Claims (4)

  1. 植物系の薄片と、
    芯部と、該芯部よりも融点が低い鞘部とからなる芯鞘型繊維とを含み、
    前記芯鞘型繊維の鞘部をバインダーとして前記薄片が前記芯部と接着されており、
    嵩密度が0.02〜0.1g/cm3である、植物系マット材。
  2. 前記芯鞘型繊維の配合割合がマット材全量基準で4〜10重量%である、請求項1に記載の植物系マット材。
  3. さらに、植物系の繊維を、マット材全量基準で40重量%以下含む、請求項1または請求項2に記載の植物系マット材。
  4. 植物系の薄片と、芯部と該芯部よりも融点が低い鞘部とからなる芯鞘型繊維とを混合し、該混合物をプレスすることなく前記鞘部を熱溶融する、植物系マット材の製造方法。


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