以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動工具10は、一台で4種類の動作モードでの動作が可能な、充電式の4モードインパクトドライバとして構成されている。
より具体的には、電動工具10は、本体ハウジング14と、バッテリパック15とを備えている。本体ハウジング14は、半割ハウジング11,12を組み付けることにより形成されており、当該本体ハウジング14の下方には、ハンドル部13が延設されている。バッテリパック15は、このハンドル部13の下端に離脱可能に装着されている。
本体ハウジング14の後部には、当該電動工具10の動力源となるモータ30(図2,図4等参照)を収納するモータ収納部16が設けられており、モータ収納部16よりも前方には、複数種類の伝達機構からなる駆動力伝達部45(図2参照)が収納されている。
そして、本体ハウジング14の先端には、工具要素の一例である、図示しない工具ビット(例えばドライバビット)を上記伝達機構の先端に着脱可能なスリーブ17が突設されている。
また、本体ハウジング14におけるハンドル部13の上端側には、モータ30を回転駆動させて電動工具10を動作させるために当該電動工具10の使用(操作)者がハンドル部13を握った状態で操作可能な、トリガスイッチ18が設けられている。
更に、本体ハウジング14の上面側には、電動工具10を何れかの動作モードに設定するために使用者によりスライド(変位)操作されるモード切替レバー19が設けられている。
モード切替レバー19は、本体ハウジング14の上面に形成されたスライド枠20内を左右方向にスライド可能になっている。また、その左右方向において、本実施形態の電動工具10が有する4つの動作モードの各々に対応するように予め4つの位置が規定されており、使用者が何れかの位置にセット(スライド操作)することで、その位置に対応した動作モードに設定できるよう構成されている。
本実施形態では、動作モードとして、インパクトモード(回転+回転方向の打撃)、ドリルモード(回転のみ)、クラッチモード(回転+電子クラッチ)、震動ドリルモード(回転+軸方向の打撃)の4つを有している。
そして、図1に示すように、本体ハウジング14の上面における、スライド枠20の前方側には、これら4つの動作モード毎に、それぞれ対応した位置にその動作モードを示す文字と丸印が形成されている。具体的には、左側から順に、インパクトモードに対応した設定位置を示す「インパクト」の文字と丸印、ドリルモードに対応した設定位置を示す「ドリル」の文字と丸印、クラッチモードに対応した設定位置を示す「クラッチ」の文字と丸印、及び震動ドリルモードに対応した設定位置を示す「震動」の文字と丸印が、形成されている。
そして、使用者がモード切替レバー19をスライド操作し、モード切替レバー19の上面に形成された三角形状の矢印の先端を、上記4つの設定位置の丸印に合わせる(セットする)ことで、当該電動工具10をその設定位置に対応した動作モードで動作させることができる。
また、ハンドル部13の下端側には、所定の動作モードにおける制御設定値の設定変更及び表示を行うための、操作・表示パネル21が設けられている。この操作・表示パネル21は、使用者が制御設定値を設定変更するために操作される2つの設定切替スイッチ23,24(設定切替downスイッチ23,設定切替upスイッチ24)と、これら各設定切替スイッチ23,24により設定変更された制御設定値(即ち現在の制御設定値)が表示される表示LED22と、を備えている。
尚、本実施形態の電動工具10では、4つの動作モードのうち、クラッチモード及びインパクトモードにおいて、それぞれ所定の設定値を使用者が設定変更可能に構成されている。具体的には、クラッチモードにおいてはトルク設定値を9段階に設定可能に構成され、インパクトモードにおいてはモータ30の最大回転数(最高回転速度)を3段階に設定可能に構成されているのだが、その詳細については後で説明する。また、本実施形態において「回転数」とは、単位時間あたりの回転数、即ち回転速度を意味する。
次に、モータ30の回転駆動力をスリーブ17に伝達する(延いては工具ビットに伝達する)ための伝達機構の概要について、図2を用いて説明する。
図2に示すように、電動工具10の内部には、伝達方法が異なる3種類の伝達機構からなる駆動力伝達部45が設けられている。そして、使用者がモード切替レバー19をスライド操作して、4つの設定位置のうち何れかにセットすると、そのスライド操作と連動して、モータ30の回転駆動力をスリーブ17に伝達するための機械的な伝達機構も、3種類の伝達機構のうちそのセットされた設定位置に対応した伝達機構に切り替わる。
本実施形態では、機械的な伝達機構として、モータ30の回転を減速してスリーブ17へ伝達するドリル機構55と、モータ30の回転を減速してスリーブ17へ伝達すると共に、モータ30の回転駆動力を元にスリーブ17へその回転方向への間欠的な打撃を付与するインパクトドライバ機構56と、モータ30の回転を減速してスリーブ17へ伝達すると共に、モータ30の回転駆動力を元にスリーブ17へその軸方向(回転面に垂直な方向)への間欠的な打撃を付与する震動ドリル機構57と、を備えている。尚、モータ30の回転数と同じ回転数で工具ビットを回転させたい場合は、モータ30の回転を減速させずにそのまま工具ビットへ伝達できるよう構成すればよい。
このような構成において、使用者が、インパクトモードに設定すべく、モード切替レバー19をスライド操作して「インパクト」の設定位置にセットすると、駆動力伝達部45においてモータ30の回転駆動力をスリーブ17に伝達する伝達機構もそのスライド操作に連動して切り替わり、図2(a)に示すようにインパクトドライバ機構56に切り替わる。
尚、インパクトドライバ機構56は、例えば、スピンドルと、ハンマと、アンビルとを備える。スピンドルは、減速機構を介して回転され、ハンマは、スピンドルと共に回転し、且つ、軸方向へ移動可能であり、アンビルは、ハンマの前方に配設され、当該アンビルの先端に工具ビットが取り付けられる。
より具体的には、インパクトドライバ機構56は次のように構成されている。即ち、インパクトドライバ機構56では、モータ30の回転に伴ってスピンドルが回転すると、ハンマを介してアンビルが回転し、スリーブ17を回転(延いては工具ビットを回転)させる。その後、工具ビットによるねじ締めが進みアンビルへの負荷が高まると、ハンマが、コイルばねの付勢力に抗して後退し、アンビルから外れる。そして、ハンマが、スピンドルと共に回転しつつコイルばねの付勢力で前進してアンビルに再係合することで、アンビルに間欠的な打撃が加えられ、これにより増し締め等を行うことができる。尚、このようなインパクトドライバ機構56は、例えば、上述した特許文献1や特開2006−218605号公報などに開示されているため、ここではその詳細な説明は省略する。
また、使用者が、ドリルモード又はクラッチモードに設定すべく、モード切替レバー19をスライド操作して「ドリル」又は「クラッチ」の設定位置にセットすると、駆動力伝達部45においてモータ30の回転駆動力をスリーブ17に伝達する伝達機構もそのスライド操作に連動して切り替わり、ドリル及びクラッチの何れの場合も、図2(b)に示すようにドリル機構55に切り替わる。このドリル機構55は、モータ30の回転をそのまま又は減速してスリーブ17へ伝達する機構であり、その具体的構成は周知であるため、ここではその詳細説明は省略する。
また、使用者が、震動ドリルモードに設定すべく、モード切替レバー19をスライド操作して「震動」の設定位置にセットすると、駆動力伝達部45においてモータ30の回転駆動力をスリーブ17に伝達する伝達機構もそのスライド操作に連動して切り替わり、図2(c)に示すように震動ドリル機構57に切り替わる。
震動ドリル機構57は、具体的には次のように構成されている。即ち、モータ30の回転駆動力で回転するスピンドルが、その軸方向へ微動可能に設けられると共に、当該スピンドルに外装されたコイルバネ等の付勢手段によって、軸方向先端側へ付勢されている。また、スピンドルには当該スピンドルと一体回転する第一のクラッチが固設されると共に、本体ハウジング14内には、第一のクラッチと対向するよう且つスピンドルが遊挿するように設けられた第二のクラッチが固設されている。そして、両クラッチの噛合により、スピンドルに軸方向への打撃(震動)動作が付与される。尚、このような震動ドリル機構57の具体的構成については、例えば、上述した特許文献1や特開2002−263930号公報などに開示されているため、ここではその詳細説明は省略する。
尚、図2に示した伝達機構の説明図は、モード切替レバー19のスライド操作によって伝達機構が切り替わることをイメージ的・概念的にわかりやすく説明するための概念図であって、実際には各機構55,56,57がそれぞれ個別単独で存在しているわけではない。
実際には、特許文献1に記載されているように、各機構55,56,57がそれぞれ、電動工具10の後端から先端にかけて(即ちモータ30からスリーブ17にかけて)概ねドリル機構55、インパクトドライバ機構56、震動ドリル機構57の順に直列的に配置されている。また、各機構55,56,57には、何れか2つ又は全てで共用される構成部品も含まれている。そして、モード切替レバー19のスライド操作によって各種の機械的な繋がりが切り替わることによって、結果として、モード切替レバー19の設定位置に応じた伝達経路にてモータ30の回転駆動力がスリーブ17へ伝達される。
