JP2012138352A - リチウム遷移金属系化合物粉体、その製造方法、及びそれを用いたリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 - Google Patents
リチウム遷移金属系化合物粉体、その製造方法、及びそれを用いたリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)ならびにW、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を、二次粒子の表面に濃化させたリチウム遷移金属複合酸化物を用いる。
【選択図】図1
Description
さらに、低コスト、安全性、寿命(特に高温下)にも優れた、性能バランスの良い材料が求められている。
特許文献1には、遷移金属系原料を水溶液として混合し、共沈した後、沈殿物にLi原料、W原料、Nb原料を混合して焼成することが記載されている。
特許文献4には、正極活物質としてLiNixM1-x-yLyO2(MはCoおよびMnのうちの少なくとも1種であり、LはAl、Sr、Y、Zr、Ta、Mg、Ti、Zn、B、Ca、Cr、Si、Ga、Sn、P、V、Sb、Nb、Mo、WおよびFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、0.1≦x≦1.0、0≦y≦0.1)で表される複合酸化物を主成分とする正極活物質が開示されている。
LiNiO2)中の遷移元素CoもしくはNiの一部を、Li、Fe、Mn、Ni、Mg、Zn、B、Al、Co、Cr、Si、Ti、Sn、P、V、Sb、Nb、Ta、Mo、Wの中から選ばれた2種類以上の元素(但し、少なくともTiを含む)で置換してなる正極活物質が開示されている。
特許文献7及び8には、リチウムニッケルコバルト系複合酸化物の置換元素としてNb、Ta、W、Mo及びReが含まれたものが開示されている。
二次粒子の内部にNb化合物及びW化合物が反応することはない。従って、低温時の負荷特性向上という点では、課題を残すものであった。
上述の特許文献5〜8については、本願発明に係る添加剤1及び添加剤2を併用しうる記載となっているが、実際に併用した正極活物質の記載はなく、低温時の負荷特性向上という点では、課題を残すものであった。
(1)Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)ならびにW、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を含むリチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子からなり、
二次粒子の表面部分のLi、元素(A)および元素(B)以外の金属元素の合計に対する元素(A)の合計の原子比が、二次粒子全体の該原子比の50倍以下であり、
二次粒子の表面部分のLi、元素(A)および元素(B)以外の金属元素の合計に対する元素(B)の合計の原子比が、二次粒子全体の該原子比の1倍以上であることを特徴とする
リチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
(2)リチウムイオンの挿入・脱離が可能な機能を有するリチウム遷移金属系化合物を主成分とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体であって、該主成分の原料化合物、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)を有する化合物(A’)ならびにW、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を有する化合物(B’)の混合物を湿式粉砕した後、焼成して得られたものであることを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
(3)リチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体が、層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物を主成分とすることを特徴とする(1)
または(2)に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
(4)リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物の組成が、下記組成式(I)で示されることを特徴とする(3)に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
(ただし、上記式(I)中、Mは、Li、Ni及びMn、或いは、Li、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は0.1以上、5以下、Co/(Mn+Ni+Co)モル比は0以上、0.35以下、M中のLiモル比は0.001以上、0.2以下である。)
(5)Bおよび/またはBi元素を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
(6)リチウム化合物と、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,及びCuから選ばれる少なくとも1種類以上の遷移金属化合物と、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)を有する化合物(A’)と、W、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を有する化合物(B’)とを、液体媒体中で粉砕するスラリー調製工程と、得られたスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、得られた噴霧乾燥体を酸素含有ガス雰囲気下、焼成する焼成工程とを含むことを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法。
(7)スラリー調整工程において、リチウム化合物と、前記遷移金属化合物と、前記化合物(A’)および化合物(B’)とを、液体媒体中で、下記測定条件で測定されるメジアン径が0.7μm以下になるまで粉砕し、噴霧乾燥工程において、噴霧乾燥時のスラリー供給量をS(L/min)、ガス供給量をG(L/min)とした際、500≦G/S≦10000となる条件で噴霧乾燥を行うことを特徴とする(6)に記載の粉体の製造方法。
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子径基準を体積基準として、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定する。
(8)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体と結着剤とを含有する正極活物質層を集電体上に有することを特徴とするリチウム二次電池用正極。
