JP2012138375A - リチウムイオン二次電池用負極材、その製造方法、該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】不可逆容量が小さく、エネルギー密度が大きく、入出力特性及び寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池、それを得るためのリチウムイオン二次電池用負極材とその製造方法、及び該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極を提供する。
【解決手段】X線回折装置(XRD)測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40〜3.70Åである炭素粒子と、その炭素粒子の表面上に形成された炭素層を備え、前記炭素粒子に対する炭素層の比率(重量比)が0.001〜0.1であるリチウムイオン二次電池用負極材。励起波長532nmのレーザーラマン分光測定により求めたプロファイルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/IgをR値とした際、そのR値が、0.5以上、1.5以下であると好ましいリチウムイオン二次電池用負極材。
【選択図】なし
【解決手段】X線回折装置(XRD)測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40〜3.70Åである炭素粒子と、その炭素粒子の表面上に形成された炭素層を備え、前記炭素粒子に対する炭素層の比率(重量比)が0.001〜0.1であるリチウムイオン二次電池用負極材。励起波長532nmのレーザーラマン分光測定により求めたプロファイルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/IgをR値とした際、そのR値が、0.5以上、1.5以下であると好ましいリチウムイオン二次電池用負極材。
【選択図】なし
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極材、その製造方法、該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池に関する。更に詳しくは、高入出力特性を有する二次電池を必要とする電気自動車、パワーツール等の用途に好適な、充放電効率、入出力特性、寿命(保存・サイクル)特性に優れるリチウムイオン二次電池とそれを得るためのリチウムイオン二次電池負極材、その製造方法及び該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極に関する。
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池であるニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池、鉛蓄電池に比べて軽量で高い入出力特性を有することから、近年、電気自動車や、ハイブリッド型電気自動車用の電源といった高入出力用電源として期待されている。ハイブリッド型電気自動車用の電源としては入出力特性のバランスに優れ、かつサイクル特性や保存特性などの寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池が求められている。
一般に、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質は、黒鉛系と非晶質系に大別される。黒鉛は炭素原子の六角網面が規則正しく積層した構造を有するもので、積層した網面の端部よりリチウムイオンの挿入脱離反応が進行し充放電を行う。しかしながら、挿入脱離反応が端部でのみ進行するため入出力性能が低い。また、結晶性が高く表面の欠陥が少ないが故に、電解液との親和性が悪く、リチウムイオン二次電池の寿命特性が悪くなるといった問題点を有する。
一方、ハードカーボンに代表される非晶質炭素は、六角網面の積層が不規則であるか、網目構造を有しないため、リチウムの挿入脱離反応は粒子の全表面で進行することとなり、入出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を得られやすい。一般に、非晶質炭素はハードカーボンとソフトカーボンの二種に大きく分類される。ハードカーボンは2500℃以上といった高温まで熱処理を行っても結晶が発達し難い炭素であり、ソフトカーボンは高温処理により高結晶性の黒鉛構造へと変化し易い炭素である。
また、ハードカーボンは、黒鉛とは対照的に、粒子表面の結晶性が低く、電解液との親和性に優れるため、これを負極材料として用いたリチウムイオン二次電池は、黒鉛を用いた場合と比較して、寿命特性で勝るといった特徴を持つ。反面、構造が不規則であるがゆえに不可逆容量が大きく、かつ比重が小さいために電極密度を高くすることが困難であり、エネルギー密度が低いという問題がある。
そこで、不可逆容量が小さく、かつエネルギー密度が大きく、入出力特性及び寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池とそれを得るための負極材料が要求されている。
本発明は、従来のリチウムイオン二次電池と比較して、不可逆容量が小さく、かつエネルギー密度が大きく、入出力特性及び寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池、並びにそれを得るためのリチウムイオン二次電池用負極材とその製造方法、及び該負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とするものである。
本発明は、[1]X線回折装置(XRD)測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40〜3.70Åである炭素粒子と、該炭素粒子の表面上に形成された炭素層とを備え、前記炭素粒子に対する前記炭素層の比率(重量比)が0.001〜0.1であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材に関する。