但しもちろん、各機構55,56,57をそれぞれ個別単独に設け、モード切替レバー19のスライド操作によって何れかの機構に切り替わるような構成であってもよいことは言うまでもない。
一方、モード切替レバー19は、より詳しくは、図3に示すように、スライド部材50上に固定して形成されている。そのため、モード切替レバー19がスライド操作されると、スライド部材50も、モード切替レバー19と一体的に左右方向に移動することとなる。
更に、スライド部材50の下部(電動工具10の内部側)には、このモード切替レバー19のスライド方向(左右方向)に所定距離離れて2つの突部51,52(第1突部51,第2突部52)が設けられている。そのため、モード切替レバー19がスライド操作されると、各突部51,52も、モード切替レバー19及びスライド部材50と一体的に左右方向に移動することとなる。
そして、各突部51,52の下側には、2つのモード切替スイッチ37,38(モード切替第1スイッチ37、モード切替第2スイッチ38)が、モード切替レバー19のスライド方向(左右方向)に所定距離離れて設けられている。これら各モード切替スイッチ37,38の離間距離は、各突部51,52の離間距離と同じである。
各モード切替スイッチ37,38は、いずれも、対応する可動部(第1可動部47、第2可動部48)の上下方向の位置によって接点が接触又は離間するよう構成された周知の有接点スイッチ(マイクロスイッチ)である。これら各モード切替スイッチ37,38が有する各可動部47,48は、それぞれ対応するモード切替スイッチにおいてその上面側(即ち各突部51,52側)に突出するように設けられている。
通常時は、図示しない付勢部材の付勢力によって上方向へ突出した状態とされており、このとき、内部の接点は離れて電気的にはOFFの状態となる。一方、各可動部47,48がその上側から下方向への荷重を受けることによって下方向へ押されると、内部の接点が接触して電気的にはONの状態となる。
そして、各モード切替スイッチ37,38は、図3に示すように、使用者によるモード切替レバー19のスライド操作と一体的に移動する各突部51,52により、その位置に応じて、即ち設定されている動作モードに応じて、ON又はOFFされる。そして、各モード切替スイッチ37,38からはそれぞれ、自身の状態(ON又はOFF)に応じた二値信号が出力される。即ち、ONの場合は、ONであることを示す二値信号(例えば数V(ハイレベル)の電圧;Hレベル信号)が出力され、OFFの場合は、OFFであることを示す二値信号(例えば0V(ローレベル)の電圧;Lレベル信号)が出力される。
具体的には、使用者が、インパクトモードに設定すべく、モード切替レバー19をスライド操作して「インパクト」の設定位置にセットすると、モード切替レバー19の下部側に形成された各突部51,52もそのスライド操作に連動して移動し、図3(a)に示すように、いずれも、各モード切替スイッチ37,38の各可動部47,48から離れた状態となる。
そのため、インパクトモードにおいては、各モード切替スイッチ37,38はいずれも接点が離れたOFFの状態となる。そして、各モード切替スイッチ37,38からは、OFFであることを示す二値信号(Lレベル信号)が出力される。これにより、各モード切替スイッチ37,38からは、全体として、両者の状態を示す2ビットのデジタル信号が出力されることとなる。つまり、例えばモード切替第1スイッチ37からの二値信号を上位ビット、モード切替第2スイッチ38からの二値信号を下位ビットとすると、インパクトモードの場合、「00」のデジタル信号が出力されることとなる。そして、そのデジタル信号は、後述するように、電動工具10内部のコントローラ31(図4参照)に入力される。
また、使用者が、ドリルモードに設定すべく、モード切替レバー19をスライド操作して「ドリル」の設定位置にセットすると、モード切替レバー19の下部側に形成された各突部51,52もそのスライド操作に連動して移動し、図3(b)に示すように、第2突部52がモード切替第1スイッチ37の第1可動部47に接触してこれを押下させた状態となる。
そのため、ドリルモードにおいては、モード切替第1スイッチ37は接点が接触したONの状態となり、モード切替第2スイッチ38は接点が離れたOFFの状態となる。そして、モード切替第1スイッチ37からはONであることを示す二値信号(Hレベル信号)が出力され、モード切替第2スイッチ38からはOFFであることを示す二値信号(Lレベル信号)が出力される。これにより、各モード切替スイッチ37,38からは、全体として、「10」のデジタル信号が出力され、コントローラ31(図4参照)に入力されることとなる。
また、使用者が、クラッチモードに設定すべく、モード切替レバー19をスライド操作して「クラッチ」の設定位置にセットすると、モード切替レバー19の下部側に形成された各突部51,52もそのスライド操作に連動して移動し、図3(c)に示すように、いずれも、各モード切替スイッチ37,38の各可動部47,48に接触してこれらを押下させた状態となる。
そのため、クラッチモードにおいては、各モード切替スイッチ37,38はいずれも接点が接触したONの状態となる。そして、各モード切替スイッチ37,38からは、ONであることを示す二値信号(Hレベル信号)が出力される。これにより、各モード切替スイッチ37,38からは、全体として「11」のデジタル信号が出力され、コントローラ31(図4参照)に入力されることとなる。
また、使用者が、震動ドリルモードに設定すべく、モード切替レバー19をスライド操作して「震動」の設定位置にセットすると、モード切替レバー19の下部側に形成された各突部51,52もそのスライド操作に連動して移動し、図3(d)に示すように、第1突部51がモード切替第2スイッチ38の第2可動部48に接触してこれを押下させた状態となる。
そのため、震動ドリルモードにおいては、モード切替第2スイッチ38は接点が接触したONの状態となり、モード切替第1スイッチ37は接点が離れたOFFの状態となる。そして、モード切替第1スイッチ37からはOFFであることを示す二値信号(Lレベル信号)が出力され、モード切替第2スイッチ38からはONであることを示す二値信号(Hレベル信号)が出力される。これにより、各モード切替スイッチ37,38からは、全体として、「01」のデジタル信号が出力され、コントローラ31(図4参照)に入力されることとなる。
このように、本実施形態の電動工具10では、4つの動作モード毎に、各動作モードを示すデジタル信号を生成してコントローラ31に入力するよう構成されている。また、デジタル信号を生成するために、動作モードの数よりも少ない数(本実施形態では動作モード数の半数である2つ)のモード切替スイッチ37,38を用いており、各々の状態に応じた二値信号の組み合わせによって、動作モードに応じたデジタル信号を生成するようにしている。
次に、モータ30の回転駆動を制御するために電動工具10の内部に設けられている駆動装置について、図4を用いて説明する。図4に示すように、駆動装置は、バッテリパック15に内蔵されたバッテリ26からの直流電力をモータ30に供給することによってモータ30を回転駆動させるためのものである。バッテリ26は、所定の直流電圧を発生する、図示しない複数の二次電池セルが直列に接続された構成となっている。
より具体的には、駆動装置は、モータ駆動回路33と、ゲート回路32と、コントローラ31と、レギュレータ36と、を備えている。また、上述した、各モード切替スイッチ37,38、操作・表示パネル21、及びトリガスイッチ18も、駆動装置を構成するものである。
本実施形態のモータ30は、3相ブラシレス直流モータとして構成されており、モータ30における端子U,V,Wが、モータ駆動回路33を介して、バッテリパック15(より具体的にはバッテリ26)に接続されている。端子U,V,Wはそれぞれ、モータ30の図示しない回転子を回転させるためにモータ30に設けられた図示しない3つのコイルのうちのいずれか1つに接続されている。
モータ駆動回路33は、モータ30の端子U,V,Wの各々とバッテリ26の正極側とを接続する、いわゆるハイサイドスイッチとしての3つのスイッチング素子Q1〜Q3と、同じくモータ30の端子U,V,Wの各々とバッテリ26の負極側とを接続する、いわゆるローサイドスイッチとしての3つのスイッチング素子Q4〜Q6とを含む、ブリッジ回路として構成されている。本実施形態におけるスイッチング素子Q1〜Q6は、周知のMOSFETである。
ゲート回路32は、コントローラ31に接続されている一方で、スイッチング素子Q1〜Q6の各ゲート及びソースに接続されている。ゲート回路32は、スイッチング素子Q1〜Q6の各々のオン/オフを制御するためにコントローラ31から当該ゲート回路32に入力される制御信号に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q6の各々をオン/オフするためのスイッチング電圧を各スイッチング素子Q1〜Q6のゲート−ソース間に印加して、各スイッチング素子Q1〜Q6をオン/オフする。
