JP5170512B2 - 生分解性断熱材とその成型体およびそれらの製造方法並びにそれらの製造方法を用いた植物育成材と肥料材 - Google Patents

生分解性断熱材とその成型体およびそれらの製造方法並びにそれらの製造方法を用いた植物育成材と肥料材 Download PDF

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本発明は、生分解性断熱材とその成型体およびそれらの製造方法並びにそれらの製造方法を用いた植物育成材と肥料材に関するものである。
一般に、木質繊維板には、木質繊維と結合材とサイズ剤とを水に分散させたスラリーを、製紙と同様の湿式プロセスで抄造により製造する密度350Kg/m未満の軟質繊維板(インシュレーションボード)や、木質繊維にメラミン系樹脂結合材と撥水剤を含有する水溶液を噴霧して付着させ加熱プレスにより乾式プロセスで製造される中密度繊維板(MDF)や、更に高圧で加熱プレスして成形される密度800Kg/m以上の硬質繊維板(ハードボード)が知られており、建築部材や家具調度品に用いられている。係る木質繊維板の製造技術において、近年、省エネ・コストダウン、防火性、防虫性、シックハウス対策、リサイクル環境対策に関係した数多くの改良技術が公開されている。
従来の中密度繊維板では、木質繊維と熱可塑性樹脂との結合からなる混合物をマット状に成形し、結合材を融点以上の温度で熱融着させ、低密度化と省エネによるコストダウンを図ったものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、従来、中密度繊維板に難燃性と防虫性を付与するため、フェノール樹脂にポリエチレングリコール、トリアゾール防蟻剤、リン酸アンモンニウム塩を配合した水溶液を中密度繊維板に含浸処理するものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、従来、廃棄処分されていた使用済み木質繊維板を破砕処理して、密度50ないし250Kg/m、繊維長0.01ないし20mmの再生原料とし、中密度繊維板の原料の一部として用いるものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。また、従来、平均繊維長5〜100mmのセルロース系繊維とポリ乳酸樹脂とを混合して得られる不織布を積層し、目付400〜25000g/m、厚み2〜50mmの生分解性中密度繊維板を製造するものが知られている(例えば、特許文献4参照。)。
特開2001−334510号公報(第2−3頁、第1図) 特開2002−337116号公報(第3−4頁) 特開2003−311717号公報(第3−4頁) 特開2006−289769号公報(第8頁)
しかしながら、上記従来の木質繊維板では、例えば、特許文献1に記載の木質繊維板では、プレスしないでフォーミングするので低密度(0.03〜0.08g/cm)とすることができる反面、弾力性、機械的強度、防音性、防火性、耐火性、防虫性、生分解性に欠けるという問題があった。また、特許文献2および3に記載の木質繊維板では、難燃性と防虫性、防腐性は得られるものの、シックハウス発生の虞があり生分解性に欠けるという問題がある。さらに、特許文献4に記載の木質繊維板では、防火性、耐火性、防虫性、軽量弾力性に欠けるという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、乾式プロセスと半乾式プロセスによって製造される断熱材と同じ密度の範囲を確保する一方、湿式プロセスでは実現できない特性、すなわち、弾力性、機械的強度、防音性、防火性、耐火性、防蟻性、断熱性および調湿性の性能向上を図るとともに、シックハウスの発生を抑制し環境への負荷軽減を図ることができる生分解性断熱材とその成型体およびそれらの製造方法並びにそれらの製造方法を用いた植物育成材と肥料材を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る生分解性断熱材の製造方法は、主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/m とする生分解性断熱材の製造方法であって、木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、チップ加工された原料に難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、難燃防蟻処理された原料を解繊する第3の工程と、解繊された繊維原料に繊維状の生分解性結合材を投入して分散させ混合させる第4の工程と、分散混合された繊維を集綿し面状に積層して乾式成形する第5の工程と、成形された繊維を圧縮して乾式成形する第6の工程と、圧縮された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第7の工程と、加湿されて加熱成形された繊維を乾燥させて加熱し乾式成形する第8の工程とを有するようにしたものである。
本発明の請求項1に係る生分解性断熱材の製造方法では、主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/m とする生分解性断熱材の製造方法であって、木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、チップ加工された原料に難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、難燃防蟻処理された原料を解繊する第3の工程と、解繊された繊維原料に繊維状の生分解性結合材を投入して分散させ混合させる第4の工程と、分散混合された繊維を集綿し面状に積層して乾式成形する第5の工程と、成形された繊維を圧縮して乾式成形する第6の工程と、圧縮された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第7の工程と、加湿されて加熱成形された繊維を乾燥させて加熱し乾式成形する第8の工程とを有するようにしたことにより、主要成分が、木質繊維、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤および生分解性結合材をそれぞれ所定の比率で含み、かつ所定の密度とするマット状生分解性断熱材が製造される。この生分解性断熱材は、低密度でありながら、弾力性、機械的強度、防音性、防火性、耐火性、防蟻性、断熱性および調湿性の各性能が向上し、さらに、シックハウスの発生を抑制し環境への負荷軽減を図ることができる。すなわち、生分解性断熱材を、断熱材や防音材として用いると、低密度で弾力性を有するとともに、熱伝導率および温度伝導率が低く、ガラスウール等の無機短繊維や押出発泡ポリスチレン等の発泡プラスチックの断熱材に比較して断熱性能と防音性能とが向上する。生分解性断熱材を建築材として用いると、火熱を受けて着火しても木質繊維は表面が炭化して炭化断熱層を形成するため、防火性能および耐火性能が向上する。生分解性断熱材を構成する木質繊維、難燃防蟻剤および結合材は生分解性を有し、しかも、難燃防蟻剤は肥料成分を兼ねているので、未使用または使用済みの生分解性断熱材を、施肥マットとして用いることができる。
また、請求項2に係る生分解性断熱材の製造方法は、第3の工程で、粉末状生分解性結合材を所定の重量比で投入するようにしたものである。
さらに、請求項3に係る生分解性断熱材の製造方法は、第3の工程後、解繊処理された原料の含水率を15wt%前後となるよう含水率をコントロールして調湿するようにしたものである。
請求項4に係る生分解性断熱材の製造方法は、第8の工程後、乾燥されて加熱成形された繊維を調湿養生するようにしたものである。
請求項5に係る生分解性断熱材の製造方法は、第8の工程で、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させるとともに高圧で圧縮するようにしたものである。
請求項5に係る生分解性断熱材の製造方法では、第8の工程で、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させるとともに高圧で圧縮するようにしたことにより、ボード状生分解性断熱材が製造される。
請求項6に係る生分解性断熱材の製造方法は、第8の工程で、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させるとともに、繊維両面のうち少なくともいずれか一方を所定の密度に高めるよう圧縮し繊維内密度を異ならせるようにしたものである。
請求項6に係る生分解性断熱材の製造方法では、第8の工程で、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させるとともに、繊維両面のうち少なくともいずれか一方を所定の密度に高めるよう圧縮し繊維内密度を異ならせるようにしたことにより外側の密度を高めると、外側面の防火性、耐火性、機械的強度、表面平滑性、断熱性が向上する。