(9)リチウムを吸蔵・放出可能な負極、リチウム塩を含有する非水電解質、及びリチウムを吸蔵・放出可能な正極を備えたリチウム二次電池であって、正極が(8)に記載のリチウム二次電池用正極であることを特徴とするリチウム二次電池。
[リチウム遷移金属系化合物粉体]
本発明のリチウム遷移金属系化合物は、以下の(1)または(2)を特徴としている。(1)Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)ならびにW、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を含むリチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子からなり、
二次粒子の表面部分のLi、元素(A)および元素(B)以外の金属元素の合計に対する元素(A)の合計の原子比が、二次粒子全体の該原子比の50倍以下であり、
二次粒子の表面部分のLi、元素(A)および元素(B)以外の金属元素の合計に対する元素(B)の合計の原子比が、二次粒子全体の該原子比の1倍以上であることを特徴とする
リチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
(2)リチウムイオンの挿入・脱離が可能な機能を有するリチウム遷移金属系化合物を主成分とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体であって、該主成分の原料化合物、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)を有する化合物(A’)ならびにW、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を有する化合物(B’)の混合物を湿式粉砕した後、焼成して得られたものであることを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
本発明のリチウム遷移金属系化合物とは、Liイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物などが挙げられる。硫化物としては、TiS2やMoS2などの二次元層状構造をもつ化合物や、一般式MexMo6S8(MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属)で表される強固な三次元骨格構造を有するシュブレル化合物などが挙げられる。リン酸塩化合物としては、オリビン構造に属するものが挙げられ、一般的にはLiMePO4(Meは少なくとも1種の遷移金属)で表され、具体的にはLiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4などが挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。スピネル構造を有するものは、一般的にLiMe2O4(Meは少なくとも1種の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn2O4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、CoLiVO4などが挙げられる。
また、本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は、異元素が導入されてもよい。異元素としては、Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Ti,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Te,Ba,Os,Ir,Pt,Au,Pb,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,
Ho,Er,Tm,Yb,Lu,N,F,P,S,Cl,Br,Iの何れか1種以上の中から選択される。これらの異元素は、リチウム遷移金属系複合酸化物の結晶構造内に取り込まれていてもよく、あるいは、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物の結晶構造内に取り込まれず、その粒子表面や結晶粒界などに単体もしくは化合物として偏在していてもよい。
本発明では、化合物(A’)として、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)を有する化合物(A’)を用いることを特徴としている。これらの元素は、最高酸化数が+5価である元素であり、(B)の元素よりも最高酸化数が低いため、より一次粒子の内部まで固溶する。従って、本発明の効果を奏するものである。また、添加元素1として、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であることを特徴としているが、これらの元素(A)の中でも、表面濃化度の点から、元素(A)が、Nbおよび/またはTaであることが好ましく、Nbであることが最も好ましい。
化合物(A’)の例示化合物としては、通常、Nb2O5、Ta2O5、V2O5などが挙げられ、表面濃化度の点から、好ましくはNb2O5、Ta2O5が挙げられ、特に好ましくは、Nb2O5が挙げられる。これらの化合物(A’)は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
化合物(B’)の例示化合物としては、通常、酸化タングステン、パラタングステン酸アンモニウム、パラモリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデン、タングステン酸リチウム、モリブデン酸リチウムなどが挙げられ、入手が容易である点から、好ましくは酸化タングステン、パラタングステン酸アンモニウム、パラモリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデン、が挙げられ、特に好ましくは、酸化タングステン、酸化モリブデンが挙げられる。これらの化合物(B’)は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は、その一次粒子の表面部分に、化合物(A’)または化合物(B’)由来の元素(A)または元素(B)、即ち、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)ならびにW、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)が濃化して存在していることが特徴である。
さらに、本発明では、更なる添加剤として、Bおよび/またはBiの元素(以下「更なる添加元素」と称す。)を有する化合物(以下「更なる添加剤」と称す。)を用いることが、粉体物性改善の点から好ましい。これらの更なる添加元素の中でも、工業原料として安価に入手でき、かつ軽元素である点から、更なる添加元素がBであることが好ましい。