レギュレータ36は、バッテリ26が生成する直流電圧(例えば14.4VDC)を降圧して、所定の直流電圧である制御電圧Vcc(例えば5VDC)を生成し、生成した制御電圧Vccを、コントローラ31を含む、駆動装置内の所定の回路に印加している。
コントローラ31は、本実施形態では、一例として、いわゆるワンチップマイクロコンピュータとして構成されており、メモリ41のほか、CPU、入出力(I/O)ポート、A/D変換器、タイマなどを有している。メモリ41は、ROM、RAM、及び書換可能な不揮発性メモリ素子(例えばフラッシュROMやEEPROMなど)を含み、CPUが、メモリ41に記憶された各種プログラムに従って、各種処理を実行する。
コントローラ31には、上述の各モード切替スイッチ37,38と、操作・表示パネル21を構成する各設定切替スイッチ23,24及び表示LED22と、トリガスイッチ18と、モータ30に設けられた回転位置センサ34と、モータ30の通電経路に直列に挿入されたシャント抵抗35とが接続されている。
各モード切替スイッチ37,38からは、上述したように、モード切替レバー19の設定位置に応じた二値信号(Hレベル又はLレベル)が、両者全体として2ビットのデジタル信号として、コントローラ31に入力される。コントローラ31は、その入力されるデジタル信号に基づいて、当該電動工具10がどの動作モードに設定されているかを判断し、その判断結果に基づく制御方法にてモータ30を制御する。
本実施形態では、コントローラ31によるモータ30の制御方法として、図5に示すように、単速制御、インパクト制御、及び電子クラッチ制御の3種類が設定されており、コントローラ31は、動作モードがドリルモード又は震動ドリルモードに設定されている場合は単速制御を用い、動作モードがインパクトモードに設定されている場合はインパクト制御を用い、動作モードがクラッチモードに設定されている場合は電子クラッチ制御を用いる。
図5を用いて、各動作モードにおける電動工具10内の各部の動作状態等について、より具体的に説明する。
モード切替レバー19のスライド操作によって動作モードがドリルモードに設定されると、そのスライド操作に連動して、駆動力伝達部45における伝達機構がドリル機構55に切り替えられると共に、モード切替第1スイッチ37はONされてモード切替第2スイッチ38はOFFされ、これら各スイッチ37,38からは「10」のデジタル信号がコントローラ31に入力される。これにより、コントローラ31は、今設定されている動作モードがドリルモードであると判断し、モータ30を単速制御によって制御する。
単速制御とは、予め設定された最大回転数を上限として、使用者によるトリガスイッチ18の引き量(操作量)に応じた回転速度にてモータ30を回転させる制御方法である。
本実施形態のトリガスイッチ18は、より詳しくは、当該トリガスイッチ18が引かれているか否かを検出するための駆動開始スイッチと、当該トリガスイッチ18の引き量を検出するための、周知の可変抵抗器(例えば周知のポテンショメータ等)とを含んでいる。そして、トリガスイッチ18が引き操作されると、トリガスイッチ18からは、その引き量に応じた信号がコントローラ31に入力される。
そのため、コントローラ31は、単速制御においては、トリガスイッチ18から入力される信号、即ち引き量に応じた信号に基づき、その引き量に応じた回転数でモータ30が回転するよう、モータ30を制御する。コントローラ31は、この回転数の制御を、回転位置センサ34からの信号を用いて行う。本実施形態の回転位置センサ34は、ホール素子を含み、モータ30の回転子の回転位置が所定の回転位置に達する毎(即ち、モータ30が所定量回転する毎)に、コントローラ31へパルス信号を出力するよう構成されている。
そこでコントローラ31は、回転位置センサ34からのパルス信号に基づいてモータ30の実際の回転位置及び回転数を算出し、算出した回転数が、トリガスイッチの引き量に応じて定まる設定回転数と一致するように、ゲート回路32とモータ駆動回路33とを介して、モータ30を制御する。
より具体的には、コントローラ31は、設定されている最大回転数を上限として、トリガスイッチ18の引き量が大きいほど回転数が大きくなるように、ゲート回路32及びモータ駆動回路33を介してモータ30の端子U,V,Wの各々に印加される電圧(駆動電圧)のデューティ比を設定する。本実施形態では、一例として、トリガスイッチ18の引き量に比例して設定回転数が増加し、引き量が最大のときに最大回転数となるように制御される。
そのため、動作モードがドリルモードに設定されている場合は、モータ30が単速制御され、その単速制御によるモータ30の回転がドリル機構55を介してスリーブ17へ伝達されて、これにより工具ビットがドリルモードとして動作することとなる。
また、モード切替レバー19のスライド操作によって動作モードがクラッチモードに設定されると、そのスライド操作に連動して、駆動力伝達部45における伝達機構がドリル機構55に切り替えられると共に、モード切替第1スイッチ37及びモード切替第2スイッチ38は何れもONとなり、これら各スイッチ37,38からは「11」のデジタル信号がコントローラ31に入力される。これにより、コントローラ31は、今設定されている動作モードがクラッチモードであることを判断し、モータ30を電子クラッチ制御によって制御する。
電子クラッチ制御とは、基本的には、単速制御と同様、トリガスイッチ18の引き量に応じた回転数でモータ30が回転するように制御するものであるが、その一方で、工具ビットの回転トルク(スリーブ17の回転トルク)を監視し、回転トルクが所定のトルク設定値以上となった場合にはモータ30の回転を停止させる制御である。
本実施形態では、工具ビットの回転トルクを直接は検出せず、モータ30の出力トルクを検出することにより、間接的に工具ビットの回転トルクを検出するようにしている。具体的には、モータ30の通電経路に設けられたシャント抵抗35における、接地電位側とは反対側の一旦の電圧がコントローラ31に入力されており、コントローラは、このシャント抵抗35から入力される電圧に基づいて、モータ30の出力トルクを検出する。
周知の通り、モータの出力トルクはモータに流れる電流に比例するため、モータに流れる電流の値を検出できれば、モータの出力トルクを検出でき、延いては工具ビットの回転トルクを検出することができる。そして、モータに流れる電流は、その通電経路に挿入されたシャント抵抗の両端の電圧から算出することができる。そこで本実施形態では、モータ30の通電経路にシャント抵抗35を挿入し、そのシャント抵抗35の両端の電圧を検出するようにしている。
コントローラ31は、シャント抵抗35からの検出値に基づいて工具ビットの回転トルクを監視し、回転トルクが所定のトルク設定値以上となった場合には、モータ30の回転を停止させる。
つまり、従来の電動工具におけるクラッチモードは、機械的な伝達機構によってクラッチモードとしての機能を実現していたのに対し、本実施形態の電動工具10におけるクラッチモードは、機械的な伝達機構についてはドリルモードと同じドリル機構55を用い、単にモータ30の回転をそのまま或いは減速して工具ビットに伝えるだけにしている。
そして、クラッチモードとしての特徴的な動作、即ちトルク設定値に達したらモータ30の回転を工具ビットに伝えないようにする(つまり工具ビットの回転を停止させる)動作は、電気的な制御方法によって実現している。即ち、ドリルモードの場合の単速制御は、トリガスイッチ18が引かれている限りモータ30を動作させ続けるが、クラッチモードの場合の電子クラッチ制御は、回転トルクがトルク設定値に達したならば、それより大きい回転トルクで工具ビットを回転させないよう、電子クラッチ機能を作動させる。即ち、たとえトリガスイッチ18が引かれていてもモータ30の回転を停止させる。これにより、機械的な伝達機構はドリル機構55でありながら、工具全体として、従来の機械的機構によるクラッチモードと同等の動作が実現される。
更に、本実施形態の電子クラッチ制御は、使用者がトルク設定値を設定変更可能に構成されている。即ち、本実施形態の電子クラッチ制御は、図6(a)に例示するように、トルク設定値が、トルク設定値1(1[N・m])〜トルク設定値9(9[N・m])まで、1[N・m]刻みで9段階に設定されており、使用者は、何れかのトルク設定値に設定することができる。尚、上記各トルク設定値の具体的数値(1[N・m]〜9[N・m])はあくまでも一例である。
また、本実施形態の電子クラッチ制御では、9段階の各トルク設定値毎に、個別に最大回転数が設定されている。即ち、図6(a)に示すように、トルク設定値1に対しては最大回転数が所定の回転数n1に設定され、そこからトルク設定値が2,3,4・・・と段階的に大きくなるに従って、対応する最大回転数もそれぞれn2,n3,n4・・・と同じ幅で大きくなっていき、最も大きいトルク設定値9において最大回転数も最も大きいn9となっている。