請求項7に係る生分解性断熱材の製造方法は、主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/m とする生分解性断熱材の製造方法であって、木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、難燃防蟻処理された原料に繊維状の生分解性結合材を投入して混合し、解繊する第3の工程と、解繊された原料に抄造処理を行い、フェルト状に成形する第4の工程と、フェルト状に成形された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第5の工程とを有するようにしたものである。
請求項7に係る生分解性断熱材の製造方法では、主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/m とする生分解性断熱材の製造方法であって、木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、難燃防蟻処理された原料に繊維状の生分解性結合材を投入して混合し、解繊する第3の工程と、解繊された原料に抄造処理を行い、フェルト状に成形する第4の工程と、フェルト状に成形された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第5の工程とを有するようにしたことにより、製造された生分解性断熱材はフェルト状に成型される。フェルト状に成型された生分解性断熱材は、薄い厚みで断熱性能と防音性能とを確保した上で、柔軟性を向上させることができ、ロール巻きすることができ、施工性が向上する。
請求項8に係る生分解性断熱材の製造方法は、第5の工程後、乾燥されて加熱成形された繊維を調湿養生するようにしたものである。
請求項9に係る生分解性断熱材の製造方法は、第5の工程後、乾燥されて加熱成形された繊維両面のうち少なくともいずれか一方に生分解性不織布を重ねてニードルパンチ加工を行うようにしたものである。
請求項10に係る生分解性断熱材の製造方法は、第4の工程の抄造処理が、繊維原料を空気中に分散させて乾式抄造するエアーレイド処理により行われるようにしたものである。
請求項10に係る生分解性断熱材の製造方法では、第4の工程の抄造処理が、繊維原料を空気中に分散させて乾式抄造するエアーレイド処理により行われることにより、従来の湿式抄造に比較して乾燥工程を省略することができ、製造効率が向上する。
請求項11に係る生分解性断熱材の製造方法は、第4の工程により得られたフェルト状繊維を、単層または複層に積層し、第5の工程で、単層または複層に成形されたフェルト状繊維を重ね合わせ加湿して加圧し半乾式成形し、第5の工程後、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させ乾式成形し、立体形状にプレス加工するようにしたものである。
請求項11に係る生分解性断熱材の製造方法では、第4の工程により得られたフェルト状繊維を、単層または複層に積層し、第5の工程で、単層または複層に成形されたフェルト状繊維を重ね合わせ加湿して加圧し半乾式成形し、第5の工程後、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させ乾式成形し、立体形状にプレス加工するようにしたことにより、厚さが異なったり複雑な形状の取り付け場所であってもプレスによりフェルト状生分解性断熱材を自在な形状に成型することができるスタンパブル成形により、自動車の内装材やフロアーインシュレーター等の多種の施工対象に用いることができる。
請求項12に係る生分解性断熱材の成型体の製造方法は、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法により製造された生分解性断熱材を所望の寸法にカットし、成型体に成形するようにしたものである。
請求項12に係る生分解性断熱材の成型体の製造方法では、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法により製造された生分解性断熱材を所望の寸法にカットし、成型体に成形するようにしたことにより、主要成分が、木質繊維、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤および生分解性結合材をそれぞれ所定の比率で含み、かつ所定の密度とする生分解性断熱材の成型体が製造される。この生分解性断熱材の成型体は、低密度でありながら、弾力性、機械的強度、防音性、防火性、耐火性、防蟻性、断熱性および調湿性の各性能が向上し、さらに、シックハウスの発生を抑制し環境への負荷軽減を図ることができる。すなわち、生分解性断熱材の成型体を、断熱材や防音材として用いると、低密度で弾力性を有するとともに、熱伝導率および温度伝導率が低く、ガラスウール等の無機短繊維や押出発泡ポリスチレン等の発泡プラスチックの断熱材に比較して断熱性能と防音性能とが向上する。生分解性断熱材の成型体を建築材として用いると、火熱を受けて着火しても木質繊維は表面が炭化して炭化断熱層を形成するため、防火性能および耐火性能が向上する。生分解性断熱材の成型体を構成する木質繊維、難燃防蟻剤および結合材は生分解性を有し、しかも、難燃防蟻剤は肥料成分を兼ねているので、未使用または使用済みの生分解性断熱材の成型体を、施肥マットとして用いることができる。
請求項13に係る生分解性断熱材の製造方法により製造される生分解性断熱材は、木質繊維が、木材チップまたは靱皮チップのうち少なくともいずれか一方を蒸煮して解繊した平均繊維径1mm以下でかつ平均繊維長20mm以下の繊維であるようにしたものである。
請求項14に係る生分解性断熱材の製造方法により製造される生分解性断熱材は、木材チップが、針葉樹、広葉樹、間伐材または廃棄木材のうちいずれかを用いるようにしたものである。
請求項15に係る生分解性断熱材の製造方法により製造される生分解性断熱材は、難燃防蟻剤が、ホウ素系化合物とリン系化合物との混合物からなるようにしたものである。
請求項16に係る生分解性断熱材の製造方法により製造される生分解性断熱材は、生分解性結合材が、熱水可溶性ポリビニルアルコール、澱粉、カルボキシメチルセルロースまたはキトサンのうち少なくともいずれか1を含む素材と、生分解性ポリオレフィン、ポリエステルまたはカプロラクタムのうち少なくともいずれか1を含む素材とからなり、平均繊維径が1mm以下か、繊度が10dtex以下かまたは繊維長が20mm以下の繊維であるようにしたものである。
請求項17に係る生分解性断熱材の成型体は、請求項13ないし16のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材を、マット状、ボード状またはフェルト状のうちいずれか1に成型してカットしてなるようにしたものである。
請求項17に係る生分解性断熱材の成型体では、請求項13ないし16のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材を、マット状、ボード状またはフェルト状のうちいずれか1に成型してカットしてなることにより、いずれかの形状に成型された成型体を、断熱材や防音材として用いると、低密度で弾力性を有するとともに、熱伝導率および温度伝導率が低く、ガラスウール等の無機短繊維や押出発泡ポリスチレン等の発泡プラスチックの断熱材に比較して断熱性能と防音性能とが向上する。成型体を建築材として用いると、火熱を受けて着火しても木質繊維は表面が炭化して炭化断熱層を形成するため、防火性能および耐火性能が向上する。成型体を構成する木質繊維、難燃防蟻剤および結合材は生分解性を有し、しかも、難燃防蟻剤は肥料成分を兼ねているので、未使用または使用済みの成型体を、施肥マットとして用いることができる。
請求項18に係る生分解性断熱材の成型体は、生分解性断熱材の成型体を、中心層とこの中心層の両外側層のうち少なくともいずれか一方を中心層と密度を異ならせて構成したものである。
請求項18に係る生分解性断熱材の成型体では、生分解性断熱材の成型体を、中心層とこの中心層の両外側層のうち少なくともいずれか一方を中心層と密度を異ならせて構成したことにより、成型体は密度に応じた性能が発揮されるとともに軽量化される。
請求項19に係る生分解性断熱材の成型体は、成型体の外側層を中心層に対して高密度に加工し、成型体の平均密度を100ないし300Kg/m したものである。
請求項19に係る生分解性断熱材の成型体では、成型体の外側層を中心層に対して高密度に加工し、成型体の平均密度を100ないし300Kg/m としたことにより、成型体は外側が高密度となるので、外側に所望の性能を確保して軽量化される。
請求項20に係る生分解性断熱材の成型体は、成型体には、側面に凹または凸の実加工が施されるようにしたものである。
請求項20に係る生分解性断熱材の成型体では、成型体には、側面に凹または凸の実加工が施されるようにしたことにより、成型体同士、面接続がし易くなり施工性が向上する。