、B7O、B13O2、LiBO2、LiB5O8、Li2B4O7、HBO2、H3BO3、B(OH)3、B(OH)4、BiBO3、Bi2O3、Bi2O5、Bi(OH)3などが挙げられ、工業原料として比較的安価かつ容易に入手できる点から、好ましくはB2O3、H3BO3、Bi2O3が挙げられ、特に好ましくは、H3BO3が挙げられる。これらの更なる添加剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体のメジアン径は通常4μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは6μm以上、最も好ましくは6.5μm以上で、通常20μm以下、好ましくは19μm以下、より好ましくは18μm以下、更に好ましくは17μm以下、最も好ましくは15μm以下である。メジアン径がこの下限を下回ると、正極活物質層形成時の塗布性に問題を生ずる可能性があり、上限を超えると電池性能の低下を来たす可能性がある。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体はまた、BET比表面積が、通常0.3m2/g以上、好ましくは0.4m2/g以上、更に好ましくは0.45m2/g以上、最も好ましくは0.5m2/g以上で、通常3m2/g以下、好ましくは2.0m2/g以下、更に好ましくは1.5m2/g以下、最も好ましくは1.3m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいと嵩密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性に問題が発生しやすくなる可能性がある。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の嵩密度は通常1.2g/cc以上、好ましくは1.3g/cc以上、より好ましくは1.4g/cc以上、最も好ましくは1.5g/cc以上で、通常3.0g/cc以下、好ましくは2.9g/cc以下、より好ましくは2.8g/cc以下、最も好ましくは2.7g/cc以下である。嵩密度がこの上限を上回ることは、粉体充填性や電極密度向上にとって好ましい一方、比表面積が低くなり過ぎる可能性があり、電池性能が低下する可能性がある。嵩密度がこの下限を下回ると粉体充填性や電極調製に悪影響を及ぼす可能性がある。
なお、本発明では、嵩密度は、リチウム遷移金属系化合物粉体5〜10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/ccとして求める。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の平均径(平均一次粒子径)としては、特に限
定されないが、下限としては、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、最も好ましくは0.3μm以上、また、上限としては、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、最も好ましくは1.2μm以下である。平均一次粒子径が、上記上限を超えると、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が低下したりするために、レート特性や出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる可能性がある。上記下限を下回ると結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる可能性がある。
なお、BET比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置によって測定できる。本発明では、大倉理研製:AMS8000型全自動粉体比表面積測定装置を用い、吸着ガスに窒素、キャリアガスにヘリウムを使用し、連続流動法によるBET1点式法測定を行った。具体的には粉体試料を混合ガスにより150℃の温度で加熱脱気し、次いで液体窒素温度まで冷却して混合ガスを吸着させた後、これを水により室温まで加温して吸着された窒素ガスを脱着させ、その量を熱伝導検出器によって検出し、これから試料の比表面積を算出した。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体を40MPaの圧力で圧密した時の体積抵抗率の値は、下限としては、1×103Ω・cm以上が好ましく、1×104Ω・cm以上がより好ましく、1×105Ω・cm以上がさらに好ましく、5×105Ω・cm以上が最も好ましい。上限としては、1×107Ω・cm以下が好ましく、8×106Ω・cm以下がより好ましく、5×106Ω・cm以下がさらに好ましく、3×106Ω・cm以下が最も好ましい。この体積抵抗率がこの上限を超えると電池とした時の負荷特性が低下する可能性がある。一方、体積抵抗率がこの下限を下回ると、電池とした時の安全性などが低下する可能性がある。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は、層状構造に帰属する結晶構造を含んで構成されるリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物を主成分としたものが好ましい。
ここで、層状構造に関してさらに詳しく述べる。層状構造を有するものの代表的な結晶系としては、LiCoO2、LiNiO2のようなα−NaFeO2型に属するものがあり、これらは六方晶系であり、その対称性から空間群
ただし、層状LiMeO2とは、層状R(−3)m構造に限るものではない。これ以外
にもいわゆる層状Mnと呼ばれるLiMnO2は斜方晶系で空間群Pm2mの層状化合物であり、また、いわゆる213相と呼ばれるLi2MnO3は、Li[Li1/3Mn2/3]O2とも表記でき、単斜晶系の空間群C2/m構造であるが、やはりLi層と[Li1/3Mn2/3]層及び酸素層が積層した層状化合物である。
また、本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の主成分であるリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物の組成は、下記組成式(I)で示されるリチウム遷移金属系複合酸化物粉体であることが好ましい。
LiMO2 …(I)
ただし、Mは、Li、Ni及びMn、或いは、Li、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上、より一層好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上、最も好ましくは0.9以上、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2.5以下、最も好ましくは1.5以下である。Co/(Mn+Ni+Co)モル比は通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、最も好ましくは0.05以上、通常0.35以下、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.10以下、最も好ましくは0.099以下である。M中のLiモル比は通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上、最も好ましくは0.05以上、通常0.2以下、好ましくは0.19以下、より好ましくは0.18以下、さらに好ましくは0.17以下、最も好ましくは0.15以下である。