そのため、電子クラッチ制御において、使用者がトルク設定値をトルク設定値1〜9の何れかに設定すると、コントローラ31は、その設定されたトルク設定値に対応して設定されている最大回転数を上限として、既述の単速制御と同様の制御を行う。そして、そのように単速制御と同様の制御を行いつつ、検出された回転トルクがトルク設定値以上となった場合は、たとえトリガスイッチ18が引かれていても、またそのときの回転数いかんにかかわらず、モータ30の回転を強制的に停止させる。
尚、電子クラッチ制御における、使用者によるトルク設定値の設定は、操作・表示パネル21によって可能となるのだが、この操作・表示パネル21の構成、操作方法、表示内容等については、後で説明する。
また、モード切替レバー19のスライド操作によって動作モードがインパクトモードに設定されると、そのスライド操作に連動して、駆動力伝達部45における伝達機構がインパクトドライバ機構56に切り替えられると共に、モード切替第1スイッチ37及びモード切替第2スイッチ38は何れもOFFとなり、これら各スイッチ37,38からは「00」のデジタル信号がコントローラ31に入力される。これにより、コントローラ31は、今設定されている動作モードがインパクトモードであることを判断し、モータ30をインパクト制御によって制御する。
インパクト制御とは、基本的には単速制御と同様の制御方法であり、トリガスイッチ18の引き量に応じた設定回転数でモータ30が回転するように制御するものである。そして、上述した単速制御と異なるのは、単速制御では最大回転数が予め固定値に設定されていたのに対し、インパクト制御では、最大回転数の設定値を使用者が設定変更可能である点にある。
即ち、本実施形態のインパクト制御は、図6(b)に例示するように、最大回転数を、所定の回転数N1である低速、その低速回転数N1よりも所定量多い回転数N2である中速、及びその中速回転数N2よりも所定量多い回転数N3である高速、の3段階のうち何れか1つに切り替え設定可能となっている。このように最大回転数を設定変更可能に構成されていること以外は、上述した単速制御と同じであり、設定された最大回転数を上限として、トリガスイッチ18の引き量に応じて(本例では比例して)回転数が大きくなるように制御される。
尚、インパクト制御における、使用者による最大回転数の設定は、電子クラッチ制御におけるトルク設定値の設定と同様、操作・表示パネル21によって可能となるのだが、この操作・表示パネル21の構成、操作方法、表示内容等については、後で説明する。
また、モード切替レバー19のスライド操作によって動作モードが震動ドリルモードに設定されると、そのスライド操作に連動して、駆動力伝達部45における伝達機構が震動ドリル機構57に切り替えられると共に、モード切替第1スイッチ37はOFFとなってモード切替第2スイッチ38はONとなり、これら各スイッチ37,38からは「01」のデジタル信号がコントローラ31に入力される。これにより、コントローラ31は、今設定されている動作モードが震動ドリルモードであることを判断し、モータ30を単速制御によって制御する。
ここで、インパクトモード(インパクト制御)及びクラッチモード(電子クラッチ制御)において、上述した制御設定値(トルク設定値や最大回転数)を設定変更するために使用者により操作等される操作・表示パネル21について、具体的に説明する。
図4に示すように、また図1でも示したように、操作・表示パネル21は、使用者により操作される2つの設定切替スイッチ23,24(設定切替downスイッチ23,設定切替upスイッチ24)と、現在設定されている動作モードがインパクトモード又はクラッチモードである場合にその設定されている動作モードにおいて設定可能な制御設定値の現在値が表示される表示LED22と、を備えている。
各設定切替スイッチ23,24は、コントローラ31に接続されており、各設定切替スイッチ23,24の操作内容はコントローラ31に伝送される。これにより、コントローラ31は、動作モードがインパクトモード又はクラッチモードに設定されている場合に、当該動作モードにおいて現在設定されている制御設定値を表示LED22にて表示する。
尚、インパクトモード及びクラッチモードにおいてそれぞれ設定変更可能な制御設定値の最新の値は、メモリ41に記憶されている。そして、その記憶内容は、電動工具10からバッテリパック15を取り外してコントローラ31に電源が供給されなくなっても保持される。
各設定切替スイッチ23,24は、具体的には、図7(及び図1)に示すような形状となっており、使用者が押し操作することで、設定変更可能な制御設定値を増減できるよう構成されている。尚、各設定切替スイッチ23,24は、インパクトモード及びクラッチモードの双方で共用されるものである。
表示LED22は、具体的には、図7(及び図1)に示すように、第1LED22a〜第7LED22gの計7個のLEDからなる、周知の7セグメントLEDにより構成されたものである。この表示LED22には、インパクトモード又はクラッチモードに設定されているときに、その設定されている動作モードにおいて使用者が設定変更可能な制御設定値の現在値が表示されている。
尚、他のドリルモード及び震動ドリルモードにおいては、使用者により設定変更可能な制御設定値はないため、これらドリルモード及び震動ドリルモードの何れかに設定されている場合は、表示LED22は消灯して何も表示されない。
また、この表示LED22も、インパクトモード及びクラッチモードの双方で共用されるものである。但し、インパクトモードにおける最大回転数設定値の表示方法と、クラッチモードにおけるトルク設定値の表示方法は互いに異なっている。そのため、表示LED22の表示内容を見ることによって、制御設定値の現在値がわかるのはもちろん、今どの動作モードに設定されているのかも知ることができる。
より具体的には、クラッチモードに設定されている場合は、図8(a)に示すように、クラッチモードにおいて設定変更可能なトルク設定値1〜9がそれぞれ、表示LED22にてアラビア数字形式により表示される。
即ち、トルク設定値が1に設定されている時は、第2LED22b及び第3LED22cが点灯することにより、「1」の表示がなされる。他のトルク設定値2〜9いついても、それぞれ、図8(a)に示すように、対応するLED(例えばトルク設定値7の場合は第1LED22a,第2LED22b,第3LED22c,及び第6LED22f)が点灯することにより、対応するトルク設定値を示す数字表示がなされる。
一方、インパクトモードに設定されている場合における、最大回転数の設定値は、クラッチモードの時のような数字表示ではなく、図8(b)に示すように、横バーによる三段階表示型式によって表示される。即ち、最大回転数が低速に設定されている場合は、第4LED22dが点灯されることにより、横バーが1つ表示された状態が表現される。また最大回転数が中速に設定されている場合は、第4LED22d及び第7LED22gの2つが点灯されることにより、横バーが2つ表示された状態が表現される。また、最大回転数が高速に設定されている場合は、第4LED22d、第7LED22g、及び第1LED22aの3つが点灯されることにより、横バーが3つ表示された状態が表現される。
このように、本実施形態では、異なる2つの動作モードにおける各制御設定値(詳しくはその制御設定値を示す情報)を、同じ1つの表示LED22にて表示させるようにすると共に、動作モードに応じて(即ち制御設定値の種類に応じて)、表示LED22における表示方法が異なるようにしている。そして、これら2つの動作モードにおける各制御設定値の変更は、同じ一組の設定切替スイッチ23,24を操作することによって行うことが可能となっている。
そのため、例えばクラッチモードにおいてトルク設定値を設定変更する際、現在設定されている値よりも小さいトルク設定値に変更したい場合は、設定切替downスイッチ23を押すことで、トルク設定値をその現在値よりも一段階小さい値に変更することができる。例えばトルク設定値が8(8[N・m])に設定されている場合に設定切替downスイッチ23を押すと、トルク設定値が7(7[N・m])に設定変更される。逆に、現在設定されている値よりも大きいトルク設定値に変更したい場合は、設定切替upスイッチ24を押すことで、トルク設定値をその現在値よりも一段階大きい値に変更することができる。例えばトルク設定値が1(1[N・m])に設定されている場合に設定切替upスイッチ24を押すと、トルク設定値が2(2[N・m])に設定変更される。
一方、インパクトモードにおいて最大回転数を設定変更する際も、クラッチモードにおけるトルク設定値の変更と同じように各設定切替スイッチ23,24を操作することによって設定変更できる。例えば、現在設定されている値よりも小さい最大回転数に設定変更したい場合は、設定切替downスイッチ23を押すことで、最大回転数をその現在値よりも一段階小さい値に設定変更することができる。例えば中速に設定されている場合に設定切替downスイッチ23を押すと、低速に設定変更される。逆に、現在設定されている値よりも大きい最大回転数に設定変更したい場合は、設定切替upスイッチ24を押すことで、最大回転数をその現在値よりも一段階大きい値に設定変更することができる。例えば中速に設定されている場合に設定切替upスイッチ24を押すと、高速に設定変更される。