請求項21に係る生分解性断熱材の成型体は、成型体をフェルト状に成型して構成し、このフェルト状成型体を、繊維目付100g/m 以下の生分解性不織布を片面または両面のいずれかに重ねてニードルパンチ加工したしたものである。
請求項21に係る生分解性断熱材の成型体では、成型体をフェルト状に成型して構成し、このフェルト状成型体を、繊維目付100g/m 以下の生分解性不織布を片面または両面のいずれかに重ねてニードルパンチ加工したことにより、成型体は薄い厚みで断熱性能と防音性能とを確保した上で、柔軟性を向上させることができ、ロール巻きすることができ、施工性が向上する。
請求項22に係る植物育成材は、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を所定の寸法にカットして植物育成床に用いるようにしたものである。
請求項22に係る植物育成材では、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を所定の寸法にカットして植物育成床に用いるようにしたことにより、内部に通気空間を確保し、かつ保水性も確保することができるだけでなく、無菌状態で肥料成分が水に溶け出すので、苗を健全にかつ良好に育成させることができる。
請求項23に係る肥料材は、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を所定の寸法にカットして施肥マットに用いるようにしたものである。
請求項23に係る肥料材では、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を所定の寸法にカットして施肥マットに用いるようにしたことにより、肥料材を構成する木質繊維、難燃防蟻剤および結合材は生分解性を有し、しかも、難燃防蟻剤は肥料成分を兼ねているので、肥料材が地面に投入されると、肥料成分が土壌に溶け出し、時間の経過とともに分解される。
本発明に係る生分解性断熱材の製造方法は、主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/m とする生分解性断熱材の製造方法であって、木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、チップ加工された原料に難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、難燃防蟻処理された原料を解繊する第3の工程と、解繊された繊維原料に繊維状の生分解性結合材を投入して分散させ混合させる第4の工程と、分散混合された繊維を集綿し面状に積層して乾式成形する第5の工程と、成形された繊維を圧縮して乾式成形する第6の工程と、圧縮された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第7の工程と、加湿されて加熱成形された繊維を乾燥させて加熱し乾式成形する第8の工程とを有するようにしたので、主要成分が、木質繊維、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤および生分解性結合材をそれぞれ所定の比率で含み、かつ所定の密度とする生分解性断熱材が製造される。この生分解性断熱材は、低密度でありながら、弾力性、機械的強度、防音性、防火性、耐火性、防蟻性、断熱性および調湿性の各性能が向上し、さらに、シックハウスの発生を抑制し環境への負荷軽減を図ることができる。つまり、従来の無機短繊維や発泡プラスチックに比較して断熱性と吸音性とが高く、しかも外観が平滑で、柔軟性が高く、弾力性に富むとともにハンドリング性の良好な製品が得られる。このため、遮音性および衝撃音に対する防音性が向上し、特に、低周波での防音効果が高くなる。また、火熱を受けても表面に炭化断熱層が形成され耐火性能が向上する。さらに、生分解性断熱材を構成する木質繊維、難燃防蟻剤および結合材は生分解性を有し、しかも、難燃防蟻剤は肥料成分を兼ねているので、未使用または使用済みの生分解性断熱材を、施肥マットとして用いると、防蟻性を発揮するとともに、肥料成分が溶け出すので、植物の生育を助け、しかも、時間の経過とともに生分解されるので、環境への負荷が軽減される。
また、本発明に係る生分解性断熱材の成型体は、請求項13ないし16のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を、マット状、ボード状またはフェルト状のうちいずれか1に成型してカットしてなるので、従来の無機短繊維や発泡プラスチックの成型体に比較して断熱性と吸音性とが高く、しかも外観が平滑で、柔軟性が高く、弾力性に富むとともにハンドリング性の良好な製品が得られる。このため、遮音性および衝撃音に対する防音性が向上し、特に、低周波での防音効果が高くなる。また、火熱を受けても表面に炭化断熱層が形成され耐火性能が向上する。さらに、成型体を構成する木質繊維、難燃防蟻剤および結合材は生分解性を有し、しかも、難燃防蟻剤は肥料成分を兼ねているので、未使用または使用済みの成型体を、施肥マットとして用いると、防蟻性を発揮するとともに、肥料成分が溶け出すので、植物の生育を助け、しかも、時間の経過とともに生分解されるので、環境への負荷が軽減される。
さらに、本発明に係る植物育成材は、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を所定の寸法にカットして植物育成床に用いるようにしたので、苗を健全にかつ良好に育成させることができる。
本発明に係る肥料材は、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の方法により製造された生分解性断熱材を所定の寸法にカットして施肥マットに用いるようにしたので、蟻の害を防いで、植物を健全にかつ良好に育成させることができるとともに、時間の経過とともに分解されるので、環境への負荷を軽くすることができる。
本発明に係る生分解性断熱材の製造方法は、主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/mとする生分解性断熱材の製造方法であって、木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、難燃防蟻処理された原料に繊維状の生分解性結合材を投入して混合し、解繊する第3の工程と、解繊された原料に抄造処理を行い、フェルト状に成形する第4の工程と、フェルト状に成形された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第5の工程とを有するようにしたので、主要成分が、木質繊維、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤および生分解性結合材をそれぞれ所定の比率で含み、かつ所定の密度とするフェルト状生分解性断熱材が製造される。フェルト状に成型された生分解性断熱材は、薄い厚みで断熱性能と防音性能とを確保した上で、柔軟性を向上させることができ、ロール巻きすることができ、施工性が向上する。
本発明に係る生分解性断熱材の成型体の製造方法は、請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法により製造された生分解性断熱材を所望の寸法にカットし、成型体に成形するようにしたので、主要成分が、木質繊維、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤および生分解性結合材をそれぞれ所定の比率で含み、かつ所定の密度とする生分解性断熱材の成型体が製造される。この生分解性断熱材の成型体は、低密度でありながら、弾力性、機械的強度、防音性、防火性、耐火性、防蟻性、断熱性および調湿性の各性能が向上し、さらに、シックハウスの発生を抑制し環境への負荷軽減を図ることができる。つまり、従来の無機短繊維や発泡プラスチックの成型体に比較して断熱性と吸音性とが高く、しかも外観が平滑で、柔軟性が高く、弾力性に富むとともにハンドリング性の良好な製品が得られる。このため、遮音性および衝撃音に対する防音性が向上し、特に、低周波での防音効果が高くなる。また、火熱を受けても表面に炭化断熱層が形成され耐火性能が向上する。さらに、生分解性断熱材の成型体を構成する木質繊維、難燃防蟻剤および結合材は生分解性を有し、しかも、難燃防蟻剤は肥料成分を兼ねているので、未使用または使用済みの生分解性断熱材の成型体を、施肥マットとして用いると、防蟻性を発揮するとともに、肥料成分が溶け出すので、植物の生育を助け、しかも、時間の経過とともに生分解されるので、環境への負荷が軽減される。