また、本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は、正極活物質の結晶性を高めるために酸素含有ガス雰囲気下で高温焼成を行って焼成されたものであることが好ましい。焼成温度の下限は特に、上記組成式(I)で示される組成を持つリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物においては、通常1050℃以上、好ましくは1060℃以上、より好ましくは1070℃以上、更に好ましくは1080℃以上、最も好ましくは1090℃以上であり、上限は1200℃以下、好ましくは1190℃以下、更に好ましくは1180℃以下、最も好ましくは1170℃以下である。焼成温度が低すぎると異相が混在し、また結晶構造が発達せずに格子歪が増大する。また比表面積が大きくなりすぎる。逆に焼成温度が高すぎると一次粒子が過度に成長し、粒子間の焼結が進行し過ぎ、比表面積が小さくなり過ぎる。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の含有炭素濃度C(重量%)値は、通常0.005重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.015重量%以上、最も好ましくは0.02重量%以上であり、通常0.25重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.15重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下、最も好ましくは0.07重量%以下である。この下限を下回ると電池性能が低下する可能性があり、上限を超えると電池とした時のガス発生による膨れが増大したり電池性能が低下したりする可能性がある。
よる測定で求められる。
なお、後述の炭素分析により求めたリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体の含有炭素成分は、炭酸化合物、特に炭酸リチウムの付着量についての情報を示すものとみなすことができる。これは、炭素分析により求めた炭素量を、全て炭酸イオン由来と仮定した数値と、イオンクロマトグラフィーにより分析した炭酸イオン濃度が概ね一致することによる。
本発明のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系複合酸化物粉体は、前記組成式(I)におけるMサイト中の原子構成が下記式(II)又は下記式(II’)で示されるものが特に好ましい。
(ただし、上記式(II)中、
0≦x≦0.1、
−0.1≦y≦0.1、
(1−x)(0.05−0.98y)≦z≦(1−x)(0.20−0.88y)
である。)
M=Liz’/(2+z’){(Ni(1+y’)/2Mn(1−y’)/2)1−x’Cox’}2/(2+z’) …(II’)
(ただし、組成式(II’)中、
0.1<x’≦0.35
−0.1≦y’≦0.1
(1−x’)(0.02−0.98y’)≦z’≦(1−x’)(0.20−0.88y’))
上記(II)式において、xの値は通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、最も好ましくは0.04以上、通常0.1以下、好ましくは0.099以下、最も好ましくは0.098以下である。
zの値は通常(1−x)(0.05−0.98y)以上、好ましくは(1−x)(0.06−0.98y)以上、より好ましくは(1−x)(0.07−0.98y)以上、さらに好ましくは(1−x)(0.08−0.98y)以上、最も好ましくは(1−x)(0.10−0.98y)以上、通常(1−x)(0.20−0.88y)以下、好ましくは(1−x)(0.18−0.88y)以下、より好ましくは(1−x)(0.17−0.88y)、最も好ましくは(1−x)(0.16−0.88y)以下である。zがこの下限を下回ると導電性が低下し、上限を超えると遷移金属サイトに置換する量が多くなり過ぎて電池容量が低くなる等、これを使用したリチウム二次電池の性能低下を招く可能性がある。また、zが大きすぎると、活物質粉体の炭酸ガス吸収性が増大するため、大気中の炭酸ガスを吸収しやすくなる。その結果、含有炭素濃度が大きくなると推定される。
。
y’の値は通常−0.1以上、好ましくは−0.05以上、より好ましくは−0.03以上、最も好ましくは−0.02以上、通常0.1以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、最も好ましくは0.02以下である。
前述のように層状構造は必ずしもR(−3)m構造に限られるものではないが、R(−3)m構造に帰属しうるものであることが電気化学的な性能面から好ましい。
構造的視点では、z,z’に係るLiは、同じ遷移金属サイトに置換されて入っていると考えられる。ここで、z,z’に係るLiによって、電荷中性の原理によりNiの平均価数が2価より大きくなる(3価のNiが生成する)。z,z’はNi平均価数を上昇させるため、Ni価数(Ni(III)の割合)の指標となる。
他方、x’値が0.10<x’≦0.35と、Co量が比較的多い範囲にあると、リチウム二次電池として使用した場合において、充放電容量やサイクル特性、負荷特性、安全性などがバランスよく向上する。
本発明において、前記組成式(I)及び(II)を満たす組成を有するリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体は、CuKα線を使用した粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが64.5°付近に存在する(110)回折ピークの半価幅をFWHM(110)とした時に、0.1≦FWHM(110)≦0.3の範囲にあることが好ましい。
本発明において、FWHM(110)は通常0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.12以上、最も好ましくは0.14以上、通常0.3以下、好ましくは0.28以下、より好ましくは0.26以下、更に好ましくは0.24以下、最も好ましくは0.22以下である。
0≦I110 */I110≦0.25
0≦I113 */I113≦0.30
(ここで、I018、I110、I113は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークの積分強度を表し、I018 *、I110 *、I113 *は、それぞれ(018)、(110)、(113)回折ピークのピークトップよりも高角側に現れる異相由来の回折ピークの積分強度を表す。)
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体が上述の効果をもたらす理由としては、次のように推察される。