また、本発明は、[2]励起波長532nmのレーザーラマン分光測定により求めたプロファイルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/IgをR値とした際、そのR値が、0.5以上1.5以下である上記[1]に記載のリチウムイオン二次電池用負極材に関する。
また、本発明は、[3]平均粒子径(50%D)が5μm以上30μm以下、真比重が1.80g/cm3以上2.20g/cm3以下、77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m2/g以上25m2/g以下で、かつ、相対圧1までの吸着量が5g/cm3以上30g/cm3以下、273Kでの二酸化炭素吸着より求めた比表面積が0.2m2/g以上7.5m2/g以下で、かつ、相対圧0.03までの吸着量が0.2g/cm3以上5g/cm3以下であることを特徴とする上記[1]または上記[2]に記載のリチウムイオン二次電池用負極材に関する。
また、本発明は、[4]X線回折装置(XRD)測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40〜3.70Åである炭素粒子を、熱処理により炭素質が残る有機化合物とこれを溶解する溶媒との混合溶液に混合する工程、前記溶媒を除去して前記有機化合物に被覆された炭素粒子を作製する工程、および前記有機化合物に被覆された炭素粒子を焼成する工程、を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法に関する。
また、本発明は、[5]上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材、又は、上記[4]に記載の製造方法で作製されたリチウムイオン二次電池用負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極に関する。
また、本発明は、[6]上記[5]に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いてなるリチウムイオン二次電池に関する。
本発明よれば、従来のリチウムイオン二次電池と比較して、不可逆容量が小さく、かつエネルギー密度が大きく、入出力特性及び寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池、並びにそれを得るためのリチウムイオン二次電池負極材とその製造方法、及び該負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極を提供することが可能となる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、X線回折装置(XRD)測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40〜3.70Åである核となる炭素粒子と、該炭素粒子の表面上に形成された炭素層とを備え、前記炭素粒子に対する炭素層の比率(重量比)が0.001〜0.10であることを特徴とする。
上記核となる炭素粒子としては、XRD測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40〜3.70Åである炭素粒子であれば特に限定されないが、不可逆容量、寿命特性、充放電容量を高めるという観点から、易黒鉛化性を示す材料を焼成(カ焼)、粉砕して得られるものであることがより好ましい。具体的には、易黒鉛化性を示す材料を、例えば、800℃以上の不活性雰囲気中でカ焼し、ついで、これをジェットミル、振動ミル、ピンミル、ハンマーミル等の既知の方法により粉砕し、5〜30μmに粒度を調整することで核となる炭素粒子を得ることができる。また、上記易黒鉛化性を示す材料としては、特に制限はないが、例えば、熱可塑性樹脂、ナフタレン、アントラセン、フェナントロレン、コールタール、タールピッチ等が挙げられ、好ましくは、石炭系コールタールや石油系タールである。また、易黒鉛化性を示す材料を焼成(カ焼)する前に予め熱処理を施してもよく、この場合には、易黒鉛化性を示す材料を、例えば、オートクレーブ等の機器により予め熱処理し、粗粉砕した後、上記と同様に800℃以上の不活性雰囲気中でカ焼し、粉砕して粒度を調整することで核となる炭素粒子を得ることができる。なお、上記熱処理の温度は、用いる易黒鉛化性を示す材料に応じて適宜決定することが望ましく、特に限定されないが、易黒鉛化性を示す材料が石炭系コールタールや石油系タールである場合には、400〜450℃であることが好ましい。
また、上記核となる炭素粒子の炭素002面の面間隔d002は、3.40〜3.70Åであればよいが、3.40〜3.60Åであることが好ましい。面間隔d002が3.40Å未満では、リチウムイオン二次電池の寿命特性・入出力特性が劣り、3.70Åを超えると、リチウムイオン二次電池の初回充放電効率が減少する傾向がある。なお、炭素002面の面間隔d002は、X線(CuKα線)を炭素粒子粉末試料に照射し、回折線をゴニオメーターにより測定し得た回折プロファイルより、回折角2θ=24〜26°付近に現れる炭素002面に対応した回折ピークより、ブラッグの式を用い算出することができる。
上記炭素層は、例えば、熱処理により炭素質を残す有機化合物(炭素前駆体)を上記炭素粒子の表面に付着させた後、焼成することで形成することができ、これにより本発明のリチウムイオン二次電池用負極材を得ることができる。
炭素粒子の表面に有機化合物を付着させる方法としては、特に制限はないが、例えば、有機化合物を溶媒に溶解、又は分散させた混合溶液に核となる炭素粒子(粉末)を分散・混合した後、溶媒を除去する湿式方式や、炭素粒子と有機化合物を固体同士で混合し、その混合物に力学エネルギ−を加え付着させる乾式方式、CVD法などの気相法等が挙げられる。炭素粒子表面に均一に炭素層被覆を行う観点からは、上記湿式方式が好ましい。