乾式プロセスと半乾式プロセスにより製造される断熱材と同じ低密度の範囲で、かつ、湿式プロセスによる断熱材にない特性、例えば、弾力性、機械的強度、防音性、防火性、耐火性、防蟻性を付与し、しかも、断熱性、調湿性、シックハウス抑制の向上と環境負荷軽減を図るという目的を、主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/mとする生分解性断熱材の製造方法であって、木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、生分解性結合材を投入して蒸煮し解繊する第3の工程と、蒸煮解繊された繊維の含水率をコントロールして調湿を行う第4の工程と、繊維状の生分解性結合材を投入して分散させ混合させる第5の工程と、分散混合された繊維を集綿し面状に積層して乾式成形する第6の工程と、成形された繊維を圧縮して乾式成形する第7の工程と、圧縮された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第8の工程と、加湿されて加熱成形された繊維を乾燥させて加熱し乾式成形する第9の工程と、乾燥されて加熱成形された繊維を調湿養生する第10の工程とを有する製造方法により製造される生分解性断熱材を得ることにより実現した。
以下、図面により本発明について説明する。本発明の生分解性断熱材に用いられる木質繊維は、まず、木片をチップ加工したチップ片を使用する。木片は、エゾ松、トド松、唐松、杉、トウヒ等の針葉樹や、ブナ、カエデ、クヌギなどの広葉樹、またはこれらの間伐材や廃棄木材、竹、麻などの靭皮類を、長さ10〜30mm、巾5〜15mm、厚み2〜5mmの薄片状に切断して破砕されたものが用いられる(図1のステップS1(第1の工程)参照)。これらチップ片は、一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いてもよい。
次に、これらチップ片には、肥料成分を兼ねた難燃防蟻剤を所定の重量比で投入して難燃防蟻処理を行う(図1のステップS2(第2の工程)参照)。肥料成分を兼ねた難燃防蟻剤は、ホウ素系化合物とリン系化合物の混合物から構成される。すなわち、ステップS2では、これらチップ片を、ホウ素系化合物とリン系化合物とからなる水溶液または懸濁液に、常温〜80℃の温度で2〜24時間浸漬処理する。上述のように肥料成分を兼ねた難燃防蟻剤は、ホウ素系化合物とリン系化合物の混合物から構成されるが、具体的には、ホウ酸、ホウ砂、ホウ珪酸塩、ポリ燐酸アンモニウム、燐酸二水素アンモニウム、燐酸マグネシウム、燐酸カリウムおよび、溶解助剤としての亜リン酸ソーダ、亜硫酸ソーダや定着助剤としての炭酸カリウム、塩化マグネシウムを挙げることができる。肥料成分を兼ねた難燃防蟻剤は、木質繊維に対する含浸付着量が、2wt%以下では難燃、防蟻効果が不十分であり、また、30wt%以上では効果が飽和しコストアップとなるため、2〜30wt%が適正である。このような肥料成分を兼ねた難燃防蟻剤は、製造された最終製品の木質繊維に含浸処理された状態で配合されるようになる。この肥料成分を兼ねた難燃防蟻剤は、製造された断熱材には難燃不燃性を、製造された断熱材ボードと石膏ボードとの複合部材には防火性、耐火性をそれぞれ付与するようになるとともに、シロアリ食害対策としての防蟻性をも付与するものである。また、難燃防蟻剤は、使用済の最終製品を含め、農業用の施肥マット、育苗マットとして活用できる肥料成分を兼ねるものである。
次に、難燃防蟻処理されたチップ片には、粉末状の生分解性結合材が所定の重量比で投入され、生分解性結合材が投入され難燃防蟻処理されたチップ片をスチームにより蒸煮して軟化させ、蒸煮され軟化されたチップ片をリファイナーで、平均繊維径1mm以下でかつ平均繊維長20mm以下の木質繊維に解繊する(図1のステップS3(第3の工程)参照)。すなわち、生分解性結合材が投入され難燃防蟻処理されたチップ片を、0.5〜1MPの蒸気圧で5〜20分蒸煮し、続いてシングル又はダブルディスクリファイナーで解繊する。リファイナーの回転数、および固定ブレードと回転ブレードのクリアランスを変えることで、木質繊維の平均繊維径、平均繊維長および吐出量をコントロールすることができる。平均繊維径を1mm以下とする理由は、得られる断熱材に弾力性を有しつつ熱伝導率を低くするためである。また平均繊維長を20mm以下とする理由は、後述する繊維状結合材と乾式プロセスによる混合工程で繊維間同士の粒状化、毛玉の発生を抑え均一に分散混合させるためである。均一分散は、L/D( 繊維長/繊維径)として、10〜300の範囲が適正で、繊維長では20mm以下が好ましい。この条件で製造される密度30〜150Kg/mの断熱材の熱伝導率は、後述するように、0.038W/mKと低く、比熱は2000J/KgKと高い熱容量値を示した。
ステップS3のリファイナーで解繊加工され生分解性結合材が投入され難燃防蟻処理された木質繊維は、次に、必要に応じて含水率が15wt%前後に調湿されるよう含水率がコントロールされる(図1のステップS4参照)。このとき、圧縮梱包によりベール綿梱包して一時保管するようにしてもよいし、含水率を調湿後、次の工程に進んでもよい。
次に、調湿された木質繊維には、繊維状の生分解性結合材と添加剤とが所定の重量比で投入されてトロンメルにより混合分散されて、均一に混合される(図1のステップS5(第4の工程)参照)。トロンメルは、円錐台形状の回転体で外周がメッシュの金網からなり、円錐台形状の細径側の投入口と広径側の排出口の周速の違いにより、投入された断熱材原料は排出口に向かって連続的に攪拌混合されて排出される。また、この工程で原料の微細化物は、外周のメッシュ金網により分離除去される。生分解性結合材は、天然および合成系の結合材で、乾式プロセス、半乾式プロセスに適合した熱水可溶性の湿潤接着型結合材および疎水性の熱融着型の結合材の混合物からなり、かつ生分解性の繊維形状をした結合材である。天然および合成系の熱水可溶型の結合材としては、天然系の澱粉、セルロース誘導体、キトサンがあり、合成系の熱水可溶型の結合材としては、完全ケン化型ポリビニルアルコール、珪素含有ポリビニルアルコールなどがあり、木質繊維など繊維に担持したタイプ、または繊維状のものが該当する。合成系の疎水性の熱融着型結合材としては、ポリカプロラクタム系ポリアミド、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートやポリブチレンサクシネート・アジペートなど脂肪族ポリエステル樹脂や生分解型のポリエチレン・ポリプロピレン複合樹脂で繊維状のものが該当する。係る繊維状の結合材は、本発明の成形プロセスである乾式プロセス、半乾式プロセスで、原料の均一分散混合、混合物の嵩高性、集配綿性を確保するために、平均繊維径が1mm以下か、繊度が10dtex以下か、または繊維長が20mm以下の繊維に担持したタイプ、あるいは繊維状タイプである。また、添加剤としては、フッ素系撥水剤、シリコンオイル系撥水剤、アルキルケテンダイマーサイズ剤やリン酸カルシウムに銅、亜鉛などの抗菌活性物質を担持させた抗菌剤やヒノキチオール、キトサン系の防黴剤、ゼオライト系化合物消臭剤など環境対応型の添加剤であれば、適宜、配合することができる。
ステップS5でトロンメルにより分散混合された原料は、次に、空気輸送により背面吸引装置付きのメッシュコンベヤからなる集綿室に移送され、乾式プロセスで集配綿され嵩高のマット(繊維)に成形される(図1のステップS6(第5の工程)参照)。
ステップS6でマットに成形された原料は、次に、無端パンプレート型(無端ベルト型)のダブルコンベヤに搬送され、ダブルコンベヤの上下パンプレート間に挿入され、ここで所定の厚みと所定の密度に近い状態までに圧縮成形される(図1のステップS7(第6の工程)参照)。
ステップS7で圧縮成型されたマット(繊維)には、続いて蒸気による加湿と加熱処理とが行われる(図1のステップS8(第7の工程)参照)。このようにマットに蒸気加湿と加熱処理を行うと、繊維形状の熱水可溶成分の結合材が湿潤して繊維同士を結合し,マットに保形性と弾力性を付与するようになる。
ステップS8で半乾式成形されたマットは、続いて乾式プロセスにより移動コンベヤで圧縮加熱される(図1のステップS9(第8の工程)参照)。このように、ステップS9で乾式プロセスにより圧縮加熱することにより繊維状の結合材が熱融着し、マットは強度と弾力性のある最終形状の製品に成形される。このステップS9の工程で、マットを高圧により圧縮加熱すると、密度の高いボード状の生分解性断熱材が製造される。そして、このステップS9の工程で、搬送されてきた半乾式成形されたマットを加熱して乾燥させるとともに、マット両面のうち少なくともいずれか一方を所定の密度に高めるよう圧縮して繊維内密度を異ならせることもできる。すなわち、マットの上下層(外側層)の密度を中間層の密度より高めて密度の異なる3層構造に形成することもできる。この場合、外側層を中心層に対して高密度に加工した成型体の平均密度を100ないし300Kg/mとすることが好ましい。
ステップS9で成形されたマットは、次に、保湿養生されて最終製品としての生分解性断熱材の製造が完了する(図1のステップS10参照)。このようにして製造された生分解性断熱材は、外観良好で厚み方向の均質性と弾力性を有し、かつ断熱性(低い熱伝導率)、難燃防火性、難燃耐火性、防蟻性、防音性、調湿性、ホルムアルデヒドフリー(VOCフリー)および施肥マット材としての特性が付与される。