本願発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は、化合物(A’)の元素(A)が化合物(B’)の元素(B)より粒子内部に固溶するため、単独添加と比較して活物質表面近傍付近及び活物質内部のLi移動速度向上効果が大きくなる。この結果、本願発明のリチウム遷移金属系化合物粉体を用いて、電池としたときに低温抵抗特性が向上したものと推察される。
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体を製造する方法は、特定の製法に限定されるものではないが、 リチウム化合物と、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,及びCuから選ばれる少なくとも1種類以上の遷移金属化合物と、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)を有する化合物(A’)と、W、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を有する化合物(B’)とを、液体媒体中で粉砕するスラリー調製工程と、得られたスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、得られた噴霧乾燥体を酸素含有ガス雰囲気下、焼成する焼成工程とを含むことを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法により好適に製造される。
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子径基準を体積基準として、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定する。
例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体を例にあげて説明すると、リチウム化合物、ニッケル化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、並びに化合物(A’)および化合物(B’)を液体媒体中に分散させたスラリーを噴霧乾燥して得られた噴霧乾燥体を、酸素含有ガス雰囲気中で焼成して製造することができる。
以下に、本発明の好適態様であるリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体の製造方法を例にあげて、本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法について詳細に説明する。
本発明の方法により、リチウム遷移金属系化合物粉体を製造するに当たり、スラリーの調製に用いる原料化合物のうち、リチウム化合物としては、Li2CO3、LiNO3、LiNO2、LiOH、LiOH・H2O、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CH3OOLi、Li2O、Li2SO4、ジカルボン酸Li、クエン酸Li、脂肪酸Li、アルキルリチウム等が挙げられる。これらリチウム化合物の中で好ましいのは、焼成処理の際にSOX、NOX等の有害物質を発生させない点で、窒素原子や硫黄原子、ハロゲン原子を含有しないリチウム化合物であり、また、焼成時に分解ガスを発生する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に分解ガスを発生するなどして空隙を形成しやすい化合物であり、これらの点を勘案すると、Li2CO3、LiOH、LiOH・H2Oが好ましく、特にLi2CO3が好ましい。これらのリチウム化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
原料の混合方法は特に限定されるものではなく、湿式でも乾式でも良い。例えば、ボールミル、振動ミル、ビーズミル等の装置を使用する方法が挙げられる。原料化合物を水、アルコール等の液体媒体中で混合する湿式混合は、より均一な混合が可能であり、かつ焼成工程において混合物の反応性を高めることができるので好ましい。
なお、原料の混合段階においてはそれと並行して原料の粉砕が為されていることが好ましい。粉砕の程度としては、粉砕後の原料粒子の粒径が指標となるが、平均粒子径(メジアン径)として通常0.7μm以下、好ましくは0.6μm以下、さらに好ましくは0.55μm以下、最も好ましくは0.5μm以下とする。粉砕後の原料粒子の平均粒子径が大きすぎると、焼成工程における反応性が低下するのに加え、組成が均一化し難くなる。ただし、必要以上に小粒子化することは、粉砕のコストアップに繋がるので、平均粒子径が通常0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上となるように粉砕すれば良い。このような粉砕程度を実現するための手段としては特に限定されるものではないが、湿式粉砕法が好ましい。具体的にはダイノーミル等を挙げることができる。
湿式混合後は、得られたスラリーを、次いで通常乾燥工程に供される。乾燥方法は特に限定されないが、生成する粒子状物の均一性や粉体流動性、粉体ハンドリング性能、乾燥粒子を効率よく製造できる等の観点から噴霧乾燥が好ましい。
本発明のリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体等のリチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法においては、原料化合物と添加剤1及び添加剤2とを湿式粉砕して得られたスラリーを噴霧乾燥することにより、一次粒子が凝集してなる二次粒子からなる粉体を得る。一次粒子が凝集して二次粒子を形成してなる噴霧乾燥粉体は、本発明品の噴霧乾燥粉体の形状的特徴である。形状の確認方法としては、例えば、SEM観察、断面SEM観察が挙げられる。
化合物粉体の焼成前駆体でもある噴霧乾燥により得られる粉体のメジアン径(ここでは超音波分散をかけずに測定した値)は通常35μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下、最も好ましくは20μm以下となるようにする。ただし、あまりに小さな粒径は得にくい傾向にあるので、通常は3μm以上、好ましくは4μm以上、より好ましくは5μm以上である。噴霧乾燥法で粒子状物を製造する場合、その粒子径は、噴霧形式、加圧気体流供給速度、スラリー供給速度、乾燥温度等を適宜選定することによって制御することができる。
本発明の方法においては、前述のスラリー粘度V(cp)を満たし、かつ用いる噴霧乾燥装置の仕様に適したスラリー供給量とガス供給量を制御して、前述の気液比G/Sを満たす範囲で噴霧乾燥を行えばよく、その他の条件については、用いる装置の種類等に応じて適宜設定されるが、更に次のような条件を選択することが好ましい。
このようにして得られた焼成前駆体は、次いで焼成処理される。
ここで、本発明において「焼成前駆体」とは、噴霧乾燥して得られる焼成前のリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物等のリチウム遷移金属系化合物の前駆体を意味する。例えば、焼成時に分解ガスを発生又は昇華して、二次粒子内に空隙を形成させる化合物を、上述の噴霧乾燥粉体に含有させて焼成前駆体としてもよい。