したがって、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、上記炭素粒子を、熱処理により炭素質を残す有機化合物とこれを溶解・分散する溶媒の混合溶液に混合する工程、溶媒を除去して有機化合物に被覆された炭素粒子を作製する工程、および有機化合物に被覆された炭素粒子を焼成し、当該有機化合物を炭素化する工程を含む製造方法により製造することが好ましい。
上記有機化合物としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の高分子化合物などを用いることができ、特に制限はないが、熱可塑性の高分子化合物は、液相経由で炭素化し、比表面積の小さな炭素を生成するため、これが炭素粒子表面を被覆すると負極材料の比表面積も小さくなり、結果としてリチウムイオン二次電池の初回不可逆容量を小さくすることができるため、好ましい。
上記熱可塑性の高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレンヘビーエンドピッチ、原油ピッチ、コールタールピッチ、アスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル等を熱分解して生成するピッチ、ナフタレン等を超強酸存在下で重合させて作製される合成ピッチ等が使用できる。また、熱可塑性の高分子化合物として、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等の熱可塑性合成樹脂を用いることもできる。また、デンプンやセルロース等の天然物を用いることもできる。
また、上記有機化合物を溶解・分散する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、有機化合物がピッチ類の場合には、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ベンゼン、キノリン、ピリジン、石炭乾留の際に生成する比較的低沸点の液状物の混合物(クレオソート油)等を使用することができる。また、有機化合物がポリ塩化ビニルの場合には、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン等が、有機化合物がポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等の場合には、例えば、アルコール類、エステル類、ケトン類等が、有機化合物がポリビニルアルコールの場合には、例えば、水等が使用できる。なお、水を溶媒とする場合には、溶液中での炭素粒子の混合・分散を促進、有機化合物と炭素粒子との密着性を向上させるため、界面活性剤を添加することが望ましい。
また、上記溶媒の除去は、常圧或いは減圧雰囲気で加熱することによって行うことができる。溶媒除去の際の温度は、雰囲気が大気の場合、200℃以下であることが好ましい。除去温度が200℃を越えると、雰囲気中の酸素と有機化合物及び溶媒(特にクレオソート油を用いた場合)が反応し、焼成によって生成する炭素量が変動、また多孔質化が進み、負極材としての本発明の特性範囲を逸脱し、所望の特性を発現できなくなる場合がある。
また、有機化合物に被覆された炭素粒子の焼成条件は、当該有機化合物の炭素化率を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、非酸化性雰囲気下、好ましくは、700〜1400℃、より好ましくは、800〜1300℃の範囲であることが好ましい。焼成温度が、700℃未満では、負極材として用いた場合、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が大きくなる傾向があり、一方、1400℃を越えて加熱しても負極材としての性能にはほとんど変化がなく、生産コストの増加を引き起こすのみである。また、非酸化性雰囲気下としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、循環された燃焼排ガス雰囲気下等が挙げられる。
また、焼成に先だって、有機化合物被覆炭素粒子を150〜300℃の温度で加熱処理しても良い。例えば、有機化合物としてポリビニルアルコールを用いた場合、このような加熱処理により炭素化率を増加させることができる。
また、焼成後の炭素層被覆炭素粒子を、必要に応じて、解砕処理、分級処理、篩分け処理を施すことで本発明のリチウムイオン二次電池用負極材を得ることができる。
上記のようにして得られる本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、核となる炭素粒子に対する表層炭素層の比率(重量比、以下、表層炭素率という)が0.001〜0.10の範囲である必要があるが、好ましくは0.001〜0.05であり、より好ましくは0.002〜0.05であり、さらに好ましくは0.005〜0.03であり、特に好ましくは0.008〜0.02である。表層炭素率が0.001未満の場合、寿命特性・入出力特性が低下する傾向があり、表層炭素率が0.10を超えると初回充放電効率が低下し、作製するリチウムイオン二次電池のエネルギー密度が低下する傾向がある。表層炭素率は、核となる炭素粒子の重量、炭素層となる炭素前駆体の重量及び炭素前駆体の炭化率より算出することが出来る。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、表層炭素層の結晶性が、核となる炭素粒子よりも低いことが好ましい。表層炭素層の結晶性を核となる炭素粒子よりも低くすることで、リチウムイオン二次電池用負極材と電解液との馴染みが向上し、その結果サイクル特性が向上する。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、励起波長532nmのレーザーラマン分光測定により求めたプロファイルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/IgをR値とした際、そのR値が0.5以上1.5以下であることが好ましく、0.7以上1.3以下であることがより好ましい。