上記生分解性断熱材は、所望の形状にカットされて生分解性断熱材の成型体が製造される(図1のステップS11参照)。すなわち、生分解性断熱材は、ステップS7で、所定の厚みと所定の密度に圧縮成型することによりマット状に成形され、ステップS9で高圧により圧縮加熱されるとボード状に成型される。そして、マット状またはボード状に成形された生分解性断熱材を所望の形状に切り出して生分解性断熱材の成型体が製造される。
次に、本発明の第2の実施例に係る生分解性断熱材をフェルトに成形する工程について説明する。フェルト状生分解性断熱材を成型する方法では、図2に示すように、木片をチップ片に加工し(ステップS21)、所定の重量比で難燃防蟻処理を行う(ステップS22)工程(第1、第2の工程)は、上記マット状またはボード状生分解性断熱材を製造する上記第1の実施例の工程と同一である。すなわち、まず、木片や靭皮類を長さ10〜30mm、巾5〜15mm、厚み2〜5mmの薄片状に切断してチップ片に加工する(図2のステップS21(第1の工程)参照)。これらチップ片は、一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いてもよい。次に、これらチップ片に、肥料成分を兼ねた難燃防蟻剤を所定の重量比で投入して難燃防蟻処理を行う(図2のステップS22(第2の工程)参照)。
次に、難燃防蟻処理を行った原料に、粉末状生分解性結合材に代えて繊維状の生分解性結合材を所定の重量比で投入しカーディングマシーンで混合して解繊を行う(図2のステップS23(第3の工程)参照)。
次に、解繊された原料をエアレイド乾式抄造装置に投入し、所定の厚み(例えば、5mm)、所定の坪量(例えば、750g/m)で薄いマット状繊維を成形し(図2のステップS24参照)、フェルトフォーミングを行う(図2のステップS25(第4の工程)参照)。エアーレイド乾式抄造装置は、水を使わず、原料を空気中で分散させて乾式抄造するものである。エアーレイド乾式抄造装置では、厚み2〜10mmのフェルトフォーミングを行うことができる。なお、本実施例では、エアーレイド乾式抄造装置を用いているがこれに限られるものではなく、水を使用する湿式抄造装置を用いてもよいことはいうまでもない。このような湿式抄造による湿式プロセスでは、製紙製造と同様のプロセスにより、ステップS23で解繊された原料を液に投入し、濃度1〜5wt%に分散させた水性スラリーとし、この水性スラリーを、円網式、長網式、またはロートフォーマー方式で厚み2〜10mmのフェルトを製造することができる。この場合、湿式プロセスではフェルトを予備乾燥するのに対し、乾式プロセスではスチームにより加湿して含水率を15wt%前後に調湿するようになっている。
次に、ステップS25でフェルトフォーミングされた繊維を、ダブルコンベヤに搬送し、蒸気による加湿と加熱処理を行い半乾式成形する(図2のステップS26(第5の工程)参照)。これは、上記実施例のステップS8と同一の工程である。このようにフェルトフォーミングされた繊維に蒸気加湿と加熱処理を行うと、繊維形状の熱水可溶成分の結合材が湿潤して繊維同士を結合し、湿潤接着と熱融着による接着とが行われ、より薄く圧縮成型され(例えば、この工程前5mmだった厚さが3mmに圧縮成型される)、フェルトフォーミングされた繊維に保形性と弾力性を付与するようになる。このとき、湿潤接着と熱融着接着により厚み2〜10mm、密度200〜300Kg/mのフェルトに成形することが好ましい。
次に、ステップS26で半乾式成形された繊維両面のうち、少なくともいずれか一方に繊維目付100g/m以下のポリ乳酸繊維からなる生分解性不織布を重ねてニードルパンチ加工を行う(図2のステップS27参照)。そして、フェルト状繊維に生分解性不織布が縫い込まれたフェルト状生分解性断熱材は、調湿養生されて最終製品としてのフェルト状生分解性断熱材の製造が完了する(図2のステップS28参照)。不織布をフェルト状繊維にニードルパンチ加工するのは、操作性、施工性を向上させるためである。不織布は、目付20〜100g/m2 の範囲であることが好ましい。
上記フェルト状生分解性断熱材は、所望の長さで、または所望の形状にカットされてフェルト状生分解性断熱材の成型体が製造される(図2のステップS29参照)。こうして製造されたフェルト状生分解性断熱材は、薄い厚みで断熱性能と防音性能とを確保した上に、さらに、柔軟性を向上させてロール巻きすることができ、施工性が向上する。なお、この第2の実施例では、ステップS27で、半乾式成形された繊維両面のうち、少なくともいずれか一方に生分解性不織布を重ねてニードルパンチ加工を行うようにしているがこれに限られるものではなく、このステップS27を省略し、ステップS26で半乾式成形された繊維を調湿養生し(ステップS28参照)、最終製品としてもよいことはいうまでもない。
次に、上記第2の実施例の変形例に係る生分解性断熱材について説明する。上記第2の実施例では、生分解性断熱材をフェルト状に成型し、全面をほぼ一定の厚さのフェルト地としているのに対し、第2の実施例の変形例に係る生分解性断熱材は、凹凸面や曲面を有する立体形状に成型される点が異なっている。すなわち、この変形例に係る生分解性断熱材の製造方法は、上記ステップS24およびS25で得られたフェルト状繊維を、単層または複層に積層し、上記ステップS26で、単層または複層に成形されたフェルト状繊維を重ね合わせ加湿して加圧し半乾式成形し、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させ乾式成形し、立体形状に加工するようにしている。
すなわち、図4に示すように、ステップS31で、木片をチップ片に加工し、ステップS32で、チップ片を難燃防蟻処理する。難燃防蟻処理されたチップ片に、ステップS33で、異なる成分の複数種の繊維状生分解性結合材をそれぞれ所定の重量比で投入し、複数種の原料を生成する。これら異なる原料毎にカーディングマシンで混合して解繊処理を行う。次に、ステップS34で、異なる原料毎解繊処理された繊維原料M、Nを別々にエアーレイド乾式抄造装置に投入して乾式抄造し、ステップS35で、マットフォーミングする。得られた二種のマットMt、Ntをそれぞれ、ステップS36で、ダブルコンベヤに搬送して乾式圧縮成形して所定の厚さに圧縮成形し、ステップS37で、スチーム加湿と熱風加熱よる湿潤接着と熱融着接着を行い、さらに、ステップS38で、市販の生分解性不織布(坪量50g/m2)を重ねてニードルパンチ加工してフェルトMf、Nfを製造し、ステップS39で、得られたフェルトMf、Nfをプレス成形(スタンパブル成形)して立体形状に加工するようになっている。
このため、変形例に係る生分解性断熱材では、厚さが異なったり複雑な形状の取り付け場所であってもプレスによりフェルト状生分解性断熱材を自在な形状に成型する立体形状のスタンパブル成形により、自動車の内装材やフロアーインシュレーター等の多種の施工対象に用いることができる。
本発明に係る植物育成材は、上記第1、第2の各実施例または変形例に係る生分解性断熱材の製造方法により製造された生分解性断熱材を、所定の寸法にカットして最終製品に仕上げられる。この植物育成材は、植物育成床に用いられる。この植物育成材を構成する木質繊維、難燃防蟻剤および結合材は生分解性を有し、しかも、難燃防蟻剤は肥料成分を兼ねているので、防蟻性を発揮するとともに、肥料成分が溶け出すので、植物の生育を助け、しかも、時間の経過とともに生分解されるので、環境への負荷が軽減される。このため、苗を健全にかつ良好に育成させることができる。
本発明に係る肥料材は、上記第1、第2の各実施例または変形例に係る生分解性断熱材の製造方法により製造された生分解性断熱材を、所定の寸法にカットして最終製品に仕上げられる。この肥料材は、施肥マットとして用いると、防蟻性を発揮するとともに、肥料成分が溶け出すので、植物の生育を助け、しかも、時間の経過とともに生分解されるので、環境への負荷が軽減される。
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すステップS1(第1の工程)のチップ片加工工程では、木片にそれぞれ樹皮が取り除かれたトド松、唐松および杉の乾燥間伐材を用い、これらを種類毎に長さ約20mm、巾約15mm、厚み約2mmの木片チップに加工処理した。トド松、唐松および杉をそれぞれタイプA、BおよびCのチップ片とした。ステップS2(第2の工程)の難燃防蟻処理工程では、難燃防蟻剤として、以下の二種のタイプの処理剤を調製した。
(1)処理剤タイプ1を、ホウ酸10wt%、ホウ砂2wt%、リン酸一カリウム1wt%、ポリリン酸アンモニウム10wt%の懸濁水溶液とした。
(2)処理剤タイプ2を、ホウ酸10wt%、炭酸カリウム1wt%、リン酸水素二アンモニウム15wt%の水溶液とした。ホウ酸、ホウ砂は防蟻、防虫効果を発揮し、他の成分、リン酸一カリウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸カリウム、リン酸水素二アンモニウムは肥料成分となる。難燃性は、ホウ酸、ホウ砂を含む他の成分すべてで発揮される。