定の組成を有するリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体を製造するには、製造条件を一定とした場合には、リチウム化合物、ニッケル化合物、マンガン化合物、及びコバルト化合物と、添加剤1と添加剤2とを液体媒体中に分散させたスラリーを調製する際、各化合物の混合比を調整することで、目的とするLi/Ni/Mn/Coのモル比を制御することができる。
このようにして得られたリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体等の本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体によれば、容量が高く、低温出力特性、保存特性に優れた、性能バランスの良いリチウム二次電池用正極材料が提供される。
本発明のリチウム二次電池用正極は、本発明のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体及び結着剤を含有する正極活物質層を集電体上に形成してなるものである。
正極活物質層は、通常、正極材料と結着剤と更に必要に応じて用いられる導電材及び増粘剤等を、乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、或いはこれらの材料を液体媒体中に溶解又は分散させてスラリー状にして、正極集電体に塗布、乾燥することにより作成される。
更に好ましくは3重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは40重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう可能性がある一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる可能性がある。
正極のプレス後の電極密度としては、下限としては、通常、3.1g/cm3以上、好ましくは3.2g/cm3以上、特に好ましくは3.3g/cm3以上、上限としては、通常、4.2g/cm3以下、好ましくは4.0g/cm3以下、特に好ましくは3.8g/cm3以下である。
なお、塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
かくして、本発明のリチウム二次電池用正極が調製できる。
本発明のリチウム二次電池は、リチウムを吸蔵・放出可能な上記の本発明のリチウム二次電池用正極と、リチウムを吸蔵・放出可能な負極と、リチウム塩を電解塩とする非水電解質とを備える。更に、正極と負極との間に、非水電解質を保持するセパレータを備えていても良い。正極と負極との接触による短絡を効果的に防止するには、このようにセパレ
ータを介在させるのが望ましい。
負極は通常、正極と同様に、負極集電体上に負極活物質層を形成して構成される。
負極集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。中でも金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。中でも、金属薄膜が、現在工業化製品に使用されていることから好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成しても良い。負極集電体として金属薄膜を使用する場合、その好適な厚さの範囲は、正極集電体について上述した範囲と同様である。
炭素材料としては、その種類に特に制限はないが、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)や、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物が挙げられる。有機物の熱分解物としては、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、或いはこれらピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。中でも黒鉛が好ましく、特に好適には、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチに高温熱処理を施すことによって製造された、人造黒鉛、精製天然黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチを含む黒鉛材料等であって、種々の表面処理を施したものが主として使用される。これらの炭素材料は、それぞれ1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、黒鉛材料の灰分が、黒鉛材料の重量に対して通常1重量%以下、中でも0.5重量%以下、特に0.1重量%以下であることが好ましい。
また、レーザー回折・散乱法により求めた黒鉛材料のメジアン径が、通常1μm以上、中でも3μm以上、更には5μm以上、特に7μm以上、また、通常100μm以下、中でも50μm以下、更には40μm以下、特に30μm以下であることが好ましい。
更に、黒鉛材料についてアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析を行った場合に、1580〜1620cm−1の範囲で検出されるピークPAの強度IAと、1350〜1370cm−1の範囲で検出されるピークPBの強度IBとの強度比IA/IBが、0以上0.5以下であるものが好ましい。また、ピークPAの半価幅は26cm−1以下が好ましく、25cm−1以下がより好ましい。
化錫や酸化ケイ素などの金属酸化物、Li2.6Co0.4Nなどの窒化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金などが挙げられる。これらの炭素材料以外の材料は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述の炭素材料と組み合わせて用いても良い。
非水電解質としては、例えば公知の有機電解液、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質等を用いることができるが、中でも有機電解液が好ましい。有機電解液は、有機溶媒に溶質(電解質)を溶解させて構成される。
ここで、有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等を使用することができる。代表的なものを列挙すると、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられ、これら化合物は、水素原子が一部ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、これらの単独若しくは2種類以上の混合溶媒が使用できる。
さらに、有機電解液中には、ジフルオロリン酸リチウムなど、サイクル寿命や出力特性の向上に効果を発揮する添加剤や、プロパンスルトンやプロペンスルトンなどの高温保存ガスの抑制に効果を発揮する添加剤を任意の割合で添加してもよい。