尚、現在設定されている制御設定値がその設定変更可能な範囲内における最小の値である場合に、設定切替downスイッチ23を押すとどのように動作するかについては、適宜決めることができ、例えば、既に最小の値に設定されている場合には設定切替downスイッチ23を押しても設定値はその最小の値のまま不変となるようにしてもよいし、また例えば、最小の値に設定されている状態で設定切替downスイッチ23を押すと最大の値に設定されるようにしてもよい。
逆に、現在設定されている設定値がその設定変更可能な範囲内における最大の値である場合に、設定切替upスイッチ24を押すとどのように動作するかについても、適宜決めることができ、例えば、既に最大の値に設定されている場合には設定切替upスイッチ24を押しても設定値はその最大の値のまま不変となるようにしてもよいし、また例えば、最大の値に設定されている状態で設定切替upスイッチ24を押すと最小の値に設定されるようにしてもよい。
また、設定切替downスイッチ23に対し、使用者が押した状態のまま保持するいわゆる長押しを行うと、本実施形態では、所定の時間間隔で制御設定値が一段階ずつ順次小さくなっていく。そして、設定変更可能な範囲内における最小の値まで低下すると、それ以上長押しを継続しても制御設定値はその最小値のまま保持される。但しこれは一例であって、最小値まで低下すると次は最大値に変わってそこからまた一段階ずつ順次小さくなっていくような動作が、長押ししている間に繰り返されるようにしてもよい。
設定切替upスイッチ24についても同様であり、使用者が設定切替upスイッチ24を長押しすると、本実施形態では、所定の時間間隔で制御設定値が一段階ずつ順次大きくなっていく。そして、設定変更可能な範囲内における最大の値まで増加すると、それ以上長押しを継続しても制御設定値はその最大値のまま保持される。但しこれは一例であって、最大値まで増加すると次は最小値に変わってそこからまた一段階ずつ順次大きくなっていくような動作が、長押ししている間に繰り返されるようにしてもよい。
また、長押ししている間に制御設定値が順次変化していく(小さくなっていく、又は大きくなっていく)際の時間間隔は、必ずしも一定でなくてもよい。例えば、押し始めは長い時間間隔でゆっくりと変化していって徐々にその時間間隔が短くなっていくようにしてもよいなど、長押し中に制御設定値を順次変化させる時間間隔は適宜決めることができる。
更に、本実施形態では、設定切替downスイッチ23に対し、使用者が所定の短い時間以内に2回押し操作する、いわゆるダブルクリックを行うと、制御設定値が最小値に設定される。逆に、使用者が設定切替upスイッチ24をダブルクリックすると、制御設定値が最大値に設定される。
次に、上述したようなコントローラ31の各種動作を実現するためにコントローラ31が実行(詳しくはCPUが実行)するメイン制御処理について、図9を用いて説明する。コントローラ31は、電動工具10にバッテリパック15が装着されて、当該コントローラ31に制御電圧Vccが印加されると起動し、図9に示すメイン制御処理を実行する。
コントローラ31は、このメイン制御処理を開始されると、まずS110にて、外部入力信号検出処理を実行する。この外部入力信号検出処理は、モータ30の制御や表示LED22の表示制御等の各種制御を行うために必要な各種信号・データ等の入力を受け付ける処理である。
本実施形態では、トリガスイッチ18から入力される、トリガスイッチ18の引き量に応じた信号であるトリガ信号、モード切替レバー19のスライド操作によってON又はOFFされるモード切替第1スイッチ37及びモード切替第2スイッチ38からの二値信号(即ち動作モードを示すデジタル信号)、インパクトモード又はクラッチモードの場合に制御設定値を設定変更するために使用者により操作される設定切替downスイッチ23及び設定切替upスイッチ24からの信号をはじめ、シャント抵抗35から入力される、回転トルクを示す電圧信号や、回転位置センサ34からのパルス信号など、種々の信号等の入力を受け付ける。そして、その受け付けた各種信号等に基づいて、メモリ41に記憶されている制御設定値を書き換える。
そしてS120にて、モード・設定判断処理を実行する。このモード・設定判断処理の具体的内容は図10に示す通りであり、まずS210にて、モード切替第1スイッチ37がOFFされているか否かを判断する。そして、モード切替第1スイッチ37がOFFならば、さらにS220にて、モード切替第2スイッチ38がOFFされているか否かを判断する。
そして、モード切替第2スイッチ38がOFFならば、インパクトモードに設定されていることになるため、S240にて、インパクトモードフラグを設定すると共に、表示フラグをセットして、S280に進む。ここで、インパクトモードフラグとは、動作モードがインパクトモードに設定されているか否かを示すフラグであり、このフラグがセットされることによって、コントローラ31は、現在インパクトモードに設定されていることを認識することができる。
また、表示フラグとは、操作・表示パネル21における表示LED22を表示させるか否かを判断するためのフラグである。このフラグは、使用者により制御設定値を設定変更可能なモードであるインパクトモード及びクラッチモードにおいてセットされるものである。そのため、コントローラ31は、動作モードがインパクトモード又はクラッチモードに設定されている場合に、表示フラグがセットされている場合は、現在設定されている動作モードにおける制御設定値の現在値を表示LED22に表示させる。一方、表示フラグがセットされていない場合は、表示LED22の表示は行わない。
逆に言えば、この表示フラグは、動作モードが、モータ30の制御方法として単速制御が用いられる動作モードに設定されているか否か、即ち使用者により設定変更可能な制御設定値が設定されていないドリルモード又は震動ドリルモードに設定されているか否かを示すフラグであるとも言える。
S220にて、モード切替第2スイッチ38がOFFではない(つまりON)と判断した場合は、震動ドリルモードに設定されていることになるため、S250にて、震動ドリルモードフラグを設定すると共に、表示フラグをクリアして、S280に進む。ここで、震動ドリルモードフラグとは、動作モードが震動ドリルモードに設定されているか否かを示すフラグであり、このフラグがセットされることによって、コントローラ31は、現在震動ドリルモードに設定されていることを認識することができる。
一方、S210にて、モード切替第1スイッチ37がOFFではない(つまりON)と判断した場合は、S230にて、モード切替第2スイッチがOFFされているか否かを判断する。
そして、S230にてモード切替第2スイッチ38がOFFならば、ドリルモードに設定されていることになるため、S260にて、ドリルモードフラグを設定すると共に、表示フラグをクリアして、S280に進む。ここで、ドリルモードフラグとは、動作モードがドリルモードに設定されているか否かを示すフラグであり、このフラグがセットされることによって、コントローラ31は、現在ドリルモードに設定されていることを認識することができる。
S230にて、モード切替第2スイッチ38がOFFではない(つまりON)と判断した場合は、クラッチモードに設定されていることになるため、S270にて、クラッチモードフラグを設定すると共に、表示フラグをセットして、S280に進む。ここで、クラッチモードフラグとは、動作モードがクラッチモードに設定されているか否かを示すフラグであり、このフラグがセットされることによって、コントローラ31は、現在クラッチモードに設定されていることを認識することができる。
S280では、表示フラグがセットされているか否かを判断する。ここで表示フラグがセットされていると判断した場合は、動作モードがインパクトモード又はクラッチモードの何れかに設定されていることになる。そして、続くS290にて、インパクトモードフラグがセットされているか否かを判断し、セットされているならば、現在インパクトモードに設定されていることから、S300に進み、インパクト制御にてモータ30を制御するための各種設定を行う。
具体的には、インパクトモードフラグがセットされていると、メモリ41に記憶されている、S110において各設定切替スイッチ23,24からの信号等に基づいて書き換えられた最新の制御設定値に応じて、最大回転数の設定(低速・中速・高速)、及び、表示LED22の表示設定を行う。その後、操作パネル21における切替スイッチ23、24の操作があれば、制御設定値、及び表示LED22の表示内容の設定変更を受入れる。更に、トリガスイッチ18の引き量に応じた目標回転数に設定する。そして、これら各種設定を行った後、このモード・設定判断処理を終了して、図1のS130の表示処理に進む。
S290で、インパクトモードフラグが設定されていると判断されなかった場合は、現在クラッチモードに設定されているということであるため、S310に進み、クラッチ制御にてモータ30を制御するための各種設定を行う。
具体的には、メモリ41に記憶されている、S110において各設定切替スイッチ23,24からの信号等に基づいて書き換えられた最新の制御設定値に応じて、クラッチモードにおける制御設定値であるトルク設定値の設定変更(トルク設定値1〜9の何れか)を受け付ける。そして、その受け付けた制御設定値の変更内容に基づき、表示LED22にて表示すべき内容(クラッチモードの場合は1〜9の数字表示の何れか)を設定する。更に、トリガスイッチ18の引き量に応じた目標回転数に設定する。そして、これら各種設定が行われた後、このモード・設定判断処理を終了して、図1のS130の表示処理に進む。