難燃防蟻処理工程では、ステップS1でチップ加工された木質チップ片を、樹種ごとに、すなわち、タイプA〜C毎に上記タイプの異なる難燃防蟻処理液タイプ1および2の熱水溶液に24時間浸漬処理した。木質原料の種類と難燃防蟻処理された難燃防蟻処理液の種類とにより得られる木質原料は、表1に示すよう「木質原料の種類−処理液の種類」で表される。
Figure 0005170512
次に、ステップS3の蒸煮解繊工程で、浸漬処理を行った木片チップを圧力1MPaの蒸気圧で10分間蒸煮し、継いで、ダブルディスクリファイナーに投入し、回転数800rpm、クリアランス2mmで解繊した。その際に、粉末状生分解性結合材を混合したものと、しないものに分けた。粉末状生分解性結合材を混合したものは、表1に示す、木質材料A−1とA−2、すなわち、樹種がトド松で処理液のタイプ1とタイプ2に浸漬された原料である。粉末状生分解性結合材として完全ケン化度のポバール樹脂粉末を木質原料A−1、A−2に対し10wt%の割合で混合した。解繊処理により、木質原料は、平均繊維径0.2mm、平均繊維長20mmの木質繊維となる。ステップS3の蒸煮解繊工程後、ステップS4では、木質原料(木質繊維)は、必要に応じて含水率が15wt%前後に調湿されるよう含水率がコントロールされる。
次に、解繊処理され調湿された木質原料は、ステップS5(第4の工程)で、繊維状生分解性結合材と混合される。繊維状生分解性結合材は、以下の各繊維状結合材を混合して調製される。
繊維状結合材のタイプ1:完全ケン化度のポバール樹脂粉末を木質原料(木質繊維)に対し10wt%の割合で混合し、ポバール樹脂で被覆された木質繊維(ステップS3で混合処理された木質原料)と、
繊維状結合材のタイプ2:繊度5dtex、カット長20mmの熱水可溶性のポバール繊維と、
繊維状結合材のタイプ3:繊度3dtex、 カット長20mmの生分解性熱融着ポリオレフィン複合繊維との各タイプの繊維状結合材を用意し、
(1)ポバール樹脂で被覆された木質繊維(繊維状結合材のタイプ1)とこれら各種の繊維状結合材(繊維状結合材のタイプ1、2)とを、繊維状結合材のタイプ1とタイプ3との重量比を5:1とした繊維状結合材を製作した。これを記号Dで表す。
(2)繊維状結合材のタイプ2とタイプ3との重量比を1:1とした繊維状結合材を製作した。これを記号Eで表す。
次に、ステップS5(第4の工程)の分散混合工程では、木質原料A〜Cと、製作された繊維状結合材D、Eを表2に示す配合割合で計量した混合物をトロンメルにより混合して分散させた。混合物は、投入口の周速0.5m/sec、排出口の周速0.8m/sec、7メッシュ金網張りの回転トロンメルに投入され、混合して分散された。混合物は投入口から排出口に向かって回転分散されながら移動するが、その際メッシュ金網から原料混合物の微細化物を除去するようにした。表2は、後述するように、樹種と浸漬された難燃防蟻剤の種類、混合された繊維状結合材の種類、配合割合、生分解性断熱材の厚み、密度を変化させて製造した試作製品を示す。
Figure 0005170512
次に、均一に混合分散された木質原料を、ステップS6(第5の工程)の乾式マット集綿工程で、空気輸送によりコレクションチャンバーに搬送し、そこで集綿積層し均一で嵩高のマットに成形した。コレクションチャンバーは、背面吸引ボックス付連続移動・無端式メッシュコンベヤからなる集綿設備である。
次に、ステップS7(第6の工程)の乾式圧縮成形工程で、上記嵩高マットを、連続移動・無端式パンプレートの上下ダブルコンベヤに搬送して挿入し、上下のコンベヤの間隔を変化させて圧縮し、所定の厚みのマットに乾式プロセスで圧縮成形した。このように、ステップS6およびS7でマットフォーミングが行われる。
次に、上記圧縮成形されマットフォーミングされたマットは、ステップS8(第7の工程)の半乾式加湿加熱成形工程で、引き続き、ダブルコンベヤの前後が仕切られて区画され密閉されてたゾーンに搬送されてコンベヤの上下に挿入され、コンベヤの上下よりスチームを噴射させて加湿される(半乾式プロセス)。こうして加湿加熱することにより、木質原料の木質繊維に繊維状結合材を70〜100℃の温度域で湿潤接着させてハンドリング性を有する一次成形マットに成形した。
次に、一次成形されたマットは、ステップS9(第8の工程)の乾式加熱成形工程で、引き続き、前工程と同様に仕切られて区画されたゾーンで、最終製品の厚みになるように圧縮されつつコンベヤの上下から熱風が噴射される乾式プロセスで加熱される。こうして、木質繊維と繊維状結合材を100〜150℃の温度域で熱融着させ実用強度と弾力性のある断熱材に仕上げた。ステップS8およびS9でマットボンディングが行われる。
(比較例1)
このようにして試作された断熱材の性能評価を行った。性能評価の結果を表3に示す。表2の断熱材(試作No. 1〜8)の熱伝導率を、JIS A−1412の平板直接法で、また、比熱容量をコールラウシュ液体カロリメトリー法で測定した。断熱材の弾力復元性は、厚み方向に5%圧縮した時の弾力性(触感観察により、◎:良好、○;普通、△:復元不良)と復元率(%)で評価した。
Figure 0005170512
表3で明らかなように、本発明に係る生分解性断熱材の製造方法により製造された試作品(試作No. 1〜8)の断熱材では、断熱性、弾力性で良好な結果を示した。
(比較例2)
次に、表2に示す試作品のNo.1およびNo.2のサンプルを縦10cm×横10cm×厚み2cmに切り出し、側面4面と底面とをアルミ箔で被覆した試験体を製作し、この試験体で、建築基準法第2条9号公示によるCCM( Cone Calorimetry )による防火性を評価した結果、5.2MJ/10分、6.5MJ/20分で準不燃および不燃に合格した。CCMとは、発熱量試験(コーンカロリー計試験、ISO5660)のことで、試験体の表面にかけた輻射熱に対しての試験体の燃焼性を求めるものである。加熱速度は、フラッシュオーバー時の輻射強度に近い50KW/mとし、試験体(10cm×10cm)を水平位置に置き、その輻射に10分間曝す。口火は電気スパークを用いる。判定項目は、合計発熱量と最高発熱速度と防火上有害な燃焼性状等を示さなく、かつ裏面まで燃え抜けないことである。
(比較例3)
また、表2に示す試作品のNo.6(構成素材:B−2、結合材:Eタイプ、密度:80Kg/m)と一般の断熱材に用いられる無機短繊維断熱材(密度16Kg/mのガラスウール断熱材)との断熱性能を比較した。その結果を表4に示す。
Figure 0005170512
表4より、ガラスウール断熱材と比較し、試作品のNo. 6の断熱材は、定常状態(外部温度が変化しない環境)での熱伝達の度合いを示す熱伝導率では同等であるものの、非定常状態(外部温度が変化する環境)での熱伝達を示す温度伝導率では、1/6と小さく外気温が変化する環境において熱の伝達が大幅に緩和されることを示した。
(比較例4)
さらに、表2に示す試作品のNo.2(構成素材:A−1、結合材:Eタイプ、厚み:50mm、密度:55Kg/m)と、厚み50mm、密度48Kg/mのガラスウール断熱材との吸音性能を比較した。吸音性能の計測は、JIS A−1409、残響室法による吸音率を、背面に空気層のない剛壁密着の条件で測定した。その結果を表5に示す。
Figure 0005170512
表5より、ガラスウール断熱材と比較し、試作品No. 2の断熱材は、弾力性を反映して低周波領域で良好な吸音性能を示した。
(比較例5)
また、表2に示す試作品のNo.4(構成素材:A−2、結合材:Eタイプ、厚み:50mm、密度:55Kg/m)断熱材の耐火性能と遮音性能との評価を行った。
図3の(A)ないし(C)に示すように、胴差し(断面寸法100×100mm)2と、土台(断面積寸法100×100mm)3と、これら上下の胴差し2と土台3との間を結ぶ左右の柱(断面積寸法100×100mm)4、5と、左右両側の柱4、5間の間柱(断面積寸法100×50mm)6を備え、左右の柱4、5と間柱との間隔を455mmとした木造軸組み10を製作した。木造軸組み10には、厚さ2mmのグラファイト配合の加熱膨張フェルト12が貼られる。この木造軸組み10に、試作品No. 4の厚み50mmの断熱材11を2枚重ねで柱間4、6および5,6にやや大きめのサイズで挿入し、両面10A、10Bを12.5mmの石膏ボード13、14で被覆した間仕切壁20を製作し、この間仕切壁の耐火性能と遮音性能を評価した。
耐火性能は、ISO 834の標準加熱曲線で建設省公示第1358号の耐火試験を実施した。結果は、非加熱面側の平均温度132℃、最高温度145℃で準耐火45分に合格した。また、間仕切壁20について、JIS A−1409の残響室法により音響透過損失の性能を測定した。結果は、遮音等級D−50の良好な遮音性能を示した。
(比較例6)
さらに、表2に示す試作品のNo. 4(構成素材:A−2、結合材:Eタイプ、厚み:50mm、密度:55Kg/m)と、試作品のNo. 6(構成素材:B−2、結合材:Eタイプ、厚み:50mm、密度:80Kg/m)と、試作品のNo. 8(構成素材:C−2、結合材:Eタイプ、厚み:25mm、密度:160Kg/m)の各断熱材の調湿性能の評価を行った。