、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
電解質として前述の有機電解液を用いる場合には、電極同士の短絡を防止するために、正極と負極との間にセパレータが介装される。セパレータの材質や形状は特に制限されないが、使用する有機電解液に対して安定で、保液性に優れ、且つ、電極同士の短絡を確実に防止できるものが好ましい。好ましい例としては、各種の高分子材料からなる微多孔性のフィルム、シート、不織布等が挙げられる。高分子材料の具体例としては、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン高分子が用いられる。特に、セパレータの重要な因子である化学的及び電気化学的な安定性の観点からは、ポリオレフィン系高分子が好ましく、電池におけるセパレータの使用目的の一つである自己閉塞温度の点からは、ポリエチレンが特に望ましい。
本発明のリチウム二次電池は、上述した本発明のリチウム二次電池用正極と、負極と、電解質と、必要に応じて用いられるセパレータとを、適切な形状に組み立てることにより製造される。更に、必要に応じて外装ケース等の他の構成要素を用いることも可能である。
本発明のリチウム二次電池は、以下の実施例においては、満充電状態における正極の充電電位が4.4V未満で使用しているが、4.4V(vs.Li/Li+)以上となるように設計されている電池で使用することも可能である。即ち、本発明のリチウム二次電池正極材料用リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体は、高い充電電位で充電するように設計されたリチウム二次電池として使用した場合においても、本願発明の効果を有効に発揮するはずである。
[物性の測定方法]
後述の各実施例及び比較例において製造されたリチウム遷移金属系化合物粉体の物性等は、各々次のようにして測定した。
公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、屈折率を1.24に設定し、粒子径基準を体積基準として測定した。また、分散媒としては0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定を行った。
公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、屈折率を1.60に設定し、粒子径基準を体積基準として測定した。また、分散媒としては0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定を行った。
PHI社製 X線光電子分光装置「Quantum2000」を用い、下記条件で行った。
X線源:単色化AlKα
分析面積:0.3mm角
取り出し角:45°
<比表面積>
BET法により求めた。
試料粉体4〜10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度として求めた。
<平均一次粒子径>
30,000倍のSEM画像により求めた。
(実施例1)
Li2CO3、NiCO3、Mn3O4、CoOOH、H3BO3、WO3、Nb2O5を、Li:Ni:Mn:Co:B:W:Nb=1.15:0.45:0.45:0.1
0:0.0025:0.015:0.005のモル比となるように秤量し、混合した後、
これに純水を加えてスラリーを調製した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分をメジアン径0.5μmに粉砕した。
この複合酸化物のメジアン径は6.5μm、BET比表面積は0.9m2/g、嵩密度は1.7g/cc、平均一次粒径は0.5μmであった。
組成をLi2CO3、NiCO3、Mn3O4、CoOOH、H3BO3、WO3、Nb2O5を、Li:Ni:Mn:Co:B:W:Nb=1.15:0.45:0.45:0.10:0.0025:0.015:0.01のモル比となるようにした以外は実施例1と同様に作製した。
得られた複合酸化物のメジアン径は8.9μm、BET比表面積は0.7m2/g、嵩密度は1.9g/cc、平均一次粒径は0.5μmであった。
Li2CO3、Ni(OH)2、Mn3O4、CoOOH、H3BO3、WO3を、Li:Ni:Mn:Co:B:W=1.15:0.45:0.45:0.10:0.0025:0.015のモル比となるように秤量し、混合した後、これに純水を加えてスラリーを調製した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分をメジアン径0.5μmに粉砕した。
噴霧乾燥時の空気供給量を30L/分、スラリー供給量23mL/分(気/液=1300)とし、焼成温度を1150℃とした以外は実施例1と同様に作製した。
得られた複合酸化物のメジアン径は13.9μm、BET比表面積は0.8m2/g、嵩密度は2.5g/cc、平均一次粒径は0.5μmであった。
噴霧乾燥時の空気供給量を1200L/分、スラリー供給量7.8×10−1L/分(気/液=1540)とし、焼成温度を1150℃とした以外は比較例1と同様に作製した
。
得られた複合酸化物のメジアン径は15.0μm、BET比表面積は0.4m2/g、嵩密度は2.3g/cc、平均一次粒径は0.5μmであった。
上述の実施例及び比較例で製造したリチウム遷移金属系化合物粉体をそれぞれ正極材料(正極活物質)として用いて、以下の方法によりリチウム二次電池を作製し、評価を行った。
[正極の作製]
製造したリチウム遷移金属複合酸化物粉体を74質量%、アセチレンブラック20質量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5質量%、ジフルオロリン酸リチウム1質量%の割合で秤量したものを乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを9mmφおよび12mmφのポンチを用いて打ち抜いた。この際、全体重量は各々9mmφのものは約7.5mg、12mmφのものは約17.5mgになるように調整した。これをアルミニウムメッシュに圧着して、9mmφおよび12mmφの正極とした。
得られたコイン型セルについて、0.2mA/cm2の定電流定電圧充電、即ち正極からリチウムイオンを放出させる反応を上限4.2Vで行った。次いで0.2mA/cm2の定電流放電、即ち正極にリチウムイオンを吸蔵させる反応を下限3.0Vで行った際の、正極活物質単位重量当たりの初期充電容量をQs(C)[mAh/g]、初期放電容量をQs(D)[mAh/g]とした。
負極活物質として平均粒子径8〜10μmの黒鉛粉末(d002=3.35Å)、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンをそれぞれ用い、これらを重量比で92.5:7.5の割合で秤量し、これをN−メチルピロリドン溶液中で混合し、負極合剤スラリーとした。このスラリーを20μmの厚さの銅箔の片面に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mmφに打ち抜き、0.5ton/cm2でプレス処理をしたものを負極とした。この時、電極上の負極活物質の量は約6〜8mgになるように調節した。