R値が、0.5未満であるとリチウムイオン二次電池の寿命特性・入出力特性が劣る傾向があり、1.5を超える場合、リチウムイオン二次電池の不可逆容量が増大する傾向がある。なお、レーザーラマン分光測定は、日本分光株式会社製NSR−1000を用い、励起波長532nm、レーザー出力3.9mW、入射スリット150μmの設定で測定することができる。得られたデータはインデン(和光純薬製)のスペクトルより求めた検量線を用いて補正を行った。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、平均粒子径(50%D)が5μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が5μm未満の場合、比表面積が大きくなり、リチウムイオン二次電池の初回充放電効率が低下すると共に、粒子同士の接触が悪くなり入出力特性が低下する傾向がある。一方、平均粒子径が30μmを超える場合、電極面に凸凹が発生しやすくなり電池の短絡の原因となると共に、粒子表面から内部へのLiの拡散距離が長くなるためリチウムイオン二次電池の入出力特性が低下する傾向がある。なお、粒度分布は界面活性剤を含んだ精製水に試料を分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製SALD−3000J)で測定することができ、平均粒径は50%Dとして算出される。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、真比重が1.80g/cm3以上2.20g/cm3以下であることが好ましい。真比重が1.80g/cm3未満であるとリチウムイオン二次電池の体積当りの充放電容量が低下し、また初回充放電効率が減少する傾向がある。一方、真比重が2.20g/cm3を超えると、リチウムイオン二次電池の寿命特性が低下する傾向がある。なお、真比重はブタノールを用いたピクノメーター法により求めることができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m2/g以上25m2/g以下であることが好ましく、1.0m2/g以上15m2/g以下であることがより好ましい。また、相対圧1までの吸着量が5g/cm3以上30g/cm3以下であることが好ましく、10g/cm3以上20g/cm3以下であることがより好ましい。この比表面積が0.5m2/g未満の場合、入力特性が低下する傾向がある。一方、比表面積が25m2/gを超える場合、被覆炭素が何らかの原因で多孔質化したと見られ、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が増加する傾向がある。また、相対圧1までの吸着量が5g/cm3未満の場合、入力特性が低下する傾向がみられ、30g/cm3を超える場合、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が増加する傾向がある。なお、窒素吸着での比表面積は、77Kでの窒素吸着測定より得た吸着等温線からBET法を用いて求めることができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、273Kでの二酸化炭素吸着より求めた比表面積が0.2m2/g以上7.5m2/g以下であることが好ましく、0.3m2/g以上5m2/g以下であることがより好ましい。また、相対圧0.03までの吸着量が0.2g/cm3以上5g/cm3以下であることが好ましく、0.5g/cm3以上3g/cm3以下であることがより好ましい。この比表面積が0.2m2/g未満の場合、入力特性が低下する傾向がある。一方、比表面積が7.5m2/gを超える場合、被覆炭素が何らかの原因で多孔質化したと見られ、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が増加する傾向がある。また、相対圧0.03までの吸着量が0.2g/cm3未満の場合、入力特性が低下する傾向があり、5g/cm3を超える場合、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が増加する傾向がある。なお、二酸化炭素吸着での比表面積は273Kでの二酸化炭素吸着測定より得た吸着等温線からBET法を用いて求めることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、例えば、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材および有機結着材を溶剤とともに撹拌機、ボールミル、スーパーサンドミル、加圧ニーダー等の分散装置により混練し、負極材スラリーを調製し、これを集電体に塗布して負極層を形成する、または、ペースト状の負極材スラリーをシート状、ペレット状等の形状に成形し、これを集電体と一体化することで得ることができる。
上記有機系結着剤としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル等のイオン導電性の大きな高分子化合物などが挙げられる。この有機系結着剤の含有量は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材と有機系結着剤の合計100重量部に対して1〜20重量部含有することが好ましい。
また、上記負極材スラリーには、粘度を調整するための増粘剤を添加してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどを使用することができる。
また、上記負極材スラリーには、導電補助材を混合してもよい。導電補助材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、あるいは導電性を示す酸化物や窒化物等が挙げられる。導電助剤の使用量は、本発明の負極材の1〜15重量%程度とすればよい。