表2に示す試作品のNo. 4、6および8の各断熱材を、100×100mmにカットし側面4周と裏面を粘着アルミテープでシールし、45℃で24時間乾燥させ、続いて25℃で50%RH(相対湿度パーセント)、72時間養生して吸放湿性能を測定した。
吸放湿性能の測定条件は、25℃、90%RH、24時間吸湿させ、続いて、25℃、50%RH、24時間放湿させ、これを1サイクルとして3サイクル実施し、吸湿量、放湿量を測定した。その結果を表6に示す。
Figure 0005170512
表6より、試作品のNo. 4、6および8の各断熱材は、環境湿度に応じ、水分を吸湿、放湿し、スプルース材(マツ科トウヒ属の常緑針葉樹)と同等以上の調湿する性能を有することを示した。また、吸湿状態の表面は、やや湿り感があるものの結露はなく、また放湿状態の表面では、さらさら感があり結露による黴の発生もなかった。このため、黴の発生は解消されるものと判断された。
(比較例7)
また、表2に示す試作品のNo. 4(構成素材:A−2、結合材:Eタイプ、厚み:50mm、密度:55Kg/m)の断熱材の床遮音性能の評価を行った。
サイズ60×220mmの露出梁桁の上面に、厚み22mmの実加工付きの高張力木製フローリング材を敷設した床(イ)と、この床(イ)に試作品のNo. 4の厚み50mmの断熱材を梁桁間に、梁桁の上面と断熱材の間が空気層になるように挿入敷設し、更に梁桁の下面に12.5mmの石膏ボードを被覆した床(ロ)の構成で、バングマシンにより床に衝撃を加え、階下の対応する部屋での減衰した衝撃音を測定した。
測定法はJIS A−1418(建築物における床衝撃音レベルの測定)に準拠して実施した。床(イ)の衝撃音レベルが71dBであるのに対し、床(ロ)の衝撃音レベルが50dBと良好な床遮音性能を示した。
(比較例8)
さらに、表2に示す試作品のNo. 4(構成素材:A−2、結合材:Eタイプ、厚み:50mm、密度:55Kg/m)の断熱材について他の断熱材と比較した防蟻性評価を行った。
(i)試作品No. 4の密度55Kg/m3の試作断熱材、(ii)密度28Kg/mの押出発泡ポリスチレン断熱材、および(iii)密度16Kg/m3のガラスウール断熱材をそれぞれ、縦横高さのサイズを2×2×2cmにカットした試験体を製作した。これら試験体を用いて25℃、75%RHの環境下で1ヶ月、イエシロアリ(Coptotermes formosanus )による食害試験を実施した。防蟻性を重量減少率(○:5%以下、△:5〜10%、×:10%以上)と目視観察(○:良好、△:破損有り小、×:破損有り大)で評価した。得られた結果を表7に示す。
Figure 0005170512
表7から、本発明の試作品の断熱材は、ガラスウール断熱材と同レベルで100%の防蟻性はないものの、相応の防蟻性を示した。従って、防蟻性を有する泡ガラスとの併用や防蟻剤を部分的にコートすることで効果的な防蟻対策が可能と判断された。
(比較例9)
また、表2に示す試作品のNo. 4(構成素材:A−2、結合材:Eタイプ、厚み:50mm、密度:55Kg/m)の断熱材について施工性評価を行った。
(i)試作品No. 4の密度55Kg/m3の断熱材と、(ii)密度16Kg/m3の市販ガラスウール断熱材とにより、厚み50〜100mmで、北海道伊達市および帯広市の木造軸組の戸建住宅4棟(規模、約200m2、2階建)で断熱施工をして、施工性(作業性、施工スピード、廃材処理)と居住性(断熱性、防音性、シックハウス対策)について評価した。工務店および施主による評価を表8にまとめた。
Figure 0005170512
表8の本発明の断熱材とガラスウール断熱材の施工性、居住性の評価比較から、本発明の試作品の断熱材はガラスウール断熱材と比較し、施工性、居住性とも優れるとの評価を得た。
上記本発明の第2の実施例に係るフェルト状生分解性断熱材を成型する方法について、以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例2)
図4に示すように、ステップS31で、トド松(木質:A)をチップ片に加工し、ステップS32で、タイプ2の処理剤(ホウ酸10wt%、炭酸カリウム1wt%、リン酸水素二アンモニウム15wt%の水溶液)に加え、ポリジメチルシロキサン撥水剤を0.5wt%追添加して、難燃防蟻処理する。難燃防蟻処理された木質原料に、ステップS33で、繊維状生分解性結合材E(繊維状結合材のタイプ2(繊度5dtex、カット長20mmの熱水可溶性のポバール繊維)と繊維状結合材のタイプ3(繊度3dtex、 カット長20mmの生分解性熱融着ポリオレフィン複合繊維)との重量比を1:1とした繊維状結合材)を投入し、難燃防蟻処理された木質原料と繊維状生分解性結合材Eとの重量比が50:50となるよう配合した原料Mと、難燃防蟻処理された木質原料と繊維状生分解性結合材Eとの重量比が80:20となるよう配合した原料Nとをそれぞれ用意し、それぞれの原料M、N毎にカーディングマシンで混合解繊処理した。次に、ステップS34で、それぞれ解繊処理された原料M、Nを別々にエアーレイド乾式抄造装置に投入し、乾式抄造し、ステップS35でマットフォーミングし、厚み5mm、坪量750g/mのマットMt、Ntをそれぞれ成形した。
次に、得られた二種のマットMt、Ntをそれぞれ、ステップS36でダブルコンベヤに搬送して乾式圧縮成形して厚さ3mmに成形し、ステップS37でスチーム加湿と熱風加熱よる湿潤接着と熱融着接着を行い、さらに、ステップS38で市販の生分解性不織布(坪量50g/m2)を積層しニードルパンチ加工してフェルトMf、Nfを製造した。得られたフェルトMf、Nfの性能を表9に示す。
Figure 0005170512
表9より、本発明のフェルト状生分解性断熱材の性能は、マットやボードと異なり、ロール巻きが良好な断熱防音フェルトを製造することができた。
(実施例3)
上記実施例に基づいて製造されたフェルトMfに対し、3次元成型の可能性を探るため凹凸形状や曲面形状の成形加工テストを行った。テストはフェルトMfに対し、温度70〜150℃、プレス圧1〜10Kgf/cmの低圧でプレスを行った(図4のステップS39参照)。その結果、低圧で湿潤接着、熱融着接着による成形ができ、立体形状の加工が可能で スタンパブル成形性を有することが確認された。このため、このようにスタンパブル成形を行うことができるので、断熱防音性を有する成形素材としての適性が確認され、自動車内装天井材やフロアーインシュレーター等に利用できることが判明した。
(比較例10)
また、表2に示す試作品のNo. 4(構成素材:A−2、結合材:Eタイプ、厚み:50mm、密度:55Kg/m)の断熱材について農業用マットとしての評価と自然分解性の評価を行った。
試作品のNo. 4の断熱材マットは 施肥成分としてN、P、K、Bを含有し、DIN38409、EPA610、DIN−EN120に基く環境汚染物質は検出されなかった。
また、米、麦等の穀類や、トマト、きゅうり、ナス等の果実野菜、ごぼう、ジャガイモ等の根菜の育苗マット、施肥マットとして使用したところ、連作障害もなく植物の生育、収穫は良好であった。さらに、マットは、3ヶ月から4ヶ月で 土中で自然に分解し、土壌微生物の活動にマイナスの因子がないことも確認できた。
このように、本発明によれば、繊維状の素材からなる混合物から、乾式プロセス、半乾式プロセスにより、密度30〜300Kg/m3の低密度のマット、ボード、フェルトを製造することができ、それらは外観平滑性、柔軟性、弾力性、ハンドリング性の良い品質を有している。
なお、上記第1の実施例では、ステップS3で難燃防蟻処理されたチップ片には、粉末状の生分解性結合材を所定の重量比で投入するようにしているがこれに限られるものではなく、ステップS3で粉末状生分解性結合材を投入しないで、ステップS5で、分散混合する際に繊維状生分解性結合材を投入するようにしてもよい。また、ステップS4の工程で、リファイナーで解繊加工され生分解性結合材が投入され難燃防蟻処理された木質繊維を、必要に応じて含水率が15wt%前後に調湿されるよう含水率をコントロールするようにしているが、この前工程であるステップS3で、適切な含水率であれば、ステップS4の調湿工程を省略してもよい。さらに、ステップS9の工程で、搬送されてきた半乾式成形されたマットを加熱して乾燥させるとともに、マット両面のうち少なくともいずれか一方を所定の密度に高めるよう圧縮して繊維内密度を異ならせるようにしているがこれに限られるものではなく、繊維内密度を均一にしてもよいことはいうまでもない。また、上記第2の実施例では、ステップS27で、半乾式成形された繊維両面のうち、少なくともいずれか一方に繊維目付100g/m以下の生分解性不織布を重ねてニードルパンチ加工を行うようにしているが、これに限られるものではなく、ステップS27の工程を省略し、半乾式成形された繊維原料を調湿養生して最終製品としてもよい。