上記12mmφの正極、負極を組み合わせ、コインセルを使用して試験用電池を組み立て、その電池性能を評価した。即ち、コインセルの正極缶の上に、作製した上述の正極を置き、その上にセパレータとして厚さ25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケットで押さえた後、非水電解液として、EC(エチレンカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)=3:3:4(容量比)の溶媒にLiPF6を1mol/Lで溶解した電解液を用い、これを缶内に加えてセパレータに十分染み込ませた後、上述の負極を置き、負極缶を載せて封口し、コイン型のリチウム二次電池を作製した。なお、この時、正極活物質の重量と負極活物質重量のバランスは、ほぼ以下の式を満たすように設定した。
(負極活物質重量[g]×Qf[mAh/g])/(正極活物質重量[g]×Qs(C)
[mAh/g])=1.2
こうして得られた電池の低温負荷特性を測定するため、電池の1時間率電流値、即ち1Cを下式の様に設定し、以下の試験を行った。
1C[mA]=Qs(D)×正極活物質重量[g]/h
まず、室温で定電流0.2C充放電2サイクル及び定電流1C充放電1サイクルを行った。なお、充電上限は4.1V、下限電圧は3.0Vとした。次に、1/3C定電流充放電により、充電深度40%に調整したコインセルを−30℃の低温雰囲気に1時間以上保持した後、定電流0.5C[mA]で10秒間放電させた時の10秒後の電圧をV[mV]、放電前の電圧をV0[mV]とした時、△V=V−V0として下式より抵抗値R[Ω]を算出した。
実施例1と比較例1についてXPSによる深さ方向分析を行った結果を表2、図1、図2に示す。表2より、WよりもNbの表面の濃化度合いが低いことがわかる。このことから、Nbなどの元素(A)はより粒子内部まで置換して粒子内部のLi拡散を容易にする
ことにより、低温抵抗の改善をもたらしていると考えられる。
Claims (9)
- Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)ならびにW、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を含むリチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子からなり、
二次粒子の表面部分のLi、元素(A)および元素(B)以外の金属元素の合計に対する元素(A)の合計の原子比が、二次粒子全体の該原子比の50倍以下であり、
二次粒子の表面部分のLi、元素(A)および元素(B)以外の金属元素の合計に対する元素(B)の合計の原子比が、二次粒子全体の該原子比の1倍以上であることを特徴とする
リチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。 - リチウムイオンの挿入・脱離が可能な機能を有するリチウム遷移金属系化合物を主成分とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体であって、該主成分の原料化合物、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)を有する化合物(A’)ならびにW、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を有する化合物(B’)の混合物を湿式粉砕した後、焼成して得られたものであることを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
- リチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体が、層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
- リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物の組成が、下記組成式(I)で示されることを特徴とする請求項3に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
LiMO2 ・・・(I)
(ただし、上記式(I)中、Mは、Li、Ni及びMn、或いは、Li、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は0.1以上、5以下、Co/(Mn+Ni+Co)モル比は0以上、0.35以下、M中のLiモル比は0.001以上、0.2以下である。) - Bおよび/またはBi元素を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体。
- リチウム化合物と、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,及びCuから選ばれる少なくとも1種類以上の遷移金属化合物と、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素(A)を有する化合物(A’)と、W、Mo及びReから選ばれる少なくとも1種の元素(B)を有する化合物(B’)とを、液体媒体中で粉砕するスラリー調製工程と、得られたスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、得られた噴霧乾燥体を酸素含有ガス雰囲気下、焼成する焼成工程とを含むことを特徴とするリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法。
- スラリー調整工程において、リチウム化合物と、前記遷移金属化合物と、前記化合物(A’)および化合物(B’)とを、液体媒体中で、下記測定条件で測定されるメジアン径が0.7μm以下になるまで粉砕し、噴霧乾燥工程において、噴霧乾燥時のスラリー供給量をS(L/min)、ガス供給量をG(L/min)とした際、500≦G/S≦10000となる条件で噴霧乾燥を行うことを特徴とする請求項6に記載の粉体の製造方法。
<メジアン径測定条件>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率を1.24に設定し、粒子径
基準を体積基準として、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定する。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体と結着剤とを含有する正極活物質層を集電体上に有することを特徴とするリチウム二次電池用正極。
- リチウムを吸蔵・放出可能な負極、リチウム塩を含有する非水電解質、及びリチウムを吸蔵・放出可能な正極を備えたリチウム二次電池であって、正極が請求項8に記載のリチウム二次電池用正極であることを特徴とするリチウム二次電池。
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