一方、S280にて表示フラグがセットされていないと判断された場合は、動作モードがドリルモード又は震動ドリルモードの何れかに設定されていることになるため、S320に進み、単速制御にてモータ30を制御するための各種設定を行う。
具体的には、トリガスイッチ18の引き量に応じた設定回転数、即ち目標回転数を設定する。また、表示LED22に何も表示させないようにするための表示設定を行う。そして、これら各種設定が行われた後、このモード・設定判断処理を終了して、図1のS130の表示処理に進む。
S130の表示処理の具体的内容は、図11に示す通りであり、まずS410にて、表示フラグがセットされているか否かを判断する。そして、表示フラグがセットされていない場合は、ドリルモード又は震動ドリルモードの何れかであって、表示LED22に表示させるべき制御設定値がないため、S450に進み、表示LED22を消灯する。
一方、S410にて表示フラグがセットされていると判断した場合は、S420にて、インパクトモードフラグがセットされているか否かを判断し、セットされているならば、現在インパクトモードに設定されていることから、S430に進み、インパクトモードにおいて使用者が設定変更可能な制御設定値である最大回転数の現在値を、表示LED22にて表示させる。即ち、表示LED22を構成する7個の各LED22a〜22gのうち、現在設定されている設定値(低速・中速・高速の何れか)に対応した三段階の横バー表示を行う。そして、この表示処理を終えて、S140のモータ制御処理(図1)に進む。
S420にて、インパクトモードフラグが設定されていると判断されなかった場合は、現在クラッチモードに設定されているということであるため、S440に進み、クラッチモードにおいて使用者が設定変更可能な制御設定値であるトルク設定値の現在値を、表示LED22にて表示させる。即ち、表示LED22を構成する7個の各LED22a〜22gのうち、現在設定されている設定値(トルク設定値1〜9の何れか)に対応した数字表示を行う。そして、この表示処理を終えて、S140のモータ制御処理(図1)に進む。
S140のモータ制御処理では、S120のモード・設定判断処理(詳細は図10)における各種制御設定(S300、S310、又はS320)の内容に従って、モータ30の回転を制御する。これにより、現在設定されている動作モードに応じた制御方法によってモータ30の制御がなされることとなる。
以上説明したように、本実施形態の電動工具10は、動作モードとして、インパクトモード、ドリルモード、クラッチモード、及び震動ドリルモードの4つのモードを有しており、使用者がモード切替レバー19をスライド操作することで、何れかの動作モードに設定することができる。
そして、これら4つの動作モードでの動作を実現すべく、電動工具10は、機械的な伝達機構として3種類の伝達機構(ドリル機構55,インパクトドライバ機構56,及び震動ドリル機構57)を有すると共に、コントローラ31によるモータ30の制御方法として3種類の制御方法(単速制御,インパクト制御,及び電子クラッチ制御)を有している。
そして、モード切替レバー19の設定位置毎に(即ち動作モード毎に)伝達機構と制御方法の組み合わせが予め決められており、モード切替レバー19を所望の設定位置にスライド操作すると、そのスライド操作に連動して伝達機構がその設定位置に対応した伝達機構に切り替えられると共に、各モード切替スイッチ37,38からはその設定位置に対応したデジタル信号がコントローラ31に入力され、これによりモータ30の制御方法がその設定位置に対応した制御方法に設定される。つまり、1つのモード切替レバー19の操作によって、伝達機構の切り替えと制御方法の設定が同期して行われる。
その結果、コントローラ31は、モータ30をその設定された制御方法にて制御し、そのモータ30の回転が、その切り替えられた伝達機構を介してスリーブ17へ(延いては工具ビットへ)伝達されることで、その設定位置に対応した動作モードでの動作が実現される。
従って、本実施形態の電動工具10によれば、機械的な伝達機構の切り替えのみによって動作モードの切り替えを実現していた従来の電動工具に比べ、機械的機構を省略又は簡略化しつつ、モータ30を動作モードに応じた適切な制御方法にて制御することで、従来と同等の多様な動作モードを実現することができる。そのため、電動工具10の小型化・低コスト化と高性能化との両立を図ることが可能となる。
特に、制御方法として電子クラッチ制御を有しており、これにより、従来は機械的な機構にて実現していたクラッチ機構も電気的な制御によって実現される。そのため、機械的なクラッチ機構は不要となり、その分、電動工具の小型化・軽量化も可能となる。
また、本実施形態の電動工具10では、クラッチモードにおいて、使用者がトルク設定値を9段階の何れかに選択的に設定でき、インパクトモードにおいても、使用者が最大回転数を3段階の何れかに選択的に設定できる。
そのため、工具の使用者は、クラッチモードにおいては所望の回転トルクの範囲内で工具ビットを動作させることができる。しかも、そのトルク設定値の設定変更は、機械的機構の切り替えによるものではなく、モータ制御手段が行うモータの電気的な制御によって実現されるため、トルク設定値の設定変更をより簡易的な構成にて実現することができる。また、インパクトモードにおいても、所望の最大回転数の範囲内で工具ビットを回転させることができる。しかも、その最大回転数の設定変更も、機械的機構の切り替えによるものではなく、モータ制御手段が行うモータの電気的な制御によって実現されるため、最大回転数の設定変更をより簡易的な構成にて実現することができる。
更に、クラッチモードにおいては、使用者により設定変更可能な9段階のトルク設定値の各々に対し、トルク設定値が大きくなるほど大きな値となるように最大回転数が設定されている。つまり、トルク設定値に応じて最大回転数も適切な値に設定されている。使用者からすれば、トルク設定値を所望の値に設定すれば、最大回転数も自動的にそのトルク設定値に対応した適切な値に設定されることになる。そのため、より付加価値の高い電子クラッチ制御機能を備えた電動工具10を提供することが可能となる。
また、上記実施形態の電動工具10では、設定されている動作モードをコントローラ31に知らしめるために、ON又はOFFの二値信号を出力する2つのモード切替スイッチ37,38が設けられ、使用者によるモード切替レバー19のスライド操作と連動してこれら各スイッチ37,38のON・OFF状態が切り替わって、そのON・OFF状態に応じたデジタル信号がコントローラ31に出力されるように構成されている。そのため、コントローラ31は、今どの動作モードに設定されているか、延いては、どの制御方法にてモータ30を制御すべきかを、容易且つ確実に判断することができる。
また、4つの動作モードに対応したデジタル信号の生成・出力を、有接点スイッチからなる2つのモード切替スイッチ37,38を組み合わせることによって行うようにしている。つまり、動作モードの数よりも少ない数の有接点スイッチを用いて、動作モード毎に異なるデジタル信号を生成するようにしている。このように、必要最小限の数の有接点スイッチによって所望のデジタル信号を出力するようにすることも、電動工具10の小型化に寄与している。
更に、本実施形態の電動工具10では、回転方向の打撃動作が発生するインパクトモードにおいては、各モード切替スイッチ37,38がいずれもOFFとなるよう(即ち各々において接点が離れた状態となるよう)に構成されており、軸方向の打撃動作が発生する震動ドリルモードにおいては、モード切替第1スイッチ37がOFFとなるように構成されている。つまり、打撃動作が発生するような動作モードにおいては、各モード切替スイッチ37,38のうち少なくとも1つはOFFで接点が離れた状態となるように構成されている。
このように、打撃動作が発生する動作モードに設定されている場合に、各モード切替スイッチ37,38のうち少なくとも1つは接点が離れた状態となるようにすることで、接点の摩耗を防ぐことができ、電動工具10の信頼性を高めることができる。
特に、インパクトモードにおいては、回転方向の打撃動作が発生することなどから、電動工具10に対して震動ドリルモードよりも大きな衝撃が加わるおそれがある。そのため、仮にインパクトモードの場合に各モード切替スイッチ37,38のいずれか一方でもONとなるように構成されていると、そのONとなるスイッチの接点の摩耗が大きく進行してしまうおそれがある。
これに対し、本実施形態の電動工具10では、上述のように、インパクトモードの場合には各モード切替スイッチ37,38が共にOFFとなるように構成されているため、インパクトモードで発生する打撃による各モード切替スイッチ37,38の接点の摩耗進行を確実に防ぐことができる。