マット、ボードは断熱性、熱緩和特性と弾力性を反映した気密断熱施工ができ、これにより建物の高断熱化が可能となり、ガラスウール断熱材、ロックウール断熱材、発泡プラスチック断熱材以上の断熱効果、省エネ効果を発揮する。また難燃処理された木質繊維は、防火性、耐火性と相応の防蟻性を発揮する。防火性、耐火性に関しては、断熱材の表面は火熱を受けても炭化断熱層を形成するため、ガラスウールと比較にならない防火性、耐火性を発揮し、石膏ボードとの複合部材で準耐火以上の性能を有し、新たな耐火断熱建材としての利用できる。さらに、断熱材の弾力性、柔軟性を反映し、吸音、遮音、衝撃音に関する防音性、特に低周波での防音効果が高い性能を発揮する。また。本発明によれば、天然素材でかつ生分解性素材で構成されているため、廃材となった断熱材は自然に放置しても環境汚染の虞がなく、しかも、肥料成分の働きを兼ねるので、植物の育苗マット、施肥マットとして利用でき、環境浄化、間伐材の利用も含め森林の活性化にも効果を発揮することになる。
本発明の第1の実施例に係る生分解性断熱材の製造の工程を示すフローチャートである。(実施例1) 本発明の第2の実施例に係る生分解性断熱材の製造の工程を示すフローチャートである。(実施例2) (A)ないし(C)はそれぞれ、図1の工程により製造された生分解性断熱材の耐火性能と遮音性能との評価を行うために製作された間仕切壁の説明図である。 本発明の第2の実施例の変形例に係る生分解性断熱材の製造の工程を示すフローチャートである。(実施例2)(実施例3)
符号の説明
A〜C 木質繊維
タイプ1、2 肥料成分を兼ねた難燃防蟻剤
D、E 生分解性結合材

Claims (23)

  1. 主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/mとする生分解性断熱材の製造方法であって、
    木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、チップ加工された原料に難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、難燃防蟻処理された原料を解繊する第3の工程と、解繊された繊維原料に繊維状の生分解性結合材を投入して分散させ混合させる第4の工程と、分散混合された繊維を集綿し面状に積層して乾式成形する第5の工程と、成形された繊維を圧縮して乾式成形する第6の工程と、圧縮された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第7の工程と、加湿されて加熱成形された繊維を乾燥させて加熱し乾式成形する第8の工程とを有することを特徴とする生分解性断熱材の製造方法。
  2. 第3の工程で、粉末状生分解性結合材を所定の重量比で投入することを特徴とする請求項に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  3. 第3の工程後、解繊処理された原料の含水率を15wt%前後となるよう含水率をコントロールして調湿することを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  4. 第8の工程後、乾燥されて加熱成形された繊維を調湿養生することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  5. 第8の工程で、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させるとともに高圧で圧縮することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  6. 第8の工程で、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させるとともに、繊維両面のうち少なくともいずれか一方を所定の密度に高めるよう圧縮し繊維内密度を異ならせることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  7. 主要成分を、木質繊維を50〜90重量%、肥料成分を兼ねた難燃性防蟻剤を2〜30重量%および生分解性結合材を5〜30重量%とするとともに、この断熱材の密度を30〜300Kg/mとする生分解性断熱材の製造方法であって、
    木質繊維材料をチップ加工する第1の工程と、難燃防蟻剤を投入して難燃防蟻処理する第2の工程と、難燃防蟻処理された原料に繊維状の生分解性結合材を投入して混合し、解繊する第3の工程と、解繊された原料に抄造処理を行い、フェルト状に成形する第4の工程と、フェルト状に成形された繊維を加湿して加熱し半乾式成形する第5の工程とを有することを特徴とする生分解性断熱材の製造方法。
  8. 第5の工程後、乾燥されて加熱成形された繊維を調湿養生することを特徴とする請求項に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  9. 第5の工程後、乾燥されて加熱成形された繊維両面のうち少なくともいずれか一方に生分解性不織布を重ねてニードルパンチ加工を行うことを特徴とする請求項7または8に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  10. 第4の工程の抄造処理が、繊維原料を空気中に分散させて乾式抄造するエアーレイド処理により行われることを特徴とする請求項に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  11. 第4の工程により得られたフェルト状繊維を、単層または複層に積層し、第5の工程で、単層または複層に成形されたフェルト状繊維を重ね合わせ加湿して加圧し半乾式成形し、第5の工程後、半乾式成形された繊維を加熱して乾燥させ乾式成形し、立体形状にプレス加工することを特徴とする請求項7ないし10のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法。
  12. 製造された生分解性断熱材を所望の寸法にカットし、成型体に成形することを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の成型体の製造方法。
  13. 木質繊維は、木材チップまたは靱皮チップのうち少なくともいずれか一方を蒸煮して解繊した平均繊維径1mm以下でかつ平均繊維長20mm以下の繊維であることを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法により製造される生分解性断熱材
  14. 木材チップは、針葉樹、広葉樹、間伐材または廃棄木材のうちいずれかを用いることを特徴とする請求項13に記載の生分解性断熱材の製造方法により製造される生分解性断熱材
  15. 難燃防蟻剤は、ホウ素系化合物とリン系化合物との混合物からなることを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法により製造される生分解性断熱材
  16. 生分解性結合材は、熱水可溶性ポリビニルアルコール、澱粉、カルボキシメチルセルロースまたはキトサンのうち少なくともいずれか1を含む素材と、生分解性ポリオレフィン、ポリエステルまたはカプロラクタムのうち少なくともいずれか1を含む素材とからなり、平均繊維径が1mm以下か、繊度が10dtex以下かまたは繊維長が20mm以下の繊維であることを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の製造方法により製造される生分解性断熱材
  17. 請求項13ないし16のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を、マット状、ボード状またはフェルト状のうちいずれか1に成型してカットしてなることを特徴とする生分解性断熱材の成型体。
  18. 生分解性断熱材の成型体を、中心層とこの中心層の両外側層のうち少なくともいずれか一方を中心層と密度を異ならせて構成したことを特徴とする請求項17に記載の生分解性断熱材の成型体。
  19. 成型体の外側層を中心層に対して高密度に加工し、成型体の平均密度を100ないし300Kg/mとしたことを特徴とする請求項18に記載の生分解性断熱材の成型体。
  20. 成型体には、側面に凹または凸の実加工が施されることを特徴とする請求項17ないし19のうちいずれか1に記載の生分解性断熱材の成型体。
  21. 成型体をフェルト状に成型して構成し、このフェルト状成型体を、繊維目付100g/m以下の生分解性不織布を片面または両面のいずれかに重ねてニードルパンチ加工したことを特徴とする請求項17に記載の生分解性断熱材の成型体。
  22. 請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を所定の寸法にカットして植物育成床に用いることを特徴とする植物育成材。
  23. 請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の方法により製造される生分解性断熱材を所定の寸法にカットして施肥マットに用いることを特徴とする肥料材。
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