また、上記集電体の材質および形状については、特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いればよい。また、多孔性材料、たとえばポーラスメタル(発泡メタル)やカーボンペーパーなども使用可能である。
上記負極材スラリーを集電体に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。塗布後は、必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等による圧延処理を行う。また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極材スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、上記本発明のリチウムイオン二次電池用負極と正極とをセパレータを介して対向して配置し、電解液を注入することにより得ることができる。
上記正極は、上記負極と同様にして、集電体表面上に正極層を形成することで得ることができる。この場合の集電体はアルミニウム、チタン、ステンレス鋼等の金属や合金を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いることができる。
上記正極層に用いる正極材料としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、または導電性高分子材料を用いればよく、特に限定されないが、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、およびこれらの複酸化物(LiCoxNiyMnzO2、X+Y+X=1)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等などを単独或いは混合して使用することができる。
上記セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製するリチウムイオン二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
上記電解液としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSO3CF3等のリチウム塩を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル等の単体もしくは2成分以上の混合物の非水系溶剤に溶解した、いわゆる有機電解液を使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の構造は、特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを、扁平渦巻状に巻回して巻回式極板群としたり、これらを平板状として積層して積層式極板群とし、これら極板群を外装体中に封入した構造とするのが一般的である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、特に限定されないが、ぺーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池などとして使用される。
以上で説明した本発明のリチウムイオン二次電池は、従来の炭素材料を負極に用いたリチウムイオン二次電池と比較して、急速充放電特性、サイクル特性に優れ、不可逆容量が小さく、安全性に優れる。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜4)
石炭系コールタールを、オートクレーブを用いて400℃で熱処理し、生コークスを得た。この生コークスを粉砕した後、1200℃の不活性雰囲気中でカ焼を行い、コークス塊を得た。このコークス塊を分級機付きの衝撃粉砕機を用いて粉砕後、300メッシュの篩にて粗粉を除去して炭素粒子として実験に供した。
石炭系コールタールを、オートクレーブを用いて400℃で熱処理し、生コークスを得た。この生コークスを粉砕した後、1200℃の不活性雰囲気中でカ焼を行い、コークス塊を得た。このコークス塊を分級機付きの衝撃粉砕機を用いて粉砕後、300メッシュの篩にて粗粉を除去して炭素粒子として実験に供した。
界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを溶解したイオン交換水に、ポリビニルアルコール(重合度1700、完全けん化型)を15g(実施例1)、154g(実施例2)、770g(実施例3)、1390g(実施例4)をそれぞれ溶解し、4種の濃度の混合溶液を調製した。得られた各混合溶液と上記で作製した炭素粒子2000gを加熱機構を有する双腕型混錬機に投入し、室温(25℃)で1時間混合し、次いで120℃に温度を上げ、水を蒸発、除去し、ポリビニルアルコール被覆炭素粒子を得た。得られたポリビニルアルコール被覆炭素粒子を空気中、200℃で5時間加熱処理を行い、ポリビニルアルコールを不融化し、次いで窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、1時間保持して炭素層被覆炭素粒子とした。得られた炭素被覆炭素粒子をカッターミルで解砕、300メッシュの標準篩を通し、負極材試料とした。ポリビニルアルコールを単独で200℃、5時間加熱処理し、次いで窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、1時間保持した場合の炭化率は13%であった。この値及び炭素被覆量より各実施例での表層炭素率を計算したところ、それぞれ0.001(実施例1)、0.01(実施例2)、0.05(実施例3)、0.09(実施例4)であった。上記炭素粒子及び各実施例の負極材試料の物性値・電気的特性を下記の要領で測定した。測定結果を表1に示す。
炭素002面の面間隔d002:理学電気株式会社製広角X線回折装置を用い、Cu−Kα線をモノクロメーターで単色化し、高純度シリコンを標準物質として測定した。
ラマンスペクトルピーク強度比(R値):日本分光株式会社製NRS−2100を用い、レーザー出力10mW、分光器Fシングル、入射スリット幅800μm、積算回数2回、露光時間120秒にて測定を行った。