また、本実施形態の電動工具10では、インパクトモードにおける最大回転数の設定変更、及びクラッチモードにおけるトルク設定値の設定変更を、いずれも同じ一組の設定切替スイッチ23,24にて行うことができ、且つ、各モードにおける各制御設定値をいずれも同じ1つの表示LED22にて表示させることができる。
このように、動作モードにかかわらず同じ1つの表示LED22にて制御設定値を表示させ、且つその制御設定値の設定変更についても同じ一組の設定切替スイッチ23,24によって切替可能とすることで、これらを効率よく配置することができるため、電動工具として高い性能を持たせつつ、工具構成の簡素化・小型化・低コスト化が可能となる。
しかも、動作モードの種類毎に異なる表示方法で制御設定値を表示させるようにしているため、同じ1つの表示LED22を共用しながらも、使用者は各制御設定値の判別を容易且つ確実に行うことができる。
尚、本実施形態において、モード切替レバー19は本発明の動作モード設定手段の一例であり、コントローラ31は本発明のモータ制御手段及び設定値制御手段の一例であり、各設定切替スイッチ23,24は本発明の設定変更操作手段の一例であって、より詳しくは、設定切替downスイッチ23が本発明の減少用操作部の一例であって設定切替upスイッチ24が本発明の増加用操作部の一例である。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、設定されている動作モードに応じたデジタル信号をコントローラ31へ出力するための各モード切替スイッチ37,38は、上記実施形態では2つとしたが、このスイッチの数は特に限定されるものではなく、例えば動作モード毎に個別にモード切替スイッチを設け、設定されている動作モードに対応した何れか1つのモード切替スイッチのみがオンされるようにするなど、種々の構成を採りうる。但し、上記実施形態のように、動作モードの数(上記例では4つ)より少ない数のモード切替スイッチ(上記例では2つ)によって動作モード毎のデジタル信号を生成することが可能であるため、工具の小型化やコストダウン等のためには、上記実施形態のように、必要最小限の数のモード切替スイッチを用いるのが好ましい。
また、設定されている動作モードを示すデジタル信号は、必ずしも、動作モード毎に異なる値(上記実施形態では00,01,10,11の4種類)とする必要はなく、異なる動作モードであっても、コントローラ31によるモータ30の制御方法が同じであれば、それら各動作モードにおいては、いずれも同じ値のデジタル信号を出力するようにしてもよい。
上記実施形態の場合、動作モードの数は4種類であるものの、コントローラ31によるモータ30の制御方法は3種類であり、ドリルモードと震動ドリルモードの場合は何れも同じ単速制御である。そのため、コントローラ31は、今どの動作モードに設定されているのかまでは必ずしも知る必要はなく、最低限、今どの制御方法でモータ30を制御すべきかを知ることができればよい。つまり、制御方法毎に異なるデジタル信号をコントローラ31に入力できるようにすればよく、モード切替スイッチの数は、その制御方法の数に応じたデジタル信号を出力するために最小限必要な数とすることができる。
そのため、例えば制御方法が二種類設定されている電動工具の場合は、たとえ動作モードが3種類以上設定されていたとしても、コントローラは二種類の制御方法のうちどれを用いてモータを制御すべきかがわかれば良いため、その場合はモード切替スイッチは1つあれば足りる。
また、上記実施形態では、設定されている動作モードを示す電気信号として、マイクロスイッチからなる2つのモード切替スイッチ37,38を用いてデジタル信号を出力するようにしたが、これはあくまでも一例であり、どの設定位置に設定されているか(換言すれば、どの制御方法でモータ30を制御すべきか)を判断できる限り、具体的にどのような電気信号を生成・出力するかについては適宜決めることができる。
例えば、図12に示すように、モード切替レバー19の設定位置に応じて電圧値の異なるアナログ信号を出力するようにしてもよい。図12に示す構成は、可変抵抗91を用いて、設定位置に応じたアナログ信号がコントローラ90に入力されるよう構成されたものである。可変抵抗91における抵抗素子の両端には制御電圧Vccが印加されており、その制御電圧Vccの分圧値が、モード切替レバー19のスライド操作によって変化する。この分圧値が、これによりモード切替レバーの設定位置に応じた(即ち動作モードに応じた)アナログ信号として、コントローラ90内のA/D変換器92に入力され、ここでデジタル信号に変換される。
図12に示した、可変抵抗91によるアナログ信号を出力可能な構成以外にも、例えば、各種センサ(例えばフォースセンサ、歪みセンサ、磁気センサ(ホールセンサ)、赤外線センサ、フォトダイオード及びフォトカプラからなる光センサ、静電容量センサなど)を設けて、これらセンサの検出値がモード切替レバー19の設定位置に応じて変化するようにして、そのセンサからの検出信号に基づいて動作モードを判断できるようにしてもよい。また、その検出信号は、無線通信によってコントローラ31へ伝送するようにしてもよい。
また、例えば、設定されている動作モードに応じて、振幅及び周波数の少なくとも一方、又は双方の組み合わせが異なるような、交流のアナログ信号を生成して、コントローラに出力するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、クラッチモードについて、使用者により設定変更可能なトルク設定値を9段階に設定したが、これはあくまでも一例であり、何段階に設定するかは適宜決めることができる。例えば、15段階に設定することもでき、その場合、各段階の設定値を、1〜9、及びA〜F、とすることで、15段階の各設定値をそれぞれ表示LED22に表示させることができる。
尚、表示LED22による、アルファベットのA〜Fの表示例を、図13に示す。図13に示すように、例えば「A」については、7個のLED22a〜22gのうち、第4LED22dを除く他の6つのLEDを全て表示させればよい。尚、「b」と「d」は、大文字ではなく小文字のアルファベット表示としている。
また、上記実施形態では、クラッチモードを一種類設けたが、設定変更可能なトルク設定値の数(段階数)の異なる複数種類のクラッチモード、設定変更可能な複数のトルク設定値の間隔であるトルク幅の異なる複数種類のクラッチモード、各トルク設定値に対応して設定された最大回転数が異なる複数種類のクラッチモードなど、必要に応じて様々な種類のクラッチモードを設定するようにしてもよい。
尚、トルク設定値に応じて最大回転数も個別に設定されていることについては、あくまでも一例であって、必須ではない。例えば、トルク設定値に関係なく最大回転数は一定にしてもよい。また例えば、何れか複数のトルク設定値に対して同じ最大回転数を設定するようにしてもよい。具体例としては、例えば、トルク1〜3は低、トルク4〜6は中、トルク7〜9は高、というように設定することができる。
インパクトモードについても、上記実施形態ではインパクトモードを一種類設けたが、設定変更可能な最大回転数の数(段階数)の異なる複数種類のインパクトモードや、設定変更可能な複数の最大回転数の間隔である回転数幅(速度幅)の異なる複数種類のインパクトモードなど、必要に応じて様々な種類のインパクトモードを設定するようにしてもよい。
また、インパクトモードにおいて設定変更可能な最大回転数を三段階に設定したのもあくまでも一例である。
また、上記実施形態では、トリガスイッチ18の引き量に比例して回転数(回転速度)が連続的に増加していくような制御方法を基本としたが、これに限らず、例えばトリガスイッチ18の引き量に応じて回転数が段階的に増加していくような制御方法を基本とするようにしてもよい。また例えば、比例とは異なる増加傾向で(例えば二次関数的に)増加していくようにしてもよく、トリガスイッチ18の引き量に応じて回転数がどのように増加するように制御するかについては適宜決めることができる。また、引き量に関係なく、トリガスイッチ18が少しでも引かれた状態ならば一定の回転数に制御するような、単純な制御を基本とするようにしてもよい。
また、上記実施形態では、三種類のモータ制御方法(単速制御、電子クラッチ制御及びインパクト制御)のいずれにおいても、基本的には、モータ30の実際の回転数を検出してその検出結果がトリガスイッチ18の引き量に応じて定まる設定回転数と一致するように制御するいわゆるフィードバック制御を行うものとして説明した。つまり、何れのモータ制御方法においても、フィードバック制御を基本としつつ、更に、各モータ制御方法それぞれにおいて上述した独自の方法で制御するものとして説明した。
しかし、このように全てのモータ制御方法においてフィードバック制御を行うようにすることはあくまでも一例に過ぎない。例えば電子クラッチ制御の場合のみフィードバック制御を用いて他の制御ではオープン制御とするようにしてもよいなど、フィードバック制御を用いるかどうか、また用いる場合にはどのモータ制御方法の場合に用いるか、などについては適宜決めることができる。