平均粒子径:負極材試料を界面活性剤と共に精製水中に分散させた溶液を、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製SALD−3000J)の試料水槽に入れ、超音波をかけながらポンプで循環させながら、レーザー回折式で測定した。得られた粒度分布の累積50%粒径(50%D)を平均粒径とした。
真比重(真密度):比重瓶を用いたブタノール置換法(JIS R 7212)により測定した。
比表面積:得られた負極材試料を200℃で1時間真空乾燥した後、Quantachrome社製AUTOSORB−1を用い、液体窒素温度(77K)での窒素吸着、または273Kで二酸化炭素吸着を多点法で測定、BET法に従って算出した。
吸着量:得られた負極材試料を200℃で1時間真空乾燥した後、Quantachrome社製AUTOSORB−1を用い、液体窒素温度(77K)での相対圧1までの窒素吸着、および273Kでの相対圧0.03までの二酸化炭素吸着を多点法で測定し算出した。
<初回充放電効率の測定>
各実施例の負極材試料90重量%に対し、N−メチル−2ピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分で10重量%となるよう加えて混練してペースト状の負極材スラリーを作製した。このスラリーを厚さ40μmの電解銅箔に厚さ200μmのマスクを用い直径9.5mmとなるよう塗布し、さらに、105℃で乾燥してN−メチル−2ピロリドンを除去し、試料電極(負極)を作製した。
各実施例の負極材試料90重量%に対し、N−メチル−2ピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分で10重量%となるよう加えて混練してペースト状の負極材スラリーを作製した。このスラリーを厚さ40μmの電解銅箔に厚さ200μmのマスクを用い直径9.5mmとなるよう塗布し、さらに、105℃で乾燥してN−メチル−2ピロリドンを除去し、試料電極(負極)を作製した。
次いで、上記試料電極、セパレータ、対極(正極)の順に積層した後、LiPF6をエチレンカーボネート(EC)及びメチルエチルカーボネート(MEC)(ECとMECは体積比で1:3)の混合溶媒に1.5モル/リットルの濃度になるように溶解した電解液溶液を注入し、コイン電池を作製した。対極には金属リチウムを使用し、セパレータには厚み20μmのポリエチレン微孔膜を使用した。
得られたコイン電池の試料電極と対極の間に、0.2mA/cm2の定電流で0V(Vvs.Li/Li+)まで充電し、次いで0Vの定電圧で電流が0.02mAになるまで充電した。次に30分の休止時間後に0.2mA/cm2の定電流で2.5V(Vvs.Li/Li+)まで放電する1サイクル試験を行い、初回充放電効率を測定した。初回充放電効率は、(放電容量)/(充電容量)×100として算出した。結果を表1に示す。
<入出力特性の評価>
上記と同様の方法で作製したコイン電池を0.2mA/cm2の定電流で0V(Vvs.Li/Li+)まで充電し、30分の休止時間後に、0.2mA/cm2の定電流で1V(Vvs.Li/Li+)まで放電するサイクルを3回繰り返し、低電流での電極体積当りの充放電容量を測定した。次いで、4サイクル目に、2mA/cm2の定電流で0V(Vvs.Li/Li+)まで充電し、30分の休止時間後に、2mA/cm2の定電流で1V(Vvs.Li/Li+)まで放電し、大電流での電極体積当りの充放電容量を測定した。なお、電極体積当りの充放電容量(mAh/cm3)は、負極材重量当りの充放電容量(mAh/g)の測定値に電極密度(g/cm3)を乗じて算出した。入出力特性は、上記大電流(2mA/cm2)での電極体積当りの充放電容量を上記低電流(0.2mA/cm2)での電極体積当りの充放電容量で除した値により評価した。この値が大きいほど入出力特性に優れると判断することができる。結果を表1に示す。
上記と同様の方法で作製したコイン電池を0.2mA/cm2の定電流で0V(Vvs.Li/Li+)まで充電し、30分の休止時間後に、0.2mA/cm2の定電流で1V(Vvs.Li/Li+)まで放電するサイクルを3回繰り返し、低電流での電極体積当りの充放電容量を測定した。次いで、4サイクル目に、2mA/cm2の定電流で0V(Vvs.Li/Li+)まで充電し、30分の休止時間後に、2mA/cm2の定電流で1V(Vvs.Li/Li+)まで放電し、大電流での電極体積当りの充放電容量を測定した。なお、電極体積当りの充放電容量(mAh/cm3)は、負極材重量当りの充放電容量(mAh/g)の測定値に電極密度(g/cm3)を乗じて算出した。入出力特性は、上記大電流(2mA/cm2)での電極体積当りの充放電容量を上記低電流(0.2mA/cm2)での電極体積当りの充放電容量で除した値により評価した。この値が大きいほど入出力特性に優れると判断することができる。結果を表1に示す。
<寿命特性の評価>
各実施例の負極材試料87重量%に、導電補助材としてカーボンブラックを5重量%、N−メチル−2ピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分で8重量%となるよう加えて混練し、ペースト状の負極材スラリーを作製した。このスラリーを厚さ40μmの電解銅箔に単位面積当りの塗布量が4.5mg/cm2となるように塗工機を用いて塗布した後、130℃で乾燥してN−メチル−2ピロリドンを除去し、さらに、ロールプレス機により合材密度が1.0g/cm3となるように圧縮成型し、試料電極(負極)を作製した。
各実施例の負極材試料87重量%に、導電補助材としてカーボンブラックを5重量%、N−メチル−2ピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分で8重量%となるよう加えて混練し、ペースト状の負極材スラリーを作製した。このスラリーを厚さ40μmの電解銅箔に単位面積当りの塗布量が4.5mg/cm2となるように塗工機を用いて塗布した後、130℃で乾燥してN−メチル−2ピロリドンを除去し、さらに、ロールプレス機により合材密度が1.0g/cm3となるように圧縮成型し、試料電極(負極)を作製した。
また、正極活物質として粒径5μmのコバルト酸リチウム94重量%に、導電補助材としてカーボンブラックを3重量%、N−メチル−2ピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分で3重量%となるよう加えて混練し、ペースト状の正極材スラリーを作製した。このスラリーを厚さ20μmの電解アルミ箔に単位面積当りの塗布量が8.0mg/cm2となるように塗工機を用いて塗布した後、130℃で乾燥してN−メチル−2ピロリドンを除去し、さらに、ロールプレス機により合材密度が2.5g/cm3となるように圧縮成型し、正極を作製した。
ついで、上記で作製した試料電極(負極)を54×360mm角に切り出し、また、正極を50mm×300mm角で切り出し、試験電極とした。集電体(銅箔)、負極、セパレータ、正極、集電体(アルミ箔)の順に積層し捲回した後、1mm厚のPTFE板を巻くことにより径の調整を行った。セパレータには厚み20μmのポリエチレン微孔膜を2枚重ねて使用した。極板群を、スチール製の缶に入れ、そこにLiPF6をエチレンカーボネート(EC)及びメチルエチルカーボネート(MEC)(ECとMECは体積比で1:3)の混合溶媒に1.5モル/リットルの濃度になるように溶解した電解液溶液3mlを注入し、封缶して捲回型円筒型電池を作製した。
次いで、この電池を25℃の恒温槽中において100mAの定電流で4.15Vまで充電し、さらに4.15Vの定電圧で電流が10mAになるまで充電し、30分の休止後に100mAの定電流で2.5Vまで放電を行った。続いて電池を50℃の恒温槽に移し、100mAの定電流で4.15Vまで充電し、さらに4.15Vの定電圧で電流が10mAになるまで充電し、30分の休止後に100mAの定電流で2.75Vまで放電することを1サイクルとした。このサイクルを500回繰り返したときの1サイクル目からの放電容量維持率を測定し、寿命特性評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例における炭素粒子の表面を炭素層で被覆せずにそのまま負極材試料として用いた以外は、実施例と同様に評価用リチウムイオン二次電池を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例における炭素粒子の表面を炭素層で被覆せずにそのまま負極材試料として用いた以外は、実施例と同様に評価用リチウムイオン二次電池を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2、3)
実施例におけるポリビニルアルコールの溶解量を7.5g、1850gに変更して、炭素粒子の被覆を行った以外は、実施例と同様にして負極材試料及び評価用リチウムイオン二次電池を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。比較例2、3の負極材試料の表層炭素率は、それぞれ0.0005(比較例2)、0.12(比較例3)であった。
実施例におけるポリビニルアルコールの溶解量を7.5g、1850gに変更して、炭素粒子の被覆を行った以外は、実施例と同様にして負極材試料及び評価用リチウムイオン二次電池を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。比較例2、3の負極材試料の表層炭素率は、それぞれ0.0005(比較例2)、0.12(比較例3)であった。
(比較例4)
ストレートノボラック樹脂に、硬化剤としてヘキサミンを加え、180℃に加熱したホットプレート上で混合を行いながら硬化処理を行った。この硬化樹脂を200℃のオーブン中にて5時間加熱処理することにより、完全に硬化処理を終わらせた。続いて、この樹脂をハンマーで粗砕した後、分級機付きの衝撃粉砕機を用いて粉砕した。この粉砕樹脂を、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/時で1000℃まで昇温、続いて1000℃で1時間保持することによって炭素粉末を得た。
ストレートノボラック樹脂に、硬化剤としてヘキサミンを加え、180℃に加熱したホットプレート上で混合を行いながら硬化処理を行った。この硬化樹脂を200℃のオーブン中にて5時間加熱処理することにより、完全に硬化処理を終わらせた。続いて、この樹脂をハンマーで粗砕した後、分級機付きの衝撃粉砕機を用いて粉砕した。この粉砕樹脂を、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/時で1000℃まで昇温、続いて1000℃で1時間保持することによって炭素粉末を得た。
この炭素粉末を実施例における炭素粒子とし、実施例2と同様の方法で炭素層被覆処理を行い、300メッシュの篩を用いて粗粉を除去して負極材試料を得た。さらに、この負極材試料を用いて、実施例と同様の方法でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
石炭系コールタールをオートクレーブを用いて400℃で熱処理し、生コークスを得た。この生コークスを粉砕した後、1200℃の不活性雰囲気中でカ焼を行い、コークス塊を得た。このコークス塊を分級機付きの衝撃粉砕機を用いて粉砕したものを黒鉛ケースに入れ、窒素雰囲気中、100℃/分で3000℃まで昇温した後、30分保持し、300メッシュの標準篩で篩分けし粗粉を除去することで黒鉛粒子を得た。
石炭系コールタールをオートクレーブを用いて400℃で熱処理し、生コークスを得た。この生コークスを粉砕した後、1200℃の不活性雰囲気中でカ焼を行い、コークス塊を得た。このコークス塊を分級機付きの衝撃粉砕機を用いて粉砕したものを黒鉛ケースに入れ、窒素雰囲気中、100℃/分で3000℃まで昇温した後、30分保持し、300メッシュの標準篩で篩分けし粗粉を除去することで黒鉛粒子を得た。