また、上記実施形態では、スリーブ17の回転トルクを検出するにあたり、回転トルクを直接検出するのではなく、シャント抵抗35により検出されるモータ電流に基づいてモータ30の出力トルクを検出することにより、間接的に検出するようにしたが、このような検出方法はあくまでも一例である。即ち、結果としてスリーブ17の回転トルク(工具ビットの回転トルク)を検出できる限り、それを直接検出するか又は間接的に検出するか、また、具体的にどのような方法で検出するか、などについては、適宜決めることができる。
また、上記実施形態では、伝達機構については、クラッチモード及びドリルモードにおいてはいずれも同じドリル機構とし、コントローラ31によるモータ30の制御方法については、ドリルモード及び震動ドリルモードにおいてはいずれも同じ単速制御としたが、このように、動作モードが違っても伝達機構は同じとなるケース、或いは動作モードが違ってもコントローラ31による制御方法は同じとなるケースが生じるのは、何ら問題ない。
つまり、所望の動作モードでの動作を実現できる限り、伝達機構として具体的にどのような機構を備えるか、コントローラ制御として具体的にどのような制御方法を備えるようにするか、また、どの伝達機構とどのコントローラ制御を組み合わせるか、については、適宜決めることができる。
むしろ、伝達機構及び制御方法の種類をできる限り少なくして、同じ伝達機構又は同じ制御方法を異なる複数の動作モードで共用するようにし、伝達機構と制御方法の組み合わせを工夫することによって異なる動作モードを実現するのが、工具の小型化・低コスト化を目指す上では好ましい。
また、上記実施形態のように、1つの電動工具10において動作モードを4つ備えるようにすることはあくまでも一例に過ぎず、1つの電動工具においていくつの動作モードを設定するか、どのような動作モードを設定するか、また、それら各動作モードを実現すべく、具体的にどのような伝達機構とどのような制御方法を組み合わせるか、などについても、適宜決めることができる。
上述した4つの動作モード以外の動作モードの具体例としては、例えば、テクスモードや、電子パルスモードなどが考えられる。テクスモードとは、主にテクスネジにて穴を開けながら高速で締め付けていくモードであり、ネジが着座したことを検知すると回転速度を緩める(低速にする)又は停止させるように制御するモードである。また、電子パルスモードとは、回転数を三角形状のパルス(三角波)状に変化させながら工具ビットを動作させてネジ締め等を行うモードである。
また、モータ30を制御するコントローラ31は、上記実施形態ではCPUを中心とするマイクロコンピュータにて構成されているものとして説明したが、このようなコントローラ31の構成はあくまでも一例である。即ち、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスや、ディスクリート回路などであってもよく、動作モードに応じた所望の制御方法でモータ30を制御することができる限り、コントローラ31を具体的にどのように構成するかは特に限定されない。
また、コントローラ31が実行する上述のメイン制御処理のプログラムは、CPUにて読み取り可能なあらゆる形態の記録媒体に記録されて用いられても良い。記録媒体としては、例えば、持ち運び可能な半導体メモリ(例えばUSBメモリ、メモリカード(登録商標)など)などが含まれる。
また、上記実施形態では、表示LED22として、7セグメントLEDを用いたが、これもあくまでも一例であり、動作モード毎に制御設定値を表示できる限り、具体的にどのような表示手段を用いるかについては特に限定されるものではない。
即ち、LEDからなる複数のセグメントを有する表示装置を用いる場合にセグメント数がいくつのものを用いるかは適宜決めることができ、例えば14セグメントLEDを用いても良いし、また例えば、図14に示すように、16セグメントLEDからなる表示LED60を用いるようにしてもよい。この表示LED60は、図14(b)に示すように、第1LED61a〜第16LED61sまでの、計16個のLEDからなる、周知のものである。
そして、このように16セグメントLEDからなる表示LED60を用いた制御設定値の表示方法も種々考えられ、上記実施形態のような数字表示、A〜Fのアルファベット表示、及び三段階の横バー表示は勿論可能であるが、それ以外の表示方法も種々考えられる。
例えば図14(b)に示すように、インパクトモードにおける最大回転数の設定値について、低速の場合は「L」、中速の場合は「M」、高速の場合は「H」と表示するようにしてもよい。例えば低速の場合の「L」の表示は、第4LED61d〜第7LED61gの4つのLEDを点灯させることで実現できる。
また例えば、図14(c)に示すように、インパクトモードにおける最大回転数の設定値について、縦バーによる三段階表示とするようにしてもよい。即ち、最大回転数が低速に設定されている場合は、第6LED61f及び第7LED61gを点灯することにより、縦バーが1つ表示された状態が表現される。また最大回転数が中速に設定されている場合は、第6LED61f,第7LED61g,第9LED61j,及び第10LED61kの4つを点灯することにより、縦バーが2つ表示された状態が表現される。また、最大回転数が高速に設定されている場合は、中速の場合の4つのLEDに加えて更に第1LED61a及び第2LED61bを点灯することにより、縦バーが3つ表示された状態が表現される。
また、上記実施形態では表示LED22を1つ用いた構成を例示したが、複数の表示LED22を用いてそれらを各制御設定値で共用するようにしてもよい。複数の表示LEDを用いれば、例えば二桁の数値を表示できるなど、表示可能な範囲が広がる。但しこの場合、必ずしも、設定変更可能な全ての制御設定値について複数の表示LED全てを用いて表示させるようにする必要はない。
例えば2つの表示LEDを有する場合に、ある制御設定値については2つの表示LEDを用いて表示させ、別のある制御設定値については1つの表示LEDのみを用いて表示させるようにしてもよい。つまり、複数の表示LEDのうち少なくとも1が、全ての制御設定値で共用されるものであればよい。
このことは、各設定切替スイッチ23,24についても同様であり、例えば、ある制御設定値については2つの設定切替スイッチ23,24にて設定変更できるようにし、別のある制御設定値については何れか一方の設定切替スイッチのみを用いて設定変更できるようにすることもできる。
また、制御設定値を表示させる表示手段として、複数のセグメントからなる表示LED22を用いること自体もあくまでも一例であり、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種の表示手段を用いてもよい。
そして、液晶ディスプレイ等の表示手段を用いる場合は、例えば、タッチパネル機能を備えた液晶ディスプレイを用い、この液晶ディスプレイに各設定切替スイッチ23,24の形状を表示させて、使用者がこれらの表示部分をタッチ操作することによって、制御設定値を設定変更できるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、インパクトモード及びクラッチモードにおいて、使用者が制御設定値を変更するために、2つの設定切替スイッチ23,24が設けられていたが、この2つの設定切替スイッチ23,24からなる構成はあくまでも一例に過ぎない。
例えば図15(a)に示すような形状の、設定切替downスイッチ71及び設定切替upスイッチ72からなる設定切替部70によって構成してもよい。
また例えば、図15(b)に示すような、操作レバー76及び操作出力回路77からなる設定切替部75によって構成してもよい。この構成において、操作レバー76は、通常時は垂直方向に立設した状態となっているが、使用者の操作(荷重)によって、図示のように左右方向に傾倒させることができる。そして、左右いずれの方向に傾倒したかが、操作出力回路77にて検知され、操作出力回路77からはその検知結果を示す信号が出力される。そのため、例えば操作レバー76を左側に傾倒させると制御設定値が減少し、右側に傾倒させると制御設定値が増加する、というように構成することができる。
また例えば、図15(c)に示すような、操作ダイヤル81及び操作出力回路82からなる設定切替部80や、図15(d)に示すような、操作ダイヤル86及び操作出力回路87からなる設定切替部85によって構成してもよい。これらの構成において、操作ダイヤル81、86は、その軸心を中心に回転可能に構成されており、その回転位置に応じた信号が操作出力回路82、87から出力されるよう構成されている。そのため、図示のように、動作モード毎に、操作ダイヤル81、86における異なる複数の回転位置毎に各制御設定値を対応付けることで、所望の制御設定値に設定することが可能となる。
また、本発明は、上述した電動工具10のような、バッテリ式の電動工具だけでなく、コードを介して電力の供給を受ける電動工具に適用されてもよいし、交流モータによって工具要素を回転駆動させるように構成された電動工具に適用されてもよい。
また、モータ30は、2相のブラシレス直流モータとして構成されていてもよいし、4相以上のブラシレス直流モータとして構成されていてもよい。
また、モータ駆動回路33を構成する各スイッチング素子Q1〜Q6は、MOSFET以外のスイッチング素子(例えば、バイポーラトランジスタなど)であってもよい。
また、工具ビットは、スリーブ17に離脱不能に取り付けられてもよい。