この黒鉛粒子を実施例における炭素粒子とし、実施例2と同様の方法で炭素層被覆処理を行い、負極材試料を得た。さらに、この負極材試料を用いて、実施例と同様の方法でリチウムイオン二次電池を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜4のリチウムイオン二次電池用負極材を用いたリチウムイオン二次電池は、高い充放電効率を維持しながら、寿命特性、入出力特性に優れる。
以上より、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材を適用した負極を有するリチウムイオン二次電池は、充放電効率、寿命特性および入出力特性、ならびにこれらのバランスに優れる。
また、本発明は、[3]平均粒子径(50%D)が5μm以上30μm以下、真比重が1.80g/cm3以上2.20g/cm3以下、77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m2/g以上25m2/g以下で、かつ、相対圧1までの吸着量が5cm 3 /g以上30cm 3 /g以下、273Kでの二酸化炭素吸着より求めた比表面積が0.2m2/g以上7.5m2/g以下で、かつ、相対圧0.03までの吸着量が0.2cm 3 /g以上5cm 3 /g以下であることを特徴とする上記[1]または上記[2]に記載のリチウムイオン二次電池用負極材に関する。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m2/g以上25m2/g以下であることが好ましく、1.0m2/g以上15m2/g以下であることがより好ましい。また、相対圧1までの吸着量が5cm 3 /g以上30cm 3 /g以下であることが好ましく、10cm 3 /g以上20cm 3 /g以下であることがより好ましい。この比表面積が0.5m2/g未満の場合、入力特性が低下する傾向がある。一方、比表面積が25m2/gを超える場合、被覆炭素が何らかの原因で多孔質化したと見られ、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が増加する傾向がある。また、相対圧1までの吸着量が5cm 3 /g未満の場合、入力特性が低下する傾向がみられ、30cm 3 /gを超える場合、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が増加する傾向がある。なお、窒素吸着での比表面積は、77Kでの窒素吸着測定より得た吸着等温線からBET法を用いて求めることができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材は、273Kでの二酸化炭素吸着より求めた比表面積が0.2m2/g以上7.5m2/g以下であることが好ましく、0.3m2/g以上5m2/g以下であることがより好ましい。また、相対圧0.03までの吸着量が0.2cm 3 /g以上5cm 3 /g以下であることが好ましく、0.5cm 3 /g以上3cm 3 /g以下であることがより好ましい。この比表面積が0.2m2/g未満の場合、入力特性が低下する傾向がある。一方、比表面積が7.5m2/gを超える場合、被覆炭素が何らかの原因で多孔質化したと見られ、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が増加する傾向がある。また、相対圧0.03までの吸着量が0.2cm 3 /g未満の場合、入力特性が低下する傾向があり、5cm 3 /gを超える場合、リチウムイオン二次電池の初回不可逆容量が増加する傾向がある。なお、二酸化炭素吸着での比表面積は273Kでの二酸化炭素吸着測定より得た吸着等温線からBET法を用いて求めることができる。
Claims (6)
- X線回折装置(XRD)測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40〜3.70Åである炭素粒子と、該炭素粒子の表面上に形成された炭素層とを備え、前記炭素粒子に対する前記炭素層の比率(重量比)が0.001〜0.1であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材。
- 励起波長532nmのレーザーラマン分光測定により求めたプロファイルの中で、1360cm−1付近に現れるピークの強度をId、1580cm−1付近に現れるピークの強度をIgとし、その両ピークの強度比Id/IgをR値とした際、そのR値が、0.5以上1.5以下である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
- 平均粒子径(50%D)が5μm以上30μm以下、真比重が1.80g/cm3以上2.20g/cm3以下、77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m2/g以上25m2/g以下で、かつ、相対圧1までの吸着量が5g/cm3以上30g/cm3以下、273Kでの二酸化炭素吸着より求めた比表面積が0.2m2/g以上7.5m2/g以下で、かつ、相対圧0.03までの吸着量が0.2g/cm3以上5g/cm3以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
- X線回折装置(XRD)測定より求められる炭素002面の面間隔d002が3.40〜3.70Åである炭素粒子を、熱処理により炭素質が残る有機化合物とこれを溶解する溶媒との混合溶液に混合する工程、前記溶媒を除去して前記有機化合物に被覆された炭素粒子を作製する工程、および前記有機化合物に被覆された炭素粒子を焼成する工程、を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材、又は、請求項4に記載の製造方法で作製されたリチウムイオン二次電池用負極材を用いてなるリチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用負極を用いてなるリチウムイオン二次電池。
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